説明

シート状成形体の製造方法

【課題】シート部材の回転及び移載を行うシート状成形体の製造において、複雑な機構に頼らずに、自由度の高い回転移載加工を可能とする製造方法を提供する。
【解決手段】シート部材を、初期配置において前後左右の4つを1組にして、左右において線対称かつ前後において同形になるようにシート原反から前後方向で実質的に連続して切り出すシート部材の切断工程、前記1組のシート部材を移載手段により把持し軸回転させ、対角に位置する2つを、搬送方向にずれた位置で左右に載置し、残る2つの対角に位置する前記シート部材を、前記移載手段により更に軸回転させ、前記載置済みの2つのシート部材の左右にそれぞれ並ぶように載置する回転移載工程を有するシート状成形体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シート状成形体は、用途に応じて、様々な形状に加工されて製造される。例えば、特許文献1には、形状が相互に線対称である2つ1組のシート部材を、1つのシート原反から交互に連続して得る方法が開示されている。この方法では、上記線対称のシート部材を1つおきに180°回転し、所定の位置に移載する。これにより、連続して同一形状のシート部材が次工程に送られ、そこで吸収性物品のサイドパネルを構成するように吸収性本体に取り付けられる。左右両側について同様の回転・移載及び取り付けを行うことで、左右両側のサイドパネルが構成され、効率的な製造が実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−44374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の製造方法においては、シート部材の向きを変更するために、ロールの外周面に回転可能な搬送ヘッドを複数組み込み、回転と移載とを可能にする工夫が施されている。しかし、その回転移載における設定の自由度には限界がある。そのため、上記搬送ヘッドの回転角度を一定のものとして、かつ各搬送ヘッドの回転を周上で一連のものとして同調させることとなる。したがって、このような加工条件の制約に見合う形状にして加工部材を調達することとなる。複雑な形状のシート部材を取り扱ったり、多様な角度や位置の変更に対応しようとしたりすると、シート部材のシート原反からの取り出しにおいて無駄が生じることが避けがたく、歩留りを向上させることが難しい。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、シート部材の回転及び移載を行うシート状成形体の製造において、複雑な機構に頼らずに、自由度の高い回転移載加工を可能とする製造方法の提供を目的とする。また、上記の加工自由度の改善により、調達するシート部材の形状的制約を低減して歩留まりを向上させることができる製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、非対称形のシート部材を回転及び移載し該シート部材の2つが左右対称に別のシート材に配置されたシート状成形体を連続して製造する方法であって、前記シート部材を、初期配置において前後左右の4つを1組にして、左右において線対称かつ前後において同形になるようにシート原反から前後方向で実質的に連続して切り出すシート部材の切断工程、前記1組のシート部材を移載手段により把持し軸回転させ、対角に位置する2つを、搬送方向にずれた位置で左右に載置し、残る2つの対角に位置する前記シート部材を、前記移載手段により更に軸回転させ、前記載置済みの2つのシート部材の左右にそれぞれ並ぶように載置する回転移載工程を有するシート状成形体の製造方法によって解決された。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法により、シート部材の回転及び移載を行うシート状成形体の製造において、複雑な機構に頼らずに、自由度の高い回転移載加工が可能になる。また、上記の加工自由度の改善により、調達するシート部材の形状的制約を低減して歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の製造方法における好ましい実施形態に係るシート状成形体の製造工程の全体を示す工程説明図である。
【図2】本発明の製造方法における回転移載の一例を模式化して説明する工程説明図である。
【図3−1】本発明の製造方法における回転移載の変形例を模式化して説明する工程説明図(工程a,b)である。
【図3−2】本発明の製造方法における回転移載の変形例を模式化して説明する工程説明図(工程c,d)である。
【図4】本発明の製造方法の応用例を示す目元温熱マスクの製造過程を模式的に示す平面図である。
【図5】図4(c)に示した目元温熱マスクのV−V線断面の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本発明の製造方法の一実施形態として、2つの第1シート部材(抄紙温熱シート)を内在させて製造されるシート状成形体(目元温熱マスク)の製造工程全体の流れを、図1に基づいて概略的に説明する。
【0010】
[シート状成形体の製造工程全体の流れ]
図1に示した工程を経て製造されるシート状成形体10は工程VIの後に得られ、典型的には図4及び図5に示した目元温熱マスクを想定している。図1では製品としてのシート状成形体10及びその製造中間体を個別的に図示していない。工程Vの後にのみ、その部分でシート状成形体(製品)10が得られることを符号と引き出し線により示している。図の上下が設備の上下(天地)であり、全体として左から右に工程が進む(図の上は符号の向きに従う。以下同様。)。この工程が進む方向が搬送方向である。また、同図においては、回転方向の一部を矢印で示している。本実施形態のシート状成形体の製造工程は、全体として、第1シート原反を切断する工程(I)、第1シート部材を回転移載する工程(II)、シート状複合体を作製する工程(III)、シート状中間体を作製する工程(IV)、シート状中間体を移載する工程(V)、及び第3シート原反を切断する工程(VI)からなる。なお、工程(I)〜(VI)のそれぞれに対応する位置を、その番号により図1の中に示した。
【0011】
・第1シート原反を切断する工程(I)
図1の(I)において、ロール61から繰り出され、搬送路に沿って搬送された第1シート原反1は、切断機91により、所定の形状である第1シート部材に切断される。切断機91にはダイセット式の打ち抜き装置を適用することができ、例えば、トムソン刃を用いた装置又は同等の装置を用いることができる。その他、ダイカットロールを備えた切断装置(ロータリーダイカッター)を用いることもできる。
工程(I)に第1シート原反1を供給するため、本実施形態において、搬送路は、主に巻回ローラー、駆動ローラー、ベルトコンベア、バキュームコンベア、ローラーコンベア等を組み合わせて構成すればよく、従来シート部材の搬送に用いられている搬送手段を適宜選択して用いることができる。また、本実施形態においては、ロール61に巻回された状態の外径、真円からの変形、及び表面状態の変化に拘束されずに、安定して第1シート原反1を自動的に繰り出し、導紙することができる自動導紙装置を備えることが好ましい。このことは、第2シート原反2、第3シート原反3、第1通気材原反5、及び第2通気材原反4を繰り出す装置においても同様である。
【0012】
本実施形態においては、第1シート部材は、図2(a)に示した所定形状の第1シート部材1a〜1dとして、第1シート原反1から連続して切断される。図2(a)に示したように、各第1シート部材が、搬送方向(MD方向)に同形で連続し、これと直交する方向(CD方向)に線対称形状で形成されている。また、同様の第1シート部材1a〜1dが搬送方向に順次切断される。
【0013】
本実施形態においては、図示は省略されているが、この工程(I)から次の工程(II)に移行する間に、上記のようにして切断された各第1シート部材を回転させずに、搬送方向(MD方向)及びこれと直交する方向(CD方向)に拡散する配置変更を行う。これは図2に示した過程(a)から過程(b)への配置変更である。上記第1シート部材は抄紙温熱シート等の発熱シート1a〜1d(図4(a)参照)を想定している。第1シート部材1aを例にとって言うと、その表裏に第1通気材部材5a及び第2通気材部材4aとが配置され、さらに第2シート部材2aが配設され、シート状中間体(抄紙温熱複合体)1Aが構成される。同様の形態のシート状中間体1A〜1Dが四方に4つ配置され4つ1組のものとされている(図4(b)参照)。なお、MD(方向)とは前述の搬送方向であり、「Machine Direction」の略語である。流れ方向ともいう。CD(方向)は、上記MDに直交する方向であり、「Cross Direction」の略語である。
【0014】
・第1シート部材を回転移載する工程(II)
図1の(II)において、第1シート部材を載せる第1通気材原反5は、巻回されているロール65から繰り出され、搬送路に沿って搬送された後、所定位置で水平に搬送される。この水平に搬送される位置に対し、やや離れた位置において、前工程で得られた複数の第1シート部材が移載手段92に保持され、所望の向きに変えられ、水平に搬送される第1通気材原反5の上に移載される。この移載は、連続的に行われ、第1通気材原反5の上には、第1シート部材がそれぞれ所定の向きで並ぶ。移載の詳細については後述する。
【0015】
移載手段92が第1シート部材を保持する位置と、保持していた第1シート部材を第1通気材原反5の上に載せる位置では、それぞれ第1シート部材及び第1通気材原反5を、公知の回転駆動ベルトにより水平に搬送する。テンション等については、ベルトが撓まず、上に載せられる第1シート部材の質量等を考慮して決定する。この位置(II)においては、第1シート部材又は第1通気材原反5を搬送する動作の停止および始動のタイミング、速度及び位置合わせについて、移載手段92の動作と同期させる制御が好ましい。このように、第1シート部材又は第1通気材原反5を把持する手段としては、例えばサーボモータを用いたシーケンサー制御又は同等の制御方法を用いることができるが、これに限定されない。
【0016】
本実施形態において、移載手段92は搬送方向(MD方向)もしくはこれと直交する方向(CD方向)とにおいて移動可能であり、さらに軸数が1以上の回転動作が可能なロボット機構を有する。シート部材を把持する部分には、シート部材を吸引して固定するバキュームユニットや、機械的にシート部材を掴むメカハンド等を採用することが可能である。また、第1シート部材の向きを制御するために、ビデオカメラ等を用いた視覚センサ等を、ロボット機構の駆動を制御するために使用してもよい。使用するロボット機構には、例えばロボットハンドを水平方向に移動するように構成された駆動モーター及び駆動伝達系を有するものが挙げられる。さらに、水平方向に並ぶ第1シート部材に対して、ロボットハンドを垂直方向に上下動させ、かつ、回転方向に回転させるように構成された別の駆動モーターと別の駆動伝達系とを備えるものが挙げられる。
【0017】
必要により、移載手段92の傍に質量計を備えて、保持した第1シート部材を次々と質量計に載せ代えることにより、それぞれの質量を検査するように構成してもよい。更に、ビデオカメラ等を使用した視覚センサを用いて、形状および色等の検査を行うことができる。目元温熱マスクとしての利用を考慮すると、温熱シート部材を構成する第1シート部材の温度を正確に把握し管理することがその性能の安定化の観点から好ましい。
【0018】
・シート状複合体を作製する工程(III)
第2通気材原反4は、巻回されているロール64から繰り出され、搬送路に沿って搬送される。その後、巻回されているロール62から繰り出された第2シート原反2が、第2通気材原反4に合流され、積層状態の第2通気材原反4と第2シート原反2とは、前述のように第1シート部材が載せられて水平に搬送される第1通気材原反5に対して、第1シート部材を間に挟むように上方から重ねられ搬送される。この水平に搬送される位置において、接合機93によって第1通気材原反5と第2通気材原反4及び第2シート原反2とを、第1シート部材を囲むように、ホットメルト等の接着剤、ヒートシール、超音波シール等によって接合し、シート状複合体を作製する。必要に応じて、間に挟んだ第1シート部材についても、ホットメルト等の接着剤、ヒートシール、超音波シール等によって接合する。第2シート原反2は、シート状複合体において、第2通気材原反4より外側に配置されている。
【0019】
・シート状中間体を作製する工程(IV)
次いで、その後、シート状複合体について、第1シート部材の周縁外方をこれより大きなL字形状になるように接合された接合部の外側を、切断機94により切断する。これにより、この接合部分に囲まれて、第1通気材部材と第2通気材部材及び第2シート部材とに内包された第1シート部材を有するシート状中間体が得られる。このシート状中間体1A〜1Dが、本実施形態においては、蒸気温熱複合体となる(図4(b)参照)。ここで得られる4つのシート状中間体1A〜1Dの輪郭はすべてが同形状とされている。
【0020】
・シート状中間体を移載する工程(V)
図1の(V)において、シート状中間体を載せる第3シート原反3は、巻回されているロール63から繰り出され、搬送路に沿って搬送された後、所定位置で水平に搬送される。前述の工程で切断されて得られたシート状中間体1A〜1Dを、移載手段95により、水平状態となった第3シート原反3に移載する。このとき、4つ1組のシート状中間体1A〜1Dのうち、前方の左右2つのシート状中間体1Bと1Dは移動させずに、また左右の間を開けずに、第3シート原反3に配置される。さらに本実施形態においては、同移載手段95により、後方の左右2つのシート状中間体1Aと1Cの左右を入れ替える配置変更を行い、シート状中間体1Bと1Dと間隔をあけ、また左右の間を開けずに、第3シート原反3への配置を行なう。これらの操作は、例えば、上述した移載手段92と同様の機構を有する装置を利用することができる。ただし、ここでの移載作業は、移動および左右の入れ替えのみであるため、より簡素化した機構の装置を適用することができる。第3シート原反3とシート状中間体1A〜1Dとは接合機(図示せず)でホットメルト等の接着剤、ヒートシール、超音波シール等により接合される。
【0021】
本実施形態において重要な利点を挙げると、第3シート原反3に接合された各シート状中間体1A〜1Dについて、第2通気部材4上の第2シート部材2の繊維の目の方向(繊維の配向方向)が搬送方向(MD方向)で一致していることである。上述のように、第3シート原反3に載置するときの移載においては、互いの位置関係を変更したシート状中間体1Aと1Cとは、CD方向における位置を入れ替える配置変更のみを行っている。したがって、MD方向からCD方向に向きを90°変えるような位置変更はない。そのため本実施形態において最終的に製造される目元温熱マスク10(10A、10B)において(図4(c)参照)、部材の形状だけでなく、部材の繊維の目の方向も揃った製品とすることができる。特に目元温熱マスクは人の顔に当てて使用するため、デリケートに着用感や蒸気温熱効能に影響を与えることがあるため、上記のように繊維の目までもがそろうことが特に効果的である。
【0022】
・第3シート原反を切断する工程(VI)
図1の(VI)で、第3シート原反3及びシート状中間体が接合されて搬送される状態において、シート状中間体の輪郭より広い任意の輪郭で、切断機96により切断して、シート状成形体10を得る。本実施形態においては、シート状成形体10には、2つのシート状中間体が接合されており、得られたシート状成形体10は、目元温熱マスク10(10A、10B)である(図4(c)参照)。したがって、通常は、第3シート原反3を切断する輪郭が、製品の輪郭であり、製品として孔や切り込みなどが必要であれば、同時に形成する。得られたシート状成形体10は、図示しないベルトコンベア等に受け渡し、例えば袋収容工程に搬送する。更に、必要な他のシート部材等を重ねて接合し、連続的にシート状成形体を製造してもよい。切断機96は、工程(I)の切断機91、94と同様のものを利用することができる。
【0023】
[第1シート部材の形状、移載、及び回転]
本発明のシート状成形体の製造方法において、前述の第1シート部材を回転移載する工程(II)について、回転及び移載における実施態様の詳細を、図2に基づいて説明する。また、第1シート部材の形状についても、図2に基づいて説明する。同図に示した第1シート部材1a〜1dは上記図1に基づいて説明した第1シート部材に相当する。なお、理解しやすいように、第1シート部材のやや長くクランクした方に丸印を付し、第1シート部材1a、1bを黒色で示した。
【0024】
本発明のシート状成形体の製造方法の一実施態様では、図2(a)に示されたように、第1シート部材1a、1b、1c、1dは、第1シート原反から前後方向で実質的に連続して切り出されている。本発明において「実質的に連続して切り出す」とは、回転移載工程における製造条件の制約を考慮して各部材の形状が定められ、大きな余剰部を残して切り出されるものではないことを意味する。したがって、別の理由で各部材間に隙間がある場合を含む意味であり、歩留りを良化させる観点からは隙間なく連続して切断されることが好ましい。
【0025】
第1シート部材1a、1b、1c、1dは、それぞれ、非対称形(非線対称であり、かつ、非点対称である)の形状であり、好ましくは、全体において、クランク形状でありながら、点対称ではない。また、本実施形態においては、第1シート部材1a〜1dが、第1シート原反1から切り出された初期配置において前後左右の4つを1組にして、左右において線対称かつ前後において同形になるように配置されている。つまり、第1シート部材1a及び1dを中心線c(図示せず)を軸にして線対称に回転させると、それぞれ第1シート部材1c及び1bと重なる関係とされている。他方、後方の第1シート部材1a及び1cを前に送ると、前方の第1シート部材1d及び1bと重なるようにされている。なお、ここでの説明においては、図2の工程(a)〜(e)に進む方向、つまり搬送方向を前その逆を後ろとし(MD方向)、これに直交する方向を左右(CD方向)として説明している。また、搬送方向の前を下流、後ろを上流と称する場合もある。なお、中心線cは、第1シート原反1の幅方向の中心線であるが、第1シート部材1a、1dと第1シート部材1c、1bとを区分する線であればよく、第1シート原反1の厳密な幅方向(CD方向)中心でなくてよい。
【0026】
その後、図2(a)に示された1組の第1シート部材1a〜1dを、移載手段92に設置された把持具(図示せず)により把持し、把持具の各間隔を広げることで、図2(b)に示されたように、第1シート部材1a〜1dを、中心線cから離れる方向であり、かつ前後に分かれる方向に離隔させる。
【0027】
次に、図2(c)に示されたように、移載手段92を、90°軸回転させる。そして、このようにして回転された対角に位置する2つの第1シート部材1a、1bを、搬送されてくる第1通気材原反5(図1参照)の上に載置する。なお、図2(c)〜図2(e)において、説明の簡略化のため、第1通気材原反5の図示は省略する。
【0028】
残る2つの第1シート部材1c、1dは把持状態を解かず、さらに同方向又は逆方向に180°回転させる。この回転された残る2つの対角に位置する第1シート部材1c、1dを第1シート原反5の上に載置する。そうすると、図2(d)に示されたように、載置済みの2つの第1シート部材1a、1bの左右にそれぞれ並ぶように第1シート部材1c,1dが第1通気材原反5の上に配置される。
【0029】
本実施形態においては、さらに後方にある第1シート部材1a、1bの左右を入れ替える配置変更を行う。これは、図1に示した実施形態ではシート状中間体に対して行う工程であるが、説明の簡略化のため、そのまま第1シート部材の配置が変更されたものとして説明している。このように左右の配置変更を行うことにより、左右2つの第1シート部材ないしそれを包含するシート状中間体は前後において線対称とされ、これを軸回転させて一致する配置形態とされている。したがって、上述のとおり、図4(c)に示したような最終製品としたときに、工程の流れ方向(MD方向)に向け、同一形状の製品を多数連続して製造することができる。
【0030】
本実施形態においては、以上により、第1シート部材ないしこれを包含するシート状中間体の回転及び移載が完了する。すなわち、本実施形態のシート状成形体の製造方法においては、非対称形のシート部材を2つ組み合わせた同一形状の最終製品を連続的に得るために、4つの第1シート部材を同時に扱い2回の回転移載動作及び1回の左右配置変更のみで構成することができるため、設備の簡素化において極めて効果的となる。更に、第1シート部材を前後・左右方向で隙間無く連続して得ることが可能であり、材料に生じる無駄を大幅に低減することができる。
【0031】
次に、回転移載工程の変形例を、図3に基づいて説明する。同図に示したとおり、第1シート原反1から連続して切断される第1組の第1シート部材1a、1b、1c、1d、第2組の第1シート部材1a、1b、1c、1d、及び第3組の第1シート部材1a、1b、1c、1dを、この順に第1通気材原反5の上に移載する様子を示している。実際の製造工程ではさらに第1シート部材が多数連続して搬出されてくるが、この3組の操作を順次行うことで、連続的に部材の回転移載を継続することができる。
【0032】
図示した例では、図3(a)に示す第1シート原反1から切断された第1組の第1シート部材1a、1b、1c、1dについて、図3(b)に示したように、2つの第1シート部材1b、1dと、2つの第1シート部材1a、1cとは、前後方向に離して回転され、第1通気材原反5の上に移載されている。この課程は、図2(a)〜図2(d)の過程と同じである。把持した第1シート部材1a、1b、1c、1dについて、90度軸回転を行ない、対角に位置する第1シート部材1a、1bを第1通気材原反5に載置し、把持したままの対角に位置する第1シート部材1c、1dを更に180度回転し、第1通気材原反5に載置する。第1シート部材1b、1dと、2つの第1シート部材1a、1cとを前後方向に離す距離については、2つの第1シート部材が搬送方向(MD方向)に収まる距離とされる。つまり、図3(c)でいえば、先に載置済みの第1シート部材の左右1対と(一転鎖線で示した。)、第2組の第1シート部材1b、1dの左右1対とが、その間に載置される間隔とされている。すなわち、図2(b)で示す第1シート部材の離隔を行なう際に、前後方向であるMD方向には、おおよそ2つおきとなるように離す。第1通気材原反5は、間欠的に搬送され、第1組の第1シート部材の載置中には停止状態とし、第2組の第1シート部材の載置前に所定距離進めておくのが好ましい。
【0033】
次に、上記の回転及び移載の動作を、第2組の第1シート部材1a、1b、1c、1dに対して行う。上記の回転及び移載の動作により、図3(c)のように、第2組の第1シート部材1b、1dを第1組の第1シート部材1a、1cの搬送方向の下流で、且つ先に載置済みの一転鎖線で示した第1シート部材の左右1対の上流に載置し、第2組の第1シート部材1a、1cを離した場所に載置する。
さらに、第3組の第1シート部材1a、1b、1c、1dに対して、上記の回転及び移載の動作を同様に行う。図3(d)のように、第3組の第1シート部材1b、1dを、第1組の第1シート部材1a、1cと第2組の第1シート部材1a、1cの間に載置し、第3組の第1シート部材1a、1cを離した場所に載置する。
【0034】
これにより、上記3つの組の第1シート部材において、所望の位置に回転移載し配置することができる。更に、このようにして配置された第1シート部材について、MD方向にみて離間させ、必要に応じて、その1つおきに左右を配置変更する操作を行うことで、図2(d)に示した最終配置の第1シート部材が連続して得られることとなる。
【0035】
当該変形例のように1つの組の前後の第1シート部材を離間させてその間に次の組の第1シート部材の一部を組み入れるような回転移載を連続して行うことにより、図4(b)のように第1シート部材及び第1通気部材5と第2通気部材4、第2シート部材とで構成される抄紙温熱複合体(シート状中間体)1A〜1Dを可能な限り連続して並べることが可能となり、第1通気部材5と第2通気部材4についても、生じる無駄を可能な限り低減することができる。
【0036】
[目元温熱マスクの製造]
以下に、図4及び図5に基づいて、本発明の製造方法の一実施例として目元温熱マスクを製造する実施形態についてさらに詳しく説明する。
最終製品となる目元温熱マスク10(10A、10B)には、左右の目の位置に一対の孔が開けられ、更に、左右の耳に掛けるための一対の孔が開けられている。さらに鼻の位置に合わせて切り込みが入れられている。目元温熱マスク10の全体の輪郭は、第3シート原反3より切断された第3シート部材(3A,3B)から形成されている。頬の上部では、目の下の部分と、目じりからこめかみまでのやや縦長の部分とを一体にしたクランク形状の部分に蒸気温熱手段を備える。蒸気温熱手段としては、内包された第1シート部材1a、1b、1c、1dたる抄紙温熱シートが採用されている。さらに、この第1シート部材が第1通気材部材5a、5b、5c、5dおよび第2通気材部材4a、4b、4c、45dに挟持され、そこに第2シート部材2a、2b、2c、2dが配設されて、抄紙温熱複合体1A、1B、1C、1Dが構成されている。この第2シート部材の繊維の目が製品間で揃っている利点は、先に述べたとおりである。
【0037】
[材料]
第1シート部材としては、抄紙温熱シートとすることにより、得られるシート状成形体を蒸気温熱するシート状製品として、様々な用途に使用することができる。なお、第1シート部材を抄紙温熱シートとする場合は、不活性ガス雰囲気内に組み立てた装置において実施することが好ましい。抄紙温熱シートは、特開2003−102761号公報に記載によるものを用いることができる。
【0038】
第1通気材部材5及び第2通気材部材4は、透湿性フィルム又は通気性フィルムから構成することができる。透湿性フィルムは、熱可塑性樹脂と無機フィラーとを溶融混練して押し出した溶融物をフィルム状に成形し、成形されたフィルムを一軸又は二軸延伸することで製造される。透湿性フィルムの透湿度(JIS Z0208、40℃、90%RH)は、200〜5000g/(m2・24hr)、特に500〜1000g/(m2・24hr)であることが好ましいが、透湿度(JIS Z0208で規定)及び通気度(JIS P8117で規定)は、抄紙温熱シートの組成や量、使用形態により適宜選定される。製品の肌触りを良好にする目的で、透湿性フィルムの外面に不織布等、風合いの良好なシート部材をラミネートしてもよい。厚さについては、間に挟む第1シート部材の厚さ及び質量を考慮し、適宜決定する。また、大きさは、第1シート部材より0.5〜5mm程度の幅で輪郭を囲むようにすることが好ましい。
【0039】
第2シート部材2及び第3シート部材3としては、不織布、織布、ガーゼ、紙、網状体、フェルト等が使用可能である。前述した一実施例である目元温熱マスクのように、得られるシート状成形体を、蒸気温熱するシート状製品とするためには、特に、不織布が好適である。不織布としては、坪量が低い不織布、例えば、坪量が20〜200g/m2の不織布、更には坪量が50〜150g/m2の不織布が好ましい。不織布としては、各種公知の不織布を用いることができ、例えば、エアースルー不織布、エアレイド不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、ニードルパンチ不織布等が挙げられる。厚さについては、固定されるシート状中間体の厚さ及び質量を考慮し、適宜決定するが、第1通気材原反及び被覆シート原反と比して厚い方が、全体として凹凸が小さくなり、好適である。特に、第3シート部材は伸縮性を有するのが好ましい。
【0040】
本発明のシート状成形体の製造方法は、上述の実施態様に何ら制限されるものではなく本発明の趣旨を損なわない範囲で、適宜変更可能である。例えば、上述の第3シート原反を切断する工程(VI)とシート状中間体を移載する工程(V)の順序を入れ替え、先に第3シート部材3をマスク形状に切断しておき、そこに2つのシート状中間体を移載してもよい。
【0041】
また、本発明のシート状成形体の製造方法は、説明のために図示した実施態様を含め、特に制限はなく様々なシート状成形体について適用可能である。特に、回転移載工程の自由度を要する製品に適用することが好ましい。製造されるシート状成形体としては、例えば、化粧品、医療用品、日用品等の製品又はこれらの製品の一部として広く利用可能である。
【0042】
以上のように、図示した実施態様においては、2つの軸回転の後、2つの抄紙温熱複合体1A、1Cは、工程(V)において左右で配置変更し、前後左右ともに線対称の配置となる。これに対して、図示しないが、別の実施形態として工程(V)の移載、つまり、2つの抄紙温熱複合体1A、1Cの左右の入れ替えを行わず、左右のみにおいて線対称の配置で前後非線対称の製品形態(最終配置)としてもよい。例えば、抄紙温熱複合体1A、1Cの左右の入れ替えを行なわなかったものについては、顔サイズの小さな人用、または顎用として提供できる。顎用の場合には、第3シート部材に対し、耳に掛けるための一対の孔が開けられているものの、左右の目の位置に一対の孔に代わって口の位置に対応する開口または凹部が設けられる。
【0043】
・第1シート部材の形状
また、図示した本発明の実施態様においては、4つの第1シート部材1a、1b、1c、1dは、前後において同形でありかつ左右において鏡像関係にあり、4つの第1シート部材1a、1b、1c、1dが同一角度で回転して向きを変えられる。このような場合に本発明は好適であり、得られる2つのシート状成形体は、全く同一となる。
しかし、例えば、第1シート部材1aと第1シート部材1dとが同形でないか、第1シート部材1bと第1シート部材1cとが同形でないか、或いはいずれも異なる形状である場合には、得られる2つのシート状成形体が相互に異なり、かつ、それぞれが左右線対称ではない形状となる。従って、このように、4つの第1シート部材1a、1b、1c、1dの輪郭を変更したり、配置を変更することは、2つの異なるシート状成形体を1組として同時に製造する場合に好適である。
【0044】
第1通気材原反に対して、図2のように第1シート部材を回転移載して、第1シート部材を第1通気材原反5に配置および接合させ、第2シート部材2を積層していない第2通気材原反4をその上に積層し、図4(c)に示す第3シート部材3の形状と同様の、第1通気材原反5と第2通気材原反4との接合および切断を行ない、目元温熱マスク10を作製してもよい。この目元温熱マスク10は、マスクの全体形状を第1通気材部材4と第2通気材部材5とで構成し、第2シート部材2、第3シート部材3は具備していない。
【符号の説明】
【0045】
1 第1シート原反
1a、1b、1c、1d 第1シート部材(抄紙温熱シート)
1A、1B、1C、1D シート状中間体(抄紙温熱複合体)
2 第2シート原反
2A、2B、2C、2D 第2シート部材
3 第3シート原反
3A、3B 第3シート部材
4 第2通気材原反
4a 第2通気材部材
5 第1通気材原反
5a 第1通気材部材
61、63、64、65 原反ロール
91、94、96 切断機
92、95 移載手段
10、10A、10B シート状成形体(目元温熱マスク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非対称形のシート部材を回転及び移載し該シート部材の2つが左右対称に別のシート材に配置されたシート状成形体を連続して製造する方法であって、
前記シート部材を、初期配置において前後左右の4つを1組にして、左右において線対称かつ前後において同形になるようにシート原反から前後方向で実質的に連続して切り出すシート部材の切断工程、
前記1組のシート部材を移載手段により把持し軸回転させ、対角に位置する2つを、搬送方向にずれた位置で左右に載置し、
残る2つの対角に位置する前記シート部材を、前記移載手段により更に軸回転させ、前記載置済みの2つのシート部材の左右にそれぞれ並ぶように載置する回転移載工程を有するシート状成形体の製造方法。
【請求項2】
前記載置は、前記シート部材を、連続搬送されるシート状物に対して行なう請求項1に記載のシート状成形体の製造方法。
【請求項3】
前記回転移載工程において、4つ1組の前記非対称形のシート部材を前後に2つずつ離して載置し、前後に離した間には、先に載置された組のシート部材のうちの前方の2つと、後に載置する組のシート部材のうちの後方の2つとがそれぞれ載置される請求項1又は2に記載のシート状成形体の製造方法。
【請求項4】
前記載置された4つ1組の前記シート部材について、前の2つ又は後ろの2つを左右で配置の変更をする工程を有する請求項1〜3のいずれかに記載のシート状成形体の製造方法。
【請求項5】
実際は中間体にしてから後の左右を入れ替えますので。
前記シート部材の左右を配置の変更をする工程の後、その4つ1組のシート部材が各々区分されるように、該シート部材が載置されたシート状物を切断し、そのシート状物と前記シート部材とがなす4つのシート状中間体に区分する工程を有する請求項2〜4のいずれかに記載のシート状成形体の製造方法。
【請求項6】
前記非対称形のシート部材は、クランク形状である請求項1〜5のいずれか1項に記載のシート状成形体の製造方法。
【請求項7】
前記シート状中間体をさらに別のシート原反の上に載置する工程を有する請求項5又は6に記載のシート状成形体の製造方法。
【請求項8】
前記非対称形のシート部材は抄紙温熱シートである請求項1〜7のいずれか1項に記載のシート状成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−40192(P2012−40192A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184182(P2010−184182)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】