説明

シート状断熱材及びその製造方法

【課題】非常に安価に製造できるにも拘わらず十分な断熱性能を有し、また、汎用性が高く、しかも取り扱いが極めて容易なシート状断熱材を提供する。
【解決手段】第1のシート3a、第2のシート3b、及び、第3のシート3cの間に多数のコルクチップ2が挟持されて複数のコルクチップ層5,6が形成され、コルクチップ層5,6が、第2のシート3bによって仕切られ、コルクチップ層5,6を構成するコルクチップ2の90%以上が、一方のシート3に、接着剤を介して接触した状態となっており、コルクチップ層5,6が、挟持されるコルクチップ2の一粒分の厚さとなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コルクチップを使用したシート状の断熱材に関し、特に、工場設備や一般家屋等に対して適用することができ、取り扱いが極めて容易であり、簡単に施工することができるシート状断熱材、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
稼働時においてケーシングの表面が高温となるような機械、或いは、高温の液体や蒸気を供給するための配管を、工場の屋内に設置するような場合、熱が周囲へ放散されることを防止する目的で、ケーシングの表面や配管の外周面に、各種の断熱材を配設することが行われている。そのような工場設備等を対象として使用される断熱材として、ロックウール製、或いは、グラスウール製の断熱材が広く用いられている。
【0003】
また、一般家屋(戸建住宅や集合住宅等)においても、外気(冬季における冷気や夏季における暑気)の影響がなるべく室内に及ばないように、また、冷暖房効率の向上等を目的として、壁の内部にグラスウール製の断熱材を配設したり、床面の下地材として、コルク製のシート状断熱材を配設することなどが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−95067号公報
【特許文献2】特開昭62−33968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
グラスウール製の断熱材を機械のケーシングや配管周りに配設する作業には、ある程度の技術と経験が必要であり、一般の者には取り扱いが難しいため、通常は、専門の業者に依頼して行うことになる。従って、施工費用が嵩むという問題がある。また、工場全体を対象として大規模に施工を行う場合はともかく、断熱施工を行うべき箇所が、全体の中の一部分のみであるような場合や、機械のレイアウトの変更等に起因して、後発的に断熱施工を行う必要が生じたような場合においても、専門の業者に依頼しなければならないとすると、臨機応変な対応ができないという問題がある。このため、技術や経験に乏しい一般の者でも簡単に施工することができ、かつ、十分な断熱性能を有する断熱材の開発が望まれている。
【0006】
一方、一般家屋の床面の下地材等に使用されている従来のコルク製のシート状断熱材は、取り扱いが容易であるため、これを工場設備等を対象とする断熱施工に利用することも考えられる。しかしながら、従来のコルク製のシート状断熱材には、次のような問題がある。
【0007】
従来のコルク製のシート状断熱材は、通常、コルクチップにバインダーを添加して高圧でプレスし、シート状に成形することによって製造されている。この断熱材を、工場設備等の断熱施工に適用する場合、十分な断熱性能を得るには、相当程度の厚さにする必要があるため、大量のコルクチップが必要となり、原料コストが嵩んでしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、上記のような従来技術における問題を解決すべくなされたものであって、十分な断熱性能を有し、また、汎用性が高く、しかも取り扱いが極めて容易なシート状断熱材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るシート状断熱材は、複数のシート間に多数のコルクチップが挟持されて複数のコルクチップ層が形成されてなるものであって、コルクチップ層が、シートのうち、中間に位置するシートによって仕切られることによってそれぞれ個別に形成され、コルクチップ層のうち、少なくとも一つのコルクチップ層を構成するコルクチップの90%以上が、それらを挟持するシートのうちの一方のシートに、接着剤を介して接触した状態となっており、コルクチップ層が、挟持されるコルクチップ一粒分の厚さとなっていることを特徴としている。
【0010】
ここに言う「接着剤を介して接触」とは、コルクチップとシートとが接着剤以外の物(他のコルクチップを含む)を介在させることなく接触している状態(コルクチップとシートとが直接的に接触している状態をも含む)を意味し、コルクチップが層の厚さ方向に積み重なっているような状態を排除する趣旨である。また、「コルクチップ層が、挟持されるコルクチップ一粒分の厚さとなっている」ということは、一方のシート(例えば第1のシート)に対して接着剤を介して接触しているコルクチップと、他方のシート(例えば第2のシート)との間に、一方のシート(例えば第1のシート)に対して接触していないコルクチップが殆ど介在していない(或いは、介在していたとしても全体の10%未満である)、という状態を意味している。
【0011】
尚、シートのうち、最も外側に位置する2枚のシートの少なくともいずれか一方が、耐熱性及び可撓性を有するガラスクロスによって、又は、ガラスクロスにアルミ箔を貼り付けたものによって構成されていることが好ましい。
【0012】
本発明に係るシート状断熱材の製造方法は、第1のシートの上面に接着剤を均一に塗布し、その上にコルクチップを散布して接着し、次に、散布したコルクチップのうち、第1のシートに対し、接着剤を介して接触していないものを除去し、それらのコルクチップの上に接着剤を塗布し、その上に第2のシートを被せて、第1のシート上のコルクチップと第2のシートとを接着することにより、第1のシートと第2のシートとの間に、コルクチップ一粒分の厚さのコルクチップ層を形成することを特徴としている。
【0013】
尚、この場合、第2のシートの上面に接着剤を均一に塗布し、その上にコルクチップを散布して接着し、次に、散布したコルクチップのうち、第2のシートに対し、接着剤を介して接触していないものを除去し、コルクチップが接着された状態の第2のシートを、第1のシート上に接着されたコルクチップの上に接着することが好ましい。
【0014】
また、本発明に係るシート状断熱材を用いた断熱施工方法は、上記シート状断熱材を、対象物表面に対して、両面テープによって貼り付けることを特徴としている。尚、曲面を有する対象物に対して断熱施工を行う場合には、上記シート状断熱材を短冊状に裁断し、対象物表面に対し、短冊状のシート状断熱材を、曲率中心線に対し長手方向が一致する向きで周方向に隣接するように貼り付ける。
【発明の効果】
【0015】
本発明のシート状断熱材は、取り扱いが極めて容易で、技術や経験に乏しい一般の者でも簡単に施工することができる。従って、施工コストを大幅に縮減することができる。また、厚さ寸法を小さく設定した場合(例えば、4.5〜6.5mm程度)であっても、層間に大きな空隙を多数形成することができ、それらの空隙(空気層)により、非常に優れた断熱効果を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係るシート状断熱材1の断面図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施形態に係るシート状断熱材1の他の構成例を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の第3の実施形態に係るシート状断熱材1の施工方法の説明図である。
【図4】図4は、従来のシート状断熱材31の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面に沿って本発明の実施形態について説明する。まず、第1の実施形態として、本発明に係る「シート状断熱材」について説明する。図1は、本発明に係るシート状断熱材1の断面図である。このシート状断熱材1は、図示されているように、第1のシート3aと第2のシート3bとの間、及び、第2のシート3bと第3のシート3cとの間に、それぞれ多数のコルクチップ2(2a,2b)を挟持させてなるものである。つまり、このシート状断熱材1においては、三枚のシート3の間に、下層側コルクチップ層5と上層側コルクチップ層6とが、中間に位置する第2のシート3bによって仕切られる形で、それぞれ個別に形成されている。
【0018】
これらのうち、第1のシート3a、第2のシート3b、及び、第3のシート3cは、いずれも可撓性と耐熱性を有する素材(本実施形態においては、ガラスクロス)によって形成されている。一方、コルクチップ2は、原料コルク材を粉砕して得られたものであり、本実施形態においては、粒径3mm(±1mm)のものが使用されている。
【0019】
本実施形態の特徴は、第1のシート3aと第2のシート3bとの間(下層側コルクチップ層5)の殆ど(90%以上)のコルクチップ2aが、第1のシート3aに対して接着剤を介して接触し、また、第2のシート3bと第3のシート3cとの間(上層側コルクチップ層6)の殆ど(90%以上)のコルクチップ2bが、第2のシート3bに対して接着剤を介して接触した状態となっており、下層側コルクチップ層5、及び、上層側コルクチップ層6がいずれも、コルクチップ2の一粒分の厚さとなっている。
【0020】
尚、ここに言う「接着剤を介して接触」とは、コルクチップ2とシート3とが接着剤以外の物(他のコルクチップ2を含む)を介在させることなく接触している状態(コルクチップ2とシート3とが直接的に接触している状態をも含む)を意味し、コルクチップ2が層の厚さ方向に積み重なっているような状態を排除する趣旨である。また、「下層側コルクチップ層5、及び、上層側コルクチップ層6がいずれも、コルクチップ2の一粒分の厚さとなっている」ということは、第1のシート3aに対して接着剤を介して接触しているコルクチップ2aと、第2のシート3bとの間に、第1のシート3aに対して接触していないコルクチップが殆ど介在せず(或いは、介在していたとしても全体の10%未満であり)、第2のシート3bに対して接着剤を介して接触しているコルクチップ2bと、第3のシート3cとの間に、第2のシート3bに対して接触していないコルクチップが殆ど介在していない(或いは、介在していたとしても全体の10%未満である)、という状態を意味している。
【0021】
コルクチップ2の粒径は、上述の通り「3mm」としているが、各粒は球形ではなく、異形であるため、現実には、すべてのコルクチップ2の粒径を正確に3mmに揃えることはできず、粒径3mmのものを中心として、ある範囲内で上下することになる。従って、シート3に接着されているコルクチップ2の上に、接着されていないコルクチップ2が層の厚さ方向に積み重なっていない状態としてコルクチップ層5,6を形成した場合、その厚さは、接着されているコルクチップ2の粒径に応じて部分的に上下することになり、正確に3mmとはならない。そこで、コルクチップ層5,6の厚さについて、ここでは「コルクチップ2の一粒分」と表現している。
【0022】
本実施形態のシート状断熱材1は、かかる特徴的な構成により、各シート3間に大きな空隙4を多数形成することができ、それらの空隙4(空気層)により高い断熱効果を期待することができる。この点についてより詳細に説明すると、例えば図4に示すように、二枚のシート33(下層側シート33a、上層側シート33b)の間に、本実施形態のシート状断熱材1において用いられているコルクチップ2と同量のコルクチップ32を挟持させてシート状断熱材31を形成した場合、下層側シート33aに接触している下層側のコルクチップ32aと、これに隣接するコルクチップ32aとによって形成される隙間に、上層側のコルクチップ32bが入り込んでしまい、シート33間において、十分な量の空隙34を形成することができない。
【0023】
特に、コルクチップを用いてシート状断熱材を製造する場合、コルクチップとシートとがしっかりと接着されるように、シート間にコルクチップを挟み込んだ後、圧力をかけてシートとコルクチップを圧着する工程が必要となるが、図4のシート状断熱材31を製造する際には、下層のコルクチップ32aと上層のコルクチップ32bとの間に接着剤が塗布されることになるため、圧着工程を実行すると、下層のコルクチップ32aと上層のコルクチップ32bとが圧縮された状態で接着されることになり、その結果、コルクチップ32a,32b間に形成される空隙は、非常に小さくなってしまう。
【0024】
これに対し、本実施形態においては、下層側コルクチップ層5と上層側コルクチップ層6とが、第2のシート3bによって仕切られることになり、圧着工程を実行した場合でも、下層側コルクチップ層5のコルクチップ2aと、これに隣接するコルクチップ2aとによって形成される隙間に、上層側のコルクチップ2bが進入してしまうことを好適に回避することができ、その結果、第1のシート3aと第3のシート3cとの間に、十分な量の空隙4を形成することができる。
【0025】
コルクチップ2の原料となるコルク材は、スポンジ状の構造となっており、内部にたくさんの気泡を有しているため、それだけでも高い断熱性を有しているが、空気層の方がより高い断熱性を有している。従って、コルクチップを用いて断熱材を形成する場合には、層の中に形成される空隙が大きいほど、断熱効果は高くなる。図4に示した従来のシート状断熱材31と、図1に示した本実施形態のシート状断熱材1とを比較すると、同量のコルクチップ2(32)を使用した場合、本実施形態のシート状断熱材1の方が、図4のシート状断熱材31よりも、より大きな空隙4を、より多く形成することができ、このため、より優れた断熱効果を期待することができる。また、本実施形態のシート状断熱材1において使用するコルクチップ2の量は、図4の従来のシート状断熱材31よりも相対的に少なくて済む。
【0026】
尚、本実施形態においては、上述の通り、下層側コルクチップ層5の殆どのコルクチップ2aが、第1のシート3aに対して接着剤を介して接触し、また、上層側コルクチップ層6の殆どのコルクチップ2bが、第2のシート3bに対して接着剤を介して接触した状態となっているが、下層側コルクチップ層5のコルクチップ2aについては、接着されるシート3を、第2のシート3bとしてもよく、また、上層側コルクチップ層6のコルクチップ2bについては、第3のシート3cに接着されるように構成してもよい。
【0027】
また、本実施形態においては、三枚のシート3の間に、それぞれ下層側コルクチップ層5と、上層側コルクチップ層6とが形成されたシート状断熱材1について説明したが、シートを一枚、コルクチップ層を一層追加し、図2に示すように、四枚のシート3の間に、それぞれ下層側コルクチップ層5、中間コルクチップ層7、上層側コルクチップ層6を形成するようにしてもよい。また、図2のシート状断熱材1に対し、更にシートとコルクチップ層を追加して、コルクチップ層が四層の、或いは、五層以上のシート状断熱材とすることもできる。これらの場合も、各コルクチップ層は、使用されるコルクチップの一粒分の厚さとする。
【0028】
また、本実施形態においては、シート3として、ガラスクロスが用いられているが、ガラスクロスの一方の面(コルクチップ2が接着される側の面)、或いは、両面に、アルミ箔を貼り付けたものを用いることもできる。この場合、空気がシート3を通過することを阻止することができ、空気の自然対流による熱移動(熱伝達)を好適に防止できるという効果を期待することができ、ガラスクロスを単体で用いた場合よりも断熱性能を向上させることができる。
【0029】
シート3の素材は、必ずしもガラスクロスには限定されず、可撓性を有するとともに、耐熱性を有するものであれば、他の素材を用いることもできる。また、三枚のシート3のすべてを同一の素材のものに揃える必要はなく、第1のシート3aについてはガラスクロスとし、第2のシート3b、及び、第3のシート3cについては、他の素材とすることもできる。一方コルクチップ2としては、本実施形態においては、粒径3mmのものが使用されているが、それ以上大きいもの、また、それ以上小さいものを用いることもできる。
【0030】
次に、本発明の第2の実施形態として、図1に示したシート状断熱材1の製造方法について説明する。まず、第1のシート3aの上面に接着剤を均一に塗布し、その上にコルクチップ2aを散布して接着する。次に、散布したコルクチップ2aのうち、第1のシート3aに対し、接着剤を介して接触していないもの(余剰分)を除去する。余剰分の除去は、例えば、ブロワにより、散布したコルクチップ2aに向けてエアーを吹き付けて余剰分を第1のシート3a上から吹き飛ばすようにしてもよいし、第1のシート3aを傾け、或いは、裏返して、第1のシート3aの下面側から振動乃至は衝撃を与えて、余剰分を脱落させるようにしてもよい。
【0031】
余剰分の除去を行うと、第1のシート3a上には、接着剤を介して第1のシート3aに接触した状態のコルクチップ2aのみが残留する。そして、それらのコルクチップ2aの上に接着剤を塗布し、その上に第2のシート3bを被せて、コルクチップ2aと第2のシート3bとを接着する。尚、コルクチップ2aと第2のシート3bとを接着するための接着剤を塗布する前に、コルクチップ2aが第1のシート3aに対して、より安定した接着状態となるように、合成樹脂剤(接着剤)を塗布するようにしてもよい。
【0032】
続いて、第2のシート3bに対しても、第1のシート3aと同様の工程(第2のシート3bへの接着剤の塗布、コルクチップ2bの散布及び接着、余剰分の除去、残留コルクチップ2bへの接着剤の塗布)を実行する。そして、コルクチップ2bの上に第3のシート3cを被せて、コルクチップ2bと第3のシート3cとを接着し、最後に圧着工程を実行して、三枚のシート3とコルクチップ2とをしっかりと接着する。
【0033】
このような方法によってシート状断熱材1を製造した場合、下層側コルクチップ層5のすべてのコルクチップ2aが、第1のシート3aに対して接着剤を介して接触し、かつ、上層側コルクチップ層6のすべてのコルクチップ2bが、第2のシート3bに対して接着剤を介して接触した状態となり、下層側コルクチップ層5、及び、上層側コルクチップ層6が、いずれもコルクチップ2の一粒分の厚さとなる。
【0034】
尚、第2のシート3bの上面への接着剤の塗布、又は、コルクチップ2bの散布・接着・余剰分の除去は、第2のシート3bを下層側コルクチップ層5の上に接着する前に予め行ってもよい。また、第2のシート3bの下面へ接着剤を塗布しておいて、第2のシート3bと下層側コルクチップ層5とを接着するようにしてもよい。第3のシート3cと上層側コルクチップ層6との接着についても同様である。
【0035】
更に、第1のシート3a上に下層側コルクチップ層5を形成するとともに、第2のシート3b上に上層側コルクチップ層6を形成し、それらを貼り合わせ、最上層に第3のシート3cを貼り付けることによって、シート状断熱材1を製造するようにしてもよい。
【0036】
また、第1のシート3a上に下層側コルクチップ層5を形成するとともに、第3のシート3c上に上層側コルクチップ層6を形成し、下層側コルクチップ層5の上に第2のシート3bを貼り付け、その上に、第3のシート3cを裏返して(上層側コルクチップ層6が下側となるようにして)貼り付けるようにしてもよい。
【0037】
更に、第2のシート3bの下面にコルクチップ2aを接着して下層側コルクチップ層5を形成し、上面にコルクチップ2bを接着して上層側コルクチップ層6を形成し、これを第1のシート3a及び第3のシート3cによって挟み込むように貼り合わせてシート状断熱材1を構成してもよい。
【0038】
次に、本発明の第3の実施形態として、図1に示したシート状断熱材1を用いた断熱施工方法について説明する。工場等に設置されている機械のケーシングに対し、図1のシート状断熱材1を用いて断熱施工を行う場合、極めて簡単な作業のみで実施することができる。具体的には、適切なサイズ(例えば、30×60cm)に裁断したシート状断熱材1を必要枚数分用意し、そのいずれか一方の面(第1のシート3a又は第3のシート3cの外側面)に耐熱性を有する両面テープを貼り、施工対象となるケーシングの表面に貼り付けるだけでよい。このように、本実施形態において使用するシート状断熱材1は、非常に取り扱いが容易であり、技術や経験に乏しい一般の者でも簡単に施工することができる。
【0039】
本実施形態において使用するシート状断熱材1は、6mm程度、或いは、4mm程度の厚さとした場合であっても十分な断熱性能を有している。
【0040】
尚、例えば、外径20cm以下の配管の外周面等に対して断熱施工を行う場合には、シート状断熱材1を、幅5cm程度の短冊状に裁断し、図3に示すように、配管8の外周面8aに両面テープ9を貼り付け、その上から短冊状のシート状断熱材1を、曲率中心線(配管8の軸線)に対して長手方向が一致する向きで、周方向に隣接するように貼り付けていく。或いは、配管8を覆うことができる大きさのシート(ガラスクロス)に、短冊状のシート状断熱材1を並べて貼り付け、短冊状のシート状断熱材1が、図3に示す向きと同じになるように配管8の外周面に貼り付ける。
【0041】
このような方法によれば、断熱施工の対象面が、曲率の小さい曲面で構成される場合であっても、シート状断熱材1を対象面に対して好適に追随させることができ、しかも、極めて簡単に施工することができる。
【0042】
以下、本発明に係るシート状断熱材1の断熱性能について、本発明の発明者らが行った試験の結果を、実施例1として説明する。
【実施例1】
【0043】
まず、図1に示したシート状断熱材1を6種類(本発明A〜F)用意し、それぞれを、施工対象となる機械のケーシング(炉鉄板)の表面に、両面テープを用いて貼り付け、施工前の温度(ケーシングの表面温度)と、施工後の温度(シート状断熱材の外側表面の温度)とをそれぞれ計測した(表1)。尚、本発明A〜Fのいずれにおいても、シート3として、ガラスクロスにアルミ箔を貼り付けたものを使用した。また、本発明A〜Fにおいて使用したコルクチップの詳細は次の通りである。
本発明A: ポルトガル産コルク(粒径2mm)
本発明B: 中国産コルク(粒径2mm)
本発明C: ポルトガル産コルク(粒径2mm)
本発明D: 炭化コルク(粒径2mm)
本発明E: ポルトガル産コルク(粒径3mm)
本発明F: 炭化コルク(粒径3mm)
【0044】
【表1】

【0045】
表1の結果からも明らかなように、本発明A〜Fは、いずれも優れた断熱性能を有していることが確認された。
【符号の説明】
【0046】
1:シート状断熱材、
2,2a,2b:コルクチップ、
3:シート、
3a:第1のシート、
3b:第2のシート、
3c:第3のシート、
4:空隙、
5:下層側コルクチップ層、
6:上層側コルクチップ層、
7:中間コルクチップ層、
8:配管、
8a:外周面、
9:両面テープ、
31:シート状断熱材、
32,32a,32b:コルクチップ、
33:シート、
33a:下層側シート、
33b:上層側シート、
34:空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシート間に多数のコルクチップが挟持されて複数のコルクチップ層が形成されてなるシート状断熱材であって、
前記コルクチップ層が、前記シートのうち、中間に位置するシートによって仕切られることによってそれぞれ個別に形成され、
前記コルクチップ層のうち、少なくとも一つのコルクチップ層を構成するコルクチップの90%以上が、それらを挟持するシートのうちの一方のシートに、接着剤を介して接触した状態となっており、当該コルクチップ層が、挟持されるコルクチップ一粒分の厚さとなっていることを特徴とするシート状断熱材。
【請求項2】
前記シートのうち、最も外側に位置する2枚のシートの少なくともいずれか一方が、ガラスクロスによって構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のシート状断熱材。
【請求項3】
前記シートのうち、最も外側に位置する2枚のシートの少なくともいずれか一方が、ガラスクロスのコルクチップ層側となる面にアルミ箔を貼り付けることによって構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のシート状断熱材。
【請求項4】
請求項1に記載のシート状断熱材を製造するための方法であって、
第1のシートの上面に接着剤を均一に塗布し、その上にコルクチップを散布して接着し、
次に、散布したコルクチップのうち、前記第1のシートに対し、接着剤を介して接触していないものを除去し、
それらのコルクチップの上に接着剤を塗布し、その上に第2のシートを被せて、前記第1のシート上のコルクチップと第2のシートとを接着することにより、
前記第1のシートと前記第2のシートとの間に、コルクチップ一粒分の厚さのコルクチップ層を形成することを特徴とするシート状断熱材の製造方法。
【請求項5】
前記第2のシートの上面に接着剤を均一に塗布し、その上にコルクチップを散布して接着し、
次に、散布したコルクチップのうち、前記第2のシートに対し、接着剤を介して接触していないものを除去し、
前記コルクチップが接着された状態の第2のシートを、前記第1のシート上に接着されたコルクチップの上に接着することを特徴とする、請求項4に記載のシート状断熱材の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載のシート状断熱材を用いて、対象物に対して断熱施工を行う方法であって、
前記シート状断熱材を、対象物表面に対して、両面テープによって貼り付けることを特徴とする断熱施工方法。
【請求項7】
請求項1に記載のシート状断熱材を用いて、曲面を有する対象物に対して断熱施工を行う方法であって、
前記シート状断熱材を短冊状に裁断し、対象物表面に対し、前記短冊状のシート状断熱材を、所定方向に隣接するように貼り付けることを特徴とする断熱施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−241556(P2011−241556A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112722(P2010−112722)
【出願日】平成22年5月16日(2010.5.16)
【出願人】(510136220)富士工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】