説明

シート穿孔装置と画像形成装置

【課題】パンチ屑を強制的に排出すること。
【解決手段】シート穿孔装置は、ダイ孔210cを有して回転駆動されるダイ210と、ダイ孔に入出してシートに孔をあけるパンチ230と、ダイ孔に設けられて、ダイが回転してパンチから離れた状態でダイ孔から突出可能な屑プッシャ281と、ダイの回転径方向の内側に位置して、ダイとの相対回転によって移動体をダイ孔から突出させるプッシャカム283と、を備え、屑プッシャは、プッシャカムによってダイ孔から突出して、ダイ孔内のパンチ屑を排出するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを穿孔するシート穿孔装置と、このシート穿孔装置を装置本体に備えた画像形成装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートに画像を形成する画像形成装置は、装置本体にシートを穿孔するシート穿孔装置を装備しているものがある。
【0003】
シート穿孔装置には、ダイとパンチを同時に回転させてシートを穿孔するロータリ式(特許文献1)がある。
【0004】
特許文献1に記載のシート穿孔装置は、円板状のコロの厚み内の照射方向に形成された穴の入口にダイス刃を設けた構造になっている。そして、ダイス刃に詰まったパンチ屑を排出するため、穴内に球体を移動自在に有し、コロの回転による球体の自重を利用してパンチ屑を排出するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−179690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の特許文献1に記載のシート穿孔装置は、球体の自重を利用してパンチ屑を押し出すため、一旦、パンチ屑が詰まると、その後、パンチ屑を押し出すのが困難になり、パンチ屑を除去できないことがある。特に、厚紙のパンチ屑は詰まり易い。このような場合、その後のシート穿孔装置の動作に支障をきたすため、シート穿孔装置を一旦止めて、パンチ屑を除去する作業を行う必要があり、シート穿孔装置の穿孔効率を低下させる原因となっていた。
【0007】
本発明は、パンチ屑を矯正的に排出できるシート穿孔装置と、このシート穿孔装置を備えた画像形成装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のシート穿孔装置は、ダイ孔を有して回転駆動されるダイと、前記ダイ孔に入出してシートに孔をあけるパンチと、前記ダイ孔に設けられて、前記ダイが回転して前記パンチから離れた状態で前記ダイ孔から突出可能な移動体と、前記ダイの回転径方向の内側に位置して、前記ダイとの相対回転によって前記移動体を前記ダイ孔から突出させる押圧部と、を備え、前記移動体は、前記押圧部によって前記ダイ孔から突出して、ダイ孔内のパンチ屑を排出する、ことを特徴としている。
【0009】
本発明の画像形成装置は、シートに画像を形成する画像形成手段と、シートに孔をあける上記のシート穿孔装置と、を備えた、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシート穿孔装置は、移動体が押圧部に強制的に押圧されてパンチ屑を強制的に押圧し、ダイ孔から突出してパンチ屑を排出するので、パンチ屑をダイ孔から強制的に排出して、パンチ屑詰まりを防止することができる。このため、本発明のシート穿孔装置は、パンチ屑詰まりによって生じるパンチ屑の除去作業が不要になり、穿孔効率を高めることができる。特に、シート穿孔装置は、シートが厚紙のとき、絶大なる効果を発揮する。また、パンチ詰まりが無くなることによって、シート穿孔装置は、シートに孔を正確にあけることができる。
【0011】
本発明の画像形成装置は、シートに孔を効率よくあけるシート穿孔装置を備えているので、画像形成率を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態における画像形成装置のシート搬送方向に沿った概略断面図である。
【図2】本発明の実施形態のシート穿孔装置の外観斜視図である。
【図3】図2のシート穿孔装置の回転軸に沿った断面概略図である。
【図4】ダイを取り外したシート穿孔装置の外観斜視図である。
【図5】パンチホルダの外観斜視図である。
【図6】図3のE−E矢視断面図である。
【図7】図2のシート穿孔装置を裏側から見た外観斜視図であり、片方のパンチカムを省略した図である。
【図8】係脱部としての突起と被係合部の断面図であり動作説明用の図である。(A)は、突起と被係合部が係合状態の図である。(B)は、突起と被係合部の係合状態が解除された図である。
【図9】係合維持突起の斜視図である。
【図10】パンチカムの斜視図である。
【図11】シート穿孔装置の制御ブロック図である。
【図12】シート穿孔装置の動作説明用の図である。(A)は、シートに孔をあける前の状態図である。(B)は、シートに孔をあけている状態図である。(C)は、シートに孔をあけ終わった図である。
【図13】シートがパンチによって孔をあけられた後、パンチに着いたまま、パンチとともに上昇したとき、シートをパンチ案内部によってパンチから外すときの動作説明用の図である。(A)は、シートに孔をあける前の状態図である。(B)は、シートに孔をあけている状態図である。(C)は、シートをパンチから外した図である。
【図14】パンチ屑排出機構の動作説明用の図であり、図6において、パンチがダイ孔から抜け出た図である。
【図15】パンチ屑排出機構の他の形態の図である。(A)は、パンチによってシートに孔があけられてパンチ屑が生じた図である。(B)は、パンチ屑を排出したときの図である。
【図16】パンチ屑排出機構の他の形態の図である。(A)は、パンチによってシートに孔があけられてパンチ屑が生じた図である。(B)は、パンチ屑を排出したときの図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態のシート処理装置と画像形成装置とを図面に基づいて説明する。
【0014】
(画像形成装置)
図1は、画像形成装置のシート搬送方向に沿った概略断面図である。
【0015】
画像形成装置100は、装置本体100Aと、シート穿孔装置200とで構成されている。シート穿孔装置200は、装置本体100Aから搬送されてきたシートを止めることなく、搬送しながらそのシートに孔をあけるようになっている。
【0016】
画像形成装置の装置本体100Aの上部には、画像読取装置400と原稿給送装置500とが重ねて装備されている。原稿給送装置500は、原稿Dを画像読取装置400の原稿読取部の上部に自動的に搬送した後、自動的に排出するようになっている。画像読取装置400は、原稿給送装置500によって自動的に送り込まれてくる原稿を光学的に順次読み取り、その画像情報をデジタル信号としてレーザスキャナ102に送る。
【0017】
装置本体100Aは、画像読取装置400からの画像情報に基づいて、普通紙やOHPシート等のシートに原稿を複写するようになっている。なお、装置本体100Aは、外部のファクシミリやパソコン等から送られてくる画像情報もシートに形成することができるようにもなっている。また、画像読取装置400は、ユーザによってプラテンガラス401に載置された原稿を読み取ることもできるので、原稿給送装置500は、必ずしも設ける必要がない。
【0018】
画像形成装置100の装置本体100Aの下部には、各種サイズのシートPを収納した複数のシートカセット104(図には1つだけ示して他は省略)が装着されている。シートカセット104から搬送ローラ105によって搬送されたシートは、画像形成部103の感光ドラム110に送られる。感光ドラム110は、レーザスキャナ102のレーザを照射されて、潜像を形成され、その潜像がトナー現像されてトナー画像として予め形成されている。トナー画像は、シートに転写されて、定着器106によって定着される。
【0019】
シートは、片面に画像を形成されて両面に形成する必要が無い場合、排出ローラ対109によって、シート穿孔装置200へと送り込まれる。シートは、両面に画像を形成される必要がある場合、スイッチバック搬送によって裏返しにされて、再送パス107を搬送され、再度、画像形成部103へ送り込まれる。画像形成部103でシートは、他方の面にトナー画像を転写され、そのトナー画像を定着器106で定着されて排出ローラ対109からシート穿孔装置200へ送り込まれる。
【0020】
なお、シートはシートカセット104からの給送のみならず、マルチトレイ108からも給送可能となっている。
【0021】
シート穿孔装置200は、排出ローラ対109から搬送されてくるシートを停止させることなく搬送しながら穿孔するようになっている。なお、シート穿孔装置200は、画像形成部103がシートに画像を形成する前に穿孔を行うことも可能であるから、シートカセット104内に配置してもよい。また、シート穿孔装置200は、シートカセット104からのシートを案内するパスと、マルチトレイ108からのシートを案内するパスとの合流点111のやや下流に設けてもよい。したがって、シート穿孔装置200の設置場所は、実施形態に示す、装置本体100Aの排出ローラ対109の傍に限定されるものではない。
【0022】
(シート穿孔装置)
以下の本発明の実施形態のシート穿孔装置を図2乃至図14に基づいて説明をする。
【0023】
シート穿孔装置の構造を説明する。
【0024】
図3において、シート穿孔装置200のフレーム201は、底板202と、底板202の一端に設けられた軸受板220と、底板202の他端に設けられた回転軸受212とで形成されている。軸受板220に設けられた回転軸受215と、底板202に設けられた回転軸受212は、回転軸211を回転自在に支持している。回転軸211は、穿孔モータ250によって図3の矢印A方向に回転するようになっている。
【0025】
図3において、回転軸211には、円柱状のダイ210が回転軸心を一致して一体的に設けられている。このため、回転軸211は、穿孔モータ250によって、ダイ210を図3の矢印A方向に回転駆動するようになっている。ダイ210の一端(図3において右端)には、円筒部210aが形成されている。円筒部210aは、回転軸受212に形成された円形のダイ支持部212a(図4)に嵌合支持されている。円筒部210aには、ダイ孔210cが、ダイ210の回転軸心210CLに向くように、円筒部210aの肉厚を貫通して、1つ形成されている。
【0026】
図3において、ダイ210の外周には、パンチ保持体としてのパンチホルダ231(図5)が、リング部234(図2)によって、往復回転自在に設けられている。パンチホルダ231は、パンチ230が回転軸211の回転軸心211CLに向くように、パンチ案内部235(図3、図5)にパンチを配置されて、回転軸の回転軸心211CLと回転軸心231CLを一致して、ダイ210に往復回転自在に設けられている。パンチ230は、パンチ案内部235に設けられて回転軸211の回転軸心211CLに向くようになっている。パンチ案内部235は、パンチホルダ231の回転軸心231CLに向いている。このため、パンチ案内孔235aは、パンチ230がダイ孔210cを入出できるようにパンチを案内するように形成されていることになる。
【0027】
なお、回転軸211の回転軸心211CLと、ダイ210の回転軸心210CLと、パンチホルダ231の回転軸心231LCは、共通の回転軸心である。
【0028】
パンチホルダ231は、パンチホルダ231の後述する初期位置へ戻る方向(矢印Aと反対方向の矢印B方向)に、コイルばね232(図2、図3)の弾力が加わっている。コイルばね232の一端232a(図6)はパンチホルダ231に係合し、不図示の他端は、軸受板220に係合している。
【0029】
ダイ210の外周には、突起210b(図2、図3)が突設されている。パンチホルダ231のリング部234には、突起210bが当接する被係合部231b(図2、図3、図7、図8)が形成されている。被係合部231bは、図8に示すように、パンチホルダ231のリング部234の一部分にリング部234の厚み方向(矢印C方向)に撓むように形成されている。被係合部231bは、リング部234の側面から突出して突起210bに当接する位置に突出した斜面231baを形成されている。また、被係合部231bは、矢印C方向に撓み易いように、基部231bbの厚みがリング部234の厚みより薄く形成されている。
【0030】
被係合部231bが対向する軸受板220(図9)上には、パンチホルダ231が回転し、リング部234が回転したとき、被係合部231bの回転軌跡に沿った円弧状の係合維持突条220bが被係合部231b側に向けて突設されている。図5に示すように、パンチホルダ231の傾き防止のため、係合維持突条220bから180度の位置に係合維持突条220bと同様な円弧形状をした傾き防止突条220cが、軸受板220に、パンチホルダ231側に向けて突設されている。
【0031】
ここで、コイルばね232、突起210b、被係合部231b及び係合維持突条220bの相互間の機能を図8に基づいて説明をする。
【0032】
ダイ210(図2)が矢印A方向に回転すると、突起210b(図2、図8)も矢印A方向に回転する。突起210bは、矢印A方向に回転しながら、被係合部231bの斜面231baを矢印A方向に押圧する。すると、被係合部231bは矢印C方向に撓もうとするが係合維持突条220bに受け止められて殆ど撓むことができない。このため、突起210bは、被係合部231bを矢印A方向に押圧して、リング部234を介してパンチホルダ231をダイ210と同方向(矢印A方向)に回転させることになる。この結果、パンチホルダ231は、ダイ210に追従回転することになる。このとき、被係合部231bは、係合維持突条220bに受け止められた状態で、係合維持突条220b上を摺動して行く。
【0033】
また、パンチホルダ231がダイ210に追従回転する方向は、コイルばね232を巻き込む方向である。このため、パンチホルダ231は、コイルばね232に弾力を蓄積させながら矢印A方向に回転することになる。
【0034】
パンチホルダ231が突起210bに押されて所定量回転すると(図8(B))、被係合部231bが係合維持突条220bから外れる。すると、被係合部231bは、矢印C方向に逃げて、突起210bとの係合を解除する。そして、パンチホルダ231は、コイルばね232の蓄積された弾力によって、矢印B方向に復帰回転して停止する。一方、ダイ210は、矢印A方向へ回転を継続していく。なお、パンチホルダが復帰回転したときの停止動作は、後述する。
【0035】
このように、コイルばね232、突起210b、被係合部231b及び係合維持突条220bは、ダイ219が回転軸211によって所定の回転領域内を回転している間、パンチホルダをダイに追従回転させるようになっている。そして、ダイ219が所定の回転領域を超えて回転したとき、パンチホルダを初期位置に復帰回転させるようになっている。したがって、コイルばね232、突起210b、被係合部231b及び係合維持突条220bによって形成される機構を往復回転部203と称する。
【0036】
このように、往復回転部203は、突起210bと被係合部231bとの係合によってパンチホルダ231を回転させるので、パンチホルダ231を確実に回転させて、パンチをダイに対向させることができるので、シート穿孔装置の孔あけ動作が確実になる。また、パンチホルダ231をコイルばね232によって復帰回転させるようになっているので、パンチホルダ231を速やかに初期位置に戻すことができて、次の孔あけ動作に備えることができて、穿孔効率を高めることができる。
【0037】
また、突起210bと被係合部231bは、ダイ219が回転軸211によって所定の回転領域内を回転している間、パンチホルダ231とダイ219とを係合させ、ダイが所定の回転領域を超えて回転したとき係合を解除する係脱部204を構成している。
【0038】
なお、弾性体としてのコイルばね232は、ダイが回転軸によって所定の回転領域内を回転させられている間、弾力を蓄積し、係脱部204の係合が解除されたとき、蓄積した弾力によって、パンチホルダ231を初期位置に復帰回転させるようになっている。
【0039】
また、係脱部204が係合状態になってから解除状態になるまで、ダイ219が回転する領域を所定の回転領域と称す。
【0040】
パンチ230(図3)には、ガイドピン233がパンチ230を直角に貫通して一体的に設けられている。ガイドピン233は、パンチ案内部235に形成されたピンガイド孔236(図2、図5)を貫通して、両端がパンチ案内部235の外側に突出している。ガイド孔236は、パンチホルダ231の回転軸心231CLに向けて、パンチ案内孔235aに沿って形成された長孔である。長孔形状のパンチ案内孔234aの長さは、パンチ230が下降を開始してから、ダイ孔210cに最も進入する移動距離より長く設定されている。
【0041】
図2乃至図4に示すように、パンチホルダ231のパンチ案内部235の両側(回転軸心231CLに沿った両側)には、フレーム201に設けられた固定の1対のパンチカム240A,240Bが対向している。パンチカム240A,240Bがパンチ案内部235に対向する部分には、ピンガイド孔236から突出したガイドピン233の両端が係合するカム部としての溝カム241A,241B(図10、241Bは不図示)が面対称に形成されている。溝カム241Bは、溝カム241Aと面対称であるので、図示及び説明は省略する。なお、図10において、パンチのガイドピン233、パンチホルダ231のパンチ案内部に形成されたピンガイド孔236、及びカム部としての溝カム241A,241B等は、パンチ移動部205を構成している。
【0042】
パンチホルダ231のパンチ案内部235は、パンチホルダ231がパンチ230を保持して、回転軸211及びダイ210を中心に往復回転すると、固定の1対のパンチカム240A,240Bの間を往復移動するようになっている。そこで、溝カム241Aは、パンチ案内部235の往復移動を利用してパンチ230をダイ孔210cに入出させる形状に形成されている。
【0043】
図10に示すように、溝カム241Aは、第1の溝としての往路溝241Aaと第2の溝としての復路溝241Abとを接続して無端状に形成されている。往路溝241Aaは、三日月状(円弧状)に形成されて、ダイ210側(パンチホルダの回転軸心231CL側(図3))に湾曲して形成されている。往路溝241Aaは、パンチ230を保持したパンチホルダ231が突起210b(図8)と被係合部231bとの係合によってダイと同期回転させられているとき、パンチ230をダイ孔210cに入出方向に移動させるようになっている。
【0044】
直線状の復路溝241Abは、パンチ230をダイ孔210cから離れた位置に保持するようになっている。保持する間は、突起210bと被係合部231bとの係合が解除されて、パンチホルダ231がコイルばね232によって初期位置に復帰回転を開始してから、再度、突起と被係合部とが係合状態になり、パンチホルダがダイに追従回転を開始するまでの間である。
【0045】
図10に示すように、往路溝241Aaの終端部分には、ワンウェイ爪241Acが形成されている。ワンウェイ爪241Acは、ガイドピン233が往路溝241Aaから復路溝241Abに案内されるとき、往路溝241Aaに逆戻りするのを受け止めて阻止するために設けられている。ワンウェイ爪241Acは、往路溝241Aaの始端側を基部241Adにして、往路溝241Aaの終端側のストッパ端241Aeが、往路溝241Aaの底から浮き上がる方向に傾いており、弾性を有して舌片状に形成されている。
【0046】
ワンウェイ爪241Acは、ガイドピン233が往路溝241Aaを通過するとき、ガイドピン233に押されて、往路溝241Aaに沈み込む方向に撓み、ガイドピン233の通過を許容する。ワンウェイ爪241Acは、ガイドピン233が通過すると、自らの弾性によって元の状態に復帰して、ストッパ端241Aeが、往路溝241Aaの底より浮き上がる。このため、ワンウェイ爪241Acは、ガイドピン233が往路溝241Aaに逆戻りしようとした場合、ストッパ端241Aeでガイドピン233を受け止めて、ガイドピン233が往路溝241Aaに逆戻りするのを阻止することができる。この結果、ガイドピン233は、復路溝241Abに確実に案内される。
【0047】
このように、パンチ移動部205は、パンチのガイドピン233を溝カム241A,241に案内させて移動させて、パンチをダイ孔に入出させるようにしているので、パンチに孔あけ動作を確実に行わせることができる。
【0048】
制御部270(図1、図11)は、画像形成装置の装置本体100Aの制御部271と信号を授受しながら、シート穿孔装置を制御するようになっており、先端検知センサ260、ダイ孔位置検知センサ261、穿孔モータ250等が接続されている。
【0049】
なお、制御部270は、画像形成装置の装置本体100Aに設けられていてもよい。また、制御部270と制御部271は、いずれか一方が他方に組み込まれて、装置本体100Aとシート穿孔装置200とのいずれか一方に設けられていてもよい。
【0050】
先端検知センサ260は、シート穿孔装置200(図1)の入口に設けられて、シートの先端を検知するようになっている。ダイ孔位置検知センサ261は、ダイの外周に突設されたフラグ突起210e(図2)を検知して、ダイ孔210cの回転位置を検知するようになっている。フラグ突起210eは、ダイ210と一体の回転軸211に設けられ、ダイ孔位置検知センサ261は、そのフラグ突起210eを検知できる位置に設けられていてもよい。
【0051】
なお、以上の構成において、パンチ保持体としてのパンチホルダ231(図2、図5)、往復回転部203(図3、図8)及びパンチ移動部205(図10)は、パンチ作動手段を構成している。
【0052】
シート穿孔装置の動作を説明する。
【0053】
シート穿孔装置200が停止しているとき、パンチホルダ231は、コイルばね232によって矢印B方向(図2)に回転付勢されている(図12(A))。回転付勢を受けているパンチホルダは、パンチ230に突設されたガイドピン233の両端が、固定のパンチカム240A,240Bに形成された溝カム241Aの往路溝241Aaの始め端と復路溝241Abの終端との境目に当接して回転規制されている。パンチカム240Bの溝カムは、図示を省略する。この回転規制された位置が、パンチホルダ231の初期位置である。
【0054】
また、図12(A)に示すように、パンチホルダ231が初期位置にいるとき、パンチ230は、ダイ孔210cから抜け出た位置に待機している。この位置をパンチ230の初期位置とする。
【0055】
なお、ダイ210は、前回、シート穿孔装置を使用したとき最後に穿孔モータ250によってダイ210の突起210bが初期位置にいるパンチホルダ231の被係合部231bに当接した状態で停止しているものとする。
【0056】
このような静止した待機状態のシート穿孔装置200は、ユーザによって電源を投入されると、制御部270によって始動される。制御部270(図11)は、先端検知センサ260(図1)による、装置本体100Aから送り込まれてきたシートの先端検知情報と、ダイ孔位置検知センサ261によるダイ孔の位置検知情報とによって、穿孔モータ250の始動タイミングを決定する。穿孔モータ250の始動タイミングは、シートの先端からの孔の位置に応じて異なる。
【0057】
穿孔モータ250が始動すると、回転軸211(図2、図13)が、矢印A方向に回転する。回転軸211の回転にともなって、回転軸211と一体のダイ210も矢印A方向に回転を開始する。ダイ210は、突起210b(図8)で被係合部231bを介してパンチホルダ231を押しながら矢印A方向に回転を開始する。このとき、図8(A)に示すように、突起210bが、係脱部204との係合を維持された状態で被係合部231bの斜面231baを押して、パンチホルダ231を矢印A方向に回転させる。
【0058】
このため、パンチホルダ231、ダイ210、ダイ孔210c及び回転軸211は、各回転軸心231CL,210CL,211CL(図12)を中心に回転する。これらの回転軸心は、同じ位置であるので、パンチホルダ231、ダイ210、ダイ孔210c及び回転軸221は、共通の回転軸心を中心に同期回転することになる。この結果、パンチホルダは、パンチをダイの回転軸心を中心に回転するように保持して、ダイの回転にともない、パンチをダイ孔に対向させ、かつパンチの軸心230CL(図12(B))をダイ孔の軸心210Lに一致させた状態を維持して矢印A方向に回転する。パンチの軸心230CLとダイ孔の軸心210Lは、回転軸心231CL,210CL,221CLに向いている。
【0059】
パンチホルダ231が矢印A方向に回転すると、パンチのガイドピン233が往路溝241Aaを案内されて移動して(図12(A)、(B))、復路溝241Abに到達する(図12(C))。この間、パンチ230は、ダイ孔210cに入出してシートに孔をあける。
【0060】
パンチ230が復路溝241Abに到達すると略同時に、図8(B)に示すように、被係合部231bが逃げて、係脱部204の係合状態が解除される。すると、パンチホルダ231は、今まで、コイルばね232に弾力を蓄積しながら、矢印A方向に回転していたため、コイルばね232に蓄積された弾力によって、図12(C)の位置から図12(A)の位置の初期位置に復帰回転をする。
【0061】
パンチホルダ231が矢印B方向に復帰回転しているとき、ガイドピン233は復路溝241Abを案内されて、図12(A)に示す最初の位置に戻る。このため、パンチ230は、ダイ孔210cから抜け出て離れた位置に保持されている。
【0062】
このように、シート穿孔装置200は、パンチホルダ231が1往復回転する間に1つの孔をシートにあけることができる。
【0063】
なお、図13(A)、(B)で示すようにシートに孔をあけ終わったパンチ230が戻るとき、図13(C)に示すように、シートがパンチ230に係合したまま浮き上がることがある。しかし、パンチ230を案内しているパンチ案内部235の下端部235bが、パンチ230がパンチ案内部235に戻るのにともなって、シートを受け止めて、パンチ230から外すことができる。したがって、パンチホルダのパンチ案内部235は、シートストリッパと兼用されている。
【0064】
以上のように、シート穿孔装置はパンチとダイの回転軸心を同じにしたので、ダイが所定の回転領域内を回転している間、パンチがダイ孔に対向し、パンチの軸心がダイ孔の軸心に一致した状態で、パンチとダイ孔とを位相を合わせて同期回転させることができる。この結果、シート穿孔装置は、シートの搬送を停止させることなく、パンチとダイ孔とが殆どかじるようなことなく、シートに孔をあけることができる。
【0065】
したがって、シート穿孔装置200は、シートに孔を正確に効率良くあけることができるとともに、パンチとダイを長期間使用することができるという効果を奏する。
【0066】
また、画像形成装置100は、シートに孔を効率よくあけるシート穿孔装置を備えているので、画像形成率を高くすることができる。
【0067】
ところで、シート穿孔装置200は、パンチ230とダイ210とで、シートに孔をあけているとき、孔あけによって生じるパンチ屑が、ダイ孔210cが下向きになっても排出されずに、ダイ孔内に詰まり、その後の孔あけ動作に支障をきたすことがある。
【0068】
そこで、図6、図14に示すように、シート穿孔装置200は、ダイ孔210c内に詰まったパンチ屑Wを排出するパンチ屑排出機構280を備えている。パンチ屑排出機構280は、屑プッシャ281、ピアノ線282及びプッシャカム283(図4)を備えている。
【0069】
移動体としての屑プッシャ281は、弾性体としてのピアノ線282を有している。ピアノ線282は、両端をパンチ案内部235に形成されたピアノ線支持孔210fに差し込まれて、屑プッシャ281をパンチ案内孔235a内に移動自在に保持されている。また、屑プッシャ281は、プッシャカム283に押されてダイ孔から突出可能になっている。
【0070】
押圧部としてのプッシャカム283は、ダイ210のダイ孔210cが形成されている円筒部210a(図3、図6、図14)内に位置する回転軸受212の一部分に下向きに一体に設けられている。
【0071】
以上の構成において、パンチ230は、ダイ孔210cに進入しながらシートに孔をあけると、パンチ屑W(図6)をダイ孔210c内に押し込む。このとき、屑プッシャ281は、ピアノ線282によってダイ孔210c内に引き込まれており、パンチ230の先端にパンチ屑Wを介して押されることがない。
【0072】
ダイ210は回転を継続している。このため、ダイ孔210cは、パンチ230から離れて下向きに回転し、ダイ孔210c内の屑プッシャ281もダイ孔210cとともに下向きに回転し行く。この間、屑プッシャ281は、プッシャカム283の下側に入り込んで行き、プッシャカム283に押されて、ダイ孔210cからダイ210の外側に突出する方向へピアノ線282に抗して移動して、ダイ孔210c内のパンチ屑をダイ孔210cから押し出す。このとき、ピアノ線282は、直線状態から湾曲状態に撓みながら、ピアノ線支持孔210fから引き出される方向に移動するが、ピアノ線支持孔210fから抜け出ることがない。このように、プッシャカム283が、ダイの回転径方向の内側に位置して、ダイとの相対回転によって屑プッシャ281をダイ孔から突出させる。
【0073】
その後も、ダイ210は回転を継続する。このため、ダイ孔210cと屑プッシャ281も回転を継続して、屑プッシャ281がプッシャカム283の下側から抜け出て、プッシャカム283に押されていた状態が解除される。すると、ピアノ線282が直線状態に戻り、屑プッシャ281は、ダイ孔210c内に引き戻される。これによって、ダイ孔210cは、屑プッシャ281がダイ孔210c内に引き込まれた状態で、パンチ230に対向して、次の孔あけに備える。
【0074】
以上のパンチ屑排出機構280におけるピアノ線282は、屑プッシャ281がダイ210の回転による遠心力や、ダイ孔210cが下向きになったとき等、飛び出さないようにすることと、屑プッシャ281をダイ孔210c内に引き戻すために設けてある。しかし、図15に示すパンチ屑排出機構290のように、ピアノ線282の代わりに、係合ピン294と係合溝295を使用してもよい。係合ピン294は、ダイ210の円筒部210aに設けられてダイ孔210c内に両側から突出している。係合溝295は、屑プッシャ291の両脇に軸に沿って形成された長溝であり、係合ピン294の先端部が係合している。
【0075】
したがって、係合ピン294と係合溝295は、屑プッシャ281がダイ210の回転による遠心力や、ダイ孔210cが下向きになったとき等、飛び出さないように規制することができる。
【0076】
また、図16に示す様に、ピアノ線282の代わりにリング状の部材によりダイの内側に内蔵されたリング296にて屑プッシャ281を支持してもよい。リング296は、弾性体、剛体のいずれであってもよい。この場合、屑プッシャ281は、プッシャカム部の位置で屑を押し出し、プッシャカム部を通りすぎるとリング296にて内側に収納されることが可能となる。
【0077】
なお、本実施形態のシート穿孔装置は、ダイ孔210cが下方に向いたときパンチ屑を排出するようになっているが、プッシャカム283を横向きの位置に設けて、ダイ孔210cが横向きになったとき、パンチ屑を横向きに排出するようにしてもよい。このため、パンチ屑の排出位置は、下方に限定されない。しかし、下方の方がパンチ屑を排出し易い。
【0078】
また、パンチ屑排出機構280,290、ガイドリング296を使用した機構は、特許文献1のシート穿孔装置のパンチとダイとが別々の回転軸を中心にして回転するダイにも適用できる。したがって、パンチとダイの回転軸心が共通の本実施形態のシート穿孔装置のダイのみに適用されるものではない。
【0079】
以上のように、シート穿孔装置は、屑プッシャがプッシャカムに強制的に押圧されてパンチ屑を強制的に押圧し、ダイ孔から突出してパンチ屑を排出するので、パンチ屑をダイ孔から強制的に排出して、パンチ屑詰まりを防止することができ。
【0080】
このため、シート穿孔装置は、パンチ屑詰まりによって生じるパンチ屑の除去作業が不要になり、穿孔効率を高めることができる。特に、シート穿孔装置200は、シートが厚紙のとき、絶大なる効果を発揮する。また、パンチ詰まりが無くなることによって、シート穿孔装置は、シートに孔を正確にあけることができる。
【0081】
また、シート穿孔装置は、屑プッシャ281をピアノ線282によってダイ孔210cに保持すると、ダイ210の回転による遠心力によって、屑プッシャ281が突出する方向に移動して、パンチ屑を不必要に押し出して、パンチ屑を飛散させることが少ない。したがって、シート穿孔装置の周辺を清浄に保つことができる。
【0082】
本発明の画像形成装置は、シートに孔を効率よくあけるシート穿孔装置を備えているので、画像形成率を高くすることができる。
【符号の説明】
【0083】
100:画像形成装置、100A:画像形成装置の装置本体、103:画像形成部、200:穿孔装置、203:往復回転部、204:係脱部、205:パンチ移動部、210:ダイ、210a:ダイの円筒部、210b:突起、210c:ダイ孔、210CL:ダイの回転軸心、211:回転軸、211CL:回転軸の回転軸心、212:回転軸受、220b:係合維持突条、230:パンチ、231:パンチホルダ、231b:被係合部(係脱部、往復回転部)、231CL:パンチホルダの回転軸心、232:コイルばね(弾性体、往復回転部)、233:ガイドピン、235:パンチ案内部、240A、240B:パンチカム、241A,241B:溝カム(カム部)、241Aa:円弧溝、241Ab:直線溝、250:穿孔モータ、270:制御部、280:パンチ屑排出機構、281:屑プッシャ(移動体)、282:ピアノ線(弾性体)、283:プッシャカム(押圧部)、290:パンチ屑排出機構、291:屑プッシャ(移動体)、294:係合ピン、295:係合溝、296:ガイドリング、A,B,C:矢印、D:原稿、P:シート、W:パンチ屑。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイ孔を有して回転駆動されるダイと、
前記ダイ孔に入出してシートに孔をあけるパンチと、
前記ダイ孔に設けられて、前記ダイが回転して前記パンチから離れた状態で前記ダイ孔から突出可能な移動体と、
前記ダイの回転径方向の内側に位置して、前記ダイとの相対回転によって前記移動体を前記ダイ孔から突出させる押圧部と、を備え、
前記移動体は、前記押圧部によって前記ダイ孔から突出して、ダイ孔内のパンチ屑を排出する、
ことを特徴とするシート穿孔装置。
【請求項2】
前記押圧部によって前記ダイ孔から突出した前記移動体を前記ダイ孔内に戻す弾性体を備えた、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート穿孔装置。
【請求項3】
前記移動体はリング状の部材により前記ダイの内側に内蔵され、前記押圧部でのみ前記ダイ孔から突出する、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート穿孔装置。
【請求項4】
シートに画像を形成する画像形成手段と、
シートに孔をあける請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシート穿孔装置と、を備えた、
ことを特徴とする画像形成装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−99832(P2013−99832A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245996(P2011−245996)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】