説明

シート給送装置及び画像形成装置

【課題】給送カセットの操作性を低下させることなく、給送カセットの水平方向の動きを確実に規制可能なシート給送装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】装置本体5と、シート給送位置及び装置本体5から引き出された引出し位置の間でスライド自在な給送カセット4と、装置本体5及び給送カセット4の一方に設けられる位置決めピンと装置本体5及び給送カセット4の他方に設けられる位置決め穴とを有し、給送カセット4がシート給送位置にスライド移動する際に、位置決め突起が位置決め穴に嵌合することで給送カセット4の位置決めする位置決め手段と、を備えたシート給送装置3において、引出し位置から位置決め手段の嵌合が開始される嵌合開始位置までは給送カセット4のスライド方向と直交する水平方向の動きを規制し、嵌合開始位置からシート給送位置までは給送カセット4の水平方向の動きの規制を解除する規制手段を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート給送装置及び画像形成装置に関し、特には、シートを積載する給送カセットを有するシート給送装置及びこれを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やプリンタ等の画像形成装置においては、シートを画像形成部に給送するシート給送部を備えて構成されており、シート給送部は、種々の大きさのシートが収納された複数の給送カセットを有している。
【0003】
これら複数の給送カセットは、装置本体に設けられた案内部材にスライド自在な被案内部材を備えており、被案内部材に摺動部材を設けることにより、装置本体へのスライド移動をスムーズにして給送カセットの着脱操作性を向上させている(特許文献1参照)。
【0004】
ここで、図14に、特許文献1に係る給送カセットを給送装置本体に装着する状態を示す。給送カセット100は、着脱の途中で矢印Y方向に給送カセット100が回転すると、周囲の外装カバーや構造部材に給送カセット100が接触して、給送カセット100が破損するおそれがある。そのため、特許文献1に記載のシート給送装置は、図14に示すように、インナレール101の水平方向両端部に配設されたサイドコロ102により、給送カセット100の着脱途中における矢印Y方向の回転を一定角度内に制限している。また、装置本体110の内部には、アウタレール111の水平方向両端に位置決めコロ112が配設されており、位置決めコロ112により、装置本体110内部での給送カセット100の位置決めを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−50081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、装置本体110に設けられる位置決めコロ112の位置のばらつきを鑑みると、サイドコロ102とアウタレール111との隙間が小さくなると、給送カセット100を位置決めする際の摺動抵抗になる。特に、大容量の給送カセットにおいては、構造部材の寸法が大きいため、摺動抵抗も大きくなる。そして、摺動抵抗が大きくなると、給送カセット挿脱時に必要とする操作力が大きくなり、操作性が低下するおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明は、給送カセットの操作性を低下させることなく、給送カセットの水平方向の動きを確実に規制可能なシート給送装置及びこれを備える画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、装置本体と、シートを積載し、かつ、シートを給送するシート給送位置及び前記装置本体から引き出された引出し位置の間でスライド自在な給送カセットと、前記装置本体及び前記給送カセットの一方に設けられる嵌合突起と前記装置本体及び前記給送カセットの他方に設けられる嵌合穴とを有し、前記給送カセットが前記シート給送位置にスライド移動する際に、前記嵌合突起が前記嵌合穴に嵌合することで前記給送カセットの位置を位置決めする位置決め手段と、前記給送カセットがスライド移動する際に、前記引出し位置から前記位置決め手段の嵌合が開始される嵌合開始位置までは、前記給送カセットのスライド方向と直交する水平方向の動きを規制し、前記嵌合開始位置から前記シート給送位置までは、前記給送カセットの前記水平方向の動きの規制を解除する規制手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、給送カセットがシート給送位置に位置する際に給送カセットの水平方向の規制を解除することにより、給送カセットの操作性を低下させることなく、給送カセットの水平方向の動きを確実に規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置を模式的に示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係るシート給送装置を模式的に示す断面図である。
【図3】本実施形態に係る装置本体から給送カセットを引き出した状態を示す斜視図である。
【図4】(a)は、第1実施形態に係る給送カセットを上方から見た斜視図であり、(b)は、給送カセットを下方から見た斜視図である。
【図5】第1実施形態に係る装置本体の内部構造の一部を模式的に示す斜視図である。
【図6】(a)は、第1実施形態に係る給送カセットを装置本体から引き出した状態の図3に示すA−A矢視断面図であり、(b)は、(a)の図3に示すB−B矢視断面図である。
【図7】(a)は、第1実施形態に係る給送カセットが位置決めピンにより装置本体に固定される直前の状態の図3に示すA−A矢視断面図であり、(b)は、(a)の図3に示すB−B矢視断面図である。
【図8】(a)は、第1実施形態に係る給送カセットが位置決めピンにより装置本体に固定された状態の図3に示すA−A矢視断面図であり、(b)は、(a)の図3に示すB−B矢視断面図である。
【図9】(a)は、第2実施形態に係る給送カセットを上方から見た斜視図であり、(b)は、給送カセットを下方から見た斜視図である。
【図10】第2実施形態に係る装置本体の内部構造の一部を模式的に示す斜視図である。
【図11】(a)は、第2実施形態に係る給送カセットを装置本体から引き出した状態の図3に示すA−A矢視断面図であり、(b)は、(a)の図3に示すB−B矢視断面図である。
【図12】(a)は、第2実施形態に係る給送カセットが位置決めピンにより装置本体に固定される直前の状態の図3に示すA−A矢視断面図であり、(b)は、(a)の図3に示すB−B矢視断面図である。
【図13】(a)は、第2実施形態に係る給送カセットが位置決めピンにより装置本体に固定された状態の図3に示すA−A矢視断面図であり、(b)は、(a)の図3に示すB−B矢視断面図である。
【図14】従来例に係る給送カセットを給送装置本体に装着する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る画像形成装置について、図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態に係る画像形成装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリ及びこれら複合機器等、画像形成装置本体に複数の給送カセットを装着可能なシート給送装置を備えた画像形成装置である。以下の実施形態においては、右側給送部及び左側給送部の2つのシート給送部を有するシート給送装置を備えた画像形成装置を用いて説明する。
【0012】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る画像形成装置1について、図1から図8(b)を参照しながら説明する。まず、第1実施形態に係る画像形成装置1の全体構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置1を模式的に示す斜視図である。図2は、本実施形態に係るシート給送装置3を模式的に示す断面図である。
【0013】
図1に示すように、画像形成装置1は、シートSに画像を形成する画像形成装置本体2と、画像形成装置本体2にシートSを給送するシート給送装置3とを備えている。画像形成装置本体2は、シートSを給送するシート給送部21と、シートSに画像を形成する画像形成部22と、画像形成装置本体2に開閉自在に支持された第1開閉扉23と、を備えている。シート給送部21は、上下に2段に配置された第1収納部24及び第2収納部25を備えており、第1収納部24及び第2収納部25に収納されたシートを選択的に画像形成部22に給送する。画像形成部22は、シート給送部21から給送されたシートSに画像を形成する。なお、ここでは、画像形成部22の具体的な構成についての説明は省略する。第1開閉扉23は、シート給送部21と画像形成部22とを接続するシート搬送路26を通過中のシートSがジャム等を起こした場合に、容易にジャム処理等ができるように、シート搬送路26を開放自在に形成されている。
【0014】
シート給送装置3は、画像形成装置本体2のシート搬送路26に接続されており、後述の右側給送カセット32及び左側給送カセット33に収納されたシートSを、シート搬送路26を介して画像形成装置本体2の画像形成部22に給送する。図2に示すように、シート給送装置3は、給送装置本体31と、シートSを積載する右側給送カセット32及び左側給送カセット33と、第2開閉扉34と、を備えている。また、シート給送装置3は、右側給送カセット32及び左側給送カセット33に積載されたシートを1枚ずつ給送する右給送部35及び左給送部36と、左給送部36から給送されるシートを搬送する横シート給送部37と、搬送ガイド38と、を備えている。
【0015】
給送装置本体31は、略箱状の右側給送カセット32及び左側給送カセット33を着脱自在に形成されており、ユーザは、右側給送カセット32及び左側給送カセット33を引き出してシートの交換や追加を行う。第2開閉扉34は、右給送部35及び横シート給送部37の合流部を開放可能に形成されており、例えば、右給送部35及び横シート給送部37のジャム処理を行う際に用いられる。右給送部35は、右側給送カセット32の右上部に設けられており、右側給送カセット32に積載されたシートを画像形成装置本体2のシート搬送路26に1枚ずつ給送する。左給送部36は、左側給送カセット33の右上部に設けられており、左側給送カセット33に積載されたシートを横シート給送部37に1枚ずつ給送する。横シート給送部37は、右側給送カセット32の上方に設けられており、左給送部36により搬送されるシートを画像形成装置本体2のシート搬送路26に給送する。搬送ガイド38は、横シート給送部37の側方かつ右給送部35の上方に配置されており、水平方向に伸びる不図示の回動軸を中心にガイド位置と開放位置との間を回動自在に給送装置本体31に支持されている。搬送ガイド38は、右給送部35及び横シート給送部37によりシート搬送路26に給送されるシートSをガイドする。
【0016】
ここで、給送装置本体31、右側給送カセット32及び左側給送カセット33について、図3から図8(b)を参照しながら、更に具体的に説明する。まず、それぞれの全体構成について、図3から図5を参照しながら説明する。なお、右側給送カセット32と左側給送カセット33とは基本的な構成が同じであるため、以下においては、右側給送カセット32及び左側給送カセット33を給送カセット4として説明する。また、給送装置本体31については、給送カセット4を着脱可能な装置本体5として説明する。
【0017】
図3は、本実施形態に係る装置本体5から給送カセット4を引き出した状態を示す斜視図である。図4(a)は、第1実施形態に係る給送カセット4を上方から見た斜視図である。図4(b)は、給送カセット4を後方から見た斜視図である。図5は、第1実施形態に係る装置本体5の内部構造の一部を模式的に示す斜視図である。
【0018】
図3に示すように、給送カセット4は、装置本体5に対して、図3に示す矢印X方向(以下、「スライド方向X」という)にスライド自在に形成されている。具体的には、給送カセット4は、装置本体5の内部でシートSを給送するシート給送位置と、装置本体5から引き出された引出し位置との間をスライド移動が可能となるように形成されている。
【0019】
図4(a)及び図4(b)に示すように、給送カセット4は、シートSを収容するカセット本体40と、位置決め手段の嵌合突起としての第1位置決めピン41及び第2位置決めピン42と、規制手段の案内部材としてのインナレール43,44と、を備えている。また、給送カセット4は、インナベアリング45,46と、規制手段の被案内部材としてのインナスペーサ47,48と、を備えている。
【0020】
図4(a)に示すように、カセット本体40は、上面が開口した矩形箱状に形成されており、その内部にシートSを積載可能に形成されている。第1位置決めピン41は、カセット本体40のスライド方向Xにおける手前X1側に設けられており、第2位置決めピン42は、カセット本体40のスライド方向Xにおける奥X2側に設けられている。第1実施形態においては、位置決めピンは、カセット本体40のスライド方向Xの前後(手前・奥)にそれぞれ設けられている。
【0021】
図4(b)に示すように、インナレール43,44は、カセット本体40の底面にスライド方向Xに延設されており、後述のアウタレール53,54にスライド自在に係合する。また、インナレール43には、スライド方向Xにおける手前X1側に規制手段の解除部としての第1穴部61a,61bが形成されている(後述の図8(b)参照)。第1穴部61a,61bは、第1位置決めピン41及び第2位置決めピン42が第1位置決め穴51及び第2位置決め穴52に嵌合を開始する位置(嵌合開始位置)から嵌合位置までの間、後述のアウタスペーサ57,58と対向する位置に形成されている。つまり、嵌合開始位置から嵌合位置までは、アウタスペーサ57,58は、インナレール43に案内(規制)されないようになっている。第1穴部61a,61bのスライド方向Xにおける奥X2側には、スロープ43a,43bが形成されている。スロープ43a,43bは、スライド方向Xにおける手前X1側に広がるように形成されており、給送カセット4を引き出す際に、アウタスペーサ57,58がインナレール43,44に引っ掛かってカセット本体40が係止することを防止するために設けられている。
【0022】
インナベアリング45,46は、スライド方向Xと直交する水平方向を回転軸として、インナレール43,44のスライド方向Xにおける奥X2側に回転自在に支持されている。インナベアリング45,46は、アウタレール53,54上を回転してインナレール43,44のスライド方向Xへの移動を補助する。インナスペーサ47,48は、インナレール43,44のスライド方向Xにおける奥X2側に取り付けられており、後述のアウタレール53と接触して、カセット本体40をスライド方向Xに案内すると共に、着脱時のガタを抑制する。つまり、インナスペーサ47,48は、アウタレール53と接触してカセット本体40(給送カセット4)のスライド方向Xと直交する水平方向の移動を規制する。
【0023】
図5に示すように、装置本体5は、給送カセット4を収容する筐体50と、位置決め手段の嵌合穴としての第1位置決め穴51及び第2位置決め穴52と、規制手段の案内部材としてのアウタレール53,54と、を備えている。また、装置本体5は、アウタベアリング55,56と、規制手段の被案内部材としてのアウタスペーサ57,58と、を備えている。
【0024】
筐体50は、スライド方向Xにおける手前X1側が開口した矩形箱状に形成されており、筐体50の内部の上面には、第1位置決め穴51及び第2位置決め穴52が設けられている。第1位置決め穴51は、筐体50のスライド方向Xにおける手前X1側に設けられており、第1位置決めピン41と嵌合可能に形成されている。第2位置決め穴52は、筐体50のスライド方向Xにおける奥X2側に設けられており、第2位置決めピン42と嵌合可能に形成されている。第1実施形態においては、第1位置決めピン41が第1位置決め穴51に嵌合し、第2位置決めピン42が第2位置決め穴52に嵌合することにより、給送カセット4が装置本体5のシート給送位置に位置決めされる。そして、この嵌合位置がシート給送位置になる。
【0025】
アウタレール53,54は、筐体50の下面に、スライド方向Xに延設されており、インナレール43,44が係合したカセット本体40(給送カセット4)をシート給送位置に案内する。また、アウタレール53,54には、スライド方向Xにおける奥X2側に解除部としての第2穴部60a,60bが形成されている(後述の図8(b)参照)。第2穴部60a,60bは、第1位置決めピン41及び第2位置決めピン42が第1位置決め穴51及び第2位置決め穴52に嵌合を開始する嵌合開始位置から嵌合位置までの間において、インナスペーサ47,48と対向する位置に形成されている。つまり、嵌合開始位置から嵌合位置までは、インナスペーサ47,48は、アウタレール53,54に案内(規制)されないようになっている。第2穴部60a,60bのスライド方向Xにおける手前X1側には、スロープ53a,53bが形成されている。スロープ53a,53bは、スライド方向Xにおける奥X2側に広がるように形成されており、給送カセット4を引き出す際にインナスペーサ47,48がアウタレール53,54に引っ掛かってカセット本体40が係止することを防止するために設けられている。
【0026】
アウタベアリング55,56は、スライド方向Xと直交する水平方向を回転軸として、アウタレール53,54のスライド方向Xにおける手前X1側に回転自在に支持されている。アウタベアリング55,56は、インナレール43,44が係合すると転動して、インナレール43,44のスライド方向Xへの移動を補助する。アウタスペーサ57,58は、アウタレール53,54のスライド方向Xにおける手前X1側に取り付けられており、インナレール43,44と接触して、カセット本体40をスライド方向Xに案内すると共に、着脱時のガタを抑制する。つまり、アウタスペーサ57,58は、インナレール43,44と接触してカセット本体40(給送カセット4)のスライド方向Xと直交する水平方向の移動を規制する。
【0027】
次に、インナスペーサ47,48とアウタレール53との隙間及びアウタスペーサ57,58とインナレール43との隙間について、図6(a)から図8(b)を参照しながら説明する。図6(a)は、第1実施形態に係る給送カセット4を装置本体5から引き出した状態の図3に示すA−A矢視断面図である。図6(b)は、図6(a)の図3に示すB−B矢視断面図である。図7(a)は、第1実施形態に係る給送カセット4が位置決めピンにより装置本体5に固定される直前の状態の図3に示すA−A矢視断面図である。図7(b)は、図7(a)の図3に示すB−B矢視断面図である。図8(a)は、第1実施形態に係る給送カセット4が位置決めピンにより装置本体に固定された状態の図3に示すA−A矢視断面図である。図8(b)は、図8(a)の図3に示すB−B矢視断面図である。
【0028】
図6(a)に示すように、給送カセット4が引出し位置にある(第1位置決めピン41及び第2位置決めピン42が、第1位置決め穴51及び第2位置決め穴52と離れた位置にある)ときの隙間は、図6(b)に示す状態にある。具体的には、インナレール43とアウタスペーサ57との隙間はGであり、インナレール43とアウタスペーサ58との隙間はGである。また、アウタレール53とインナスペーサ47との隙間はGであり、アウタレール53とインナスペーサ48との隙間はGである。第1実施形態においては、隙間G,G,G,Gを構成する部品の構成点数が少なく、隙間G,G,G,Gの寸法のバラつきは比較的小さいものになる。そのため、隙間G,G,G,Gを小さい値に設定することができる。これにより、カセット本体40(給送カセット4)のスライド方向Xと直交する水平方向の移動を確実に規制可能となり、給送カセット4の装着途中におけるスライド方向Xと直交する水平方向(図14に示す矢印Y方向)の回動量を小さくすることができる。その結果、カセット本体40の着脱時のガタつきを確実に防止することができる。また、ガタつきが防止されることで高級感が向上する。
【0029】
次に、図7(a)に示すように、第1位置決めピン41及び第2位置決めピン42が、第1位置決め穴51及び第2位置決め穴52と嵌合を開始(嵌合開始位置)するときの隙間は、図7(b)に示す状態にある。具体的には、嵌合開始位置においては、インナレール43,44に第1穴部61a,61bが形成され、アウタレール53,54に第2穴部60a,60bが形成されている。つまり、インナスペーサ47,48は、対向する位置にある第2穴部60a,60bによりアウタレール53に規制(案内)されない。同様に、アウタスペーサ57,58は、対向する位置にある第1穴部61a,61bによりインナレール43に規制(案内)されない状態にある。そのため、嵌合開始位置においては、第1位置決めピン41及び第2位置決めピン42は、インナスペーサ47,48やアウタスペーサ57,58等に規制されることなく、第1位置決め穴51及び第2位置決め穴52に嵌合することができる。
【0030】
同様に、給送カセット4が嵌合開始位置から嵌合位置にあるときの隙間は、図8(a)及び図8(b)に示すように、インナレール43とアウタスペーサ57との隙間はDであり、インナレール43とアウタスペーサ58との隙間はDである。また、アウタレール53とインナスペーサ47との隙間はDであり、アウタレール53とインナスペーサ48との隙間はDである。
【0031】
このように、第1実施形態においては、隙間D,D,D,Dを構成する部品のバラつきが発生しても隙間がなくならないようにインナレール43,44に第1穴部61a,61bを形成し、アウタレール53,54に第2穴部60a,60bを形成している。そのため、嵌合開始位置から嵌合位置までの間、インナレール43とアウタスペーサ57,58とは、接触せず、アウタレール53とインナスペーサ47,48も接触しない。これにより、レールとスペーサとの接触による摩擦力が発生せず、レールとスペーサに干渉されることなく嵌合させることができる。その結果、着脱時の操作力を低減させることができる。
【0032】
また、嵌合時においては、第1位置決めピン41及び第2位置決めピン42を第1位置決め穴51及び第2位置決め穴52に嵌合させる構成であるため、スライド方向Xと直交する水平方向(図14に示す矢印Y方向)には回動せず、位置決めすることができる。
【0033】
このように、第1実施形態に係る給送カセット4及び装置本体5は、給送カセット4を装着する際における給送カセット4の操作性を低下させることなく、給送カセット4の水平方向の動きを確実に規制することができる。
【0034】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る画像形成装置1Aについて、図1を援用すると共に、図9(a)から図13(b)を参照しながら説明する。第2実施形態に係る画像形成装置1Aは、位置決めピンの配置位置及び位置決めブロックが設けられる点及びインナレール43,44に第1穴部61a,61bに代わりに逃げ部43cを設けた点において、第1実施形態と相違する。そのため、第2実施形態においては、第1実施形態と相違する点、即ち、位置決めピンの配置位置、位置決めブロック及び逃げ部43cを中心に説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態に係る画像形成装置1と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を省略する。すなわち、第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成のものについては、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0035】
まず、第2実施形態に係る画像形成装置1Aの全体構成について、図1を援用すると共に、図9(a)から図10を参照しながら説明する。図9(a)は、第2実施形態に係る給送カセット4Aを上方から見た斜視図である。図9(b)は、給送カセット4Aを下方から見た斜視図である。図10は、第2実施形態に係る装置本体5Aの内部構造の一部を模式的に示す斜視図である。
【0036】
図1に示すように、画像形成装置1Aは、シートSに画像を形成する画像形成装置本体2と、画像形成装置本体2にシートSを給送するシート給送装置3Aとを備えている。図9(a)及び図9(b)に示すように、給送カセット4Aは、カセット本体40Aと、位置決めピン42Aと、位置決めブロック49a,49bと、インナレール43A,44と、インナベアリング45,46と、インナスペーサ47,48と、を備えている。位置決めピン42Aは、カセット本体40Aのスライド方向Xにおける奥X2側の略中央部に設けられている。位置決めブロック49a,49bは、位置決めピン42Aの両側に設けられており、嵌合位置で筐体50Aの内壁と当接するように形成されている。インナレール43Aには、スライド方向Xにおける手前X1側に規制手段の解除部としての逃げ部43cが設けられている(図12(b)図13(b)参照)。逃げ部43cは、アウタスペーサ57,58から離れる方向に広がるように形成されており、嵌合開始位置から嵌合位置までの間、アウタスペーサ57,58との隙間を大きくするために設けられている。
【0037】
図10に示すように、装置本体5Aは、筐体50Aと、位置決め穴52Aと、アウタレール53,54と、アウタベアリング55,56と、アウタスペーサ57,58と、を備えている。筐体50Aの内部の上面には、位置決め穴52Aが設けられており、位置決め穴52Aは、位置決めピン42Aが嵌合可能に形成されている。第2実施形態においては、位置決めピン42Aが位置決め穴52Aと嵌合すると共に、位置決めブロック49a,49bが筐体50Aに当接することにより、給送カセット4Aが装置本体5のシート給送位置に位置決めされる。そして、この嵌合位置がシート給送位置になる。
【0038】
次に、インナスペーサ47,48とアウタレール53との隙間及びアウタスペーサ57,58とインナレール43Aとの隙間について、図11(a)から図13(b)を参照しながら説明する。図11(a)は、第2実施形態に係る給送カセット4を装置本体5から引き出した状態の図3に示すA−A矢視断面図である。図11(b)は、図11(a)の図3に示すB−B矢視断面図である。図12(a)は、第2実施形態に係る給送カセット4が位置決めピン42Aにより装置本体5に固定される直前の状態の図3に示すA−A矢視断面図である。図12(b)は、図12(a)の図3に示すB−B矢視断面図である。図13(a)は、第2実施形態に係る給送カセット4が位置決めピン42Aにより装置本体5に固定された状態の図3に示すA−A矢視断面図である。図13(b)は、図13(a)の図3に示すB−B矢視断面図である。
【0039】
図11(a)及び図11(b)に示すように、給送カセット4Aが引出し位置にある状態においては、第1実施形態と同様であるため、ここではその説明は省略する。次に、給送カセット4Aが嵌合開始位置から嵌合位置にあるときの隙間は、図12(a)から図13(b)に示すように、インナレール43Aとアウタスペーサ57との隙間及びインナレール43Aとアウタスペーサ58との隙間はD11である。また、アウタレール53とインナスペーサ47との隙間はD12であり、アウタレール53とインナスペーサ48との隙間はD13である。
【0040】
第2実施形態においては、インナレール43Aとアウタスペーサ57との隙間及びインナレール43Aとアウタスペーサ58との隙間が拡大するように、逃げ部43cが形成されている。逃げ部43cは、隙間D11が構成するアウタスペーサ57,58等の寸法のバラつきが生じた場合においても、隙間がなくならないように形成されている。同様に、隙間D12及びD13は、第2穴部60a,60bにより、インナスペーサ47,48等の寸法のバラつきが生じた場合においても、隙間がなくならないように形成されている。
【0041】
また、隙間D11は、隙間D12及びD13よりも小さくなるように設定されている。そのため、例えば、ユーザが嵌合開始位置の給送カセット4Aに触れた場合においても、給送カセット4Aは、水平方向の移動が規制されているため、図14に示す矢印Y方向に回動しない。
【0042】
このように、第2実施形態においては、給送カセット4Aのスライド方向Xの奥X2側に位置決め部材が集中している場合においても、給送カセット4Aのガタつきを抑制可能となり、高級感を向上させることができる。また、第1実施形態と同様に、レールとスペーサとの接触による摩擦力が発生せず、レールとスペーサに干渉されることなく嵌合させることができるため、着脱時の操作力を低減させることができる。
【0043】
また、例えば、給送カセットの剛性が低い場合においては、インナレール43Aとアウタスペーサ57,アウタスペーサ58とが接触するように設定(隙間D11=0)しても、操作力に影響を及ぼすことなく、給送カセット4Aのガタつきを抑止することができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されない。
【0045】
例えば、本実施形態においては、規制手段は、インナレール及びアウタレールに解除部としての第1穴部及び第2穴部を形成して構成したが、本発明においては、これに限定されない。規制手段は、例えば、嵌合開始位置に到達することで、アウタレールの幅を広げたり、インナレールの幅を狭めるように構成して、水平方向における給送カセットの案内(規制)を解除する構成であってもよい。
【0046】
また、本実施形態においては、装置本体及び給送カセットに案内部材を設け、装置本体及び給送カセットに案内部材に対応した被案内部材を設けたが、本発明においては、これに限定されない。例えば、装置本体及び給送カセットの一方に案内部材を設け、装置本体及び給送カセットの他方に被案内部材を設けていればよい。
【符号の説明】
【0047】
1 画像形成装置
2 画像形成装置本体
3 シート給送装置
4 給送カセット
5 装置本体
22 画像形成部
41 第1位置決めピン(嵌合突起)
42 第2位置決めピン(嵌合突起)
43,44 インナレール(案内部材)
47,48 インナスペーサ(被案内部材)
51 第1位置決め穴(嵌合穴)
52 第2位置決め穴(嵌合穴)
53,54 アウタレール(案内部材)
57,58 アウタスペーサ(被案内部材)
60a,60b 第2穴部(解除部)
61a,61b 第1穴部(解除部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、
シートを積載し、かつ、シートを給送するシート給送位置及び前記装置本体から引き出された引出し位置の間でスライド自在な給送カセットと、
前記装置本体及び前記給送カセットの一方に設けられる嵌合突起と前記装置本体及び前記給送カセットの他方に設けられる嵌合穴とを有し、前記給送カセットが前記シート給送位置にスライド移動する際に、前記嵌合突起が前記嵌合穴に嵌合することで前記給送カセットの位置を位置決めする位置決め手段と、
前記給送カセットがスライド移動する際に、前記引出し位置から前記位置決め手段の嵌合が開始される嵌合開始位置までは、前記給送カセットのスライド方向と直交する水平方向の動きを規制し、前記嵌合開始位置から前記シート給送位置までは、前記給送カセットの前記水平方向の動きの規制を解除する規制手段と、
を備えたことを特徴とするシート給送装置。
【請求項2】
前記規制手段は、
前記装置本体及び前記給送カセットの一方に設けられ、前記スライド方向に延設された案内部材と、
前記装置本体及び前記給送カセットの他方に設けられ、前記案内部材に対してスライド自在に案内されると共に、前記案内部材により前記給送カセットの前記水平方向の動きを規制する被案内部材と、
前記給送カセットが前記シート給送位置に向かって移動して前記嵌合開始位置で前記位置決め手段が嵌合を開始すると、前記案内部材による前記被案内部材の案内を解除する解除部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のシート給送装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシート給送装置と、
前記シート給送装置により給送されるシートに画像を形成する画像形成部と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−28466(P2013−28466A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167584(P2011−167584)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】