説明

シート裁断装置、並びにそれを備えたシート後処理装置及び画像形成システム

【課題】簡易な構成によって、裁断刃204に対する安全性を良好に確保することを可能とする。
【解決手段】シート束T5に対して裁断刃204による裁断作用を行うにあたって、裁断刃204が待機位置から剪断作用位置に向かって移動するときに屑箱209の一部に係合する屑箱固定手段209b,209cを設け、裁断刃204の使用時、すなわちシート束T5に対して裁断刃204による裁断作用が行われる際に屑箱固定手段209b,209cの係止作用により屑箱209の取り出しを禁止し、裁断刃204が外方に露出した状態で待機位置に格納されないまま停止されてしまった場合でも、裁断刃204と作業者との間に屑箱209を介在させて作業者の手が裁断刃204に触れてしまうおそれをなくすように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート束を裁断刃により裁断した際の切り屑を収納する屑箱を備えたシート裁断装置、並びにそれを備えたシート後処理装置及び画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、裁断刃によりシート束を裁断するように構成されたシート裁断装置が種々の分野で用いられている。例えば、近年の複写機、印字装置、ファクシミリ等の画像形成装置や、製本装置等の画像形成システムにおいては、シート処理多様化の一貫として、中綴じ製本や、くるみ製本などの後処理によって、折り処理機構(中折りユニット)で冊子状に折り合わせた中折りシート束をシート裁断装置(トリマーユニット)により切り揃えることが行われている。例えば、図13に示されているように、中折り部(図示左端縁部)を中心として冊子状に折り合わせられた中折りシート束301は、その見開き端縁部(図示右端縁部の小口)301aが山形状に張り出した湾曲面状態になされるため、そのままの状態ではユーザーが指でページめくりをして開こうとしたときに中央のページで止まってしまい、それ以上ページを開くことが困難になることがある。そのため従来から、シート裁断装置(トリマーユニット)の裁断手段に設けられた裁断刃を用いて、上述した中折りシート束301の見開き端縁部(小口)301aを略直線状に切り揃えて平坦面状態とし、良好な製本状態とすることが行われている。
【0003】
このとき、上述したシート裁断装置(トリマーユニット)の裁断手段には、中空状筐体をなすように形成された屑箱が裁断刃の直下位置に配置されており、裁断刃により裁断されたシート束から落下する切り屑を屑箱の内部に受けて収納するようにしている。その屑箱は、通常、本体ケーシングに対して取り出し可能に装着されており、当該屑箱の内部に切り屑がある程度貯まってきたら、本体ケーシングから外方に取り出して再び屑箱を空状態とすることができる構成になされている。
【0004】
また、上述したシート裁断装置(トリマーユニット)を用いて中折りシート束301を裁断する際には、裁断刃に対する安全性を考慮する必要があることから、装置の未使用時には作業者が裁断刃に触れることのできないように裁断刃を待機位置に格納する構成が従来から採用されている。このような構成を有する裁断手段でシート束の裁断を行うにあたっては、装置内部に格納された待機位置から裁断刃が移動を開始して外方に突出し、装置の使用時にのみ裁断刃が外方に露出するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−82153号公報
【特許文献2】特開平05−169396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなシート裁断装置(トリマーユニット)は、切り屑の大きさが例えば10mm以上の場合にも対応していることから、緊急停止等により切断刃が外方に露出した状態のままで停止されたときに、切り屑が屑箱に入る経路を通してユーザが指を入れることが可能となることから危険な状態になるおそれがある。例えば、複写機等において記録シートが詰まったジャム状態になると、駆動系が一斉に停止して切断刃が裁断の途中位置、つまり待機位置に格納されない位置で止まってしまうことがある。その場合には、上述したように裁断刃が外方に露出した状態のままになることから、当該裁断刃の直下で屑箱の取り出し作業を行うと、作業者の手が裁断刃に触れてしまうおそれがある。
【0007】
そこで本発明は、簡易な構成で、裁断刃に対する安全性を良好に確保することができるようにしたシート裁断装置、並びにそれを備えたシート後処理装置及び画像形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明では、シート束を裁断する裁断刃が、装置内部に格納された待機位置から前記シート束に対する剪断作用位置に向かって移動するように構成されているとともに、その裁断刃により裁断されたシート束から落下する切り屑を受けて内部に収納する屑箱が、本体ケーシングに対して取り出し可能に装着されたシート裁断装置において、前記裁断刃が前記待機位置から前記剪断作用位置に向かって移動するときに、前記屑箱の一部に係合する屑箱固定手段が設けられた構成が採用されている。
【0009】
このような構成を有する本発明によれば、装置の未使用時に作業者が裁断刃に触れることのできない待機位置に格納されることに加えて、裁断刃の使用時、すなわちシート束に対して裁断刃による裁断作用が行われる際には、屑箱固定手段の係止作用によって屑箱の取り出しが禁止されることとなるため、裁断刃が外方に露出した状態で待機位置に格納されないまま停止されてしまった場合でも、裁断刃と作業者との間に屑箱が介在することなり、作業者の手が裁断刃に触れてしまうおそれがなくなる。
【0010】
このとき、本発明における屑箱固定手段は、前記裁断刃と同期して移動する係合部材と、その係合部材が挿入・離間可能となるように前記屑箱に設けられた係止部材と、を備えた構成とすることが可能である。この場合において、例えば、係合部材がピン状部材から形成されているとともに、前記係止部材は前記ピン状部材が挿入・離間される穴部から形成された構成を採用することが可能である。
【0011】
このような構成を有する本発明によれば、屑箱固定手段の構成を簡素化しつつ確実な動作が行われる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明は、装置の未使用時に作業者が裁断刃に触れることのできない待機位置に格納されることに加えて、シート束に対して裁断刃による裁断作用を行うにあたって、裁断刃が待機位置から剪断作用位置に向かって移動するときに屑箱の一部に係合する屑箱固定手段を設けて、裁断刃の使用時、すなわちシート束に対して裁断刃による裁断作用が行われる際には屑箱固定手段の係止作用により屑箱の取り出しを禁止し、裁断刃が外方に露出した状態で待機位置に格納されないまま停止されてしまった場合でも、裁断刃と作業者との間に屑箱を介在させて作業者の手が裁断刃に触れてしまうおそれをなくすように構成したものであるから、簡易な構成によって、裁断刃に対する安全性を良好に確保することができ、シート裁断装置、並びにそれを備えたシート後処理装置及び画像形成システムの信頼性を、安価かつ大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用した画像形成システムの一例を表した全体構成を表した側面説明図である。
【図2】図1に表された画像形成システムの後処理装置(シート取扱い装置)の全体構成を表した拡大側面説明図である。
【図3】図2の装置に表された後処理装置における中綴じステープルユニットの構成を表したものであって、(a)は全体構成を表した側面説明図、(b)はアンビル部を表した正面説明図である。
【図4】図2の装置に表された後処理装置における折りロール機構の側面説明図であり、(a)はシート束を集積した状態を、(b)は折りブレードで折りロールにシート束を挿入した状態を、(c)は折りロールで折り合わせる初期状態を、(d)は折りロールでシート束を折り合わせた状態を示したものである。
【図5】本発明の一実施形態におけるトリマユニット(シート裁断装置)の全体構成を表した部分拡大側面説明図である。
【図6】図5に表したトリマユニット(シート裁断装置)における位置決め状態を拡大して示した側面説明図であって、(a)は中折りシート束が搬送された状態を、(b)は中折りシート束に対する斜行補正(レジ取り動作)の状態を、(c)は中折り束プレス動作状態を、(d)は束プレス後に搬送し空気抜き動作状態をそれぞれ示したものである。
【図7】トリマユニット(シート裁断装置)において中折りシート束を裁断して屑が排出される状態の部分拡大側面説明図であって、(a)は中折りシート束が裁断位置に搬送された状態を、(b)は裁断直後の状態を表したものである。
【図8】トリマユニット(シート裁断装置)において中折りシート束を裁断する際の搬送動作を表したものであって、(a)は裁断位置にシート束が配置された状態の全体を表した側面説明図であり、(b)は最大サイズの中折りシート束に対する斜行補正(レジ取り)が行われている状態を表した側面説明図である。
【図9】レジスト手段を装置外方に配置した場合の他の実施形態を表した部分拡大側面説明図である。
【図10】図1に表された画像形成システムの制御構成を表したブロック図である。
【図11】本発明の一実施形態にかかる屑箱の概略構成を表した外観斜視説明図である。
【図12】図11に示された本発明の一実施形態にかかる屑箱と裁断刃との位置関係を表したものであって、(a)は裁断刃が最上位置の待機位置に保持された状態を表した正面説明図、(b)は裁断刃が待機位置から下降し始めた後の途中状態を表した正面説明図、(c)は裁断刃が最下位置の剪断作用位置まで下降した状態を表した正面説明図、(d)は裁断刃が再び最上位置の待機位置の近傍位置まで上昇した状態を表した正面説明図である。
【図13】中綴じ製本された直後の中折りシート束を表した側面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、画像形成装置としての複写機Aにシート後処理装置Bを備えた画像形成システムに本発明を適用した実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
[画像形成システムの構成]
図1に示されている画像形成システムは、カット紙等のシート状記録媒体に画像を形成する画像形成装置Aに対して、シート後処理装置Bが連設されたものであって、画像形成装置Aの排紙口3にシート後処理装置Bの搬入口23aが連結されている。そして、前記画像形成装置Aで画像を形成されたシート状記録媒体をシート後処理装置Bでステープル綴じしてスタックトレイ21又はサドルトレイ22に収納する構成になされている。
【0016】
[画像形成装置の構成]
このような画像形成システムのうちの画像形成装置Aは、図1に示されているように、給紙部1からカット紙等のシート状記録媒体を画像形成部2に送り、画像形成部2でシート状記録媒体に印字を行った後に排紙口3から排出するように構成されている。給紙部1は、複数サイズのシート状記録媒体が給紙カセット1a,1bに収納してあり、指定されたシート状記録媒体を1枚ずつ分離して画像形成部2に給送する。画像形成部2は、例えば静電ドラム4と、その静電ドラム4の周囲に配置されたレーザ発光ユニット5と、現像器6と、転写チャージャ7と、定着器8とから構成されており、前記静電ドラム4上にレーザ発光ユニット5で静電潜像を形成し、これに現像器6でトナーを付着し、転写チャージャ7でシート状記録媒体上に画像を転写し、定着器8で加熱定着する。このようにして画像を形成されたシート状記録媒体は排紙口3からシート処理装置Bへ順次搬出される。そして、図中の符号9は循環経路を示しており、定着器8から表面側に印刷したシート状記録媒体をスイッチバック経路10を介して表裏反転した後に、再び画像形成部2に給送してシート状記録媒体の裏面側に印字する両面印刷の経路である。このように両面印刷されたシート状記録媒体はスイッチバック経路10で表裏反転された後、排紙口3から搬出される。
【0017】
また、図中の符号11は、画像読取装置を示しており、プラテン12上にセットした原稿シートをスキャンユニット13で走査して、図示しない光電変換素子で電気的に読み取る。その画像データは、画像処理部で例えばデジタル処理された後、データ記憶部14に転送され、前記レーザ発光ユニット5に画像データに対応する画像信号が送られる。また、図中の符号15は、原稿送り装置を示したものであり、スタックトレイ16に収容した原稿シートをプラテン12に給送するフィーダ装置である。
【0018】
上記構成を有する画像形成装置Aには、図10に示されているような画像形成装置制御部(コントローラ)150が設けられており、コントロールパネル18から画像形成条件、例えばシートサイズ指定、プリント部数指定、片面・両面印刷指定、拡大・縮小印刷指定などの印刷条件が設定される。一方、画像形成装置Aには、上記スキャンユニット13で読み取った画像データ或いは外部のネットワークから転送された画像データがデータ貯蔵部17に蓄積され、このデータ貯蔵部17から画像データはバッファメモリ19に転送され、このバッファメモリ19から順次レーザ発光ユニット5にデータ信号が移送されるように構成されている。
【0019】
上記コントロールパネル18からは、上述の片面/両面印刷、拡大/縮小印刷、モノクロ/カラー印刷などの画像形成条件と同時に、後処理条件も入力指定される。このときの後処理条件としては、例えば「プリントアウトモード」、「綴じ仕上げモード」、「冊子仕上げモード」などが選定される。
【0020】
[シート後処理装置の構成]
前記シート後処理装置Bは、画像形成装置Aの排紙口3から画像形成されたシート状記録媒体を受け入れ、(i)シート状記録媒体を後処理無しでスタックトレイ21に収容するか(プリントアウトモード)、(ii)排紙口3からのシート状記録媒体を束状に部揃えしてステープル綴じした後、スタックトレイ(第1スタックトレイ)21に収納するか(綴じ仕上げモード)、(iii)排紙口3からのシート状記録媒体を束状に部揃えしてその中央をステープル綴じした後に、冊子状に折り畳んでサドルトレイ(第2スタックトレイ)22に収納する(冊子仕上げモード)ために以下のように構成されている。
【0021】
すなわち、特に図2に示されているように、前記シート後処理装置Bのケーシング(装置フレーム)20には搬入口23aが設けられており、この搬入口23aは画像形成装置Aの排紙口3に連結されている。そして、上記ケーシング20内には、前記搬入口23aからのシート状記録媒体を部揃え集積して綴じ仕上げする第1処理部BX1と、搬入口23aからのシート状記録媒体を部揃え集積して冊子仕上げする第2処理部BX2とが設けられている。前記第1処理部BX1と搬入口23aとの間には第1搬入経路P1が、また第2処理部BX2と搬入口23aとの間には第2搬入経路P2がそれぞれ設けられており、搬入口23aからのシート状記録媒体を第1処理部BX1と第2処理部BX2に振り分けて案内するようになっている。また、前記搬入口23aには、搬入ローラ23と、シートセンサS1と上記第1又は第2搬入経路P1、P2にシート状記録媒体を振り分ける経路切換手段(フラッパ部材)24が設けられている。
【0022】
第1搬送経路P1には、パンチユニット60と処理トレイ29との間に「バッファ経路P3」が設けられている。このバッファ経路P3は、処理トレイ29上に部揃え集積したシート状記録媒体の積載束(以下、シート束という。)にステープル綴じ等の後処理を施す際、この後処理動作中にシート搬入口23aに送られた後続シート状記録媒体を一時的に滞留させる。このため第1搬送経路P1には処理トレイ29に至る経路上流側に図2に示すようにケーシング20の鉛直方向にバッファ経路P3が分岐して配置されている。そして第1搬送経路P1からのシート状記録媒体をスイッチバックさせてこの経路に滞留させるようになっている。従って処理トレイ29に部揃え集積したシート束に後処理(後述の端綴じ処理)を施す際に、搬入口に送られる後続シート状記録媒体を一時的に滞留させ、処理トレイ29で処理された先行シートが搬出された後、この経路の後続シート状記録媒体を処理トレイ29に移送することが可能となる。
【0023】
上記第1搬入経路P1はケーシング20で構成される装置ハウジングの上部に略々水平方向に配置され、この第1搬入経路P1の下流側に第1処理部BX1が、その下流側にスタックトレイ21が配置されている。上記第1搬入経路P1には、搬入口23aと第1処理部BX1の間に後述するパンチユニット60が配置されている。その第1搬入経路P1には、その経路出口端に排紙ローラ25と排紙口25xが設けられ、この排紙口25xには排紙センサS2が配置され、この第1搬入経路P1を通過するシート状記録媒体を検出してジャム検出とシートの通過枚数をカウントするように構成されている。そして、その排紙口25xの下流側に段差を形成して下記の処理トレイ29が配置されている。
【0024】
さらに、上記第2搬入経路P2は、前記ケーシング20の下部に略々鉛直方向に配置されており、この第2搬入経路P2の下流側に第2処理部BX2が配置され、その下流側にサドルトレイ22が配置されている。また、上記第2搬入経路P2には、第2処理部BX2とサドルトレイ22との間に、後述するトリマユニット(裁断ユニット)90が配置されている。さらにまた、上記第2搬入経路P2には搬送ローラ27が設けられ、その下流側に段差を形成して後述する集積ガイド45が配置されている。
【0025】
[第1処理部の構成]
ここで、上述の第1処理部BX1は、第1搬入経路P1に配置された処理トレイ29と、この処理トレイ29に配置された端綴じユニット31と、アライニング手段51で構成されている。そのうちの処理トレイ29は、合成樹脂プレートなどで形成され、シート状記録媒体を積載支持するシート支持面29aを備えている。このシート支持面29aは第1搬入経路P1の排紙口25xの下流側に段差を形成して配置され、排紙口25xからのシート状記録媒体を積載収納するようになっている。図示のシート支持面29aは、シートの排紙方向長さより短い長さ寸法に形成され、排紙口25xからのシートの後端部を支持し、シート先端部はスタックトレイ21の最上シートの上に支持(ブリッジ支持)するようになっている。
【0026】
上記処理トレイ29には、シート端規制手段32が設けられ、排紙口25xからのシート後端(又は先端であっても良い)を突き当てて整列する。そして処理トレイ29の上方にはトレイ上に搬入したシート状記録媒体をシート端規制手段32に移送するスイッチバックローラ(第1の摩擦回転体;以下同様)26(可動ローラ26a、従動ローラ26b)と、アライニング手段51と、サイド整合手段34が配置されている。
【0027】
上記スタックトレイ(昇降トレイ)21は、シートの積載量に応じて上下昇降するように構成されている。昇降トレイ21はシート状記録媒体を積載するトレイ形状に構成され、ケーシング20の側壁から装置外部に突出するように構成されている。このためトレイ基端部は、上下2個所にガイドコロが設けてあり、このガイドコロが装置フレーム(不図示)に設けた昇降ガイドに嵌合支持されている。
【0028】
また、前記第2処理部BX2は、前述のように第2搬入経路P2に配置された集積ガイド45と、この集積ガイド45に配置された中綴じステープルユニット40と、折り処理機構(中折りユニット)44と、トリマユニット(裁断ユニット)90とで構成されている。以下この集積ガイド45、中綴じステープルユニット40、折り処理機構44、トリマユニット(裁断ユニット)90の順に説明する。
【0029】
[集積ガイド]
集積ガイド45は、前述の第2搬入経路P2の下流側に連続して配置され、搬入口23aからのシート状記録媒体を立位姿勢で順次積載収納するように構成されている。特に図示の集積ガイド45は、ケーシング20を縦断するように略々鉛直方向に配置されており、シート状記録媒体を立位姿勢で集積するように構成され、これによって装置を省スペース、小型コンパクトに構成している。また、図示の集積ガイド45は中央で屈曲したガイドプレートで構成され、この集積ガイド45は内部に最大サイズシート状記録媒体を収納する長さ形状に形成され、後述する中綴じステープルユニット40と折り処理機構44を配置する側に突出するように湾曲又は屈曲した形状に構成されている。そして集積ガイド45にはシート先端を規制する先端ストッパ43が設けられ、この先端ストッパ43はシートサイズ(排紙方向の長さ)に応じて位置移動するようになっている。
【0030】
[中綴じステープルユニット]
上述の集積ガイド45には、中綴じステープルユニット(以下「中綴じユニット」という)40が配置され、この集積ガイド45に部揃え集積されたシート束の中央部をステープル綴じするようになっている。すなわち、本実施形態におけるシート後処理装置Bは、中折り部を中心として冊子状に折り合わせた中折りシート束を作成するために中綴じを行う中綴じユニット40を備えており、その中綴じユニット40に対して、後述するシート裁断装置が連設されているが、中綴じユニット40の構成を図3(a),(b)に基づいて説明する。
【0031】
この中綴じユニット40は、ドライバ70とクリンチャ75とで構成されている。ドライバ70は綴じ位置にセットされたシート束にステープル針を刺入するヘッド部材70aと、ステープル針を収容したカートリッジ71と、ドライブカム77と、このドライブカム77を駆動するステープルモータMDとで構成されている。上記ドライバ70はフレームのヘッド部材70aに図3(b)に示すようにドライバ部材72とフォーマ73とベンディングブロック74が上下にこの順に内蔵されている。そしてドライバ部材72とフォーマ73とは上死点と下死点との間で上下往復動するようにヘッド部材70aに上下摺動自在に支持され、ベンディングブロック74は直線状のステープル針をコの字状に折り曲げる成形型としてヘッド部材70aに固定されている。
【0032】
またフレームにはステープル針を内蔵したカートリッジ71が内部に装着され、上記ベンディングブロック74にステープル針を順次供給する。上記ドライバ部材72とフォーマ73とはフレームに揺動自在に取り付けられたドライブレバー76に連結され、上死点と下死点との間で上下駆動される。上記フレームにはドライブレバー76を上下駆動する蓄勢スプリング(不図示)が設けられ、この蓄勢スプリングに蓄力するドライブカム77と、このドライブカム77を駆動するステープルモータMDが設けられている。
【0033】
上述のドライバ70とシート束を挟んで対向する位置にクリンチャ75が配置されている。図示のクリンチャ75はドライバ70と分離した構造体で構成され、ドライバ70でシート束に刺入されたステープル針の針先を折り曲げる。このためクリンチャ75はステープル針の先端を折り曲げる折曲げ溝(アンビル)75aを備えている。特に図示のクリンチャ75は集積ガイド45に集積されたシート束の幅方向2個所以上に複数の折曲げ溝75a1,75a2が設けられ、この位置に移動するドライバ70でシート幅方向の複数個所をステープル綴じすることを特徴としている。このように構成することによって集積ガイド45上に支持されたシート束に対してクリンチャ75を移動することなく固定した状態で左右2個所をステープル綴じすることができる。
【0034】
この他、クリンチャ75としてはステープル針の針先を折り曲げるウイング部材(不図示)を設け、このウイング部材をドライバ70でシート束に刺入される針先と連動(同期)して揺動回転させる構成を採用することも可能である。この場合はクリンチャ75のフレームに一対の折曲げウイングをコの字状の針両端に対向する位置に揺動可能に軸支持する。そしてドライバ70でステープル針をシート束に刺入する動作に連動して一対の折曲げウイングを揺動させる。この一対のウイングの揺動でステープル針の針先端はシート束の裏面に沿ってフラットな状態で折り曲げられる。つまり前述の折曲げ溝で折り曲げると針先端はU字状に折り曲げられた状態(メガネクリンチ)となり、後述のウイング部材で折り曲げると針先端は直線的に折り曲げられた状態(フラットクリンチ)となる。本発明はそのいずれの構成も採用可能である。
【0035】
このような構成によってヘッド部材70aに内蔵されたドライバ部材72とフォーマ73はステープルモータMDの回転でドライブカム77が蓄勢性スプリングを介してドライブレバー76を上方の上死点から下方の下死点に押下する。このドライブレバー76の下降動作でこれに連結されたドライバ部材72とフォーマ73が上死点から下死点に移動する。ドライバ部材72はコの字状に折り曲げられたステープル針の背部を押下するように板状部材で構成され、フォーマ73は図3(b)に示すようにコの字状の部材で構成されベンディングブロック74との間でステープル針をコの字状に折り曲げる。つまり前述のカートリッジ71からステープル針がベンディングブロック74に供給され、この直線状のステープル針をフォーマ73とベンディングブロック74との間でコの字状にプレス成型し、次いでこのコの字状に折り曲げられたステープル針をドライバ部材72がシート束に向けて勢いよく押下することによって針をシート束に刺入する。
【0036】
[折り処理機構]
再び図2に戻って、上述した中綴じユニット40の下流側に配置された折り位置には、シート束を折り合わせる折ロール手段46と、この折ロール手段46のニップ位置にシート束を挿入する折ブレード47とから構成される中折りユニット44が備えられている。折ロール手段46は、特に図4に示されているように、互いに圧接した一対のロール部材からなる折ロール46a,46bで構成されており、それらの各折ロール46a,46bの全長は、略々最大サイズのシート幅に形成されている。
【0037】
上記一対の折ロール46a,46bは、ゴムローラなどの摩擦係数の大きい材料で形成されている。これはゴムなどの軟質材によってシート状記録媒体を折曲げながら回転方向に移送するためであり、ゴム質材をライニング加工することによって形成しても良い。この折ロール46a,46bには、シート幅方向に延在する凹凸形状のギャップが形成してある。このギャップは、後述する折ブレード47先端部分の凹凸と一致するように配置してあり、折ブレード47の先端部分がロールニップ間に進入し易いように配慮してある。つまり、一対の互いに圧接した折ロール46a,46bは、シート幅方向に間隙(ギャップ)を有する凹凸形状に形成され、この間隙に中折りシート束のステープル綴じ個所及び凹凸形状に形成した折ブレード47の刃先が進入するようになっている。
【0038】
上述した折ロール手段46によりシート状記録媒体を折り合わせる動作を、図4(a)〜(d)に従って説明する。この一対の折ロール46a,46bの集積ガイド45に支持されたシート束を挟んで、対向する位置にナイフエッジを有する折ブレード47が設けられている。この折ブレード47は、図4(a)の待機位置から同図(c)のニップ位置との間で往復動可能に装置フレームに支持されている。
【0039】
そこで、前記集積ガイド45に束状に支持されたシート束は、同図(a)の状態で先端ストッパ43に係止され、その折り目位置をステープル綴じされた状態で折り位置に位置決めされる。このシート束のセット終了信号を得て、駆動制御手段(後述のシート束折り動作制御部164d;以下同様)は、クラッチ手段をOFFする。
【0040】
次いで、駆動制御手段164dは、折ブレード47を待機位置からニップ位置に向かって所定速度で移動する。そこで図4(b)の状態にシート束は折り目位置を折ブレード47によって屈曲されロール間に挿入される。このとき、前記折ロール46aと46bは折ブレード47によって移動するシートに連なって従動回転する。そして、前記駆動制御手段164dは、シート束が所定のニップ位置に到達する見込み時間の後、ブレード駆動モータ(不図示)を停止し、折ブレード47を同図(c)の位置で停止させる。これと前後して駆動制御手段164dはクラッチ手段をON状態に切換えて折ロール46a,46bを駆動回転する。するとシート束は繰り出し方向(同図左側)に送り出される。その後、駆動制御手段164dは、同図(d)の状態に折ロール46a、46bによるシート束の繰り出しと並行してニップ位置に位置する折ブレード47を待機位置に向けて移動復帰させる。
【0041】
このようにして折り合わされた中折りシート束は、まず一対の折ロール46a,46b間に喰え込まれる際に、ロール表面と接するシートが回転するロールによってロール間に引き込まれることがない。つまり、これらの折ロール46a,46bは、挿入される(押し込まれる)シート束に追随(従動)して回転するため、ロールと接するシート状記録媒体のみが先に巻き込まれることがない。またこの挿入されるシート束にロールが追随して従動回転するため、ロール表面とこれと接するシートが擦れることがなく、画像擦れを招くことがない。
【0042】
[トリマユニット]
このような構成になされた第2処理部BX2の折り処理機構44の搬送方向下流側(図2の左方側)には、前述したサドルトレイ(第2スタックトレイ;以下同様)22に搬送案内されていく中折れシートの見開き端縁部(小口)を切り揃える裁断手段を備えたトリマユニット90が配置されている。このトリマユニット90は、シート裁断装置を構成するものであって、中折り部を中心として冊子状に折り合わせた中折りシート束Tを搬送する搬送手段と、前記中折りシート束Tの斜行補正を行うレジスト手段210と、前記中折りシート束Tの見開き端縁部を切り揃える裁断手段204と、を備えている。すなわち、上述した折り処理機構44において複数枚のシート束を中央で冊子状に折り合わせてマガジン折を行うと、その折り合わせ端部である見開き端縁部(小口部)が不揃いとなることから、その折り処理機構44で折り合わせられた中折りシート束の見開き端縁部(小口部)を、シート裁断装置としてのトリマユニット90で所定量カットすることによって、中折りシート束はシート端縁が揃った状態に仕上げられる。
【0043】
トリマユニット(シート裁断装置)90は、例えば図5に示されているような概略構成を有している。すなわち、前述した折り処理機構44の折りローラ対46a,46bの折り動作によって中折り部を中心として冊子に折り合わされた中折りシート束は、当該中折りシート束の中折り部側からトリマ入り口ローラ対201a,201bに受け渡されて所定の位置まで搬送手段により略水平に搬送される。そのときの中折りシート束は、入口センサ201cで検知される。その後、その中折りシート束の斜行補正を行うレジスト手段210による斜行補正動作、束プレス手段202による束プレス動作、及び中折りシート束の見開き端縁部を切り揃える裁断手段204によるシート束裁断動作が行われる。そして、上記裁断手段204により中折りシート束の見開き端縁部(小口部)が略直線状に裁断されてから、最後に排紙ローラ対203a,203bにより積載トレイとしてのサドルトレイ22に中折りシート束が排出される。そのときの中折りシート束は、出口センサ203cで検知される。
【0044】
ここで、上述した各動作に沿ってトリマユニット(シート裁断装置)90の構成を説明する。すなわち、そのトリマユニット90は、まず図6(a)及び(b)に示されたシート束レジ取り動作と、図6(c)及び(d)に示された束プレス動作とを行うように構成されていて、同図(a)の状態は、上述した折りローラ対46a,46bから中折りシート束T1が抜けてトリマ入り口ローラ対201a,201bにて束搬送された状態であり、当該中折りシート束T1における図示左端部の中折り部が、レジスト手段を構成しているレジ取り板210の近傍位置まで搬送され停止されている。
【0045】
上述したレジスト手段としてのレジ取り板210は、中折りシート束T1の中折り部が突き当てられる立壁部210aを有しており、その立壁部210aが中折りシート束T1の搬送路に突き出した状態の図6(a)〜(c)の作用位置から、中折りシート束T1の搬送路から退避した状態の図6(d)の非作用位置まで傾倒されるように回動可能に取り付けられている。このレジ取り板210の傾倒動作及びそれと逆の動作は、不図示のソレノイドにより行われる機構になされている。さらに、そのレジ取り板210は、前記中折りシート束T1の搬送方向において往復移動可能となるように設けられており、当該レジ取り板210のレジ取り駆動部211に設けられた不図示のモータによって図示左右方向である搬送方向に往復移動される構成になされている。
【0046】
そして、前記レジスト手段としてのレジ取り板210は、当該レジ取り板210が初期位置から図示右方側に移動する際に斜行補正を行う構成になされている。すなわち、前記レジ取り板210が、図6(a)の初期位置から図示右方側に移動して、図6(b)のように、そのレジ取り板210の立壁部210aが中折りシート束T2の中折り部に突き当てられ、さらにその突き当て状態から当該レジ取り板210が搬送方向上流側に向かって押し込まれるときに、そのレジ取り板210の立壁部210aに沿って中折りシート束T2がならい、それによって中折りシート束T2のレジ取り動作、つまり斜行補正が行われるようになっている。
【0047】
このような斜行補正のためにレジ取り板210により中折りシート束T2を押し込む量は、例えば10mm程度に設定されているが、そのレジ取り板210による中折りシート束T2に対する押し込みによるレジ取り動作を2回以上にわたって行わせるようにしておけば、斜行補正の作用がより確実に行われることとなる。また、そのレジ取り板210によるレジ取り動作(斜行補正動作)の回数を、中折りシート束T2の厚さ、つまりシート枚数に対応して増減させるように構成しておけば、必要かつ十分なレジ取り動作(斜行補正動作)を行わせることが可能となる。
【0048】
このようにして斜行補正(レジ取り)が行われた中折りシート束T2は、図6(c)のように、束プレス手段202による束プレス動作が行われる。束プレス手段202は、中折りシート束T2の膨らみを潰す束プレスローラ202b及び束プレスコロ202cを有している。これらの束プレスローラ202b及び束プレスコロ202cは、棒状部材からなる回動アーム202d,202eにより上下動可能に支持されているとともに、それらの束プレスローラ202bと束プレスコロ202cとがリンク棒202fを介して互いに連結されている。そして、図6(b),(c)のように、上記束プレスローラ202b及び束プレスコロ202cの双方が下降して、中折りした後に中折りシート束T2に形成される膨らみ部分に対して上方側から押圧して空気抜きされた中折りシート束T3とする構成にされている。
【0049】
このとき、束プレスローラ202bが単独で押圧すると、中折りシート束T2を線状に押すだけとなり、その束プレスローラ202bとレジ取り板210との間の中折りシート束T2に膨らみが発生してしまい、束プレスが上手く行かなって後述する裁断工程においてカット不良を引き起こすこととなる。これに対して本実施形態では、上述したように束プレスローラ202bと束プレスコロ202cの両方で押すように構成されているので、中折りシート束T2を面状に押した場合とほぼ同様な押圧作用が得られることとなって確実かつ十分に空気を抜くことが可能となっている。具体的には、上述した束プレスコロ202cは、中折りシート束T2の膨らみ部分のほぼ頂部に相当する位置に配置されているとともに、その束プレスコロ202cから中折りシート束の見開き端縁部(小口部)側(図示左方側)にやや離れた位置に束プレスローラ202bが配置されている。
【0050】
また、上述した束プレスローラ202b及び束プレスコロ202cは、中折り部を中心として冊子状に折り合わせた中折りシート束Tを搬送する搬送手段を構成するように回転可能に取り付けられており、図6(d)のように、束プレス動作を行った状態で中折りシート束T4が装置出口側(図示左方側)に向かって所定量搬送されるようになっている。このような束プレスローラ202b及び束プレスコロ202cで中折りシート束T4を束プレスしつつ搬送させることによって、工程時間の短縮化による生産性の向上はもちろん、中折りシート束T4内の空気を十分に抜くようにシート束T4を押さえ込むことが可能となり、後述する裁断動作が迅速かつ良好に行われるようになっている。また、このときの搬送量によって後述する裁断動作におけるシート束のカット量が決定されることから、当該搬送量を変化させることにより仕上がり寸法を自在に変えることが可能となる。
【0051】
すなわち、シート束の裁断動作及び屑排出動作は、不図示のモータにより作動される裁断手段としての裁断刃204と、それに同期して作動されるシート押さえ205とによって、例えば図7に示されているようにして行われる。これらの裁断刃204及びシート押さえ205は、前述したトリマ入り口ローラ対201a,201bと、束プレス手段202との間に配置されており、裁断刃204は、下方に配置された下刃206との剪断作用によりシート束T5をハサミのように裁断する構成になされている。
【0052】
また、前記下刃206に対して搬送方向上流側(図示左方側)に近接して屑フラッパー207が配置されている。この屑フラッパー207は、ダストシュート208の内部上端位置に配置されており、前記裁断刃204による裁断動作に同期して下方へ回動する構成になされている。具体的には、まず図7(a)のように、装置未使用時を含む裁断前の裁断刃204は、最上方位置である待機位置に保持されている。この裁断前における待機位置は、裁断刃204が装置内部に格納された位置に設定されており、当該待機位置にある裁断刃204に対して作業者の手が触れることができない構成になされている。また、この裁断前における屑フラッパー207は、略水平に保持されて中折りシート束T5に対する搬送パスの役割を果たし、前記裁断刃204の直下に中折りシート束T5が適宜の位置にセットされる。
【0053】
ついで、図7(b)に示す裁断刃の使用時、すなわち中折りシート束T5に対して裁断刃204による裁断作用が行われる際には、それまで最上方位置の待機位置にあって装置内部に格納されていた裁断刃204が下降を開始し、最下方位置である剪断作用位置に向かって移動する。そして、その下降移動時における当該裁断刃204の中折りシート束T5に対する剪断作用によって、前記中折りシート束T5の見開き端縁部(小口)を切り揃えるように裁断が行われる。このとき屑フラッパー207は下方へ回動され、裁断の際に発生する切り屑204aを、ダストシュート208を通して下方の屑箱209へ落下案内させるようになっている。
【0054】
ここで、上記屑箱209は、特に図11に示されているように、細長の中空状筐体から構成されており、上述した裁断刃204により裁断された中折りシート束T5から落下する切り屑204aを受けて内部に収納するように構成されている。また、その屑箱209は、前記トリマユニット90の本体ケーシング90a(図5参照)に対して取り出し可能に装着されていて、前記本体ケーシング90aの内部における前記裁断刃204の直下の所定位置に装着された屑箱209の内部に切り屑204aがある程度貯まってきたら、本体ケーシング90aから外方に取り出して再び屑箱209を空状態とすることができる構成になされている。
【0055】
一方、本実施形態にかかるトリマユニット(シート裁断装置)90には、前記裁断刃204が上方の待機位置から下方の剪断作用位置に向かって移動するときに、前記屑箱209の一部に係合して本体ケーシング90aに対する前記屑箱209の取り出しを禁止する屑箱固定手段が設けられている。すなわち、本実施形態における屑箱固定手段は、図12に示されているように、前記裁断刃204と同期して移動する係合部材としてのピン状部材209bと、そのピン状部材209bが嵌合・離脱可能となるように前記屑箱209に形成された係止部材としての穴部209cとを備えている。
【0056】
このとき、係合部材を構成しているピン状部材209bは、前記裁断刃204を上下動自在に支持している裁断フレーム204bから下方に向かって所定量だけ突出するように設けられており、前記裁断刃204とともに一体的に上下動される構成になされている。また、屑箱209に係止部材として形成された前記穴部209cは、屑箱209の上端開口部分に設けられた上縁フランジ部209dの角隅部を上下方向に貫通するように形成されており、前記ピン状部材209bの直下位置において互いに対向するように配置されている。そして、その係止部材としての穴部209cに対して、上述した係合部材としてのピン状部材209bが、遊嵌状態で挿入・離間される構成になされている。
【0057】
そして、まず図12(a)に示されているように、裁断工程実行前における裁断刃204は、上述したように装置内部に格納された上方の待機位置に保持されているが、この裁断工程実行前の段階では、上述した係合部材としてのピン状部材209bが、屑箱209に係止部材として設けられた穴部209cの上方位置に離間した状態に保持されている。そのため、屑箱209は、屑箱固定手段により拘束されることがないため、本体ケーシング90aに対して取り出しが可能な状態になされている。
【0058】
一方、図12(b)から(c)にかけて示されているように、裁断工程が実行されることによって裁断刃204が待機位置から下方へ移動を開始すると、その裁断刃204の下降に同期して係合部材としてのピン状部材209bが一体的に下降していき、屑箱209に設けられた係止部材としての穴部209cの内部に挿入されていく。これによって、前記ピン状部材209bは屑箱209の一部に係合した状態になされ、屑箱209が屑箱固定手段により拘束された状態になされる。その結果、本体ケーシング90aに対する屑箱209の取り出しが禁止される。
【0059】
また、図12(d)に示されているように裁断工程を完了した後に、裁断刃204が上昇していくと、それに同期して係合部材としてのピン状部材209bが一体的に上昇し、屑箱209に設けられた係止部材としての穴部209cから前記ピン状部材209bが上方に抜けていく。その結果、ピン状部材209bが屑箱209から離間した状態になされて屑箱209に対する屑箱固定手段の拘束が解放され、本体ケーシング90aに対する屑箱209の取り出しが再び可能となる。
【0060】
このように本実施形態によれば、装置の未使用時に作業者が裁断刃204に触れることのできない待機位置に格納されることに加えて、裁断刃204の使用時、すなわち中折りシート束T5に対して裁断刃204による裁断作用が行われる際には、屑箱固定手段を構成するピン状部材209bと穴部209cとの係止作用によって屑箱209の取り出しが禁止されることとなるため、裁断刃204が外方に露出した状態で待機位置に格納されないまま停止されてしまった場合でも、裁断刃204と作業者との間に屑箱209が介在することなり、作業者の手が裁断刃204に触れてしまうおそれがなくなる。
【0061】
このとき、本実施形態における屑箱固定手段は、裁断刃204と同期して移動する係合部材としてのピン状部材209bと、そのピン状部材209bが嵌合・離脱可能となるように屑箱209に設けられた係止部材としての穴部209cとを備えた構成とされていることから、屑箱固定手段の構成を簡素化しつつ確実な動作を行わせることが可能となっている。
【0062】
次に、裁断工程を裁断手段の構成とともに説明するが、本実施形態においては、レジスト手段としてのレジ取り板210により斜行補正を行った後における中折りシート束Tの中折り部を搬送手段により装置外方に突出させるように搬送してから裁断手段としての裁断刃204による裁断を行うように構成されている。すなわち、まず図8(a)に示されているように、大サイズの中折りシート束T5に対する裁断が行われる場合には、当該中折りシート束T5の中折り部(図示左端部)を装置外方に突出させるように搬送してから位置決めが行われ、裁断中の中折りシート束T5の中折り部が機体の外へまたがって配置された状態で、上述した裁断刃204による裁断が行われる。
【0063】
ここで、裁断中に装置外方に突出する中折りシート束T5の長さ寸法をL2とし、裁断刃204から装置内方に配置されている部分の長さ寸法をL1としたとき、従来装置では、上述したL1+L2の領域が必ず装置内方に納まっていなければならないことから装置全体の大型化を招来している。これに対して本実施形態では、装置外方に突出する中折りシート束T5の長さ寸法であるL2の分だけ、装置全体の長さ寸法が小さく構成されている。
【0064】
また、図8(b)に示すように、大サイズ(A3サイズ以上)の中折りシート束T6に対しては、前述したレジスト手段としてのレジ取り板210の待機位置が、装置外方の位置に設定されるように構成されている。すなわち、大サイズの中折りシート束T6が用いられる場合には、上述したレジ取り板210が、装置外方に設定された待機位置まで突出するように移動されて位置決めされ、その装置外方の待機位置から図示右方側の装置内方に向かって移動する際に斜行補正(レジ取り)を行う構成になされている。ここで、上述した折りローラ対46のニップが中折りシート束T6を解除する位置を起点として、中折りシート束T6が装置内方に配置されている部分の長さ寸法をL3とすると、従来装置では、長さ寸法L3に相当する機体長が、必ず最大シート長以上となるように構成する必要があった。これに対して本実施形態では、レジ取り板210の待機位置が装置外方に突出していることから、そのレジ取り板210の突出距離L4の分だけ装置全体の機体長を小さく構成することが可能となっている。
【0065】
このようにレジスト手段としてのレジ取り板210の初期位置を装置外方の位置に設定するにあたっては、図9に示されているように、トリマユニット(シート裁断装置)90から送り出された中折りシート束T7の後端部分(図示右端部分)が、前記レジ取り板210の立壁部210aの背面側(図示左端面側)に接触するような配置関係とすることが望ましい。これは、特に大サイズの中折りシート束T7がトリマユニット90から送り出された際に、その中折りシート束T7の後端部分が装置外に十分に排出されずに良好なシート積載状態が得られなくなるのを防止するためである。すなわち、図9(a)のように中折りシート束T7の後端部分がレジ取り板210の立壁部210aの背面側に接触することによって、当該中折りシート束T7がレジ取り板210の立壁部210aにより押されるようにして移動されることとなり、図9(b)のような良好なシート積載状態が得られる。
【0066】
さらに本実施形態においては、上述した斜行補正(レジ取り)の動作時に折りローラ対46a,46bが、図8(b)の矢印で示すように逆回転される構成になされている。この折りローラ対46a,46bの逆回転は、当該折りローラ対46a,46bから送り出された中折りシート束T6の見開き端縁部が、折りローラ対46から確実に離間して引っかかることのないようにするものであり、その結果、斜行補正(レジ取り)の動作時に、中折りシート束T6が折りローラ対46のニップ点近傍まで押し込まれることが可能となり、折りローラ対46に対する押し込み長さである図示のL5寸法が延長されることとなり、その分、装置の機体長を小さくすることができる。
【0067】
[制御構成の説明]
次に、図1に示された画像形成システムの制御構成を、図10のブロック図に従って説明する。上述した画像形成システムは、複写機(画像形成装置)Aの画像形成装置制御部(以下「本体制御部」という)150と、シート後処理装置Bの制御部(以下「後処理制御部」という)160とを備えており、本体制御部150は、画像形成制御部151と給紙制御部152と入力部153とを備えている。そして、この入力部153に設けられたコントロールパネル18から「画像形成モード」又は「後処理モード」の設定が行われる。「画像形成モード」は、前述したように、プリントアウト部数、シートサイズ、拡大・縮小印刷、両面・片面印刷、その他の画像形成条件を設定するものであって、この設定された画像形成条件に応じて前記本体制御部150は、画像形成制御部151及び給紙制御部152を制御し、所定のシートに画像形成した後に本体排紙口3からシート状記録媒体を順次搬出する。
【0068】
これと同時に、上述したコントロールパネル18からの入力で「後処理モード」が設定される。この「後処理モード」は、例えば「プリントアウトモード」、「ステープル綴じ仕上げモード」、「シート束折り仕上げモード」等のように設定され、前記本体制御部150から後処理制御部160に、後処理の仕上げモードとシート枚数、部数や綴じモード(1個所止綴じか2個所以上複数綴じか)等の情報が転送される。これと同時に前記本体制御部150からは、画像形成の終了毎にジョブ終了信号を後処理制御部160に転送される。
【0069】
後処理制御部160は、指定された仕上げモードに応じてシート後処理装置Bを動作させる制御CPU161と、実行プログラムを記憶したROM162と、制御データを記憶するRAM163を備えている。そしてこの制御CPU161は、搬入口23aに送られたシートの搬送を実行するシート搬送制御部164aと、シートの集積動作を実行するシート集積動作制御部164bと、シート綴じ処理を実行する綴じ動作制御部164cと、シートの束折り動作及びシート束裁断動作を実行するシート束折り動作制御部164dとを備えており、このように構成された制御部によって、シート後処理装置Bに、「プリントアウトモード」、「ステープル綴じ仕上げモード」、「シート束折り仕上げモード」等の処理動作が実行されるようになっている。
【0070】
このような構成を有する本実施形態によれば、レジスト手段としてのレジ取り板210と裁断手段としての裁断刃204との間の距離が小さい場合であっても、中折りシート束が装置外方に突出することにより斜行補正及び裁断が行われることから、レジ取り板210と裁断刃204との距離を中折りシート束のサイズよりも短く設定することが可能となり、その分、中折りシート束の搬送方向における装置全体の長さが大幅に短縮される。
【0071】
また、本実施形態においては、レジスト手段としてのレジ取り板210が初期位置から移動する際に斜行補正を行う構成になされていることから、そのレジ取り板210と裁断刃204との間の距離を大幅に縮小させた場合であっても、中折りシート束のサイズに応じてレジ取り板210を移送させることによって、大サイズの中折りシート束に対する斜行補正及び裁断が可能となる。
【0072】
さらに、本実施形態においては、レジスト手段としてのレジ取り板210の待機位置が装置外方の位置に設定された構成になされていることから、装置全体の長さを大幅に短縮させた場合であっても、中折りシート束が大サイズで長い場合に対応してレジ取り板210を装置外方に位置させることが可能となり、その場合においてもレジ取り板210の斜行補正機能を損なうことはない。
【0073】
以上、本発明者によってなされた発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であることはいうまでもない。
【0074】
例えば、上述した各実施形態は、複写機を備えた画像形成システムに対して本発明を適用したものであるが、プリンタ等の他の画像形成装置を備えた画像形成システム、あるいは画像形成装置の単独の場合や、シート裁断装置の単独のものに対しても本発明は同様に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上述べたように本発明にかかるシート裁断装置、並びにそれを備えたシート後処理装置及び画像形成システムは、プリンタや複写機などの多種多様な画像形成装置、その他の装置に対して広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0076】
A 画像形成装置
2 画像形成部
B シート後処理装置
BX1 第1処理部
BX2 第2処理部
20 ケーシング(装置フレーム)
21 スタックトレイ(昇降トレイ)
22 サドルトレイ
23 搬入ローラ
25 排紙ローラ
26 スイッチバックローラ
27 搬送ローラ
29 処理トレイ
31 端綴じユニット(後処理手段)
40 中綴じステープルユニット(中綴じユニット)
44 折り処理機構(中折りユニット)
45 集積ガイド
46 折りローラ対
47 折ブレード
51 アライニング手段
60 パンチユニット
70 ドライバ
75 クリンチャ
85 シート移送経路(排紙経路)
90 トリマユニット(シート裁断装置)
90a 本体ケーシング
95 支持フレーム
150 本体制御部
160 後処理制御部
201 トリマ入り口ローラ対
202 束プレス手段
202b 束プレスローラ
202c 束プレスコロ
202d,202e 回動アーム
202f リンク棒
203 排紙ローラ対
204 裁断手段
204a 切り屑
204 裁断刃(裁断手段)
204a 切り屑
204b 裁断フレーム
205 シート押さえ
207 屑フラッパー
208 ダストシュート
209 屑箱
209b ピン状部材(係合部材)
209c 穴部(係止部材)
209d 上縁フランジ部
210 レジ取り板(レジスト手段)
210a 立壁部
211 レジ取り駆動部
T 中折りシート束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート束を裁断する裁断刃が、装置内部に格納された待機位置から前記シート束に対する剪断作用位置に向かって移動するように構成されているとともに、
その裁断刃により裁断されたシート束から落下する切り屑を受けて内部に収納する屑箱が、本体ケーシングに対して取り出し可能に装着されたシート裁断装置において、
前記裁断刃が前記待機位置から前記剪断作用位置に向かって移動するときに、前記屑箱の一部に係合する屑箱固定手段が設けられていることを特徴とするシート裁断装置。
【請求項2】
前記屑箱固定手段は、前記裁断刃と同期して移動する係合部材と、その係合部材が挿入・離間可能となるように前記屑箱に設けられた係止部材と、を備えていることを特徴とする請求項1記載のシート裁断装置。
【請求項3】
前記係合部材が、ピン状部材から形成されているとともに、前記係止部材は、前記ピン状部材が挿入・離間される穴部から形成されていることを特徴とする請求項1記載のシート裁断装置。
【請求項4】
中折り部を中心として冊子状に折り合わせた中折りシート束の中綴じを行う中綴じ製本ユニットを備え、その中綴じ製本ユニットに対して、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のシート裁断装置が連設されていることを特徴とするシート後処理装置。
【請求項5】
画像を形成する画像形成部を備え、その画像形成部に対して、請求項4に記載のシート後処理装置が連設されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
画像を形成する画像形成装置に対して、請求項4に記載のシート後処理装置が連設されていることを特徴とする画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−240780(P2010−240780A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92519(P2009−92519)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】