説明

シート部材、吸収性物品、陰唇間パッドおよびシート部材の製造方法

【課題】表面拡散を抑制し、水流によって容易に分散する水解性を有するシート部材、吸収性物品、陰唇間パッドおよびシート部材の製造方法を提供すること。
【解決手段】親水性繊維と、細径疎水性繊維と、前記細径疎水性繊維よりも繊維径が太い太径疎水性繊維と、を含有しており、全体の90質量%以上は、繊維長が20mm以下であるシート部材によって解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水流によって容易に分解する吸収性物品、この吸収性物品の表面シートに使用するシート部材およびシート部材の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、女性用生理用品としては、生理用ナプキン、タンポンが一般的に用いられている。ここで、生理用ナプキンについては、膣口付近への密着性の乏しさゆえに生じる隙間からの体液の漏れを防止すべく、多大な努力がなされている。また、タンポンにおいても、その物品の属性に起因して、着用時の異物感や不快感、膣内への装着困難性を生じることから、これらを除去するために多大な努力がなされている。
【0003】
一方、生理用ナプキンやパンティライナーあるいは使い捨ての陰唇間パッドは、使用後にごみとして廃棄されているため、ごみの回収と処理に工数とコストがかかる。そこで、陰唇間パッドが、多量の水により早期に分解する水解性(水崩壊性)であれば、使用後の陰唇間パッドをそのままトイレ等に廃棄したときに、トイレ等の配水管を詰まらせることなく、浄化槽等において短時間のうちに分解でき、ゴミの回収と処理に工数とコストを抑えることができる。
【0004】
水解性の陰唇間パッドを製造するには、陰唇間パッドを構成する各要素を水解性の素材で形成することが必要になる。陰唇間パッドの肌側表面に現れる表面シートは、体液を速やかに透過させることが必要であるが、さらに体液が与えられて湿潤状態となったときに身体から与えられる力でシート状態を維持できるだけの強度を保つことが必要となる。しかも、トイレ等多量の水が与えられたときに短時間で水解することも必要になる。
【0005】
例えば、特許文献1には、繊維長4〜20mmの再生セルロース繊維40〜85重量%とパルプ繊維15〜60重量%とからなる水解性不織布を提案している。
【0006】
このような特許文献1に記載の水解性不織布を陰唇間パッドとして使用すると、体液を吸収させた際、表面シート上で体液が拡散・保持され、拡散した体液が肌へ再付着し、肌汚れ等を引き起こす場合があった。
【0007】
かかる水解性の陰唇間パッドとしては、例えば、特許文献2は、陰唇間パッドの表面シートを肌と接する第一の層と第二の層とからなる二層構造にし、第一の層の親水性繊維を40質量%以下とし、第二の層の疎水性繊維の含有量を40質量%以下とした吸収水性物品を提案している。
【特許文献1】特開平9−228214号公報
【特許文献2】特開2004−344443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、引用文献2の吸水性物品は、坪量が低い場合、各層の厚みが薄くなることから親水度勾配の差が減少する。このため、第二の層で保持できる水分量も減少するため引き込み力が低下し、十分な機能を発現させることが困難となる場合があった。
【0009】
また、第二の層側の親水度を高めているため、吸収した体液を吸収体へ移行させにくくなる。このため、表面シートが体液を保持する時間が長くなるため、吸水直後に座る等の圧力がかかると体液が逆戻りしやすい場合もあった。さらに、多層化するには、製造設備も複雑となり、生産性が悪くなる場合もあった。
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、水流によって容易に分散する水解性を有するシート部材、シート部材を表面シートに使用した吸収性物品、陰唇間パッドおよびシート部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、親水度勾配を利用するのではなく、表面シートの親水性と嵩密度を制御することにより毛細管力を低減し、体液の表面拡散を抑えることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0012】
(1) 親水性繊維と、細径疎水性繊維と、前記細径疎水性繊維よりも繊維径が太い太径疎水性繊維と、を含有しており、全体の90質量%以上は、繊維長が20mm以下であるシート部材。
【0013】
(2) 前記親水性繊維と、前記細径疎水性繊維と、前記太径疎水性繊維との平均繊維長は、20mm以下である(1)に記載のシート部材。
【0014】
(3) 前記親水性繊維は、繊維長が20mm以下の繊維を90質量%以上含有している(1)または(2)に記載のシート部材。
【0015】
(4) 前記細径疎水性繊維は、繊維長が20mm以下の繊維を90質量%以上含有している(1)または(2)に記載のシート部材。
【0016】
(5) 前記太径疎水性繊維は、繊維長が20mm以下の繊維を90質量%以上含有している(1)または(2)に記載のシート部材。
【0017】
(6) 前記細径疎水性繊維の平均繊維径は10μm以下であり、前記太径疎水性繊維の平均繊維径は20μm以上である(1)から(5)のいずれかに記載のシート部材。
【0018】
(7) 前記親水性繊維の含有率は、30〜60質量%であり、前記細径疎水性繊維の含有率は、20〜50質量%であり、前記太径疎水性繊維の含有率は、10〜30質量%である(1)から(6)のいずれかに記載のシート部材。
【0019】
(8) 前記太径疎水性繊維は、異型断面繊維である(1)または(7)に記載のシート部材。
【0020】
(9) 嵩密度は、0.10g/cm以下である(1)から(8)のいずれかに記載のシート部材。
【0021】
(10) 目付は、30〜60g/mである(1)から(9)のいずれかに記載のシート部材。
【0022】
(11) 乾燥強度と湿潤強度とは、それぞれ1.0N/25mm以上である(1)から(10)のいずれかに記載のシート部材。
【0023】
(12) 厚さは、0.6mm以下である(1)から(11)に記載のシート部材。
【0024】
(13) 前記親水性繊維と、前記細径疎水性繊維と、前記太径疎水性繊維とから湿式抄紙法により繊維ウェブを形成させた後、前記繊維ウェブの両面または片面に高圧水ジェット流処理を施し、前記親水性繊維と、前記細径疎水性繊維と、前記太径疎水性繊維とを交絡させて得られる(1)から(12)のいずれかに記載のシート部材。
【0025】
(14) 800mlの蒸留水中にサンプル片が10cm×10cmの前記シート部材を投入し、振とう速度240rpmで30分間振とうしたとき、前記シート部材の最大片の大きさが、50cm以下に分散される(1)から(13)のいずれかに記載のシート部材。
【0026】
(15) (1)から(14)のいずれかに記載のシート部材からなる、身体側に面する表面シートと、前記表面シートの厚さ方向における一方側に配設される裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に配設される液保持性の吸収体と、を備える吸収性物品。
【0027】
(16) 身体側に面する表面シートと、前記表面シートの厚さ方向における一方側に配設される裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に配設される液保持性の吸収体と、を備える陰唇間パッドであって、前記表面シートは、繊維長が5mm以上の親水性繊維と、細径疎水性繊維と、前記細径疎水性繊維よりも繊維径が太い太径疎水性繊維と、を含有しており、全体の90質量%以上は、繊維長が20mm以下である陰唇間パッド。
【0028】
(17) 前記親水性繊維は、繊維長が5mm以上のパルプを含む(16)に記載の陰唇間パッド。
【0029】
(18) 前記表面シートの乾燥強度と湿潤強度とは、それぞれ1.0N/25mm以上である(16)または(17)に記載の陰唇間パッド。
【0030】
(19) 親水性繊維と、細径疎水性繊維と、前記細径疎水性繊維よりも繊維径が太い太径疎水性繊維とから湿式抄紙法により繊維ウェブを形成させる工程と、前記繊維ウェブの両面または片面に高圧水ジェット流処理を施し、前記親水性繊維と、前記細径疎水性繊維と、前記太径疎水性繊維と、を交絡させる工程と、を含むシート部材の製造方法。
【0031】
(20) 前記高圧水ジェット流処理を前記繊維ウェブの両面または片面に1〜6回行う(19)に記載のシート部材の製造方法。
【発明の効果】
【0032】
本発明のシート部材および吸収性物品によれば、水流によって容易に分散させることができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の吸収性物品は、身体側に面する表面シートと、表面シートの厚さ方向における一方側に配設される裏面シートと、表面シートと裏面シートとの間に配設される液保持性の吸収体と、を備える陰唇間パッドであって、表面シートは、親水性繊維と、細径疎水性繊維と、細径疎水性繊維よりも繊維径が太い太径疎水性繊維を含有し、表面シートに含有している繊維の90質量%以上は、繊維長が20mm以下であることを特徴とする。
【0034】
以下、本発明の吸収性物品、シート部材およびシート部材の製造方法の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略するが、発明の趣旨を限定するものではない。なお、説明の便宜上、吸収性物品が陰唇間パッドの場合について説明するが、発明の趣旨を限定するものではなく、例えば使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品についても同様に使用することができる。
【0035】
[陰唇間パッドの全体構成]
本発明の陰唇間パッド1の斜視図を図1に示す。この陰唇間パッド1は、長手方向中心軸を折り目線として二つ折りされ、中心軸付近の少なくとも一部が陰唇内の前庭床に接するように陰唇間の小陰唇に少なくとも一部挟まれて着用される。
【0036】
陰唇間パッド1の形状としては、楕円型、瓢箪型、雫型等の女性の陰唇に適合する形状が挙げられる。陰唇間パッド1の外形の延べ寸法は、中心軸方向の幅として40〜180mmが好ましく、より好ましくは80〜120mmである。また、中心軸に対して垂直方向の幅としては20〜100mmが好ましく、より好ましくは50〜80mmである。なお、この中心軸に対して垂直方向の幅は、二つ折りがなされる前の平面状の陰唇間パッド1における寸法である。二つ折りにされた状態で陰唇間に着用される際には、着用形態における鉛直方向への延べ寸法は、上記の幅の略1/2の寸法となる。なお、陰唇間パッド1は、上述した通り、平面状のパッドを二つ折りにして陰唇に挟むタイプであるが、その他にも棒状あるいは筒状の形態を採り得る。平面状のパッドを二つ折りにして着用するタイプ以外のパッドにおいては、中心軸に対して垂直方向の幅は、上記の幅の略1/2となる。
【0037】
女性の陰裂(前方陰唇交連部〜後方陰唇交連部)の平均長さは約80mm、陰核から膣口までの平均長さは約40mm、膣口から肛門までの平均長さは約45mm(出願人調べ)である。陰唇間パッド1の前方側縁は、経血モレを防止するために、少なくとも陰核まで覆うことが好ましく、後方側縁は、臀部の肉の動きでパッドが脱落することを防止するために、肛門まで達しないことが好ましい。これらの条件を満たす範囲として、陰唇間パッド1の外形の延べ寸法は、上記の範囲であることが望ましい。
【0038】
図2は、図1のX−Xの断面図である。図2に示すように、本発明の陰唇間パッド1は、吸収体3と、その両側に配置される液透過性の表面シート2と裏面シート4とを備えている。なお、吸収体3の一部に、周辺領域よりも曲げ剛性の低い低曲げ剛性部を備えるようにしてもよい。
【0039】
本発明の吸収性物品は水分散性素材、生分解性素材または水溶性素材で構成されていることが好ましい。このような吸収性物品は、使用後にトイレに流して廃棄することができるため、吸収性物品の廃棄が簡便かつ清潔に行うことができ、トイレ内のごみの低減をはかることもできる。
【0040】
「水分散性」とは、水解性と同じ意味を指し、使用時の限定された量の水分や経血では製品に影響はないが、多量の水や水流中では、少なくとも一般のトイレの排水管を詰まらせることがない程度に、繊維同士が分散する性質のことをいう。
【0041】
「生分解性」とは、放線菌をはじめとする細菌、その他の微生物の存在下、自然界のプロセスによって、製品を構成する物質が二酸化炭素またはメタン等のガス、水およびバイオマスに分解されることをいう。また、その生分解能(生分解速度、生分解度等)が、落ち葉等の自然に生じる材料、または、一般的に生分解性として認識される合成ポリマーに準じることをいう。
【0042】
また、「水溶性」とは、使用時の限定された水分や経血では製品に影響はないが、多量の水や水流中では、溶解する性質のことをいう。
【0043】
[表面シート2(シート部材)]
<第一実施形態>
図3は、表面シート2の第一実施形態の概略図である。表面シート2は、親水性繊維21と疎水性繊維22を含有している。疎水性繊維22は、少なくとも細径疎水性繊維221と、細径疎水性繊維221よりも繊維系が太い太径疎水性繊維222とを交絡した状態で含有しており、これら三種類の繊維は、詳細は後述するが高圧水ジェット流処理にて交絡させることによって得られる。なお、図3では、説明の便宜上、親水性繊維21と細径疎水性繊維221および太径疎水性繊維222の三種類の繊維を交絡させた様子を示しているが、親水性繊維21と細径疎水性繊維221および太径疎水性繊維222の三種類を少なくとも含有していればよく、他の繊維等を含有させるようにしてもよい。
【0044】
親水性繊維21を表面シート2に含有させることにより、表面シート2の強度を向上させることができる。また、体液を表面シート2内に引き込み、表面シート2の表面に体液が流れ出る(表面拡散)ことを防止することができる。
【0045】
なお、本発明のシート部材を陰唇間パッド1の表面シート2として使用する場合、親水性繊維21の繊維長が5mm以上であることが好ましい。親水性繊維21の繊維長を5mm以上とすることにより、表面シート2の親水性繊維21が抜けて脱落することを防止することができる。
【0046】
細径疎水性繊維221を表面シート2に含有させることにより、表面シート2の親水性能を低下させ、表面シートの吸収限界量を低下させる。このため、表面シート2の下層の吸収体3へ体液を移行しやすくする。また、繊維径が細いため、高圧水ジェット流処理での交絡を容易に行うことができ、本発明の陰唇間パッド1の使用時の耐久性および毛羽立ちを防止することができる。さらに、繊維径が細いため、触感が柔らかく、肌に対する摩擦や刺激を低減することができる。
【0047】
太径疎水性繊維222を表面シート2に含有させることにより、表面シート2の親水性能を低下させ、表面シートの吸収限界量を低下させる。このため、表面シート2の下層の吸収体3へ体液を移行しやすくする。また、表面シート2を嵩高にするとともに嵩密度を下げることにより、多孔質な状態となり、体液が染みこみやすくなる。また、表面シート1の毛細管力も低減させ、体液が表面シート2に表面拡散することを防止することができる。さらに、嵩高になるため、表面シート2全体に柔軟性を与え、極めて柔らかい陰唇間パッド1を提供することができる。なお、太径疎水性繊維222は、必要に応じて捲縮繊維を使用してもよい。
【0048】
表面シート2に含有される繊維の繊維径は、使用目的等に応じて適宜変更することができるが、細径疎水性繊維221の平均繊維径は10μm以下であり、太径疎水性繊維222の平均繊維径は20μm以上の繊維であることが好ましい。このような繊維径の異なる二種類の疎水性繊維22を使用することにより、表面シート2の強度を向上させることができる。また、親水性繊維21と繊維径の異なる疎水性繊維22と繊維交絡することにより、毛羽立ちを抑制することができる。なお、詳細は後述するが、太径疎水性繊維222が異型断面繊維である場合、平均繊維径は、見かけの平均繊維径となる。
【0049】
表面シート2全体に含有されている親水性繊維21の含有率は、30〜60質量%、細径疎水性繊維221は、20〜50質量%および太径疎水性繊維222は、10〜30質量%含有されていることが好ましい。このような含有率にすることにより、体液の表面拡散を抑え、水流によって容易に水解させることができるようになる。
【0050】
親水性繊維21の含有率が30質量%未満であると、疎水性繊維22の含有率が多くなり過ぎ、容易に水解し難くなる。また、体液が表面シート2に拡散することを防止し難くなる。一方、親水性繊維21の含有率が60質量%を超えると、表面シート2の強度が低下する。
【0051】
細径疎水性繊維221の含有率が20質量%未満であると、表面シート2の耐久性が落ち、毛羽立ちを抑制することが困難となる。一方、細径疎水性繊維221の含有率が50質量%を超えると、細径疎水性繊維221の含有率が多くなり過ぎ、容易に水解し難くなる。
【0052】
太径疎水性繊維222の含有率が10質量%未満であると、表面シート2の体液吸収能力が増加し吸収体3へ体液を移行し難くなる。一方、太径疎水性繊維222の含有率が30質量%を超えると、太径疎水性繊維222の含有率が多くなり過ぎ、容易に水解し難くなる。
【0053】
太径疎水性繊維222は、細径疎水性繊維221よりも見かけの繊維径は太いが、高圧水ジェット流処理で交絡させるためヤング率が低いことが好ましい。したがって、太径疎水性繊維222は、異型断面繊維であることが好ましい。異型断面繊維であることにより、真円断面繊維より繊維間に空隙ができやすく、トイレ等に陰唇間パッド1を廃棄した際に水が繊維間に入りやすくなり、水解性を向上させることができる。本発明で使用する異型断面繊維の形状は、使用目的等に応じて適宜変更することができるが、例えば、星型、T字型、W字型、菱形等公知の種々の異型断面繊維を使用することができる。なお、これらの異型断面繊維のうち、一種類の異型断面繊維を使用してもよく、複数の異型断面繊維を使用してもよい。
【0054】
ここで、親水性繊維とは、表面に親水基を持つ繊維を意味する。ここでの親水基とは、水との相互作用の強い有極性の原子団を意味し、例えば、(−SOH)、(−SOM(Mはアルカリ金属または−NH))、(−OSOH)、(−OSOM)、(−COOM)等、または(−COOH)、(−NH)、(−CN)、(−OH)、(NHCONH)等である。
【0055】
本発明で使用する親水性繊維21は、親水性のものであれば特に限定されないが、例えば木材パルプ、麻、綿等の非木材パルプ、再生セルロース、アセテート繊維、PVA(ポリビニルアルコール)繊維、CMC(カルボキシメチルセルロース)繊維等親水性の高い合成繊維等公知の種々の親水性繊維を使用することができる。なお、これらは単独で使用してもよいが、複数組み合わせて使用してもよい。
【0056】
本発明で使用する疎水性繊維22は、親水基を持たない繊維、あるいは親水基を持っているが親水性が弱い繊維を使用することが好ましく、例えば、ポリオレフィン系繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエステル系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートおよびこれらのコポリマー、ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド系繊維、ポリアクリロニトニル系繊維、アクリル繊維等公知の種々の疎水性繊維を使用することができる。なお、これらは単独で使用してもよく、複数組み合わせて使用してもよい。
【0057】
具体的に表面シート2に使用する材料としては、繊維長が1〜20mmの範囲から構成される湿式スパンレース不織布を使用することもできる。例えば、繊度が1.1dtexで繊維長が7mmのレーヨンと、繊度が0.4dtexで繊維長が10mmのPET、繊度が2.2dtexで繊維長が10mmの捲縮PETから構成され、目付を35g/mに調整した湿式スパンレース不織布が挙げられる。
【0058】
第一実施形態の表面シート2全体に含有されている繊維(親水性繊維21および細径疎水性繊維221と太径疎水性繊維222を含む疎水性繊維22)全体の90質量%以上は、繊維長が20mm以下であることが好ましい。繊維の90質量%以上を繊維長20mm以下とすることにより、トイレ等で陰唇間パッド1を廃棄しても水流によって容易に各繊維を分散させることができる。なお、表面シート2全体に含有する繊維長20mm以下の繊維含有量が90質量%未満であると、抄紙時に地合いが悪くなったり、トイレ等の浄化槽内で水解性が悪化し、水解させても浄化槽内の水流により散気管に絡みつき曝気阻害や散気管を破損させてしまう恐れがある。
【0059】
また、親水性繊維21および疎水性繊維22(細径疎水性繊維221および太径疎水性繊維222)の平均繊維長が20mm以下となるように表面シート2全体に繊維を含有させてもよい。平均繊維長が20mmを超えると、抄紙時に地合いが悪くなったり、トイレ等の浄化槽内で水解性が悪化し、水解させても浄化槽内の水流により散気管に絡みつき曝気阻害や散気管を破損させてしまう恐れがある。なお、親水性繊維21および疎水性繊維22の各平均繊維長が20mm以下となるように表面シート2全体に繊維を含有させてもよい。
【0060】
さらに、親水性繊維21、細径疎水性繊維221および太径疎水性繊維222は、各繊維長が20mm以下の繊維を90質量%以上含有させるようにしてもよい。繊維長が20mm以下の繊維含有量が90質量%未満であると、抄紙時に地合いが悪くなったり、トイレ等の浄化槽内で水解性が悪化し、水解させても浄化槽内の水流により散気管に絡みつき曝気阻害や散気管を破損させてしまう恐れがある。
【0061】
表面シート2の嵩密度が0.10g/cm以下となるように、親水性繊維21、細径疎水性繊維221および太径疎水性繊維222を含有させることが好ましい。表面シート2の嵩密度をこのような範囲にすることにより、体液が表面拡散することを防止することができる。表面シート2の嵩密度が0.10g/cmを超えると、毛細管力を抑え、体液が表面拡散することを防止することが困難となる。また、触感が柔らかい陰唇間パッド1を提供することが困難となる。
【0062】
表面シート2の目付は、陰唇間パッド1の使用目的等に応じて適宜変更することができるが、30〜60g/mであることが好ましい。表面シート2の目付をこのような範囲にすることにより、体液を下層の吸収体3へ効率よく移行することができる。表面シート2の目付が30g/m未満であると、表面シート2としての必要な強度を保持させることができなくなる。一方、表面シート2の目付が60g/mを超えると、表面シート2の厚みが増し、体液が下層の吸収体3へ移行し難くなる。
【0063】
第一実施形態の表面シート2の乾燥強度および湿潤強度は、それぞれMD方向およびCD方向に対して1.0N/25mm以上であることが好ましく、2.0N/25mm以上であることがより好ましい。乾燥強度をこのような範囲にすることにより、表面シート2としての必要な強度を保持させることができる。また、湿潤強度が1.0N/25mm以上であることにより、表面シート2が湿潤状態であっても表面シート2としての必要な強度を保持させることができる。
【0064】
本発明の表面シート2の乾燥伸度および湿潤伸度は、それぞれMD方向およびCD方向に対して5%以上であることが好ましい。乾燥伸度および湿潤伸度をこのような範囲にすることにより、柔軟性を有し、かつ、陰唇間パッド1としての必要な強度を保持させることができる。
【0065】
本発明の表面シート2の浸透速度が、25秒以下であることが好ましい。浸透速度をこのような範囲にすることにより、体液を効率よく吸収体3へ伝えることができる。浸透速度が25秒を超えると、体液が大量に表面シート2に流れた場合、表面シート2上に体液が留まり、体液が漏れたり、装着者に不快感を与えたりする。また、表面シート2の45度浸透性は、30mm以下であることが好ましい。45度浸透性が30mmを超えると、体液が装着者の肌と表面シート2の界面を伝い、装着者に不快感を与えたりする。
【0066】
また、本発明の表面シート2の液拡散面積は、2000mm以下であることが好ましい。液拡散面積をこのような範囲にすることにより、表面拡散を抑え、体液の漏れ等を防止することができる。液拡散面積が2000mmを超えると、表面シート2の体液が拡散している箇所が増加し、装着者の広範囲の肌を汚す原因となる。さらに、表面シート2の表面含水率は120%未満であることが好ましい。表面含水率が120%以上であると、ベタツキやムレ等の不快感を与える。
【0067】
陰唇間パッド1をトイレ等に廃棄すると、トイレ内で多量の水の水流により表面シート2に含有する親水性繊維21が速やかに解れ始める。親水性繊維21が解れ始めることにより、親水性繊維21と交絡している太径疎水性繊維222が解れ、交絡が緩むことにより各繊維が速やかに分散する。
【0068】
本発明の表面シート2の水解性は、陰唇間パッド1の使用目的や大きさ等に応じて適宜変更されるが、例えば表面シート2の大きさが、10cm×10cmの正方形である場合、800mlの蒸留水中に表面シート2を投入し、振とう速度240rpmで30分間振とうさせたとき、表面シート2の最大片の大きさが、50cm以下に分散していることが好ましく、表面シート2が原形を留めないレベルで分散していることがより好ましい。表面シート2の最大片の大きさが、50cmを超えて分散していると、トイレ等に流して廃棄する際、トイレ等の配管に表面シート2が詰まる場合がある。
【0069】
表面シート2の厚さは、陰唇間パッド1の形状や大きさ等によって、適宜変更することができるが、0.6mm以下であることが好ましい。表面シート2の厚さを0.6mm以下とすることで、体液を下層の吸収体3へ効率よく移行させることができる。
【0070】
<第二実施形態>
表面シート2の第二実施形態は、親水性繊維21に繊維長が5mm以上のパルプを含む点以外は第一実施形態と同様である。
【0071】
親水性繊維21に繊維長が5mm以上のパルプを含ませることにより、体液を表面シート2内に引き込み、表面シート2の表面に体液が流れでる(表面拡散)ことを防止することができる。
【0072】
第二実施形態の親水性繊維21に使用するパルプは、繊維長が5mm以上のパルプを使用することが好ましい。繊維長が5mm以下のパルプを使用すると、繊維脱落が起こるとともに表面シート2が硬くなり、触感が柔らかい陰唇間パッド1を提供することが困難となる。
【0073】
親水性繊維21中の繊維長が5mm以上のパルプの含有量は、使用目的等に応じて適宜変更することができるが、30質量%以上であることが好ましい。繊維長が5mm以上のパルプの含有量を30質量%以上とすることにより、液を引き込みやすく、トイレで解れやすい陰唇間パッド1を提供することができるようになる。
【0074】
第二実施形態の表面シート2全体に含有されている繊維(親水性繊維21、細径疎水性繊維221、および太径疎水性繊維222)全体の90質量%以上は、繊維長が20mm以下であることが好ましい。繊維の90質量%以上を繊維長20mm以下とすることにより、トイレ等で陰唇間パッド1を廃棄しても水流によって容易に各繊維を分散させることができる。なお、表面シート2全体に含有する繊維長20mm以下の繊維含有量が90質量%以下であると、抄紙時に地合いが悪くなったり、トイレ等の浄化槽内で水解性が悪化し、水解させても浄化槽内の水流により散気管に絡みつき曝気阻害や散気管を破損させてしまう恐れがある。
【0075】
また、親水性繊維21、細径疎水性繊維221、および太径疎水性繊維222は、各繊維長が20mm以下の繊維を90質量%以上含有させるようにしてもよい。繊維長が20mm以下の繊維含有量が90質量%未満であると、抄紙時に地合いが悪くなったり、トイレ等の浄化槽内で水解性が悪化し、水解させても浄化槽内の水流により散気管に絡みつき曝気阻害や散気管を破損させてしまう恐れがある。
【0076】
第二実施形態の表面シート2の乾燥強度および湿潤強度は、それぞれMD方向およびCD方向に対して1.0N/25mm以上であることが好ましい。陰唇間パッド1は、通常陰唇間に挟んで使用するため、使い捨ておむつ等とは異なり摩擦等により磨り減ることがない。したがって、1.0N/25mm以上の乾燥強度および湿潤強度を有していればよい。
【0077】
[吸収体3]
吸収体3は、経血や汗等の液体を吸収し、保持することができる素材が用いられる。また、使用時に身体に剛性により刺激、違和感を与えない素材が使用される。陰唇間パッド1に備えられる吸収体3の材料としては、例えば、パルプ、化学パルプ、レーヨン、アセテート、天然コットン、高分子吸収体、繊維状高分子吸収体、合成繊維、発泡体等を挙げることができ、これらの材料は、単独または1種以上を混合して使用することができる。吸収体3は、経血等を吸収して保持することができるものであれば特に限定されるものではないが、嵩高であり、型崩れし難く、身体に対して化学的刺激が少ないものであることが好ましい。特に、着用者へ異物感を与えない圧縮性を有するためには、嵩高の素材であることが望ましい。具体的には、例えば、物理的にエンボス加工されたレーヨンやアセテート、架橋剤により架橋させ捲縮された化学パルプ、またはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂が有する熱収縮率を利用した芯鞘タイプや芯鞘の偏芯タイプ、サイドバイサイドタイプ等の複合合成繊維等を主体的に用いることができる。また、これらの複合合成繊維は、紡糸の時点で延伸させて分子配向を高めたものであっても、また、断面形状がY型やC型等の異型のものが混合されていてもよい。さらに、吸収体3の材料となる繊維は、繊維間の滑り性を高める目的で、繊維に油剤が塗布され、もしくは含有されていてもよい。また、陰唇間パッドを水洗可能とするために、水崩壊性素材や生分解性素材であっても構わない。なお、湿式スパンレース不織布を用いる場合、例えば、繊度が3.3dtexで繊維長が7mmのレーヨンと、繊度が2.2dtexで繊維長が10mmの捲縮PETと、叩解パルプと、静電気防止剤から構成される湿式スパンレース不織布を用いることができる。その不織布をガーネットミル等の解繊機で繊維をほぐす加工を施して使用する。
【0078】
陰唇間パッド1に備えられる吸収体3は、これらの繊維を開繊し、積層させることにより得ることができる。吸収体3は、これらの繊維を単層に積層したタイプであっても、経血を貯蔵するために上層よりも下層側に親水度の高い繊維を備える多層タイプであってもよい。吸収体3は、例えば、エアレイド法、スパンレース法、抄紙法、メルトブローン法等によって繊維をシート化し、その後、ニードリング加工を行うことにより繊維を絡ませて得ることができる。あるいは、ドット状、格子状、波状等のロール間に、シート化された繊維を通過させてエンボス加工を施すことによっても得ることができる。また、吸収体3は、楕円形、瓢箪型、雫型、ハート型等の周縁形状に切断されるが、陰唇に適合する形状であれば特に限定されない。さらに、吸収体3に柔軟性と水解性を持たせるために、スリット加工を施すようにしてもよい。
【0079】
[裏面シート4]
裏面シート4の材料としては、例えば、厚さ15〜60μmのポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリブチルサクシネート等のシートまたは不織布、紙およびこれら樹脂のラミネートシートを挙げることができる。また、無機フィラーを充填させて延伸処理を施すことにより得られる通気性フィルムであってもよい。具体的には、低密度ポリエチレン樹脂を主体として目付15〜30g/mの範囲で調整したフィルム、さらには10〜30%の開孔面積率で孔径0.1〜0.6mmの範囲で調整した通気性フィルムが挙げられる。不織布の例としては、スパンボンド不織布や、ポイントボンド不織布、スルーエア不織布等が挙げられ、これらに撥水処理が施されていてもよい。なかでも極細繊維で構成され、繊維間距離が非常に小さいメルトブローンを含むSMS(スパンボンド/メルトブローン/スパンボンド)不織布であることが好ましい。この場合、目付はスパンボンド層5〜15g/m、メルトブローン層1〜10g/m、スパンボンド層5〜15g/mの範囲で構成されることが好ましい。また、裏面シート4は、水洗が可能となるように、水崩壊性素材や生分解性素材からなるものであっても構わない。
【0080】
また、例えば、親水性繊維0%以上50%以下、疎水性繊維50%以上100%以下の比率で混合した繊維配合に、20g/m以上50g/m以下の範囲で調整した後、水流交絡により繊維同士を交絡させて、厚みを0.3mm以上1.0mm以下の範囲で調整して製造した繊維長が1〜20mmの範囲から構成される湿式スパンレース不織布が好ましく用いられる。湿式スパンレース不織布を用いる場合、例えば、繊度が1.1dtexで繊維長が7mmのレーヨンと、繊度が0.4dtexで繊維長が10mmのPET、繊度が2.2dtexで繊維長が10mmの捲縮PETとから構成され、目付を35g/mに調整した湿式スパンレース不織布を使用する。
【0081】
<ミニシート片>
図4に示したように、長手方向中心軸を折り軸として、裏面側同士が向かい合うように二つ折りされるタイプの陰唇間パッドの場合には、裏面側同士を跨ぐようにしてミニシート片(図示せず)が設けられていてもよい。この場合には、ミニシート片と裏面側との間に、指挿入用口が形成され、安定的にかつ適切な位置に陰唇間パッド1を着用することができる。ミニシート片は、表面シート2や裏面シート4と同様の構成により形成することができる。さらには、弾性力のある繊維の積層体、フィルム、空気のセルをもった発泡化した材料等を利用することができる。
【0082】
ミニシート片に使用する材料としては、繊維長が1〜20mmの範囲から構成される湿式スパンレース不織布を使用することができる。例えば、繊度が1.1dtexで繊維長が7mmのレーヨンと、叩解パルプと、視認性を向上させるための着色剤から構成され、目付を30g/mに調整した湿式スパンレース不織布が挙げられる。
【0083】
[陰唇間パッド1の製造方法]
本実施形態の陰唇間パッド1は、表面シート2、吸収体3、裏面シート4を接合することにより得られる。接合方法としては、例えば、エンボス加工時に熱を加えて吸収体3と表面シート2、裏面シート4を熱融着させる方法、あるいは接着剤を介して接合する方法等を挙げることができ、これらの方法は単独もしくは組み合わされて使用される。
【0084】
エンボス加工により接合させる場合には、エンボスパターンは特に限定されるものではなく、ドット状、格子状、波状等が適宜選択できる。これらのなかでは、陰唇内壁に過度の異物感を与えないことから、ドット状のエンボスパターンにより、面積率10%で接合することが好ましい。
【0085】
熱融着により接合させる場合には、構成素材の軟化点以上の温度で熱を加えればよく、熱エンボス加工、超音波加工等を挙げることができる。
【0086】
接着剤を介して接合する場合には、SEBS、SBS、SIS等のゴム系接着剤、直鎖状低密度ポリエチレン等のオレフィン系を主体とした感圧型接着剤や感熱型接着剤、ポリビニルアルコール、カルボキシルメチルセルロース、ゼラチン等の水溶性高分子からなる、あるいは、ポリビニルアセテートやポリアクリル酸ナトリウム等の水膨潤性高分子からなる感水性接着剤を例として挙げることができる。これらの中では、体圧が陰唇間パッド1に加わったときに、万が一陰唇間パッド1の外面に接着剤が滲み出してしまった場合であっても、その時点ではタック性を有さないようにできることから、感熱型接着剤が好ましい。接着剤の具体的な例としては、SEBSを5〜25%、脂環族飽和炭化水素を40〜60%、芳香族変性テルペンを1〜10%、添加剤を15〜35%で溶融混合したものが挙げられる。
【0087】
接着剤の塗工パターンとしては、スパイラル塗工、コントロールシーム塗工、コーター塗工、カーテンコーター塗工、サミットガン塗工等挙げられる。また、接着剤の目付量は、好ましくは1〜30g/mの範囲、さらに好ましくは3〜10g/mの範囲である。接着剤が線状に塗工されているパターンであれば、その線径は30〜300μmの範囲が好ましい。接着剤の目付量が1g/mより小さい場合、もしくは線径が30μmより小さい場合には、表面シート4が繊維集合体で構成されていると、繊維間に接着剤が埋もれてしまうため十分な接合力が得られない。一方で、接着剤の目付量が30g/mより大きい場合、もしくは線径が300μmより大きい場合には、接着剤を施した部分の周縁部が剛くなってしまう。接着剤の塗工位置は、パッドの周縁の少なくとも一部または全部に塗工されていれば特に限定されるものではないが、液の吸収性を考慮すれば、吸収体の裏面側であり、周縁の少なくとも一部または全部に塗工されていることが好ましい。
【0088】
[シート部材]
上述したような表面シート2を陰唇間パッド1以外にシート部材として使用することができる。このようなシート部材は、水解性に優れ、当接感触もよいことから、陰唇間パッド用以外に、例えば使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品、ワイプ材等に使用することができる。
【0089】
[シート部材の製造方法]
本発明のシート部材は、上述した親水性繊維21、細径疎水性繊維221および太径疎水性繊維222を湿式抄紙法により繊維ウェブを形成した後、繊維ウェブに高圧水ジェット流処理を行うことによって製造される。ここで繊維ウェブとは、繊維の方向がある程度揃った繊維塊のシート状のものである。なお、乾式抄紙法においても繊維ウェブを形成するようにしてもよい。この高圧水ジェット流処理においては、一般的に用いられている高圧水ジェット流処理装置が用いられる。
【0090】
比較的強い圧力の噴流による高圧水ジェット流処理を繊維ウェブの片面または両面方向に行うと、噴流が当たった個所では、親水性繊維21と細径疎水性繊維221と太径疎水性繊維222とが強力に交絡するとともに、噴流が当たらない個所では、三つの繊維が嵩高い状態のままに維持される。その結果、シート部材全体として、親水性繊維21と細径疎水性繊維221と太径疎水性繊維222との一体性が高く、しかも、嵩高くて通気性や吸水性、保温性、柔らかさ等に優れたものが得られる。
【0091】
高圧水ジェット流処理とは、高圧の水流を吹き付けて、吹き付けられた部分の親水性繊維21と細径疎水性繊維221と太径疎水性繊維222とを交絡させて一体的に接合する。高圧水ジェット流処理の使用装置や処理条件等は、通常の不織布製造技術等を適用することができる。
【0092】
高圧水ジェット流処理の詳細を述べると、繊維ウェブを連続的に移動させているコンベアベルトの上に載置し、高圧水ジェット流を載置した繊維ウェブの表面から裏面に通過するように噴射させる。この高圧水ジェット流処理においては、繊維ウェブの秤量、噴射ノズルの孔径、噴射ノズルの孔数、繊維ウェブを処理するときの仕事量(エネルギー)等を適宜変更させることによって、得られるシート部材の性質を変化させることができる。だたし、本発明において、下記に示した数1によって導き出される仕事量は、繊維ウェブ片面の処理一回あたり0.05〜0.5kW/mとなるように高圧水ジェット流処理を行うことが好ましい。仕事量が0.05kW/m未満であると、シート部材の嵩高性が劣る。一方、仕事量が0.5kW/mを超えると、繊維が絡み過ぎて水解性が落ちたり、また繊維ウェブが壊れてしまう可能性がある。この高圧水ジェット流処理は繊維ウェブの片面または両面に行うこともできる。また、0.05〜0.5kW/mの高圧水ジェット流処理を繊維ウェブの片面または両面に1〜6回を行うことにより、好ましい水解性および湿潤強度をもったシート部材を得ることができる。
【0093】
仕事量(kW/m)={1.63×噴射圧力(kgf/cm)×噴射流量(m/min)}÷処理速度(m/min) ・・・・・(数1)
【0094】
また、仕事量が0.05〜0.5kW/mの場合、例えばノズルが孔径90〜100ミクロンであり、ノズルは0.3〜2.0mm間隔でCD方向へ並んでいる高圧水ジェット流処理を行うことができる。この場合、繊維の交絡が適度なものとなる。
【0095】
また、繊維ウェブが形成された後、繊維ウェブを乾燥させずに高圧水ジェット流処理を行うようにしてもよい。また、繊維ウェブを一旦乾燥させた後高圧水ジェット流処理を行うようにしてもよい。
【0096】
また、本発明のシート部材は高圧水ジェット流処理に限られず、ニードルやエアー等を利用して繊維を交絡させることによってシート部材を製造してもよい。
【実施例】
【0097】
以下、本発明の実施例を説明するが、これら実施例は、本発明を好適に説明するための例示に過ぎず、なんら本発明を限定するものではない。
【0098】
[表面シート2(シート部材)の作製]
本発明の表面シート2の水解性等を評価するために表面シート2を製造し、その特性を調べた。
【0099】
親水性繊維21は、繊度が1.1dtexで繊維長7mmのレーヨン繊維(ダイワボウレーヨン(株)社製 コロナ)とNBKP(CSF600cc)を用いた。
【0100】
細径疎水性繊維221は、繊度が0.44dtexで繊維長10mmのPET繊維((株)クラレ製 EP043)を用いた。
【0101】
太径疎水性繊維222は、繊度が2.2dtexで繊維長10mmのPET繊維((株)クラレ製 EPTC203(T型断面))を用いた。なお、この太径疎水性繊維222は、T字型の異型断面繊維であった。
【0102】
親水性繊維21と細径疎水性繊維221と太径疎水性繊維222との含有率は、親水性繊維21が50質量%(レーヨン繊維が40質量%、NBKPが10質量%)、細径疎水性繊維221が30質量%および太径疎水性繊維222が20質量%であった。
【0103】
熊谷理機工業(株)製の角型ヒートマシンを使用して、親水性繊維21、細径疎水性繊維221および太径疎水性繊維222を日本フィルコン(株)製のワイヤー(LL−70E(2重織))上に湿式抄紙し、シートを得た。この繊維ウェブの両面にエネルギーを0.38kW/mに設定して、4回高圧水ジェット流処理を行ったことにより、各繊維を交絡させた。その後にロータリドライヤーを用いて120℃で3分間乾燥させたことにより、表面シート2(シート部材)を製造した。なお、ノズルは、孔径95μmであり、0.5mm間隔でCD方向へ並んでいた。これを実施例1とする。
【0104】
[乾燥強度および乾燥伸度の測定]
実施例1をテンシロン試験機(株式会社エー・アンド・デイ社製)により、サンプル幅25mm、長さ150mm、チャック間隔は100mm、引張速度は100mm/minで乾燥強度および乾燥伸度を測定した。測定はMD方向およびCD方向に対してそれぞれ行った。なお、乾燥強度は、引っ張り最大強度であり、乾燥伸度は、引っ張り最大強度における伸度である。
【0105】
[湿潤強度および湿潤伸度の測定]
実施例1にイオン交換水を含水率300%(対基布重量)で含浸させ、密閉容器内で3時間静置後、テンシロン試験機(株式会社エー・アンド・デイ社製)により、サンプル幅25mm、長さ150mm、チャック間隔は100mm、引張速度は100mm/minで乾燥強度および乾燥伸度を測定した。測定はMD方向およびCD方向に対してそれぞれ行った。なお、湿潤強度は、引っ張り最大強度であり、湿潤伸度は、引っ張り最大強度における伸度である。
【0106】
[浸透速度の測定]
実施例1上に滴下スピード7ml/minで1mlの模擬経血を滴下し、滴下終了後に表面シート2上に液留りがなくなるまでの時間を測定した。
【0107】
[45度浸透性の測定]
実施例1を傾斜角度が45度の測定板に装着させ、実施例1の上方10mmより模擬経血をビュレットで一滴滴下し、10秒後実施例1上に流れた距離を測定した。
【0108】
[液拡散面積の測定]
実施例1上に滴下スピード7ml/minで1mlの模擬経血を滴下し、滴下してから60秒後の縦横方向への拡散長を測定することにより液拡散面積を求めた。また、模擬経血を滴下させる前と滴下してから60秒後の表面シート2の質量を測定し、数2により表面含水率を求めた。
【0109】
(Y−X)/X×100 ・・・・・(数2)
(Xは、模擬経血滴下前の表面シート2の質量、Yは、模擬経血を滴下してから60秒後の表面シート2の質量)
【0110】
[シェイクフラスコ法による水解性の測定]
予め1000mlのフラスコ内に800mlの蒸留水を入れ、蒸留水中に10cm×10cmの正方形の実施例1を投入し、振とう速度240rpmで30分間シェーカー(IWAKI社製 SHKV−200)で振とうさせた。この結果、実施例1が原形を留めないレベルで分散している場合、および実施例1の最大片の大きさが、50cm以下に分散している場合は「○」、実施例1の最大片の大きさが、50cm以上である場合は「△」、実施例1が分散せず、原形を留めている場合は「×」とした。
【0111】
実施例1の他に、親水性繊維21、細径疎水性繊維221、および太径疎水性繊維222の含有率を変化させた表面シート2を実施例2から実施例7まで製造し、実施例1と同様の試験、測定を行った。なお、実施例2から実施例7は、実施例1と同一の大きさ、形状とした。
【0112】
また、比較例として、表面シート2の比較例1から比較例9まで以下に示したように製造し、実施例1と同様の試験、測定を行った。なお、比較例1から比較例9は、実施例1と同一の大きさ、形状とした。
【0113】
[比較例1]
親水性繊維21は、繊度が1.4dtexで繊維長38mmのレーヨン繊維(ダイワボウレーヨン(株)社製 コロナ)を85質量%用い、疎水性繊維22は、繊度が1.4dtexで繊維長38mmのPET繊維((株)クラレ製 EP133)のみを15質量%用いて乾式スパンレースにて製造した以外は、実施例1と同様に製造した。
【0114】
[比較例2]
親水性繊維21は、繊度が1.4dtexで繊維長38mmのレーヨン繊維(ダイワボウレーヨン(株)社製 コロナ)を50質量%用い、疎水性繊維22は、繊度が1.4dtexで繊維長38mmのPET繊維((株)クラレ製 EP133)のみを50質量%用いて乾式スパンレースにて製造した以外は、実施例1と同様に製造した。
【0115】
[比較例3]
親水性繊維21は、繊度が1.1dtexで繊維長7mmのレーヨン繊維(ダイワボウレーヨン(株)社製 コロナ)を50質量%およびパルプとしてNBKP(CSF600cc)を10質量%用い、疎水性繊維22は、繊度が0.4dtexで繊維長10mmのPET繊維((株)クラレ製 EP043)のみを40質量%用いた以外は、実施例1と同様に製造した。
【0116】
[比較例4]
親水性繊維21は、繊度が1.1dtexで繊維長7mmのレーヨン繊維(ダイワボウレーヨン(株)社製 コロナ)を50質量%およびパルプとしてNBKP(CSF600cc)を50質量%用いて、疎水性繊維22を含有させなかった以外は、実施例1と同様に製造した。
【0117】
[比較例5]
親水性繊維21は、繊度が1.1dtexで繊維長7mmのレーヨン繊維(ダイワボウレーヨン(株)社製 コロナ)を100質量%用いて、疎水性繊維22を含有させなかった以外は、実施例1と同様に製造した。
【0118】
[比較例6]
親水性繊維21は、繊度が1.1dtexで繊維長7mmのレーヨン繊維(ダイワボウレーヨン(株)社製 コロナ)を50質量%およびパルプとしてNBKP(CSF600cc)を10質量%用い、疎水性繊維22は、繊度が2.2dtexで繊維長10mmであるT字型断面繊維のPET繊維((株)クラレ製 EPTC203)を40質量%用いた以外は、実施例1と同様に製造した。
【0119】
[比較例7]
親水性繊維21は、繊度が1.1dtexで繊維長7mmのレーヨン繊維(ダイワボウレーヨン(株)社製 コロナ)を10質量%およびパルプとしてNBKP(CSF600cc)を10質量%用い、細径疎水性繊維221は、繊度が0.4dtexで繊維長10mmのPET繊維((株)クラレ製 EP043)を60質量%用い、太径疎水性繊維222は、繊度が2.2dtexで繊維長10mmであるT字型断面繊維のPET繊維((株)クラレ製 EPTC203)を20質量%用いた以外は、実施例1と同様に製造した。
【0120】
[比較例8]
親水性繊維21は、繊度が1.1dtexで繊維長7mmのレーヨン繊維(ダイワボウレーヨン(株)社製 コロナ)を40質量%およびパルプとしてNBKP(CSF600cc)を10質量%用い、細径疎水性繊維221は、繊度が0.4dtexで繊維長10mmのPET繊維((株)クラレ製 EP043)を30質量%用い、太径疎水性繊維222は、繊度が3.3dtexで繊維長10mmである異型断面繊維でないPET繊維((株)クラレ製 EP303)を20質量%用いた以外は、実施例1と同様に製造した。
【0121】
[比較例9]
親水性繊維21は、繊度が1.1dtexで繊維長7mmのレーヨン繊維(ダイワボウレーヨン(株)社製 コロナ)を40質量%およびパルプとしてNBKP(CSF600cc)を10質量%用い、細径疎水性繊維221は、繊度が0.4dtexで繊維長10mmのPET繊維((株)クラレ製 EP043)を30質量%用い、太径疎水性繊維222は、繊度が5.6dtexで繊維長8mmである異型断面繊維でないPVA繊維((株)クラレ製 VPB503)を20質量%用いた以外は、実施例1と同様に製造した。以下、結果を表1に示す。
【0122】
【表1】

【0123】
表1から、実施例1から実施例7の表面シートは、浸透速度、45度浸透性および液拡散面積からわかるように、表面シート2上に模擬経血が留まりにくいことがわかる。これにより、体液の表面拡散が抑えられ、装着者の不快感を抑制できることがわかる。また、一定以上の乾燥強度、湿潤強度を有し、表面シート2としての必要な強度を保持していることがわかる。
【0124】
また、実施例1から実施例7は、水解性に優れ、トイレ等に廃棄してもトイレ等の配管詰まりを起こす原因とはならないことがわかる。これにより、本発明の陰唇間パッドおよびシート部材は、体液の表面拡散を抑え、かつ、水解性に優れていることがわかる。
【0125】
一方、比較例1から比較例9では、水解性を向上させると、乾燥強度および湿潤強度が低下し、乾燥強度および湿潤強度を向上させると水解性が悪くなることがわかる。これにより、比較例1から比較例9では、本発明とは異なり、水解性と強度を両立させることができないことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の第一実施形態である陰唇間パッド1の斜視図である。
【図2】図1のX−Xの断面図である。
【図3】表面シート(シート部材)の第一実施形態の概略図である。
【図4】陰唇間パッドを長手方向中心軸を折り軸として、裏面側同士が向かい合うように二つ折りにした様子を示した図である。
【符号の説明】
【0127】
1 陰唇間パッド
2 表面シート
21 親水性繊維
22 疎水性繊維
221 細径疎水性繊維
222 太径疎水性繊維
3 吸収体
4 裏面シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性繊維と、
細径疎水性繊維と、前記細径疎水性繊維よりも繊維径が太い太径疎水性繊維と、を含有しており、
全体の90質量%以上は、繊維長が20mm以下であるシート部材。
【請求項2】
前記親水性繊維と、前記細径疎水性繊維と、前記太径疎水性繊維との平均繊維長は、20mm以下である請求項1に記載のシート部材。
【請求項3】
前記親水性繊維は、繊維長が20mm以下の繊維を90質量%以上含有している請求項1または2に記載のシート部材。
【請求項4】
前記細径疎水性繊維は、繊維長が20mm以下の繊維を90質量%以上含有している請求項1または2に記載のシート部材。
【請求項5】
前記太径疎水性繊維は、繊維長が20mm以下の繊維を90質量%以上含有している請求項1または2に記載のシート部材。
【請求項6】
前記細径疎水性繊維の平均繊維径は10μm以下であり、前記太径疎水性繊維の平均繊維径は20μm以上である請求項1から5のいずれかに記載のシート部材。
【請求項7】
前記親水性繊維の含有率は、30〜60質量%であり、前記細径疎水性繊維の含有率は、20〜50質量%であり、前記太径疎水性繊維の含有率は、10〜30質量%である請求項1から6のいずれかに記載のシート部材。
【請求項8】
前記太径疎水性繊維は、異型断面繊維である請求項1から7のいずれかに記載のシート部材。
【請求項9】
嵩密度は、0.10g/cm以下である請求項1から8のいずれかに記載のシート部材。
【請求項10】
目付は、30〜60g/mである請求項1から9のいずれかに記載のシート部材。
【請求項11】
乾燥強度と湿潤強度とは、それぞれ1.0N/25mm以上である請求項1から10のいずれかに記載のシート部材。
【請求項12】
厚さは、0.6mm以下である請求項1から11に記載のシート部材。
【請求項13】
前記親水性繊維と、前記細径疎水性繊維と、前記太径疎水性繊維とから湿式抄紙法により繊維ウェブを形成させた後、前記繊維ウェブの両面または片面に高圧水ジェット流処理を施し、前記親水性繊維と、前記細径疎水性繊維と、前記太径疎水性繊維とを交絡させて得られる請求項1から12のいずれかに記載のシート部材。
【請求項14】
800mlの蒸留水中にサンプル片が10cm×10cmの前記シート部材を投入し、振とう速度240rpmで30分間振とうしたとき、前記シート部材の最大片の大きさが、50cm以下に分散される請求項1から13のいずれかに記載のシート部材。
【請求項15】
請求項1から14のいずれかに記載のシート部材からなる身体側に面する表面シートと、
前記表面シートの厚さ方向における一方側に配設される裏面シートと、
前記表面シートと前記裏面シートとの間に配設される液保持性の吸収体と、を備える吸収性物品。
【請求項16】
身体側に面する表面シートと、
前記表面シートの厚さ方向における一方側に配設される裏面シートと、
前記表面シートと前記裏面シートとの間に配設される液保持性の吸収体と、を備える陰唇間パッドであって、
前記表面シートは、繊維長が5mm以上の親水性繊維と、細径疎水性繊維と、前記細径疎水性繊維よりも繊維径が太い太径疎水性繊維と、を含有しており、
全体の90質量%以上は、繊維長が20mm以下である陰唇間パッド。
【請求項17】
前記親水性繊維は、繊維長が5mm以上のパルプを含む請求項16に記載の陰唇間パッド。
【請求項18】
前記表面シートの乾燥強度と湿潤強度とは、それぞれ1.0N/25mm以上である請求項16または17に記載の陰唇間パッド。
【請求項19】
親水性繊維と、細径疎水性繊維と、前記細径疎水性繊維よりも繊維径が太い太径疎水性繊維とから湿式抄紙法により繊維ウェブを形成させる工程と、
前記繊維ウェブの両面または片面に高圧水ジェット流処理を施し、前記親水性繊維と、前記細径疎水性繊維と、前記太径疎水性繊維と、を交絡させる工程と、を含むシート部材の製造方法。
【請求項20】
前記高圧水ジェット流処理を前記繊維ウェブの両面または片面に1〜6回行う請求項19に記載のシート部材の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−73356(P2008−73356A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−258052(P2006−258052)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】