説明

シート

【課題】 ワンアクションで最下位置まで下降することができるシートを提供することを課題とする。
【解決手段】
セクタギア(プレート)131の回転中心以外の部分にピン145を設け、一端部側がリアリンク123に回転可能に取り付けられたロングリンク147の他端部側にピン145が嵌合し、ロングリンク147の長手方向に延びる長穴146と、ピン145を長穴146のリアリンク側の端部に保持する保持手段201とからなる大送り機構を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートクッションのフレームと、フロア側に一端部側が回転可能に接続され、前記フレームの前部に他端部側が回転可能に接続されたフロントリンクと、フロア側に一端部側が回転可能に接続され、前記フレームの後部に中間部が回転可能に接続されたリアリンクと、前記シートクッション側のフレームに回転可能に設けられたプレートと、一端部が前記リアリンクの他端部側に回転可能に接続され、他端部が前記プレートの回転中心以外の部分に回転可能に接続されたロングリンクと、前記プレートを回転させる駆動部とを有し、前記駆動部を駆動することにより、前記リアリンクを回転させ、前記シートクッションを前記フロアに対して昇降させるリフト機構を有したシートに関する。
【背景技術】
【0002】
図9を用いて従来のシートを説明する。
ロアレール1と、ロアレール1に移動可能に係合するアッパレール3とからなるシートトラック5はブラケット7を介してフロアに設けられる。
【0003】
アッパレール3の上部には、着座者の臀部を支持するシートクッション9が配置される。
シートトラック5のアッパレール3の前部には、シートクッション9方向に伸びるフロントブラケット11が、アッパレール3の後部には、シートクッション9方向に伸びるリアブラケット13がそれぞれ設けられている。
【0004】
フロントブラケット11には、フロントリンク15の一方の端部側がピン17を用いて回転可能に接続され、このフロントリンク15の他方の端部側はピン19を用いてシートクッション9のフレーム21の前部に回転可能に接続されている。
【0005】
リアブラケット13には、リアリンク23の一方の端部側がピン25を用いて回転可能に接続され、このリアリンク23の中間部はピン27を用いてシートクッション9のフレーム21の後部に回転可能に接続されている。
【0006】
シートクッション9のフレーム21には、プレートとしてのセクタギア31がピン33を用いて回転可能に設けられている。更に、フレーム21には、セクタギア31に噛合するピニオン35が設けられたシャフト37が回転可能に設けられている。このシャフト37は、ブレーキ機構(逆転防止機構)39を介して図示しないハンドルによって回転駆動されるようになっている。このブレーキ機構は、操作部からのピニオン35の回転駆動を許可し、ピニオン35の自転を禁止するものである。例えば、マニュアル式のウインドレギュレータに用いられるもので、詳細な説明は省略する。又、電動の場合は、例えば、ウォームとウォームホイールとからなる大きな減速比を有する減速機構を介してモータを設ければよい。
【0007】
セクタギア31の回転中心であるピン33以外の部分には、ピン45を用いてロングリンク47の一方の端部側が回転可能に取り付けられている。ロングリンク47の他方の端部側はピン49を用いてリアリンク23の他方の端部側に回転可能に取り付けられている。
【0008】
そして、シートトラック5のアッパレール3と、フロントリンク15と、シートクッション9のフレーム21と、リアリンク23とで四節回転連鎖機構が構成されている。
次に、上記構成の作動を説明する。ハンドルを回転すると、ブレーキ機構39を介してピニオン35が回転し、ピニオン35に噛合しているセクタギア31がピン33を中心に回転する。このセクタギア31が回転すると、ロングリンク47を介してリアリンク23がピン27を中心に回転し、フレーム21(シートクッション9)は、シートトラック5のアッパレール3(フロア側)に対して昇降する(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−138780号公報(第4頁−第5頁、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、図9に示すような構成のシートにおいて、シートクッション9の昇降はハンドルを回転させることで行われる。このような構成のシートでは、ハンドルの操作力は、ピニオン35とセクタギア31とにより減速されてリアリンク23を回転させる。よってシートクッション9の昇降の微調整は容易に行える。
【0010】
しかし、シートクッション9が上方にあり、シートクッション9を最下位置まで下降させる場合、ハンドルを回転し続けなければ、シートクッション9は最下位置まで下降しない。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、その課題は、ワンアクションで最下位置まで下降することができるシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する請求項1に係る発明は、シートクッションのフレームと、フロア側に一端部側が回転可能に接続され、前記フレームの前部に他端部側が回転可能に接続されたフロントリンクと、フロア側に一端部側が回転可能に接続され、前記フレームの後部に中間部が回転可能に接続されたリアリンクと、前記シートクッション側のフレームに回転可能に設けられたプレートと、一端部が前記リアリンクの他端部側に回転可能に接続され、他端部が前記プレートの回転中心以外の部分に回転可能に接続されたロングリンクと、前記プレートを回転させる駆動部とを有し、前記駆動部を駆動することにより、前記リアリンクを回転させ、前記シートクッションを前記フロアに対して昇降させるリフト機構を有したシートにおいて、前記プレートの回転中心以外の部分、前記ロングリンクの他端部側のうちのどちらか一方に設けられたピンと、前記プレートの回転中心以外の部分、前記ロングリンクの他端部側のうちのどちらか他方に形成され、前記ピンが嵌合し、前記ロングリンクの長手方向に延びる長穴と、前記ピンを前記長穴の前記リアリンク側の端部に保持する保持手段と、からなる大送り機構を設けたことを特徴とするシートである。
【0013】
大送り機構の保持手段がピンを前記長穴の前記リアリンク側の端部に保持する状態で、駆動部を駆動するとプレートが回転する。プレートの回転はロングリンクを介してリアリンクに伝達され、リアリンクが回転する。
【0014】
一方、フロントリンクと、シートクッションのフレームと、リアリンクと、フロアとで四節回転連鎖機構が構成される。よって、リアリンクが回転することでシートクッションのフレームはフロアに対して昇降する。
【0015】
大送り機構の保持手段を解除すると、長穴とピンとは相対移動が可能となる。シートクッション側の自重により、ピンが長穴のフロントリンク側の端部に位置するまでピンと長穴とが相対移動する。この移動により、ロングリンクがリアリンク方向に移動し、シートクッションのフレームが下降する方向にリアリンクが回転し、シートクッションは最下位置まで下降する。
【0016】
請求項2に係る発明は、前記保持手段は、前記長穴が設けられた部材側に回転可能に配設され、前記長穴の前記リアリンク側の端部に位置する前記ピンに係合可能で、係合時に前記ピンを前記長穴の前記リアリンク側の端部に保持する第1フックと、該第1フックを前記長穴方向に付勢する第1付勢手段とからなることを特徴とする請求項1記載のシートである。
【0017】
第1フックがピンを前記長穴の前記リアリンク側の端部に保持する状態では、駆動部の駆動により、プレート、ロングリンクを介してリアリンクが回転され、シートクッションが昇降する。
【0018】
第1付勢手段の付勢力に抗して、第1フックを長穴から離れる方向に移動させると、ピンと長穴との相対移動が可能となり、シートクッション側の自重により、ロングリンクがリアリンク方向に移動する。このロングリンクの移動により、シートクッションのフレームが下降する方向にリアリンクが回転し、シートクッションのフレームは最下位置まで下降する。
【0019】
請求項3に係る発明は、前記大送り機構を用いて前記シートクッションを最下位置に移動させた際に、前記シートクッションの上昇を禁止するロック機構を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載のシートである。
【0020】
前記大送り機構を用いて前記シートクッションを最下位置に移動させると、ロック機構が作動し、シートクッションの上昇を禁止する。
請求項4に係る発明は、前記ロック機構は、前記長穴が設けられた部材側に回転可能に配設され、前記長穴の前記フロントリンク側の端部に位置する前記ピンに係合可能で、係合時に前記ピンを前記長穴の前記フロントリンク側の端部に保持する第2フックと、該第2フックを前記長穴方向に付勢する第2付勢手段とからなることを特徴とする請求項3記載のシートである。
【0021】
第2付勢手段により付勢された第2フックが長穴のフロントリンク側の端部に位置するピンに係合することで、ロック機構が作動し、シートクッションの上昇を禁止する。
請求項5に係る発明は、前記第1フックと前記第2フックとは積層配置され、前記第1フック、前記第2フックのいずれか一方のフックに他方のフックと当接可能な突起を設け、前記第2フックが前記長穴より離れる方向に回転すると、前記突起と他方のフックとが当接して、前記第1フックが前記長穴より離れる方向に回転するようにしたことを特徴とする請求項4記載のシートである。
【0022】
ピンが長穴のリアリンク側の端部に位置する時、即ち、大送り機構が作動していない時は、第1付勢手段に付勢された第1フックがピンに係合し、ピンは長穴のリアリンク側の端部に位置に保持されている。このとき、第2付勢手段の付勢力により第2フックも長穴方向に付勢されている。
【0023】
第2付勢手段の付勢力に抗して第2フックを長穴から離れる方向に回転させると、突起により第1フックも長穴から離れる方向に回転し、大送り機構の保持手段が解除される。これによりピンが長穴のフロントリンク側の端部に移動し、シートバックは最下位置まで下降する。
【0024】
次に、第2フックへの操作力を解除すると、第1付勢手段、第2付勢手段の付勢力により第1フック、第2フックは長穴方向に回転し、第2フックが長穴のフロントリンク側の端部に位置するピンに係合し、ロック機構が作動し、シートクッションの上昇を禁止する。
【0025】
このロック機構を解除するには、第2付勢手段の付勢力に抗して第2フックを長穴から離れる方向に回転させる。このとき、第2フックも長穴より離れる方向に移動し、ピンが長穴に沿って移動可能な状態とする。そして、シートクッションを上昇させと、ピンが長穴のリアリンク側の端部に移動する。
【0026】
次に、第2フックへの操作力を解除すると、第1付勢手段、第2付勢手段の付勢力により第1フック、第2フックは長穴方向に回転し、第1フックが長穴のリアリンク側の端部に位置するピンに係合し、元の状態に戻る。
【0027】
請求項6に係る発明は、前記ロック機構は、前記フロア側の部材に設けられた被係合部材と、前記リアリンクに回転可能に設けられ、前記被係合部材に係脱可能な第3フックと、前記リアリンクに設けられ、前記被係合部材に係合可能な位置にある前記第3フックに当接するストッパと、第3フックをストッパと当接する方向へ付勢する第3付勢手段と、からなることを特徴とする請求項3記載のシートである。
【0028】
シートクッションが降下すると、第3フックがフロア側の部材に設けられた被係合部材に係合し、ロック機構が作動し、シートクッションの上昇を禁止する。
【発明の効果】
【0029】
請求項1〜請求項6に係る発明によれば、大送り機構の保持手段を解除するだけで、すなわち、ワンアクションで、シートクッションを最下位置まで下降することができる。
請求項2に係る発明によれば、保持手段は、前記長穴が設けられた部材側に回転可能に配設され、前記長穴の前記リアリンク側の端部に位置する前記ピンに係合可能で、係合時に前記ピンを前記長穴の前記リアリンク側の端部に保持する第1フックと、該第1フックを前記長穴方向に付勢する第1付勢手段とからなることにより、構成が簡単となる。また、第1付勢手段の付勢力に抗して第1フックをピンから離脱させるだけで大送り機構を解除できる。すなわち、ワンアクションで、シートクッションを最下位置まで下降することができる。
【0030】
請求項3〜請求項6に係る発明によれば、前記大送り機構を用いて前記シートクッションを最下位置に移動させた際に、前記シートクッションの上昇を禁止するロック機構を設けたことで、車両が急停車した際や、車両が正面衝突した際に、シートクッションが浮き上がるのを防止できる。
【0031】
請求項4に係る発明によれば、第2フックを第2付勢手段の付勢力に抗してピンから離脱させるだけでロック機構を解除できる。
請求項5に係る発明によれば、前記第1フックと前記第2フックとは積層配置され、前記第1フック、前記第2フックのいずれか一方のフックに他方のフックに当接可能な突起を設け、前記第2フックが前記長穴より離れる方向に回転すると、前記突起が他方のフックに当接して、前記第1フックが前記長穴より離れる方向に回転するようにしたことにより、保持手段とロック機構との解除を同じ操作で行うことができる。
【0032】
請求項6に係る発明によれば、第3フックを第3付勢手段の付勢力に抗してピンから離脱させるだけでロック機構を解除できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
最初に図1を用いて、シートの全体構成を説明する。図1の状態はシートクッションが最上位置にある状態である。図において、ロアレール101と、ロアレール101に移動可能に係合するアッパレール103とからなるシートトラック105はフロアに設けられる。
【0034】
アッパレール103の上部には、着座者の臀部を支持するシートクッション109が配置される。
シートトラック105のアッパレール103の前部には、フロントリンク115の一方の端部側がピン117を用いて回転可能に接続され、このフロントリンク115の他方の端部側はピン119を用いてシートクッション109のフレーム121の前部に回転可能に接続されている。
【0035】
シートトラック105のアッパレール103の後部には、リアリンク123の一方の端部側がピン125を用いて回転可能に接続され、このリアリンク123の中間部はピン127を用いてシートクッション109のフレーム121の後部に回転可能に接続されている。
【0036】
シートクッション109のフレーム121には、プレートとしてのセクタギア131がピン133を用いて回転可能に設けられている。また、セクタギア131にはピン133を中心とする円弧状の長穴111が形成され、フレーム121には長穴111に嵌合するピン113が設けられている。この長穴111とピン113とでセクタギア131の回転範囲が規制されている。
【0037】
更に、フレーム121には、セクタギア131に噛合するピニオン135が設けられたシャフト137が回転可能に設けられている。このシャフト137は、ブレーキ機構(逆転防止機構)139を介して図示しないハンドルによって回転駆動されるようになっている。ブレーキ機構139は、ハンドルからのピニオン135の回転駆動を許可し、ピニオン135の自転を禁止するものである。例えば、マニュアル式のウインドレギュレータに用いられるもので、詳細な説明は省略する。又、電動の場合は、例えば、ウォームとウォームホイールとからなる大きな減速比を有する減速機構を介してモータを設ければよい。
【0038】
セクタギア131の回転中心であるピン133以外の部分には、ピン145が設けられている。ロングリンク147の一方の端部側には、長手方向に延びると共に、前記ピン145が嵌合する長穴146が形成されている。ロングリンク147の他方の端部側は、ピン149を用いてリアリンク123の他方の端部側に回転可能に取り付けられている。
【0039】
又、ロングリンク147には、ピン149を長穴146のリアリンク123側の端部に回転可能に保持する保持手段201が設けられている(詳細は後述する)。
そして、シートトラック105のアッパレール103と、フロントリンク115と、シートクッション109のフレーム121と、リアリンク123とで四節回転連鎖機構が構成されている。
【0040】
なお、本形態例では、フロントリンク115、リアリンク123のうち、少なくとも一方のリンクには、シートクッション109を上昇させるような付勢力を発生する図示しない付勢手段が設けられている。本形態例では、図1に示すように、内端部がピン125(アッパレール103)に係止され、外端部がリアリンク123に係止されたスパイラスプリング99を用いた。この付勢手段の付勢力は、乗員がシートクッション109に着座していない状態では、シートクッション109を上昇させ、着座している状態ではシートクッション109が上昇しないような大きさに設定されている。
【0041】
ここで、図1のロングリンク部分の拡大図である図2、図2の主要部の分解斜視図である図3を用いて、大送り機構を説明する。これらの図において、長穴146が設けられた部材であるロングリンク147には、穴148が形成されている。第1フック203、第2フック303にはそれぞれ穴203a、303aが形成され、これら穴203a,303aを挿通し、ロングリンク147の穴148に取り付けられるピン161にて、第1フック203、第2フック303は積層配置された状態で、それぞれ回転可能となっている。
【0042】
また、ロングリンク147の穴148のリアリンク123側には、穴150が形成されている。リリースレバー401には穴401aが形成され、穴401aを挿通し、ロングリンク147の穴150に取り付けられるピン181にて、リリースレバー401は回転可能となっている。
【0043】
第1フック203には、長穴146のリアリンク123側の端部に位置するピン145に係合可能で、係合するとピン145を長穴146のリアリンク123側の端部に保持するフック部203bが形成されている。更に、一端部がロングリンク147に係止され、他端部が第1フック203のスプリング係止部203cに係止された第1付勢手段としてのスプリング205により、第1フック203はそのフック部203bが長穴146方向に係合する方向に付勢されている。これら第1フック203とスプリング205とで、ピン145を長穴146のリアリンク123側の端部に回転可能に保持する保持手段201が構成されている。また、第1フック203には、第2フック303方向に延出するリリース突起203eが切り起こしにより形成されている。
【0044】
第2フック303には、ピン145に当接可能なカム面303cが形成され、さらに、このカム面303cには、ピン145が長穴146のフロントリンク115側の端部に位置すると、係合してピン145を長穴146のフロントリンク115側の端部に保持するフック部303bが形成されている。更に、第1フック203のリリース突起203eに押接可能で、リリース突起203eを押接することにより、第1フック203のフック部203bを長穴146から離れる方向に回転させる押圧部303eが形成されている。
【0045】
リリースレバー401には、フック部303bが長穴146のフロントリンク115側の端部に位置するピン145を保持している状態の第2フック303のリリース部303dを押接可能で、押接することにより第2フック303のフック部303bをピン145から離脱させる押圧部401bが形成されている。
【0046】
そして、ピン161には、中間部がピン161に巻回され、一方の端部がリリースレバー401のスプリング係止部401cに係止され、他方の端部が第2フック303のスプリング係止部303fに係止された第2付勢手段としてのスプリング183が設けられている。このスプリング183により、第2フック303はフック部303b、カム面303cが長穴146に近づく方向に、リリースレバー401は押圧部401bが第2フック303のリリース部303dから離れる方向にそれぞれ付勢されている。なお、ロングリンク147には、スプリング183で付勢されたリリースレバー401のそれ以上の回転を禁止するストッパ403が形成されている。尚、このストッパ403は、リリースレバー401が当接した状態では、リリースレバー401の押圧部401bが第2フック303のリリース部303dより離れた状態であるように設定されている。
【0047】
図1に示すように、シートクッション109の前部には、操作レバー173が回転可能に設けられている。操作レバー173近傍のシートクッション109には、ブラケット175が設けられている。このブラケット175には、アウタケーシング177aとインナケーブル177bからなるケーブル177のアウタケーシング177aの一方の端部側が取り付けられている。一方、ケーブル177のインナケーブル177bの一方の端部側は操作レバー173に接続されている。ケーブル177のアウタケーシング177aの他方の端部側は、ロングリンク147に形成された第1ケーブル係止部147aに係止されている。そして、図3に示すようにインナケーブル177bの他方の端部側は、リリースレバー401のケーブル係止部401dに係止されている。
【0048】
図2、図3に戻って、ケーブル178は、図示しない他の操作手段(例えば、シートバックの2段折れ機構等)の操作力を伝達するもので、そのアウタケーシング178aはロングリンク147の第2ケーブル係止部147bに係止され、インナケーブル178bは第1フック203のケーブル係止部203dに係止されている。
【0049】
次に、上記構成の作動を説明する。
図1、図2に示すように、保持手段201で第1フック203のフック部203bがピン145に係合し、ピン145が長穴146のリアリンク側123側の端部に保持されている状態が大送り機構が作動していない状態である。ここで、図示しないハンドルを回転すると、ブレーキ機構139を介してピニオン135が回転し、ピニオン135に噛合しているセクタギア131がピン133を中心に回転する。このセクタギア131が回転すると、ロングリンク147を介してリアリンク123がピン127を中心に回転し、フレーム121(シートクッション109)は、シートトラック105のアッパレール103(フロア側)に対して昇降する。
【0050】
ここで、大送り機構の作動を図1、図4〜図6を用いて説明する。図4は図2の状態からリリースレバーが作動した状態を説明する図、図5は図1の状態からシートクッションが大送り機構を用いて下降した状態を示す図、図6は図5の状態からリリースレバーが復帰した状態を示す図である。
【0051】
図1に示す操作レバー173を引き上げる操作を行うと、図4に示すようにケーブル177を介してその操作力はリリースレバー401に伝達される。即ち、ケーブル177のインナケーブル177bが引かれ、スプリング183の付勢力によりストッパ403に当接していたリリースレバー401は、スプリング183の付勢力に抗して回転する。リリースレバー401の押圧部401bが第2フック303のリリース部303dを押圧し、第2フック303もスプリング183の付勢力に抗して、そのカム面303cが長穴146より離れる方向に回転する。第2フック303の押圧部303eが第1フック203のリリース突起203eを押圧し、第1フック203はスプリング205の付勢力に抗して回転する。そして、第1フック203のフック部203bとピン145との係合が解除され、ピン145と長穴146との相対移動が可能となる。ここで、シートクッション109に乗員が着座していると、シートクッション109側の自重により、ピン145が長穴146のフロントリンク115側の端部に位置するまでピン145と長穴146とが相対移動する。この移動により、ロングリンク147がリアリンク123方向に移動し、シートクッションのフレームが下降する方向にリアリンクが回転し、図5に示すようにシートクッションは最下位置まで下降する。
【0052】
そして、操作レバー173を引き上げる操作を解除すると、図6に示すよう、リリースレバー401がスプリング183の付勢力によりストッパ403に当接する位置まで回転する。これにより、リリースレバー401の押圧部401bが第2フックのリリース部303dより離れ、第2フック303はスプリング183の付勢力により、カム面303cが長穴146方向に回転し、カム面303cのフック部303bが長穴146のフロントリンク115側に位置するピン145に係合し、ピン145を長穴146のフロントリンク115側の端部に保持し、シートクッション109の上昇を禁止する。このとき、スプリング205で付勢された第1フックのフック部203bはピン145の下面に当接する。従って、フック部303bを有する第2フック303と、第2フック303を付勢する第2付勢手段としてのスプリング183とで、大送り機構を用いてシートクッション109を最下位置に移動させた際に、シートクッション109の上昇を禁止するロック機構が形成されている。
【0053】
次に、大送り機構を用いて最下位置まで下降したシートクッション109を上昇させるには、シートクッション109に着座しない状態で、操作レバー173を引き上げる操作を行う。すると、第1フック203、第2フック303がピン145より離れ、ピン145と長穴146とが相対移動可能となる。スパイラルスプリング99の付勢力によりシートクッション109が上昇し、ピン145が長穴146のリアリンク123側の端部まで移動し、シートクッション109の上昇が禁止される。そして、操作レバー173への操作力を解除すると、図2の状態に復帰する。
【0054】
このような構成によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)大送り機構の保持手段201の第1付勢手段であるスプリング205の付勢力に抗して第1フック203をピン145から離脱させるだけで大送り機構を解除できる。すなわち、ワンアクションで、シートクッション109を最下位置まで下降することができる。
(2)大送り機構を用いてシートクッション109を最下位置に移動させた際に、シートクッション109の上昇を禁止するロック機構を設けたことで、車両が急停車した際や、車両が正面衝突した際に、シートクッション109が浮き上がるのを防止できる。
(3)第2フック303を第2付勢手段であるスプリング183の付勢力に抗してピン145から離脱させるだけでロック機構を解除できる。
(4)第1フック203と第2フック303とは積層配置され、第1フック203に第2フック303が当接可能なリリース突起203eを設け、第2フック303が長穴146より離れる方向に回転すると、第2フック303がリリース突起203eを押して、第1フック203が長穴146より離れる方向に回転するようにしたことにより、保持手段とロック機構との解除を同じ操作で行うことができる。
【0055】
尚、本発明は上記形態例に限定するものではない。上記形態例では、ピン145をセクタギア131に、長穴146をロングリンク147に設けたが、逆にピン145をロングリンク147に、長穴146をセクタギア131に設けてもよい。又、第1フック203にリリース突起203eを設けたが、第2フック303に第1フック203に当接可能なリリース突起を設けてもよい。
【0056】
更に、大送り機構の保持手段としては、図7に示すような機構であってもよい。図において、第1フック503は、穴503aを挿通し、ロングリンク147の穴148に取り付けられるピン561を用いて回転可能となっている。第1フック503には、長穴146のリアリンク123側の端部に位置するピン145に係合可能で、係合するとピン161を長穴146のリアリンク123側の端部に保持するフック部503bが形成されている。
【0057】
そして、ピン561には、中間部がピン561に巻回され、一方の端部がリリースレバー401のスプリング係止部401cに係止され、他方の端部が第1フック501のスプリング係止部503fに係止された第1付勢手段としてのスプリング583が設けられている。このスプリング583により、第1フック503はフック部503bが長穴146に近づく方向に、リリースレバー401は押圧部401bが第1フック503のリリース部503dから離れる方向にそれぞれ付勢されている。
【0058】
また、図7に示すような大送り機構の保持手段を用いた場合、大送り機構を用いてシートクッションを最下位置に移動させた際に、シートクッションの上昇を禁止するロック機構としては、図8のような構成が考えられる。リアリンク123にはピン601を用いて第3フック603が回転可能に取り付けられている。この第3フック603には、フロア側であるアッパレール103に設けられた被係合部材としての係合ピン605にシートクッション109が最下位置まで下降した際に係合可能なフック部607が形成されている。
【0059】
リアリンク123には、係合ピン605に係合可能な位置にある第3フック603に当接するストッパ609が設けられている。更に、図示しない第3付勢手段により第3フック603はストッパと当接する方向(図8の矢印方向)へ付勢されている。
【0060】
また、図8に示すように、操作レバーの動きはケーブル611を介して第3フック603に伝達されるようになっている。
次に、上記構成の作動を説明する。ピン145が長穴146のリアリンク側の端部に位置する時、即ち、大送り機構が作動していない時は、第1付勢手段であるスプリング583に付勢された第1フック503のフック部503bがピン145に係合し、ピン145は長穴146のリアリンク側の端部に位置に保持されている。このとき、第3付勢手段の付勢力により第3フック603はストッパ609に当接している。
【0061】
操作レバーを操作して、リリースレバー401を回転させ、スプリング583の付勢力に抗して第1フック503を長穴146から離れる方向に回転させると、ピン145と長穴146との相対移動が可能となり、シートクッション109側の自重により、ロングリンクがリアリンク方向に移動する。このロングリンクの移動により、シートクッション109のフレーム121が下降する方向にリアリンク123が回転し、シートクッション109のフレーム121は最下位置まで下降する。同時に、伝達手段であるケーブル611により第3フック603も第3付勢手段の付勢力に抗して、ストッパ609から離れる方向に回転する。
【0062】
次に、第1フックへ503の操作力を解除すると、第1付勢手段であるスプリング583の付勢力により、第1フック503は長穴146方向に回転する。同時に、第3フック603も第3付勢手段の付勢力により、ストッパ609に当接する方向に回転し、第3フック603のフック部607は係合ピン605に係合し、ロック機構が作動し、シートクッションの上昇を禁止する。
【0063】
このロック機構を解除するには、操作レバーを操作する。この操作レバーの動きはケーブル611を介して第3フック603に伝達され、第3フック603は、ストッパ609から離れる方向に回転し、第3フック603のフック部607と係合ピン605との係合が解除される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】形態例のシートを説明する図で、シートクッションが最上位置にある状態である。
【図2】ロングリンク部分の拡大図である。
【図3】図2の主要部の分解斜視図である。
【図4】図2の状態からリリースレバーが作動した状態を説明する図である。
【図5】図1の状態からシートクッションが大送り機構を用いて下降した状態を示す図である。
【図6】図5の状態からリリースレバーが復帰した状態を示す図である。
【図7】他の形態例の大送り機構を説明する図である。
【図8】他の形態例のロック機構を説明する図である。
【図9】従来のシートを説明する図である。
【符号の説明】
【0065】
131 セクタギア
145 ピン
146 長穴
147 ロングリンク
201 保持手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションのフレームと、フロア側に一端部側が回転可能に接続され、前記フレームの前部に他端部側が回転可能に接続されたフロントリンクと、フロア側に一端部側が回転可能に接続され、前記フレームの後部に中間部が回転可能に接続されたリアリンクと、前記シートクッション側のフレームに回転可能に設けられたプレートと、一端部が前記リアリンクの他端部側に回転可能に接続され、他端部が前記プレートの回転中心以外の部分に回転可能に接続されたロングリンクと、前記プレートを回転させる駆動部とを有し、前記駆動部を駆動することにより、前記リアリンクを回転させ、前記シートクッションを前記フロアに対して昇降させるリフト機構を有したシートにおいて、
前記プレートの回転中心以外の部分、前記ロングリンクの他端部側のうちのどちらか一方に設けられたピンと、
前記プレートの回転中心以外の部分、前記ロングリンクの他端部側のうちのどちらか他方に形成され、前記ピンが嵌合し、前記ロングリンクの長手方向に延びる長穴と、
前記ピンを前記長穴の前記リアリンク側の端部に保持する保持手段と、
からなる大送り機構を設けたことを特徴とするシート。
【請求項2】
前記保持手段は、
前記長穴が設けられた部材側に回転可能に配設され、前記長穴の前記リアリンク側の端部に位置する前記ピンに係合可能で、係合時に前記ピンを前記長穴の前記リアリンク側の端部に保持する第1フックと、
該第1フックを前記長穴方向に付勢する第1付勢手段と、
からなることを特徴とする請求項1記載のシート。
【請求項3】
前記大送り機構を用いて前記シートクッションを最下位置に移動させた際に、前記シートクッションの上昇を禁止するロック機構を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載のシート。
【請求項4】
前記ロック機構は、
前記長穴が設けられた部材側に回転可能に配設され、前記長穴の前記フロントリンク側の端部に位置する前記ピンに係合可能で、係合時に前記ピンを前記長穴の前記フロントリンク側の端部に保持する第2フックと、
該第2フックを前記長穴方向に付勢する第2付勢手段と、
からなることを特徴とする請求項3記載のシート。
【請求項5】
前記第1フックと前記第2フックとは積層配置され、
前記第1フック、前記第2フックのいずれか一方のフックに他方のフックと当接可能な突起を設け、
前記第2フックが前記長穴より離れる方向に回転すると、前記突起と他方のフックとが当接して、前記第1フックが前記長穴より離れる方向に回転するようにしたことを特徴とする請求項4記載のシート。
【請求項6】
前記ロック機構は、
前記フロア側の部材に設けられた被係合部材と、
前記リアリンクに回転可能に設けられ、前記被係合部材に係脱可能な第3フックと、
前記リアリンクに設けられ、前記被係合部材に係合可能な位置にある前記第3フックに当接するストッパと、
第3フックをストッパと当接する方向へ付勢する第3付勢手段と、
からなることを特徴とする請求項3記載のシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−122569(P2006−122569A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−317920(P2004−317920)
【出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【出願人】(590001164)シロキ工業株式会社 (610)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】