説明

シーム

肌着についての防水性シームが二片の布帛の間に形成され、少なくとも一片は積層物である。積層物は防水性水蒸気透過性層からなる第一層(40, 50)および、第一層に積層された第二織編物層(30)からなる。第二層(30)は第一成分と第二成分からなり、第一成分は第一の温度に安定であり、第二成分は第一の温度より低い第二の温度で溶融する。シームはまた少なくとも一片の積層物の第二層と接触し、シームを封止する熱可塑性シーム封止テープ(5)を含む。シーム封止テープを高温高圧でシームに当てがい、熱可塑性シーム封止テープおよび織編物層の第二成分を溶融する様にして防水性シームを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高性能の防水性通気性(すなわち水蒸気透過性)肌着、手袋、帽子、靴などの構築物における防水性通気性材料の隣り合った材料片間の防水性シームの製造に関する。本発明は向上した防水性のシームの製造を可能にする。
【背景技術】
【0002】
防水性水蒸気透過性布帛およびこれから作られた肌着は業界ではよく知られている。この様な肌着は防水性と通気性を結合させる、着用者から発生する水蒸気は肌着から外へ通過でき、肌着の着心地を良くする。
【0003】
多くの防水性通気性材料(ここでは“機能性層”と呼ぶ)が業界で知られている。非常にしばしばこれらの材料は積層物である。一方、これら材料の積層物自身も防水性であるが、隣合った材料片間で作られるシームの製造と封止は特別な問題を起す。通常は、この様なシームは材料を縫製し、シームをシーム封止テープ(テープはシーム自身の何れかの側で布帛に固定される)で被覆することによって作られる。典型的には、シーム封止テープは、片側に熱溶融接着剤の被覆を持つバッキングテープからなる。通常の縫製技術でシームを調製した後、シーム封止テープを加熱する、例えば、熱空気の衝風を使って接着剤を溶解する。ついでテープをシーム上に当てがい、一対の圧力ローラーの噛合せを通過させ、溶融接着剤を布帛中へ絞り出す様にし、テープを下にある布帛への良好な結合を確保する。
【0004】
美的な理由で、シーム封止テープは一般に肌着の内部に当てがい、目につかない様にする。非常にしばしば着心地と外觀の理由から、防水通気性布帛の内表面には織編裏地材を当てがい、これは感触が軟らかく、着用者と接触して向上した着心地を与える。着心地が良いためには、この様な裏地材は好ましくは軟らかく、若干嵩高なのが良い。布帛に積層した内部裏地層を有するこの様な布帛のシーム封止は問題を起す可能性がある。
【0005】
第一の問題は、シーム封止テープに熱と圧力をかけると、一般に溶融接着剤を裏地材を通して下にある機能層に押出して良好な接触をさせる(このようにして、裏地材中の隣接する糸条間の空間を満たす)が、シーム封止接着剤は糸条自身のすき間内に浸透しないかも知れない。知られている様に、糸条は多くの纎維、フィラメントなどから成っていて、隣接する纎維間あるいはフィラメント間にはすき間がある。これらのすき間は、液体の水がシームの外側から肌着の内側に毛管作用で入り込む通路を提供する。このことは、ここに図1と図2を参照して詳細に説明する。隣接する材料片間のすき間を通過して、あるいは縫目の列中の孔を通過してシームに入った液体の水は毛管作用でシームから横方向に動き、裏地材自身の糸条のすき間に入る。もし、シームが殊に過酷な気象条件下で完全に防水性でなければならないならば、すき間は満たされていなければならない。
【0006】
通常のシーム封止工程の第二の問題は、シーム封止できる裏地布帛の選択が非常に限られていることである。その理由は以下の様である。防水性通気性積層物(機能層)の内表面に嵩高な裏地材が使用されると、熱と圧力を組合わせても、接着剤が裏地糸条間の空間を満たし下にある機能層と強く結合するには不十分なので、これらを首尾よくシーム封止するのが難しい。シーム封止ローラーの間で圧力をかけ過ぎると、裏地自身のパターンも布帛の前面に現れるので望ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、これらの問題を軽減し、良好な防水性のシームを提供することにある。本発明のさらなる目的は、嵩高な裏地材のシーム封止を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は二成分材を含む積層物の使用を伴なう。この様な二成分材は高い温度で溶解する第一の熱可塑性成分と低い温度で溶解する第二の熱可塑性成分からなる。二成分材は特許公報WO99/16616およびWO99/16620(ダブリューエルゴアアンドアソシエーツインコーポレーティッド(W.L. Gore & Associates Inc.))に記載されている。
【0009】
本発明は下記の防水性シームを提供する。少なくとも一片は積層物である二片の布帛の間で形成された防水性のシームであって、
積層物は防水性水蒸気透過性層を含む第一層および、第一層に積層され第一成分と第二成分を含む第二織編物層を含んで成り、第一成分は第一の温度に安定であり、第二成分は第一の温度より低い第二の温度で溶融し、
シームは、少なくとも一片の積層物の第二層と接触し、シームを封止する熱可塑性シーム封止テープを含む。
【0010】
本発明はまたこの様なシームを有する肌着、ビバークバッグ、シェルター(テントを含む)等に関し、またシーム封止法に関する。本発明の積層物で形成されるシームは十分に防水性が有り、ここに述べるSuter試験で測定した水進入圧で0.07バール以上、好ましくは0.13バール以上、最も好ましくは0.2バール以上に対抗できる。さらに、シームは強く柔軟性が有る。
【0011】
積層物の第二層において、第二(低溶融点)成分は好ましくは80-170℃の範囲の温度で溶融可能であり、他方第一(高溶融点)成分は140℃以上の温度まで安定している。信頼性のあるシームを形成するために、第一の温度と第二の温度の差は好ましくは20℃以上である。
【0012】
本発明の一実施態様によれば、第二層(一般に裏地層)はすき間を持つストランド、フィラメント、糸あるいは纎維で形成された複数の糸条からなる。本発明は、殊にシーム-封止嵩高なあるいは厚いしばしば比較的圧縮できない裏地材に有用である。この裏地材は他の方法では首尾良くシーム−封止が困難である。この様な材料は“高ロフト(厚み)”材あるいは“起毛パイル”布帛と呼ばれものを含む。典型的には、第二層は編物、起毛編物あるいはフリースである。シーム-封止が困難な材料は一般に接着剤流れに対して曲がりくねった通路を持ち、ロフトが高い。一般にその厚み(レーザーで測定可能)は1 mmを越え、しばしば2 mmを越え、しかし普通は5 mm未満である。典型的な重量は20-100g/mm2、特には30-80g/mm2である。嵩密度は一般に1×104g/m3ないし1×105g/m3である。
【0013】
第一成分は一般にセルロースを含むポリマー、ウールおよび絹を含むプロテイン纎維、高溶融点ポリオレフィン、ポリエステル、共重合ポリエステル、ポリアミドあるいは共重合ポリアミドの群から選ばれる。第一成分はナイロン6, 6等のポリアミドが好ましい。
【0014】
第二層における第二成分は熱可塑性材料で、これは共重合ポリエステル、ポリアミド、共重合ポリアミドおよびポリプロピレン等のポリオレフィンを含む熱可塑性プラスチックの群から選ばれる。好ましい実施態様においては、第二の成分はポリプロピレン等のポリオレフィンである。
【0015】
本発明の特に好ましい実施態様はナイロン6,6を第一成分(融点約260℃)として用い、ポリプロピレン(融点約160℃)を第二成分として用いる。
【0016】
一実施態様においては、第二層の糸条は第一成分と第二成分からなる複合纎維である。二成分を有する複合纎維は“二成分纎維”と呼ばれることがある。本発明に用いられる適当な二成分纎維の例としては偏心鞘一芯配置と共心鞘一芯配置が挙げられる。ここに第二成分は被覆、“海中島”配置、くさび一芯配置、くさび配置あるいは“サイド−バイ−サイド”配置を形成する。しかしながら、本発明の好ましい実施態様においては、共混纎分離纎維の混合が使用される。ここでは、一つの纎維は第一成分で形成され、他の纎維は第二成分で形成されている。
【0017】
必要ならば、互に異なる融点を持つ三つ以上の成分を使用してよい。
【0018】
かくして、本発明はシーム封止工程に使われる温度と圧力は比較的低レベルにすることができ、これはまたシームと積層物(何れの側も)の変形を避ける。高すぎる圧力および/あるいは高過ぎる温度は、表側布帛の表面に裏地模様を圧しつけ易くなり、これは好ましくない。熱可塑性シーム封止テープは、可熱されたら軟化し流動する熱可塑性フィルムでよい。より普通には、シーム 封止テープは、熱溶融接着剤の層を有するバッキングからなる。一般には、シーム 封止フィルムあるいは接着剤は第二成分の溶融点より高い温度、かつ第一成分の溶融点よりも低い温度で溶解する。こうすると、シーム封止條件を維持できる。このシーム-封止フィルムあるいは接着剤は好ましくは第一成分の溶融点よりは10ないし20℃低い温度で溶融する。しかしながら、これらの条件はある程度熱流速度とシーム-封止速度に依存する。このシーム-封止接着剤は、溶融しても高温で粘度を維持し、流動性が高くなり過ぎない“マルチドメイン”接着剤であっても良い。
【0019】
積層物の第一層(機能層)は膜あるいはフィルムでよい。第一層は、ポリエステル、ポリアミド、ポリケトン、ポリスルホン、ポリカーボネート、弗化ポリマー、ポリアクリル酸エステル、エーテル−エステル共重合体、エーテル−アミド共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレンあるいはポリオレフィンから成る物質の群から選ぶことができる。第一層は好ましくは延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)で形成されている。延伸ポリテトラフルオロエチレンは非常に防水性があり高度に通気性がある。ePTFEに親水性ポリマーのコーティングを公知の方法で設けてもよい。この様な積層物は1500g/m2/日より大きな(特別な場合、3000g/m2/日より大きな)水蒸気透過率を提供でき、また、0.13 barより大きな水進入圧を提供できる。
【0020】
代わりに、防水性水蒸気透過性層は水蒸気透過性ポリマーの一体構造シート、あるいは可撓性基材(例えば、織編物基材)上のコーティングによっても構成できる。
【0021】
シームは二片の積層物によって形成されることがある。あるいは、一片の布帛(例えば、ジップファスナーのマージン)と一片の積層物で形成されることがある。この場合、布帛は通常の方法で封止できる。熱可塑性シーム封止テープはシームの上にあるか、部分的に重なりあった布帛の間におき、両者を結合しシームを形成する。すべての場合において、積層物の第二層は熱可塑性シーム封止テープと接触している。
【0022】
通常は、シームは液状の水の通過に抵抗する様に意図されている。しかしながら、材料と接着剤の適当な選択によりシームは、NH3、HCl、H2S、SO2および有機物質等の化学物質の蒸気の通過に抵抗できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
従来技術と対比させかつ下記添付図面と関連させて本発明の実施態様を説明する。
【0024】
図1と図2は、従来のシーム封止法の問題を説明する。
【0025】
図1は従来のシームの形成と従来の封止テープの適用を示す。一般にシームは従来のミシンを使用して形成されるということを理解すべきである。
【0026】
工程1)において、材料1aと材料1bの隣合った二片がシーム2に沿って部分的に重なり合わされている。工程2)では、一列の縫目の線3で縫われている。工程3)では、シームが折疊まれ、さらなる縫目の線4を適用し、平たくしたシームを形成させた。部分的に重なり合わされた材料片1aと1bの間の空間から水が進入できるので、シームは防水性でない。水はまた縫目3, 4により形成された孔を通しても進入できる。このため、シームをまたいで熱溶融シーム封止テープを適用して、シームの横方向両側の材料を封止する様にするのが普通である。工程4にそれを示したが、シーム封止テープ5がシームをまたいで適用されている。シーム封止テープには従来加熱空気流を当てて、シーム封止テープの片側につけた熱溶融接着剤を溶融し、圧力ローラーを使用してシーム封止テープをシームに押し付け、熱溶融接着剤を布帛の糸条中に押込み、シーム封止テープを下にある布帛に確実に接着させる。
【0027】
先に述べた様に、この従来法の問題は、このシーム封止接着剤は隣接した糸条間の空間を満たすが、纎維間、フィラメント間等のすき間中に、また糸条自身内に浸透するとは限らないことである。これらのすき間は水分が矢印Aの方向へシームを毛管作用で通り抜ける通路を提供する。先に述べた様に、水分は隣接する材料片間をシームに入るか、あるいは縫目孔を通過してシームに入る。水分は次いで殊に嚴しい気象条件下で矢印Aの方向に毛管作用で通り抜けることができる。
【0028】
問題をさらに図2により説明する。図2は、シーム封止テープ5がシーム領域の片側で材料1bに接着されている領域を横切るB-B線に沿った横断面図である。材料1bは、積層され分離した糸状からなる裏地材を含み、各糸条は多くの分離した繊維、フィラメント等からなる。シーム封止テープ5の片側にある熱溶融接着剤7は糸条6間の空間に浸透しているが、糸条の分離した纎維、フィラメント等の間のすき間に浸透していないのが顴察される。潜在的な水分進入の通路Aが再び示されている。
【0029】
この従来のシーム封止法についてのさらなる問題は、嵩高な裏地布帛が積層された材料を信頼性を持ってシーム封止できないということである。この様な布帛においては、接着剤の粘度によっては、裏地材料の糸条間に接着剤を押込むために容認し難い大量の熱と圧力をかけなければならず(恐らくは長時間)、そうすると、材料1a、1bの前面に裏地の模様が刻印される。この様な高温、高圧で時間をかけても、信頼性の有るシームの形成が保証できない。
【0030】
図3は、特許公報WO 99/16616およびWO 99/16620に記載されている型の熱可塑性二成分材料を示す。材料1は表面側布帛40およびこれに積層された防水性通気性(すなわち、水蒸気透過性)膜50から成り、膜50は多孔性高分子層10および親水性高分子により形成された水蒸気透過性高分子層20から成る。複合層50の他の側には、裏打ち材として働く1本あるいは2本以上の二成分糸条から成る織編二成分ストランド層30が積層されている。
【0031】
多孔性高分子層10は開放性相互結合マイクロボイドの顕微鏡組織を有する微多孔性高分子膜でよい。層10は通気性を示し、この様な層として水蒸気透過性を与えるかこれを損なわない。使用される微多孔性膜は、典型的には厚さ5-125μmで最も好ましくは5-25μmの程度である。この微多孔性膜はプラスチックあるいはエラストマー系高分子から形成できる。適当な高分子の例としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリケトン、ポリスルホン、ポリカーボネート、フルオロポリマー、ポリアクリル酸エステル、ポリウレタン、エーテル−エステル共重合体、エーテル−アミド共重合体などが挙げられる。
【0032】
好ましい微多孔性高分子膜材料は延伸微多孔性ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)である。この材料は、多数の開放性相互結合顕微鏡的ボイド、高ボイド体積、高強度、軟らかさ、柔軟性、安定した化学的性質、高水蒸気移動および良好な汚染抑制特性を示す表面により特徴付けられる。U.S. Pat. No. 3,953,566およびU.S. Pat. No. 4,187,390にはこの様な微多孔性延伸ポリテトラフルオロエチレン膜の製造についての記載がある。連続した水蒸気透過性高分子層20は一般に、親水性高分子である。親水性層は拡散により撰択的に水を輸送し、圧力で駆動される液体あるいは空気流を支持しない。したがって、水分、すなわち、水蒸気は輸送されるが、高分子の連続層は空気によって運ばれる粒子、微小生物、油類あるいは他の汚染物の通過を締め出す。この特性は、紡績材料および紡積材料から作られた製品(肌着類、ソックス、手袋、靴など)に、汚染物に対するバリアとして機能させることによって、良好な汚染抑制特性を与える。さらに、この材料の水蒸気移送特性は着用者に良好な着心地を与える。
【0033】
連続した水蒸気透過性高分子層20は典型的に5-50μmの厚さ、好ましくは約10-25μmの厚さを有する。この厚さは満足な耐久性、連続性および水蒸気移動速度を生じるのに良好で実用的なバランスであることが判明した。
【0034】
制限はされないが、層20の連続した水蒸気透過性高分子は好ましくはポリウレタン族(family)、シリコーン族、エーテル−エステル共重合体族あるいはエーテル−エステル−アミド共重合体族の高分子である。適当なエーテル−エステル共重合体親水性組成物はU.S. Pat. No. 4,493,870(Vrouenraets)およびU.S. Pat. No. 4,725,481(Ostapachenko)に見出すことができる。適当な親水性組成物はU.S. Pat. No. 4,234,0838(Foyら)に記載されている。適当なポリウレタンは、U.S. Pat. No. 4,194,041 (Gore)に見出すことができる。好ましいポリウレタンの連続した水蒸気透過性高分子、殊にオキシエチレン単位を含む高分子の好ましい種類(class)はU.S. Pat. No. 4,532,316 (Henn)に記載されている。典型的には、これらの材料は、高分子に親水性を与えるオキシエチレン単位を高濃度で有する組成物を含む。オキシエチレン単位の濃度は典型的には、ベース高分子に対して45重量%より大、好ましくは60%より大、より好ましくは70%より大である。
【0035】
複合層50はU.S. Pat. No. 5,026,591 (Hennら)の教示に従って製造できる。
【0036】
表側布帛40は、標準の積層工程により複合層50の片側に積層できる。特に、液体熱硬化接着剤の点模様はグラビアロールにより複合層50の片側に付けることができる。そうすると、材料を圧力ローラーの間を通し、硬化させることにより積層が起る。
【0037】
二成分層30は通常は糸条から作られる織編物層であり、糸条はストランド、フィラメント、糸、二成分以上を有する纎維あるいは纎維ブレンドから成る。第一成分は例えば約230℃の高温度以下で安定した(すなわち、溶融しないかあるいは分解しない)材料である。第二成分は、例えば、約110℃の低溶融点の材料である。織編物二成分層30中の二成分は、二つの異なる共混纎型のストランド、フィラメント、糸あるいは纎維で作ることができる。あるいはその代わりに、二成分糸条が使用される。二成分糸条は芯一鞘構造、“海中島”構造あるいは“サイド-バイ-サイド”構造をとることができる。WO 99/16616の表1は、本発明で使用できる、可能な市販の二成分糸条を示す。
【0038】
本発明の好ましい実施態様においては、織編物層30の二成分はポリプロピレンとポリアミド、ポリプロピレンとポリエチレン、あるいは異なるグレ−ドのポリアミド(例えば、ナイロン6とナイロン6,6)である。特に好ましい実施態様には、25 x 78 dtexポリプロピレンフィラメントおよび13 x 44 dtexポリアミドフィラメント(すなわち、78f25/44f13)の60:40ブレンドである糸条が含まれる。
【0039】
層30は二熱可塑性成分を有してよい。しかしながら、特別な目的に必要ならば、三つ以上の熱可塑性成分を含めてもよい。
【0040】
層30を形成するのに使用する二成分あるいは多成分糸条は多くの従来技術によって製造できる。例えば、織編物層30の異なる成分の多くのフィラメントは混合して所定のメトリック数(Nm)あるいはdtexの糸条を形成することができる。糸条のメトリック数(Nm)は次式Nm = 10,000/dtexから得られる。典型的には、メトリック数は70ないし90である。かくして、84 dtexフィラメントの25フィラメント糸条はここでは(84f25)として示される。公知の技術を用いて、多成分糸条を織編みできる。
【0041】
二成分層30を、表側布帛40についての上記プロセスと類似の積層工程により複合層50の片側に積層される。積層工程の際は、低溶融(あるいは高溶融)成分が積層工程の際に著しく溶融することのない様に留意しなければならない。
【0042】
WO 99/16616に記載されている様に、二成分層30中に液体発泡剤を含ませてよい。
【0043】
図4は、図3に示し上に述べた型の二片の積層物1a、1bの部分的重ね合わせにより形成されたシームを示す。本発明のシームは上記図1との関連で述べた方法で形成される。しかしながら、図3に示す様に二成分積層物材料の使用は、裏地材の糸条中の纎維、フィラメント等の間のすき間の封止となる。
【0044】
かくして、隣り合った二片の積層物1a、1bの間にシームが形成される。各積層物は表側布帛層40、防水性通気性複合層50(多孔性高分子層10および親水性水蒸気透過性高分子層20)および織編物裏地材である裏地層30を含む。二成分糸条の使用は良好なシーム封止を提供するので、裏地材は嵩高でよい。
【0045】
隣接する二片の積層物1a, 1bの間にあり、縫目の列3, 4により固定されたシームは図1で説明した様に形成される。その後で裏地層30に面する側に熱溶融接着剤の層を持つ従来のシーム封止テープ5を従来法で適用する。シーム封止工程の温度は、織編物層30の第二の低温溶融成分の溶融温度よりも高く選んで、二成分糸条の低溶融成分がシーム封止工程中に十分に軟化あるいは溶融する様にしなければならない。しかしながら、この温度は、二成分糸条の第一の高温溶融成分の溶融温度より低温にして、この第一成分が安定していて本質的には構造変化しない様にしなければならない。本発明の好ましい実施態様において、シーム封止工程は約190℃で行なわれる。この温度で、裏地層30中の低溶融温度成分は溶融し、シーム封止ローラーにより加えられる圧力の故に第二成分は溶融し、安定した高溶融温度の第一成分の間のすき間を満たす。同時に、シーム封止テープの熱溶融接着剤は裏地30の糸条の回りを流れ、裏地材を透過し、下に在る防水性通気性膜50と良好な接着的接触を形成する。この様にして、シーム封止テープ5と防水性通気性膜50の間に裏地の糸条の周りおよび裏地の糸条内のすき間内の両方を封止する完全な封止が形成され、水分の横方向の通過が実質的に軽減される。驚くことには、本発明はまた嵩高な裏地材の使用を可能にし、効果的にシーム封止できる裏地構造の範囲を実質的に拡大する。
【0046】
図5および図6は、本発明によって封止できる代わりのシーム構造を示す。図5は“シャツ”折畳まれたシームを示す。図6は簡単な部分的に重ならせたシームを示す。両シーム共、縫目4の列を用いて確保され、上記の様に対応する參照数字が使われている。また、図1に示されているシームは“トップ縫い”の必要がない、すなわち、縫目の第二列4は省略してよい。
【0047】
図7および図8は一片の布帛(すなわち、ジップファスナー60のマージン62)と一片の積層物1bの間に形成されるシームを示す。二つの布帛片は部分的に重ならせて縫い合わせたシームを形成する。シーム封止テープ5を図7のシーム上に当てる。図8においては、二つの布帛片を間においた熱可塑性シーム封止テープフィルム70により接合される。このテープフィルム70は二つの布帛片を接合し、またシームを封止する。
【実施例】
【0048】
実施例1(ポリプロピレン/ポリアミド6,6ブレンド)
2片の三層(3L)積層物の間にシームが形成された。この積層物は、親水性ポリマーを塗布した延伸ポリテトラフルオロエチレンから形成された機能層に積層された織物布帛表面側および機能層の反対側に積層された編物層からなる。編物層は第一成分(ポリアミド6,6、溶融点260℃)および第二成分(ポリプロピレン、溶融点160℃)からなる。マルチフィラメント糸条(38本のフィラメント)は25本のポリプロピレンフィラメント(84 dtex)(84f25)および13本のポリアミド6,6フィラメント(44 dtex)(44f13)からなる。
【0049】
シームは最初、標準ミシンで縫付け、以下の条件でゴア−シーム(商品名)テープコンベクティブヒートシーリングマシンにより封止する:ノズル空気温度600℃、空気流量130標準ft.3/hr, 噛合せ圧6バール、シーム封止速度2 m/min。本明細書で説明するSuter法を使ってシームを試験し、3 psi 2分間の最初の防水性試験を合格した。使用したシーム封止テープはゴア−シーム(商品名)テープである。
【0050】
図7(a)および図7(b)は非封止積層物の断面およびシーム封止工程を通した後の積層物の断面を示す。対照試料には38フィラメントが明瞭に見られるが、封止工程の後では16フィラメントのみが全体的に完全で確認できるフィラメントとして残った。見当たらなくなったフィラメントはいろいろな程度に溶融され、これはマルチフィラメント束中のすき間の空間を塞ぐのを助けるのに役立つ。
防水性(Suter試験)
本発明の試料を、修正Suter試験装置を使用して防水性試験に供した。これは低水進入圧試験である。締付け配置にある二つの円形ラバーガスケットによって封止された11.25 cm径の試料の下側に水圧をかけた。試料は、織物表側布帛を下側に水と対持させ、テープ止めしたシームを有する編物層を最上部にして取付けた。締付け機構、ガスケットおよび試料によって防漏水性封止が形成されていることが重要である。変形可能な試料においては、試料の上から強化スクリム(例えば、開放非織物布帛)を締付けた。テープ止めしたシームを有する試料の上側は雰囲気に開放され、操作者が見ることができた。試料の下側にかけられる水圧は、水溜めに接続されたポンプによって2 psi (0.14 kg/cm2)に増加させた。水圧は圧力ゲージにより示され、ラインにあるバルブによって制御される。試料の上側を1分間目視して、防水性に欠ける場合に試料を通して押出されて水が現れるかどうかを確認した。表面に見られる液状水は、試験試料が防水性に欠けていると解釈された。一分間の試験時間中に液状水が試料の上表面に見られなければ、試料は試験に合格であった。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】従来のシームの一例の形成工程を模式的に示す。このシームはシーム封止テープで封止されている。
【図2】図1の線B-Bに沿った拡大横断面図である。
【図3】本発明のシーム形成に用いられる二成分積層物の横断面図である。
【図4】本発明のシームを示す。
【図5】本発明が適用できる別の型のシームを示す。
【図6】本発明が適用できる別の型のシームを示す。
【図7】ジップマージンと一片の積層物で形成され、上に乗せてあるシーム封止テープを有するシームの模式図を示す。
【図8】ジップマージンと一片の積層物で形成され、二片の布帛の間におかれた熱可塑性シーム封止テープを有するシームの模式図を示す。
【図9】非封止糸条繊維(a)およびシーム封止後の糸条繊維(b)の走査電子顕微鏡写真(SEM)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一片は積層物である二片の布帛の間で形成された防水性のシームであって、
該積層物は防水性水蒸気透過性層を含む第一層および、該第一層に積層され第一成分と第二成分を含む第二織編物層を含んで成り、該第一成分は第一の温度に安定であり、該第二成分は該第一の温度より低い第二の温度で溶融し、
該シームは、該少なくとも一片の積層物の該第二層と接触して該シームを封止する熱可塑性シーム封止テープを含むことを特徴とするシーム。
【請求項2】
第二織編物層が嵩高材料である請求項1に記載のシーム。
【請求項3】
第二成分が80ないし170℃の温度範囲で可溶融性である前記請求項の何れかに記載のシーム。
【請求項4】
第一成分が少なくとも140℃の温度まで安定である前記請求項の何れかに記載のシーム。
【請求項5】
第一成分の溶融温度と第二成分の溶融温度の差が20℃以上である前記請求項の何れかに記載のシーム。
【請求項6】
第二層が複数の糸条からなり、各糸条が間にすき間を有するストランド、フィラメント、糸あるいは繊維から形成された前記請求項の何れかに記載のシーム。
【請求項7】
第一成分がナイロン6,6であり、第二成分がポリプロピレンである前記請求項の何れかに記載のシーム。
【請求項8】
第二層が複合繊維から成り、各繊維が第一成分と第二成分を含む前記請求項の何れかに記載のシーム。
【請求項9】
第二層が混繊された第一成分繊維と第二成分繊維からなる前記請求項1ないし7の何れかに記載のシーム。
【請求項10】
熱可塑性シーム封止テープが熱溶融接着剤の層を有するバッキングからなる前記請求項の何れかに記載のシーム。
【請求項11】
シーム封止テープの溶融点が第二成分の溶融点よりも高く第一成分の溶融点よりも低い前記請求項の何れかに記載のシーム。
【請求項12】
シーム封止テープの溶融点が第一成分の溶融点よりも10ないし20℃低い請求項10に記載のシーム。
【請求項13】
第二層が互いに異なる溶融点を有する三以上の成分からなる前記請求項の何れかに記載のシーム。
【請求項14】
防水性水蒸気透過性層が水蒸気透過性ポリマーの一体構造のシートからなる前記請求項の何れかに記載のシーム。
【請求項15】
防水性水蒸気透過性層が可撓性基材上に水蒸気透過性ポリマーのコーティングを含む前記請求項1ないし13の何れかに記載のシーム。
【請求項16】
水蒸気透過性層が延伸ポリテトラフルオロエチレンを含む請求項1ないし13の何れかに記載のシーム。
【請求項17】
水蒸気透過性層が水蒸気透過性ポリマーをコーティングした延伸ポリテトラフルオロエチレンを含む請求項1ないし13の何れかに記載のシーム。
【請求項18】
NH3, HCl, H2S, SO2あるいは有機物質の蒸気の通過に抵抗する前記請求項の何れかに記載のシーム。
【請求項19】
一片の布帛と一片の積層物から形成された前記請求項の何れかに記載のシーム。
【請求項20】
布帛がジップファスナーのマージンである請求項19に記載のシーム。
【請求項21】
二片の積層物から形成された請求項1ないし18の何れかに記載のシーム。
【請求項22】
テープがシームの上に置かれ、布帛の第二層と接触させてシームの片側の二布帛片に融合されている前記請求項の何れかに記載のシーム。
【請求項23】
テープを二片の布帛の間にその第二層に接触させて置き、布帛に融合させた請求項1ないし21の何れかに記載のシーム。
【請求項24】
前記請求項の何れかに記載のシームを有する肌着。
【請求項25】
前記請求項の何れかに記載のシームを有するシェルター、カバー、ビバークバッグあるいはテント。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2006−523556(P2006−523556A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506121(P2006−506121)
【出願日】平成16年4月14日(2004.4.14)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001597
【国際公開番号】WO2004/091902
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(500171981)ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエーツ(ユーケー)リミティド (2)
【Fターム(参考)】