説明

シールドケーブル

【課題】シールドケーブルを機器側接続部に機械的に固定し、かつ、そのシールド部を機器側接続部に電気的に接続する作業を、簡易に行えるようにすること。
【解決手段】シールドケーブル20は、挿入孔部13を有する機器側接続部12に接続される。シールドケーブル20は、電線22と、電線22の外周囲を覆うシールド部24と、電線22の端部でシールド部24の外周を覆うように外嵌めされると共に、挿入孔部13の内周面に係止固定可能な弾性係止部が形成された筒部材30とを備える。シールド部24が、弾性係止部44の外周を覆うように、筒部材30の先端部で折返されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シールドケーブルの端部を機器に接続する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用の高圧配線として、電線の外周囲を編組等のシールド部で覆ったシールドケーブルが用いられている。かかるシールドケーブルの端部を機器に接続する技術が特許文献1及び2に開示されている。
【0003】
特許文献1には、シールド電線が挿通される略円筒状のハウジングと、このハウジングから突出したシールド電線の編組の端部をハウジングの外周面に折返した状態で、ハウジングに冠着される金属シェルとを備えたシールド電線の端末処理構造が開示されている。この端末処理構造では、前記金属シェルがモータケースの電線挿入口に挿入されることで、編組が金属シェル及びモータケースを介してアース接地される。また、この状態で、ハウジングに突設されたフランジ部がボルトでモータケースに取付けられることで、シールド電線の端部の機械的な固定が図られている。
【0004】
特許文献2には、シールド電線にストッパ部材と抜止部材とを取付けたシールド電線の取付装置が開示されている。シールド電線のシースの端末には支持筒が外嵌されており、この支持筒上にシールド層が折返され、このシールド層の折返し部分を覆うように抜止部材が嵌め込まれて加締め付けされている。このシールド電線の取付装置では、抜止部材をシールドケースの取付孔に挿入すると、ストッパ部材及び抜止部材の弾性抜止片が取付孔の孔縁に当接することで、シールド電線の軸方向の移動が規制される。また、この状態で、弾性抜止片の先端の弾性接触部が取付孔の内周面に当接することで、シールド電線のシールド層がシールドケースに導通可能に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−112924号公報
【特許文献2】特開2000−175341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、ハウジングに突設されたフランジ部がボルトでモータケースに取付けられる構成であるため、機器への組付工程においてボルトによる固定作業が必要となってしまう。しかも、ボルトの固定作業は、ボルトの確実な締付け作業を行うため、当該工程においてボルト締する際のトルク管理等が必要となり、煩雑な作業となってしまう。
【0007】
また、特許文献2に開示の技術では、抜止部材を加締め固定しているため、加締め金型等を用いた加締め作業が必要となってしまう。しかも、加締め作業においては、加締め量の管理を行う必要があるため、当該作業もまた煩雑となってしまう。
【0008】
そこで、本発明は、シールドケーブルを機器側接続部に機械的に固定し、かつ、そのシールド部を機器側接続部に電気的に接続する作業を、簡易に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、第1の態様は、挿入孔部を有する機器側接続部に接続されるシールドケーブルであって、電線と、前記電線の外周囲を覆うシールド部と、前記電線の端部で前記シールド部の外周を覆うように外嵌めされると共に、前記挿入孔部の内周面に係止固定可能な弾性係止部が形成された筒部材とを備え、前記シールド部が前記弾性係止部の外周を覆うように前記筒部材の先端部で折返されている。
【0010】
第2の態様は、第1の態様に係るシールドケーブルであって、前記筒部材の外周に前記弾性係止部が複数形成されている。
【0011】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係るシールドケーブルであって、前記電線の端部に、前記挿入孔部に圧入可能な防水栓が外嵌めされている。
【0012】
第4の態様は、第1〜第3の態様のいずれか1つの態様に係るシールドケーブルであって、前記シールド部のうち前記筒部材上に折返された部分の端縁部が前記筒部材の外周囲にテープによって巻付け固定されている。
【発明の効果】
【0013】
第1の態様によると、筒部材を挿入孔部に接続すると、弾性係止部と挿入孔部の内周面との間に折返されたシールド部を挟込んだ状態で、弾性係止部が挿入孔部の内周面に係止固定される。これにより、シールドケーブルが機器側接続部に機械的に固定されると共にシールド部が弾性係止部と挿入孔部との間に挟込み固定され、かつ、シールド部が弾性係止部により押された状態で挿入孔部の内周面に接触して当該機器側接続部に電気的に接続される。このため、シールドケーブルを機器側接続部に機械的に固定し、かつ、そのシールド部を機器側接続部に電気的に接続する作業を、簡易に行える。
【0014】
第2の態様によると、複数の弾性係止部それぞれを変形させることによって、挿入作業を容易に行えると共にシールド部のより確実な接触を図ることができる。
【0015】
第3の態様によると、防水栓を挿入孔部に挿入することで、電線がより確実に位置決めされる。
【0016】
第4の態様に係るシールドケーブルによると、シールド部を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係るシールドケーブルが機器側接続部に接続された状態を示す一部断面側面図である。
【図2】同上のシールドケーブルが機器側接続部に接続される前の状態を示す一部断面側面図である。
【図3】筒部材を示す一部断面側面図である。
【図4】シールドケーブルの製造工程を示す説明図である。
【図5】シールドケーブルの製造工程を示す説明図である。
【図6】シールドケーブルの製造工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施形態に係るシールドケーブルについて説明する。図1はシールドケーブル20が機器側接続部12に接続された状態を示す一部断面側面図であり、図2はシールドケーブル20が機器側接続部12に接続される前の状態を示す一部断面側面図であり、図3は筒部材30を示す一部断面側面図である。なお、図2において、シールドケーブル20の上半部では内側部材50及び防水栓54が省略されている。
【0019】
このシールドケーブル20は、例えば、車両における電気部品同士の接続配線、特に、高電圧印加用の配線、より具体的には、車両のモータジェネレータとインバータとを接続する配線に用いられる。このシールドケーブル20は、少なくとも1本の電線22と電線22の外周囲を覆うシールド部24と筒部材30とを備えている。
【0020】
電線22は、線状導体の外周囲を、樹脂の押出被覆等によって形成された被覆部で覆った部材である。ここでは、電線22が3本である例で説明するが、電線22は少なくとも1本含まれていればよい。また、ここでは、電線22が断面円形状である例で説明するが、扁平な形状であってもよい。また、ここでは、電線22の端部に端子23が圧着されており、本端子23がハウジング11内の端子に電気的機械的に接続されるようになっている。もっとも、電線22と機器との電気的機械的な接続構成は、当該構成に限られず、オス端子とメス端子との挿入接続による場合等であってもよい。
【0021】
また、ここでは、電線22の端部に内側部材50が取付けられている(図2の下半部参照)。内側部材50は、樹脂等で形成された部材であり、内部に電線22を挿通可能な挿通孔50hを有する円柱状部材である。電線22の端部が前記挿通孔50h内に挿通されることで、電線22の端部よりも中間よりの位置に本内側部材50が取付固定されている。内側部材50は、その他熱収縮チューブ、光硬化樹脂、熱硬化樹脂等による簡易金型で形成されたものであってもよい。もっとも、この内側部材50は、基本的には省略されてもよい部品である。
【0022】
シールド部24は、柔軟な導電性の管状部材によって形成されている。ここでは、シールド部24は、銅、ステンレス、アルミニウム等で形成された細金属線を、管状に編むことにより形成された部材であり、いわゆる編組と呼ばれる部材である。このシールド部24は、電線22の外周囲を覆っており、筒部材30を介してアース接続されることで、電線22と外部との間を電磁的に遮蔽できるようになっている。なお、電線22の端部では、シールド部24は、内側部材50の外周囲を覆っている。
【0023】
また、電線22の端部において、シールド部24は筒本体部32の外周を覆うように折返されている。これについては後に詳述する。
【0024】
なお、電線22の長手方向中間部において、シールド部24の外周囲には、必要に応じてコルゲートチューブ等の保護部材が被せられる。この保護部材によって、本シールドケーブルの保護、防水等が図られる。
【0025】
ここで、本シールドケーブル20の接続対象機器は、モータジェネレータ等の電気機器であり、その電気機器のハウジング11に、機器側接続部12が設けられている。機器側接続部12は、ハウジング11に一体形成された部分であってもよいし、当該ハウジング11にねじ止等で取付固定された部材であってもよい。本機器側接続部12は、導電性部材で形成されたハウジング11或は別のアース用導電路を介して、車体等にアース接続されている。また、機器側接続部12は、銅、ステンレス、アルミニウム等の導電性部材によって形成されており、挿入孔部13を有している。挿入孔部13は、機器側接続部12の内外を貫通しており、ここでは、外側の大径孔部14と内側の小径孔部16とを有している。大径孔部14は、筒部材30が挿入される部分であり、当該筒部材30の外径に応じた孔形状に形成されている。ここでは、大径孔部14は、円孔状に形成され、その内周面に、その奥側から外側に向けて順次拡径すると共に、その最も径が広がった部分で急激に縮径する係止凹部15が形成されている。係止凹部15のうち急激に縮径する環状周面は、後述する弾性係止部44の係止片44bが引っかかるように係止可能な係止環状面15aとしての役割を有している。小径孔部16は、大径孔部14よりも小径で、かつ、上記電線22(ここでは、その端部に圧着された端子23)を挿通可能な程度の円孔状に形成されている。そして、筒部材30から延出する電線22の端部が、本小径孔部16を通って機器内に導かれ、当該機器内で図示省略の端子等に電気的機械的に接続される。
【0026】
筒部材30は、導電性部材によって形成された筒状部材であり、電線22の端部でシールド部24の外周を覆うように外嵌め可能に構成されると共に、その外周周りに上記挿入孔部13の内周面に係止固定可能な弾性係止部44が形成されている。
【0027】
より具体的には、筒部材30は、筒本体部32と、弾性係止筒部40とを有している。筒本体部32及び弾性係止筒部40は、例えば、銅、ステンレス、アルミニウム等の金属板材をプレス加工等することによって形成された部材である。
【0028】
筒本体部32は、円筒状、より具体的には、電線22にシールド部24を被せた外径よりも大きな内径、ここでは、束ねられた電線22の端部に取付けられた内側部材50にシールド部24を被せた径よりも僅かに大きな内径を有する筒形状に形成されている。ここでは、筒本体部32は、その軸方向における内径が同じである筒形状であるが、必ずしもその必要はない。また、ここでは、筒本体部32は、略円形状であるが、電線22、内側部材50の形状、複数の電線22を束ねる形状等に応じて、楕円筒状、角筒状等であってもよい。この筒本体部32は、電線22及び内側部材50に被せられるだけで十分であり、それらに加締め固定する必要はない。
【0029】
弾性係止筒部40は、筒本体部32に外嵌め固定可能な筒状に形成されている。より具体的には、弾性係止筒部40は、外周筒部42と内周固定部46とを有している。
【0030】
外周筒部42は、筒本体部32の一端部(挿入孔部13に対する接続方向先端部)から筒本体部32の軸方向中間部に至る部分を覆う筒状に形成されている。外周筒部42の一端部(挿入孔部13に対する接続方向先端部)は、筒本体部32の外径と略同じ内径を有し、外周筒部42の他端部(挿入孔部13に対する接続方向後端部)も筒本体部32の外径と略同じ内径を有している。このため、外周筒部42の一端部及び他端部は、筒本体部32に密着状態で外嵌めされるようになっている。また、外周筒部42の軸方向中間部には、その軸方向に沿ったスリット42Sがその外周周りに間隔をあけて複数形成され、各スリット42S間の細帯状片が弾性係止部44に形成されている。弾性係止部44は、上記大径孔部14の内周形状に応じて、外周筒部42の一端部から他端部に向けて順次突出するように延びる傾斜片44aと、その傾斜片44aの最も突出した部分から外周筒部42の外周面側に向けて延びる係止片44bとを有している。なお、外周筒部42の外周面に対する傾斜角度は、傾斜片44aよりも係止片44bの方が大きい。これにより、弾性係止部44が大径孔部14の内周面に形成された係止凹部15内に配設されると共に、当該配設状態で係止片44bが係止環状面15aに対向配置されることにより、挿入孔部13からの筒部材30の抜止めが図られるようになっている。また、係止片44bの先端部は外周筒部42の他端側周縁部に連なっているため、筒本体部32の外周面に対して面接触している。このため、係止片44bの先端部は、筒本体部32の外周面に対して円滑に移動することができる。
【0031】
また、内周固定部46は、外周筒部42の一端部より内側に折返された環状部分に形成され、外周筒部42の一端部の内周面と内周固定部46の外周面との間に、筒本体部32の一端部を挿入可能な環状の隙間が形成されている。そして、筒本体部32の一端部を弾性係止筒部40内にその他端側より挿入し、筒本体部32の一端部を外周筒部42の一端部の内周面と内周固定部46の外周面との間に圧入することで、筒本体部32と弾性係止筒部40とが合体固定されるようになっている。
【0032】
上記シールド部24は、筒本体部32の一端側に延出している。そして、上記シールド部24のうち筒本体部32の一端側に延出している部分が、筒本体部32の一端部で折返され、弾性係止部44の外周を覆っている。シールド部24の延出長は、外周筒部42の軸方向長さよりも長く、弾性係止部44のうち少なくとも係止片44b部分を覆うように折返されていることが好ましい。
【0033】
また、シールド部24のうち筒本体部32上に折返された部分の先端部周りに粘着テープ60が巻回され、これにより、シールド部24の端縁部が筒部材30の外周囲に巻付け固定されている。この状態では、シールド部24の端縁部が粘着テープ60によって隠れて見えなくなる程度に粘着テープ60が巻回されていることが好ましい。巻付け固定に用いるテープは、粘着テープの他、自己融着テープ等であってもよい。
【0034】
また、ここでは、電線22の端部に、防水栓54が外嵌めされている。防水栓54は、ゴム等のエラストマーによって形成された部材であり、内部に電線22を挿入可能な挿入孔54hが形成された柱状部材に形成されている。挿入孔54hは、電線22の外径よりも僅かに小さい。従って、電線22を挿入孔54h内に挿入する際には、挿入孔54hを弾性的に広げつつその挿入作業を行う。これにより、電線22が挿入孔54h内に挿入された状態では、挿入孔54hの内周面が電線22に密着され、電線22が防水栓54に対して位置決め固定されるようになっている。また、防水栓54の外周部には、筒挿入部56とシール部55とを有している。筒挿入部56は、上記筒部材30内にその一端側より挿入可能な円柱状に形成されている。シール部55の外周面には、1つ又は複数の環状突起部55aがその軸方向に沿って複数設けられている。環状突起部55aの外径は、上記挿入孔部13の小径孔部16の内径よりも大きく(僅かに大きく)設定されており、本シール部55を小径孔部16内に圧入すると、各環状突起部55aが小径孔部16の内周面に圧接される。これにより、挿入孔部13に対して本防水栓54が位置決め固定されると共に、防水栓54と小径孔部16との間を通った水の侵入が抑制されるようになっている。
【0035】
このように構成されたシールドケーブルの製造方法について説明する。
【0036】
まず、図4に示すように、電線22の端部に内側部材50を取付けると共に、電線22にシールド部24が被せられたものを準備する。シールド部24は、内側部材50に対してある程度延出している。内側部材50を省略する場合には、電線22にシールド部24を被せるだけでよい。ここでは、電線22の端部に端子23が圧着されているが、端子23は後の工程で圧着されてもよい。
【0037】
そして、電線22の端部を、シールド部24の端部と共に、筒部材30内に挿入する。これにより、図5に示すように、筒部材30の一端部から電線22の端部が延出する共に、シールド部24が筒部材30の一端部から延出した状態とする。そして、筒部材30の一端部から延出するシールド部24の端部を、筒部材30の外周側に折返す。
【0038】
次に、図6に示すように、シールド部24の端縁部と筒部材30の他端部とに粘着テープ60を巻付け、シールド部24の端縁部と筒部材30とを固定する。この後、防水栓54の挿入孔54hに電線22を挿入して、防水栓54を電線22の端部に取付けると、シールドケーブル20が製造される。
【0039】
このシールドケーブル20は、次のようにして機器側接続部12に接続される。すなわち、まず、筒部材30の一端部に延出する電線22の端部を挿入孔部13に挿入する。そして、防水栓54を小径孔部16内に押込むと共に、筒部材30を大径孔部14内に押込む。すると、防水栓54が小径孔部16内に圧入される。これにより、防水栓54と小径孔部16との間が封止され、当該間を通った水の侵入が抑制される。また、防水栓54が挿入孔部13の軸方向に沿って一定位置で固定されると共に、防水栓54に保持されている電線22も挿入孔部13の軸方向に沿って位置決め保持される。
【0040】
また、筒部材30については、まず、筒部材30の外周囲に設けられた複数の弾性係止部44の傾斜片44aがその上に被せられたシールド部24を介して大径孔部14の外周面に接触する。そして、筒部材30を押込むのに伴って、筒部材30の外周囲の複数の弾性係止部44が筒部材30の内側に向けて押込まれる。これにより、傾斜片44aの基端部、傾斜片44aと係止片44bとの境界部分、係止片44bの先端部を主として弾性変形させつつ、弾性係止部44がその突出寸法を小さくするように弾性変形する。さらに、筒部材30を押込み、傾斜片44aの最も突出する部分(傾斜片44aと係止片44bとの境界部分)が、大径孔部14の開口縁部と係止環状面15aとの間の部分を乗越えると、弾性係止部44が原形状に向けて弾性復帰する。これにより、筒部材30の外周面と大径孔部14の内周面との間にシールド部24を介在させた状態で、弾性係止部44が係止凹部15内に配設される。また、係止片44bがシールド部24を介して係止環状面15aに係止する。これにより、筒部材30が機器側接続部12に抜止め状に固定される。また、シールド部24についても、弾性係止部44と大径孔部14との間に挟込み固定される。また、弾性係止部44は一種の板バネの役割を果すため、その弾性力によってシールド部24が大径孔部14の内周面に向けて押付けられる。これにより、シールド部24が機器側接続部12に電気的に接触した状態に維持される。しかも、弾性係止部44は、傾斜片44a側の弾性復元力及び係止片44b側の弾性復元力の双方の力によって原形復帰しようとするため、シールド部24はより大きい力で大径孔部14の内周面に向けて押されている。このため、シールド部24は、より確実に大径孔部14の内周面に向けて押付けられ、両者の電気的接触がより確実に得られる。
【0041】
以上のように構成されたシールドケーブル20によると、筒部材30を挿入孔部13に接続すると、弾性係止部44と挿入孔部13の内周面との間に折返されたシールド部24を挟込んだ状態で、弾性係止部44が挿入孔部13の内周面に係止固定される。これにより、筒部材30が機器側接続部12に機械的に固定されると共にシールド部24が弾性係止部44と挿入孔部13との間に挟込み固定されて、シールドケーブル20が機器側接続部12に固定される。また、また、折返されたシールド部24が弾性係止部44により押されて挿入孔部13の内周面に接触することにより、シールド部24が筒部材30に電気的に接続される。このため、シールドケーブル20を機器側接続部12に機械的に固定し、かつ、そのシールド部24を機器側接続部12に電気的に接続する作業を簡易に行える。
【0042】
また、筒部材30の弾性係止部44を挿入孔部13の内周面に係止させる構成であるため、挿入孔部の両側開口縁部から部品を係止させる構成に比べて、部品点数を少なくすることができる。
【0043】
また、筒部材30を挿入孔部13内に挿入する際には、筒部材30の外周囲に形成された複数の弾性係止部44それぞれの突出寸法を小さくするように弾性変形させることができる。このため、筒部材30の挿入力をなるべく小さくして、その挿入作業を容易に行えるようにすることができる。また、複数の弾性係止部44それぞれがシールド部24を挿入孔部13の内周面に押付けることによって、シールド部24と挿入孔部13の内周面とのより確実な接触を図ることができる。
【0044】
もっとも、弾性係止部44が複数あることは必須ではなく、弾性係止部は1つであってもよい。
【0045】
また、防水栓54を挿入孔部13の小径孔部16に挿入することによって、挿入孔部13を通った水の侵入が抑制されると共に、防水栓54によって電線22がより確実に一定位置に位置決めされる。
【0046】
しかも、防水栓54は、筒部材30内にも嵌め込まれているため、ある程度電線22と筒部材30との位置決め行う役割もある。
【0047】
また、折返されたシールド部24の端縁部が粘着テープ60によって筒部材30に巻付け固定されているため、本筒部材30を挿入孔部13に挿入する前において、シールド部24と筒部材30との仮固定を行える。また、シールド部24の端縁部を外部から覆うことで、シールド部24の端縁部の保護、ばらけ防止、他との直接的な接触抑制等を図ることもできる。
【0048】
{変形例}
なお、上記実施形態では、弾性係止部44の両端部が外周筒部42に連結されているがかならずしもその必要はない。例えば、弾性係止部の先端部(筒部材の挿入方向後端側)が外周筒部から切離された自由端であってもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、弾性係止部44が外周筒部42から部分的に切り起された片であったが必ずしもその必要はない。外周筒部の一部を外周側に突出させた部分を、弾性係止部として用いてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、筒部材30を、筒本体部32と弾性係止筒部40との分割構成としたが必ずしもその必要はない。単一の筒状部材自体を部分的に切り起し或は部分的に突出させて弾性係止部を形成してもよい。
【0051】
また、弾性係止部が複数あることは必須ではなく、1つであってもよい。
【0052】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【0053】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0054】
12 機器側接続部
13 挿入孔部
15 係止凹部
15a 係止環状面
20 シールドケーブル
22 電線
24 シールド部
30 筒部材
32 筒本体部
40 弾性係止筒部
42 外周筒部
44 弾性係止部
44a 傾斜片
44b 係止片
50 内側部材
54 防水栓
60 粘着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入孔部を有する機器側接続部に接続されるシールドケーブルであって、
電線と、
前記電線の外周囲を覆うシールド部と、
前記電線の端部で前記シールド部の外周を覆うように外嵌めされると共に、前記挿入孔部の内周面に係止固定可能な弾性係止部が形成された筒部材と、
を備え、
前記シールド部が前記弾性係止部の外周を覆うように前記筒部材の先端部で折返されている、シールドケーブル。
【請求項2】
請求項1記載のシールドケーブルであって、
前記筒部材の外周に前記弾性係止部が複数形成されている、シールドケーブル。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のシールドケーブルであって、
前記電線の端部に、前記挿入孔部に圧入可能な防水栓が外嵌めされている、シールドケーブル。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のシールドケーブルであって、
前記シールド部のうち前記筒部材上に折返された部分の端縁部が前記筒部材の外周囲にテープによって巻付け固定されている、シールドケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−125009(P2012−125009A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272247(P2010−272247)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】