説明

シールドケーブル

【課題】省スペース配索を可能とし、シールド層と内線とのショートを防止することが可能なシールドケーブルを提供する。
【解決手段】シールドケーブル1は、1本又は複数本の導体10と、導体10上に被覆された硬度10以上90以下の絶縁体20と、絶縁体20の外周にメッキ加工された繊維を編み込んで形成したシールド層30と、を備えている。また、繊維は、抗張力繊維からなり、シールド層30は、編込みの編組密度が85%以上98%以下であり、編組間抵抗が0.096Ω/m以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車等の普及に伴い、室内スペースの確保、及び車両安定性という観点からインターホイールモータ方式の駆動機構が検討されている(例えば特許文献1〜5参照)。また、このインターホイールモータへ電源を供給する高圧電線についても、省スペースに配索されることが要求される。さらに、この高圧電線はモータ等から発生するノイズ対策としてシールド性能が要求される。
【0003】
これに対してシールド層を横巻きにしたり、絶縁体をゴム系にしたりしたシールドケーブルが提案されている。また、導体を抗張力材にしたシールドケーブルについても提案されている(例えば特許文献6〜10参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−961号公報
【特許文献2】特開2010−221902号公報
【特許文献3】特開2009−96429号公報
【特許文献4】特開2008−1241号公報
【特許文献5】特開2007−276738号公報
【特許文献6】特開2010−225571号公報
【特許文献7】特開2007−311106号公報
【特許文献8】特開2007−311043号公報
【特許文献9】特開2007−305479号公報
【特許文献10】特開2007−299558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献6〜10に記載のシールドケーブルは、シールド層が金属素線であり絶縁体が柔らかいゴム材であるため、シールド層の編組により絶縁体が摩耗して編組と絶縁体内の内線とショートしてしまう可能性があった。また、編組の素線が断線してしまった場合にも素線が絶縁体に突き刺さり内線とショートしてしまう可能性があった。加えて内線及びシースの柔軟性に編組が追従せず省スペースの配索が困難となってしまう。
【0006】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、省スペース配索を可能とし、シールド層と内線とのショートを防止することが可能なシールドケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシールドケーブルは、1本又は複数本の導体と、前記導体上に被覆された硬度10以上90以下の絶縁体と、前記絶縁体の外周にメッキ加工された繊維を編み込んで形成したシールド層と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明のシールドケーブルによれば、絶縁体の硬度が10以上であるため、振動摩耗に耐えることができ編組が絶縁体に突き刺さることを防止することができる。また、絶縁体の硬度が90以下であるため、或る程度の柔軟性があり省スペース配索を可能とすることができる。また、シールド層がメッキ加工された繊維であるため、繊維が軽量及び高振動減衰であるという特性から絶縁体の摩耗を防止し、繊維であるためたとえ断線しても絶縁体に突き刺さらない。加えて繊維が変形に富むため省スペース配索を可能とすることができる。以上より、省スペース配索を可能とし、シールド層と内線とのショートを防止することが可能なシールドケーブルを提供することができる。
【0009】
また、本発明のシールドケーブルにおいて、繊維は、抗張力繊維からなることが好ましい。
【0010】
このシールドケーブルによれば、繊維が抗張力繊維であるため、強度が2GPa以上となり、耐切創性及び衝撃貫通性に優れ、飛石等により損傷してしまうことを防止することができる。
【0011】
また、本発明のシールドケーブルにおいて、シールド層は、編込みの編組密度が85%以上98%以下であり、編組間抵抗が0.096Ω/m以下であることが好ましい。
【0012】
このシールドケーブルによれば、シールド層は、編込みの編組密度が85%以上且つ編組間抵抗が0.096Ω/m以下とすることで、一般的に用いられる従来のシールド層よりも吸収クランプ法にて同等以上のシールド効果を確保することができる。さらに、シールド層は、編込みの編組密度が98%以下であるため、耐屈曲性に優れたシールド層を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、省スペース配索を可能とし、シールド層と内線とのショートを防止することが可能なシールドケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るシールドケーブルを示す構成図であって、(a)は断面図であり、(b)は側面図である。
【図2】シールド層の特性を示すグラフである。
【図3】シールド層の耐屈曲性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係るシールドケーブルを示す構成図であって、(a)は断面図であり、(b)は側面図である。同図に示すシールドケーブル1は、1本の導体10と、導体10上に被覆された絶縁体20と、絶縁体20の外周に設けられたシールド層30とを備えている。
【0016】
導体10は、例えば軟銅線、銀メッキ軟銅線、錫メッキ軟銅線、及び錫メッキ銅合金線などが用いられる。なお、本実施形態において導体10は1本であるが、複数本であってもよい。また、導体10は、仕様により径等が適宜設定される。
【0017】
絶縁体20は、導体10上に被覆される部材であって、硬度10以上90以下の素材によって形成されている。ここで、硬度はJISK6253デュロメータタイプA(ショアA)で測定した値である。具体的に絶縁体20は、シリコーンゴム、フッ素樹脂、エチレンプロピレンゴム、及び、クロロプレンゴムなどにより形成されている。
【0018】
シールド層30は、メッキ加工された繊維を編み込んで形成されおり、メッキ加工された繊維を複数本の束にし、この束を編み込むことにより構成されている。
【0019】
ここで、絶縁体20は硬度が10以上であるため、振動摩耗に耐えることができ編組が絶縁体に突き刺さることを防止することとなる。また、絶縁体20は硬度が90以下であるため、或る程度の柔軟性があり省スペース配索を可能とすることができる。
【0020】
また、シールド層30がメッキ加工された繊維であるため、繊維が軽量及び高振動減衰であるという特性から絶縁体20の摩耗を防止することとなる。さらに、シールド層30がメッキ加工された繊維であるため、たとえ断線しても繊維が絶縁体20に突き刺さらない。加えて繊維が変形に富むため省スペース配索を可能とすることができる。
【0021】
さらに、繊維は抗張力繊維からなる。このため、繊維の強度が2GPa以上8GPa以下となり、耐切創性及び衝撃貫通性に優れ、飛石等により損傷してしまうことを防止することとなる。なお、抗張力繊維は、例えばパラ系アラミド繊維、PBO(poly(p-phenylenebenzobisoxazole)繊維、及びポリアリレート繊維が該当する。
【0022】
また、シールド層30は、編込みの編組密度が85%以上98%以下であり、編組間抵抗が0.096Ω/m以下である。ここで、シールド層30は、編込みの編組密度が85%以上且つ編組間抵抗が0.096Ω/m以下であるため、一般的に用いられる従来のシールド層よりも吸収クランプ法にて同等以上のシールド効果を確保することができる。
【0023】
図2は、シールド層30の特性を示すグラフである。なお、図2に示す例において実施例1,2は、錫及び銅を任意厚でメッキ加工したポリアリレート繊維(440dtex)を1束とし、この束を24本用いて編組加工することによりシールド層30を得た。また、実施例1は、編組密度85%であり編組間抵抗を0.096Ω/mとした。また、実施例2は、編組密度97%であり編組間抵抗を0.052Ω/mとした。
【0024】
さらに、比較例は、錫メッキ銅箔ラッピングガラス繊維スリーブであり、編組密度65%であり編組間抵抗を0.130Ω/mとした。
【0025】
図2に示すように、実施例1,2及び比較例の全てが周波数帯9kHz〜1GHzにおいて20dB以上のシールド効果が得られている。しかし、実施例1,2は、比較例よりもシールド効果が高くなっている。このため、編込みの編組密度が85%以上且つ編組間抵抗が0.096Ω/m以下とすることにより、一般的に用いられる従来のシールド層よりも吸収クランプ法にて同等以上のシールド効果を確保することができる。
【0026】
図3は、シールド層30の耐屈曲性を示すグラフである。なお、図3における測定において、シールド層30をR20のガイドに沿わせ400gの荷重を加えて、固定側と移動側との間隔を40mmとし、ストロークを100mmとし、且つ、サイクル速度を100回/分とした場合に、編組間抵抗値が10%上昇するまでの回数をカウントした。
【0027】
この測定において、シールド層30の編組密度を80%とすると屈曲回数は30000回であった。また、シールド層30の編組密度を85%とすると屈曲回数は29000回であり。シールド層30の編組密度を96%とすると屈曲回数は26000回であった。さらに、シールド層30の編組密度を100%とすると屈曲回数は24000回であった。シールド層30の編組密度を118%とすると屈曲回数は20000回であった。
【0028】
ここで、屈曲回数25000回を確保するためには、シールド層30の編組密度を98%以下とする必要があり、編組密度を98%以下とすることにより、耐屈曲性に優れたシールド層を提供することができる。
【0029】
次に、本実施形態に係るシールドケーブル1の製造方法について説明する。まず、導体10上に硬度10以上90以下の絶縁体20を押出被覆する。その後、メッキ加工された繊維を編み込んで形成されたシールド層30を絶縁体20上に被せる。これにより、シールドケーブル1が製造される。なお、製造方法については、製造するシールドケーブル1の仕様により、導体10の数等が変更されることはいうまでもない。
【0030】
このようにして、本実施形態に係るシールドケーブル1によれば、絶縁体20の硬度が10以上であるため、振動摩耗に耐えることができ編組が絶縁体に突き刺さることを防止することができる。また、絶縁体20の硬度が90以下であるため、或る程度の柔軟性があり省スペース配索を可能とすることができる。また、シールド層30がメッキ加工された繊維であるため、繊維が軽量及び高振動減衰であるという特性から絶縁体20の摩耗を防止し、繊維であるため、たとえ断線しても絶縁体20に突き刺さらない。加えて繊維が変形に富むため省スペース配索を可能とすることができる。以上より、省スペース配索を可能とし、シールド層と内線とのショートを防止することが可能なシールドケーブル1を提供することができる。
【0031】
また、繊維が抗張力繊維であるため、強度が2GPa以上となり、耐切創性及び衝撃貫通性に優れ、飛石等により損傷してしまうことを防止することができる。
【0032】
また、シールド層30は、編込みの編組密度が85%以上且つ編組間抵抗が0.096Ω/m以下とすることで、一般的に用いられる従来のシールド層よりも吸収クランプ法にて同等以上のシールド効果を確保することができる。さらに、シールド層は、編込みの編組密度が98%以下であるため、耐屈曲性に優れたシールド層を提供することができる。
【0033】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
【0034】
例えば、本実施形態に係る電線1は高圧電線に限らず微弱な電流を流す電線として用いられてもよい。また、シールド層30内の導体10及び絶縁体20については本数や撚りなど、逐次変更可能である。また、シールド層30の外周に他の部材等を設けてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1…シールドケーブル
10…導体
20…絶縁体
30…シールド層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本又は複数本の導体と、
前記導体上に被覆された硬度10以上90以下の絶縁体と、
前記絶縁体の外周にメッキ加工された繊維を編み込んで形成したシールド層と、
を備えることを特徴とするシールドケーブル。
【請求項2】
前記繊維は、抗張力繊維からなる
ことを特徴とする請求項1に記載のシールドケーブル。
【請求項3】
上記シールド層は、編込みの編組密度が85%以上98%以下であり、編組間抵抗が0.096Ω/m以下である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のシールドケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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