説明

シールド付フレキシブルプリント配線板、その製造方法、および電子機器

【課題】 高いシールド性能を得た上で、インピーダンス整合を行っても信号線の断面積を確保でき、かつ可撓性を備えた、簡単な構造の、シールド付フレキシブルプリント配線板等を提供する。
【解決手段】 カバー絶縁層2に接して位置する補強絶縁層4を備え、シールド層5は補強絶縁層を覆っていて、補強絶縁層4が、(1)形状的にカバー絶縁層よりも小さい領域に位置する、(2)形態的に打ち抜き部分を含んでいる、又は(3)材質的に多孔質であり、当該補強絶縁層では、平面的に見て信号線が位置する領域において、信号線が位置しない他の領域より、平均密度が高いか、または同等であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド付フレキシブルプリント配線板、その製造方法、および電子機器に関し、より具体的には、高いシールド性能を得た上で、インピーダンス整合を行っても信号線の断面積を確保でき、かつ可撓性を有する、シールド付フレキシブルプリント配線板、その製造方法、および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高周波信号、デジタル信号を扱う電子機器におけるノイズ防止やクロストーク防止のために、静電シールド、磁気シールド、電磁シールドなどの対策がとられる。フレキシブルプリント配線板においても、クロストークおよび電磁波雑音放射を共に防止するために、シールド層を構成する金属薄膜と、グランド配線とを導電性ペーストで接続する構造が提案されている(特許文献1)。
また、回路基板の厚みを抑制しながら、高いインピーダンス特性を得るために高周波信号配線と通常信号配線とを同じ高さの配線層に配置して、シールド層を高周波信号配線用と通常信号配線用とで分けて距離を変えた回路基板の提案がなされている(特許文献2)。この構成では、高周波信号配線上のシールド層を、通常信号配線上のシールド層よりも、遠くに位置させる。これによって、ベース基材の厚さを大きく変えることなく高周波信号配線のインピーダンスを高くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−283579号公報
【特許文献2】特開2009−212328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の、シールド付フレキシブルプリント配線板は、アース付き導電層の被覆によって、クロストークを防止することはできる。しかし、特許文献1に示された構成では、信号線と金属薄膜との間隔が小さくインピーダンス整合をとることが難しい。無理にインピーダンス整合をとると信号線を細くしなければならず伝送ロスが増大する。また、特許文献2に示された構造は、高周波信号配線のインピーダンス整合をとることはできるが、構造が複雑になりすぎる。フレキシブルプリント配線板は電気産業とくにIT産業全般の基礎になる重要部品であり、大量に使用される趨勢にあるため、製造においては能率良く製造できるように簡単な構造であることが求められる。また、シールド性能が不十分である。特許文献2に示されたシールド構造では、シールド層に段差がつき、段差の部分では導電層がなくあいているので、外部からのノイズ電波の侵入、および当該配線板の信号から発せられる電波の外部への放射を、十分にシールドすることはできない。
フレキシブルプリント配線板は、しなやかに曲がる可撓性を、基本的に備えなければならない。すなわちフレキシブルプリント配線板にとって、可撓性は不可欠の特性である。上述のように、IT産業で大量に使用される理由の一つはこの高い可撓性にあるといってもよい。このためシールド性能およびインピーダンス特性を満たした上で、高い可撓性を保持することが求められる。
【0005】
本発明は、高いシールド性能を得た上で、インピーダンス整合を行っても信号線の断面積を確保でき、かつ可撓性を備えた、簡単な構造の、シールド付フレキシブルプリント配線板、その製造方法、および電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシールド付フレキシブルプリント配線板は、シールド層を備える。このシールド付フレキシブルプリント配線板は、ベース絶縁層と、ベース絶縁層に接して位置する信号線と、信号線およびベース絶縁層を覆うカバー絶縁層と、カバー絶縁層に接して位置する補強絶縁層とを備える。シールド層は前記補強絶縁層を覆っている。そして、補強絶縁層が、(1)(形状的に)カバー絶縁層よりも小さい領域に位置する、(2)(形態的に)打ち抜き部分を含んでいる、又は(3)(材質的に)多孔質であり、当該補強絶縁層では、平面的に見て信号線が位置する領域において、信号線が位置しない領域(「他の領域」と記す)より、平均密度が高いか、または同等であることを特徴とする。
【0007】
上記の構成によれば、フレキシブルプリント配線板に導電層を配置してシールドをとることでノイズ電波の放射や侵入、およびクロストーク等を確実に防ぐことができる。加えて、補強絶縁層が信号線とシールド層との間に介在するので、信号線とシールド層との間隔を大きくすることができる。このため、信号線の線幅または断面積を小さくすることなく、インピーダンス整合をとることができる。このため、信号の伝送ロスを抑制することができる。また、上記の構造は非常に簡単であり、少ない工程の追加によって製造することができる。
さらに、カバー絶縁層上の全面に中実固体(多孔質ではない)の補強絶縁層を配置しないで、上記の(1)〜(3)のいずれか一つの構成をとることで、補強絶縁層の挿入による可撓性の低下を抑制して所定レベルの可撓性を得ることができる。補強絶縁層において、平面的に見て信号線の領域での、平均密度(面密度)を他の領域より高くするか、少なくとも同等とするのは、信号線とシールドとのインピーダンス整合をとり易くしながら、この目的のために影響が小さい部分では可撓性を劣化させないためである。
上記の(1)面積の減少化、とくに幅の大幅短尺化、(2)打ち抜き領域化、および(3)多孔質化、は、いずれも、補強絶縁層の剛性を低下させて、フレキシブルプリント配線板の可撓性を向上させる上で有効な手段である。
ここで、打ち抜き部分を含む、または打ち抜き領域であるとは、補強絶縁層が平面的にあるパターンで除去されていることをいい、たとえばパッチ状に存在しない又は規則正しく矩形模様等が除去されている状態をいう。この状態において、残っている補強絶縁層はどのような形態でもよく、たとえば櫛状、桟状または格子状などでもよい。
なお、上記のフレキシブルプリント配線板は、ベース絶縁層の片面側にシールド層等が設けられた片面基板であってもよいし、ベース絶縁層の両面側にシールド層等が設けられた両面基板であってもよい。また、カバー絶縁層、補強絶縁層などは、固定のための接着剤を当然、備えているが、煩雑になるので言及を省略した。
【0008】
補強絶縁層が、(a)平面的に見て信号線が位置する領域でのみ存在して他の領域では存在しない、(b1)該他の領域では部分的にしか存在しないもしくは(b2)該他の領域では多孔質層である、又は、(c)当該補強絶縁層が全面にわたって多孔質層である構成をとることができる。
上記(a)はカバー絶縁層より小さく、従って結果的に、上記(1)に同じとなる。(b1)は打ち抜き部分が他の領域上に位置するので、結果的に上記(2)に同じである。また、(b2)および(c)は上記(3)に同じである。
上記の構成により、補強絶縁層による上述の効果を得ながら、可撓性の低下を抑制することができる。
【0009】
上記補強絶縁層が、他の領域で存在しないかもしくは部分的にしか存在しない場合において、その補強絶縁層は、該他の領域が、打ち抜き領域であるか、又はカバー絶縁層とシールド層とが接していてその補強絶縁層のためのスペースがない構成にすることができる。
上記の構成によって、シールド性能およびインピーダンス整合を得ながら、十分高い可撓性を保持することができる。
【0010】
信号線の上面と導電層の下面との間の距離が、信号線の上面とカバー絶縁層の上面との間の距離の1.1倍以上あるようにするのがよい。
ここで、上面は、一つの層を画定する両面において、ベース絶縁層から遠いほうの面をさし、トップ面、外側の面、またはおもて面とも呼ぶ。下面は、逆にベース絶縁層から近いほうの面をさし、底面または裏面とも呼ぶ。ベース絶縁層自体の両面については、信号線が片面側に設けられる場合は、信号線側の面をおもて面と呼び、逆側の面を裏面と呼ぶ。
また、ある一つの層の面を指定するのではなく、ベース絶縁層を基準に、一方の側の積層構造を指定する場合に、おもて面側または裏面側と呼ぶ場合がある。以後の説明では、重複を厭わず繰り返して説明する。
導電層によってシールド特性を確保しながら、信号線とシールド層との間の誘電体占有場所の距離を、信号線とカバー絶縁層の上面との間の距離の1.5倍以上に大きくすることで、信号線の断面積を小さくすることなくインピーダンス整合をとりやすくできる。ベース絶縁層の両面にシールドの導電層を設ける場合は、両面ともに、上記の距離関係を満たすのがよい。信号線とカバー絶縁層の上面との間の距離は、信号線側のおもて面の場合は、信号線トップ面−カバー絶縁層トップ面(ベース絶縁層から遠い面)、の面間距離であり、裏面側の場合は、信号線の底面−カバー絶縁層におけるベース絶縁層から遠い面、の面間距離である。信号線とシールド層を形成する導電層との間の距離は、信号線側のおもて面の場合は、信号線トップ面−導電層の底面(ベース絶縁層に近い側の面)、の面間距離であり、裏面側の場合は、信号線の底面−導電層におけるベース絶縁層に近い面、の面間距離である。
【0011】
上記の補強絶縁層を、カバー絶縁層と同じ材料で形成することができる。
これによって、上記(1)〜(3)(又は(a)〜(c))のいずれかを満たしながら、多くのフレキシブルプリント配線板に多用されているカバー絶縁層の樹脂材料を用いて、信号線−導電層との間の距離を、容易に大きくすることができる。また、(a)〜(c)のいずれかを満たす、カバー絶縁層および補強絶縁層には、高周波信号の洩れ等のロスを減らすために、柔軟な可撓性の点で許容できる範囲で、比誘電率および誘電正接の小さい材料を用いるのがよい。
【0012】
補強絶縁層を、カバー絶縁層よりも硬さが低い材料で形成するのがよい。
この場合、補強絶縁層を、上記(a)〜(c)のいずれかの形態とした上で、その材料に硬さがカバー絶縁層より低い絶縁樹脂を用いることになる。この結果、フレキシブルプリント配線板の全体厚みをある程度厚くしながら、フレキシブルプリント配線板において重要視される、軟らかくしなやかな可撓性を維持することができる。この場合も、カバー絶縁層および補強絶縁層には、比誘電率および誘電正接が小さい樹脂とするのが好ましい。
【0013】
本発明のシールド付フレキシブルプリント配線板の製造方法は、シールド層を備えるフレキシブルプリント配線板を製造する。この製造方法は、ベース絶縁層上に信号線を形成する工程と、信号線およびベース絶縁層を覆うようにカバー絶縁層を積層する工程と、カバー絶縁層上に補強絶縁層パターンを形成する工程と、補強絶縁層パターン上にシールド層を構成する導電層を積層する工程とを備え、補強絶縁層パターンを、平面的に見て少なくとも信号線が位置する領域に重ならない領域では、該補強絶縁層の平均密度が、信号線が位置する領域よりも小さくなるように形成する、又は、カバー絶縁層を覆うように、全面、多孔質層で形成することを特徴とする。
【0014】
上記の方法によって、可撓性を保持しながら、シールド性能に優れ、他の配線とのインピーダンス整合を、容易にとることができるフレキシブルプリント配線板を、簡単な製造工程で製造することができる。すなわち、電磁ノイズやクロストークを確実に防止し、かつ可撓性を保持することができる。カバー絶縁層および/または補強絶縁層は絶縁樹脂フィルムを接着剤で貼ってもよいし、溶媒に溶解させた粘着状の絶縁樹脂を塗布して乾燥させたものであってもよい。
【0015】
本発明の電子機器は、上記のいずれかのシールド付フレキシブルプリント配線板または上記の製造方法で製造されたシールド付フレキシブルプリント配線板を備えることを特徴とする。
上記のいずれかのフレキシブルプリント配線板を用いることで、ノイズ電波の放射や侵入、およびクロストーク等を確実に防ぎ、かつ伝送ロスを防止しながら、電子機器内の各配線回路の間のインピーダンス整合をとることができる。そして、電子機器の組み立ての際、又は製品使用の際、このフレキシブルプリント配線板に備わる十分高い可撓性の利益を受けることができる。電子機器としては、各種の薄型テレビ受像器、携帯端末、PCなどを挙げることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高いシールド性能を得た上で、インピーダンス整合を行っても信号線の断面積を確保でき、かつ可撓性を備えた、簡単な構造の、シールド付フレキシブルプリント配線板等を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1におけるシールド付フレキシブルプリント配線板を示し、(a)は平面図、(b)は(a)におけるIB−IB線に沿う断面図である。
【図2】インピーダンス整合に影響する、信号線トップ面とシールド層下面との距離dを、従来の場合の距離fと比較して示す図である。
【図3】図1のシールド付フレキシブルプリント配線板の製造方法を示し、(a)はベース絶縁層上に信号線を形成した状態、(b)はカバー絶縁層を積層した状態、(c)は補強絶縁層を信号線領域上にのみ積層した状態、(d)はシールド層を形成した状態、を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態2におけるシールド付フレキシブルプリント配線板を示し、(a)は断面図、(b)は信号線領域以外のその他の領域上の補強絶縁膜の部分を示す平面図である。
【図5】本発明の実施の形態3におけるシールド付フレキシブルプリント配線板を示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態4におけるシールド付フレキシブルプリント配線板を示し、(a)は断面図、(b)は信号線領域以外のその他の領域上の補強絶縁膜の部分を示す平面図である。
【図7】本発明の実施の形態5におけるシールド付フレキシブルプリント配線板を示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態6におけるシールド付フレキシブルプリント配線板を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるシールド付フレキシブルプリント配線板10を示し、(a)は平面図、(b)は(a)におけるIB−IB線に沿う断面図である。このシールド付フレキシブルプリント配線板10は、片面にシールド層5が配置された片面シールドタイプである。
図1(b)に示すように、めっき層(図示せず)を含む信号線3がベース絶縁層1上に配置されている。図1(a)の平面図において、幅の端の部分には図示しないグランド線が設けられている。
【0019】
このシールド付フレキシブルプリント配線板10の信号線3の部分では、図1(b)に示すように、ベース絶縁層1と、信号線3と、信号線3およびベース絶縁層1を被覆するカバー絶縁層2が絶縁性の接着剤によって固定されている。カバー絶縁層2の上には補強絶縁層4が絶縁性の接着剤によって積層されている。補強絶縁層4は、導電接着剤層を含む導電性のシールド層5によって覆われている。導電接着剤層は、金属薄膜等のシールド層5と共にシールドを形成する。
【0020】
本実施の形態における特徴は、補強絶縁層4は信号線3が位置する領域(以下、信号線領域Sと記す)にのみ位置し、その他の領域には補強絶縁層は存在しない点にある。その他の領域では、カバー絶縁層2とシールド層5とが接していて、補強絶縁層のスペース(層空間)が消失している。
フレキシブルプリント配線板に導電層を配置してシールドをとることでノイズ電波の放射や侵入、およびクロストーク等を確実に防ぐことができる。加えて、補強絶縁層が信号線とシールド層との間に介在するので、信号線とシールド層との間隔を大きくすることができる。このため、信号線の線幅または断面積を小さくすることなく、インピーダンス整合をとることができる。このため、信号の伝送ロスを抑制することができる。また、上記の構造は非常に簡単であり、少ない工程の追加によって製造することができる。
さらに、本実施の形態のように、信号線領域Sにのみ補強絶縁層4を配置してその他の領域では補強絶縁層を除くことで、補強絶縁層の挿入による可撓性の低下を抑制して所定レベル以上の可撓性を得ることができる。
【0021】
より詳しく説明すると、シールド層5は、図示しないグランド部に導電接続されている。シールド層5とグランド部との導電接続によって、電磁ノイズの放射や侵入を確実に防ぐことができ、また、クロストークの防止にも有効に作用する。
また、シールド層5とカバー絶縁層2との間に、補強絶縁層4を挿入したので、信号線3とシールド層5との間の、誘電体(絶縁体)占有部の距離を大きくすることができる。このため、上述のように、インピーダンスを大きくすることができ、信号線3の断面積を小さくすることなく、他の回路とのインピーダンス整合を容易にとることができる。
図2に示すように、インピーダンスに実質的に影響するのは、信号線3のトップ面と補強絶縁層4のトップ面との間の距離dである。従来は、信号線3のトップ面とカバー絶縁層2のトップ面との間の距離fが、シールド層と信号線3との距離を構成していた。本実施の形態では、(d/f)が、1.1以上となるように、補強絶縁層4、カバー絶縁層2と、これらを接着する図示しない接着剤層の厚みを設定するのがよい。(d/f)を、1.1以上とすることで、信号線3とシールド層5との間の距離を従来よりも確実に大きくして、実用上、上記した作用を得ることができる。すなわちフレキシブルプリント配線板10にシールド層5を設けることで確実なシールド性能を確保しながら、他の回路とインピーダンス整合をとるために信号線3の幅を小さくし、または断面積を縮小する必要がなくなり、信号の伝送ロスを増大させることがない。
【0022】
図3(a)〜(e)により、上記のフレキシブルプリント配線板10の製造方法を説明する。まず、図3(a)に示すように、銅箔を張ったベース絶縁層を基材とする積層板を準備して、銅箔3をエッチングすることで、信号線3を形成する。次いで、図3(b)に示すように、信号線3およびベース絶縁層1を覆うように接着剤によってカバー絶縁層2を接着する。次いで、上述の補強絶縁層4の作用を得た上で可撓性の低下を抑制するため、図3(c)に示すように、信号線領域Sのカバー絶縁層2上にのみ補強絶縁層4を接着する。このあと、図3(d)に示すように、補強絶縁層4およびカバー絶縁層2を覆うようにシールド層5を形成する。シールド層5は、導電接着剤を介在させてシールドフィルムを積層して形成してもよいし、導電接着剤のみを塗布してシールド層としてもよい。
【0023】
次に各部分の材料について説明する。
<カバー絶縁層2>:
カバー絶縁層2には、柔軟な撓りが可能な絶縁樹脂を用いるのがよい。また、接着工程における150℃程度の加熱に対する耐熱性を兼ね備えるのがよい。さらに、高周波信号の洩れを防止するために、比誘電率および誘電正接が小さい樹脂であれば、より好ましい。たとえば、比誘電率(1MHz)5以下、かつ誘電正接(1MHz)0.010以下の樹脂を用いるのがよいが、より好ましくは比誘電率(1MHz)3以下、かつ誘電正接(1MHz)0.005以下の樹脂とする。
たとえばとくにポリイミド系の樹脂を挙げることができる。そのほか、ポリオレフィン系の、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンなどをあげることができる。また、液晶ポリマーを好適に用いることができる。さらにポリエチレンテレフタレート、環状オレフィンポリマー、非極性ポリオレフィン、シクロヘキサンジエン系ポリマーなどがある。各種のポリフェニレンエーテルを用いてもよい。カバー絶縁層2の厚みは、2μm〜100μm程度とするのがよい。また接着剤の厚みは1.5μm〜60μm程度とするのがよい。
カバー絶縁層の接着剤には、比誘電率(1MHz)5以下、かつ誘電正接(1MHz)0.010以下の樹脂を用いるのがよいが、より好ましくは比誘電率(1MHz)3以下、かつ誘電正接(1MHz)0.005以下の樹脂とする。
このような接着剤として、たとえばポリスチレン系、ポリエチレン系などのホットメルト系接着剤を用いるのがよい。これによって、製造能率の向上と、高周波成分の損失抑制とを共に得ることができる。また、ポリエステル系やポリアミド系の、ホットメルト系接着剤、エポキシ樹脂は、比誘電率(1MHz)が比較的大きいものが多いが、その他の多くの利点を有するので、広くは用いてもよい。
<補強絶縁層4>:
補強絶縁層4は、カバー絶縁層2と同様に、ポリイミド系の樹脂、ポリオレフィン系の、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンなどをあげることができる。また、液晶ポリマーを好適に用いることができる。さらにポリエチレンテレフタレート、環状オレフィンポリマー、非極性ポリオレフィン、シクロヘキサンジエン系ポリマーなどがある。各種のポリフェニレンエーテルを用いてもよい。補強絶縁層4の厚みは、2μm〜100μm程度とするのがよい。また接着に用いる接着層の厚みは、1.5μm〜60μm程度とするのがよい。
補強絶縁層の接着剤には、比誘電率(1MHz)5以下、かつ誘電正接(1MHz)0.010以下の樹脂を用いるのがよいが、より好ましくは比誘電率(1MHz)3以下、かつ誘電正接(1MHz)0.005以下の樹脂とする。
このような接着剤として、たとえばポリスチレン系、ポリエチレン系などのホットメルト系接着剤を用いるのがよい。これによって、製造能率の向上と、高周波成分の損失抑制とを共に得ることができる。また、ポリエステル系やポリアミド系の、ホットメルト系接着剤、エポキシ樹脂は、比誘電率(1MHz)が比較的大きいものが多いが、その他の多くの利点を有するので、広くは用いてもよい。
<信号線3>:
信号線3は、市販の銅張積層板の場合は、エッチングされた銅箔である。また、銅、アルミニウム、ニッケル、金、はんだ、またはこれらの合金を用いることができる。これらは金属めっきによって形成する場合が多いが、金属めっきの下地には、銅、銅を主成分とする合金、たとえば銅薄膜、クロム薄膜等を形成するのがよい。銅箔など、下地層およびめっき層を含めて信号線3の厚みは、1μm〜50μmとするのがよい。
<ベース絶縁層1>:
−通常の場合−:高い耐熱性および柔軟性を重視して、ベース絶縁層1には、ポリイミド、ポリアミドイミドなどのポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、を用いる。また、接着剤を用いる場合には、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂等を主成分に含むものを用いることができる。ベース絶縁層1の厚みは、5μm〜200μm程度、またベース接着剤層は、0.5μm〜30μm程度とするのがよい。
−低誘電率重視の場合−:ベース絶縁層1には、カバー絶縁層2の説明で挙げた樹脂を用いるのがよい。接着剤についても、カバー絶縁層2の接着剤に挙げた接着剤を用いるのがよい。
<シールド層5>:
(i)シールドフィルム
蒸着による銀などの金属薄膜を用いるのが好ましいが、銀、銅、アルミニウム、亜鉛めっき軟鉄の箔を用いてもよい。厚みは、厚いほうが好ましいが、小型化、軽量化より、たとえば0.3μm〜20μmとするのがよい。
(ii)導電接着剤
金属粒子等の導電性フィラーをバインダー樹脂中に分散したものを用いるのがよい。金属粒子としては、たとえば銀、白金、金、銅、ニッケル、パラジウム等を用いることができる。とくに銀粉末、銀で被覆した銅粉末は導電性が高いので、好ましい。バインダー樹脂には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等を使用するのがよい。とくに、これらのうち、耐熱性向上のために、熱硬化性樹脂を用いるのが好ましい。エポキシ樹脂を用いる場合には、たとえばビスフェノールA型、F型、S型、AD型、またはビスフェノールA型とビスフェノールF型との共重合型のエポキシ樹脂や、ナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、高分子エポキシ樹脂のフェノキシ樹脂等を用いるのがよい。上記のバインダー樹脂は、スクリーン印刷など行う場合、溶剤に溶解して使用することができる。導電接着剤の厚みは、2μm〜100μm程度とするのがよい。
【0024】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2におけるシールド付フレキシブルプリント配線板を示し、(a)は断面図、(b)は信号線領域以外のその他の領域上の補強絶縁膜の部分を示す平面図である。その他の領域上の補強絶縁膜の部分4tは、打ち抜き部であり、hは打ち抜かれたあとの孔を示す。実施の形態1において、その他の領域上では、補強絶縁膜4の層スペースは無く、シールド層5とカバー絶縁層2とが接していた。
【0025】
信号線3/シールド層5によるインピーダンス整合に大きな影響を及ぼさないその他の領域において、補強絶縁層4を打ち抜き領域にすることで、剛性を小さくすることができる。この結果、フレキシブルプリント配線板10の全体で可撓性を所定レベル以上に保つことができる。打ち抜きは、どのような公知の方法で行ってもよい。たとえばポリイミド層などの補強絶縁膜を一定の抜きパターンを有する打ち抜き金具などを用いて行うことができる。打ち抜かれた領域は自立性が無くなるほど剛性が小さくなるが、非打ち抜き部である信号線領域S上の中実固相の補強絶縁層4の部分と合わせて、全体で、フレキシブルプリント配線板の可撓性を所定レベル以上保つことができる。
【0026】
シールド層5によるノイズ電波の放射や侵入、およびクロストーク等の防止、補強絶縁層が信号線とシールド層との間に介在して間隔をとることによるインピーダンス整合などは、実施の形態1と実質的に同じである。従って、信号線の線幅または断面積を小さくすることなく、インピーダンス整合をとることができ、信号の伝送ロスを抑制することができる。また、上記の構造は非常に簡単であり、少ない工程の追加によって製造することができる。
【0027】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3におけるシールド付フレキシブルプリント配線板を示す断面図である。本実施の形態における補強絶縁層4は、図4(b)に示す打ち抜きパターンが全面に付されている点に特徴がある。すなわち、信号線領域S、またはその他の領域にかかわらず、全面に、打ち抜きパターンが付いた補強絶縁層4(4t)が一様に配置されている。このような補強絶縁層4を用いることで、補強絶縁膜4の剛性を非常に小さくでき、フレキシブルプリント配線板10の可撓性を十分確保することができる。
【0028】
打ち抜きは、上述のように公知の任意の方法で行うのがよいが、たとえば上記打ち抜き金具のほか、所定の打ち抜きパターンを有するロール表面を持ったロール等を用いるのがよい。打ち抜かれた補強絶縁層4では、比誘電率および誘電正接が、中実固相樹脂の値と空気の値との平均値になり、材料的に少し好ましい値からズレるが、大きな影響を及ぼすものではない。信号線の断面積を小さくすることなく、確実にインピーダンス整合をとることができる。
シールド層5によるノイズ電波の放射や侵入、およびクロストーク等の防止などは、実施の形態1、2と同様である。
【0029】
(実施の形態4)
図6は、本発明の実施の形態4におけるシールド付フレキシブルプリント配線板を示し、(a)は断面図、(b)は信号線領域以外のその他の領域上の補強絶縁膜の部分を示す平面図である。本実施の形態は、補強絶縁層に関して実施の形態2の変形例とでもいうべき位置づけである。実施の形態2では、比較的細かい打ち抜き模様が付いたパターンであったが、本実施の形態では、打ち抜き部が大きく、打ち抜き部の打ち抜き単位領域が、信号領域Sの幅とほぼ同等のパターン4tである。このような打ち抜き単位領域が大きい部分4tが、その他の領域上に配置される。信号線領域Sの上は、中実の補強絶縁層4が配置される。このようなパターン化された補強絶縁層パターンを、中実の領域4が信号線領域Sの上になるように位置合わせして、カバー絶縁層2上に貼ることになる。
【0030】
打ち抜き単位領域が大きい部分4tは、剛性が非常に小さくなる。ただしカバー絶縁層2に固着するとき、打ち抜かれた孔h内に接着剤が多く流れ込まないように留意しなければならない。接着剤が固体となって剛性を高めては打ち抜きの意味がなくなるからである。打ち抜きは、既存の方法を含む上述の方法を用いて簡単に行うことができる。
【0031】
(実施の形態5)
図7は、本発明の実施の形態5におけるシールド付フレキシブルプリント配線板を示す断面図である。本実施の形態では、補強絶縁層4が多孔質体4kで構成される点に特徴を有する。すなわち、実施の形態3の図5における補強絶縁層が全面に打ち抜きパターンが付されていたのに対して、本実施の形態では多孔質層4kが、カバー絶縁層2上の全面にわたって配置されている。多孔質についても、孔pの占有割合である気孔率によるが、中実の樹脂層に比べて、剛性が大きく低下することが知られている。気孔率が大きいほうが、当然、剛性は小さくなる。気孔率の大きい多孔質の補強絶縁層4kを用いることで、フレキシブルプリント配線板の可撓性の低下を抑えながら、信号線の線幅または断面積を小さくすることなく、インピーダンス整合をとることができる。このため、信号の伝送ロスを抑制することができる。シールドをとることでノイズ電波の放射や侵入、およびクロストーク等を確実に防ぐことができる点は、実施の形態1等を同じである。
【0032】
(実施の形態6)
図8は、本発明の実施の形態6におけるシールド付フレキシブルプリント配線板10を示す断面図である。本実施の形態では、シールド層5を導電性ペースト5pを用いて形成した点に特徴を有する。導電性ペースト5pは、カバー絶縁層2および補強絶縁層4を被覆している。さらに、導電性ペースト5pは、シールド性能を十分確保するため図示しないグランド部に導電接続される部分も有する。たとえばグランド部が底部において露出する貫通孔(図示せず)を充填してグランド部と導通している。
導電性ペースト5pとしてはどのようなものでもよいが、たとえば銀ペーストは導電性が高いので高いシールド性能を得ることができる。その他、導電性の高いNi、Cu等の金属粒子などを含む導電性ペーストを用いることができる。導電性ペーストは、バインダー樹脂および有機溶媒と、上記の金属粒子とを混練してペースト状になっている。導電性ペースト5pは、スクリーン印刷によって塗布され、乾燥、加熱工程等を経て形成される。
【0033】
導電性の高い粒子を用いることで十分に高いシールド性能を得ることができ、ノイズ電波の放射や侵入、およびクロストーク等を確実に防ぐことができる。また導電性ペースト5pによるシールド層5は、可撓性の低下防止という点でも好ましい。剛性をそれほど増加させないので、可撓性を確保しやすい。さらに、シールド層5を導電性ペースト5pで形成することで、シールド層自体の形成だけでなく、上述のグランド部との導電接続部の形成などにおいても、製造が非常に簡単になる。この結果、製造能率を大きく向上させることができる。
【0034】
上記において、本発明の実施の形態および実施例について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態および実施例は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明により、高いシールド性能を得た上で、インピーダンス整合を行っても信号線の断面積を確保でき、かつ可撓性を備えた、簡単な構造の、シールド付フレキシブルプリント配線板等を得ることができる。上記のインピーダンス整合を行うために、従来、中実の補強絶縁層を全面に配置していた。しかし、可撓性の低下を抑制して所定レベル以上の可撓性を得るために、補強絶縁層の剛性を低下させた上で、実質的に上述のインピーダンス整合に支障をきたさないようにさせた。上記の構造は非常に簡単であり、少ない工程の追加によって製造することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 ベース絶縁層、2 カバー絶縁層、3 信号線、4 補強絶縁層、4k 多孔質層、4t 打ち抜き部、5 シールド層(導電層)、5p 導電性ペーストによるシールド層、10 シールド付フレキシブルプリント配線板、d 信号線のトップ面とシールド層の下面との間の距離、f 信号線トップ面とカバー絶縁層との間の距離、S 信号線領域、h 打ち抜き部の孔、p 多孔質層の孔、
シールド部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド層を備えるシールド付フレキシブルプリント配線板であって、
ベース絶縁層と、
前記ベース絶縁層に接して位置する信号線と、
前記信号線および前記ベース絶縁層を覆うカバー絶縁層と、
前記カバー絶縁層に接して位置する補強絶縁層とを備え、
前記シールド層は前記補強絶縁層を覆っており、
前記補強絶縁層が、(1)前記カバー絶縁層よりも小さい領域に位置する、(2)打ち抜き部分を含んでいる、又は(3)多孔質であり、
当該補強絶縁層では、平面的に見て前記信号線が位置する領域において、信号線が位置しない領域より、平均密度が高いか、または同等であることを特徴とする、シールド付フレキシブルプリント配線板。
【請求項2】
前記補強絶縁層が、(a)平面的に見て前記信号線が位置する領域でのみ存在して他の領域では存在しない、(b1)該他の領域では部分的にしか存在しないもしくは(b2)該他の領域では多孔質層である、又は、(c)当該補強絶縁層が全面にわたって多孔質層である、ことを特徴とする、請求項1に記載のシールド付フレキシブルプリント配線板。
【請求項3】
前記補強絶縁層が、前記他の領域で存在しないかもしくは部分的にしか存在しない場合において、前記補強絶縁層は、該他の領域が、打ち抜き領域であるか、又は前記カバー絶縁層とシールド層とが接していてその補強絶縁層のためのスペースがないことを特徴とする、請求項2に記載のシールド付フレキシブルプリント配線板。
【請求項4】
前記信号線の上面と前記導電層の下面との間の距離が、前記信号線の上面と前記カバー絶縁層の上面との間の距離の1.1倍以上あることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシールド付フレキシブルプリント配線板。
【請求項5】
前記補強絶縁層が、前記カバー絶縁層と同じ材料で形成されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシールド付フレキシブルプリント配線板。
【請求項6】
前記補強絶縁層が、前記カバー絶縁層よりも硬さが低い材料で形成されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシールド付フレキシブルプリント配線板。
【請求項7】
シールド層を備えるシールド付フレキシブルプリント配線板の製造方法であって、
ベース絶縁層上に信号線を形成する工程と、
前記信号線および前記ベース絶縁層を覆うようにカバー絶縁層を積層する工程と、
前記カバー絶縁層上に補強絶縁層パターンを形成する工程と、
前記補強絶縁層パターン上に前記シールド層を構成する導電層を積層する工程とを備え、
前記補強絶縁層パターンを、平面的に見て少なくとも前記信号線が位置する領域に重ならない領域では、該補強絶縁層の平均密度が、前記信号線が位置する領域よりも小さくなるように形成する、又は、前記カバー絶縁層を覆うように、全面、多孔質層で形成することを特徴とする、シールド付フレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のシールド付フレキシブルプリント配線板または請求項7に記載の製造方法で製造されたシールド付フレキシブルプリント配線板を備えることを特徴とする、電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−21069(P2013−21069A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152009(P2011−152009)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(500400216)住友電工プリントサーキット株式会社 (197)
【Fターム(参考)】