説明

シールド掘削機

【課題】トンネル前端部のひび割れを防止することができ、且つ、スライドしたスプレッダの当接面を元の位置に戻す手間がかからないシールド掘削機を提供することを目的とする。
【解決手段】スキンプレート2と、スキンプレート2の前面に設けられたカッターヘッドと、スキンプレート2に取り付けられ、既に覆工されたトンネルの前端面9aから反力を取ってスキンプレート2を前方に押圧して推進させるシールドジャッキ5と、を備えるシールド掘削機において、シールドジャッキ5のジャッキシュー8の先端には、トンネル前端面9aに当接させるスプレッダ10が設けられ、スプレッダ10には、トンネル前端面9aに当接する当接面12aをトンネル軸方向に直交する方向にスライドさせるスライド機構20と、当接面12aがトンネル前端面9aから離された際に当接面12aを初期位置に戻す自動位置復元機構30と、が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドジャッキによって推進するシールド掘削機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スキンプレートの前方(切羽側方向)にカッターヘッドが備えられた構成からなるシールド掘削機は、スキンプレートに取り付けられたシールドジャッキによって推進力を得て掘進する。具体的には、シールド掘削機のテール内壁面に沿って環状に組み立てられたセグメントの前端面に、シールドジャッキのジャッキシューの先端を当接させ、このセグメントの前端面で推進反力を取って推進させる。従来、ジャッキシューの先端にはスプレッダが装備されており、ジャッキ軸芯とセグメント軸芯とのズレを調整し、セグメントに偏心力が加わり難いようになっている。
【0003】
近年、上記したジャッキシュー先端に装備させるスプレッダとして、セグメントに当接させる当接面がトンネル径方向にスライド自在になっているスプレッダが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−68349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来のシールド掘削機では、ジャッキシューを最大ストロークまで伸張させると、ジャッキシューの自重によってジャッキシューが垂れ下がり、シールドジャッキの軸芯とセグメントの軸芯(厚み中心)とがずれる場合がある。また、シールド掘削機の掘進方向を正規の路線に合わせるために変化させるような運転をする場合に、シールドジャッキの軸芯とセグメントの軸芯とが徐々にずれてくる場合がある。このように、シールドジャッキの軸芯とセグメントの軸芯とがずれた状態で、シールドジャッキからセグメントの前端面に大きな押圧力(高い推力)が加えられると、シールドジャッキからの偏心荷重(トンネル軸と直交方向の荷重)によってセグメントにひび割れ(クラック)が発生する場合がある。
【0005】
また、上記した近年提案されているスプレッダでは、シールドジャッキとセグメントとの偏心によってセグメントに加わる偏心荷重を緩和、抑制してセグメントのひび割れを防止することができるが、ジャッキシューを伸張させる度に、トンネル径方向にスライドした当接面を手作業で正規の元の位置に戻さなければならず、非常に手間がかかるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、シールドジャッキの軸芯と既に覆工されたトンネルの中心位置(例えばセグメントの軸芯)とが偏心した際のトンネル前端部のひび割れを防止することができ、且つ、スライドしたスプレッダの当接面を元の位置に戻す手間がかからないシールド掘削機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、スキンプレートと、該スキンプレートの前面に設けられたカッターヘッドと、前記スキンプレートに取り付けられ、既に覆工されたトンネルの前端面から反力を取って前記スキンプレートを前方に押圧して推進させるシールドジャッキと、を備えるシールド掘削機において、前記シールドジャッキのジャッキシューの先端には、前記トンネル前端面に当接させるスプレッダが設けられ、該スプレッダには、前記トンネル前端面に当接する当接面をトンネル軸方向に直交する方向にスライドさせるスライド機構と、前記当接面が前記トンネル前端面から離された際に該当接面を初期位置に戻す自動位置復元機構と、が備えられていることを特徴としている。
【0008】
このような特徴により、シールドジャッキの軸芯が既に覆工されたトンネルの厚さ中心からずれた状態でシールドジャッキからトンネルの前端面に押圧力が加えられても、スプレッダの当接面がトンネル軸方向の直交方向にスライドし、トンネル前端部に加わる偏心荷重が低減或いは抑制される。また、当接面がトンネル前端面から離されると、自動位置復元機構によって当接面が初期位置に自動的に戻される。
【0009】
また、本発明は、前記スライド機構が、前記当接面をトンネル軸方向に直交する全方向にスライドさせる機構であることが好ましい。
【0010】
例えば、上記した近年提案されているスプレッダでは、当接面がトンネル径方向に沿った方向にのみスライド可能な構成となっているため、例えば、シールドジャッキの軸芯とセグメントの軸芯(既に覆工されたトンネルの厚さ中心)とがトンネル周方向にずれが生じた場合、シールドジャッキからの偏心荷重によってセグメントにひび割れが発生する場合がある。これに対し、トンネル軸方向に直交する全方向にスライドするスライド機構が備えられた本発明によれば、シールドジャッキの軸芯と既に覆工されたトンネルの厚さ中心とがトンネル径方向以外にずれた場合にも、既に覆工されたトンネル前端部に加わる偏心荷重を低減或いは抑制することができる。
【0011】
また、本発明は、前記スライド機構は、前記ジャッキシューの先端に固定された基部と、該基部にスライド自在に支持されて前記トンネル前端面に当接するスライド当接部と、が備えられた構成からなり、前記自動位置復元機構は、前記スライド当接部が前記トンネル前端面から離された際に当該スライド当接部を初期位置に戻すように付勢する付勢部材が備えられた構成からなる構成とすることができる。
【0012】
これにより、トンネル前端面に当接するスプレッダの当接面をトンネル軸方向に直交する方向にスライドさせることができるとともに、その当接面がトンネル前端面から離された際に当該当接面を初期位置に戻すことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るシールド掘削機によれば、シールドジャッキの軸芯と既に覆工されたトンネルの中心位置とが偏心している場合であっても、スプレッダの当接面がスライドすることでトンネル前端部に加わる偏心荷重が低減或いは抑制され、トンネル前端部のひび割れを防止することができる。また、当接面がトンネル前端面から離されると、自動位置復元機構によって当接面が初期位置に自動的に戻されるため、スライドした当接面を元の位置に戻す手間がかからない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係るシールド掘削機の第1、第2の実施の形態について、図面に基いて説明する。
【0015】
[第1の実施の形態]
まず、本発明に係るシールド掘削機の第1の実施の形態について説明する。
【0016】
図1は第1の実施の形態におけるシールド掘削機1の概略構成を示した掘削方向断面の断面図である。なお、本発明では、トンネル掘進方向で切羽側(図1における左側)を前方とし、その切羽側の反対側を後方とする。
図1に示すように、シールド掘削機1は、筒状のスキンプレート2と、スキンプレート2内部に設けられた隔壁3と、スキンプレート2の前面に設けられたカッターヘッド4と、スキンプレート2に取り付けられたシールドジャッキ5とが備えられた構成からなる。
【0017】
スキンプレート2は、カッターヘッド4近傍の掘削面を支持するためのシールド部材であり、掘削坑の断面形状に合わせた断面形状をなす鋼板等からなる筒材である。
隔壁3は、切羽の水や泥土がシールド掘削機1の内側に流入しないように切羽側と機内側とを隔離するための遮蔽体であり、スキンプレート2の断面を覆うように形成されている。この隔壁3の前方側は、スキンプレート2と隔壁3とで囲まれたチャンバ6となっている。
【0018】
カッターヘッド4は、隔壁3の前方側に設けられて切羽の地盤を掘削する掘削装置であって、その前面に複数の掘削ビット4a…が付設され、その後方に設けられた駆動機構7によって回転駆動して切羽の地盤を掘削する回転式の掘削装置である。
【0019】
シールドジャッキ5は、スキンプレート2を前方に推進させるための油圧ジャッキ等からなる部材であり、軸方向に往復動するジャッキシュー8が備えられている。このシールドジャッキ5は、往復動するジャッキシュー8の先端を後方側に向けた状態でスキンプレート2の内周面に取り付けられている。このシールドジャッキ5によれば、ジャッキシュー8を伸張させて既に覆工されたセグメント9の前端面9a(トンネルの前端面)から反力を取ってスキンプレート2を前方に推進させることができる。ジャッキシュー8の先端には、セグメント9の前端面9aに当接させるスプレッダ10が設けられており、このスプレッダ10を介してセグメント9の前端面9aに当接させる。
【0020】
図2はスプレッダ10を切羽側からみた立面図であり、図3は図2に示すA−A間の断面図であってスプレッダ10をトンネル周方向に切断した横断面図であり、図4は図2に示すB−B間の断面図であってスプレッダ10をトンネル径方向に切断した縦断面図である。
図2、図3、図4に示すように、スプレッダ10には、セグメント9の前端面9aに当接する当接面12aをトンネル径方向(図2における上下方向)にスライドさせる径方向スライド機構20(スライド機構)と、当接面12aがセグメント9の前端面9aから離された際に当該当接面12aを初期位置(正規位置)に戻す自動位置復元機構30とが備えられている。
【0021】
具体的には、径方向スライド機構20は、ジャッキシュー8の先端に固定された基板11(基部)と、基板11にトンネル径方向にスライド自在に支持されてセグメント9の前端面9aに当接するスライド当接板12(スライド当接部)と、が備えられた構成からなる。
【0022】
基板11は、ジャッキシュー8に対して略垂直に設けられており、少なくとも後方側の面(対向面11a)がトンネル軸方向に直交する面となっている。この基板11には、トンネル径方向に延在する開口11bが形成されている。具体的には、ジャッキシュー8を挟んで両側(トンネル周方向における両側)に矩形の開口11b,11bがそれぞれ形成されている。これらの開口11b,11bは、後述するスライド当接板12に突設されたブラケット部18,18が挿通される開口であり、開口11b,11bのトンネル径方向の寸法Lは、スライド当接板12が基板11に対してトンネル径方向に相対移動するときに、ブラケット部18,18の外周側(図2における下側)及び内周側(図2における上側)への移動を許容するだけの寸法となっている。
【0023】
スライド当接板12は、基板11の後方に配置されており、少なくとも後方側の面(当接面12a)と前方側の面(対向面12b)とがトンネル軸方向に直交する面となっている。このスライド当接板12と基板11とは、互いの対向面11a,12b同士を対向させて対向配置されており、それらの間には例えば銅系合金(黄銅、青銅合金等)からなるスライドブッシュ14(滑り材)が介在されている。このスライドブッシュ14は、スライド当接板12の対向面12bに接合固定されているとともに、基板11の対向面11aに対して滑動自在に重ね合わせられている。また、スライド当接板12の当接面12aには、硬質ウレタンなどからなる緩衝層12cが形成されている。
【0024】
スライド当接板12の対向面12bの両側部(トンネル周方向における両側部)には、トンネル径方向に延在するガイド15,15が設けられている。これらのガイド15,15は、基板11の側端部にそれぞれ掛合されるように断面L形状に形成されており、基板11を両側から挟み込み基板11をトンネル径方向にスライド自在に挟持するような構成となっている。
【0025】
基板11の前方側の面11cには、開口11bを挟んで内外周側にそれぞれ配設された一対のブラケット部16,19が突設されている。これらのブラケット部16,19は、前方側に向けて突出されており、これら一対のブラケット部16,19間には、トンネル径方向に延在するロッド状の軸材17が架設されている。上記した一対のブラケット部16,19は、ジャッキシュー8を挟んで両側にそれぞれ設けられており、前記軸材17,17はジャッキシュー8を挟んで平行に配設されている。
【0026】
また、スライド当接板12の対向面12bのうち、基板11の各開口11b,11bに対向する位置には、前方側に突出するブラケット部18,18がそれぞれ突設されている。これらのブラケット部18,18は、基板11の開口11b,11bから基板11の前方側にそれぞれ突出されている。基板11の前方側に突出したブラケット部18の先端部には、トンネル径方向に延在する貫通孔18aが形成されており、この貫通孔18aには、上記した軸材17が往復動自在に挿通されている。
【0027】
一方、自動位置復元機構30は、スライド当接板12がセグメント9の前端面9aから離された際にスライド当接板12を初期位置に戻すように付勢するコイル13(付勢部材)からなる。このコイル13には、位置調整用コイル22と微調整用コイル21とがある。位置調整用コイル22は、スライドしたスライド当接板12を元の位置まで移動させるためのコイルであり、微調整用コイル21は、位置調整用コイル22により戻されたスライド当接板12の位置を微調整するためのコイルである。これら位置調整用コイル22,22及び微調整用コイル21,21は、各軸材17,17にそれぞれ外装されてトンネル径方向に延在して配置されており、位置調整用コイル22と微調整用コイル21とは同軸線上に配設されている。
【0028】
具体的には、位置調整用コイル22は、基板11に突設された外周側のブラケット部19とスライド当接板12に突設されて基板11の前方側に突出したブラケット部18との間に介装されている。位置調整用コイル22の外周側の端部は、上記した外周側のブラケット部19の内周側の面に係止されており、位置調整用コイル22の内周側の端部は、上記した真中のブラケット部18の外周側の端面に係止されている。
【0029】
また、微調整用コイル21は、スライド当接板12に突設されて基板11の前方側に突出したブラケット部18と軸材17に挿装されてブラケット部18よりも内周側の位置に配設された微調整フランジ23との間に介装されている。この微調整フランジ23には、軸材17が往復動自在に挿通される貫通孔23aが形成されており、微調整フランジ23は、軸材17に対して軸方向に移動自在になっている。微調整用コイル21の外周側の端部は、上記ブラケット部18の内周側の端面に係止されており、微調整用コイル21の内周側の端部は、上記微調整フランジ23の外周側の面に係止されている。この微調整フランジ23の内周側には、軸材17に螺合されたナット24が配設されており、このナット24を回転させて軸材17の軸方向に移動させることによって微調整フランジ23の位置が調整され、結果として、元に戻されたスライド当接板12の位置が微調整される。
【0030】
なお、図1に示すように、上記した構成からなるシールド掘削機1には、上記したスキンプレート2、隔壁3、カッターヘッド4及びシールドジャッキ5の他に、カッターヘッド3で掘削されたチャンバ6内の泥土を後方に搬送する図示せぬ土砂搬送装置等が備えられており、また、その他の装置や機器が備えられていてもよい。
【0031】
次に、上記した構成からなるシールド掘削機1を用いたトンネル構築方法について説明する。
上記した構成からなるシールド掘削機1を用いたトンネル構築方法は、一般的なシールド工法と同様であり、まず、図1に示すように、シールド掘削機1の前面に設けられたカッターヘッド4を駆動機構7によって回転させて切羽を掘削するとともに、チャンバ6内の泥土を図示せぬ土砂搬送装置でシールド掘削機1の後方に搬送する。また、カッターヘッド4による掘削に合わせて、シールドジャッキ5のジャッキシュー8を伸張させ、スプレッダ10を介してセグメント9の前端面9aから推進反力を取ってスキンプレート2を前方に推進させる。そして、セグメントピースの幅寸法(トンネル軸方向寸法)分だけ推進したところで、シールドジャッキ5のジャッキシュー8を縮めてスプレッダ10をセグメント9の前端面9aから離間させ、既設のセグメント9の前端に新たにセグメントピースを接合させてセグメント9を組み立てる。その後、シールドジャッキ5のジャッキシュー8を伸張させてスプレッダ10を新たに組み立てられたセグメント9の前端面9aに当接させ、再びカッターヘッド4で切羽の掘削を行う。以上の工程を繰り返し行うことで、トンネルを構築する。
【0032】
図5はシールドジャッキ5の軸芯O1がセグメント9の軸芯O2(厚さ中心)の延長線上にあるときのスプレッダ10を表す断面図であり、図6はシールドジャッキ5の軸芯O1がセグメント9の軸芯O2よりも外周側に偏心したときのスプレッダ10を表す断面図であり、図7はシールドジャッキ5の軸芯O1がセグメント9の軸芯O2よりも内周側に偏心したときのスプレッダ10を表す断面図である。
【0033】
図5、図6、図7に示すように、上記した構成からなる第1の実施の形態におけるシールド掘削機1によれば、シールドジャッキ5の軸芯O1がセグメント9の軸芯O2からずれた状態でシールドジャッキ5からセグメント9の前端面9aに押圧力が加えられても、スプレッダ10の当接面12aがトンネル径方向にスライドし、セグメント9前端部に加わる偏心荷重が低減或いは抑制される。
【0034】
具体的には、図5に示すように、シールドジャッキ5の軸芯O1とセグメント9の軸芯O2とが一致している状態では、スライド当接板12(当接面12a)はトンネル径方向にスライドせず、正規の位置でシールドジャッキ5からセグメント9の前端面9aに押圧力が加えられる。このとき、シールドジャッキ5の軸芯O1とセグメント9の軸芯O2とが一致しているため、セグメント9の前端面9aには、トンネル軸方向の方向に力が作用し、トンネル軸方向に直交する方向の分力は生じない。
【0035】
一方、図6に示すように、シールドジャッキ5からセグメント9の前端面9aに押圧力が加えられるときに、何らかの理由でシールドジャッキ5の軸芯O1がセグメント9の軸芯O2よりも外周側に偏心した場合、スライド当接板12(当接面12a)は基板11に対して内周側に相対移動する。これにより、セグメント9の前端部にトンネル径方向の分力が加わることが緩和或いは抑制される。
【0036】
また、図7に示すように、シールドジャッキ5からセグメント9の前端面9aに押圧力が加えられるときに、何らかの理由でシールドジャッキ5の軸芯O1がセグメント9の軸芯O2よりも内周側に偏心した場合、スライド当接板12(当接面12a)は基板11に対して外周側に相対移動する。これにより、セグメント9の前端部にトンネル径方向の分力が加わることが緩和或いは抑制される。
【0037】
このように、シールドジャッキ5の軸芯O1とセグメント9の軸芯O2とがトンネル径方向に偏心している場合であっても、スプレッダ10の当接面12aがスライドし、セグメント9前端部に加わる偏心荷重が低減或いは抑制されるため、セグメント9前端部のひび割れを防止することができる。
【0038】
また、上記した構成からなるシールド掘削機1によれば、スプレッダ10の当接面12aがセグメント9の前端面9aから離されると、自動位置復元機構30によって当接面12aが初期位置に自動的に戻される。
【0039】
詳しく説明すると、図6に示すように、スライド当接板12(当接面12a)が基板11に対して内周側に相対移動した場合、位置調整用コイル22が伸びた状態となるとともに、微調整用コイル21が縮んだ状態となる。このように伸びた状態の位置調整用コイル22には元に戻ろうとする圧縮力F1が生じ、また、縮んだ状態の微調整用コイル21には引張力F2が生じる。このため、シールドジャッキ5を縮めてスライド当接板12がセグメント9の前端面9aから離されると、位置調整用コイル22の圧縮力F1及び微調整用コイル21の引張力F2により、両コイル21,22の間にあるブラケット部18が外周側に向けて付勢され、スライド当接板12が元の位置に戻される。
【0040】
また、図7に示すように、スライド当接板12(当接面12a)が基板11に対して外周側に相対移動した場合、位置調整用コイル22が縮んだ状態となるとともに、微調整用コイル21が伸びた状態となる。このように縮んだ状態の位置調整用コイル22には元に戻ろうとする引張力F3が生じ、また、伸びた状態の微調整用コイル21には圧縮力F4が生じる。このため、シールドジャッキ5を縮めてスライド当接板12がセグメント9の前端面9aから離されると、位置調整用コイル22の引張力F3及び微調整用コイル21の圧縮力F4により、両コイル21,22の間にあるブラケット部18が内周側に向けて付勢され、スライド当接板12が元の位置に戻される。
【0041】
このように、スプレッダ10の当接面12aがセグメント9の前端面9aから離されると、自動位置復元機構30によって当接面12aが図5に示すような初期位置に自動的に戻されるため、スライドしたスライド当接板12(当接面12a)を元の位置に戻す手間がかからない。
【0042】
[第2の実施の形態]
次に、本発明に係るシールド掘削機の第2の実施の形態について説明する。なお、この第2の実施の形態におけるシールド掘削機1は、ジャッキシュー8の先端に設けられたスプレッダ100以外は上述した第1の実施の形態と同様の構成であるため、スプレッダ100についてのみ説明し、それ以外の構成については説明を省略する。
【0043】
図8はスプレッダ100を切羽側からみた立面図であり、図9はスプレッダ100を内周側(図8における上側)からみた平面図であり、図10は図8に示すC−C間の断面図であってスプレッダ100をトンネル周方向に切断した横断面図であり、図11は図8に示すD−D間の断面図であってスプレッダ100をトンネル径方向に切断した縦断面図である。
図8、図9、図10、図11に示すように、スプレッダ100には、セグメント9の前端面9aに当接する当接面112aをトンネル軸方向に直交する全方向にスライドさせる全方向スライド機構120(スライド機構)と、当接面112aがセグメント9の前端面9aから離された際に当該当接面112aを初期位置(正規位置)に戻す自動位置復元機構130とが備えられている。
【0044】
具体的には、全方向スライド機構120は、ジャッキシュー8の先端に固定された基板111(基部)と、基板111にトンネル軸方向に直交する全方向にスライド自在に支持されてセグメント9の前端面9aに当接するスライド当接板112(スライド当接部)と、が備えられた構成からなる。
【0045】
基板111は、ジャッキシュー8に対して略垂直に設けられており、少なくとも後方側の面(対向面111a)がトンネル軸方向に直交する面となっている。この基板111には、ジャッキシュー8を挟んで両側の位置に矩形の開口111bがそれぞれ形成されている。これらの開口111b,111bは、後述するスライド当接板112に突設されたブラケット部118,118が挿通される開口である。この開口111b,111bのトンネル径方向の寸法L1は、スライド当接板112が基板111に対してトンネル径方向に相対移動するときに、ブラケット部118,118の外周側(図8における下側)及び内周側(図8における上側)への移動を許容するだけの寸法となっている。また、開口111b,111bのトンネル周方向の寸法L2は、スライド当接板112が基板111に対してトンネル周方向に相対移動するときに、ブラケット部118,118のトンネル周方向における両側への移動を許容するだけの寸法となっている。
【0046】
スライド当接板112は、上述した第1の実施の形態におけるスライド当接板12と同様の構成からなるため、その説明は省略する。なお、符号112aは当接面を示しており、符号112bは対向面を示しており、符号112cは緩衝層を示しており、さらに、符号114はスライドブッシュを示している。
【0047】
基板111の前方側には、トンネル周方向に延在する2本の棒状の周方向架材125,125とトンネル径方向に延在する2本の棒状の径方向架材126,126とを矩形枠状に組んだ構成からなる枠材117が配置されている。周方向架材125は、枠材117の四隅にそれぞれ設けられたフランジ119,119間にトンネル周方向に架設されており、2本の周方向架材125,125は、ジャッキシュー8を挟んで平行に配置されている。この周方向架材125は、両端が太く中央が細い棒状の形状のものであり、その両端部125a,125aがその中央部125bよりも大径になっている。また、径方向架材126は、枠材117の四隅にそれぞれ設けられたフランジ119,119間にトンネル径方向に架設されており、2本の径方向架材126,126は、ジャッキシュー8を挟んで平行に配置されている。
【0048】
基板111の前方側の面111cのうちジャッキシュー8よりも内周側(図8における上方側)及び外周側(図8における下方側)の位置には、トンネル周方向に延在する筒状の固定ブラケット116…がそれぞれ間隔をあけて2個づつ配設されている。この固定ブラケット116は、基板111の前方側の面111cにビス等で固定されている。また、この固定ブラケット116には、上記した周方向架材125の端部125aが往復動自在に挿通されており、これにより、基板111の前方側の面111cに枠材117がトンネル周方向にスライド自在に取り付けられた状態となっている。つまり、基板111に対する枠材117のトンネル径方向への相対移動は固定ブラケット116…により規制されており、基板111と枠材117とはトンネル径方向には一体的に動くが、基板111に対する枠材117のトンネル周方向への相対移動は許容されており、基板111と枠材117とはトンネル周方向に別々に動く。
【0049】
また、スライド当接板112の対向面112bのうち、基板111の各開口111b,111bに対向する位置には、前方側に突出するブラケット部118,118がそれぞれ突設されている。これらのブラケット部118,118は、基板111の開口111b,111bから基板111の前方側にそれぞれ突出されている。基板111の前方側に突出したブラケット部118の先端部には、トンネル径方向に延在する貫通孔118aが形成されており、この貫通孔118aには、上記した枠材117の径方向架材126が往復動自在に挿通されている。
【0050】
一方、自動位置復元機構130には、スライド当接板112がセグメント9の前端面9aから離された際にスライド当接板112を初期位置に戻すように付勢するコイル113(付勢部材)からなる。このコイル113には、径方向位置調整用コイル122と周方向位置調整用コイル127と微調整用コイル121とがある。径方向位置調整用コイル122は、トンネル径方向にスライドしたスライド当接板112をトンネル径方向に付勢して元の位置まで移動させるためのコイルであり、周方向位置調整用コイル127は、トンネル周方向にスライドしたスライド当接板112をトンネル周方向に付勢して元の位置まで移動させるためのコイルであり、微調整用コイル121は、径方向位置調整用コイル122及び周方向位置調整用コイル127により戻されたスライド当接板112の位置を微調整するためのコイルである。
【0051】
径方向位置調整用コイル122,122及び微調整用コイル121,121は、枠材117の2本の径方向架材126,126にそれぞれ外装されてトンネル径方向に延在して配置されており、径方向位置調整用コイル122と微調整用コイル121とは同軸線上に配設されている。一方、周方向位置調整用コイル127,127は、枠材117の2本の周方向架材125,125の中央部125b,中央部125bにそれぞれ外装されてトンネル周方向に延在して配置されている。
【0052】
具体的には、径方向位置調整用コイル122は、枠材117の外周側の隅部に設けられたフランジ119とスライド当接板112に突設されて基板111の前方側に突出したブラケット部118との間に介装されている。径方向位置調整用コイル122の外周側の端部は、上記フランジ119の内周側の面に係止されており、径方向位置調整用コイル122の内周側の端部は、上記ブラケット部118の外周側の端面に係止されている。
【0053】
図12はシールドジャッキ5が正規の位置にあるときのスプレッダ100を表す断面図である。
図8、図9、図12に示すように、周方向位置調整用コイル127は、固定ブラケット116,116間に配置され、周方向架材125の中央部125bにそれぞれ外装された2枚のフランジ128,128間に介装されている。このフランジ128は、図12に示すように、周方向架材125の中央部125bに通された環状の部材であり、このフランジ128には、周方向架材125の中央部125bが往復動自在に挿通される貫通孔128aが形成されており、フランジ128は、周方向架材125の中央部125bに対して軸方向に移動自在となっている。フランジ128の貫通孔128aの径は、周方向架材125の両端部125aの外径よりも小さくなっており、周方向架材125(枠材117)がトンネル周方向に移動すると、周方向架材125の端部125aの中央側端面125cに当該フランジ128が係合し、周方向架材125の端部125aに押されて当該フランジ128も一緒に移動する構成となっている。また、このフランジ128の外形は、固定ブラケット116の内周径よりも大きく、フランジ128は、固定ブラケット116の中央側端面116aに係止される。周方向位置調整用コイル127の両端部は、2枚のフランジ128,128の互いに対向する中央側の面にそれぞれ係止されている。
【0054】
また、図8、図10、図11に示すように、微調整用コイル121は、スライド当接板112に突設されて基板111の前方側に突出したブラケット部118と枠材117の径方向架材126に挿装されてブラケット部118よりも内周側の位置に配設された微調整フランジ123との間に介装されている。この微調整フランジ123には、径方向架材126が往復動自在に挿通される貫通孔123aが形成されており、微調整フランジ123は、径方向架材126に対して軸方向に移動自在になっている。微調整用コイル121の外周側の端部は、上記ブラケット部118の内周側の端面に係止されており、微調整用コイル121の内周側の端部は、上記微調整フランジ123の外周側の面に係止されている。この微調整フランジ123の内周側には、上述した第1の実施の形態におけるナット24と同様のナット124が配設されている。
【0055】
図13はシールドジャッキ5がトンネル周方向の一方側(図8における左側)に偏心したときのスプレッダ100を表す断面図であり、図14はシールドジャッキ5がトンネル周方向の他方側(図8における右側)に偏心したときのスプレッダ100を表す断面図である。
【0056】
図12、図13、図14に示すように、上記した構成からなる第2の実施の形態におけるシールド掘削機1によれば、上述した第1の実施の形態と同様の作用、効果を奏することができる。すなわち、シールドジャッキ5とセグメント9とがトンネル径方向に偏心している場合であっても、上述した第1の実施の形態の場合と同様にして、スプレッダ100の当接面112aがスライドし、セグメント9前端部に加わる偏心荷重が低減或いは抑制される。これによって、セグメント9前端部のひび割れを防止することができる。また、トンネル径方向にスライドしたスプレッダ100の当接面112aがセグメント9の前端面9aから離されると、上述した第1の実施の形態の場合と同様にして、自動位置復元機構130によって当接面112aが初期位置に自動的に戻され、トンネル径方向にスライドしたスライド当接板112(当接面112a)を元の位置に戻す手間がかからない。
【0057】
さらに、上記した構成からなる第2の実施の形態におけるシールド掘削機1によれば、トンネル軸方向に直交する全方向にスライドする全方向スライド機構120が備えられているため、シールドジャッキ5とセグメント9とがトンネル径方向以外(トンネル周方向)にずれた場合にも、セグメント9の前端部に加わる偏心荷重を低減或いは抑制することができる。
【0058】
具体的には、図12に示すように、シールドジャッキ5がセグメント9に対してトンネル周方向にずれていない状態では、スライド当接板112(当接面112a)はトンネル周方向にスライドせず、正規の位置でシールドジャッキ5からセグメント9の前端面9aに押圧力が加えられる。このとき、セグメント9の前端面9aには、トンネル軸方向の方向に力が作用し、トンネル軸方向に直交する方向の分力は生じない。
【0059】
一方、図13に示すように、シールドジャッキ5からセグメント9の前端面9aに押圧力が加えるときに、何らかの理由でシールドジャッキ5がセグメント9に対してトンネル周方向の一方側に偏心した場合、スライド当接板112(当接面112a)は基板111に対して他方側に相対移動する。また、図14に示すように、シールドジャッキ5からセグメント9の前端面9aに押圧力が加えるときに、何らかの理由でシールドジャッキ5がセグメント9に対してトンネル周方向の他方側に偏心した場合も同様に、スライド当接板112(当接面112a)は基板111に対して一方側に相対移動する。
【0060】
このように、シールドジャッキ5とセグメント9とがトンネル周方向に偏心している場合であっても、スプレッダ100の当接面112aがトンネル周方向にスライドし、セグメント9前端部に加わる偏心荷重が低減或いは抑制されるため、セグメント9前端部のひび割れを一層確実に防止することができる。
【0061】
また、上記した構成からなる第2の実施の形態におけるシールド掘削機1によれば、トンネル周方向にスライドしたスプレッダ100の当接面112aがセグメント9の前端面9aから離されると、自動位置復元機構130によって当接面112aが初期位置に自動的に戻される。
【0062】
詳しく説明すると、図13に示すように、スライド当接板112(当接面112a)が基板111に対して一方側に相対移動した場合、ブラケット部118,118を介してスライド当接板112に取り付けられた枠材117も一緒に一方側に移動する。このとき、周方向位置調整用コイル127の両端に設けられたフランジ128,128のうち、一方側のフランジ128は、一方側の固定ブラケット116の中央側端面116aに係止され、他方側のフランジ128は、周方向架材125の他方側の端部125aの中央側端面125cに係合されて枠材117とともに一方側に移動する。これにより、周方向位置調整用コイル127は、縮んだ状態となる。このように縮んだ状態の周方向位置調整用コイル127には元に戻ろうとする引張力F5が生じる。このため、シールドジャッキ5を縮めてスライド当接板112がセグメント9の前端面9aから離されると、周方向位置調整用コイル127の引張力F5により、周方向架材125の他方側の端部125a(枠材117)が他方側に付勢され、スライド当接板112が元の位置に戻される。
【0063】
また、図14に示すように、スライド当接板112(当接面112a)が基板111に対して他方側に相対移動した場合も同様であり、ブラケット部118,118を介してスライド当接板112に取り付けられた枠材117も一緒に他方側に移動する。このとき、周方向位置調整用コイル127の両端に設けられたフランジ128,128のうち、他方側のフランジ128は、他方側の固定ブラケット116の中央側端面116aに係止され、一方側のフランジ128は、周方向架材125の一方側の端部125aの中央側端面125cに係合されて枠材117とともに他方側に移動する。これにより、周方向位置調整用コイル127は、縮んだ状態となる。このように縮んだ状態の周方向位置調整用コイル127には元に戻ろうとする引張力F6が生じる。このため、シールドジャッキ5を縮めてスライド当接板112がセグメント9の前端面9aから離されると、周方向位置調整用コイル127の引張力F6により、周方向架材125の一方側の端部125a(枠材117)が一方側に付勢され、スライド当接板112が元の位置に戻される。
【0064】
このように、トンネル周方向にスライドしたスプレッダ100の当接面112aがセグメント9の前端面9aから離されると、自動位置復元機構130によって当接面112aが図12に示すような初期位置に自動的に戻されるため、トンネル周方向にスライドしたスライド当接板112(当接面112a)を元の位置に戻す手間がかからない。
【0065】
以上、本発明に係るシールド掘削機の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記した第1の実施の形態では、図5に示すように、スライド当接板12から前方側に突出したブラケット部18には貫通孔18aが形成され、この貫通孔18aには、基板11に突設されたブラケット部16,19間に架設されて両端が固定された軸材17が往復動可能に挿通されているが、本発明は、図15に示すような下記の構成にすることもできる。すなわち、図15に示すように、基板11に突設されたブラケット部216,219には貫通孔216a,219aがそれぞれ形成されており、スライド当接板12から前方側に突出したブラケット部218にはトンネル径方向に延在する軸材217が固定されており、この軸材217の両端が上記した基板11側のブラケット部216,219の貫通孔216a,219aにそれぞれ往復動可能に挿通された構成であってもよい。また、この場合、上記した第1の実施の形態における微調整用コイル21や微調整フランジ23、ナット24は備えられてなく、スライド当接板12に突設されたブラケット部218を挟んで内外周側にそれぞれ設けられた一対の位置調整用コイル221,222が備えられている。この一対の位置調整用コイル221,222はトンネル径方向に同軸上に配設されており、内周側の位置調整用コイル221は、基板11に突設された内周側のブラケット部216とスライド当接板12に突設されたブラケット部218との間に介装され、外周側の位置調整用コイル222は、基板11に突設された外周側のブラケット部219とスライド当接板12に突設されたブラケット部218との間に介装されている。
【0066】
また、上記した第2の実施の形態では、図12に示すように、周方向架材125の両端部125a,125aがその中央部125bよりも大径になっており、位置調整用コイル127の両端側にはフランジ128,128がそれぞれ配置された構成となっているが、本発明は、図16に示すような下記の構成にすることもできる。すなわち、図16に示すように、周方向架材325は全長に亘って同じ太さ(径)であり、その中央部分にはフランジ325aが固定され、このフランジ325aを挟んで両側に位置調整用コイル327A,327Bがそれぞれ配設された構成であってもよい。これらの位置調整用コイル327A,327Bは、フランジ325aと固定ブラケット316,316との間にそれぞれ介装されており、一対の位置調整用コイル327A,327Bは同軸上に配設されている。このとき、上記したフランジ128を省略することができ、位置調整用コイル327A,327Bの端部を固定ブラケット316の中央側端面316aに直接係止させることができる。
【0067】
また、本発明は、図17に示すような下記の構成にすることもできる。すなわち、図17に示すように、周方向架材425は全長に亘って同じ太さ(径)であり、この周方向架材425を挿通させる固定ブラケット416が基板111の中央位置に1つだけ設けられ、この固定ブラケット416を挟んで両側に位置調整用コイル427A,427Bがそれぞれ配設された構成であってもよい。これらの位置調整用コイル427A,427Bは、周方向架材425の両端にそれぞれ設けられたフランジ119,119と固定ブラケット416との間にそれぞれ介装されており、一対の位置調整用コイル427A,427Bは同軸上に配設されている。
【0068】
また、上記した第1、第2の実施の形態では、スプレッダ10,100に備えられた自動位置復元機構30,130がコイル13,113を用いた構成となっているが、本発明は、他の構成からなる自動位置復元機構であってもよい。例えば、板バネやその他の付勢部材を用いた自動位置復元機構であってもよい。
【0069】
また、上記した第2の実施の形態では、スプレッダ100に備えられた全方向スライド機構120が、基板111に対して全方向にスライド自在のスライド当接板112が、枠材117を介して支持された構成からなっているが、本発明は、他の構成からなる全方向スライド機構であってもよい。例えば、トンネル径方向にスライド自在のスライド部材とトンネル周方向にスライド自在のスライド部材とを組み合わせた構成からなるスライド機構であってもよい。つまり、ジャッキシューに基板を固定し、この基板に対してトンネル径方向にスライド自在の中間スライド板を当該基板に支持させ、さらに、この中間スライド板に対してトンネル周方向にスライド自在の先端スライド板を中間スライド板に支持させた構成からなる全方向スライド機構であってもよい。
【0070】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係るシールド掘削機の第1の実施の形態を説明するためのシールド掘削機の断面図である。
【図2】本発明に係るシールド掘削機の第1の実施の形態を説明するためのスプレッダの立面図である。
【図3】本発明に係るシールド掘削機の第1の実施の形態を説明するためのスプレッダの断面図である。
【図4】本発明に係るシールド掘削機の第1の実施の形態を説明するためのスプレッダの断面図である。
【図5】本発明に係るシールド掘削機の第1の実施の形態を説明するためのスプレッダの断面図である。
【図6】本発明に係るシールド掘削機の第1の実施の形態を説明するためのスプレッダの断面図である。
【図7】本発明に係るシールド掘削機の第1の実施の形態を説明するためのスプレッダの断面図である。
【図8】本発明に係るシールド掘削機の第2の実施の形態を説明するためのスプレッダの立面図である。
【図9】本発明に係るシールド掘削機の第2の実施の形態を説明するためのスプレッダの平面図である。
【図10】本発明に係るシールド掘削機の第2の実施の形態を説明するためのスプレッダの断面図である。
【図11】本発明に係るシールド掘削機の第2の実施の形態を説明するためのスプレッダの断面図である。
【図12】本発明に係るシールド掘削機の第2の実施の形態を説明するためのスプレッダの断面図である。
【図13】本発明に係るシールド掘削機の第2の実施の形態を説明するためのスプレッダの断面図である。
【図14】本発明に係るシールド掘削機の第2の実施の形態を説明するためのスプレッダの断面図である。
【図15】本発明に係るシールド掘削機の他の実施の形態を説明するためのスプレッダの断面図である。
【図16】本発明に係るシールド掘削機の他の実施の形態を説明するためのスプレッダの断面図である。
【図17】本発明に係るシールド掘削機の他の実施の形態を説明するためのスプレッダの断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 シールド掘削機
2 スキンプレート
4 カッターヘッド
5 シールドジャッキ
8 ジャッキシュー
9a セグメント前端面(トンネル前端面)
10,100 スプレッダ
12a 当接面
20 径方向スライド機構(スライド機構)
30,130 自動位置復元機構
120 全方向スライド機構(スライド機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキンプレートと、該スキンプレートの前面に設けられたカッターヘッドと、前記スキンプレートに取り付けられ、既に覆工されたトンネルの前端面から反力を取って前記スキンプレートを前方に押圧して推進させるシールドジャッキと、を備えるシールド掘削機において、
前記シールドジャッキのジャッキシューの先端には、前記トンネル前端面に当接させるスプレッダが設けられ、
該スプレッダには、前記トンネル前端面に当接する当接面をトンネル軸方向に直交する方向にスライドさせるスライド機構と、前記当接面が前記トンネル前端面から離された際に該当接面を初期位置に戻す自動位置復元機構と、が備えられていることを特徴とするシールド掘削機。
【請求項2】
請求項1記載のシールド掘削機において、
前記スライド機構は、前記当接面をトンネル軸方向に直交する全方向にスライドさせる機構であることを特徴とするシールド掘削機。
【請求項3】
請求項1または2記載のシールド掘削機において、
前記スライド機構は、前記ジャッキシューの先端に固定された基部と、該基部にスライド自在に支持されて前記トンネル前端面に当接するスライド当接部と、が備えられた構成からなり、
前記自動位置復元機構は、前記スライド当接部が前記トンネル前端面から離された際に当該スライド当接部を初期位置に戻すように付勢する付勢部材が備えられた構成からなることを特徴とするシールド掘削機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−81959(P2008−81959A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260890(P2006−260890)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】