説明

シールド掘進機のテールシール方法およびシールド掘進機

【課題】 ワイヤブラシシール同士の間の閉鎖空間に裏込材が吸引された場合であっても、該裏込材の固結を防止することができるシールド掘進機のテールシール方法、および該テールシール方法の実施に好適なシールド掘進機を得る。
【解決手段】 テールシール機構10が、セグメント筒状体7の外面に当接自在で可撓性を具備する環状弾性体11a、11b、11cと、環状弾性体11a、11b、11cの間に充填されたシール材9a、9bとを有し、裏込材の固結を遅延または固結を阻止若しくは固結した前記裏込材を融解する裏込材固結防止材を、シール材9aに注入する固結防止材注入機構20が併設されている。掘削坑を形成しながらまたは掘削坑を形成する合間に、シール材9aに固結防止材を注入する。また、環状弾性体11a、11b、11cを複数のブラシ体によって形成し、該ブラシ体にシール材を含浸する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中にトンネルや下水道等(以下「掘削坑」と総称する)を構築する際に使用されるシールド掘進機のテールシール方法およびシールド掘進機に係り、特に、掘削坑に設置されるセグメント筒状体とシールド掘進機のテール部との隙間をシールする、シールド掘進機のテールシール方法、および該テールシール方法に好適なシールド掘進機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シールド掘進機は、地中を掘削して掘削坑を創成する掘削手段と、該掘削手段が一端(以下「前端」と称す)に設置された筒状の本体部と、本体部の後端に延設された筒状のテール部と、円弧状のセグメント部材を筒状のセグメント筒状体に組み立てるセグメント組立手段(セグメントエレクタまたはエレクター装置に同じ)と、組み立てられたセグメント筒状体を後方に向かって押し、その反力によって本体部を前進させるジャッキ手段(シールドジャッキに同じ)と、セグメント筒状体とテール部との隙間をシールするテールシール手段と、セグメント筒状体と掘削坑との隙間に裏込材を注入する裏込材注入手段と、掘削した土砂を機外に排出する排土手段とを有している。
【0003】
なお、以下の説明において、シールド掘進機が掘削坑を創成しながら進む方向を「前」「前方」または「前端」とし、これと反対の方向を「後」、「後方」または「後端」とする。また、筒状体である本体部を形成する板材をスキンプレートと、筒状体であるテール部を形成する板材をテールプレートと称す。
【0004】
テールシール手段は、地下水、土砂、あるいは裏込材等の本体部への浸入を防止するものであって、複数のワイヤブラシをテールプレートの内面に環状に設置したもの(以下「ワイヤブラシシール」と称す)が多用され、ワイヤブラシシールにはグリース(テールシールグリース)が詰め込まれたり、グリースが継続的に間欠注入されたりしていた。
このようなワイヤブラシシールのワイヤブラシは、テールプレートの内面に斜め後方に向かって設置され、ワイヤブラシの先端がセグメント筒状体の外面に摺動するものである。
【0005】
そして、シール効果を増すため、ワイヤブラシシールのワイヤブラシ層に半流動性シール材(炭化水素油の中に液状油脂、アスベスト及び合成繊維が混和されてなる)を充填する技術や、所定の間隔を配して一対のワイヤブラシシールを設置し、該一対のワイヤブラシシールの間に流動性の高いグリースを充填する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、裏込材は、たとえば、セメント、水、安定剤等が混合されたA液と、A液の固結を促進する水ガラス等が混合されたB液とから形成され、配管内を圧送されるものである。
そして、掘進が中断した際、配管内に停留したA液が凝固しないようにしたり、長距離の圧送中にA液の流動性が低下したりしないようにし、且つ、A液とB液が混合した後は、ゲル化時間の増加が少なく、裏込材の硬化遅れによる支障がほとんど生じない、裏込め注入用凝結遅延剤が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】特開昭62−190280号公報(9〜10頁、図1)
【特許文献2】特開2002−160955号公報(4〜5頁、表1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、一対のワイヤブラシシールと、テールプレートの内面と、セグメント筒状体の外面とによって閉鎖空間が形成されるものであるため、掘削坑が曲がっている場合(曲率が変動するに同じ)など、テールプレートの内面がセグメント筒状体の外面に接近して、両者の間隙が小さくなった場合、該接近した位相において、前記閉鎖空間は縮小され、このとき、一対のワイヤブラシシールの間に充填された流動性の高いグリースは、ワイヤブラシシールを押し倒して周囲に流れ出すことになる。
また、同時に、ワイヤブラシシールはテールプレートの内面または裏込材と、セグメント筒状体の外面とによって挟圧されたワイヤブラシシールからは半流動性シール材が流れ出すことになる。
一方、両者の間隙が元の間隔に戻った場合、あるいは反対に広がった場合、前記閉鎖空間は減圧状態になって、周囲のものを吸引することになる。このとき、最後端に配置されたワイヤブラシシールの後方には、注入された裏込材が到達しているから、裏込材が前記閉鎖空間に吸引されていた。また、同時に、ワイヤブラシシール(特に、最後端に配置されたワイヤブラシシール)内にも裏込材が吸引されていた。
【0009】
(イ)このため、テールプレートの内面がセグメント筒状体の外面に接近したとき、前記閉鎖空間およびワイヤブラシシール(特に、最後端に配置されたワイヤブラシシール)に吸引されて固結した裏込材(硬質材である)が、セグメント筒状体の外面を強く引っ掻き(擦過し)、セグメント筒状体の外面が損傷して、セグメント筒状体の止水性が低下するという問題があった。
(ロ)特に、セグメント筒状体の外面が樹脂類の外面被覆工法によって被覆された場合には、防水被覆が破損されるため、セグメント筒状体の止水性が低下するというおそれがあった。
【0010】
(ハ)また、吸引されて固結した裏込材を有するワイヤブラシシール(特に、最後端に配置されたワイヤブラシシール)は、可撓性が悪化するため、セグメント筒状体の外面に強く押し付けられ前記セグメント筒状体の外面を損傷するだけでなく、セグメント筒状体の外面との当接が不均一、すなわち、接触部の馴染みが悪化し、ワイヤブラシとセグメント筒状体との隙間のシール性が低下するという問題があった。
(ニ)さらに、前記閉鎖空間、すなわち、最後端に配置されたワイヤブラシシール(以下「最後端ワイヤブラシシール」と称す)と、該最後端ワイヤブラシシールよりも前方に配置されたワイヤブラシシール(以下「中間ワイヤブラシシール」と称す)との間には、シール材に吸引されて固結した裏込材があるため、中間ワイヤブラシシールの倒れが阻害され、セグメント筒状体の外面が引っ掻かれる(擦過される)。その結果、止水性が低下するという問題があった。
【0011】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、ワイヤブラシシール同士の間の閉鎖空間に裏込材が吸引された場合であっても、該裏込材の固結を防止することができるシールド掘進機のテールシール方法、および該テールシール方法の実施に好適なシールド掘進機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明に係るシールド掘進機のテールシール方法は、地中に掘削坑を形成する掘削手段と、該掘削手段が前端に設置された筒状の本体部と、該本体部の後端に延設された筒状のテールプレートと、前記本体部に設置され、セグメントを筒状のセグメント筒状体に組み立てるセグメント組み立て手段と、該組み立てられたセグメント筒状体を後方に向けて押し出して前記本体部を前方に進めるジャッキ手段と、該押し出されたセグメント筒状体の外面と前記テールプレートの内面との隙間をシールするテールシール手段と、前記押し出されたセグメント筒状体の外面と前記掘削坑の内面との隙間に裏込材を注入する裏込材注入手段とを有するシールド掘進機におけるものであって、
前記テールシール手段が、前記セグメント筒状体の外面に当接自在で可撓性を具備する複数の環状弾性体と、該環状弾性体のうち一方の環状弾性体と他方の環状弾性体との間に充填されたシール材と、前記裏込材の固結を遅延または固結を阻止若しくは固結した前記裏込材を融解する裏込材固結防止材を、前記シール材に注入する固結防止材注入機構とを有し、
掘削坑を形成しながらまたは掘削坑を形成する合間に、前記シール材に固結防止材を注入することを特徴とする。
【0013】
(2)また、前記環状弾性体を複数のブラシ体によって形成し、該ブラシ体に前記シール材を含浸することを特徴とする。
【0014】
(3)さらに、本発明に係るシールド掘進機は、地中に掘削坑を形成する掘削手段と、該掘削手段が前端に設置された筒状の本体部と、該本体部の後端に延設された筒状のテールプレートと、前記本体部に設置され、セグメントを筒状のセグメント筒状体に組み立てるセグメント組み立て手段と、該組み立てられたセグメント筒状体を後方に向けて押し出して前記本体部を前方に進めるジャッキ手段と、該押し出されたセグメント筒状体の外面と前記テールプレートの内面との隙間をシールするテールシール手段と、前記押し出されたセグメント筒状体の外面と前記掘削坑の内面との隙間に裏込材を注入する裏込材注入手段とを有するものであって、
前記テールシール手段が、前記セグメント筒状体の外面に当接自在で可撓性を具備する複数の環状弾性体と、該環状弾性体のうち一方の環状弾性体と他方の環状弾性体との間に充填されたシール材と、前記裏込材の固結を遅延または固結を阻止若しくは固結した前記裏込材を融解する裏込材固結防止材を、前記シール材に注入する固結防止材注入機構とを有することを特徴とする。
【0015】
(4)また、前記環状弾性体がブラシ体によって形成され、該ブラシ体に前記シール材が含浸されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
よって、本発明においては、一方の環状弾性体と他方の環状弾性体との間に充填されたシール材に固結防止材が注入され、該固化防止材が、シール材部分に吸引された裏込材の固結を遅らせ、または固結を阻止し、若しくは固結した裏込材を融解するから、セグメント筒状体の外面や防水被覆の破損が防止されるため、セグメント筒状体の止水性の低下が防止される。また、ブラシ体の可撓性が維持されるため、ブラシ体とセグメント筒状体との隙間のシール性の低下が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、まず、本発明の実施形態に係る「シールド掘進機」の全体構成を概説し、その後、「シールド掘進機のテールシール手段」および「シールド掘進機のテールシール方法」について、それぞれ図を参照して説明する。なお、各図において同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
【0018】
(シールド掘進機)
図1は、本発明の実施形態に係るシールド掘進機の全体構成を概説するための断面図である。図1において、シールド掘進機100は、筒状の本体部1と、本体部1の前端(図中、左側)に配置され、地中を掘削して掘削坑を創成するカッターヘッド2と、本体部1を掘進(前進に同じ)させるためのシールドジャッキ4と、カッターヘッド2によって掘削された土砂を排出するためのスクリューコンベア5と、セグメントを環状のセグメント筒状体7に組み立てるためのエレクター装置6と、図示しない裏込材注入手段とを有している。
また、筒状の本体部1の外周は、板材であるスキンプレート3によって形成され、スキンプレート3の後端には、筒状に形成されたテールプレート8が固定され、テールプレート8の内面には環状のテールシール機構10が設置されている。
【0019】
そして、シールドジャッキ4は、セグメント筒状体7を後方に押し出す反力でもって本体部1を前方に進める(掘進させる)ものであるため、本体部1の前進に伴って、セグメント筒状体7は掘削坑(図示しない)に見掛け上押し出される。このとき、セグメント筒状体7の外面と掘削坑の内面との間には所定の隙間があるため、該隙間に裏込材注入手段によって裏込材(図示しない)が注入されるものである。
【0020】
また、テールシール機構10は、地下水、土砂、あるいは裏込材が本体部1に浸入しないようにするものであって、環状のワイヤブラシシールと、該ワイヤブラシシール同士の間に充填されたシール材によって形成されている。そして、テールシール機構10には、前記シール材に固結防止材を注入する固結防止材注入機構20が付設されている(これについては、別途詳細に説明する)。
【0021】
したがって、テールシール機構10に浸入した裏込材は固結防止材によって、固結が遅延され、または固結が阻止され、若しくは既に固結した状態の裏込材が融解するから(本発明においてこれらをまとめて「固結防止」と総称する)、セグメント筒状体7の外面の破損が防止されるため、特に、セグメント筒状体の外面に止水性を高める目的で防水被覆が被覆されている場合には、該防水皮膜の破損が防止されるため、セグメント筒状体7の止水性の低下が防止される。
また、前記ワイヤブラシシールの可撓性が維持されるため、前記ワイヤブラシシールとセグメント筒状体7の隙間のシール性の低下が防止される(これについては、別途詳細に説明する)。
よって、シールド掘進機100は長距離の掘進に際しても、本体部1への地下水、土砂、あるいは裏込材の浸入が防止されるという効果を奏する。
【0022】
なお、図示するシールド掘進機100は一例であって本発明はこれに限定するものではない。たとえば、カッターヘッド2は図示する中間支持タイプの他に、センター支持タイプや外周支持タイプ、あるいは図示する単軸の他に多軸であってもよい。また、カッターヘッド2には植え込み式のカッタの他に、地中の特性(複合地盤等)に対応して、ディスクカッタ(回転する)やフィッシュテール(回転中心に突設される)等が設置されてもよく、一方、コピーカッタ2c(側面に向かって進退する)が撤去されてもよい。
なお、カッターヘッド2が撤去された手掘式のシールド掘進機にも、本発明の「シールド掘進機のテールシール構造」は設置されるものである。
【0023】
また、本体部1は、前面が密閉された密閉式あるいは開放された開放式であっても、複数の筒状体が屈折自在に直列配置されたもの(中折機構を有するもの)、あるいは複数の略筒状体が並列配置されたもの(たとえば、断面略8字状)であってもよい。
また、土砂の排出機構5は図示するスクリューコンベアタイプの他に、泥水式シールドタイプであってもよい。
さらに、形成されたセグメント筒状体7を所定の形状(たとえば、真円)に保持する保持手段を設けたものであってもよい。
【0024】
(テールシール手段その1)
図2は、本発明の実施形態に係るシールド掘進機のテールシール手段を模式的に示す部分断面図であって、(a)は掘進前、(b)は掘進中である。
図2の(a)において、シールド掘進機のテールシール機構10(以下「テールシール機構10」と称す)は、筒状のテールプレート8の内面に設置され、3条のワイヤブラシシール11a、11b、11c(以下まとめて「ワイヤブラシシール11」と称する場合がある)と、ワイヤブラシシール11aとワイヤブラシシール11bとの間に充填されたシール材9aと、ワイヤブラシシール11bとワイヤブラシシール11cとの間に充填されたシール材9bと、ワイヤブラシシール11a、11b、11cのそれぞれに含浸されたシール材91a、91b、91cとを有している。そして、テールシール機構10には、後記する固結防止材注入機構20が併設されている。なお、図中の二点鎖線は、セグメント筒状体7が、本体部1から押し出される際の外面の平均的な位置である。
【0025】
図2の(b)において、ワイヤブラシシール11はセグメント筒状体7の外面に接触して後方(図中、左方向)に向かって倒され、また、シール材9a、9bは、セグメント筒状体7の外面と、テールプレート8の内面と、一対のワイヤブラシシール11とによって形成される閉鎖空間に充満している。
なお、セグメント筒状体7はシールドジャッキ4によって後方に向けて押圧され、その反力によって本体部1が前方に押し進められるものであるから、セグメント筒状体7が掘削坑に対して移動するものではないが、説明を容易にするため、「本体部1から押し出される(本体部1に対して後方に向かって移動する)」と表現している。
【0026】
ワイヤブラシシール11a、11b、11cは、それぞれ図示しない複数のワイヤブラシ(ブラシ素材であるワイヤ(短尺の線材)が束になっている)が環状に設置されたものであって、ワイヤブラシシール11a、11b、11cのワイヤブラシ相互の間およびワイヤブラシを形成するワイヤの間の双方に、それぞれシール材91a、91b、91cが含浸され、これによって、ワイヤブラシシール11に止水性が付与されている。
また、シール材9a、9b、91a、91b、91c(以下まとめて「シール材9」と称する場合がある)は、流動性ないし粘性を具備するもの、たとえば、グリース等の油脂類であって、それぞれが同一でも、何れかが相違してもよい。
【0027】
固結防止材注入機構20は、テールプレート8のワイヤブラシシール11aとワイヤブラシシール11bとの間の内面8a(シール材9aが充填されている)に、固結防止材を注入自在な固結防止材出口21aと、固結防止材出口21aに向けて本体部1(スキンプレート3に同じ)内から固結防止材を補給するための固結防止材注入経路22aと、本体部1に設置され、固結防止材を圧送する固結防止材圧送装置(図示しない)とを有している。
【0028】
したがって、セグメント筒状体7の外面と、テールプレート8の内面8aと、一対のワイヤブラシシール11とによって形成される閉鎖空間に裏込材が浸入した場合であっても、該閉鎖空間に固結防止材を注入することができるから、裏込材の固結が防止、すなわち、注入された固結防止材によって、浸入した裏込材の固結が遅延され、または固結が阻止され、若しくは既に固結した状態の裏込材が浸入しても、これが融解されることになる。
このため、セグメント筒状体7の外面、特に、セグメント筒状体7の外面が防水被覆によって被覆されている場合には、該防水皮膜は、硬質材によって擦過されることがないから、損傷がなく、止水性が維持される。
【0029】
また、注入された固結防止材はワイヤブラシシール11a、11bにも浸透するため、ワイヤブラシシール11a、11b内に、裏込材が浸入したとしても、該裏込材の固結が防止されるから、ワイヤブラシシール11a、11bの可撓性が維持されることになる。
このため、ワイヤブラシシール11a、11bはセグメント筒状体7の外面に馴染むから、ワイヤブラシシール11a、11bとセグメント筒状体7の外面との隙間のシール性が維持される。
【0030】
そして、固結防止材出口21aはテールプレート8の円周方向に通常複数箇所設けられるものであって、シール性が低下した際、あるいは所定の時間毎に間欠的、若しくは連続的補給されるものである。
なお、固結防止材出口21aが配置される形態は限定するものではなく、固結防止材出口21a毎に固結防止材注入経路22aが設置されても、複数の固結防止材出口21aに1の固結防止材注入経路22aが連通してもよい。また、固結防止材注入経路22aは途中で分岐したり、途中に分配手段が設置されたりしてもよい。
さらに、固結防止材注入経路22aは、管や、筒状体または断面円弧状板材の内部に加工された孔や、筒状体または断面円弧状板材の内面に加工された溝とスキンプレート3の外面とによって形成される空間等である。
【0031】
さらに、ワイヤブラシをテールプレート8に設置する要領、すなわち、ワイヤブラシシール11a、11b、11cを形成する要領は、ワイヤを束ねている金具12a、12b、12c(以下「束ね金具12a、12b、12c」と称す)を、テールプレート8に固定された設置用部材13a、13b、およびスキンプレート3の後端3cにそれぞれ溶接接合するものであるが、本発明はこれに限定するものではなく、束ね金具12a、12b、12cを機械的に設置(たとえば、テールプレート8に固定用隙間を設けてこれに嵌挿、あるいはボルトにより固定等)してもよい。
また、本発明において、所定の本数のワイヤ(ブラシ素材に同じ)を束ねたものをワイヤブラシと称しているから、ワイヤブラシ毎に束ね金具がない場合には、所定量のワイヤブラシを集めてより大きいワイヤブラシを形成する金具、あるいは、所定量のワイヤブラシを集めてリング状に形成する金具を、束ね金具と読み替えるものである。
【0032】
また、ワイヤブラシシール11やこれを形成するワイヤブラシの構造は限定するものではなく、ワイヤブラシシール11(ワイヤブラシに同じ)の側面または中間に薄板材や網材を配置してもよく、ワイヤブラシシール11の長さ(半径方向で内側への突出量)や幅(掘進方向に平行な厚さ)、あるいは、倒れ量(テールプレート8の内面に垂直または該内面に対して傾斜する量)は適宜選定されるものである。
また、ワイヤブラシを形成するブラシ素材は文字通りワイヤ(短尺の線材)に限定するものではなく、可撓性を有する短冊状素材やコイル状素材等であってもよい。
さらに、ワイヤブラシシール11は3条に限定するものではなく、2条または4条以上であってもよい。また、シール材9bに対しても同様に固結防止材を注入してもよい。
【0033】
(テールシール手段その2)
図3は、本発明の実施形態に係るシールド掘進機のテールシール手段を模式的に示す部分断面図であって、(a)は掘進前、(b)は掘進中である。
図3の(a)および(b)において、シールド掘進機のテールシール機構30(以下「テールシール機構30」と称す)は、前述のテールシール機構10に代えてシールド掘進機100に設置されるものであって、3条のワイヤブラシシール11a、11b、11cと、シール材9aと、シール材9bと、後記する固結防止材注入機構40とを有し、ワイヤブラシシール11a、11b、11cが発泡樹脂14a、14b、14cによって固められ、可撓性と止水性とが付与されているものである。
【0034】
さらに、固結防止材注入機構40は、固結防止材出口21aと、固結防止材注入経路22aと、テールプレート8のワイヤブラシシール11bとワイヤブラシシール11cとの間の内面8b(シール材9bが充填されている)に、固結防止材を注入自在な固結防止材出口21bと、固結防止材出口21bに向けて本体部1(スキンプレート3に同じ)内から固結防止材を補給するための固結防止材注入経路22bと、本体部1に設置され、固結防止材を圧送する固結防止材圧送装置(図示しない)とを有している。
【0035】
したがって、前述のテールシール手段その1の作用効果が、シール材9bの位置においても発揮されるから、セグメント筒状体7の外面、特に、セグメント筒状体7の外面が防水被覆によって被覆されている場合には、該防水皮膜は、硬質材によって擦過されることがないから、損傷がなく、止水性が維持される。
なお、固結防止材注入経路22aと固結防止材注入経路22bとは、それぞれが別個に図示しない固結防止材圧送装置に連通しても、共通の注入経路から発し、途中で固結防止材注入経路22a、22bに分岐したものであってもよい。
【0036】
また、ワイヤブラシシールは3条に限定するもではなく、4条以上であってもよい。そして、後端から3条目のワイヤブラシシールより前方に充填されるシール材について、固結防止材を注入する固結防止材注入機構(固結防止材出口等)を設けてもよいし、設けなくてもよい。
さらに、発泡樹脂14a、14b、14cは、それぞれが同一の材質でも、何れかが相違する材質であってもよく、ワイヤブラシシールに所定の可撓性と止水性を付与するものである限りその材質は限定するものではなく、たとえば、ウレタン等の樹脂であってもよい。
【0037】
(テールシール方法その1)
図4は、本発明の実施形態に係るシールド掘進機のテールシール方法その1を、前述のテールシール手段その1(図2参照)において説明するフロー図である。
すなわち、掘進前、たとえば、シールド掘進機100を組み立てる際に、ワイヤブラシシール11の間にシール材9a、9bを充填し、ワイヤブラシシール11にはシール材91を含浸する(ステップ1)。
そして、シールド掘進機100によって掘進を開始し、組み立てられたセグメント筒状体7を掘削坑内に押し出す(ステップ2)。
そこで、セグメント筒状体7と掘削坑との隙間に裏込材を注入する(ステップ3)。
また、所定のタイミングでシール材9aに固結防止材を注入する(ステップ4)。
さらに、前記ステップ2〜ステップ4を連続的に、または、間欠的に繰り返す。
【0038】
よって、シール材9aの位置(ワイヤブラシシール11aの前方)に裏込材が浸入した場合であっても、かかる裏込材の固結が防止されるから、セグメント筒状体7の外面の破損が防止され、セグメント筒状体7の止水性の低下が防止される。また、ワイヤブラシシール11a、11b内に裏込材が浸入した場合であっても、かかる裏込材の固結が防止されるから、ワイヤブラシシールの可撓性が維持され、ワイヤブラシシール11a、11bとセグメント筒状体7の隙間のシール性の低下が防止される。
【0039】
このとき、限られた量の固結防止材が、シール材9aの位置に限定して注入されるから、該固結防止材がワイヤブラシシール11a、11bの外に流れ出すことは殆どない。また、仮に、流れ出したとしても少量であるから、セグメント筒状体7と掘削坑との隙間に注入された裏込材の固結が阻害されることがない(すなわち、固結の遅延、固結の阻止、若しくは固結した裏込材の融解がない)。
よって、シールド掘進機100は長距離の掘進に際しても、本体部1への地下水、土砂、あるいは裏込材の浸入が防止され、セグメント筒状体7は掘削坑に早期に固定されるという効果を奏する。
【0040】
なお、前記所定のタイミングは限定するものではなく、掘進を継続している間(正確には、セグメント筒状体7が押し出されている間(本体部1が前進している「掘進中」)、およびセグメント筒状体7が止まっている間(本体部1が前進していない「掘進の合間」))、連続して注入しても、所定の時間毎あるいは所定の前進距離毎に、間欠的に注入しても、シール材9aへの裏込材の浸入が予測される場合(たとえば、掘削坑の掘削方向が変動する場合等)に限って注入してもよい。
また、注入量を一定にしてまたは変動させながら連続して注入しても、あるいは、毎回の注入量を一定にしてまたは変動させて間欠的に注入してもよい。
また、テールシール方法その1は、前述のテールシール手段その2(図3参照)においても同様に実施することできるものであって、このとき、シール材9a、9bに固結防止材が注入されるから、シール材9bの位置に裏込材が浸入した場合であっても、かかる裏込材の固結が防止される。
【0041】
(テールシール方法その2)
図5は、本発明の実施形態に係るシールド掘進機のテールシール方法その2を、前述のテールシール手段その1(図2参照)において説明するフロー図である。
すなわち、掘進前、たとえば、シールド掘進機100を組み立てる際に、ワイヤブラシシール11の間にはシール材9a、9bを充填し、ワイヤブラシシール11にはシール材91を含浸する(ステップ1)。
そして、シールド掘進機100によって掘進を開始し、組み立てられたセグメント筒状体7の外面に防水被覆を被覆する(ステップ2の1)。
そして、防水皮膜が被覆されたセグメント筒状体7を掘削坑内に押し出し、セグメント筒状体7と掘削坑との隙間に裏込材を注入する(ステップ2の2)。
そこで、セグメント筒状体7と掘削坑との隙間に裏込材を注入する(ステップ3)。
また、所定のタイミングでシール材9aに固結防止材を注入する(ステップ4)。
さらに、前記ステップ2の1〜ステップ4を連続的に、または、間欠的に繰り返す。
【0042】
よって、前述のように、シール材9aの位置に浸入した裏込材の固結が防止されるから、テールシール方法その1と同様の作用効果、特に、防水皮膜の破損が防止されるという顕著な効果が得られる。
また、テールシール方法その2は、前述のテールシール手段その2(図3参照)においても同様に実施することできるものであって、このとき、シール材9a、9bに固結防止材が注入されるから、シール材9bの位置に裏込材が浸入した場合であっても、かかる裏込材の固結が防止される。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上のように本発明によれば、各種シールド掘進機におけるテールシール方法、および該テールシール方法の実施に好適なシールド掘進機として広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態に係るシールド掘進機の全体構成を概説するための断面図。
【図2】図1に示すシールド掘進機のテールシール手段その1を模式的に示す部分断面図。
【図3】図1に示すシールド掘進機のテールシール手段その2を模式的に示す部分断面図。
【図4】本発明の実施形態に係るシールド掘進機のテールシール方法その1をテールシール手段その1において説明するフロー図である。
【図5】本発明の実施形態に係るシールド掘進機のテールシール方法その2をテールシール手段その1において説明するフロー図である。
【符号の説明】
【0045】
1 本体部
2 カッターヘッド
2c コピーカッタ
3 スキンプレート
3c スキンプレート後端
4 シールドジャッキ
5 スクリューコンベア
6 エレクター装置
7 セグメント筒状体
8 テールプレート
8a 内面
8b 内面
9a シール材
9b シール材
10 テールシール手段
11a ワイヤブラシシール
11b ワイヤブラシシール
11c ワイヤブラシシール
12a 金具
12b 金具
12c 金具
13a 設置用部材
13b 設置用部材
14a 発泡樹脂
14b 発泡樹脂
14c 発泡樹脂
20 固結防止材注入機構
21a 固結防止材出口
21b 固結防止材出口
22a 固結防止材注入経路
22b 固結防止材注入経路
30 テールシール手段
40 固結防止材注入機構
91a シール材
91b シール材
91c シール材
100 シールド掘進機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に掘削坑を形成する掘削手段と、該掘削手段が前端に設置された筒状の本体部と、該本体部の後端に延設された筒状のテールプレートと、前記本体部に設置され、セグメントを筒状のセグメント筒状体に組み立てるセグメント組み立て手段と、該組み立てられたセグメント筒状体を後方に向けて押し出して前記本体部を前方に進めるジャッキ手段と、該押し出されたセグメント筒状体の外面と前記テールプレートの内面との隙間をシールするテールシール手段と、前記押し出されたセグメント筒状体の外面と前記掘削坑の内面との隙間に裏込材を注入する裏込材注入手段とを有するシールド掘進機における、シールド掘進機のテールシール方法であって、
前記テールシール手段が、前記セグメント筒状体の外面に当接自在で可撓性を具備する複数の環状弾性体と、該環状弾性体のうち一方の環状弾性体と他方の環状弾性体との間に充填されたシール材と、前記裏込材の固結を遅延または固結を阻止若しくは固結した前記裏込材を融解する裏込材固結防止材を、前記シール材に注入する固結防止材注入機構とを有し、
掘削坑を形成しながらまたは掘削坑を形成する合間に、前記シール材に固結防止材を注入することを特徴とするシールド掘進機のテールシール方法。
【請求項2】
前記環状弾性体を複数のブラシ体によって形成し、該ブラシ体に前記シール材を含浸することを特徴とする請求項1記載のシールド掘進機のテールシール方法。
【請求項3】
地中に掘削坑を形成する掘削手段と、該掘削手段が前端に設置された筒状の本体部と、該本体部の後端に延設された筒状のテールプレートと、前記本体部に設置され、セグメントを筒状のセグメント筒状体に組み立てるセグメント組み立て手段と、該組み立てられたセグメント筒状体を後方に向けて押し出して前記本体部を前方に進めるジャッキ手段と、該押し出されたセグメント筒状体の外面と前記テールプレートの内面との隙間をシールするテールシール手段と、前記押し出されたセグメント筒状体の外面と前記掘削坑の内面との隙間に裏込材を注入する裏込材注入手段とを有するシールド掘進機であって、
前記テールシール手段が、前記セグメント筒状体の外面に当接自在で可撓性を具備する複数の環状弾性体と、該環状弾性体のうち一方の環状弾性体と他方の環状弾性体との間に充填されたシール材と、前記裏込材の固結を遅延または固結を阻止若しくは固結した前記裏込材を融解する裏込材固結防止材を、前記シール材に注入する固結防止材注入機構とを有することを特徴とするシールド掘進機。
【請求項4】
前記環状弾性体がブラシ体によって形成され、該ブラシ体に前記シール材が含浸されてなることを特徴とする請求項3記載のシールド掘進機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−118239(P2006−118239A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−307867(P2004−307867)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】