説明

シールド方法

【課題】経年変化によるシールド効果の劣化がなく、長期間に亘ってシールド効果を保つことができるシールド方法を提供する。
【解決手段】平板状の下側シールドケース12と箱状の上側シールドケース13との間にプリント基板21を介在してねじ止めする。上側シールドケース13は、下側開口の中央部に隔壁15を設け、A、Bのブロック16a、16bに分割する。プリント基板21は上面及び下面に接地電位の印刷導体22a、22bを備え、上面の印刷導体22aを上側シールドケース13の開口端面及び隔壁15の対応位置に設け、且つ上面に第1及び第2の高周波回路を構成する。プリント基板21上には、隔壁15に隣接してシールド用のEMIガスケット35a〜35cを設ける。上側シールドケース13を下側シールドケース12にねじ止めする際、プリント基板21上の印刷導体22aに圧接してシールドする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線機のシールドケースに係り、特に携帯電話機などの移動体通信機器の外部との電磁遮蔽及び内部の各回路ブロック間を電磁的に遮蔽するためのシールド方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば携帯無線機などの電子機器の高周波回路は、外部への高周波の漏洩を防止し、また、内部の回路ブロック間の信号の相互干渉を少なくするため、全体を覆う遮蔽板と各ブロックを仕切る遮蔽板とが一体成形された電磁シールドケース内に収納している。
【0003】
図4は従来の電子機器におけるシールドケースの構成を示すもので、(a)は平面図、(b)はA−A断面図である。図5は図4における上側シールドケースを底面側から見た斜視図である。
【0004】
図4において、11はシールドケースで、下側シールドケース12及び上側シールドケース13により構成される。下側シールドケース12は、平板状に形成されており、その上面にプリント基板21を介在して上側シールドケース13が複数のねじ14により固定される。上側シールドケース13は、図5に示すように箱状に形成され、その底面、すなわち下側シールドケース12側が開口されている。上側シールドケース13は、中央部に隔壁15が設けられてAブロック16aとBブロック16bに分割されており、例えば四隅及び隔壁15の両端部の6箇所において、ねじ14により下側シールドケース12に装着される。
【0005】
また、上記プリント基板21は、上面及び下面に接地電位の印刷導体22a、22bが設けられる。上面の印刷導体22aは、少なくとも上側シールドケース13の底部開口面の外周面及び隔壁15に対応する位置に設けられ、下面の印刷導体22bは例えば全面的に設けられる。
【0006】
また、プリント基板21の上面には、図示しないが上側シールドケース13のAブロック16a及びBブロック16bに対応するように回路配線が施されると共に電子部品が実装され、電磁的な遮蔽を必要とする第1の高周波回路及び第2の高周波回路が構成される。
【0007】
上記のような構造のシールドケース11は、上側シールドケース13の開口面の端面がプリント基板21の上面に設けられた接地電位の印刷導体22aに面接触することによりシールド効果を得る構成であり、比較的設計し易く安価であるが、単に面接触のみによる導通であるので、十分なシールド効果を得ることができない。
【0008】
すなわち、下側シールドケース12と上側シールドケース13との間にプリント基板21を収納し、ねじ14を締め付けて固着した際に、締付け部の中間位置におけるプリント基板21にゆがみ(反り)23を生じて部分的に0.05〜0.1mm単位の隙間が発生し、また、接触面の酸化や汚れのため接触性が悪く、シールド効果が不十分になるという問題がある。特に携帯電話等における高周波回路では、シールドの隙間から漏れる電磁波の影響を阻止することは難しく、シールド効果が不十分になる。
【0009】
このため従来では、図6に示すようにしてシールド効果を改善している。図6は従来のシールド効果を改善したシールドケースの構成を示し、(a)は平面図、(b)はA−A断面図、(c)はB−B断面図である。
【0010】
図6は、上記図4及び図5に示したシールドケースにおいて、プリント基板21の上面に、上側シールドケース13の隔壁15に対応する位置に弾性のあるEMIガスケット25a、25b、25cを機械実装し、下側シールドケース12に対して上側シールドケース13をねじ14により装着する際に上側シールドケース13の隔壁15でEMIガスケット25a、25b、25cを押し潰し、加圧することで接触性を改善したものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記図6に示したシールド方法は、上側シールドケース13の隔壁15とプリント基板21との間に弾性のあるEMIガスケット25a、25b、25cを介在しているので、良好な接触性を得ることができる。しかし、シールドケースの寸法精度の誤差により加圧が強い場合、温度変化などによる経年変化によりEMIガスケット25a、25b、25cの弾性が弱まり、シールド効果が劣化するという問題がある。
【0012】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、経年変化によるシールド効果の劣化がなく、長期間に亘ってシールド効果を保つことができるシールド方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、高周波回路部及び接地電位の印刷導体が設けられたプリント基板を下側シールドケース及び上側シールドケース間に収納してシールドするシールド方法において、前記プリント基板に設けられた接地電位の印刷導体に前記シールドケースの開口端面を接触させて前記高周波回路部を電磁的に遮蔽すると共に、前記シールドケースの開口端面と前記接地電位の印刷導体との接触部に隣接して接地電位のシールド用部材を配設してシールドすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シールドケースの開口端面と接地電位の印刷導体との接触部に隣接して接地電位のシールド用部材を配設することにより、例えばシールドケースをねじにより取付けた際にプリント基板のゆがみによる隙間を生じたとしても、上記シールド用部材によって高周波信号の漏洩を確実に防止することができる。
【0015】
また、シールドケースとプリント基板の印刷導体との間における接触面の酸化や汚れのため接触性が悪くなった場合においても、上記シールド用部材の作用により高周波信号の漏洩を確実に防止することができる。
【0016】
更にシールド用部材には圧力が加わらないので、経年変化によるシールド効果の劣化がなく、長期間に亘ってシールド効果を良好に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係るシールド方法を用いたシールドケース11Aの構成を示し、(a)は平面図、(b)はA−A断面図、(c)はB−B断面図である。
【0018】
シールドケース11Aは、下側シールドケース12及び上側シールドケース13により構成される。上記下側シールドケース12及び上側シールドケース13としては、例えばアルミニュウム等の金属やABS樹脂に無電解Ni(ニッケル)メッキ等を施したものが用いられる。
【0019】
上記下側シールドケース12は、例えば平板状に形成されており、その上面にプリント基板21を介在して上側シールドケース13が複数のねじ14により固定される。上側シールドケース13は、図5に示したように箱状に形成され、その底面、すなわち下側シールドケース12側が開口されている。上記上側シールドケース13は、中央部に隔壁15が設けられ、Aブロック16aとBブロック16bに分割される。上記上側シールドケース13は、例えば四隅及び隔壁15の両端部の6箇所において、ねじ14により下側シールドケース12に装着される。
【0020】
上記下側シールドケース12には、上側シールドケース13のAブロック16aとBブロック16bの一方、例えばBブロック16bに対応する領域において、上側シールドケース13の隔壁15に沿って位置するように複数例えば3個の遮蔽板31a、31b、31cが突出して設けられる。この場合、各遮蔽板31a、31b、31cの間隔dは、λ/4より十分狭く設定する。上記λは遮蔽する高周波信号の波長を示している。
【0021】
一方、プリント基板21には、上面及び下面に接地電位の印刷導体22a、22bが設けられる。上面の印刷導体22aは、少なくとも上側シールドケース13の底部開口面の外周面及び隔壁15に対応する位置に設けられ、下面の印刷導体22bは例えば全面的に設けられる。上記プリント基板21の上面に設けられる印刷導体22aと下面に設けられる印刷導体22bは、例えばスルーホール等により電気的に接続される。
【0022】
上記プリント基板21は、下側シールドケース12上に装着される際、下面の印刷導体22bが下側シールドケース12に直に接して電気的に接続され、あるいは絶縁材により下側シールドケース12との間が絶縁される。
【0023】
また、プリント基板21の上面には、上側シールドケース13のAブロック16a及びBブロック16bに対応するように回路配線が施されると共に電子部品が実装され、例えば濾波器などの第1の高周波回路及び第2の高周波回路が構成される。上記第1の高周波回路と第2の高周波回路は、相互に干渉しないように電磁的に遮蔽する必要がある回路である。
【0024】
上記プリント基板21には、上記下側シールドケース12に設けられた遮蔽板31a、31b、31cを貫通させるための貫通穴32a、32b、32cが設けられる。
【0025】
上記プリント基板21を下側シールドケース12上に装着する際、下側シールドケース12の遮蔽板31a、31b、31cを貫通穴32a、32b、32cを通って上方に突出させる。そして、上記下側シールドケース12上にプリント基板21を介在させた状態で上側シールドケース13を装着し、上側シールドケース13の上方よりねじ14を締め付けて固定する。
【0026】
この際、プリント基板21の上面に設けられた接地電位の印刷導体22aは、上側シールドケース13の底部開口面の外周面及び隔壁15の端面に圧接され、電気的に接続されてAブロック16aとBブロック16bとの間をシールドし、高周波信号の漏洩を阻止する。
【0027】
更に、下側シールドケース12の遮蔽板31a、31b、31cが上側シールドケース13の隔壁15の側方に近接して位置し、Aブロック16aとBブロック16b間の高周波信号の漏洩を阻止する。
【0028】
従って、上側シールドケース13を下側シールドケース12にねじ14により締め付けた際に、締付け部の中間位置におけるプリント基板21にゆがみ23を生じ、上側シールドケース13の隔壁15とプリント基板21の印刷導体22aとの間に部分的に0.05〜0.1mm単位の隙間が生じたとしても、遮蔽板31a、31b、31cの作用により高周波信号の漏洩を確実に阻止することができる。
【0029】
上記のように上側シールドケース13を下側シールドケース12にねじ14により締め付けた際にプリント基板21にゆがみ23を生じ、隔壁15とプリント基板21の印刷導体22aとの間に部分的に隙間が生じた場合、隙間から漏洩する高周波信号には、直進方向の見通しによる漏洩信号が含まれるが、遮蔽板31a、31b、31cが妨げとなり、見通しの漏洩信号を無くすことができる。
【0030】
また、各遮蔽板31a、31b、31c間の隙間をλ/4より十分小さくすることで、上記隙間部分における見通しの高周波信号の漏洩を防止することができる。更に、上側シールドケース13の隔壁15に隣接して遮蔽板31a、31b、31cを配設することで、シールドケース11Aの各Aブロック16a及びBブロック16b内の反射信号による高周波信号の漏洩も防止でき、シールド効果を改善することができる。
【0031】
また、上側シールドケース13の隔壁15とプリント基板21の印刷導体22aとの間における接触面の酸化や汚れのため接触性が悪くなった場合においても上記遮蔽板31a、31b、31cの作用により高周波信号の漏洩を確実に防止することができる。
【0032】
(第2実施形態)
図2は本発明の第2実施形態に係るシールド方法を用いたシールドケース11Bの構成を示し、(a)は平面図、(b)はA−A断面図、(c)はB−B断面図である。
【0033】
この第2実施形態に係るシールド方法は、上側シールドケース13のAブロック16aとBブロック16bの一方、例えばBブロック16bに対応するプリント基板21上に、隔壁15の側方に近接して位置するようにシールド部材として複数例えば3個の接地電位のEMIガスケット35a、35b、35cを設けたものである。
【0034】
すなわち、上側シールドケース13とプリント基板21の印刷導体22aと接触する開口端面に対し、隣接するように機械実装可能なEMIガスケット35a、35b、35cを設けてシールド効果を高めたものである。この場合、EMIガスケット35a、35b、35cの間隔dは、第1実施形態における遮蔽板31a、31b、31cと同様にλ/4より十分狭く設定する。また、EMIガスケット35a、35b、35cは、プリント基板21の印刷導体22aに接続して設けられ、接地電位に保たれる。
【0035】
その他の構成は第1実施形態と同様であるので、同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0036】
上記第2実施形態によれば、上側シールドケース13の隔壁15に隣接して機械実装可能なEMIガスケット35a、35b、35cをシールド部材として設けているので、構造が非常に簡単であり、設計が容易で安価に製作でき、且つ第1実施形態と同様のシールド効果が得られ、シールドケース11BのAブロック16aとBブロック16bとの間の高周波信号の漏洩を確実に防止することができる。また、EMIガスケット35a、35b、35cは、プリント基板21に機械実装が可能であり、装置の小型化を促進することができる。
【0037】
(第3実施形態)
図3は本発明の第3実施形態に係るシールド方法を用いたシールドケース11Cの構成を示し、(a)は平面図、(b)はA−A断面図、(c)はB−B断面図である。
【0038】
この第3実施形態に係るシールド方法は、上記第2実施形態で示したように上側シールドケース13のBブロック16bに対応するプリント基板21上に、隔壁15の側方に近接して位置するように接地電位のEMIガスケット35a、35b、35cを設けると共に、Aブロック16aに対応するプリント基板21上にも、隔壁15の側方に近接して位置するように複数例えば4個のEMIガスケット36a、36b、36c、36dを設けたものである。この場合、EMIガスケット36a、36b、36c、36dは、プリント基板21の印刷導体22aに接続して設けられ、接地電位に保たれる。
【0039】
すなわち、第3実施形態では、上側シールドケース13とプリント基板21の印刷導体22aと接触する開口端面に対して、隔壁15の両側に隣接するように機械実装可能な接地電位のEMIガスケット35a、35b、35c及びEMIガスケット36a、36b、36c、36dを設けている。この場合、Aブロック16a側のEMIガスケット36a、36b、36c、36dは、Bブロック16b側のEMIガスケット35a、35b、35cと交互に位置するように千鳥状に実装する。また、Aブロック16a側のEMIガスケット36a、36b、36c、36dの間隔は、Bブロック16bのEMIガスケット35a、35b、35cと同様にλ/4より十分狭く設定する。
【0040】
上記のように上側シールドケース13の隔壁15の両側に隣接するように機械実装可能な接地電位のEMIガスケット35a、35b、35c及びEMIガスケット36a、36b、36c、36dを設けることにより、Aブロック16a及びBブロック16b間における高周波信号の漏洩をより効果的に防止することができる。また、EMIガスケット35a、35b、35cとEMIガスケット36a、36b、36c、36dを千鳥状に実装することにより、隔壁15とプリント基板21の印刷導体22aとの間の隙間から生じる直進方向の見通し高周波信号の漏洩をより確実に阻止することができる。
【0041】
また、上側シールドケース13の隔壁15の両側に接地電位のEMIガスケット35a、35b、35c及びEMIガスケット36a、36b、36c、36dを設けることにより、Aブロック16a及びBブロック16b内の反射による高周波信号の漏洩も第2実施形態より減少させることができ、シールド効果を更に改善することができる。
【0042】
なお、上記第2実施形態及び第3実施形態では、上側シールドケース13の隔壁15に隣接して接地電位のEMIガスケットを設けた場合について示したが、その他、例えばシールドケース外部への高周波信号の漏洩を防止するために上側シールドケース13の外周内壁に沿って接地電位のEMIガスケットを実装しても良い。
【0043】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1実施形態に係るシールド方法を用いたシールドケースの構成を示し、(a)は平面図、(b)はA−A断面図、(c)はB−B断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係るシールド方法を用いたシールドケースの構成を示し、(a)は平面図、(b)はA−A断面図、(c)はB−B断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係るシールド方法を用いたシールドケースの構成を示し、(a)は平面図、(b)はA−A断面図、(c)はB−B断面図である。
【図4】従来のシールドケースの構成を示し、(a)は平面図、(b)はA−A断面図である
【図5】図4における上側シールドケースを底面側から見た斜視図である。
【図6】従来のシールド効果を改善したシールドケースの構成を示し、(a)は平面図、(b)はA−A断面図、(c)はB−B断面図である。
【符号の説明】
【0045】
11A、11B、11C…シールドケース、12…下側シールドケース、13…上側シールドケース、14…ねじ、15…隔壁、16a…Aブロック、16b…Bブロック、21…プリント基板、22a、22b…印刷導体、25a、25b、25c…EMIガスケット、31a、31b、31c…遮蔽板、32a、32b、32c…貫通穴、35a、35b、35c…EMIガスケット、36a、36b、36c、36d…EMIガスケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波回路部及び接地電位の印刷導体が設けられたプリント基板を下側シールドケース及び上側シールドケース間に収納してシールドするシールド方法において、
前記プリント基板に設けられた接地電位の印刷導体に前記シールドケースの開口端面を接触させて前記高周波回路部を電磁的に遮蔽すると共に、前記シールドケースの開口端面と前記接地電位の印刷導体との接触部に隣接して接地電位のシールド用部材を配設してシールドすることを特徴とするシールド方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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