シールド機の推進工法及びシールド機
【課題】 道路等をアンダーパスするトンネルを構築する場合に、地盤変状が生じることなく掘進を行うことができるシールド機及びシールド機の推進工法を提供する。
【解決手段】 複数の主シールド6及び複数の大径シールド26を組み合せて、下段には上段より径の大きい主シールド26を配置し、上段に配置された主シールド6を最初に駆動させる。そして、上段の3つの主シールド6、6、6を突出させた状態で、下段の2つの主シールド26、26のカッターヘッド28を回転駆動させながら、下段の2つの大径主シールド26、26を前胴体3内に格納した状態でシールドジャッキを伸張させることにより前胴体3及び後胴体16からなるシールド機20本体を前進させ、大径主シールド26、26の前方に位置する地盤をカッターヘッド28のカッター29により掘削するとともに、上段の3つの主シールド6、6、6を前胴体3内に格納する。
【解決手段】 複数の主シールド6及び複数の大径シールド26を組み合せて、下段には上段より径の大きい主シールド26を配置し、上段に配置された主シールド6を最初に駆動させる。そして、上段の3つの主シールド6、6、6を突出させた状態で、下段の2つの主シールド26、26のカッターヘッド28を回転駆動させながら、下段の2つの大径主シールド26、26を前胴体3内に格納した状態でシールドジャッキを伸張させることにより前胴体3及び後胴体16からなるシールド機20本体を前進させ、大径主シールド26、26の前方に位置する地盤をカッターヘッド28のカッター29により掘削するとともに、上段の3つの主シールド6、6、6を前胴体3内に格納する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド機及びシールド機の推進工法に関し、特に、道路等をアンダーパスするトンネルを構築するのに有効なシールド機及びシールド機の推進工法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、道路をアンダーパスするトンネルを構築する場合においては、(1)全線を開削工法にて行う、(2)道路の交差点部を推進工法にて行い、アプローチ部を開削工法で行う、のいずれかが主に用いられる。(1)の全線を開削工法にて施工する場合は、地中を掘削する範囲の両側に連続した土留め壁を造成し、開削によって生じる地盤変状を防止する。そして、掘削した部分にトンネルを構築し、元の地盤の高さまで埋め戻しを行う。また、交差点部においては、路面覆工を行い路面交通を可能にし、トンネルを構築した後に埋め戻しを行い道路を復旧するものである。(2)の道路の交差点部を推進工法の一つであるフロンテジャッキング工法にて施工し、アプローチ部を開削工法にて施工する場合は、まず、交差点部を挟んだ両側に立坑を設け、交差点の下方に、これを横断するように発進立坑から到達立坑へプレキャストされた複数のコンクリート函体を引き込みながら設置し、この函体からなるトンネルを構築し、次に、上述した開削工法にて施工する場合と同様に、トンネルと地上の道路とを接続するためのアプローチ部を開削して構築するものである。
【0003】
推進工法は、道路等を開削しないために交通を遮断する必要がないので、周辺の住宅環境に影響を与えることがないものである(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−120622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、アンダーパスの交差点直下に対応する部分は、土被りを3.5m程度に設定することが多いため、例えば、フロンテジャッキング工法等の推進工法にて一度に大断面を掘削した場合に、地山の状態によっては地盤変状が発生することがある。このため、交差点を一時占有して、地盤改良等の地盤変状の対策工を実施しなければならず、その作業に非常に手間がかかるため、工期が長くなり、工事費が高くついてしまう。
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、道路等をアンダーパスするトンネルを構築する場合に、交差点直下に対応する低土被りの部分を掘進する場合であっても、特別な対策工を実施することなく地盤変状を阻止することができ、これにより工期を短縮することができるとともに、工事費を削減することができるシールド機及びシールド機の推進工法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するために、以下のような手段を採用している。
すなわち、請求項1に係るシールド機の推進工法の発明は、シールド機本体内に、互いに独立して駆動可能な複数の主シールドが上下複数段に配置され、少なくとも最上段には複数の主シールドが配置されたシールド機を用いてトンネルを掘削する推進工法において、前記最上段の主シールドを先に駆動させ、次にその下段に配置された主シールドを駆動させることによりトンネルを掘削することを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のシールド機の推進工法において、前記シールド機本体を前記下段に配置された主シールドと一体に駆動させることによりトンネルを掘削することを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載のシールド機の推進工法において、前記下段に配置された主シールドの径は、前記最上段に配置された主シールドの径よりも大きいことを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項1から3のいずれかに記載のシールド機の推進工法において、前記上段に配置された複数の主シールドのうちの外側に位置する主シールドを先に駆動させ、次にその内側に位置する主シールドを駆動させることを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項1から4のいずれかに記載のシールド機の推進工法において、前記複数の主シールドのうちの両側に配置された主シールドの外側にそれぞれ側部シールドを独立して駆動可能に設け、トンネルへのアプローチ部の掘削の際に、前記側部シールドを前記複数の主シールドに先行させて駆動させることを特徴とする。
【0008】
請求項6に係るシールド機の発明は、シールド機本体内に、互いに独立して駆動可能な複数の主シールドが上下複数段かつ少なくとも最上段には複数配置されたシールド機であって、前記最上段の下段に配置される主シールドは、シールド機本体と一体に駆動可能に構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシールド機及びシールド機の推進工法によれば、互いに独立して駆動可能な複数の主シールドを上下複数段かつ少なくとも最上段には複数配置したシールド機を用いて掘削断面を分割して複数の小断面として、断面ごとに各主シールドにて掘削するために、掘進による土被り部への影響を防止することができる。また、複数の主シールドのうち、最上段に配置された主シールドを最初に駆動させ、この主シールドにて土被り部を支持し、次に、最上段の下段に配置された主シールドを駆動させるために、下段に配置された主シールドの掘進による土被り部への影響を防止することができる。これらの結果より、掘削対象箇所を大断面で掘削する従来の、例えば、フロンテジャッキング工法等の推進工法に比べて、低土被りの地盤を掘削する場合であっても、地盤変状を防止することができる。従って、交差点を一時占有して低土被りの部分に地盤改良等の地盤変状の対策工を実施する必要はなく、工期を短縮することができるとともに、工事費を削減することができる。そして、交通を遮断する必要がないので、周辺の生活環境に影響を与えることもない。
【0010】
また、各主シールドを個別に駆動させて小断面ごとに掘削するために、カッターヘッド及びスライドジャッキを駆動させるための駆動源が小さく、安価なものとすることができる。また、小さな駆動源を使用するために、掘削時の騒音、振動を小さく抑えることができる。この結果より、周辺の生活環境に与える影響を少なくすることができる。
【0011】
そして、径の異なる主シールドを組み合せて、下段には上段より径の大きい主シールドを配置し、掘削断面の上部は上述した小断面として、下部は小断面より大きい断面として掘削するために、掘削断面すべてを小断面として掘削するよりも短時間で掘削することができる。従って、掘削の日進量を増加することができる。
【0012】
また、シールド機本体を下段に配置された主シールドと一体に駆動させることにより、トンネル下部の掘削とシールド機本体の前進とを同時に行うことができるために、施工時間を短くすることができる。従って、掘削の日進量を増加することができる。さらに、下段の主シールドは推進機構を備える必要がないために、シールド機の機構が簡素化され、シールド機に対する設備投資費を安くすることができる。
【0013】
そして、上段の外側の主シールドを内側の主シールドよりも先に駆動させ、掘削対象箇所の壁面を外側の主シールドにて支持するために、掘削対象箇所の壁面の崩落を防止し、シールド機を安定して推進させることができる。
【0014】
また、シールド機本体を下段に配置された主シールドと一体に駆動させる場合においては、上段の外側の主シールド若しくは上段の側部シールド又は下段の側部シールドを先に駆動させ、掘削対象箇所の壁面を上段の外側の主シールド若しくは上段の側部シールド又は下段の側部シールドにて支持するために、掘削対象箇所の壁面の崩壊を防止し、シールド機を安定して推進させることができる。
【0015】
さらに、掘削断面の形状、大きさに応じて、複数の主シールドを縦横に組み合せることができるために、様々な掘削断面に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。本発明に係るシールド機及びシールド機の推進工法は、道路等をアンダーパスするトンネルを構築するのに有効なものであって、特に、交差点をアンダーパスする土被りに対応する部分を掘進するのに有効なシールド機及びシールド機の推進工法である。
【0017】
図1は、本発明の第一実施形態に係るシールド機の斜視図である。図1に示すように、シールド機1は地盤を掘削するためのカッター9、13を備えた機械本体部2と、機械本体部2を推進させるための動力部15と、機械本体部2と動力部15とを連結する連結手段(図示せず)とから構成されている。
【0018】
機械本体部2は、矩形筒状の前胴体3と、前胴体3内に縦横に所定の組み合せで配列されるとともに、各々が独立して前胴体3から推進可能、かつ各々が独立して駆動可能な複数の矩形状の主シールド6と、幅方向の両端の主シールド6と前胴体3との間に設けられるとともに、各々が独立して前胴体3から推進可能、かつ各々が独立して駆動可能な複数の主シールド6よりも小幅にして縦長の矩形状の側部シールド10とを備えている。
【0019】
前胴体3の内部は、各主シールド6及び各側部シールド10がスライド自在に設けられ、前胴体3からその前方に向かって推進可能に構成されている。各主シールド6及び各側部シールド10は、独立して前胴体3から推進可能に構成されている。なお、各主シールド6間、及び主シールド6と側部シールド10との間には、前胴体3と一体の隔壁を設けることもできる。
【0020】
主シールド6の配列は、構築するトンネルの掘削断面の形状、大きさ等に応じて適宜の組み合せとすることができ、本実施形態においては、縦(鉛直)方向×横(水平)方向=2(段)×3(列)としている。
【0021】
各主シールド6は、前胴体3内に前後移動自在に設けられる矩形状のシールド本体7と、シールド本体7と前胴体3との間に設けられて、シールド本体7を進退させるスライドジャッキ(図示せず)と、シールド本体7の前面側に回転可能に設けられるとともに、先端部にカッター9を有するカッターヘッド8と、シールド本体7に設けられる駆動源(図示せず)と、駆動源の駆動力をカッターヘッド8に伝達する動力伝達機構(図示せず)とを備えており、各主シールド6は、独立して駆動可能に構成されている。
【0022】
各側部シールド10は、前胴体3内に前後移動自在に設けられる矩形状のシールド本体11と、シールド本体11と前胴体3との間に設けられて、シールド本体11を進退させるスライドジャッキ(図示せず)と、シールド本体11の前面側に回転可能に設けられるとともに、先端部にカッター13を有するカッターヘッド12と、シールド本体11に設けられる駆動源(図示せず)と、駆動源の駆動力をカッターヘッド12に伝達する動力伝達機構(図示せず)とを備えており、各側部シールド10は、独立して駆動可能に構成されている。
【0023】
各主シールド6のシールド本体7及び各側部シールド10のシールド本体11には、掘削した土砂を排出するための排出装置(図示せず)がそれぞれ接続されている。
【0024】
動力部15は、機械本体部2の前胴体3の後部に連結手段(図示せず)を介して連結される矩形筒状の後胴体16と、後胴体16内の4隅に設けられ、前胴体3と後胴体16とからなるシールド機全体1を推進させる複数のシールドジャッキ(図示せず)とを備えている。
【0025】
連結手段は、前胴体3と後胴体16とを、上下方向及び左右方向に相対的に屈曲自在に連結する連結継手(図示せず)と、前胴体3と後胴体16との間に設けられて、前胴体3の後胴体16に対する上下方向及び左右方向への相対的な屈曲角度を所定の値に設定する中折れジャッキ(図示せず)とから構成されている。
【0026】
後胴体16の内側にはセグメント組立装置(図示せず)が設けられ、このセグメント組立装置により、掘削した部分の内面に順次セグメント(図示せず)が組み立てられ、セグメントによる内壁が構築される。
【0027】
以下に、交差点の下方をアンダーパスする際のシールド機1の推進工法について掘削手順に従って説明する。
図2〜図10は、本発明の第一実施形態に係るシールド機1の推進方法を示す図である。
【0028】
上記のように構成した本実施形態によるシールド機1を用いてトンネルを構築するには、まず、シールド機1を掘削対象箇所に設置し、図2に示すように、上段の左外側に位置する主シールド6のカッターヘッド8を回転駆動させ、スライドジャッキを伸張させることにより主シールド6を前胴体3から推進させ、その主シールド6の前方に位置する地盤をカッターヘッド8のカッター9により掘削する。
【0029】
次に、図3に示すように、上段の右外側に位置する主シールド6のカッターヘッド8を回転駆動させ、スライドジャッキを伸張させることによりその主シールド6を前胴体3から推進させ、その主シールド6の前方に位置する地盤をカッターヘッド8のカッター9により掘削する。
【0030】
次に、図4に示すように、上段の真中に位置する主シールド6のカッターヘッド8を回転駆動させ、スライドジャッキを伸張させることによりその主シールド6を前胴体3から推進させ、その主シールド6の前方に位置する地盤をカッターヘッド8のカッター9により掘削する。
【0031】
次に、図5に示すように、上段の3つの主シールド6、6、6を突出させた状態で、下段の3つの主シールド6、6、6のカッターヘッド8、8、8を回転駆動させ、それらのスライドジャッキを伸張させることによりそれらの主シールド6、6、6を前胴体3から推進させ、それらの主シールド6、6、6の前方に位置する地盤を各々のカッターヘッド8のカッター9により掘削する。
この場合、図示はしないが、上段の3つの主シールド6、6、6の駆動順番と同様に、左外側の主シールド6、右外側の主シールド6、真中の主シールド6の順に駆動させ、それらの主シールド6の前方に位置する地盤を掘削しても良い。
このようにして、上段の3つの主シールド6、6、6及び下段の3つの主シールド6、6、6によって掘削対象箇所の第1段階の掘削作業が完了する。
【0032】
次に、図6に示すように、上段の3つの主シールド6、6、6及び下段の3つの主シールド6、6、6を突出させた状態で、シールドジャッキを伸張させることにより前胴体3及び後胴体16を推進させ、上段の3つの主シールド6、6、6及び下段の3つの主シールド6、6、6を前胴体3内に格納する。
【0033】
次に、図7に示すように、上段の左外側に位置する主シールド6のカッターヘッドを回転駆動させ、スライドジャッキを伸張させることによりその主シールド6を前胴体3から推進させ、その主シールド6の前方に位置する地盤をカッターヘッド8のカッター9により掘削する。
【0034】
次に、図8に示すように、上段の右外側に位置する主シールド6のカッターヘッド8を回転駆動させ、スライドジャッキを伸張させることによりその主シールド6を前胴体3から推進させ、その主シールド6の前方に位置する地盤をカッターヘッド8のカッター9により掘削する。
【0035】
次に、図9に示すように、上段の真中に位置する主シールド6のカッターヘッド8を回転駆動させ、スライドジャッキを伸張させることによりその主シールド6を前胴体3から推進させ、その主シールド6の前方に位置する地盤をカッターヘッド8のカッター9により掘削する。
【0036】
次に、図10に示すように、上段の3つの主シールド6、6、6を突出させた状態で、下段の3つの主シールド6、6、6のカッターヘッド8、8、8を回転駆動させ、それらのスライドジャッキを伸張させることによりそれらの主シールド6、6、6を前胴体3から推進させ、それらの主シールド6、6、6の前方に位置する地盤を各々のカッターヘッド8のカッター9により掘削する。
【0037】
この場合、図示はしないが、上段の3つの主シールド6、6、6の駆動順番と同様に、左外側の主シールド6、右外側の主シールド6、真中の主シールド6の順に駆動させ、それらの主シールド6の前方に位置する地盤を掘削しても良い。
このようにして、上段の3つの主シールド6、6、6及び下段の3つの主シールド6、6、6によって掘削対象箇所の第1段階の掘削作業が完了する。
【0038】
次に、上段の3つの主シールド6、6、6及び下段の3つの主シールド6、6、6を突出させた状態で、シールドジャッキを伸張させることにより前胴体3及び後胴体16を推進させ、上段の3つの主シールド6、6、6及び下段の3つの主シールド6、6、6を前胴体3内に格納する。
【0039】
そして、上述したように、上段の各主シールド6により掘進してから、下段の各主シールド6による掘進までの一連の作業を1サイクルとし、このサイクルを複数回繰り返すことにより、掘削対象箇所全体を掘削する。
【0040】
なお、上方が開放されている部分、例えばトンネルへのアプローチ部を掘削する場合には、上段の各主シールド6及び下段の各主シールド6より先に側部シールド10を駆動させて、掘削対象箇所の両側を掘削し、この掘削した部分の内側の部分を主シールド6で掘削する方法にて、両壁面からの崩壊を防止する。
【0041】
上述した本実施形態におけるシールド機1及びシールド機1の推進工法にあっては、複数の主シールド6を縦横に組み合せて、各主シールド6を独立して駆動可能とし、上段の外側の主シールド6、上段の内側の主シールド6、下段の3つの主シールド6の順に駆動させるように構成したために、掘削断面を分割して複数の小断面として、断面ごとに掘削することができる。従って、掘削対象箇所を大断面で掘削する従来の、例えば、フロンテジャッキング工法等の推進工法に比べて、低土被りの地盤を掘削する場合であっても、地盤変状が発生するような虞は全くない。この結果、交差点を一時占有して低土被りの部分に地盤改良等の地盤変状の対策工を実施する必要はなく、工期を短縮することができるとともに、工事費を削減することができる。
【0042】
さらに、上段の外側及び下段の外側の主シールド6を内側の主シールド6よりも先に駆動させ、掘削対象箇所の両壁面の崩壊を外側の主シールド6にて支持するために、掘削対象箇所の壁面の崩落を防止し、シールド機1を安定して推進させることができる。
【0043】
さらに、交通を遮断する必要がないので、周辺の生活環境に影響を与えることもない。また、各主シールド6を個別に推進させて小断面ごとに掘削するために、カッターヘッド及びスライドジャッキを駆動させるための駆動源が小さく、安価なものとすることができる。また、小さな駆動源を使用するために、掘削時の騒音、振動を小さく抑えることができる。この結果、周辺の生活環境に与える影響を少なくすることができる。また、掘削断面の形状、大きさに応じて、複数の主シールド6を縦横に任意の配列で組み合せることができるために、汎用性を高めることができる。
【0044】
図11〜図13に主シールド6の他の組み合せ例を示す。
図11(a)、(b)は、縦×横=2(段)×3(列)の組み合せ、図12(a)、(b)は、縦×横=2(段)×5(列)の組み合せ、図13(a)、(b)は、縦×横=3(段)×3(列)の組み合せである。図11〜図13中、1〜6は、駆動順番を示している。これらの組み合せのシールド機を用いた場合であっても、前述したものと同様の作用効果を奏するものである。
【0045】
次に、本発明における第一実施形態と異なる実施形態を示す。下記に示す説明において、第一実施形態と同様の技術を用いたものと対応する部分には同一の符号を付して、説明を省略する。
【0046】
図14は、本発明の第二実施形態に係るシールド機の正面図である。図14に示すように、シールド機20は地盤を掘削するためのカッター9、13、29を備えた機械本体部2と、動力部15と、連結手段(図示せず)とから構成されている。
【0047】
機械本体部2は、前胴体3と、前胴体3内の上段に配置される主シールド6と、主シールド6よりも大きい径で、各々が独立して駆動可能なカッターヘッド28を有する複数の矩形状の大径主シールド26と、側部シールド10と、幅方向の両端の大径主シールド26と前胴体3との間に設けられるとともに、各々が独立して前胴体3から推進可能、かつ各々が独立して駆動可能な側部シールド10よりも縦長の矩形状の側部シールド30とを備えている。
【0048】
前胴体3の内部は、各主シールド6及び各側部シールド10、30が前後移動自在に設けられ、前胴体3からその前方に向かって推進可能に構成されている。各主シールド6及び各側部シールド10、30は、独立して前胴体3から推進可能に構成されている。なお、各主シールド6間、各大径主シールド26間、主シールド6と側部シールド10との間、大径主シールド26と側部シールド30との間には、前胴体3と一体の隔壁を設けることもできる。
【0049】
本実施形態において、主シールド6と大径主シールド26との配列は、縦(鉛直)方向は、主シールド6を上段、大径主シールド26を下段とする縦2段で、横(水平)方向は、主シールド6を3列、大径主シールド26を2列としている。なお、主シールド6と大径シールド26との配列は、上段に径が小さい主シールド6となるように構成すれば、横方向はトンネルの掘削断面の形状、大きさ等に応じて適宜の組み合せとすることができる。
【0050】
各大径主シールド26は、前胴体3内に設けられる矩形状のシールド本体27と、シールド本体27の前面側に回転可能に設けられるとともに、先端部にカッター29を有するカッターヘッド28と、シールド本体27に設けられる駆動源(図示せず)と、駆動源の駆動力をカッターヘッド28に伝達する動力伝達機構(図示せず)とを備えており、各大径主シールド26は、独立して駆動可能に構成されている。本実施形態において、大径主シールド26は、スライドジャッキを備えていないために前胴体3から推進することはできない。
【0051】
各側部シールド30は、前胴体3内に前後移動自在に設けられる矩形状のシールド本体31と、シールド本体31と前胴体3との間に設けられて、シールド本体31を進退させるスライドジャッキ(図示せず)と、カッターヘッド12と、シールド本体31に設けられる駆動源(図示せず)と、駆動源の駆動力をカッターヘッド12に伝達する動力伝達機構(図示せず)とを備えており、各側部シールド30は、独立して駆動可能に構成されている。
【0052】
各主シールド6のシールド本体7、各大径主シールド26のシールド本体27及び各側部シールド10、30のシールド本体11、31には、掘削した土砂を排出するための排出装置(図示せず)がそれぞれ接続されている。
【0053】
動力部15は、機械本体部2の前胴体3の後部に連結手段(図示せず)を介して連結される矩形筒状の後胴体16と、後胴体16内の内周面部分に、等間隔で環状に設けられてシールド機20全体を推進させる複数のシールドジャッキ(図示せず)とを備えている。
【0054】
以下に、シールド機20にて交差点の下方をアンダーパスする際のシールド機20の推進工法について掘削手順に従って説明する。
【0055】
図15〜図18は、本発明の第二実施形態に係るシールド機20の推進方法を示す図である。
【0056】
上記のように構成したこの実施の形態によるシールド機20を用いてトンネルを構築するには、まず、図15に示すように、シールド機20を掘削対象箇所に設置し、第一実施形態と同様に上段の左外側に位置する主シールド6のカッターヘッド8を回転駆動させ、スライドジャッキを伸張させることによりその主シールド6を前胴体3から推進させ、その主シールド6の前方に位置する地盤をカッターヘッド8のカッター9により掘削する。
【0057】
次に、図16に示すように、第一実施形態と同様に上段の右外側に位置する主シールド6のカッターヘッド8を回転駆動させ、スライドジャッキを伸張させることによりその主シールド6を前胴体3から推進させ、その主シールド6の前方に位置する地盤をカッターヘッド8のカッター9により掘削する。
【0058】
次に、図17に示すように、第一実施形態と同様に上段の真中に位置する主シールド6のカッターヘッド8を回転駆動させ、スライドジャッキを伸張させることによりその主シールド6を前胴体3から推進させ、その主シールド6の前方に位置する地盤をカッターヘッド8のカッター9により掘削する。
【0059】
次に、図18に示すように、上段の3つの主シールド6、6、6を突出させた状態で、下段の2つの主シールド26、26のカッターヘッド28を回転駆動させながら、シールドジャッキを伸張させることにより前胴体3及び後胴体16からなるシールド機20本体を前進させ、前胴体3内に格納された下段の大径主シールド26、26の前方に位置する地盤をカッターヘッド28のカッター29により掘削しながら、上段の3つの主シールド6、6、6を前胴体3内に格納する。
【0060】
そして、上述したように、上段の各主シールド6により掘進してから、下段の大径主シールド26のカッターヘッド28を回転駆動させ、シールド機20本体を推進させて大径主シールド26により地盤を掘削するまでの一連の作業を1サイクルとし、このサイクルを複数回繰り返すことにより、掘削対象箇所全体を掘削する。
【0061】
なお、上方が開放されている部分、例えばトンネルへのアプローチ部を掘削する場合には、まず側部シールド10、30を駆動させて掘削対象箇所の両側を掘削し、次にこの掘削した部分の内方を上段の主シールド6で掘削し、そして下段の大径主シールド26のカッターヘッド28を回転駆動させ、シールド機20本体を推進させて大径主シールド26により地盤を掘削する方法にて両壁面の崩壊を防止する。ただし、この場合、側部シールド10、30をシールド機20本体に対して常時突出させた状態のまま側部シールド10、30を本体ごと推進させることとしても良い。
【0062】
なお、本実施形態においては、側部シールド30は前胴体3に対して推進可能な構成としたが、これに限定されるものではなく、推進しない構成としても良い。
【0063】
上記のように構成した本実施形態におけるシールド機20及びシールド機20の推進工法にあっては、複数の主シールド6及び複数の大径シールド26を組み合せて、下段には上段より径の大きい主シールド26を配置し、掘削断面を分割して、掘削断面の上部は小断面、下部は小断面より大きい断面として掘削するために、掘削断面すべてを小断面として掘削するよりも短時間で掘削することができる。また、各主シールド6が独立して駆動して、掘削断面を分割して複数の小断面として断面ごとに掘削するために、掘進時における土被り部への影響を防止することができる。さらに、上段に配置された主シールド6を最初に駆動させるために、下段の大径主シールド26のカッターヘッド28を回転駆動させ、シールド機20本体を推進させて大径主シールド26により地盤を掘削する際の土被り部への掘削の影響を防止することができる。これらの結果より、掘削対象箇所を大断面で掘削する従来の、例えば、フロンテジャッキング工法等の推進工法に比べて、低土被りの地盤を掘削する場合であっても、地盤変状を防止することができる。従って、交差点を一時占有して低土被りの部分に地盤改良等の地盤変状の対策工を実施する必要はなく、工期を短縮することができるとともに、工事費を削減することができる。そして、交通を遮断する必要がないので、周辺の生活環境に影響を与えることもない。
【0064】
また、各主シールド6を個別に推進させて小断面ごとに掘削するために、カッターヘッド8及びスライドジャッキを駆動させるための駆動源が小さく、安価なものとすることができる。また、小さな駆動源を使用するために、掘削時の騒音、振動を小さく抑えることができる。この結果、周辺の生活環境に与える影響を少なくすることができる。
【0065】
そして、下段の大径主シールド26のカッターヘッド28を回転駆動させ、シールド機20本体を推進させて大径主シールド26により地盤を掘削することにより、トンネルの下部部分の掘削とシールド機20本体の前進とを同時に行うことができるために、1サイクルの施工時間を短くすることができる。従って、掘削の日進量を増加することができる。また、下段の大径主シールド26は推進機構を備えていないために、シールド機20の機構が簡素化され、シールド機20に対する設備投資費を安くすることができる。
【0066】
さらに、上段の外側の主シールド6若しくは上段の側部シールド10又は下段の側部シールド30を先に駆動させ、掘削対象箇所の両壁面の崩壊を上段の外側の主シールド6若しくは上段の側部シールド10又は下段の側部シールド30にて支持するために、掘削対象箇所の壁面の崩壊を防止し、シールド機20を安定して推進させることができる。
【0067】
なお、本実施形態において、大径主シールド26はスライドジャッキを備えていない構成について説明したが、これに限定されるものではなく、スライドジャッキを備えている構成でも良い。そして、上述したスライドジャッキを備えていない構成からなるシールド機1の推進方法と同様に、シールド機本体を下段に配置された大径主シールド26と一体に駆動させることにより、トンネル下部の掘削とシールド機本体の前進とを同時に行う。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第一実施形態に係るシールド機の斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係るシールド機の上段の左外側の主シールドの掘進状態を示した説明図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係るシールド機の上段の右外側の主シールドの掘進状態を示した説明図である。
【図4】本発明の第一実施形態に係るシールド機の上段の真中の主シールドの掘進状態を示した説明図である。
【図5】本発明の第一実施形態に係るシールド機の下段の3つの主シールドの掘進状態を示した説明図である。
【図6】本発明の第一実施形態に係るシールド機の前胴体及び後胴体を前進させた状態を示した説明図である。
【図7】本発明の第一実施形態に係るシールド機の上段の左外側の主シールドの掘進状態を示した説明図である。
【図8】本発明の第一実施形態に係るシールド機の上段の右外側の主シールドの掘進状態を示した説明図である。
【図9】本発明の第一実施形態に係るシールド機の上段の真中の主シールドの掘進状態を示した説明図である。
【図10】本発明の第一実施形態に係るシールド機の下段の3つの主シールドの掘進状態を示した説明図である。
【図11】本発明の第一実施形態に係るシールド機の主シールドの他の組み合せの例を示した説明図である。
【図12】本発明の第一実施形態に係るシールド機の主シールドの他の組み合せの例を示した説明図である。
【図13】本発明の第一実施形態に係るシールド機の主シールドの他の組み合せの例を示した説明図である。
【図14】本発明の第二実施形態に係るシールド機の正面図である。
【図15】本発明の第二実施形態に係るシールド機の上段の左外側の主シールドの掘進状態を示した説明図である。
【図16】本発明の第二実施形態に係るシールド機の上段の右外側の主シールドの掘進状態を示した説明図である。
【図17】本発明の第二実施形態に係るシールド機の上段の真中の主シールドの掘進状態を示した説明図である。
【図18】本発明の第二実施形態に係るシールド機の前胴体及び後胴体を前進させた状態を示した説明図である。
【符号の説明】
【0069】
1 シールド機 2 機械本体部
3 前胴体 6 主シールド
7 シールド本体 8 カッターヘッド
9 カッター 10 側部シールド
11 シールド本体 12 カッターヘッド
13 カッター 15 動力部
16 後胴体 20 シールド機
26 大径主シールド 27 シールド本体
28 カッターヘッド 29 カッター
30 側部シールド 31 シールド本体
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド機及びシールド機の推進工法に関し、特に、道路等をアンダーパスするトンネルを構築するのに有効なシールド機及びシールド機の推進工法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、道路をアンダーパスするトンネルを構築する場合においては、(1)全線を開削工法にて行う、(2)道路の交差点部を推進工法にて行い、アプローチ部を開削工法で行う、のいずれかが主に用いられる。(1)の全線を開削工法にて施工する場合は、地中を掘削する範囲の両側に連続した土留め壁を造成し、開削によって生じる地盤変状を防止する。そして、掘削した部分にトンネルを構築し、元の地盤の高さまで埋め戻しを行う。また、交差点部においては、路面覆工を行い路面交通を可能にし、トンネルを構築した後に埋め戻しを行い道路を復旧するものである。(2)の道路の交差点部を推進工法の一つであるフロンテジャッキング工法にて施工し、アプローチ部を開削工法にて施工する場合は、まず、交差点部を挟んだ両側に立坑を設け、交差点の下方に、これを横断するように発進立坑から到達立坑へプレキャストされた複数のコンクリート函体を引き込みながら設置し、この函体からなるトンネルを構築し、次に、上述した開削工法にて施工する場合と同様に、トンネルと地上の道路とを接続するためのアプローチ部を開削して構築するものである。
【0003】
推進工法は、道路等を開削しないために交通を遮断する必要がないので、周辺の住宅環境に影響を与えることがないものである(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−120622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、アンダーパスの交差点直下に対応する部分は、土被りを3.5m程度に設定することが多いため、例えば、フロンテジャッキング工法等の推進工法にて一度に大断面を掘削した場合に、地山の状態によっては地盤変状が発生することがある。このため、交差点を一時占有して、地盤改良等の地盤変状の対策工を実施しなければならず、その作業に非常に手間がかかるため、工期が長くなり、工事費が高くついてしまう。
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、道路等をアンダーパスするトンネルを構築する場合に、交差点直下に対応する低土被りの部分を掘進する場合であっても、特別な対策工を実施することなく地盤変状を阻止することができ、これにより工期を短縮することができるとともに、工事費を削減することができるシールド機及びシールド機の推進工法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するために、以下のような手段を採用している。
すなわち、請求項1に係るシールド機の推進工法の発明は、シールド機本体内に、互いに独立して駆動可能な複数の主シールドが上下複数段に配置され、少なくとも最上段には複数の主シールドが配置されたシールド機を用いてトンネルを掘削する推進工法において、前記最上段の主シールドを先に駆動させ、次にその下段に配置された主シールドを駆動させることによりトンネルを掘削することを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のシールド機の推進工法において、前記シールド機本体を前記下段に配置された主シールドと一体に駆動させることによりトンネルを掘削することを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載のシールド機の推進工法において、前記下段に配置された主シールドの径は、前記最上段に配置された主シールドの径よりも大きいことを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項1から3のいずれかに記載のシールド機の推進工法において、前記上段に配置された複数の主シールドのうちの外側に位置する主シールドを先に駆動させ、次にその内側に位置する主シールドを駆動させることを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項1から4のいずれかに記載のシールド機の推進工法において、前記複数の主シールドのうちの両側に配置された主シールドの外側にそれぞれ側部シールドを独立して駆動可能に設け、トンネルへのアプローチ部の掘削の際に、前記側部シールドを前記複数の主シールドに先行させて駆動させることを特徴とする。
【0008】
請求項6に係るシールド機の発明は、シールド機本体内に、互いに独立して駆動可能な複数の主シールドが上下複数段かつ少なくとも最上段には複数配置されたシールド機であって、前記最上段の下段に配置される主シールドは、シールド機本体と一体に駆動可能に構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシールド機及びシールド機の推進工法によれば、互いに独立して駆動可能な複数の主シールドを上下複数段かつ少なくとも最上段には複数配置したシールド機を用いて掘削断面を分割して複数の小断面として、断面ごとに各主シールドにて掘削するために、掘進による土被り部への影響を防止することができる。また、複数の主シールドのうち、最上段に配置された主シールドを最初に駆動させ、この主シールドにて土被り部を支持し、次に、最上段の下段に配置された主シールドを駆動させるために、下段に配置された主シールドの掘進による土被り部への影響を防止することができる。これらの結果より、掘削対象箇所を大断面で掘削する従来の、例えば、フロンテジャッキング工法等の推進工法に比べて、低土被りの地盤を掘削する場合であっても、地盤変状を防止することができる。従って、交差点を一時占有して低土被りの部分に地盤改良等の地盤変状の対策工を実施する必要はなく、工期を短縮することができるとともに、工事費を削減することができる。そして、交通を遮断する必要がないので、周辺の生活環境に影響を与えることもない。
【0010】
また、各主シールドを個別に駆動させて小断面ごとに掘削するために、カッターヘッド及びスライドジャッキを駆動させるための駆動源が小さく、安価なものとすることができる。また、小さな駆動源を使用するために、掘削時の騒音、振動を小さく抑えることができる。この結果より、周辺の生活環境に与える影響を少なくすることができる。
【0011】
そして、径の異なる主シールドを組み合せて、下段には上段より径の大きい主シールドを配置し、掘削断面の上部は上述した小断面として、下部は小断面より大きい断面として掘削するために、掘削断面すべてを小断面として掘削するよりも短時間で掘削することができる。従って、掘削の日進量を増加することができる。
【0012】
また、シールド機本体を下段に配置された主シールドと一体に駆動させることにより、トンネル下部の掘削とシールド機本体の前進とを同時に行うことができるために、施工時間を短くすることができる。従って、掘削の日進量を増加することができる。さらに、下段の主シールドは推進機構を備える必要がないために、シールド機の機構が簡素化され、シールド機に対する設備投資費を安くすることができる。
【0013】
そして、上段の外側の主シールドを内側の主シールドよりも先に駆動させ、掘削対象箇所の壁面を外側の主シールドにて支持するために、掘削対象箇所の壁面の崩落を防止し、シールド機を安定して推進させることができる。
【0014】
また、シールド機本体を下段に配置された主シールドと一体に駆動させる場合においては、上段の外側の主シールド若しくは上段の側部シールド又は下段の側部シールドを先に駆動させ、掘削対象箇所の壁面を上段の外側の主シールド若しくは上段の側部シールド又は下段の側部シールドにて支持するために、掘削対象箇所の壁面の崩壊を防止し、シールド機を安定して推進させることができる。
【0015】
さらに、掘削断面の形状、大きさに応じて、複数の主シールドを縦横に組み合せることができるために、様々な掘削断面に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。本発明に係るシールド機及びシールド機の推進工法は、道路等をアンダーパスするトンネルを構築するのに有効なものであって、特に、交差点をアンダーパスする土被りに対応する部分を掘進するのに有効なシールド機及びシールド機の推進工法である。
【0017】
図1は、本発明の第一実施形態に係るシールド機の斜視図である。図1に示すように、シールド機1は地盤を掘削するためのカッター9、13を備えた機械本体部2と、機械本体部2を推進させるための動力部15と、機械本体部2と動力部15とを連結する連結手段(図示せず)とから構成されている。
【0018】
機械本体部2は、矩形筒状の前胴体3と、前胴体3内に縦横に所定の組み合せで配列されるとともに、各々が独立して前胴体3から推進可能、かつ各々が独立して駆動可能な複数の矩形状の主シールド6と、幅方向の両端の主シールド6と前胴体3との間に設けられるとともに、各々が独立して前胴体3から推進可能、かつ各々が独立して駆動可能な複数の主シールド6よりも小幅にして縦長の矩形状の側部シールド10とを備えている。
【0019】
前胴体3の内部は、各主シールド6及び各側部シールド10がスライド自在に設けられ、前胴体3からその前方に向かって推進可能に構成されている。各主シールド6及び各側部シールド10は、独立して前胴体3から推進可能に構成されている。なお、各主シールド6間、及び主シールド6と側部シールド10との間には、前胴体3と一体の隔壁を設けることもできる。
【0020】
主シールド6の配列は、構築するトンネルの掘削断面の形状、大きさ等に応じて適宜の組み合せとすることができ、本実施形態においては、縦(鉛直)方向×横(水平)方向=2(段)×3(列)としている。
【0021】
各主シールド6は、前胴体3内に前後移動自在に設けられる矩形状のシールド本体7と、シールド本体7と前胴体3との間に設けられて、シールド本体7を進退させるスライドジャッキ(図示せず)と、シールド本体7の前面側に回転可能に設けられるとともに、先端部にカッター9を有するカッターヘッド8と、シールド本体7に設けられる駆動源(図示せず)と、駆動源の駆動力をカッターヘッド8に伝達する動力伝達機構(図示せず)とを備えており、各主シールド6は、独立して駆動可能に構成されている。
【0022】
各側部シールド10は、前胴体3内に前後移動自在に設けられる矩形状のシールド本体11と、シールド本体11と前胴体3との間に設けられて、シールド本体11を進退させるスライドジャッキ(図示せず)と、シールド本体11の前面側に回転可能に設けられるとともに、先端部にカッター13を有するカッターヘッド12と、シールド本体11に設けられる駆動源(図示せず)と、駆動源の駆動力をカッターヘッド12に伝達する動力伝達機構(図示せず)とを備えており、各側部シールド10は、独立して駆動可能に構成されている。
【0023】
各主シールド6のシールド本体7及び各側部シールド10のシールド本体11には、掘削した土砂を排出するための排出装置(図示せず)がそれぞれ接続されている。
【0024】
動力部15は、機械本体部2の前胴体3の後部に連結手段(図示せず)を介して連結される矩形筒状の後胴体16と、後胴体16内の4隅に設けられ、前胴体3と後胴体16とからなるシールド機全体1を推進させる複数のシールドジャッキ(図示せず)とを備えている。
【0025】
連結手段は、前胴体3と後胴体16とを、上下方向及び左右方向に相対的に屈曲自在に連結する連結継手(図示せず)と、前胴体3と後胴体16との間に設けられて、前胴体3の後胴体16に対する上下方向及び左右方向への相対的な屈曲角度を所定の値に設定する中折れジャッキ(図示せず)とから構成されている。
【0026】
後胴体16の内側にはセグメント組立装置(図示せず)が設けられ、このセグメント組立装置により、掘削した部分の内面に順次セグメント(図示せず)が組み立てられ、セグメントによる内壁が構築される。
【0027】
以下に、交差点の下方をアンダーパスする際のシールド機1の推進工法について掘削手順に従って説明する。
図2〜図10は、本発明の第一実施形態に係るシールド機1の推進方法を示す図である。
【0028】
上記のように構成した本実施形態によるシールド機1を用いてトンネルを構築するには、まず、シールド機1を掘削対象箇所に設置し、図2に示すように、上段の左外側に位置する主シールド6のカッターヘッド8を回転駆動させ、スライドジャッキを伸張させることにより主シールド6を前胴体3から推進させ、その主シールド6の前方に位置する地盤をカッターヘッド8のカッター9により掘削する。
【0029】
次に、図3に示すように、上段の右外側に位置する主シールド6のカッターヘッド8を回転駆動させ、スライドジャッキを伸張させることによりその主シールド6を前胴体3から推進させ、その主シールド6の前方に位置する地盤をカッターヘッド8のカッター9により掘削する。
【0030】
次に、図4に示すように、上段の真中に位置する主シールド6のカッターヘッド8を回転駆動させ、スライドジャッキを伸張させることによりその主シールド6を前胴体3から推進させ、その主シールド6の前方に位置する地盤をカッターヘッド8のカッター9により掘削する。
【0031】
次に、図5に示すように、上段の3つの主シールド6、6、6を突出させた状態で、下段の3つの主シールド6、6、6のカッターヘッド8、8、8を回転駆動させ、それらのスライドジャッキを伸張させることによりそれらの主シールド6、6、6を前胴体3から推進させ、それらの主シールド6、6、6の前方に位置する地盤を各々のカッターヘッド8のカッター9により掘削する。
この場合、図示はしないが、上段の3つの主シールド6、6、6の駆動順番と同様に、左外側の主シールド6、右外側の主シールド6、真中の主シールド6の順に駆動させ、それらの主シールド6の前方に位置する地盤を掘削しても良い。
このようにして、上段の3つの主シールド6、6、6及び下段の3つの主シールド6、6、6によって掘削対象箇所の第1段階の掘削作業が完了する。
【0032】
次に、図6に示すように、上段の3つの主シールド6、6、6及び下段の3つの主シールド6、6、6を突出させた状態で、シールドジャッキを伸張させることにより前胴体3及び後胴体16を推進させ、上段の3つの主シールド6、6、6及び下段の3つの主シールド6、6、6を前胴体3内に格納する。
【0033】
次に、図7に示すように、上段の左外側に位置する主シールド6のカッターヘッドを回転駆動させ、スライドジャッキを伸張させることによりその主シールド6を前胴体3から推進させ、その主シールド6の前方に位置する地盤をカッターヘッド8のカッター9により掘削する。
【0034】
次に、図8に示すように、上段の右外側に位置する主シールド6のカッターヘッド8を回転駆動させ、スライドジャッキを伸張させることによりその主シールド6を前胴体3から推進させ、その主シールド6の前方に位置する地盤をカッターヘッド8のカッター9により掘削する。
【0035】
次に、図9に示すように、上段の真中に位置する主シールド6のカッターヘッド8を回転駆動させ、スライドジャッキを伸張させることによりその主シールド6を前胴体3から推進させ、その主シールド6の前方に位置する地盤をカッターヘッド8のカッター9により掘削する。
【0036】
次に、図10に示すように、上段の3つの主シールド6、6、6を突出させた状態で、下段の3つの主シールド6、6、6のカッターヘッド8、8、8を回転駆動させ、それらのスライドジャッキを伸張させることによりそれらの主シールド6、6、6を前胴体3から推進させ、それらの主シールド6、6、6の前方に位置する地盤を各々のカッターヘッド8のカッター9により掘削する。
【0037】
この場合、図示はしないが、上段の3つの主シールド6、6、6の駆動順番と同様に、左外側の主シールド6、右外側の主シールド6、真中の主シールド6の順に駆動させ、それらの主シールド6の前方に位置する地盤を掘削しても良い。
このようにして、上段の3つの主シールド6、6、6及び下段の3つの主シールド6、6、6によって掘削対象箇所の第1段階の掘削作業が完了する。
【0038】
次に、上段の3つの主シールド6、6、6及び下段の3つの主シールド6、6、6を突出させた状態で、シールドジャッキを伸張させることにより前胴体3及び後胴体16を推進させ、上段の3つの主シールド6、6、6及び下段の3つの主シールド6、6、6を前胴体3内に格納する。
【0039】
そして、上述したように、上段の各主シールド6により掘進してから、下段の各主シールド6による掘進までの一連の作業を1サイクルとし、このサイクルを複数回繰り返すことにより、掘削対象箇所全体を掘削する。
【0040】
なお、上方が開放されている部分、例えばトンネルへのアプローチ部を掘削する場合には、上段の各主シールド6及び下段の各主シールド6より先に側部シールド10を駆動させて、掘削対象箇所の両側を掘削し、この掘削した部分の内側の部分を主シールド6で掘削する方法にて、両壁面からの崩壊を防止する。
【0041】
上述した本実施形態におけるシールド機1及びシールド機1の推進工法にあっては、複数の主シールド6を縦横に組み合せて、各主シールド6を独立して駆動可能とし、上段の外側の主シールド6、上段の内側の主シールド6、下段の3つの主シールド6の順に駆動させるように構成したために、掘削断面を分割して複数の小断面として、断面ごとに掘削することができる。従って、掘削対象箇所を大断面で掘削する従来の、例えば、フロンテジャッキング工法等の推進工法に比べて、低土被りの地盤を掘削する場合であっても、地盤変状が発生するような虞は全くない。この結果、交差点を一時占有して低土被りの部分に地盤改良等の地盤変状の対策工を実施する必要はなく、工期を短縮することができるとともに、工事費を削減することができる。
【0042】
さらに、上段の外側及び下段の外側の主シールド6を内側の主シールド6よりも先に駆動させ、掘削対象箇所の両壁面の崩壊を外側の主シールド6にて支持するために、掘削対象箇所の壁面の崩落を防止し、シールド機1を安定して推進させることができる。
【0043】
さらに、交通を遮断する必要がないので、周辺の生活環境に影響を与えることもない。また、各主シールド6を個別に推進させて小断面ごとに掘削するために、カッターヘッド及びスライドジャッキを駆動させるための駆動源が小さく、安価なものとすることができる。また、小さな駆動源を使用するために、掘削時の騒音、振動を小さく抑えることができる。この結果、周辺の生活環境に与える影響を少なくすることができる。また、掘削断面の形状、大きさに応じて、複数の主シールド6を縦横に任意の配列で組み合せることができるために、汎用性を高めることができる。
【0044】
図11〜図13に主シールド6の他の組み合せ例を示す。
図11(a)、(b)は、縦×横=2(段)×3(列)の組み合せ、図12(a)、(b)は、縦×横=2(段)×5(列)の組み合せ、図13(a)、(b)は、縦×横=3(段)×3(列)の組み合せである。図11〜図13中、1〜6は、駆動順番を示している。これらの組み合せのシールド機を用いた場合であっても、前述したものと同様の作用効果を奏するものである。
【0045】
次に、本発明における第一実施形態と異なる実施形態を示す。下記に示す説明において、第一実施形態と同様の技術を用いたものと対応する部分には同一の符号を付して、説明を省略する。
【0046】
図14は、本発明の第二実施形態に係るシールド機の正面図である。図14に示すように、シールド機20は地盤を掘削するためのカッター9、13、29を備えた機械本体部2と、動力部15と、連結手段(図示せず)とから構成されている。
【0047】
機械本体部2は、前胴体3と、前胴体3内の上段に配置される主シールド6と、主シールド6よりも大きい径で、各々が独立して駆動可能なカッターヘッド28を有する複数の矩形状の大径主シールド26と、側部シールド10と、幅方向の両端の大径主シールド26と前胴体3との間に設けられるとともに、各々が独立して前胴体3から推進可能、かつ各々が独立して駆動可能な側部シールド10よりも縦長の矩形状の側部シールド30とを備えている。
【0048】
前胴体3の内部は、各主シールド6及び各側部シールド10、30が前後移動自在に設けられ、前胴体3からその前方に向かって推進可能に構成されている。各主シールド6及び各側部シールド10、30は、独立して前胴体3から推進可能に構成されている。なお、各主シールド6間、各大径主シールド26間、主シールド6と側部シールド10との間、大径主シールド26と側部シールド30との間には、前胴体3と一体の隔壁を設けることもできる。
【0049】
本実施形態において、主シールド6と大径主シールド26との配列は、縦(鉛直)方向は、主シールド6を上段、大径主シールド26を下段とする縦2段で、横(水平)方向は、主シールド6を3列、大径主シールド26を2列としている。なお、主シールド6と大径シールド26との配列は、上段に径が小さい主シールド6となるように構成すれば、横方向はトンネルの掘削断面の形状、大きさ等に応じて適宜の組み合せとすることができる。
【0050】
各大径主シールド26は、前胴体3内に設けられる矩形状のシールド本体27と、シールド本体27の前面側に回転可能に設けられるとともに、先端部にカッター29を有するカッターヘッド28と、シールド本体27に設けられる駆動源(図示せず)と、駆動源の駆動力をカッターヘッド28に伝達する動力伝達機構(図示せず)とを備えており、各大径主シールド26は、独立して駆動可能に構成されている。本実施形態において、大径主シールド26は、スライドジャッキを備えていないために前胴体3から推進することはできない。
【0051】
各側部シールド30は、前胴体3内に前後移動自在に設けられる矩形状のシールド本体31と、シールド本体31と前胴体3との間に設けられて、シールド本体31を進退させるスライドジャッキ(図示せず)と、カッターヘッド12と、シールド本体31に設けられる駆動源(図示せず)と、駆動源の駆動力をカッターヘッド12に伝達する動力伝達機構(図示せず)とを備えており、各側部シールド30は、独立して駆動可能に構成されている。
【0052】
各主シールド6のシールド本体7、各大径主シールド26のシールド本体27及び各側部シールド10、30のシールド本体11、31には、掘削した土砂を排出するための排出装置(図示せず)がそれぞれ接続されている。
【0053】
動力部15は、機械本体部2の前胴体3の後部に連結手段(図示せず)を介して連結される矩形筒状の後胴体16と、後胴体16内の内周面部分に、等間隔で環状に設けられてシールド機20全体を推進させる複数のシールドジャッキ(図示せず)とを備えている。
【0054】
以下に、シールド機20にて交差点の下方をアンダーパスする際のシールド機20の推進工法について掘削手順に従って説明する。
【0055】
図15〜図18は、本発明の第二実施形態に係るシールド機20の推進方法を示す図である。
【0056】
上記のように構成したこの実施の形態によるシールド機20を用いてトンネルを構築するには、まず、図15に示すように、シールド機20を掘削対象箇所に設置し、第一実施形態と同様に上段の左外側に位置する主シールド6のカッターヘッド8を回転駆動させ、スライドジャッキを伸張させることによりその主シールド6を前胴体3から推進させ、その主シールド6の前方に位置する地盤をカッターヘッド8のカッター9により掘削する。
【0057】
次に、図16に示すように、第一実施形態と同様に上段の右外側に位置する主シールド6のカッターヘッド8を回転駆動させ、スライドジャッキを伸張させることによりその主シールド6を前胴体3から推進させ、その主シールド6の前方に位置する地盤をカッターヘッド8のカッター9により掘削する。
【0058】
次に、図17に示すように、第一実施形態と同様に上段の真中に位置する主シールド6のカッターヘッド8を回転駆動させ、スライドジャッキを伸張させることによりその主シールド6を前胴体3から推進させ、その主シールド6の前方に位置する地盤をカッターヘッド8のカッター9により掘削する。
【0059】
次に、図18に示すように、上段の3つの主シールド6、6、6を突出させた状態で、下段の2つの主シールド26、26のカッターヘッド28を回転駆動させながら、シールドジャッキを伸張させることにより前胴体3及び後胴体16からなるシールド機20本体を前進させ、前胴体3内に格納された下段の大径主シールド26、26の前方に位置する地盤をカッターヘッド28のカッター29により掘削しながら、上段の3つの主シールド6、6、6を前胴体3内に格納する。
【0060】
そして、上述したように、上段の各主シールド6により掘進してから、下段の大径主シールド26のカッターヘッド28を回転駆動させ、シールド機20本体を推進させて大径主シールド26により地盤を掘削するまでの一連の作業を1サイクルとし、このサイクルを複数回繰り返すことにより、掘削対象箇所全体を掘削する。
【0061】
なお、上方が開放されている部分、例えばトンネルへのアプローチ部を掘削する場合には、まず側部シールド10、30を駆動させて掘削対象箇所の両側を掘削し、次にこの掘削した部分の内方を上段の主シールド6で掘削し、そして下段の大径主シールド26のカッターヘッド28を回転駆動させ、シールド機20本体を推進させて大径主シールド26により地盤を掘削する方法にて両壁面の崩壊を防止する。ただし、この場合、側部シールド10、30をシールド機20本体に対して常時突出させた状態のまま側部シールド10、30を本体ごと推進させることとしても良い。
【0062】
なお、本実施形態においては、側部シールド30は前胴体3に対して推進可能な構成としたが、これに限定されるものではなく、推進しない構成としても良い。
【0063】
上記のように構成した本実施形態におけるシールド機20及びシールド機20の推進工法にあっては、複数の主シールド6及び複数の大径シールド26を組み合せて、下段には上段より径の大きい主シールド26を配置し、掘削断面を分割して、掘削断面の上部は小断面、下部は小断面より大きい断面として掘削するために、掘削断面すべてを小断面として掘削するよりも短時間で掘削することができる。また、各主シールド6が独立して駆動して、掘削断面を分割して複数の小断面として断面ごとに掘削するために、掘進時における土被り部への影響を防止することができる。さらに、上段に配置された主シールド6を最初に駆動させるために、下段の大径主シールド26のカッターヘッド28を回転駆動させ、シールド機20本体を推進させて大径主シールド26により地盤を掘削する際の土被り部への掘削の影響を防止することができる。これらの結果より、掘削対象箇所を大断面で掘削する従来の、例えば、フロンテジャッキング工法等の推進工法に比べて、低土被りの地盤を掘削する場合であっても、地盤変状を防止することができる。従って、交差点を一時占有して低土被りの部分に地盤改良等の地盤変状の対策工を実施する必要はなく、工期を短縮することができるとともに、工事費を削減することができる。そして、交通を遮断する必要がないので、周辺の生活環境に影響を与えることもない。
【0064】
また、各主シールド6を個別に推進させて小断面ごとに掘削するために、カッターヘッド8及びスライドジャッキを駆動させるための駆動源が小さく、安価なものとすることができる。また、小さな駆動源を使用するために、掘削時の騒音、振動を小さく抑えることができる。この結果、周辺の生活環境に与える影響を少なくすることができる。
【0065】
そして、下段の大径主シールド26のカッターヘッド28を回転駆動させ、シールド機20本体を推進させて大径主シールド26により地盤を掘削することにより、トンネルの下部部分の掘削とシールド機20本体の前進とを同時に行うことができるために、1サイクルの施工時間を短くすることができる。従って、掘削の日進量を増加することができる。また、下段の大径主シールド26は推進機構を備えていないために、シールド機20の機構が簡素化され、シールド機20に対する設備投資費を安くすることができる。
【0066】
さらに、上段の外側の主シールド6若しくは上段の側部シールド10又は下段の側部シールド30を先に駆動させ、掘削対象箇所の両壁面の崩壊を上段の外側の主シールド6若しくは上段の側部シールド10又は下段の側部シールド30にて支持するために、掘削対象箇所の壁面の崩壊を防止し、シールド機20を安定して推進させることができる。
【0067】
なお、本実施形態において、大径主シールド26はスライドジャッキを備えていない構成について説明したが、これに限定されるものではなく、スライドジャッキを備えている構成でも良い。そして、上述したスライドジャッキを備えていない構成からなるシールド機1の推進方法と同様に、シールド機本体を下段に配置された大径主シールド26と一体に駆動させることにより、トンネル下部の掘削とシールド機本体の前進とを同時に行う。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第一実施形態に係るシールド機の斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係るシールド機の上段の左外側の主シールドの掘進状態を示した説明図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係るシールド機の上段の右外側の主シールドの掘進状態を示した説明図である。
【図4】本発明の第一実施形態に係るシールド機の上段の真中の主シールドの掘進状態を示した説明図である。
【図5】本発明の第一実施形態に係るシールド機の下段の3つの主シールドの掘進状態を示した説明図である。
【図6】本発明の第一実施形態に係るシールド機の前胴体及び後胴体を前進させた状態を示した説明図である。
【図7】本発明の第一実施形態に係るシールド機の上段の左外側の主シールドの掘進状態を示した説明図である。
【図8】本発明の第一実施形態に係るシールド機の上段の右外側の主シールドの掘進状態を示した説明図である。
【図9】本発明の第一実施形態に係るシールド機の上段の真中の主シールドの掘進状態を示した説明図である。
【図10】本発明の第一実施形態に係るシールド機の下段の3つの主シールドの掘進状態を示した説明図である。
【図11】本発明の第一実施形態に係るシールド機の主シールドの他の組み合せの例を示した説明図である。
【図12】本発明の第一実施形態に係るシールド機の主シールドの他の組み合せの例を示した説明図である。
【図13】本発明の第一実施形態に係るシールド機の主シールドの他の組み合せの例を示した説明図である。
【図14】本発明の第二実施形態に係るシールド機の正面図である。
【図15】本発明の第二実施形態に係るシールド機の上段の左外側の主シールドの掘進状態を示した説明図である。
【図16】本発明の第二実施形態に係るシールド機の上段の右外側の主シールドの掘進状態を示した説明図である。
【図17】本発明の第二実施形態に係るシールド機の上段の真中の主シールドの掘進状態を示した説明図である。
【図18】本発明の第二実施形態に係るシールド機の前胴体及び後胴体を前進させた状態を示した説明図である。
【符号の説明】
【0069】
1 シールド機 2 機械本体部
3 前胴体 6 主シールド
7 シールド本体 8 カッターヘッド
9 カッター 10 側部シールド
11 シールド本体 12 カッターヘッド
13 カッター 15 動力部
16 後胴体 20 シールド機
26 大径主シールド 27 シールド本体
28 カッターヘッド 29 カッター
30 側部シールド 31 シールド本体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド機本体内に、互いに独立して駆動可能な複数の主シールドが上下複数段に配置され、少なくとも最上段には複数の主シールドが配置されたシールド機を用いてトンネルを掘削する推進工法において、
前記最上段の主シールドを先に駆動させ、
次にその下段に配置された主シールドを駆動させることによりトンネルを掘削することを特徴とするシールド機の推進工法。
【請求項2】
前記シールド機本体を前記下段に配置された主シールドと一体に駆動させることによりトンネルを掘削することを特徴とする請求項1に記載のシールド機の推進工法。
【請求項3】
前記下段に配置された主シールドの径は、前記最上段に配置された主シールドの径よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載のシールド機の推進工法。
【請求項4】
前記上段に配置された複数の主シールドのうちの外側に位置する主シールドを先に駆動させ、次にその内側に位置する主シールドを駆動させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシールド機の推進工法。
【請求項5】
前記複数の主シールドのうちの両側に配置された主シールドの外側にそれぞれ側部シールドを独立して駆動可能に設け、トンネルへのアプローチ部の掘削の際に、前記側部シールドを前記複数の主シールドに先行させて駆動させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のシールド機の推進工法。
【請求項6】
シールド機本体内に、互いに独立して駆動可能な複数の主シールドが上下複数段かつ少なくとも最上段には複数配置されたシールド機であって、
前記最上段の下段に配置される主シールドは、シールド機本体と一体に駆動可能に構成されたことを特徴とするシールド機。
【請求項1】
シールド機本体内に、互いに独立して駆動可能な複数の主シールドが上下複数段に配置され、少なくとも最上段には複数の主シールドが配置されたシールド機を用いてトンネルを掘削する推進工法において、
前記最上段の主シールドを先に駆動させ、
次にその下段に配置された主シールドを駆動させることによりトンネルを掘削することを特徴とするシールド機の推進工法。
【請求項2】
前記シールド機本体を前記下段に配置された主シールドと一体に駆動させることによりトンネルを掘削することを特徴とする請求項1に記載のシールド機の推進工法。
【請求項3】
前記下段に配置された主シールドの径は、前記最上段に配置された主シールドの径よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載のシールド機の推進工法。
【請求項4】
前記上段に配置された複数の主シールドのうちの外側に位置する主シールドを先に駆動させ、次にその内側に位置する主シールドを駆動させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシールド機の推進工法。
【請求項5】
前記複数の主シールドのうちの両側に配置された主シールドの外側にそれぞれ側部シールドを独立して駆動可能に設け、トンネルへのアプローチ部の掘削の際に、前記側部シールドを前記複数の主シールドに先行させて駆動させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のシールド機の推進工法。
【請求項6】
シールド機本体内に、互いに独立して駆動可能な複数の主シールドが上下複数段かつ少なくとも最上段には複数配置されたシールド機であって、
前記最上段の下段に配置される主シールドは、シールド機本体と一体に駆動可能に構成されたことを特徴とするシールド機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2006−46061(P2006−46061A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−187112(P2005−187112)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
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