説明

シールド電線

【課題】環境保全性が高く、難燃性を容易に確保することができ、かつ安価なシールド電線を提供する。
【解決手段】本発明のシールド電線10は、中心に配された中心導体11と、この中心導体11の外側の絶縁被覆層12と、この絶縁被覆層12の外側のシールド層13と、このシールド層13の外側のノンハロゲン系の材料から成るシース層14とを有するシールド電線10において、絶縁被覆層12とシールド層13との間に、不織布テープを重ね巻きした不織布テープ層20を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド電線に係り、例えば環境に悪影響を与えることなく難燃性の高いシールド電線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シールド電線のシース層にはPVC(ポリ塩化ビニル)が含まれており、燃焼した際にPVCに含まれているハロゲン元素(例えば、塩素)が環境に悪影響を与えるという理由から、シース層にハロゲン元素を含まないハロゲンフリー電線の需要が増加している。そこで、環境に悪影響を与えることのないシールド電線が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、シースにハロゲン元素を含まないようにすると、難燃性においてハロゲン元素を含むものよりも劣る傾向があるため、難燃性の維持が望まれていた。
【0003】
図3に示すように、特許文献1に開示されているシールド電線100は、導体101上に内部半導電層102を介して、架橋ポリエチレン等からなる絶縁層103を設け、その上に外部半導電層104から構成されるケーブルコア105を内部に有している。そして、ケーブルコア105の外側には、銅の細線を多数本横巻きしたワイヤシールド106が設けられ、その外側にはアルミテープの片面に熱融着層を設けて形成されるラミネートテープ107が、熱融着層を外側に向けて縦添え等により設けられて遮水層が形成されている。さらに、ラミネートテープ107の外側の最外層は、ハロゲン元素を含まないプラスチックシース108により被覆されており、熱融着層を介してラミネートテープと一体となるように設けられている。
【特許文献1】特開2001−6446号公報(図1)
【0004】
上記特許文献1に開示されているシールド電線100では、プラスチックシース108の材料にハロゲン元素を含まないノンハロゲン系の材料を用いることにより、燃焼時の塩素ガスやダイオキシン等の有害物質の発生を防止して環境への悪影響を防ぐとともに、アルミテープの片面に熱融着層を設けて形成されるラミネートテープ107により引張強度の向上を図っている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、環境保全性が高く、難燃性を容易に確保することができ、かつ安価なシールド電線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することのできる本発明に係るシールド電線は、中心に配された中心導体と、この中心導体の外側の絶縁被覆層と、この絶縁被覆層の外側のシールド層と、このシールド層の外側のノンハロゲン系の材料から成るシース層とを有するシールド電線であって、前記絶縁被覆層と前記シールド層との間、または前記シールド層と前記シース層との間に、不織布テープを巻いた不織布テープ層を設けたことを特徴とする。
【0007】
このように構成されたシールド電線においては、シース層をノンハロゲン系の材料で形成しているので、燃焼時に塩素ガスやダイオキシン等の有害物質の発生を少なくすることができ、環境保全性を向上させることができる。また、電線の燃焼試験時には、絶縁被覆層とシールド層との間、またはシールド層とシース層との間に設けた不織布テープ層が高温のため燃焼する。すると、それに伴って絶縁被覆層が燃焼する。しかし、バーナの炎が消えると不織布及び絶縁被覆層は素早く鎮火して延焼しない。つまり、結果的に、その後の延焼を防止して難燃性を確保することができる。
また、不織布テープ層は安価であり、シールド電線のコストダウンを図ることができる。
【0008】
また、本発明にかかるシールド電線は、絶縁被覆された前記中心導体が撚線であるものでも良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ノンハロゲン系材料によりシース層を形成することにより環境保全性を維持するとともに、燃焼時には、不織布テープ層により延焼を防止して難燃性を確保することができる。さらに、ハロゲンフリーの難燃シールド電線を安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係るシールド電線の実施形態の例を図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態のシールド電線を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態のシールド電線10は、中心に配された中心導体11と、この中心導体11の外側の絶縁被覆層12と、この絶縁被覆層12の外側のシールド層13と、このシールド層13の外側のノンハロゲン系の材料から成るシース層14とを有するシールド電線である。
【0011】
そして、このシールド電線10は、絶縁被覆層12とシールド層13との間に、不織布テープ層20が設けられている。この不織布テープ層20は、例えば、ポリエステルなどの可燃性材料から形成された十分に空気を含む不織布からなる不織布テープを重ね巻きしたものである。なお、この不織布テープ層20における不織布テープの重なり幅は、テープ幅の1/3から3/4とするのがよい。この不織布テープ層20における不織布テープの重なり部分があまり大きいと生産性が下がるので、不織布テープの重なり幅は、テープのせいぜい3/4とするのが現実的である。
【0012】
中心導体11は、通常、規格されている電気用軟銅線が用いられており、複数本が撚られて形成されている。絶縁被覆層12には、例えば、耐熱性のポリエチレンを用いることができる。
また、シールド層13は、例えば、軟銅線を素線として横巻きして形成することができる。また、軟鋼線の素線を編組して編組シールドとすることもできる。なお、このシールド層13を構成する素線は、スズメッキがあっても、なくてもよい。
また、シース層14には、例えば、難燃性のポリエチレンなどの難燃性のポリオレフィンを用いることができ、金属水酸化物等の難燃剤や難燃助剤等を適宜配合することもできる。
【0013】
上記シールド電線10によれば、シース層14をノンハロゲン系の材料で形成しているので、燃焼時に塩素ガスやダイオキシン等の有害物質の発生を少なくすることができ、環境保全性を向上させることができる。
【0014】
また、シース層14の燃焼時には、シース層14の内側が高温になり、絶縁被覆層12とシールド層13との間に巻回されて空気を含んだ不織布テープ層20が燃焼する。これに伴って、不織布テープ層20に隣接した内部の絶縁被覆層12が燃焼する。
つまり、このシールド電線10によれば、燃焼試験時に、不織布テープ層20の燃焼によって内部の絶縁被覆層12を燃焼させる。結果的に、その後の延焼を防止して難燃性を確保することができる。
【0015】
ここで、ケーブルの難燃性を評価する試験としては、VW−1の垂直燃焼試験(アメリカUL規格)がある。この試験は、試験対象であるケーブルの試料を垂直に設置し、その下端側にバーナの炎を15秒間かざす着火を繰り返し、このときに、60秒以内に消火し、試料の下部に敷いた脱脂綿が燃焼落下物によって類焼したり、試料の上部に設けたクラフト紙が燃えたり焦げたりするか否かを調べる試験で、このバーナによる着火を同一試料について5回繰り返すものである。
このVW−1の垂直燃焼試験に対して、上記シールド電線10の不織布テープ層20はバーナの炎が消えると延焼することがないので、十分にクリアできるものと思われる。
また、燃焼の促進を安価な不織布テープ層20により行う構造であるので、材料費を抑えることができ、シールド電線10のコストダウンを図ることができる。
【0016】
なお、本発明のシールド電線は、前述した実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形、改良等が可能である。
例えば、前述したシールド電線10においては、絶縁被覆層12とシールド層13との間に不織布テープ層20を配置したが、不織布テープ層20はシールド層13とシース層14との間に配置しても良い。その場合でも、シース層14の燃焼時には、不織布テープ層20が燃焼することで絶縁被覆層12を燃焼させ、かつ延焼を防止する効果が得られる。
【0017】
また、図2(A)に示すように、中心導体11を絶縁被覆層12によって被覆した複数の導体線を撚り、図2(B)に示すように、その外周にシールド層13、不織布テープ層及びシース層14を形成しても良い。なお、図2では、2本の導体線を撚った2心撚りを示したが、3本以上の導体線を撚ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のシールド電線に係る実施形態の例を示す断面図である。
【図2】2心撚りの中心導体であって、(A)は斜視図、(B)は断面図である。
【図3】従来のシールド電線の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0019】
10 シールド電線
11 中心導体
12 絶縁被覆層
13 シールド層
14 シース層
20 不織布テープ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心に配された中心導体と、この中心導体の外側の絶縁被覆層と、この絶縁被覆層の外側のシールド層と、このシールド層の外側のノンハロゲン系の材料から成るシース層とを有するシールド電線であって、
前記絶縁被覆層と前記シールド層との間、または前記シールド層と前記シース層との間に、不織布テープを巻いた不織布テープ層を設けたことを特徴とするシールド電線。
【請求項2】
請求項1に記載のシールド電線であって、
絶縁被覆された前記中心導体が撚線であることを特徴とするシールド電線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−323933(P2007−323933A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−152418(P2006−152418)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】