説明

シール構造

【課題】第1のシール部材の摩耗屑等の異物が流路の下流に流出することを防ぐ。
【解決手段】液体5が流れる流路6aの内部と外部に跨って配され流路6a内で駆動する軸体11と、流路6aに一端が対向して設けられ流路6aに対して軸体11を移動可能に支持するガイド部材12と、ガイド部材12と軸体11との間に配され流路6aを封止する第1のシール部材13と、流路6aとガイド部材12との間に配され流路6aを封止する第2のシール部材14と、ガイド部材12の一端を、液体5の流れから遮断するための筒状壁15と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路内で駆動する軸体と、流路の内面との間をシール部材によって封止するシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液体が流れる配管内で駆動する軸体と、流路の内壁と軸体との間を封止するシール部材と、を備えるシール構造が開示されている。図10に示すように、この種のシール構造101は、配管106の流路106aの内部と外部に跨って配された軸体111と、軸体111を駆動するための駆動部110とを備えている。
【0003】
駆動部110は、軸体111を例えば油圧等で駆動するためのピストン110a及びシリンダ110bと、流路106aとシリンダ110bとを仕切る隔壁112とを有している。隔壁112の軸穴112aに、軸体111が移動可能に挿通されており、軸穴112aと軸体111との間に、流路106aを封止するシール部材113が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3399881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の特許文献1に記載のシール構造は、軸体とシール部材との摺動に伴って、シール部材が摩耗して、摩耗屑である異物が発生する。このように、シール部材近傍に発生した異物は、配管の流路を流れる液体によって流され、流路の下流に流出してしまう問題がある。また、液体の成分が固化して軸体に付着する場合もあり、軸体に付着した付着物である異物が、配管の流路を流れる液体によって流され、流路の下流に流出してしまう問題もある。
【0006】
そこで、本発明は、上記関連する技術の課題を解決することができるシール構造を提供することを目的とする。本発明の目的の一例は、流路内で軸体を移動可能に支持するガイド部材の流路側の一端近傍に生じる異物が、流路を流れる液体によって流出するのを防ぐことができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため、本発明に係るシール構造は、液体が流れる流路の内部と外部に跨って配され、流路内で駆動する軸体と、流路に一端が対向して設けられ流路に対して軸体を移動可能に支持するガイド部材と、ガイド部材と軸体との間に配され流路を封止する第1のシール部材と、流路とガイド部材との間に配され流路を封止する第2のシール部材と、ガイド部材の一端を、液体の流れから遮断するための筒状壁と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ガイド部材の流路側の一端近傍に生じる、第1のシール部材の摩耗屑等の異物が、流路の下流に流出することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態のシール構造を示す断面図である。
【図2】第1の実施形態のシール構造を説明するための断面図である。
【図3】第1の実施形態のシール構造を説明するための断面図である。
【図4】第2の実施形態のシール構造を示す断面図である。
【図5】第2の実施形態のシール構造を説明するための断面図である。
【図6】第3の実施形態のシール構造を示す断面図である。
【図7】第3の実施形態のシール構造を説明するための断面図である。
【図8】第4の実施形態のシール構造を示す斜視図である。
【図9】第4の実施形態のシール構造を説明するための断面図である。
【図10】本発明に関連するシール構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1に、第1の実施形態のシール構造の断面図を示す。図2及び図3に、第1の実施形態のシール構造を説明するための断面図を示す。
【0012】
図1に示すように、第1の実施形態のシール構造1は、液体5が流れる配管6の流路6aの内部と外部に跨って配された軸体11と、流路内6aで軸体11を駆動するための駆動部10と、を備えている。
【0013】
また、シール構造1は、流路6aに一端が対向して配管6に設けられ、流路6aに対して軸体11を移動可能に支持するガイド部材12と、ガイド部材12と軸体11との間に配され、流路6aを封止する第1のシール部材13と、流路6aとガイド部材12との間に配され、流路6aを封止する第2のシール部材14と、を備えている。
【0014】
配管6は、略L字状に屈曲された流路6aを有している。また、配管6には、ガイド部材12の外周部を支持する筒状壁15が一体に形成されている。筒状壁15は、配管6の流路6aをなす内面6bに交差して形成されており、ガイド部材12の一端を、液体5の流れから遮断する機能を奏する。
【0015】
駆動部10は、図示しないが、軸体11を例えば油圧等で駆動するためのピストン及びシリンダを有している。ピストンは、接続部材10aを介して軸体11に連結されている。
【0016】
ガイド部材12は、図1に示すように、一端と配管6の流路6aをなす内面6bとの間の距離Lが、軸体11の駆動ストロークStよりも長くされている。これによって、軸体11が駆動したときであっても、軸体11の軸方向に対してガイド部材12が摺動する範囲が、ガイド部材12の一端と配管6の流路6aをなす内面6bとの間に位置することになる。このため、軸体11とガイド部材12との摺動に伴って発生する異物Dが、流路6aの下流に流出することが抑える効果を高めることができる。
【0017】
ガイド部材12は、一端が、流路6aの外側に退避する第1の位置と、配管6の流路6aをなす内面6bと面一になる第2の位置とに移動可能に設けられている。なお、第2の位置において、ガイド部材12の一端が流路6aの内部に突出するように構成されてもよく、流路6a内に一端がさらされることで、一端に堆積した異物を流し易くなる。
【0018】
第1及び第2のシール部材13、14は、Oリングが用いられている。また、第1及び第2のシール部材13、14としては、オイルシール、Vパッキン、ビスコシール等が用いられてもよい。
【0019】
以上のように構成されたシール構造1について、ガイド部材12の動作を説明する。
【0020】
シール構造1は、図1に示すように、筒状壁15によってガイド部材12の一端が、液体5の流れから遮断されているので、軸体11の摺動に伴って生じた、第1のシール部材13等の異物Dが、ガイド部材12の一端に留まり、流路6aの下流に流出することが抑えられる。
【0021】
そして、製造設備で配管6を使用していない非稼働時に、図2に示すように、ガイド部材12を手動で軸体11の軸方向に沿って流路6a側に移動させることで、ガイド部材12の一端を、流路6aをなす内面6bまで移動させる。これによって、ガイド部材12の一端が、流路6aを流れる液体5にさらされるので、ガイド部材12の一端に留められた異物Dを液体6aによって下流に流して、強制的に除去することができる。
【0022】
また、図3に示すように、ガイド部材12の一端を、流路6aの内部に突出させる位置まで移動させることによって、ガイド部材12の一端を、流路6a内の液体5の流速が比較的大きな領域にさらされる。このため、ガイド部材12の一端に留められた異物Dを、液体6aによって更に確実に除去することができる。このように、シール構造1では、必要に応じて、ガイド部材12を軸体11の軸方向に移動させることで、異物Dを取り除くためのメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0023】
上述したように、実施形態のシール構造1によれば、ガイド部材12の一端を、液体5の流れから遮断する筒状壁15を備えることによって、ガイド部材12の一端に、第1のシール部材13と軸体11との摺動によって生じた摩耗屑である異物Dが留められ、流路6aの下流に流れることを抑えることができる。その結果、シール構造1を用いた製造設備で製造される製造物の品質を向上することができる。
【0024】
同様に、シール構造1によれば、ガイド部材12の一端、流路6aを流れる液体5の成分が固化した場合であっても、流路6aの下流に流れることを抑えることができる。その結果、シール構造1を用いた製造設備で製造される製造物の品質を向上することができる。
【0025】
また、メンテナンス時に、ガイド部材12を軸体11の軸方向に移動させ、ガイド部材12の一端を配管6の流路6a内部に位置させることによって、第1のシール部材13の摩耗屑や液体5の成分が固化して軸体11に付着した付着物などの異物Dを、液体5の流れにさらすことができる。したがって、シール構造1によれば、シール構造1や配管6を分解することなく、ガイド部材12の一端に留められた異物Dを容易に除去でき、メンテナンス作業に要する時間を削減することができる。
【0026】
次に、他の実施形態について図面を参照して説明する。説明の便宜上、他の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成部材には、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0027】
(第2の実施形態)
図4に、第2の実施形態のシール構造の断面図を示す。図5に、第2の実施形態のシール構造を説明するための断面図を示す。
【0028】
図4に示すように、第2の実施形態のシール構造2は、ガイド部材12を軸体11に対して軸方向に移動するための移動手段としてのガイド移動部18を備える点が、第1の実施形態と異なっている。
【0029】
ガイド移動部18は、上述した駆動部10と同様にピストン及びシリンダを有して構成されており、配管6の外部に配置されている。ガイド移動部18は、ガイド部材12に固定された連結部材19を有している。連結部材19は、ガイド移動部18のピストンと接続部材18aを介して連結されている。
【0030】
第2の実施形態のシール構造2によれば、配管6を用いた製造設備の非稼働時に、図5に示すように、ガイド移動部18によってガイド部材12の一端を、流路6aをなす内面6bまで移動させることで、ガイド部材12の一端に留められた異物Dを、流路6aを流れる液体5で除去する動作を自動的に行うことができる。
【0031】
また、第2の実施形態のシール構造2によれば、第1の実施形態と同様に、流路6aの下流に異物Dが流出することを抑え、ガイド部材12の一端に留められた異物Dを除去するメンテナンス作業を容易に行うことができる効果が得られる。
【0032】
(第3の実施形態)
図6に、第3の実施形態のシール構造の断面図を示す。図7に、第3の実施形態のシール構造を説明するための断面図を示す。
【0033】
図6に示すように、第3の実施形態のシール構造3は、第1及び第2の実施形態における筒状壁15の代わりに、ガイド部材12の一端を液体5の流れから遮断するための筒状壁を一端がなす遮断部材として遮断筒21を備えている点が、上述の第1及び第2の実施形態と異なっている。
【0034】
遮蔽筒21は、円筒状に形成されており、ガイド部材12の一端の外周部に配されている。遮蔽筒21は、流路6a側の一端が、流路6aの内部に突出する第1の位置と、流路6aの外側に退避する第2の位置とに移動可能に設けられている。
【0035】
また、遮断筒21は、流路6a側の一端からガイド部材12の一端までの長さが、軸体11の駆動ストロークよりも長くされている。これによって、軸体11が摺動したときであっても、軸体11の軸方向に対してガイド部材12が摺動する範囲が、遮蔽筒21の一端とガイド部材12の一端との間に位置することになる。このため、軸体11とガイド部材12との摺動に伴って発生する異物Dが、遮蔽筒21の一端から流路6aの下流に流出することが抑える効果を高めることができる。
【0036】
ガイド部材12と軸体11との間には、流路6aを封止する第1のシール部材23が配されている。遮蔽筒21とガイド部材12との間には、流路6aを封止する第2のシール部材24が配されている。遮蔽筒21と配管6の開口との間には、第3のシール部材25が配されている。
【0037】
また、ガイド部材12は、固定部材22によって配管6に固定されており、遮蔽筒21を移動させたときにガイド部材12が移動せずに遮蔽筒21のみが移動するように構成されている。
【0038】
図6に示すように、シール構造3は、遮蔽筒21の一端が流路6aの内部に突出されていることによってガイド部材12の一端が、液体5の流れから遮断されているので、軸体11の摺動に伴って生じた、第1のシール部材13等の異物Dが、ガイド部材12の一端に留まり、流路6aの下流に流出することが抑えられる。
【0039】
また、配管6を用いた製造設備の非稼働時に、図7に示すように、遮蔽筒21を手動で軸体11の軸方向に沿って流路6aの外側に移動させることによって、遮蔽筒21の一端を、流路6aをなす内面6bまで移動させる。これによって、ガイド部材12の一端が、流路6aを流れる液体5にさらされるので、ガイド部材12の一端に留められた異物Dを液体6aによって下流に流して、強制的に除去することができる。
【0040】
第3の実施形態のシール構造3によれば、ガイド部材12の一端を、液体5の流れから遮断する遮蔽筒21を備えることで、第1の実施形態と同様に、流路6aの下流に異物Dが流出することを抑え、ガイド部材12の一端に留められた異物Dを除去するメンテナンス作業を容易に行うことができる効果が得られる。
【0041】
(第4の実施形態)
図8に、第4の実施形態のシール構造の斜視図を示す。図9に、第4の実施形態のシール構造を説明するための断面図を示す。
【0042】
図8に示すように、第4の実施形態のシール構造4は、遮断筒21をガイド部材12に対して軸体11の軸方向に移動するための移動機構としての遮断筒21を移動する遮蔽筒駆動部28を備えている点が、第3の実施形態と異なっている。
【0043】
シール構造4が備える遮蔽筒駆動部28は、上述した駆動部10と同様にピストン及びシリンダを有して構成されており、配管6の外部に配置されている。遮蔽筒駆動部28は、遮蔽筒21に固定された連結部材29を有している。連結部材29は、遮蔽筒駆動部28のピストンと接続部材28aを介して連結されている。
【0044】
第4の実施形態のシール構造4によれば、配管6を用いた製造設備の非稼働時に、図9に示すように、遮蔽筒駆動部28によって遮蔽筒21を移動させることで、ガイド部材12の一端に留まった異物Dを、流路6aを流れる液体5で除去する動作を自動的に行うことができる。
【0045】
また、第4の実施形態のシール構造4によれば、第3の実施形態と同様に、流路6aの下流に異物Dが流出することを抑え、ガイド部材12の一端に留められた異物Dを除去するメンテナンス作業を容易に行うことができる効果が得られる。
【符号の説明】
【0046】
1 シール構造
5 液体
6 配管
6a 流路
6b 内面
10 駆動部
11 軸体
12 ガイド部材
13 第1のシール部材
14 第2のシール部材
15 筒状壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が流れる流路の内部と外部に跨って配され、前記流路内で駆動する軸体と、
前記流路に一端が対向して設けられ、前記流路に対して前記軸体を移動可能に支持するガイド部材と、
前記ガイド部材と前記軸体との間に配され、前記流路を封止する第1のシール部材と、
前記流路と前記ガイド部材との間に配され、前記流路を封止する第2のシール部材と、
前記ガイド部材の前記一端を、前記液体の流れから遮断するための筒状壁と、を備えるシール構造。
【請求項2】
前記筒状壁は、前記流路に交差して配され、
前記ガイド部材は、前記一端が、前記流路の外側に退避する第1の位置と、前記流路をなす内面と面一または前記流路の内部に突出する第2の位置とに移動可能に設けられている、請求項1に記載のシール構造。
【請求項3】
前記ガイド部材は、前記一端と前記流路をなす内面との間の距離が、前記軸体の駆動ストロークよりも長い、請求項1または2に記載のシール構造。
【請求項4】
前記ガイド部材を前記軸体に対して軸方向に移動するための移動手段を備える、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のシール構造。
【請求項5】
前記ガイド部材の前記一端の外周部に配され、前記流路側の一端が前記筒状壁をなす遮断部材を備え、
前記遮断部材は、前記一端が、前記流路の内部に突出する第1の位置と、前記流路の外側に退避する第2の位置とに移動可能に設けられている、請求項1に記載のシール構造。
【請求項6】
前記遮断部材の前記一端から前記ガイド部材の前記一端までの長さが、前記軸体の駆動ストロークよりも長い、請求項5に記載のシール構造。
【請求項7】
前記遮断部材を前記ガイド部材に対して前記軸体の軸方向に移動するための移動手段を備える、請求項5または6に記載のシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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