説明

ジアルキルカルボナートストリームからアルカノール不純物を除去するための方法

本発明は、アルカノール不純物を、ジアルキルカルボナートおよびこのアルカノール不純物を含有するストリームから除去するための方法であって、ストリームを、アリール基含有エステルおよび触媒と接触させて、アルカノール不純物のアリール基含有エステルとの反応をもたらすことを含む方法に関連する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジアルキルカルボナートおよびアルカノール不純物を含有するストリームからアルカノール不純物を除去するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジアルキルカルボナートは、アルキレンカルボナートのアルカノールとの反応によって製造することができる。アルキレンカルボナート(例えばエチレンカルボナートなど)が、アルカノール(例えばエタノールなど)と反応する場合、この生成物はジアルキルカルボナート(例えばジエチルカルボナートなど)およびアルカンジオール(例えばモノエチレングリコールなど)である。かかる方法は周知であり、それらの例はUS5359118に開示されている。この文献は、ジ(C−Cアルキル)カルボナートおよびアルカンジオールがアルキレンカルボナートのC−Cアルカノールとのエステル交換によって調製される方法を開示している。
【0003】
ジアルキルカルボナートストリーム中に含有され得るアルカノール不純物の例は、エーテルアルカノール、例えばアルコキシアルカノールである。JP2003300917およびJP2002371037は、ジメチルカルボナートおよびモノエチレングリコールがエチレンカルボナートおよびメタノールから製造され、2−メトキシエタノールが副生成物として形成される方法と関係している。JP2003300917およびJP2002371037の発明において、前記2−メトキシエタノールは特定の蒸留技術によって除去される。
【0004】
エタノールとエチレンカルボナートとを反応させてジエチルカルボナートおよびモノエチレングリコールにする反応器においては、エタノールのエチレンオキシド(エチレンカルボナートのエチレンオキシドおよび二酸化炭素への逆反応によって形成される)との2−エトキシエタノール(エチルオキシトール)への副反応が起こり得る。さらに、エチルオキシトールは、二酸化炭素が放出されてエチルオキシトールが生成されるようなエタノールのエチレンカルボナートとの副反応によって形成され得る。なおさらに、エタノールとモノエチレングリコールとの間の副反応が起こってエチルオキシトールおよび水を生成し得る。なおその上さらに、エチルオキシトールは、ヒドロキシエチルエチルカルボナートの脱炭酸により形成され得る。
【0005】
それ故、エタノールおよびエチレンカルボナートが反応してジエチルカルボナートおよびモノエチレングリコールになる反応器からの生成物のストリームは、未変換のエタノール、未変換のエチレンカルボナート、ジエチルカルボナート、モノエチレングリコールおよび上記のエチルオキシトール不純物を含み得る。前記アルコキシアルカノール不純物の存在は、その後のいかなる製造プロセスにおいても有害であり得る。前記アルコキシアルカノール不純物は、例えば前記ジアルキルカルボナートとフェノールからジフェニルカルボナートを合成するための出発物質として使用されるジアルキルカルボナート中に最終的に行き着くことがあり得る。例えば、ジアルキルカルボナートがジエチルカルボナートであり、アルコキシアルカノール不純物がエチルオキシトールである場合、前記エチルオキシトールはフェノール出発物質とおよび/またはジフェニルカルボナート生成物と反応し得る。
【0006】
フェノールとエチルオキシトールとの直接反応は、フェニル 2−エトキシエチルエーテルの生成をもたらし、したがって重要なフェノール反応物の損失をもたらし得る。さらにそのような反応は、方法において望ましくなくひいては分離の課題に対して望ましくない化学物質の導入をもたらす。
【0007】
ジフェニルカルボナートのエチルオキシトールとの反応は、フェニル 2−エトキシエチルカルボナートが生成されるために生産損失をもたらす。さらに、後者の生成物は、ジフェニルカルボナートのポリカルボナート物質へのその後のいかなる重合においても「毒物」として作用する。例えば、ジフェニルカルボナートがビスフェノールA(BPA)と反応させられると、ポリカルボナートとフェノールが形成される。ジフェニルカルボナートは、フェノールが比較的良好な離脱基であるためにBPAと反応することができる。しかしながらジアルキルカルボナート(例えばジエチルカルボナートなど)は、アルカノールが良好な離脱基ではないためにBPAとの反応によってポリカルボナートを製造するために使用することができない。アルコキシアルカノール(例えばエチルオキシトールなど)もまた良好な離脱基ではない。それ故、フェニル 2−エトキシエチルカルボナートがBPAと反応させられるべきジフェニルカルボナートのフィード中に存在する場合、フェノールは前記フェニル 2−エトキシエチルカルボナートから容易に離脱されるがエチルオキシトールは離脱されず、その結果、鎖の1つの末端において重合プロセスを停止する。よって、フェニル 2−エトキシエチルカルボナートは、ジフェニルカルボナートがBPAと接触する前にジフェニルカルボナートから取り除かなければならない。
【0008】
上記は、アルカノール不純物を含有するジアルキルカルボナートストリームが形成される場合、このジアルキルカルボナートが重要な最終生成物に変換される何らかのその後のプロセスが行なわれる前に前記アルカノール不純物を除去することが望まれることを例証している。例えば、いかなるエチルオキシトール不純物も前記不純物を含有するジエチルカルボナートストリームからこのジエチルカルボナートのフェノールとの反応が行なわれる前に除去することが必要とされる。
【0009】
エタノールとエチレンカルボナートが反応してジエチルカルボナートおよびモノエチレングリコールになっている上記の例に関しては、未変換のエタノールおよびエチレンカルボナートならびにエチルオキシトール副生成物も含有するこの生成物のストリームは、蒸留によって分離され得る。前記生成物ストリーム中のさまざまな成分についての沸点は、下の表に掲げられている。
【0010】
【表1】

【0011】
上で言及した蒸留は、ジエチルカルボナートおよび未変換のエタノールを含有する塔頂ストリームならびにモノエチレングリコールおよび未変換のエチレンカルボナートを含有する塔底ストリームをもたらすことができる。たいがい全てのエチルオキシトールは、塔頂ストリーム中に最終的に行き着く。しかしながら、蒸留が行なわれる特定の条件によって、エチルオキシトールの一部が塔底ストリーム中に最終的に行き着くことがあり得る。その後、前記塔頂ストリームは、ジエチルカルボナートとモノエチレングリコールが製造される反応器に再循環することができる未変換のエタノールを含有する塔頂ストリームとジエチルカルボナートおよびエチルオキシトール不純物を含有する塔底ストリームとに蒸留によってさらに分離することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5359118号明細書
【特許文献2】特開2003−300917号公報
【特許文献3】特開2002−371037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記のように、ジアルキルカルボナートが任意のその後のプロセスにおいて重要な最終生成物に変換される前に、該アルカノール不純物は、前記のその後のプロセスおよび/または任意のさらなるプロセスを妨害する可能性があるので、除去されなければならない。上の例に関して、これはエチルオキシトール不純物がジエチルカルボナートとエチルオキシトール不純物を含有する塔底ストリームから除去されるべきであることを意味する。原理上はエチルオキシトールとジエチルカルボナートはさらなる蒸留ステップによって分離され得る。しかしながら、ジエチルカルボナートとエチルオキシトールとの間の沸点における小さな差異(上の表参照)のために、かかる分離は非常に厄介で多くの蒸留ステップおよび段階を必要とする。それ故アルカノール不純物をかかるアルカノール不純物を含有するジアルキルカルボナートストリームから除去する簡易な方法を見出す必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
意外なことに、このジアルキルカルボナートストリームを、アリール基含有エステルおよび触媒と接触させることによって、上記のアルカノール不純物は、該アルカノール不純物の該アリール基含有エステルとの反応によって上記のストリームから除去されることが見出された。
【0015】
したがって、本発明は、アルカノール不純物を、ジアルキルカルボナートおよびこのアルカノール不純物を含有するストリームから除去するための方法に関し、このストリームを、アリール基含有エステルおよび触媒と接触させて、このアルカノール不純物のこのアリール基含有エステルとの反応をもたらすことを含む。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明において、該アルカノール不純物は、該ジアルキルカルボナートが任意のその後のプロセスにおける出発物質として使用される前に、例えば、該ジアルキルカルボナートがジフェニルカルボナートの合成においてフェノールと反応させられる前に該ジアルキルカルボナートストリームから除去されるべきである。
【0017】
このアリール基含有エステルは、式−(C=O)O−の1つ以上のエステル部分を含有する。かかるエステル部分の具体例は、式−O(C=O)O−のカルボナート部分である。さらに、このアリール基含有エステルは、1つ以上のアリール基を含有する。このアリール基またはこれらアリール基の少なくとも1つは、該アリール基の芳香環を構成する炭素原子の1つを介して式−(C=O)O−のエステル部分の非カルボニル酸素原子に直接結合されていてもよい。
【0018】
アリール基含有エステルが、式RO(CO)ORのカルボナートである場合、RまたはRは、アリール基であり、他の基はアルキル基であり、またはRおよびRの両方がアリール基である。好ましくは、RおよびRの両方がアリール基である。さらに、好ましくは、このアリール基は、フェニル基である。このアリール基は、非置換であり得、またはアルキル基、ヒドロキシル基などのヘテロ原子を含有する基、または別のエステル部分からのカルボニル基などのカルボニル基によって置換されていてもよい。
【0019】
本方法においてアルカノール不純物と反応させるための適切なアリール基含有カルボナートの例は、エチルフェニルカルボナート(EPC)およびジフェニルカルボナート(DPC)である。好ましくはこのアリール基含有エステルはDPCである。
【0020】
アリール基含有エステルが式R’(CO)OR”のエステルである場合、R”は、アリール基であり、R’は、アルキル基またはアリール基であり得る。好ましくは、R’およびR”は両方ともアリール基である。このアリール基は、非置換であり得、またはアルキル基、ヒドロキシル基などのヘテロ原子を含有する基、または別のエステル部分からのカルボニル基などのカルボニル基によって置換されていてもよい。
【0021】
好ましくはR”は、フェニル基である。さらに、好ましくは、R’は、エステル部分のカルボニル基に対するオルト位においてヒドロキシル基によって置換されているフェニル基である。本方法においてアルカノール不純物と反応させるためのかかる好ましいアリール基含有エステルの例は、サリチル酸フェニル(フェニル 2−ヒドロキシベンゾアート)である。
【0022】
サリチル酸フェニルは、DPCのジアルキルカルボナートおよびフェノールからの製造中および/または粗製のDPCの精製中の副反応におけるDPCの内部転位によって形成され得る。
【0023】
サリチル酸フェニル誘導体であるアリール基含有エステルは、本方法におけるアルカノール不純物との反応に対して同様に適する。そのようなサリチル酸フェニル誘導体は、下の反応スキームにおいて示される:
【化1】

【0024】
上記の反応スキーム中に示されているサリチル酸フェニル誘導体は、2個、3個またはそれ以上の式−(C=O)O−および/または−O(C=O)O−のエステル部分および1個、2個またはそれ以上のフェニル架橋を異なるエステル部分の間に含有する。これらの誘導体は、直接または間接的に、サリチル酸フェニルがアルコールおよびエステルの両方である前記サリチル酸フェニルそれ自体との反応またはサリチル酸フェニルのDPCとの反応が起源となっていることができ、その反応は上記の反応スキームの中で示されている。
【0025】
その他の適当なサリチル酸フェニル誘導体は、サリチル酸フェニルのヒドロキシル基が、Rがアルキル基、例えばメチル基またはエチル基であるアルコキシド基−ORによって置換されているものである。
【0026】
アルカノール不純物が本発明に従って除去されなければならないストリーム中のジアルキルカルボナートは、ジ(C−C)アルキルカルボナートであり得、アルキル基(直鎖、分枝および/または環状)は、メチル、エチルおよびプロピルなどの同一であるまたは異なるものであり得る。特にこのジアルキルカルボナートはジエチルカルボナートである。
【0027】
本発明に従ってジアルキルカルボナートおよびアルカノール不純物を含有するストリームから除去されるべきである前記不純物は、上記のように、エーテルアルカノール、より具体的にはアルコキシアルカノール、最も具体的には2−エトキシエタノールであり得る。
【0028】
ジアルキルカルボナートおよびアルカノール不純物を含有するストリーム中の前記不純物の量は、0.1から10重量%まで、特に0.3から8重量%まで、より特定的には0.5から6重量%まで、最も特定的には0.5から5重量%までの範囲内に含まれ得る。
【0029】
本発明に従う触媒の存在下でのアルカノール不純物のアリール基含有エステルとの反応は、アリール基含有エステルのエステル交換をもたらす。それ故、本発明の方法において使用されることが必要な触媒は、エステル交換触媒であるべきである。本発明が行なわれる前は、ジアルキルカルボナートおよびアルカノール不純物を含有するストリームは触媒を含有していない。より具体的に言うと、前記ストリームは、本発明が行なわれる前は、エステル交換触媒を含有していない。
【0030】
本発明において添加されるべきエステル交換触媒は、従来技術から知られている多くの適切な均一系および不均一系のエステル交換触媒の1つであり得る。
【0031】
例えば、適当な均一系エステル交換触媒は、US5359118に記載されており、アルカリ金属、すなわち、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムの水素化物、酸化物、水酸化物、アルカノレート、アミド、または塩が挙げられる。好ましい均一系エステル交換触媒は、カリウムまたはナトリウムの水酸化物またはアルカノレートである。その他の適当な均一系エステル交換触媒は、アルカリ金属塩、例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、または炭酸塩などである。適当な触媒は、US5359118およびそこに掲げられている参考文献、例えば、EP274953A、US3803201、EP1082A、およびEP180387Aなどに記載されている。
【0032】
上記のように不均一系エステル交換触媒を使用することも可能である。適当な不均一系触媒としては、官能基を含有するイオン交換樹脂が挙げられる。適当な官能基としては、第三級アミン基および第四級アンモニウム基と、またスルホン酸基およびカルボン酸基も挙げられる。さらなる適当な触媒としては、アルカリ金属ケイ酸塩およびアルカリ土類金属ケイ酸塩が挙げられる。適当な触媒は、US4062884およびUS4691041に開示されている。この不均一系触媒は、ポリスチレンマトリックスおよび第三級アミン官能基を含んでいるイオン交換樹脂から選択され得る。一例は、N,N−ジメチルアミン基が結合されているポリスチレンマトリックスを含むAmberlyst A−21(Rohm & Haasから)である。第三級アミン基および第四級アンモニウム基を有するイオン交換樹脂を含めた8種類のエステル交換触媒が、J F Kniftonら、J.Mol.Catal,67巻(1991年)389頁以下、に開示されている。
【0033】
本発明において使用されるべき不均一系エステル交換触媒は、元素周期表の4族(チタンなど、例えばTiO触媒)、5族(バナジウムなど)、6族(クロムまたはモリブデンなど)または12族(亜鉛など)からの元素またはスズもしくは鉛、または上記元素の組合せ、例えば亜鉛のクロムとの組合せ(例えば亜クロム酸亜鉛)を含んでいる触媒であり得る。前記元素は、酸化亜鉛などの酸化物として触媒中に存在し得る。本発明において使用されるべきこのエステル交換触媒は、亜鉛を含んでいる不均一系触媒であり得る。
【0034】
具体的には、本発明において添加されるべきエステル交換触媒は、ジアルキルカルボナートおよびフェノールからのジフェニルカルボナートの形成に触媒作用をすることが知られている多くの適当な均一系および不均一系エステル交換触媒の1つであり得る。より具体的には、このエステル交換触媒は、チタンを含有する触媒である。好ましくは、前記チタンを含有する触媒中のチタンは、IVの酸化状態を有する。さらに、前記チタンは、1つ以上、好ましくは4つのアルコキシド基、例えばエトキシド基、および/またはアリールオキシド基、例えばフェノキシド基に結合され得る。適当な均一系エステル交換触媒の例は、チタン(IV)2−エチルヘキシルオキシド(Ti(OC17)である。
【0035】
さらに、上記のチタンを含有する触媒は、2個以上のチタン原子を含有するダイマーまたはポリマーであり得、チタン原子は、式−O(C=O)O−のカルボナート架橋によりまたは式−O−の酸素架橋により互いに結合され得る。なおもさらに、前記チタンを含有する触媒は、1つ以上のケイ素原子をさらに含有することができ、このチタンとケイ素原子は式−O−の酸素架橋によって互いに結合される。
【0036】
本発明において添加されるべきエステル交換触媒、例えば上記のチタンを含有する触媒などは、本方法においてアルカノール不純物と反応させるべきアリール基含有エステルを含有するストリーム中に好ましくは存在する。その場合、本方法においては、有利なことに、前記エステル交換触媒および前記アリール基含有エステルは、アルカノール不純物との反応のために別々に添加されなければならないということはない。
【0037】
さらに、上記のチタンを含有する触媒などの前記エステル交換触媒および例えばDPCを含む前記アリール基含有エステルの両方を含有する上記のストリームは、ジアルキルカルボナートとフェノールからジフェニルカルボナートを製造するためおよび/または粗製のDPCを精製するための方法が起源であり得、その上、重質の副生成物を含有し得る。そのようなストリームの一部は触媒が再使用され得るようにおよびDPCが回収され得るようにリサイクルされ得るが、前記ストリームの一部は、前記重質の副生成物の集積を防ぐために製造プロセスから抜き取られて捨てられなければならない。
【0038】
本方法において、ジアルキルカルボナートおよびアルカノール不純物を含有するストリームは、ジフェニルカルボナートをジアルキルカルボナートとフェノールから製造するためのおよび/または粗製のジフェニルカルボナートを精製するための方法が起源であり得るストリーム(例えばブリードストリーム)と有利に接触させることができ、後者のストリームは、触媒、好ましくは上記のようなチタンを含有する触媒のものであるチタンを含有するエステル交換触媒と、好ましくはジフェニルカルボナートおよび場合によって好ましくはサリチル酸フェニルおよび場合によって上記のようなサリチル酸フェニル誘導体のような1つ以上のサリチル酸フェニルの誘導体を含む1つ以上のジフェニルカルボナートの誘導体を含むアリール基含有エステルと、を含有する。
【0039】
DPC製造および/または精製プロセスからの前記ストリームを本方法におけるジアルキルカルボナートおよびアルカノール不純物を含有するストリームと組み合わせることによって、前記アリール基含有エステルおよび前記触媒の両方は、以下でさらに説明されるが、例えばただ抜き取られて捨てられるだけよりもアルカノール不純物をジアルキルカルボナートからアルカノール不純物を除去するために効果的に使用される。これは、全体の統合された方法の改良された効率につながる。
【0040】
さらに、エステル交換条件は当技術分野で知られており、40から200℃までの温度および50から5000kPa(0.5から50バール)までの圧力が適宜含まれる。
【0041】
ジアルキルカルボナートが式ROC(O)ORで、RおよびRが同一または異なるアルキルであり得る場合、アリール基含有エステルは、式RO(CO)ORでRもしくはRがアリール基であって他方の基がアルキル基であるかRおよびRが両方ともアリール基であるカルボナートであり、アルカノール不純物は、式ROHで、Rがアルコキシアルキル基であり得るアルカノールであり、本発明を実施する場合には次の反応が起こり得る:
(1)ROC(O)OR+ROH→ROC(O)OR+ROH
(2)ROC(O)OR+ROH→ROC(O)OR+ROH
(3)2ROC(O)OR→ROC(O)OR+ROC(O)OR
(4)ROC(O)OR+ROH→ROC(O)OR+ROH
(5)ROC(O)OR+ROH→ROC(O)OR+ROH
(6)2ROC(O)OR→ROC(O)OR+ROC(O)OR
【0042】
前記ROC(O)ORが、ジエチルカルボナート(またはEtOC(O)OEt)であり、前記ROC(O)ORがジフェニルカルボナート(またはPhOC(O)OPh)であり、前記ROHが2−エトキシエタノール(またはEtOEtOH)である場合、エステル交換触媒の存在下で次の反応が起こり得る:
(1)EtOC(O)OEt+EtOEtOH→EtOC(O)OEtOEt+EtOH
(2)EtOC(O)OEtOEt+EtOEtOH→EtOEtOC(O)OEtOEt+EtOH
(3)2EtOC(O)OEtOEt→EtOEtOC(O)OEtOEt+EtOC(O)OEt
(4)PhOC(O)OPh+EtOEtOH→PhOC(O)OEtOEt+PhOH
(5)PhOC(O)OEtOEt+EtOEtOH→EtOEtOC(O)OEtOEt+PhOH
(6)2PhOC(O)OEtOEt→EtOEtOC(O)OEtOEt+PhOC(O)OPh
前記EtOC(O)OEtOEt(OxEC)は、混合されたカルボナート、すなわちエチル 2−エトキシエチルカルボナートである。前記PhOC(O)OEtOEt(OxPC)は、混合されたカルボナート、すなわちフェニル 2−エトキシエチルカルボナートである。EtOEtOC(O)OEtOEt(DOxC)は、ジ(2−エトキシエチル)カルボナートである。
【0043】
意外にも、前記アルカノール不純物は、ジエチルカルボナートとよりもむしろジフェニルカルボナートと優先的に反応する。これは、ジフェニルカルボナートの合成において重要な出発物質であるジエチルカルボナートが保存されるのでジエチルカルボナートのより高い収率を有利にもたらし、同時にこれは、以下でさらに論じられる通常の分離方法によってジフェニルカルボナートから容易に分離され得る化合物に変換されるアルカノール不純物の除去をもたらす。
【0044】
加えて、前記アルカノール不純物は、ジエチルカルボナートとよりもむしろサリチル酸フェニルと優先的に反応することが意外にも見出されている。これは、ジフェニルカルボナートとの優先的な反応に関連して上で論じたのと同様の利点をもたらす。
【0045】
前記ROC(O)ORがジエチルカルボナートであり、アリール基含有エステルがサリチル酸フェニルの上記の誘導体の1つである上記の式(I)の化合物であり、前記ROHが2−エトキシエタノールである場合、次の反応(7)から(10)がエステル交換触媒の存在下で起こり得る:
【化2】

【0046】
前記アルカノール不純物の前記式(I)のアリール基含有エステルとの反応は、ジエチルカルボナートとの反応よりはむしろ、ジフェニルカルボナートの合成において重要な出発物質であるジエチルカルボナートが保存されるのでジエチルカルボナートのより高い収率を有利にもたらし、同時にこれにより、以下でさらに論じられる通常の分離方法によってジエチルカルボナートから容易に分離することができる化合物に変換されるアルカノール不純物の除去をもたらす。
【0047】
加えて、式(I)のこのアリール基含有エステルは、ジアルキルカルボナートとフェノールからのジフェニルカルボナートの製造における副生成物であり、この副生成物は、したがって、本方法における別の副生成物、すなわちアルキレンカルボナートとアルカノールからのジアルキルカルボナートの製造において形成され得る前記アルカノール不純物を効率的に除去するために有利に使用することができる。結果として、前記式(I)のアリール基含有エステルは、有利なことに、処置される必要はない。
【0048】
ジアルキルカルボナートおよびアルカノール不純物を含有するストリームが、アルカノールをアルキレンカルボナートと反応させることにより生成されたジアルキルカルボナートを含有するストリームである場合、このストリームは、アルカノール不純物に加えて未変換のアルカノール反応物を通常は含有する。かかるジアルキルカルボナートストリームの形成が記載されている本明細書の序文を参照されたい。
【0049】
ジアルキルカルボナートおよびアルカノール不純物を含有するストリームが、ジアルキルカルボナート、未変換のアルカノールおよびアルカノール不純物を含有するストリームである場合、本発明に従って前記ストリームを、アリール基含有エステルおよびエステル交換触媒と接触させてこのアルカノール不純物のアリール基含有エステルとの反応を生じさせることは、ジアルキルカルボナートが未変換のアルカノールから分離されるステップの前、途中または後に行なうことができる。
【0050】
ジアルキルカルボナートの未変換のアルカノールからの分離は、蒸留によってもたらされ得る。かかる蒸留は、未変換のアルカノールが、前のステップにおいてアルキレンカルボナートと反応させられてジアルキルカルボナートとアルカンジオールを生成した場合には、未変換のアルカノール(エタノールなど)を含有する塔頂ストリームおよびジアルキルカルボナート(ジエチルカルボナートなど)を含有する塔底ストリームをもたらす。
【0051】
前記アリール基含有エステルおよびエステル交換触媒と接触させることが前記蒸留ステップの途中で行なわれる場合、このアリール基含有エステルおよび触媒は、蒸留カラムそれ自体または入り口と出口が前記蒸留カラムに接続されている反応器に加えることができる。触媒は、上記の触媒およびアリール基含有エステルの両方を含有する1つのストリーム中にアリール基含有エステルと一緒に加えることができる。
【0052】
好ましくはアリール基含有エステルおよびエステル交換触媒との前記接触のステップは、ジアルキルカルボナートが未変換のアルカノールから分離される前記蒸留ステップの後に行なわれる。前記(最初の)蒸留ステップが起源でありジアルキルカルボナートを含有するが未変換のアルカノールをもはや含有しない塔底ストリームは、別の反応器または(直接)2番目の蒸留カラムに送ることができる。それが別の反応器に送られる場合、前記反応器の出口のストリームは2番目の蒸留カラムに送ることができる。
【0053】
前記2番目の蒸留カラムにおいて、アルカノール不純物をもはや含有していない精製されたジアルキルカルボナートは、塔頂ストリームとして分離される。アリール基含有エステルおよびエステル交換触媒は、2番目の蒸留カラムに(または適用可能な場合は前記の別の反応器に)別々にまたは組み合わせてのいずれかで加えられる。好ましくは、触媒は、上記のような触媒およびアリール基含有エステルの両方を含有する1つのストリーム中にアリール基含有エステルと一緒に加えられる。前記2番目の蒸留カラムからの塔底ストリームは、触媒および以下でさらに説明されるようなジアルキルカルボナートより高い沸点を有する化合物を含有し、処理もしくはさらに精製して触媒および/またはフェノールなどの価値のある成分を回収することができる。これは以下でさらに説明される。
【0054】
本発明は、ジアルキルカルボナートストリーム中のアルカノール不純物の除去を有利にもたらす。このアルカノール不純物は、それが除去されていない場合は前記ジアルキルカルボナートを使用するどのようなその後のプロセスにおいても妨害となり得る。本発明を実施することによって他の不純物が代わりに形成され得ることが認められる。
【0055】
必要な場合、前記他の不純物は、精製されるべきジアルキルカルボナートから上記の蒸留などの当業者には既知の方法によって容易に分離することができる。それ故、本方法は、アルカノール不純物のアリール基含有エステルとの反応からもたらされる不純物を、ジアルキルカルボナートを含有するストリームから除去するステップをさらに含み得る。
【0056】
例えば、ジエチルカルボナートおよび2−エトキシエタノール不純物を含有するストリームが本発明に従ってエステル交換触媒およびDPCと接触された場合、純粋なジエチルカルボナートは、ジエチルカルボナートとその他の化合物の間の沸点の違いによって蒸留によって容易に得ることができる。これは以下の表に示されている。
【0057】
【表2】

【0058】
したがって、本発明は、また、
(a)アルキレンカルボナートとアルカノールとをエステル交換触媒の存在下で反応させて、未変換のアルキレンカルボナート、未変換のアルカノール、ジアルキルカルボナート、アルカンジオールおよびアルカノール不純物を含有する生成混合物を得ること、
(b)未変換のアルキレンカルボナートおよびアルカンジオールを前記生成混合物から分離して未変換のアルカノール、ジアルキルカルボナートおよびアルカノール不純物を含有する塔頂ストリームを得ること、
(c)前記アルカンジオールを回収すること、および
(d)未変換のアルカノールを、ステップ(b)において得られた未変換のアルカノール、ジアルキルカルボナートおよびアルカノール不純物を含有する塔頂ストリームから分離してジアルキルカルボナートおよびアルカノール不純物を含有する塔底ストリームを得ること、
を含むジアルキルカルボナートおよびアルカンジオールを調製するための方法にも関連し、
該方法はさらに、
(e)ステップ(d)において得られたジアルキルカルボナートおよびアルカノール不純物を含有する塔底ストリームを、アリール基含有エステルおよび触媒と接触させてアルカノール不純物のアリール基含有エステルとの反応を生じさせることを含む。
【0059】
したがって、本発明は、さらに、
(a)アルキレンカルボナートとアルカノールとをエステル交換触媒の存在下で反応させて、未変換のアルキレンカルボナート、未変換のアルカノール、ジアルキルカルボナート、アルカンジオールおよびアルカノール不純物を含有する生成混合物を得ること、
(b)未変換のアルキレンカルボナートおよびアルカンジオールを前記生成混合物から分離して未変換のアルカノール、ジアルキルカルボナートおよびアルカノール不純物を含有する塔頂ストリームを得ること、
(c)前記アルカンジオールを回収すること、および
(d)ステップ(b)において得られた未変換のアルカノール、ジアルキルカルボナートおよびアルカノール不純物を含有する塔頂ストリームを、アリール基を含んでいるエステルおよび触媒と接触させてアルカノール不純物のアリール基含有エステルとの反応を生じさせ、未変換のアルカノールを分離してジアルキルカルボナートを含有する塔底ストリームを得ること、
を含むジアルキルカルボナートおよびアルカンジオールを調製するための方法にも関する。
【0060】
ジアルキルカルボナートおよびアルカノール不純物を含有するストリームを、アリール基含有エステルおよび触媒と接触させてこのアルカノール不純物のアリール基含有エステルとの反応を生じさせることを含むアルカノール不純物をこのストリームから除去するための上記の一般的な方法と関連する上記の実施形態および選択のすべては、ジアルキルカルボナートおよびアルカンジオールの調製のための2つの上記の特定の方法、より具体的には、前記2つの方法のステップ(e)およびステップ(d)のそれぞれにも適合する。
【0061】
加えて、上記のエステル交換触媒および他のエステル交換条件は、ジアルキルカルボナートおよびアルカンジオールの調製のための前記2つの方法のステップ(a)に同様に適用可能である。
【0062】
本発明は、また、
(i)アルキレンカルボナートおよびアルカノールを、蒸留カラム、好ましくは反応蒸留カラム中、エステル交換触媒の存在下で反応させて、未変換のアルカノール、ジアルキルカルボナートおよびアルカノール不純物を含有する塔頂ストリームおよびアルカンジオールおよびいくらかの未変換のアルキレンカルボナートを含有する塔底ストリームを得ること、
(ii)前記アルカンジオールを回収すること、および
(iii)ステップ(i)において得られた未変換のアルカノール、ジアルキルカルボナートおよび該アルカノール不純物を含有する塔頂ストリームから未変換のアルカノールを分離してジアルキルカルボナートおよび該アルカノール不純物を含有する塔底ストリームを得ることを含み、
この方法がさらに、
(iv)ステップ(iii)において得られたジアルキルカルボナートおよび該アルカノール不純物を含有する塔底ストリームを、アリール基含有エステルおよび触媒と接触させてアルカノール不純物の該アリール基含有エステルとの反応を生じさせることをさらに含むジアルキルカルボナートおよびアルカンジオールの調製のための方法にも関する。
【0063】
本発明は、さらにまた、
(i)アルキレンカルボナートおよびアルカノールを、蒸留カラム、好ましくは反応蒸留カラム中、エステル交換触媒の存在下で反応させて、未変換のアルカノール、ジアルキルカルボナートおよびアルカノール不純物を含有する塔頂ストリームおよびアルカンジオールおよびいくらかの未変換のアルキレンカルボナートを含有する塔底ストリームを得ること、
(ii)前記アルカンジオールを回収すること、および
(iii)ステップ(i)で得られた未変換のアルカノール、ジアルキルカルボナートおよび該アルカノール不純物を含有する塔頂ストリームを、アリール基含有エステルおよび触媒と接触させて該アルカノール不純物のアリール基含有エステルとの反応を生じさせ、未変換のアルカノールを分離してジアルキルカルボナートを含有する塔底ストリームを得ること、
を含むジアルキルカルボナートおよびアルカンジオールの調製のための方法にも関する。
【0064】
ジアルキルカルボナートおよびアルカノール不純物を含有するストリームを、アリール基含有エステルおよび触媒と接触させてこのアルカノール不純物のアリール基含有エステルとの反応を生じさせることを含むアルカノール不純物をこのストリームから除去するための上記の一般的な方法と関連する上記の実施形態および選択のすべては、ジアルキルカルボナートおよびアルカンジオールの調製のための2つの上記の特定の方法、より具体的には、前記2つの方法のステップ(iv)およびステップ(iii)のそれぞれにも適合する。
【0065】
加えて、上記のエステル交換触媒および他のエステル交換条件は、ジアルキルカルボナートおよびアルカンジオールの調製のための前記2つの方法のステップ(i)に同様に適用可能である。
【0066】
さらに本発明は、ジアルキルカルボナートおよびアルカノール不純物を含有するストリームを、上記の方法の任意の1つに従ってアリール基含有エステルおよび触媒と接触させてアルカノール不純物のアリール基含有エステルとの反応を生じさせ、その後エステル交換触媒の存在下でアリールアルコールを、ジアルキルカルボナートを含有するストリームと接触させるステップを含むジアリールカルボナートを製造するための方法に関する。
【0067】
好ましくは、前記ジアルキルカルボナートはジフェニルカルボナートであり、前記アリールアルコールはフェノールである。
【0068】
加えて、上記のエステル交換触媒および他のエステル交換条件は、ジアリールカルボナートを調製するための前記方法に同様に適用可能である。
【0069】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明される。
【実施例】
【0070】
参考例および実施例1−6
エステル交換実験は、ジエチルカルボナート(DEC)および2−エトキシエタノール(エチルオキシトール)を、触媒のみ(参考例)とまたは触媒およびジフェニルカルボナート(DPC、実施例1および2)もしくはサリチル酸フェニル(実施例3)の両方とのいずれかと接触させることによって行なわれた。使用された触媒は、亜鉛を含む市販の不均一系触媒、すなわちBASFによって供給される酸化亜鉛(約65重量%)と亜クロム酸亜鉛(Zn.Cr、約35重量%)の混合物であるZN−0312T1/8(HT)触媒である。反応は、マグネティックスターラーが装備されている100mlバッチのオートクレーブ反応器中で行なわれた。空気と水分を除去するために、充填した反応器はそれぞれの実験を開始する前に乾燥窒素の流れにより3回パージした。
【0071】
実施例4および5の実験は、実施例1および2と使用された触媒が異なるという条件つきで同様に行なわれた。実施例4および5において使用された触媒は、それぞれ不均一系の酸化チタン(TiOアナターゼ)触媒および均一系のチタン(IV)2−エチルヘキシルオキシド(Ti(OC17)触媒である。
【0072】
実施例6の実験は、重質のカルボナート画分が使用されるという条件つきで実施例1および2と同様に行なわれた。前記重質のカルボナート画分は、主としてDPCからなる。さらに、この重質のカルボナート画分は、混入物質として他のアリール基含有エステル、例えばサリチル酸フェニル、2−EPPC(2−エチルフェニル フェニルカルボナート)、4−EPPC(4−エチルフェニル フェニルカルボナート)およびDPCの分子量(MW=214g/モル)より大きい最大で約650g/モルまでの分子量を有する他の未確認の重質の混入物質などを含有した。なおさらに、この重質のカルボナート画分は、0.4ミリモルのチタン(Ti)を含有した。この重質のカルボナート画分に含有されていたチタン種の詳しい形態は不明である。
【0073】
前記重質のカルボナート画分中に含有されていたチタン種は、先行のDECおよびフェノールからのDPCの調製において使用された触媒が起源である。前記調製は、チタンを含有するエステル交換触媒の存在下の最初の反応蒸留カラムにおいてフェノールとDECを反応させ、DPC生成物(およびその異性体)、中間生成物のエチルフェニルカルボナート、重質の不純物、一部の未反応フェノール、一部の未反応DECおよびエタノールの痕跡を含有する塔底ストリームを引き抜くことによって分離するステップを含んだ。2番目の反応蒸留カラムにおいて、前記塔底画分は、フェノール、DEC、エタノールおよび他の軽質の混入物質をカラムの頂上を越えて除去することによって濃縮され、DPCへのさらなる反応が前記2番目のカラムにおいて起こった。このDPCを含有する前記2番目の反応蒸留カラムからの塔底画分は、さらなる蒸留にかけられ、そこでこのDPCの大部分は前記カラムからの塔頂ストリームにより塔頂留出され、そこからの塔底ストリームは残りのDPCおよびDPCの異性体(サリチル酸フェニルなど)ならびに重質の不純物(上記の2−EPPCおよび4−EPPCを含む)および上記のチタン種を含有した。実施例6において使用された重質カルボナート画分は、後者の塔底ストリームから採取された。
【0074】
以下の表は、参考例および実施例1−6の実験の開始および反応条件と結果をさらに記載している。前記表において「結果」のもとには特定のエチルオキシトール反応生成物が検出されたか否かが記されている。ガスクロマトグラフィー(GC)および/またはガスクロマトグラフィー−質量分析(GC−MS)がエチル 2−エトキシエチルカルボナートおよびフェニル 2−エトキシエチルカルボナートを検出するために使用された。GC−MSが、2−エトキシエチルサリチラートを検出するために使用された。
【0075】
実施例1−6のすべてについて、汚染物質として前記エチルオキシトールを含有するDECストリーム中のすべてのエチルオキシトールは、触媒とおよびアリール基含有エステル、例えばDPC、サリチル酸フェニルおよびそれらの誘導体などと接触することによって変換され得ることがこの表から見える。実施例のすべてにおいて、エチルオキシトールは、上記のアリール基含有エステルと反応してフェニル 2−エトキシエチルカルボナート(実施例1、2および4−6)および2−エトキシエチルサリチラート(実施例3)をもたらした。後者のカルボナートは、蒸留によってDECから容易に分離することができる。場合によって(実施例3−6)、DECもやはりエチルオキシトールと反応した。これは、一般に汚染物質の量が相対的にほんのわずかであり、その結果多量のDECが失われることはないために問題ではない。これらの実施例において、エチルオキシトール汚染物質の量は2.9から4.4重量%までの範囲の数値に置かれた。なおまた、前記エチルオキシトールのDECとの反応は、蒸留によってDECから容易に分離することができる生成物(すなわち、エチル 2−エトキシエチルカルボナート(EEC))をもたらす。したがって、これもまたエチルオキシトールのDECからの除去をもたらす。
【0076】
その上特に、実施例1−4に関しては、比較的多量のDECが存在するにもかかわらず、DECのエチルオキシトールとの反応によって形成されるEECの量はなしまたは比較的少量のみであり、その結果失われたDECはなしまたは多くはないことがこの表から見える。唯一の(実施例1−2)または主要な(実施例3−4)エチルオキシトール反応生成物は、フェニル 2−エトキシエチルカルボナート(実施例1、2および4)または2−エトキシエチルサリチラート(実施例3)であった。参考例についての結果は、DPCおよびサリチル酸フェニルがない場合にEECが実際に形成されることを示している。したがって、前記実施例1−4は、DECがエチルオキシトールとたとえ反応し得るとしても、エチルオキシトールはDECとよりはむしろアリール基含有エステル、例えばDPCまたはサリチル酸フェニルなどと優先的に反応することを示している。
【0077】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカノール不純物を、ジアルキルカルボナートおよびアルカノール不純物を含有するストリームから除去するための方法であって、前記ストリームを、アリール基含有エステルおよび触媒と接触させて、アルカノール不純物のアリール基含有エステルとの反応をもたらすことを含む方法。
【請求項2】
アリール基含有エステルが、ジフェニルカルボナートである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ジアルキルカルボナートが、ジ(C−C)アルキルカルボナート、好ましくはジエチルカルボナートである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
アルカノール不純物が、エーテルアルカノール、より具体的にはアルコキシアルカノール、最も具体的には、2−エトキシエタノールである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ジアルキルカルボナートがジエチルカルボナートであり、ならびにアルカノール不純物が2−エトキシエタノールである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ジアルキルカルボナートおよびアルカノール不純物を含有するストリームが、ジアルキルカルボナートとフェノールとからジフェニルカルボナートを製造するためおよび/または粗製のジフェニルカルボナートを精製するための方法を起源とするストリームと接触させられ、後者のストリームが触媒、好ましくはチタンを含有する触媒、ならびに好ましくはジフェニルカルボナートおよび場合によってジフェニルカルボナートの1つ以上の誘導体を含み、好ましくはサリチル酸フェニルおよび場合によってサリチル酸フェニルの1つ以上の誘導体を含むアリール基含有エステルを含有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ジアルキルカルボナートおよびアルカノール不純物を含有するストリームが、
(a)アルキレンカルボナートとアルカノールとをエステル交換触媒の存在下で反応させて、未変換のアルキレンカルボナート、未変換のアルカノール、ジアルキルカルボナート、アルカンジオールおよびアルカノール不純物を含有する生成混合物を得ること、
(b)未変換のアルキレンカルボナートおよびアルカンジオールを前記生成混合物から分離して未変換のアルカノール、ジアルキルカルボナートおよびアルカノール不純物を含有する塔頂ストリームを得ること、
(c)前記アルカンジオールを回収すること、および
(d)未変換のアルカノールを、ステップ(b)において得られた未変換のアルカノール、ジアルキルカルボナートおよびアルカノール不純物を含有する塔頂ストリームから分離してジアルキルカルボナートおよびアルカノール不純物を含有する塔底ストリームを得ること
を含むジアルキルカルボナートおよびアルカンジオールを調製するための方法によって得られ、
該方法がさらに
(e)ステップ(d)において得られたジアルキルカルボナートおよびアルカノール不純物を含有する塔底ストリームを、アリール基含有エステルおよび触媒と接触させてアルカノール不純物のアリール基含有エステルとの反応を生じさせること
を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ジアルキルカルボナートおよびアルカノール不純物を含有するストリームが、
(a)アルキレンカルボナートとアルカノールとをエステル交換触媒の存在下で反応させて、未変換のアルキレンカルボナート、未変換のアルカノール、ジアルキルカルボナート、アルカンジオールおよびアルカノール不純物を含有する生成混合物を得ること、
(b)未変換のアルキレンカルボナートおよびアルカンジオールを前記生成混合物から分離して未変換のアルカノール、ジアルキルカルボナートおよびアルカノール不純物を含有する塔頂ストリームを得ること、
(c)前記アルカンジオールを回収すること、および
(d)ステップ(b)において得られた未変換のアルカノール、ジアルキルカルボナートおよびアルカノール不純物を含有する塔頂ストリームを、アリール基含有エステルおよび触媒と接触させてアルカノール不純物のアリール基含有エステルとの反応を生じさせ、ならびに未変換のアルカノールを分離してジアルキルカルボナートを含有する塔底ストリームを得ること
を含むジアルキルカルボナートおよびアルカンジオールを調製するための方法によって得られる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
アルキレンカルボナートがエチレンカルボナートであり、未変換のアルカノールがエタノールであり、ジアルキルカルボナートがジエチルカルボナートであり、アルカンジオールがモノエチレングリコールであり、ならびにアルカノール不純物が2−エトキシエタノールである、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
アルカノール不純物のアリール基含有エステルとの反応に起因する不純物を、ジアルキルカルボナートを含有するストリームから除去するステップをさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ジアリールカルボナートを製造するための方法であって、ジアルキルカルボナートおよびアルカノール不純物を含有するストリームを、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法に従ってアリール基含有エステルおよび触媒と接触させてアルカノール不純物のアリール基含有エステルとの反応を生じさせ、ならびにその後エステル交換触媒の存在下でアリールアルコールを、ジアルキルカルボナートを含有するストリームと接触させるステップを含む方法。
【請求項12】
ジアリールカルボナートがジフェニルカルボナートであり、アリールアルコールがフェノールである、請求項11に記載の方法。

【公表番号】特表2013−501748(P2013−501748A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524216(P2012−524216)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061587
【国際公開番号】WO2011/018448
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】