説明

ジアルキル亜鉛及びジアルキルアルミニウムモノハライドの製造方法

【課題】塩化亜鉛とトリアルキルアルミニウムとを原料とし、一の反応により、ジアルキル亜鉛とジアルキルアルミニウムモノハライドとの双方を、反応過程での析出物の生成を抑制し、析出物の装置への付着や生成物への混入を抑制し、工業的規模で効率よく、純度、収率共に高く製造することを可能とする、ジアルキル亜鉛及びジアルキルアルミニウムモノハライドの製造方法を提供する。
【解決手段】塩化亜鉛とトリアルキルアルミニウムとを反応させるジアルキル亜鉛及びジアルキルアルミニウムモノハライドの製造方法であって、ハイドライド濃度が0.01質量%以上、0.10質量%以下のトリアルキルアルミニウムを用い、反応物からアルミニウムを実質的に含まないジアルキル亜鉛を分離した後、亜鉛を実質的に含まないジアルキルアルミニウムモノハライドを分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子重合触媒や、医薬品製造、太陽電池製造等に使用されるジアルキル亜鉛及びジアルキルアルミニウムモノハライドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ジアルキル亜鉛は、高分子重合や、医薬品製造の触媒あるいは反応剤として、また、太陽電池や半導体装置の電極に用いられる透明導電性膜を構成する酸化亜鉛の形成物質として、多用されている。
【0003】
ジアルキル亜鉛の製造方法の一つとして、式(1)に示す塩化亜鉛とトリアルキルアルミニウムとの反応を使用することが知られている(特許文献1、2)。
【0004】
ZnCl2+2R3Al→R2Zn+2R2AlCl (1)
この方法において、原料に用いるトリアルキルアルミニウム(R3Al)は、アルミニウムと水素とアルケンとをトリアルキルアルミニウム存在下で反応させて得られる生成物を使用しているが、R2AlH、RAlH2、AlH3等のハイドライドが不純物として含まれている。ハイドライド濃度が高いトリアルキルアルミニウムを塩化亜鉛との反応の原料として使用すると、反応の進行に伴い金属亜鉛等が析出し、反応終了後、生成したジアルキル亜鉛を蒸留する際に、析出物が装置内壁に付着し、生成物の取り出しが困難となり、進行の中断を余儀なくされる上、装置の洗浄に多大な時間を要し、また、加熱器の伝熱効果を低減するという問題がある(非特許文献1)。
【0005】
ここで、上記塩化亜鉛とトリアルキルアルミニウムとの反応において、副生物として得られるジアルキルアルミニウムモノクロライドは、各種重合反応の触媒作用を有することが認められ、その需要が増加している。
【0006】
ジアルキルアルミニウムモノクロライドは、上記反応を利用して反応液から揮発性の高いジアルキル亜鉛を蒸留により留出した後の釜残液に含有され、これから得ることができる。しかしながら、上記のように、塩化亜鉛とトリアルキルアルミニウムとの反応液からジアルキル亜鉛を留出した後の釜残液には金属亜鉛等の析出物が多量に含有され、ジアルキルアルミニウムモノクロライドの蒸留において更なる析出物の生成を促進させ、得られるジアルキルアルミニウムモノクロライドには亜鉛が含まれる上、ジアルキル亜鉛の蒸留時と同様に多量の析出物により蒸留分離を継続して行うことが困難となる。
【0007】
ジアルキルアルミニウムモノクロライド中の亜鉛濃度を低減する種々の方法が報告されている。例えば、ジアルキル亜鉛を留出した後の釜残液へ、アルキルアルミニウムハイドライドを含むトリアルキルアルミニウムを添加する方法(特許文献3)、ジアルキル亜鉛を蒸留分離後の釜残液へ、アルキルアルミニウムセスキクロライドを添加する方法(特許文献4)が挙げられる。しかしながら、アルキル基の炭素数が同一であるジアルキルアルミニウムモノクロライドとトリアルキルアルミニウムあるいはアルキルアルミニウムセスキクロライドは、沸点が近似し蒸留による分離は困難である。
【0008】
更に、ジエチル亜鉛蒸留分離後、釜残液を不活性ガス雰囲気中、150−240℃で加熱したり(特許文献7)、塩化アルミニウム及びトリエチルアルミニウムを加えて加熱し(特許文献8)、その後、ジアルキルアルミニウムモノクロライドを蒸留する方法が報告されている。しかしながら、これらの方法は工程が増加する上、得られるジアルキルアルミニウムモノクロライド中の亜鉛濃度は、200ppm、100ppm等と充分に低減されていない。
【0009】
また、上記塩化亜鉛とトリアルキルアルミニウムとの反応において、金属亜鉛の析出を抑制する方法として、酸化珪素や水等を添加物として使用することが報告されている(特許文献5、6)。しかしながら、その効果は充分とはいえず、ジアルキル亜鉛の生産効率の低下という犠牲を伴う。
【0010】
また、金属亜鉛の析出の原因となるハイドライドの濃度が低いトリアルキルアルミニウムを得るには、これを合成する際に原料のアルケンの分圧を高めることが考えられる。しかしながら、アルケン分圧を高めるとアルケンがアルキル基と反応し、多量体のアルキル基を有するトリアルキルアルミニウムが生成され、これを原料として用いることにより、塩化亜鉛とトリアルキルアルミニウムとの反応生成物中に多量体のアルキル基を有するジアルキル亜鉛が含有される。この多量体のアルキル基を有するジアルキル亜鉛は一量体のアルキル基を有するジアルキル亜鉛と比較して高沸点であり、ジアルキルアルミニウムモノクロライドの沸点と近似するため、蒸留分離して得られるジアルキルアルミニウムモノクロライドに混入してしまう。このため、トリアルキルアルミニウムを合成する際に、徒にアルケンの分圧を上昇させハイドライドの生成を抑制しても、ジアルキル亜鉛の収率が低下し、純度が高いジアルキルアルミニウムモノクロライドの分離が困難となる。
【0011】
以上のように、塩化亜鉛とトリアルキルアルミニウムとを原料とするジアルキル亜鉛及びジアルキルアルミニウムモノクロライドの製造において、反応過程で生成される析出物が、装置へ付着し、製品の純度を低下させ、生産性を著しく低下させ、ジアルキル亜鉛又はジアルキルアルミニウムモノクロライドのいずれか一方の純度、収率を上げて製造することは可能であっても、双方を、純度、収率共に高く工業的規模で製造する方法としては満足がいくものではない。
【特許文献1】特公昭37−2026号
【特許文献2】米国特許3124604号
【特許文献3】米国特許4732992号
【特許文献4】米国特許4670571号
【特許文献5】特許2863321号
【特許文献6】特許2863323号
【特許文献7】米国特許3946058号
【特許文献8】米国特許4092342号
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.,73,4585,1951
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、ハロゲン化亜鉛とトリアルキルアルミニウムとを原料とし、一の反応により、ジアルキル亜鉛とジアルキルアルミニウムモノハライドとの双方を、反応過程での析出物の生成を抑制し、析出物の装置への付着や生成物への混入を抑制し、工業的規模で効率よく、純度、収率共に高く製造することを可能とする、ジアルキル亜鉛及びジアルキルアルミニウムモノハライドの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するため、ハロゲン化亜鉛とトリアルキルアルミニウムとを原料とする反応において、原料のトリアルキルアルミニウムに、ハイドライドの濃度が0.01質量%以上、0.10質量%以下に合成したものを用いることにより、蒸留工程で析出物が生じるのを抑制させ、装置への析出物の付着量が著しく減少し、製造設備洗浄のための生産停止時間を激減することができ、しかも、多量体アルキル基を有するジアルキル亜鉛の生成も抑制でき、ジアルキル亜鉛とジアルキルアルミニウムモノハライドとの双方を、純度、収率共に高く得られることを見い出した。かかる知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明はハロゲン化亜鉛とトリアルキルアルミニウムとを反応させるジアルキル亜鉛及びジアルキルアルミニウムモノハライドの製造方法であって、
ハイドライド濃度が0.10質量%以下のトリアルキルアルミニウムを用い、反応物からアルミニウムを実質的に含まないジアルキル亜鉛を分離した後、亜鉛を実質的に含まないジアルキルアルミニウムモノハライドを分離することを特徴とするジアルキル亜鉛及びジアルキルアルミニウムモノハライドの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のジアルキル亜鉛及びジアルキルアルミニウムモノハライドの製造方法は、ハロゲン化亜鉛とトリアルキルアルミニウムとを原料とし、一の反応により、ジアルキル亜鉛とジアルキルアルミニウムモノハライドとの双方を、反応過程での析出物の生成を抑制し、析出物の装置への付着や生成物への混入を抑制し、工業的規模で効率よく、純度、収率共に高く製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のジアルキル亜鉛及びジアルキルアルミニウムモノハライドの製造方法は、ハロゲン化亜鉛とトリアルキルアルミニウムとを反応させるジアルキル亜鉛及びジアルキルアルミニウムモノハライドの製造方法であって、ハイドライド濃度が0.01質量%以上、0.10質量%以下のトリアルキルアルミニウムを用い、反応物からアルミニウムを実質的に含まないジアルキル亜鉛を分離した後、亜鉛を実質的に含まないジアルキルアルミニウムモノハライドを分離することを特徴とする。
【0017】
本発明のジアルキル亜鉛及びジアルキルアルミニウムモノハライドの製造方法は、式(1)の反応を使用するものである。
【0018】
ZnX2+2R3Al→R2Zn+2R2AlX (1)
式中、Xはハロゲン原子を示し、Rはアルキル基を示す。
【0019】
本発明に用いる原料の一つであるハロゲン化亜鉛は常温で固定であるが、吸湿しやすいので十分に乾燥しておくことが好ましく、水分含有率は0.5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以下である。ハロゲン化亜鉛としては、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、臭化亜鉛等を挙げることができ、特に塩化亜鉛が好ましい。
【0020】
もう一つの原料であるトリアルキルアルミニウム(R3Al)は、アルキル基に特に制約はないが、C1〜C5のものが好適に使用できる。
【0021】
トリアルキルアルミニウムは、ハイドライド濃度が0.10質量%以下のもの(低ハイドライド品トリアルキルアルミニウムともいう。)である。ハイドライドとしては、アルミニウムトリハイドライド(AlH3)、モノアルキルアルミニウムジハイドライド(RAlH2)、ジアルキルアルミニウムモノハイドライド(R2AlH)、が含まれる。トリアルキルアルミニウム中のハイドライド濃度が0.10質量%以下であれば、反応の進行に伴う析出物の発生が著しく低減され、装置内壁への付着物量が極めて減少される。また、ハイドライド濃度が0.01質量%未満としても0.01質量%のときと析出物の発生を抑制する効果があまり変わらない。ハイドライド濃度が0.01質量%以上であれば多量化されたアルキル基を有するトリアルキルアルミニウムの含有量を抑制することができる。
【0022】
トリアルキルアルミニウム中のハイドライドは、式(2)、式(3)、式(4)に示すように、加水分解反応で水素を発生させる。
【0023】
AlH3+3H2O → Al(OH)3+3H2 (2)
RAlH2+3H2O → Al(OH)3+RH+2H2 (3)
2AlH+3H2O → Al(OH)3+2RH+H2 (4)
これらの式中、Rはアルキル基を示す。
発生した水素の量から、数式(5)によって、トリアルキルアルミニウム中のハイドライド濃度を求める。
【0024】
ハイドライド濃度(質量%)=d×(F/3)×(1/E)×100 (5)
式(5)中のd、E、Fは以下のものを示す。
d:アルミニウムトリハイドライドの分子量
E:試料質量(g)
F:水素のモル数の測定値
具体的には、試料100gを加水分解して発生する水素が、0℃、1気圧で22.4mLであるとガスクロマトグラフィーで測定された場合、試料のハイドライド濃度は0.010質量%として得られる。
【0025】
また、トリアルキルアルミニウムは、多量体のアルキル基を有する多量化アルキル基含有トリアルキルアルミニウムの濃度が5.0質量%以下であることが好ましい。多量化アルキル基含有トリアルキルアルミニウムの濃度が5.0質量%以下であれば、多量化アルキル基含有ジアルキル亜鉛の生成を抑制することができ、反応生成物を蒸留分離して得られるジアルキルアルミニウムモノハライド中に多量体のアルキル基を有するジアルキル亜鉛の含有量が増加するのを抑制することができる。この結果、得られるジアルキルアルミニウムモノハライド中の亜鉛濃度を著しく低減することができ、産業上の利用価値が高いジアルキルアルミニウムモノハライドを得ることができる。また、目的とする反応生成物のジアルキル亜鉛の収率が低下するのを抑制することができる。
【0026】
トリアルキルアルミニウム中の多量化アルキル基含有トリアルキルアルミニウムの濃度は、以下の方法で求めた値を採用することができる。
【0027】
トリアルキルアルミニウム中の多量化アルキル基含有アルキルアルミニウムとしては、R´3Al、R´2RAl、R´R2Al(式中、R´は多量化アルキル基、Rはアルキル基を示す。)である。R´は主として2量化体のアルキル基に相当するものと考えられる。多量化アルキルアルミニウムは、式(6)、式(7)、式(8)に示すように、加水分解で多量化アルカンを生じさせる。
【0028】
R´3Al+3H2O → Al(OH)3+3R´H (6)
R´2RAl+3H2O → Al(OH)3+2R´H+RH (7)
R´R2Al+3H2O → Al(OH)3+R´H+2RH (8)
発生した多量化アルカンの量から、数式(9)によって、トリアルキルアルミニウム中の多量化アルキルアルミニウム濃度を求める。
【0029】
K=(B/3)×A÷C×100 (9)
式(9)中のK、A、B、Cは以下のものを示す。
K:多量化アルキル基含有アルキルアルミニウム濃度(質量%)
B:多量化アルカン(R´H)のモル数の測定値
A:トリ多量化アルキルアルミニウム(R´3Al)の分子量(g/モル)
C:試料質量(g)
ここで、発生する多量化アルカン量の測定はガスクロマトグラフィーによる測定値を採用することができる。
【0030】
このようなトリアルキルアルミニウムは、アルミニウム、水素、アルケンをトリアルキルアルミニウムの存在下で式(10)、(11)に示すように、反応中間体を介して合成することができる。
【0031】
2Al+3H2+4(RCH2CH23Al → 6(RCH2CH22AlH (10)
(RCH2CH22AlH+RCH=CH2 → (RCH2CH23Al (11)
式中、Rはアルキル基又は水素原子を示す。
【0032】
上記ハイドライド濃度0.1質量%のトリアルキルアルミニウムを合成するには、ハイドライド濃度が0.40〜1.0質量%程度のトリアルキルアルミニウム(以下、一般品トリアルキルアルミニウムともいう。)へさらにアルケンを供給して反応させて、製造することができる。使用する一般品トリアルキルアルミニウムは、多量化アルキル基含有アルキルアルミニム濃度が1.5〜3.5質量%程度であることが好ましい。
【0033】
低ハイドライド品トリアルキルアルミニウムの製造においてアルケン分圧を高めると、トリアルキルアルミニウム中のハイドライド濃度が低下するとともに、式(12)に示すように、アルケンが重合した多量体、主として2量化アルキル基を有するアルキルアルミニウムの濃度が増加する。
【0034】
(RCH2CH2) 3Al+RCH=CH2 → (RCH2CH2RCHCH2)(RCH2CH2)2Al (12)
このため、回分式反応におけるアルケンの分圧は、0.1〜0.6MPaが好ましく、より好ましくは0.2〜0.5MPa、温度は50〜110℃であることが好ましく、より好ましくは65〜95℃、反応時間は1〜10時間であることが好ましく、より好ましくは3〜7時間である。連続式で反応させることもできる。
【0035】
上記トリアルキルアルミニウムとハロゲン化亜鉛の反応は次のように実施することが可能である。反応器内に水分があるとトリアルキルアルミニウムが反応してしまい、ジアルキル亜鉛の収量は減少する。このため、反応は、乾燥不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。反応は無溶媒で行ってもよいが、分散媒としては、原料及び生成物と反応しない、例えば、非水溶媒を使用することができるが、反応生成物を蒸留精製することを考慮すれば、ジアルキル亜鉛よりも沸点の高い流動パラフィン等の炭化水素が好ましい。分散媒の使用割合としては、ハロゲン化亜鉛に対して、質量比で0.4〜1.0を挙げることができる。
【0036】
ハロゲン化亜鉛とトリアルキルアルミニウムの反応は発熱反応であり、液温度が20〜100℃の範囲となるように、好ましくは、30〜70℃に除熱して行うことが好ましい。反応温度が20℃以上であれば、反応速度が低速になるのを抑制することができ、100℃以下であれば、析出物の生成を抑制することができる。反応器の温度制御は原料供給流量、冷媒流量、あるいは供給時の冷媒温度を制御する方法を採用することができる。
【0037】
ハロゲン化亜鉛とトリアルキルアルミニウムの使用割合としては、ハロゲン化亜鉛1モルに対して、トリアルキルアルミニウムが1.6〜2.4モルが好ましく、より好ましくは1.8〜2.2モルである。
【0038】
反応器への原料の仕込みは、トリアルキルアルミニウム又はハロゲン化亜鉛のいずれかを先に仕込み、他方を徐々に供給することが、反応の制御が容易なことから好ましい。トリアルキルアルミニウムを先に仕込む場合は、分散媒を使用せずに反応させることができる。原料供給速度を適切にすることにより、単位時間当たりの発熱量が過大になり液温度が上昇するのを抑制し、その熱によるジアルキル亜鉛の分解消失を抑制することができる。また原料供給の終了後の攪拌は、反応終了に至る充分な時間行うことが好ましい。具体的には、先に仕込んだ原料に対して、後から加える原料の供給開始から終了までを1〜15時間、より好ましくは2〜10時間とし、その後の攪拌を0.5〜5時間、より好ましくは1〜3時間行い、反応を終了させることができる。
【0039】
反応終了後の反応生成物からアルキル亜鉛、ジアルキルアルミニウムモノハライドの分離、精製は蒸留によることが好ましい。反応生成物の蒸留に先立ち、反応生成物に含まれる析出物を分離除去することが好ましい。トリアルキルアルミニウムとして一般品を使用する場合に比べ、低ハイドライド品を用いれば析出物量は極めて低量であり、反応生成物の粘性が低下するため、濾過器を用いた濾過は良好に行うことができる。濾過器は金属メッシュ製のものが好適に使用でき、竪型円筒式のものが取り扱い上好ましい。濾過器の目開き寸法は10〜300μm、より好ましくは40〜250μmである。
【0040】
反応生成物の蒸留は、蒸留塔を用いて行うことが好ましく、使用する蒸留方法としては、回分式、連続式等いずれであってもよい。反応生成物の懸濁液を蒸留塔へ移液して、まず、ジアルキル亜鉛の蒸留精製を行う。ジアルキル亜鉛あるいはジアルキルアルミニウムモノハライドが熱分解するのを抑制するため、減圧下で行うことが好ましく、また、10Torr以上で蒸留するのが、分離効率上好ましい。反応生成物から目的とするジアルキル亜鉛及びジアルキルアルミニウムモノハライドを高純度で得る蒸留分離方法として、以下の方法によることが好ましい。
【0041】
第1の方法としては、反応生成物を蒸留して留出液として純度の高いジアルキル亜鉛を得、釜残液を蒸留して留出液として残存する総てのジアルキル亜鉛を分離した後、2回目の蒸留における釜残液を蒸留して留出液として純度の高いジアルキルアルミニウムモノハライドを得る。
【0042】
第1の方法として、具体的には、図1に示す蒸留分離方法を挙げることができる。第1の蒸留分離方法は、反応生成物から最初の蒸留1により純度の高いジアルキル亜鉛を留出させて得る。その後、釜残液を蒸留2(2回目の蒸留)により、これに含有される総てのジアルキル亜鉛を留出させて分離除去し、この蒸留2における釜残液を蒸留3(3回目の蒸留)により、これに含有されるジアルキルアルミニウムモノハライドを高純度で得る方法である。
【0043】
反応生成物から純度の高いジアルキル亜鉛を留出する蒸留1は、例えば、還流比0.1〜10、より好ましくは1〜5、圧力10〜100Torr、より好ましくは20〜50Torrで行う。釜液温度は蒸留物の物性や圧力に応じて異なるが150℃を超えない条件でジアルキル亜鉛を留出させることが好ましい。釜液の組成が変化するに伴い、釜液温度は徐々に上昇する。ジアルキル亜鉛の留出中にアルミニウムが混入するのを抑制するために、蒸留1回当たりのジアルキル亜鉛回収率、即ち、反応生成物中のジアルキル亜鉛に対し、留出させるジアルキル亜鉛の割合を95質量%以下に抑えることが好ましい。このようにすることにより、アルミニウム濃度10ppm以下のジアルキル亜鉛を留出させることができる。蒸留1の釜残液は蒸留2に供する。
【0044】
蒸留2は蒸留1の釜残液中に残存する総てのジアルキル亜鉛を留出、回収し、この釜残液から分離するジアルキルアルミニウムモノハライド中に、亜鉛が混入するのを抑制し、純度の高いジアルキルアルミニウムモノハライドを得ることを目的として行う。この蒸留2は、蒸留1に引き続き行うことができるが、蒸留1の釜残液を一旦別の貯槽に貯めておき、ジアルキル亜鉛蒸留を数回反復してこれらの蒸留における釜残液を加えて蒸留2へ供することも可能である。蒸留2は、還流比を0、圧力と釜液温度を蒸留1と同程度にして行うこともできるが、運転圧力を低下させてジアルキル亜鉛の留出を促すこともできる。蒸留2における留出液は、後バッチの反応生成物に添加することが好ましく、該留出液に含まれるジアルキル亜鉛を回収することができる。蒸留2における釜残液を蒸留3に供する。
【0045】
蒸留3は、蒸留2の釜残液に含有されるジアルキルアルミニウムモノハライドを高純度で得ることを目的とする。蒸留3は、例えば、還流比0.2〜5、より好ましくは0.5〜3、圧力10〜100Torr、より好ましくは15〜50Torrで行い、釜液温度は蒸留物の物性や運転圧力に応じて異なるが250℃を超えない条件で行うことが好ましい。蒸留3においても、留出させるジアルキルアルミニウムモノハライドを仕込んだジアルキルアルミニウムモノハライドの含有量の95質量%以下に抑えることにより、亜鉛濃度が10ppm以下のジアルキルアルミニウムモノハライドを得ることができる。蒸留3における釜残液は廃棄する。
【0046】
次に、第2の方法としては、反応生成物を蒸留して留出液として総てのジアルキル亜鉛を分離し、該留出液を蒸留して留出液として純度の高いジアルキル亜鉛を得、1回目の蒸留における釜残液を蒸留して留出液として純度の高いジアルキルアルミニウムモノハライドを得る。
【0047】
第2の方法として、具体的には、図2に示す蒸留分離方法を挙げることができる。第2の蒸留分離方法は、反応生成物から最初の蒸留4によりこれに含まれる総てのジアルキル亜鉛を留出し、この留出液を蒸留5(2回目の蒸留)により純度の高いジアルキル亜鉛を留出させて得る。その後、1回目の蒸留における釜残液を蒸留7(3回目の蒸留)により、これに含有されるジアルキルアルミニウムモノハライドを高純度で得る方法である。
【0048】
反応生成物からこれに含まれる総てのジアルキル亜鉛を留出する蒸留4は、この蒸留の釜残液にジアルキル亜鉛が残留するのを抑制し、この釜残液から留出するジアルキルアルミニウムモノハライドに亜鉛が混入するのを抑制し、純度の高いジアルキルアルミニウムモノハライドを得るために行う。蒸留4は、例えば、還流比0、圧力10〜100Torr、より好ましくは20〜50Torr、釜液温度は蒸留物の物性や圧力に応じて異なるが150℃を超えない条件で行うことが好ましい。釜液の組成が変化するに伴い、釜液温度は徐々に上昇する。得られる留出液を蒸留5に供する。
【0049】
蒸留5は、蒸留4の留出液から純度の高いジアルキル亜鉛を得るために行う。蒸留5において、還流比0.5〜5、より好ましくは1〜4、圧力10〜100Torr、より好ましくは20〜50Torrで行う。ジアルキル亜鉛の留出中にアルミニウムが混入するのを抑制するために、蒸留1回当たりのジアルキル亜鉛回収率、即ち、蒸留4の留出液中のジアルキル亜鉛に対し、留出させるジアルキル亜鉛の割合を95質量%以下に抑えれば、アルミニウム濃度10ppm以下のジアルキル亜鉛を留出させることができる。蒸留5では、釜液の組成が大きく変化しないため、釜液温度はほぼ一定となる。蒸留5における釜残液は、更に蒸留6に供する。
【0050】
蒸留6は、蒸留5の釜残液中に残存するジアルキル亜鉛を留出、回収する目的で行う。この蒸留6は、蒸留5に引き続き行うことができるが、蒸留5の釜残液を一旦別の貯槽に貯めておき、ジアルキル亜鉛蒸留を数回反復してこれらの蒸留における釜残液を加えて蒸留6へ供することも可能である。蒸留6は、蒸留4と同様の条件で留出することもできる。蒸留6における留出液は、後バッチの蒸留4留出液に加えて、蒸留5を行うこともできる。蒸留6における釜残液は廃棄する。
【0051】
蒸留7は、蒸留4における釜残液を留出し、純度の高いジアルキルアルミニウムモノハライドを得るために行う。蒸留7は、例えば、還流比0.2〜5、より好ましくは0.5〜3、圧力10〜100Torr、より好ましくは20〜50Torrで行う。留出させるジアルキルアルミニウムモノハライドを、仕込んだ液に含まれるジアルキルアルミニウムモノハライドの95質量%以下に抑えることにより、亜鉛濃度が10ppm以下のジアルキルアルミニウムハライドを得ることができる。蒸留7における釜残液は廃棄する。
【0052】
上記方法により実質的にアルミニウムを含有しない、具体的には、アルミニウムの濃度が10ppm以下のジアルキル亜鉛と、実質的に亜鉛を含有しない、具体的には、亜鉛の濃度が10ppm以下のジアルキルアルミニウムモノハライドを得ることができる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明のジアルキル亜鉛及びジアルキルアルミニウムモノハライドの製造方法について、実施例を挙げて具体的に説明する。
[実施例1]
[トリエチルアルミニウムの製造]
まずハイドライド濃度の低いトリエチルアルミニウムを以下のように製造した。
【0054】
攪拌機、原料供給配管(トリエチルアルミニウム、エチレン)、窒素配管、温度計を装着してある5m3ステンレス製反応器を窒素置換後、圧力を0.01MPaGとし、ハイドライド濃度0.7%、ブチル基含有アルキルアルミニウム濃度2.1%のトリエチルアルミニウム3200kgを仕込んだ。攪拌機を作動させ液温度を80℃まで上昇させた後、エチレンを供給して圧力を0.39MPaGに保持した。4時間攪拌後にエチレン供給を止め、冷却した後、ハイドライド濃度0.05%、ブチル基含有アルキルアルミニウム濃度3.5%の低ハイドライド品トリエチルアルミニウムを得た。
【0055】
[塩化亜鉛とトリエチルアルミニウムとの反応]
攪拌機、原料供給配管(塩化亜鉛、トリエチルアルミニウム、流動パラフィン)、窒素配管、温度計を装着してある6m3炭素鋼製反応器を窒素置換後、圧力を0.01MPaGとし、低ハイドライド品2300kgを仕込んだ。攪拌機を作動させつつ、この反応器へ塩化亜鉛1400kgを10時間かけて供給した。その間、反応器下部に螺旋状に沿わせた冷却水配管に冷却水を流し、反応熱を除去した。反応温度は初期36℃から最大40℃まで上昇した。塩化亜鉛供給終了後2時間攪拌した。反応終了後の懸濁液(反応生成物)を窒素で0.05MPaGまで昇圧して2m2、100μmフィルターで濾過しながら釜容積6m3の炭素鋼製5段シーブトレイ型蒸留塔へ移液した。
【0056】
捕集した析出物の量は11.1kgであった。濾過に要した時間は14分、析出物1kg当たりの平均濾過時間は1.3分であった。反応器の開放点検で、攪拌機や反応器内壁への析出物付着は認められなかった。濾過器の洗浄作業では、流動パラフィンによる逆洗を含めた作業時間が1.5時間であった。
【0057】
[蒸留]
得られた懸濁液の蒸留を行った。
【0058】
釜液を加熱する熱交換器は竪型円筒多管式で、内径25.4mm、長さ3500mm、57本の管を有しており、管側を流れる液を胴側の熱媒で加熱した。30Torrの減圧下、濾液3600kgの温度を30℃から徐々に90℃まで上昇させて蒸留した。還流比は3とし、蒸留1、2を連続して行った。蒸留1における留出分1100kgを得るのに11時間、蒸留2における留出分500kgを得るのに5時間を要した。この蒸留1の留出分はジエチル亜鉛純度は99.9%以上で、アルミニウム濃度は10ppm以下であった。蒸留2の留出分はジエチル亜鉛が70kg、ジエチルアルミニウムモノクロライドが430kgであった。
【0059】
釜液2000kgは貯槽へ移液した。蒸留終了後、釜内壁や熱交換器を開放点検したところ、これらの内壁への析出物付着はなかった。反応及び蒸留1、蒸留2と同様な操作を2回繰り返し、貯槽にためた蒸留釜液4000kgを蒸留塔に供給し、圧力27Torr、釜液温度144〜149℃、還流比1の条件のもと、蒸留3を行った。20時間かけて留出分3500kgを得た。留出分の分析からジエチルアルミニウムモノクロライド純度は99.9%以上で亜鉛濃度は10ppm以下であった。蒸留終了後、釜内壁や熱交換器を開放点検したところ、これらの内壁への析出物付着はなかった。合成1回当たり、蒸留により得たアルミニウムを実質的に含まないジエチル亜鉛の収量は1100kg、蒸留により得た亜鉛を実質的に含まないジエチルアルミニウムモノクロライドの収量は1750kgであった。
【0060】
[実施例2]
[塩化亜鉛とトリエチルアルミニウムとの反応]
実施例1で用いた反応器へ、塩化亜鉛1400kgと流動パラフィン930kgを仕込み、反応器内を窒素置換して圧力を0.01MPaGとし、冷却水を流し、攪拌機を作動させつつ、ハイドライド濃度0.04%、ブチル基含有アルキルアルミニウム濃度3.6%のトリエチルアルミニウム2300kgを9時間かけて供給した。反応温度は初期36℃から最大41℃まで上昇した。トリエチルアルミニウム供給終了後2時間攪拌し、反応終了後の懸濁液を窒素で0.05MPaGまで昇圧して2m2、100μmフィルターで濾過しながら、実施例1で用いた蒸留塔へ移液した。
【0061】
捕集した析出物の量は18.5kgであった。濾過に要した時間は25分、析出物1kgあたりの平均濾過時間は1.4分であった。また反応器の開放点検で、攪拌機や反応器内壁への析出物付着は認められなかった。濾過器の洗浄作業では、流動パラフィンによる逆洗を含めた作業時間が1.5時間であった。
【0062】
[蒸留]
得られた濾液4500kgを30Torrの減圧下、釜液の温度を35℃から徐々に95℃まで上昇させて還流比は0として、蒸留4を行った。12時間をかけて留出分1200kgを抜き出し、蒸留釜に3300kgが残った。釜液は貯槽へ移液した。蒸留終了後、釜内壁や熱交換器を開放点検したところ、これらの内壁への析出物付着はなかった。反応及び蒸留4の操作を3回反復し、貯槽にためた留分3600kgを蒸留塔に供給した。圧力30Torr、釜液温度38℃、還流比3の条件で、50時間かけて蒸留5を行い、留出分3100kgを得た。留出分の分析からジエチル亜鉛純度は99.9%以上で、アルミニウム濃度は10ppm以下であった。釜には500kgが残り、貯槽へ移液した。蒸留5を3回繰り返し、貯槽にためた釜液1500kgを蒸留塔に供給した。ここへさらに流動パラフィン2000kgを加えた後、30Torrの減圧下、釜液の温度を65℃から徐々に95℃まで上昇させて、還流比0として蒸留6を行った。10時間をかけて1000kgを留出し、留出分の分析の結果ジエチル亜鉛純度99.8%であった。蒸留4の釜液3300kgを蒸留塔に供給し、圧力27Torr、釜液温度144〜149℃、還流比1の条件で14時間かけて蒸留7を行った。留出分2050kgの分析からジエチルアルミニウムモノクロライド純度は99.9%以上で亜鉛濃度は10ppm以下であった。蒸留終了後、釜内壁や熱交換器を開放点検したところ、これらの内壁への析出物付着はなかった。合成1回当たり、蒸留により得たアルミニウムを実質的に含まないジエチル亜鉛の収量は1033kg、蒸留により得た亜鉛を実質的に含まないジエチルアルミニウムモノクロライドの収量は2050kgであった。
【0063】
[比較例1]
トリエチルアルミニウムとして、ハイドライド濃度0.7%、ブチル基含有アルキルアルミニウム濃度2.2%のトリエチルアルミニウムを使用した以外は実施例1と同様に反応を行い、反応終了後、濾過を行った。濾過器で捕集した析出物の量は104kgであった。濾過の途中で液が流れなくなるため、7回に分けて行った。各々の濾過に80分、92分、110分、127分、135分、158分、185分、合計887分を要した。濾過回数を重ねるごとに目詰まりが多くなるので、濾過時間が徐々に長くなった。析出物1kg当たりの平均濾過時間は8.5分であり、ハイドライド濃度0.05%、および0.04%のトリエチルアルミニウムを原料とした実施例1、実施例2に比べて、付着物の粘性が著しく高かった。流動パラフィンによる逆洗を含めた濾過器の洗浄作業時間は、1回当たり平均7時間を要した。目詰まりを完全に解消できないまま、次の濾過に使用した。濾液3450kgを蒸留し、蒸留1における留出分900kgを得るのに15時間、蒸留2における留出分400kgを得るのに9時間を要した。圧力30Torrにおいて、釜液温度が30℃から90℃まで上昇した。この蒸留1の留出分はジエチル亜鉛純度は99.9%以上で、アルミニウム濃度は10ppm以下であった。蒸留2の留出分はジエチル亜鉛が50kg、ジエチルアルミニウムモノクロライドが350kgであった。反応器の開放点検では、攪拌機および反応器内壁へ大量の析出物が強固に付着しているのを認めた。この付着物の除去洗浄作業に5日間を要した。蒸留塔釜内壁、釜液の加熱用熱交換器内壁にも、析出物が強固に付着しているのを認めた。蒸留塔釜内壁、熱交換器内壁の付着物除去洗浄作業には3日間を要した。蒸留により得たアルミニウムを実質的に含まないジエチル亜鉛の収量は900kgであった。
【0064】
[比較例2]
低ハイドライド品トリエチルアルミニウムの製造において、反応器にエチレンを供給して圧力を0.53MPaGに保持し、80℃で9時間反応させて得たハイドライド濃度0.005%、ブチル基含有アルキルアルミニウム濃度5.5%のトリエチルアルミニウムを使用した以外は実施例1と同様に反応を行い、反応終了後、濾過を行った。濾過器で捕集した析出物の量は12.7kgであった。濾過に要した時間は19分、析出物1kg当たりの平均濾過時間は1.4分であった。この濾液3600kgを30Torrの減圧下、釜液の温度を30℃から徐々に90℃まで上昇させ、還流比3として蒸留1、蒸留2を行った。蒸留1の留出分1050kgを得るのに11時間、蒸留2の留出分500kgを得るのに5時間を要した。この蒸留1の留出分のジエチル亜鉛純度は99.9%以上で、アルミニウム濃度は10ppm以下であった。蒸留2の留出分のジエチル亜鉛は70kg、ジエチルアルミニウムモノクロライドは430kgであった。釜液2050kgは貯槽へ移液した。蒸留終了後、釜内壁や熱交換器を開放点検したところ、これらの内壁への析出物付着はなかった。反応及び蒸留1、蒸留2と同様な操作を2回繰り返し、貯槽にためた蒸留釜液4100kgを蒸留塔に供給した。圧力27Torr、釜液温度144〜149℃、還流比1の条件で蒸留3を行い、留出分3500kgを得た。ジエチルアルミニウムモノクロライド純度は99.9%で亜鉛濃度は510ppmであった。合成1回当たり、蒸留により得たアルミニウムを実質的に含まないジエチル亜鉛の収量は1050kg、蒸留により得た亜鉛を510ppm含むジエチルアルミニウムモノクロライドの収量は1750kgであった。
【0065】
[比較例3]
低ハイドライド品トリエチルアルミニウムの製造において、反応器にエチレンを供給して圧力を0.18MPaGに保持し、80℃で2時間反応させて得たハイドライド濃度0.13%、ブチル基含有アルキルアルミニウム濃度3.1%のトリエチルアルミニウムを使用し、反応終了後の懸濁液を濾過しない以外は実施例1と同様に反応を行った。反応懸濁液3700kgを30Torrの減圧下、釜液の温度を30℃から徐々に90℃まで上昇させ、還流比は3として、蒸留1、蒸留2を行った。蒸留1の留出分1000kgを得るのに17時間、蒸留2の留出分500kgを得るのに10時間を要した。この蒸留1の留出物のジエチル亜鉛純度は99.9%以上で、濃度は10ppm以下であった。蒸留2の留出分のジエチル亜鉛は70kg、ジエチルアルミニウムモノクロライドは430kgであった。釜液2100kgは貯槽へ移液した。蒸留終了後、釜内壁や熱交換器を開放点検したところ、蒸留塔釜内壁、釜液の加熱用熱交換器内壁にも、析出物が強固に付着しているのを認めた。蒸留塔釜内壁、熱交換器内壁の付着物除去洗浄作業には3日間を要した。
【0066】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明のジアルキル亜鉛及びジアルキルアルミニウムモノハライドの製造方法の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明のジアルキル亜鉛及びジアルキルアルミニウムモノハライドの製造方法の他の例を示す概略構成図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化亜鉛とトリアルキルアルミニウムとを反応させるジアルキル亜鉛及びジアルキルアルミニウムモノハライドの製造方法であって、
ハイドライド濃度が0.01質量%以上、0.10質量%以下のトリアルキルアルミニウムを用い、反応物からアルミニウムを実質的に含まないジアルキル亜鉛を分離した後、亜鉛を実質的に含まないジアルキルアルミニウムモノハライドを分離することを特徴とするジアルキル亜鉛及びジアルキルアルミニウムモノハライドの製造方法。
【請求項2】
トリアルキルアルミニウム中の多量化アルキル基を含有するアルキルアルミニウムの濃度が5.0質量%以下であることを特徴とする請求項1記載のジアルキル亜鉛及びジアルキルアルミニウムモノハライドの製造方法。
【請求項3】
反応生成物を蒸留して留出液として純度の高いジアルキル亜鉛を得、釜残液を蒸留して留出液として残存する総てのジアルキル亜鉛を分離した後、2回目の蒸留における釜残液を蒸留して留出液として純度の高いジアルキルアルミニウムモノハライドを得ることを特徴とする請求項1又は2記載のジアルキル亜鉛及びジアルキルアルミニウムモノハライドの製造方法。
【請求項4】
2回目の蒸留における残存する総てのジアルキル亜鉛を含有する留出液を、後バッチの反応生成物に添加することを特徴とする請求項3記載のジアルキル亜鉛及びジアルキルアルミニウムモノハライドの製造方法。
【請求項5】
反応生成物を蒸留して留出液として総てのジアルキル亜鉛を分離し、該留出液を蒸留して留出液として純度の高いジアルキル亜鉛を得、1回目の蒸留における釜残液を蒸留して留出液として純度の高いジアルキルアルミニウムモノハライドを得ることを特徴とする請求項1又は2記載のジアルキル亜鉛及びジアルキルアルミニウムモノハライドの製造方法。
【請求項6】
2回目の蒸留における釜残液を蒸留して残存する総てのジアルキル亜鉛を留出液として分離し、該留出液を後バッチの1回目の蒸留における留出液に添加することを特徴とする請求項5記載のジアルキル亜鉛及びジアルキルアルミニウムモノハライドの製造方法。
【請求項7】
トリアルキルアルミニウムがトリエチルアルミニウムであることを特徴とする請求項1から4のいずれか記載のジアルキル亜鉛及びジアルキルアルミニウムモノハライドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−263322(P2009−263322A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118408(P2008−118408)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(591153178)日本アルキルアルミ株式会社 (4)
【Fターム(参考)】