説明

ジェットミルを用いて微細な粒子を形成するための方法

【課題】機械式のミルを用いた粉砕に比べて粉砕材料の汚染低減をもたらし、砕材料の粒度分布が改善され、しかも粉砕中に粉砕材料の表面改質の実施を可能にする、できるだけエネルギ効率の良い粉砕方法を提供する。
【解決手段】ジェットミル1を用いて微細な粒子を形成するために、粉砕ガスが、≦4バール(絶対)の圧力と、100℃よりも低い温度とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ジェットミル、ジェットミルを用いて微細な粒子を形成するか、もしくは発生させるための方法、微細な粒子を同時に表面改質するための方法ならびに該方法を用いて製造された製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ジェットミルを用いた粉砕の場合、粉砕しかつ/または分級したい材料は、比較的粗い粒子と比較的微細な粒子とから成っている。これらの粒子は空気流中で一緒に案内されて、製品流を形成する。この製品流はジェットミルの風力分級器のハウジング内に導入され得る。製品流は半径方向で風力分級器の分級羽根車内に流入する。この分級羽根車内では、粗粒子が空気流から分離され、空気流は微粒子と共に軸方向で分級羽根車から流出管を通って流出する。濾別したい微粒子または製造したい微粒子を有する空気流は、次いでフィルタに供給され得る。このフィルタ内では、流体、たとえば空気と、微粒子とが互いに分離される。
【0003】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第19824062号明細書に基づき公知のジェットミルでは、このジェットミルの粉砕室内にさらに、高い流れエネルギを有する熱蒸気から成る、少なくとも1つのエネルギ富含の粉砕ジェットが導入される。この場合、粉砕室は前記少なくとも1つの粉砕ジェットのための流入装置の他に、粉砕材料のための流入部および製品のための流出部を有しており、粉砕材料と少なくとも1つの粉砕ジェットとの合流の範囲において、熱蒸気と粉砕材料とは少なくともほぼ等しい温度を有している。
【0004】
さらに、たとえば欧州特許出願公開第0472930号明細書に基づき、特にジェットミルのための相応する風力分級器が公知である。この公知の風力分級器およびその作動方法は基本的には極めて満足し得るものである。
【0005】
上で挙げた方法には、次のような欠点がある。すなわち、前記方法は器械的に高い手間をかけないと作動させることができず、しかも極めて多くのエネルギがかかる。この問題を最小限に抑えるために、ドイツ連邦共和国特許第102006023193号明細書には、粉砕圧を4.5バールの下へ低下させる方法が提案されている。この方法はエネルギ効率の点では改良されているが、しかし相変わらず作動媒体(粉砕ガス)の高い温度が与えられているという欠点を有している。作動媒体圧および作動媒体温度の形成のためには、ドイツ連邦共和国特許第102006023193号明細書では、たとえばドイツ連邦共和国特許第19824062号明細書に記載の手段が挙げられているか、もしくはコンプレッサの使用が提案されている。
【0006】
ジェットミルに対して択一的に、機械式のミルもしくは分級型(klassierend.)の機械式のミルの使用が知られている。しかし、このようなミルには、粉砕材料がロータ/ステータとの直接的な接触に基づいてミルに高い摩耗を生ぜしめる原因となるという欠点がある。このことは、やはりミルのために過度に高い保守コストを招くと同時に、粉砕材料の望ましくない汚染をも招いてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願公開第19824062号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0472930号明細書
【特許文献3】ドイツ連邦共和国特許第102006023193号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の課題は、機械式のミルもしくは分級型の機械式のミルを用いた粉砕に比べて粉砕材料の汚染低減をもたらすような、できるだけエネルギ効率の良い粉砕方法を提供することである。特別な課題においては、新規方法による粉砕材料の粒度分布が、機械式のミルもしくは分級型の機械式のミルを用いた粉砕方法に比べて少なくとも等価となるか、またはそれよりも良好になることが目標である。
【0009】
本発明の特別な課題は、機械式のミルもしくは分級型の機械式のミルを用いた粉砕に比べて、粉砕材料の汚染低減をもたらすと同時に、粉砕中に粉砕材料の表面改質(たとえばコーティング、ドーピング)を実施することを可能にするような、できるだけエネルギ効率の良い粉砕方法を提供することである。
【0010】
別の課題は、たとえば鉄による僅かなコンタミネーションもしくは汚染しか有しない新規の粉末状の材料を提供することにある。
【0011】
明示されていない別の課題は、以下の説明、特許請求の範囲、実施形態および図面の全体関係から明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上で挙げた課題は、特許請求の範囲、以下に行う説明、実施形態および図面において詳しく定義された方法および該方法において詳しく定義された製品により解決される。
【0013】
この課題を解決するために本発明の方法では、ジェットミルを用いて微細な粒子を形成するための方法において、粉砕ガスが、≦4バール(絶対)の圧力と、100℃よりも低い温度とを有しているようにした。
【発明の効果】
【0014】
本発明者は意想外にも、無機材料および有機材料をジェットミルにおいて4バール(絶対)よりも低い圧力と、100℃よりも低い温度とで、これらの材料が引き続き、同一の材料を、ロータ/ステータ(分級型および非分級型)を備えたミルにおいて粉砕した場合に得られる粒子スペクトルに少なくとも相当するような粒子スペクトルを有するように粉砕することが可能であることを見い出した。したがって、製品を同じ粒子スペクトルで、ただし、より少ない不純物含量で製造することができる。
【0015】
しかし、穏やかな粉砕条件に基づき、本発明による低圧粉砕法を用いると、機械式のミルに比べて減じられた微粒含量および/またはひいてはより狭い粒度分布を有する粒子を製造することも可能である。
【0016】
さらに、本発明者は、この方法の場合、粉砕と同時に粉砕材料のコーティングもしくはドーピングを実施することが可能であることを見い出した。このことは特筆すべきことである。なぜならば、機械式もしくは分級型の機械式のミルにおいては、一般にミルのロータ/ステータ/壁における焼付きが生じので、粉砕と同時にコーティングもしくはドーピングを実施することが不可能であるからである。本発明による方法においては圧力および温度が極めて低いので、粉砕と同時に粉砕材料のコーティングもしくはドーピングを実施することが可能である。
【0017】
低い圧力および低い温度はさらに、感熱性の表面改質剤の使用もしくは公知先行技術のジェット粉砕方法では使用することのできない感熱性の粉砕材料、たとえば砂糖の粉砕を可能にする。
【0018】
さらに特筆すべきことは、本発明による乾式粉砕・コーティング方法は、穏やかな条件下に、公知の方法では製造不可能であった製品を製造することを可能にする。すなわち、たとえば、ケイ酸を粉砕すると同時に、ポリエーテル含量が失われることなしに、シリコーンポリエーテルアクリレートポリマによってコーティングすることが可能である。このポリマは製造条件に基づき、部分的に10〜20重量%のポリエーテル過剰量を有している。従来の湿式粉砕においてはこの過剰量が部分的に洗出されてしまうことが判った。それに対して本発明による乾式粉砕方法では、ポリエーテル過剰量が維持されるので、ケイ酸粒子の、従来とは完全に異なる被覆体を製造することができる。このことは粒子の改善された使用技術的特性をもたらす。しかし他方において、この新規方法はエコロジカル的(生態学的)およびエコノミカル的(経済的)な利点をも持っている。なぜならば、ポリエーテルによる廃水の汚染を著しく減少させるか、もしくはそれどころか回避することができるからである。
【0019】
特に高研磨性の固形物、たとえば歯磨き用の固形物を粉砕する場合、本発明による方法は特別な利点を有している。このような固形物はミルに特に高い摩耗を生ぜしめるが、しかしそれと同時にヒトや動物の美容処理のための製品に対しては、不純物含量に関して高い要求が課せられている。
【0020】
したがって、本発明の対象は、ジェットミルを用いて微細な粒子を形成するか、もしくは発生さえるための方法において、粉砕ガスが、≦4バール(絶対)の圧力と、100℃よりも低い温度とを有していることを特徴とする、微細な粒子を形成するための方法である。
【0021】
さらに本発明の対象は、粉砕ガスとして圧縮されたガスを使用して、ジェットミルを用いて微細な粒子を形成するための方法において、粉砕ガスが、≦4バール(絶対)の圧力と、100℃よりも低い温度とを有しており、粉砕時に、粉砕材料の粒子の表面の少なくとも一部がコーティング剤もしくはドーピング剤で被覆されるようにコーティング剤もしくはドーピング剤を添加することを特徴とする、微細な粒子を形成するための方法である。
【0022】
同じく本発明の対象は、ジェットミル、有利には流動層カウンタジェットミルまたは密層ジェットミル(Dichtbettstrahlmuehle)または楕円管ミル(Ovalrohrmuehle)またはスパイラルジェットミルにおいて、作動媒体の圧力形成のためにブロワ、有利には回転ピストンブロワまたはラジアルブロワが使用されることを特徴とするジェットミルである。
【0023】
本発明による方法は、公知先行技術の方法と比較して著しくエネルギ最適化された方法である(低い圧力、低い温度、少ないミル摩耗、器械にかかる減じられた手間)。
【0024】
本発明による方法において有利に使用される本発明によるジェットミルは、公知先行技術のジェットミルに比べて大きな利点を有している。すなわち、本発明によるジェットミルは作動媒体の圧力および温度を形成するためのコンプレッサまたは加圧釜を必要とせず、単純なブロワ、有利には回転ピストンブロワまたはラジアルブロワが使用され得る。このことは、器械にかかる手間を著しく減少させ、仕入れコストを低下させ、かつ保守コストを減少させる。保守コストは、本発明による方法において低い温度および圧力が使用されることによっても低減される。
【0025】
本発明による方法の別の利点は、既存のジェットミルを用いて当該方法を実施することができることである。
【0026】
本発明による方法を用いて粉砕された製品の粒度分布、特にd50値は、機械式のミルもしくは分級型の機械式のミルを用いて得られた粒度分布と同様に調節され得る。しかし、より効果的なエネルギ変換率に基づき、本発明における粉砕材料における極微細含量は、機械式のミルもしくは分級型の機械式のミルを用いた粉砕に比べて著しく低減され得る。これにより、本発明における粉砕材料は著しく改善された、使用技術的な特性、たとえば低減された増粘作用を有している。本発明による粉砕材料の別の利点は、機械式のミルもしくは分級型の機械式のミルを用いて製造された粉砕材料に比べて、著しく低い、ミルの摩耗物質による汚染である。このことは特に、高い純度を有しなければならない製品において極めて有利になる。
【0027】
既に述べたように、本発明による方法は粉砕と共に粉砕材料のコーティングもしくはドーピングを実施することを可能にする。このことは、特にこのコーティングもしくはドーピングが、100℃よりも下の低い温度で行われ得るので、熱に敏感な感熱性のコーティング剤もしくはドーピング剤もしくは粉砕材料(たとえば砂糖、トリメチロールプロパン、Tego Rad 2300等)が使用され得るという理由からも有利である。
【0028】
本発明による方法は、粉砕材料の物理化学的な特性、たとえばDBP吸収量が十分に維持される、穏やかな粉砕方法である。
【0029】
さらに利点としては、本発明による方法が多目的に、つまり有機材料のためにも無機材料のためにも使用可能であることが挙げられる。これにより、本発明による方法は、たとえばドイツ連邦共和国特許第102006023193号明細書に記載の、特定の無機材料のためにしか使用可能でない方法とは異なっている。
【0030】
以下に、本発明の対象を詳しく説明する。
【0031】
本発明の有利な実施態様および/または好ましい実施態様は特許請求の範囲の各請求項およびその組合せならびに本願明細書全体から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】ジェットミルの1実施形態を部分的に断面して示す概略図である。
【図2】ジェットミルの風力分級器の1実施形態を鉛直方向の配置で示す中心長手方向断面図であり、ただし分級羽根車には分級空気と固体粒子とから成る混合物のための流出管が対応配置されている。
【図3】風力分級器の分級羽根車の鉛直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に説明する、図面に図示されている実施形態および使用形態につき、本発明を例示的にのみ詳しく説明する。すなわち、本発明はこれらの実施形態および使用形態に限定されるものではないか、または個々の実施形態および使用形態内での各特徴組合せに限定されるものではない。方法特徴および装置特徴はそれぞれ装置説明もしくは方法説明からも同様に明らかとなる。
【0034】
具体的な実施形態と関連して記載されかつ/または図示されている個々の特徴は、これらの実施形態またはこれらの実施形態のその他の特徴との組合せに限定されるものではなく、技術的な可能性の枠内では、本明細書中に特記されていなくとも、それぞれ別の変化形と組み合わされ得る。
【0035】
個々の図面において、同一または類似のコンポーネントあるいは同一作用または類似作用を有するコンポーネントは同じ符号で示されている。以下に説明されているか、または説明されていないかにはかかわらず、符号を備えていないような特徴も図面につき明らかとなる。他方において、本明細書中に包含されているが、図面には見えていないか、または図示されていない特徴も、当業者にとっては容易に理解し得る。
【0036】
ジェットミルを用いて微細な粒子を形成するための方法において、本発明により規定された新規ステップは、個々のステップの図式による図示が不要となるほどに明快でかつ分かり易いものである。
【0037】
本発明による方法は、粉砕ガスとして圧縮されたガスを使用して、ジェットミルを用いて微細な粒子を形成するための方法において、粉砕ガスが、≦4バール(絶対)の圧力と、100℃よりも低い温度とを有していることを特徴とする、微細な粒子を形成するための方法である。
【0038】
前記方法は有利にはさらに、粉砕ガスの温度が、95℃よりも低いか、もしくは95℃に等しく、有利には90℃よりも低いかもしくは90℃に等しく、特に有利には80℃よりも低いかもしくは80℃に等しく、極めて特に有利には15〜80℃であることにより改良されていてよい。第1の特に有利な変化形では、粉砕ガスの温度が50〜80℃であり、第2の特に有利な変化形では15〜50℃である。粉砕ガスの温度はミル内への粉砕ガス流入部で測定される。
【0039】
粉砕材料の圧力は有利には3バールよりも低く、特に有利には2バールよりも低く、極めて特に有利には1バールよりも低く、殊に有利には0.5〜1バールであり、極めて殊に有利には0.15〜0.5バールである。
【0040】
粉砕ガス圧と温度との次の組合せが特に有利である:0.15〜0.5バールおよび15〜50℃もしくは0.15〜0.5バールおよび50〜80℃。このための例は0.3バールと20℃もしくは0.4バールと75℃の組合せである。
【0041】
本発明による方法では、有機材料も無機材料も粉砕され得る。有機材料のための例は炭水化物(たとえば砂糖)およびカルボキシメチルセルロースである。
【0042】
有利な無機材料は、非晶質および結晶性の無機固形物である。結晶性の無機固形物は有利には二酸化チタン、酸化アルミニウムおよび炭酸カルシウムであり、非晶質の固形物は有利にはゲル、あるはまたその他の種類の非晶質の固形物である。さらに、セラミックスのような非晶質および結晶性の無機固形物(たとえば焼結セラミック)が有利である。特に有利には、少なくとも1種の金属および/または金属酸化物を含有するか、または該金属および/または金属酸化物から成る固形物、特に元素の周期律系の第3主族および第4主族の非晶質の酸化物である。このことはゲルについても、その他の種類の構造を有する非晶質の固形物についても云える。特に有利には、沈降ケイ酸、熱分解法ケイ酸、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、アークケイ酸、たとえばクヴァルツヴェルク社(Fa. Quarzwerke GmbH)のアモジル(Amosil)、ガラスおよびシリカゲルであり、この場合、シリカゲルはヒドロゲルをもエアロゲルをもキセロゲロをも包含する。
【0043】
本発明による方法では、流動層カウンタジェットミルまたは密層ジェットミルが使用されると有利である。
【0044】
導入された粉砕ジェットを形成するためには、作動媒体として(「作動媒体」とは、本発明の枠内では作動媒質および粉砕ガスと同意義で使用される)、原理的には作動条件においてガス状であるあらゆる物質または物質混合物を使用することができる。特に有利には、空気および/または水素ガスおよび/またはアルゴンおよび/または希ガス、たとえばヘリウムおよび/または窒素および/または前記作動媒体の混合物が使用される。極めて特に有利には、空気である。不活性化ガスの使用はとりわけ酸化敏感な粉砕材料もしくは無機粉砕材料を粉砕する場合に有利である。
【0045】
粉砕ジェットを形成するためには、たとえば慣用のジェットミル装置において存在しているような圧力タンク、あるいはまたコンプレッサを使用することができる。しかし、本発明の特別な実施態様では、粉砕ジェットの圧力がブロワ、特に有利には回転ピストンブロワまたはラジアルベンチレータによって形成される。これにより、粉砕装置の投資コストも運転・保守コストも著しく低減され得る。粉砕ジェットを形成するためのブロワを備えた、このような特別な新規ジェットミルは本発明の対象である。
【0046】
さらに有利には、ジェットミルが分級器に結合される。この分級器は内部の分級器であっても、外部の分級器であってもよい。特に有利には、ジェットミルに組み込まれた動的な風力分級器が使用される。この場合、さらに別の極めて有利な実施態様では、風力分級器が、半径減少と共に増大する内寸高さまたは半径にわたって一定となる内寸高さを有する分級ロータまたは分級羽根車を有しているので、作動時では、分級ロータまたは分級羽根車の通流される流過面は少なくともほぼ一定となる。択一的または付加的な実施態様では、風力分級器が、特に交換可能な浸漬管を備えた分級ロータまたは分級羽根車を有しており、この浸漬管は、分級ロータまたは分級羽根車が回転すると一緒に回転するように形成されている。
【0047】
本発明による方法のさらに別の有利な実施態様では、流れ方向に横断面拡張を有する微粒流出室が設けられている。
【0048】
図1には、前で説明した方法を実施するためのジェットミル1の1実施形態が概略的に図示されている。既に前で述べたように、本発明による方法は、当業者にとって自体公知である装置および手段を用いて簡単に実現可能である。しかし、これによって、本発明により新規に提供される方法の個々のステップも当業者に知られているというわけではない。
【0049】
図1に示したジェットミル1は、粉砕室3を取り囲む円筒状のハウジング2と、粉砕室3の高さのほぼ1/2の高さに設けられた粉砕材料供給部4と、粉砕室3の下側の範囲に設けられた少なくとも1つの粉砕ジェット流入部5と、粉砕室3の上側の範囲に設けられた製品流出部6とを有している。粉砕室3には、回転可能な分級羽根車8を備えた風力分級器7が配置されている。この風力分級器7を用いて粉砕材料(図示しない)は分級され、これにより、規定の粒度よりも下の粉砕材料だけが、製品流出部6を通じて粉砕室3から導出され、選択された値よりも上の粒度を有する粉砕材料は引き続き粉砕過程に供給される。
【0050】
分級羽根車8は、風力分級器において汎用されている分級羽根車であってよく、この分級羽根車の羽根(あとでたとえば図3につき説明する)は、半径方向に延びる複数の羽根通路を画定しており、これらの羽根通路の外縁部において分級空気が流入して、比較的小さな粒度または質量の粒子を中央の流出部および製品流出部6へ連行する。それに対して、比較的大きな粒子または比較的大きな質量の粒子は遠心力の影響を受けてはねつけられる。特に風力分級器7および/または少なくともその分級羽根車8は、欧州特許出願公開第0472930号明細書に記載の少なくとも1つの構成特徴を備えている。
【0051】
たとえば半径方向に向けられた、唯一つの流入開口または流入ノズル9から成る粉砕ジェット流入部5しか設けられていなくてよい。これにより、唯一つの粉砕ジェット10を、粉砕材料供給部4から粉砕ジェット10の範囲に流入する粉砕材料粒子に高いエネルギを持って衝突させ、かつこれらの粉砕材料粒子を小さな部分粒子に分解させることができる。これらの部分粒子は分級羽根車8によって吸い込まれ、そしてこれらの部分粒子が、相応して小さな大きさもしくは質量を有している場合には、製品流出部6を通じて外方へ向かって搬送される。しかし、対(ペア)になって互いに直径方向で向かい合って位置する粉砕ジェット流入部5を用いると一層良好な作用が得られる。この場合、粉砕ジェット流入部5は互いに平行な2つの粉砕ジェット10を形成する。これらの粉砕ジェット10は、特に複数の粉砕ジェット対が形成される場合には、唯一つの粉砕ジェット10を用いて可能となるよりも粒子分解を一層強力に生ぜしめる。
【0052】
さらに、たとえば粉砕材料供給部4と粉砕ジェット10の範囲との間の内部の加熱源11の使用または粉砕材料供給部4の外部の範囲に設けられた相応する加熱源12の使用または熱損失の回避下に粉砕材料供給部4に流入する、もともと既に温かい粉砕材料の粒子の加工によって、加工温度に影響を与えることができる。このためには、供給管13が、断熱性のジャケット14によって取り囲まれている。加熱源11または加熱源12は、該加熱源が使用される場合に、基本的には任意であってよく、したがって目的に合わせて使用可能であり、市場における入手可能性に基づき選択され得るので、これに関するこれ以上の説明は必要でない。
【0053】
温度に関しては、特に1つまたは複数の粉砕ジェット10の温度が重要となり、粉砕材料の温度はこの粉砕ジェット温度に少なくともほぼ相当していることが望ましい。
【0054】
粉砕ジェット流入部5を通じて粉砕室3に導入された粉砕ジェット10を形成するためには、作動条件においてガス状となるあらゆる物質または物質混合物を使用することができる。特に有利には、空気および/または水素ガスおよび/またはアルゴンおよび/または希ガス、たとえばヘリウムおよび/または窒素および/または前で挙げた作動媒体の混合物が使用される。この場合、作動媒体の含熱量は各粉砕ジェット流入部5の流入ノズル9の下流側において、この流入ノズル9の上流側におけるよりも著しく小さくなることが確保されることが望ましい。それに対して、衝突粉砕のために必要となるエネルギは一次的に流れエネルギとして提供されていることが望ましいので、流入ノズル9の流入部15と流出部16との間の圧力降下は著しく大きくなり(圧力エネルギは十分に流れエネルギに変換されている)、また温度降下も著しくなる。特にこの温度降下は粉砕材料の加熱によって、粉砕材料および粉砕ジェット10が粉砕室3の中央部17の範囲において、少なくとも2つの互いに衝突し合う粉砕ジェット10または2つの数倍の粉砕ジェット10において、等しい温度を有する程度に補償されていることが望ましい。
【0055】
粉砕ジェット10を形成しかつ粉砕ジェット10の調整を実施するための方法は当業者に知られている。
【0056】
ジェットミル1の本実施形態の図面では、作動媒体Bの各供給のための例として、リザーバ装置または発生装置18、たとえばタンク18aが図示されている。このタンク18aから、作動媒体Bは管路装置19を介して、1つまたは複数の粉砕ジェット10を形成するための1つまたは複数の粉砕ジェット流入部5に案内される。タンク18aの代わりに、たとえばコンプレッサを使用することもできる。これにより、相応する作動媒体Bが提供される。しかし、特に有利には単純なブロワ、極めて有利には回転ピストンブロワまたはラジアルベンチレータである。
【0057】
特にこのような風力分級器7を備えたジェットミル1(これに関する実施形態は、例示的なものであるに過ぎず、本発明を制限するものではない)から出発して、組み込まれた動的な風力分級器7を備えたこのジェットミル1を用いて、微細な粒子を形成するための方法が実施される。作動媒体Bとしては、一般に流体またはガスが使用され、有利には既に説明した水素ガスまたはヘリウムまたは単純に空気が使用される。
【0058】
さらに、分級羽根車8が、半径減少と共に、つまり分級羽根車軸線に向かうにつれて増大するか、または一定である内法高さを有していると好都合であり、したがって有利である。この場合、特に分級羽根車8の通流される面は一定である。付加的にまたは択一的に、流れ方向に横断面拡張を有する微細材料流出室(図示しない)が設けられていてよい。
【0059】
特に有利な構成は、ジェットミル1において、分級羽根車8が、交換可能な追従回転する浸漬管20を有していることにある。
【0060】
以下に、図2および図3につき、ジェットミル1およびそのコンポーネントの例示的な構成の別の詳細および変化形について説明する。
【0061】
図2に示した概略図から判るように、ジェットミル1は組み込まれた風力分級器7を有している。この風力分級器7は、たとえば流動層カウンタジェットミルまたは密層ジェットミル(Dichtbettstrahlmuehle)としてのジェットミル1の構造においては、動的な風力分級器7である。この動的な風力分級器7はジェットミル1の粉砕室3の中央部に配置されていると有利である。粉砕ガス容量流および分級器回転数に関連して、粉砕材料の、目標とされる微細度に影響を与えることができる。
【0062】
図2に示したジェットミル1の風力分級器7では、鉛直方向の風力分級器7全体が、分級器ハウジング21によって取り囲まれる。この分級器ハウジング21は主としてハウジング上側部分22とハウジング下側部分23とから成っている。ハウジング上側部分22とハウジング下側部分23とは、上縁部もしくは下縁部に、外方に向けられたそれぞれ1つの周方向フランジ24;25を備えている。両周方向フランジ24,25は風力分級器7の組込み状態または機能状態において重なり合って位置していて、適当な手段によって互いに対して位置固定されている。位置固定のための適当な手段は、たとえばねじ結合部(図示しない)である。着脱可能な固定手段としては、クランプ(図示しない)またはこれに類するものを使用することもできる。
【0063】
フランジ周面の実際に任意の個所において、両周方向フランジ24,25はジョイント26によって互いに結合されており、この場合、ハウジング上側部分22はフランジ結合手段の解離後にハウジング下側部分23に対して上方へ矢印27の方向に旋回され得るようになっていて、この場合、ハウジング上側部分22は下側が露出するので下側から内部へ直接に作業することができるようになり、ハウジング下側部分23は上側が露出するので上側から内部へ直接に作業することができる。ハウジング下側部分23自体は2つの部分から形成されている。すなわち、ハウジング下側部分23は主として、その開いた上端部に設けられた周方向フランジ25を備えた円筒状の分級室ハウジング28と、下方へ向かって円錐状に先細りになった搬出コーン29とから成っている。搬出コーン29と分級室ハウジング28とは、フランジ30,31を備えた上端部もしくは下端部のところで重なり合って位置しており、搬出コーン29および分級室ハウジング28に設けられた両フランジ30,31は周方向フランジ24,25と同様に、着脱可能な固定手段(図示しない)によって互いに結合されている。こうして組み立てられた分級器ハウジング21は、複数の支持アーム28aに懸吊されている。これらの支持アーム28aのうち複数の支持アーム28aはできるだけ均一な間隔を置いて、ジェットミル1の風力分級器7の分級器ハウジング21または圧縮機ハウジングの周面にわたって分配されていて、円筒状の分級室ハウジング28に作用している。
【0064】
風力分級器7のハウジング取付け機器の主要部分はやはり分級羽根車8である。この分級羽根車8は上側のカバーディスク32と、この上側のカバーディスク32に対して軸方向の間隔を置いて配置された下側の流出側のカバーディスク33と、両カバーディスク32,33の外縁部の間に配置されかつ両カバーディスク32,33に固く結合されて分級羽根車8の全周にわたって均一に分配された複数の羽根34とを備えており、これらの羽根34は有利な輪郭を備えている。この風力分級器7では、分級羽根車8の駆動が上側のカバーディスク32を介して行われ、下側のカバーディスク33は流出側もしくは下流側のカバーディスクである。分級羽根車8の支承部は、有利には強制的に駆動される分級羽根車軸35を有しており、この分級羽根車軸35の上端部は分級器ハウジング21から導出されており、下端部は分級器ハウジング21の内部で片持ち支承の形で分級羽根車8を相対回動不能に保持している。分級器ハウジング21からの分級羽根車軸35の導出は、加工された一対のプレート36,37において行われる。これらのプレート36,37は分級器ハウジング21を、上方に向かって円錐台形状に延びるハウジング端区分38の上端部において閉じていて、分級羽根車軸35を案内しており、そして分級羽根車軸35の回転運動を妨害することなしにこの軸通過部をシールしている。有利には、上側のプレート36がフランジとして相対回動不能に分級羽根車軸35に対応配置されていて、回転軸受け35aを介して下側のプレート37に回転可能に支持されていてよい。下側のプレート37はハウジング端区分38に対応配置されている。流出側のカバーディスク33の下面は、周方向フランジ24,25の間の共通の平面に位置しているので、分級羽根車8全体は旋回可能なハウジング上側部分22の内部に配置されている。さらに、円錐状のハウジング端区分38の範囲では、ハウジング上側部分22が、粉砕材料供給部4の管状の製品供給管片39を有している。この製品供給管片39の長手方向軸線は分級羽根車8およびその駆動軸または分級羽根車軸35の回転軸線40に対して平行に延びている。製品供給管片39は分級羽根車8およびその駆動軸または分級羽根車軸35の回転軸線40からできるだけ大きく遠ざけられて、ハウジング上側部分22の半径方向外側に位置するように配置されている。
【0065】
分級器ハウジング21は分級羽根車8に対して同軸的に配置された管状の流出管片20を収容している。この流出管片20の上端部は分級羽根車8の流出側のカバーディスク33のすぐ下に、分級羽根車8に結合されることなしに位置している。管として形成された流出管片20の下端部には、流出室41が同軸的に付設されている。この流出室41はやはり管状に形成されているが、しかし流出室41の直径は流出管片20の直径よりも著しく大きく形成されていて、本実施形態では流出管片20の直径の少なくとも2倍の大きさに形成されている。すなわち、流出管片20と流出室41との間の移行部には、飛躍的に直径の変化する著しい直径変化部が存在する。流出管片20は流出室41の上側のカバープレート42に挿入されている。流出室41は下側では、取外し可能なカバー43によって閉鎖されている。流出管片20と流出室41とから成る構成ユニットは複数の支持アーム44に保持されており、これらの保持アーム44は前記構成ユニットの全周にわたって放射状に均一に分配されている。保持アーム44の内側の端部は流出管片20の範囲において前記構成ユニットに固く結合されており、外側の端部は分級器ハウジング21に固定されている。
【0066】
流出管片20は円錐状の環状ハウジング45によって取り囲まれている。この環状ハウジング45の下側の大径の外径は流出室41の直径に少なくともほぼ相当しており、環状ハウジング45の上側の小径の外径は分級羽根車8の直径に少なくともほぼ相当している。環状ハウジング45の円錐状の壁には、支持アーム44の端部が接触していて、この円錐状の壁に固く結合されている。この円錐状の壁はやはり流出管片20と流出室41とから成る構成ユニットの一部である。
【0067】
支持アーム44および環状ハウジング45は掃気空気装置(図示しない)の一部であり、この場合、掃気空気は分級器ハウジング21の内室から、分級羽根車8または正確にはその下側のカバーディスク33と流出管片20との間のギャップ内への物質の侵入を阻止する。この掃気空気を環状ハウジング45内に流入させかつ環状ハウジング45の内部から、空けておかなければならない前記ギャップ内へ流入させるためには、支持アーム44が管として形成されていて、この管の外側の端区分が分級器ハウジング21の壁を貫いて貫通案内されて、吸込みフィルタ46を介して掃気空気源(図示しない)に接続されている。環状ハウジング45は上方に対して孔付プレート47によって閉鎖されており、前記ギャップ自体は、この孔付プレート47と分級羽根車8の下側のカバーディスク33との間の範囲において軸方向移動可能な環状ディスクによって調節可能であってよい。
【0068】
流出室41からの流出部は微粒搬出管48により形成される。この微粒搬出管48は外部から分級器ハウジング21内へ導入されていて、接線方向の配置で流出室41に接続されている。微粒搬出管48は製品流出部6の構成要素である。流出室41に対する微粒搬出管48の開口部のライニングのためには、そらせ円錐体(Abweiskegel)49が役立つ。
【0069】
円錐状の搬出コーン29の下端部では、水平方向の配置形式で分級空気流入螺旋体50と粗粒搬出部51とが搬出コーン29に対応配置されている。分級空気流入螺旋体50の回転方向は分級羽根車8の回転方向とは逆向きである。粗粒搬出部51は搬出コーン29に取外し可能に対応配置されており、この場合、搬出コーン29の下端部にはフランジ52が対応配置されており、粗粒搬出部51の上端部にはフランジ53が対応配置されている。両フランジ52,53は、風力分級器7がいつでも作動できる状態にある場合、公知の手段によって解離可能に互いに結合されている。
【0070】
設計したい分散ゾーンは符号54で示されている。きれいな流れ案内および簡単なライニングのための、内縁部のところで加工(面取り)されたフランジは、符号55で示されている。
【0071】
さらに、流出管片20の内壁には、交換可能な保護管56が摩耗部材として当て付けられており、相応する交換可能な保護管57が流出室41の内壁に当て付けられていてよい。
【0072】
図示の作動状態において風力分級器7の作動を開始するためには、分級吸気流入螺旋体50を介して分級空気が風力分級器7内へ、圧力降下を受けてかつ目的に相応して選択された流入速度で導入される。特に搬出コーン29の円錐度と相まって螺旋体を用いた分級空気の導入に基づき、分級空気は螺旋状に上方へ向かって分級羽根車8の範囲へ上昇する。それと同時に、種々異なる質量の固体粒子から成る「製品」は製品供給管片39を介して分級器ハウジング21内に装入される。この製品のうち、粗粒、つまり比較的大きな質量を有する粒子成分は、分級空気に抗して粗粒搬出部51の範囲へ流入し、そして引き続き加工のために準備される。微粒、つまり比較的小さな質量を有する粒子成分は、分級空気と混合され、外方から内方へ向かって半径方向で分級羽根車8を通って流出管片20に流入し、次いで流出室41に流入し、さらに微粒流出管48を介して微粒出口または微粒流出部58に流入し、さらに微粒流出部58からフィルタ内に流入し、このフィルタ内では、流体の形の作動媒体、たとえば空気と、微粒とが互いに分離される。比較的粗い微粒成分は分級羽根車8から半径方向に投出されて、粗粒に混加されて、粗粒と共に分級器ハウジング21から流出するか、または分級空気と共に搬出されるような粒度の微粒になるまで分級器ハウジング21内で循環させられる。
【0073】
流出管片20から流出室41への急激な横断面拡張に基づき、この場所では微粒・空気混合物の流速の著しい低減が行われる。すなわち、この混合物は極めて低い流速で流出室41を通って微粒流出管48を介して微粒流出部58へ流入し、そして流出室41の壁では極めて小規模の摩耗しか生ぜしめられない。それゆえに、保護管57はせいぜい予防的な手段であるに過ぎない。しかし、分級羽根車8において良好な分離技術の理由から高く設定されている流速は、搬出管片もしくは流出管片20においてなお生ぜしめられる。それゆえに、保護管56は保護管57よりも重要である。特に重要となるのは、流出管片20から流出室41への移行部における直径拡張を有する飛躍的な直径変化である。
【0074】
さらに、風力分級器7は、分級器ハウジング21を前述したように分割しかつ分級器コンポーネントを個々の部分ハウジングに対応させることによって良好に保守され得ると共に、欠陥のあるコンポーネントは比較的僅かな手間をかけるだけでかつ短い保守時間内で交換され得る。
【0075】
図2には、両カバーディスク32,33と、両カバーディスク32,33の間に配置された、羽根34を備えた羽根クラウン59とを備えた分級羽根車8が、平行でかつ平行面状のカバーディスク32,33を備えた既に公知の汎用の形で図示されているが、図3には、有利な改良形の風力分級器7の別の実施形態のための分級羽根車8が図示されている。
【0076】
図3に示したこの分級羽根車8は羽根34を備えた羽根クラウン59に対して付加的に、上側のカバーディスク32と、この上側のカバーディスク32に対して軸方向の間隔を置いて配置された下側の流出側のカバーディスク33とを有していて、回転軸線40、ひいては風力分級器7の長手方向軸線を中心にして回転可能である。分級羽根車8の直径方向の延在長さは、回転軸線40、つまり風力分級器7の長手方向軸線に対して直角の方向で、回転軸線40、ひいては前記長手方向軸線が垂直方向に直立しているのか、あるいは水平方向に延びているかとは無関係である。下側の流出側のカバーディスク33は流出管片20を同心的に取り囲んでいる。羽根34は両カバーディスク32,33に結合されている。両カバーディスク32,33は公知先行技術とは異なって円錐状に形成されていて、しかも有利には、上側のカバーディスク32と流出側のカバーディスク33との間隔が、羽根34の羽根クラウン59から内方へ向かって、つまり回転軸線40に向かって、徐々に大きくなり、しかも有利には連続的に、たとえば線状または非線状に大きくなり、さらに有利には、通流される円筒状周壁の面が、羽根流出縁部と流出管片20との間の各半径に対して一定のままとなるように形成されている。公知の解決手段においては、半径が小さくなるにつれて流出速度が徐々に低くなるが、本発明の解決手段では流出速度は一定のままとなる。
【0077】
前で図3につき説明した、上側のカバーディスク32および下側のカバーディスク33の構成の変化形の他に、両カバーディスクのうちの一方のカバーディスク32;33だけが、説明したように円錐状に形成されていて、他方のカバーディスク33;32は、図2に示した実施形態における両カバーディスク32,33の構成においてそうであったように平坦に形成されていることも可能である。特にこの場合、このような非平行面状のカバーディスクの形状は、少なくともほぼ、通流される円筒状周壁の面が羽根流出縁部と流出管片20との間の各半径に関して一定のままとなるように形成されていてよい。
【0078】
本発明による方法の特別な実施形態では、粉砕中に表面改質剤が添加される。本発明による方法における表面改質は特に効果的である。なぜならば、ミル内部での粒子の衝突時に、粉砕された微細な粒子から成る粒子クラウドが形成され、この粒子クラウドに表面改質剤が導入され、有利には噴霧導入され得るからである。これにより、表面改質剤は結合反応中にミルの壁と接触しなくなるので、焼付きが阻止される。このような焼付きは機械式のミルもしくは分級型の機械式のミルの大きな欠点および大きな問題である。表面改質剤は有利にはノズル、有利には2成分ノズルを介して導入され、この場合、噴霧媒体は粉砕ガスと同じ媒体であってよい。ノズル導入の場所は有利には直接の粉砕ゾーンの内部、特に有利には粉砕ノズルの高さと同じ高さに位置している。
【0079】
このような種類の表面改質の特別な利点は、いわばその場でのコーティング(Coatung)/ドーピングのために粉砕によって生じた活性で/新しい表面が提供されているという事実である。このことは、粉砕材料表面とコーティング剤/ドーピング剤との相互作用を高めると共に、とりわけ一層強力な結合をもたらすことができる。別の利点は、粉砕中での同時のコーティング/ドーピングにより、粉砕材料の安定化(たとえば再凝集に対する安定化)を達成することができることにある。
【0080】
基本的に、本発明による方法においては、粉砕条件下に液体、溶液または溶融液として粉砕室内に供給され得るあらゆる表面改質剤を使用することができる。
【0081】
本発明の枠内での有利な表面改質剤は、ソーダ水ガラス(Natronwasserglas)、アルカリ(たとえばNaOHおよびKOH)、酸(たとえば硫酸、塩酸、硝酸)、有機ケイ素化合物(たとえば改質シランまたは非改質シラン、ポリシロキサン、有機改質ポリシロキサン、シリコーンオイル、シリコーンポリエーテルアクリレート)、有機ポリマ、アクリレート、ポリビニルアルコール(PVA)、ワックス(たとえばポリエチレンワックス)および金属塩(ドーピング)である。このような表面改質剤のための限定的でない例は、国際公開第2004/055120号パンフレット、国際公開第2004/055105号パンフレット、国際公開第2004/054927号パンフレットまたは欧州特許出願公開第1477457号明細書に挙げられている。これらの刊行物の内容は本発明の対象に包含される。
【0082】
たとえば商品名TegoRad(登録商標)で市販されているシリコーンポリエーテルアクリレートポリマを用いて表面被覆が行われると特に有利である。特に有利には、欧州特許出願公開第0999230号明細書に記載されているようなシリコーンポリエーテルアクリレートポリマまたはシリコーンポリエーテルメタクリレートポリマおよび極めて特に有利には、1〜50重量%、有利には5〜30重量%、特に有利には10〜20重量%のポリエーテル過剰量を有する、欧州特許出願公開第0999230号明細書に記載のポリマである。上記欧州特許出願公開明細書の対象は本発明の対象に包含される。
【0083】
極めて特に有利には、本発明の枠内において、非晶質SiO、特に沈降ケイ酸、ケイ酸塩(たとえばアルミノケイ酸塩)、アーク法ケイ酸(Lichtbogenkieselsaeure)、熱分解法ケイ酸、セミゲル(Semigele)またはケイ酸ゲルから成る固形物が、本発明による方法のこの変化形において粉砕されて、シリコーンポリエーテルアクリレート、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリレート、ワックスおよび金属塩を用いてコーティングされるか、もしくはドーピングされる。コーティング剤もしくはドーピング剤と粉砕材料とから成るこのような組合せは、特に有利である。なぜならば、慣用の方法ではこれまでまず最初にコーティングもしくはドーピングが行われなければならず、そのあとに機械式のミルもしくは分級型の機械式のミルにおいて粉砕が行われなければならなかったからである。本発明による新規方法を用いて初めてコーティングもしくはドーピングと粉砕とを1つのステップにまとめることができ、しかも機械式のミルもしくは分級型の機械式のミルを用いた慣用の方法に少なくとも等価であり、かつしばしばそれどころか慣用の方法を凌駕する粉砕材料の粒度分布を得ることができる。したがって、慣用の方法に比べて、この材料組合せでは、一方では1方法ステップが節約され、しかも他方では凌駕した製品が得られる。なぜならば、本発明による方法は、より効果的なエネルギ変換率に基づき、粒度分布においてより少ない極微細成分含量をもたらし、粉砕材料の表面の完全なコーティングもしくはドーピングが可能になるからである。
【0084】
本発明による方法を用いると、原理的には全ての有機固形物および無機固形物が粉砕され得るけれども、本発明による方法は元素の周期律系の第3主族および第4主族の金属の非晶質酸化物のために特別な利点を提供する。このことはゲルにも、別種類の構造を有する非晶質固形物にも云える。特に有利には、沈降ケイ酸、熱分解法ケイ酸、アークケイ酸、ケイ酸塩、セミゲルおよびシリカゲルであり、この場合、シリカゲルはヒドロゲルをもエアロゲルをもキセロゲルをも包含する。これらの材料はしばしばラッカ中の艶消し剤として使用され、このような艶消し剤においては、たとえば正確に規定された粒度分布が重要となり、たとえば過度に高い微粒成分は不都合となる。なぜならば、これによって圧縮特性が損なわれるからである。この特別な粒度分布に対して付加的に、不純物、たとえば鉄による汚染が少ないことが多くの用途において極めて有利になる。本発明による方法を用いると、初めて、元素の周期律系の第3主族および第4主族の金属の非晶質酸化物、特に特殊な粒度分布を有する二酸化ケイ素を、異種元素による極めて僅かな汚染との組合せで製造することができる。
【0085】
測定方法
レーザ回折を用いた粒度の測定
粉末状の固形物の粒度分布を測定するためのレーザ回折の使用は、粒子がその大きさに関連して、単色のレーザビームの光線を種々異なる強度パターンであらゆる方向に散乱させるか、もしくは回折させるという現象に基づいている。照射された粒子の直径が小さくなればなるほど、単色のレーザビームの散乱角度もしくは回折角度はますます大きくなる。
【0086】
以下の測定実施を沈降ケイ酸試料につき説明する。
【0087】
試料準備および測定は親水性の沈降ケイ酸の場合には、分散液として脱塩水を用いて行われ、十分に水で湿潤可能ではない沈降ケイ酸の場合には、純粋なエタノールを用いて行われる。測定の開始前にレーザ回折測定装置LS230(Beckman Coulter社;測定範囲:0.04〜2000μm)および液体モジュール(Small Volume Module Plus, 120 ml, Beckman Coulter社)が2時間ウォームアップ運転させられ、このモジュールは脱塩水によって3回洗浄される。疎水性の沈降ケイ酸を測定するためには、洗浄過程が純粋なエタノールを用いて実施される。
【0088】
レーザ回折測定装置LS230の装置ソフトウェアには、ミー理論(Mie-Theorie)に基づいた評価のために重要となる以下の光学的なパラメータが、rfdデータ内に規定される:
分散液の屈折率B.I. 実部=1.332(エタノールに対して1.359)、固形物(試料材料)の屈折率 実部ケイ酸=1.46
虚部(Imaginaer)=0.1
形状因子(Formfaktor)=1
【0089】
さらに、粒子測定のために重要となる以下のパラメータを調節することができる:
測定時間=60秒
測定回数=1
ポンプ速度=75%
【0090】
試料添加は試料性質に関連して直接に粉末状の固形物として、スパチュラを用いるか、または懸濁された形で2mlの使い捨てピペットを用いて、装置の液体モジュール(Small Volume Module Plus)内へ行われ得る。測定のために必要となる試料濃度が達成されると(最適な光学的な陰影付け)、レーザ回折測定装置LS230の装置ソフトウェアは「OK」を報知する。粉砕された沈降ケイ酸は、超音波コンバータCV181と、70%の振幅において6mmの超音波ピークとを有するソニックス社(Firma Sonics)の超音波プロセッサVibra Cell VCX130を用いた60秒間の超音波処理と同時に、液体モジュール中でのポンプ循環を行うことによって分散される。粉砕されていない沈降ケイ酸の場合には、分散が、超音波処理なしに液体モジュール中での60秒間のポンプ循環によって行われる。
【0091】
測定は室温で行われる。粗データから、装置ソフトウェアはミー理論を基礎として、予め規定された光学的なパラメータ(.rfdデータ)を用いて粒度の容積分布およびd50値(中央値)を計算する。
【0092】
ISO13320「Particle Size Analysis−Guide to Laser Diffraction Methods」には、粒度分布を測定するためのレーザ回折の方法が詳細に記載されている。上記ISO13320において、当業者には、汎用の固形物および分散液の、ミー理論に基づいた評価のために重要となる光学的なパラメータのリストアップが提供されている。
【0093】
本発明は明細書および図面中の実施形態につき例示的に説明されているに過ぎず、これらの実施形態に限定されるものではない。それどころか、当業者が本明細書から、特に特許請求の範囲および本明細書の冒頭部に記載の一般的な説明ならびに実施形態の説明およびその対応する図面の枠内で知ることができ、かつその専門知識ならびに公知先行技術と組み合わせることのできる、あらゆる変化形、改良形、置換形および組合せを包含するものである。
【0094】
例1:
ホソカワアルピネ社(Fa. Hosokawa Alpine AG)のAFG200 エアロプレックス−流動層式カウンタジェットミル(Aeroplex-Fliessbett-Gegenstrahlmuehle)において、エボニック・デグッサ社(Firma Evonik Degussa GmbH)のACEMATT(登録商標)HK400を、76℃の粉砕空気流入温度(粉砕チャンバ内室温度=60℃)でかつ0.4バール(絶対)の圧力で粉砕して、シリコーンポリエーテルアクリレートTego(登録商標)Rad2300で被覆した。この場合、このコーティング剤は、粉砕ノズルと同じ平面もしくはレベルに位置する2成分ノズル(図1〜図3には描かれていない)を介して、ミル内に供給される(120゜の間隔で3つの粉砕ノズルおよびこれらの粉砕ノズルのうちの2つの間に60゜の間隔で2成分ノズル)。7.4質量%のTegoRad(登録商標)2300(TegoRad2300は約43.9重量%の炭素含量を有している)を供給した。最終製品には、3.2重量%の炭素含量が認められた。すなわち、TegoRad2300のC含量を考慮して、ポリエーテル損失なしにほぼ定量的な被覆が達成された。湿式コーティングの場合には、TegoRad2300を同じ比率で添加しても、最終製品には、2.5〜2.8重量%の炭素しか認められなかった。したがって、湿式コーティングの場合には表面改質剤の著量がケイ酸に存在しているのではなく、水によって洗出されてしまっている。このことは、水溶性の成分を有する表面改質剤で担持材料を被覆する際の本発明による方法の特別な利点を示している。製品は4.7μmのd50値を有している。
【0095】
例2:
エボニック・デグッサ社(Firma Evonik Degussa GmbH)のSipernat(登録商標)50を、ネッチコンダックス社(Fa. Netzsch- Condux)の流動層カウンタジェットミル、タイプCGS50において、80℃の粉砕空気温度でかつ0.36バール(絶対)の圧力で粉砕し、ドイレックス社(Fa. Deurex)のPEワックス(溶融範囲:98〜103℃)で被覆した。コーティングの実施は、例1と同様にして行った。製品は5.8μmのd50値を有している。
【0096】
例3:
エボニック・デグッサ社(Firma Evonik Degussa GmbH)の研磨性の練り歯磨きケイ酸Sident(登録商標)9を、一度、本発明による方法により、ネッチコンダックス社(Fa. Netzsch- Condux)の流動層カウンタジェットミル、タイプCGS50において、例2と同様にして粉砕した。択一的に、Sident(登録商標)9を、アルピネ社(Firma Alpine)の機械式のインパクトミルUPZ160において粉砕した。この機械式のインパクトミルでは、約600kgの平均処理量において、約6.5gの摩耗が生ぜしめられた。このことは、11ppmの鉄不純物の増加に相当する。本発明による粉砕では、鉄不純物の増加は1ppmよりも低い値であった。
【符号の説明】
【0097】
1 ジェットミル
2 ハウジング
3 粉砕室
4 粉砕材料供給部
5 粉砕ジェット流入部
6 製品流出部
7 風力分級器
8 分級羽根車
9 流入ノズル
10 粉砕ジェット
11,12 加熱源
13 供給管
14 ジャケット
15 流入部
16 流出部
17 中央部
18 リザーバ装置または発生装置
18a タンク
19 管路装置
20 流出管片
21 分級器ハウジング
22 ハウジング上側部分
23 ハウジング下側部分
24,25 周方向フランジ
26 ジョイント
28 分級室ハウジング
28a 支持アーム
29 搬出コーン
30,31 フランジ
32,33 カバーディスク
34 羽根
35 分級羽根車軸
35a 回転軸受け
36,37 プレート
38 ハウジング端区分
39 製品供給管片
40 回転軸線
41 流出室
42 カバープレート
43 カバー
44 支持アーム
45 環状ハウジング
46 吸込みフィルタ
47 孔付プレート
48 微粒搬出管
49 そらせ円錐体
50 分級空気流入螺旋体
51 粗粒搬出部
52,53 フランジ
54 分散ゾーン
55 フランジ
56,57 保護管
58 微粒流出部
59 羽根クラウン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジェットミルを用いて微細な粒子を形成するための方法において、粉砕ガスが、≦4バール(絶対)の圧力と、100℃よりも低い温度とを有していることを特徴とする、微細な粒子を形成するための方法。
【請求項2】
静的な分級を行う楕円管ミルまたはスパイラルジェットミルを使用する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
流動層カウンタジェットミルまたは密層ジェットミル、有利には分級器、特に有利には動的な風力分級器を備えた流動層カウンタジェットミルまたは密層ジェットミル、極めて特に有利には内部に組み込まれた動的な風力分級器(7)を備えたジェットミル(1)を使用する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
風力分級器(7)が、半径減少と共に増大するか、または一定となる内法高さを有する分級ロータまたは分級羽根車(8)を有していて、作動時に該分級ロータまたは分級羽根車(8)の通流される流過面が、少なくともほぼ一定である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
風力分級器(7)が、特に交換可能な浸漬管(20)を備えた分級ロータまたは分級羽根車(8)を有しており、前記浸漬管(20)は、分級ロータまたは分級羽根車(8)が回転すると一緒に回転するように形成されている、請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
流れ方向に横断面拡張を有する微粒流出室(41)が設けられている、請求項3から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
作動媒体の圧力および温度を形成するために、単純なブロワ、有利には回転ピストンブロワまたはラジアルブロワを使用する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
作動媒体として空気および/またはアルゴンおよび/または希ガス、有利にはヘリウム、および/または窒素および/または前記作動媒体の混合物を使用する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
粉砕時に、粉砕材料の粒子の表面の少なくとも一部がコーティング剤もしくはドーピング剤で被覆されるようにコーティング剤もしくはドーピング剤を添加する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
粉砕ガスの温度が、95℃よりも低いかもしくは95℃に等しく、有利には90℃よりも低いかもしくは90℃に等しく、特に有利には80℃よりも低いかもしくは80℃に等しく、極めて特に有利には15〜80℃または50〜80℃または15〜50℃である、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
粉砕材料の圧力が、3バールよりも低く、有利には2バールよりも低く、特に有利には1バールよりも低く、殊に有利には0.5〜1バールであり、極めて殊に有利には0.15〜0.5バールである、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
当該方法を、粉砕ガス圧と温度との次の組合せ:0.15〜0.5バールおよび15〜50℃もしくは0.15〜0.5バールおよび50〜80℃で実施する、請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
請求項1から11までのいずれか1項記載の方法により得られた製品。
【請求項14】
非晶質の粒子、有利には無定形の二酸化ケイ素、特に有利には沈降ケイ酸において、粒子の表面の少なくとも一部が、シリコーンポリエーテルアクリレートポリマおよび/またはシリコーンポリエーテルメタクリレートポリマ、有利には5〜30重量%のポリエーテル過剰量を有するシリコーンポリエーテルアクリレートポリマおよび/またはシリコーンポリエーテルメタクリレートポリマによって改質されていることを特徴とする、非晶質の粒子。
【請求項15】
ジェットミル、有利には流動層カウンタジェットミルまたは密層ジェットミルまたは楕円管ミルまたはスパイラルジェットミルにおいて、作動媒体の圧力形成のためにブロワ、有利には回転ピストンブロワまたはラジアルブロワが使用されることを特徴とするジェットミル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−72993(P2011−72993A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218236(P2010−218236)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】