説明

ジエチレントリアミン五酢酸構造を金属キレート部位として有する脂肪酸エステル化合物

【課題】溶解性等に優れ、病巣選択的なリポソーム造影剤に適した化合物の提供。
【解決手段】下記の一般式(I):


[式中、Rは8〜30個の炭素原子からなるアルキル基又はアルケニル基を示し;Lは2価の連結基を表し;Chは下記の一般式(II)もしくは(III):




を表す]で表される化合物、該化合物を有するキレート化合物、又はこれらいずれかの塩。該化合物等を含むリポソームを含む造影剤を用いたMRI造影又はシンチグラフィー造影により血管の病巣を選択的に造影できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)構造を金属キレート部位として有する脂肪酸エステル化合物又はその塩に関する。本発明はさらに該化合物、該化合物を含むキレート化合物、又はそれらいずれかの塩を膜構成成分として含むリポソーム及び該リポソームを含む造影剤に関する。
【背景技術】
【0002】
非侵襲的な動脈硬化の診断法としては、主にX線血管造影法が挙げられる。しかし、この方法は、水溶性のヨード造影剤で血液の流れを造影する方法であるため、病変組織と正常組織との区別がつけにくい。そのため、狭窄が50%以上進んだ病巣しか検出することができず、虚血性疾患の発作が発症する前に病巣を検出することが困難である。
【0003】
上記以外の診断法として、近年、動脈硬化巣プラーク中に多く動態分布される造影剤を用いて核磁気共鳴トモグラフィー(MRI)により疾患を検出する方法が報告されている。しかし、該造影剤として報告されている化合物はいずれも診断法に用いることには問題がある。例えば、ヘマトポルフィリン誘導体(特許文献1参照)は皮膚への沈着・着色の欠点が指摘されており、また、脂質に富んだプラークに集積するとの報告があるパーフルオロ側鎖を有するガドリニウム錯体(非特許文献1参照)は、脂肪肝・腎臓上皮・筋組織の腱などの、生体における脂質豊富な組織、器官への集積が危惧されている。
【0004】
化合物の観点からは、フォスファチジルエタノールアミン(PE)とジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)をアミド結合した化合物が知られており(例えば、非特許文献2)、このような化合物のガドリニウム錯体のリポソームに関する報告(非特許文献3)もある。しかし、この錯体は難溶解性であるためリポソーム化の際の操作性が悪く、生体内での蓄積性や毒性における懸念もある。
【特許文献1】米国特許第4577636号明細書
【非特許文献1】サーキュレーション(Circulation), 109, 2890 (2004)
【非特許文献2】ポリメリック マテリアルズ サイエンス アンド エンジニアリング(Polymeric Materials Science and Engineering), 89, 148 (2003)
【非特許文献3】インオーガニカ キミカ アクタ(Inorganica Chimica Acta), 331, 151 (2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、病巣選択的な造影のためのリポソーム造影剤に適した化合物であって、特に溶解性及びリポソーム膜構成成分との相溶性に優れた化合物を提供することである。また、本発明の課題は、該化合物を含むMRI造影剤及びシンチグラフィー造影剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は上記の課題を解決すべく研究を行った結果、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)構造を金属キレート部位として有する脂肪酸エステル化合物が溶解性に富み、また、造影剤としてのリポソームの構成成分として優れた性質を有していることを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。
【0007】
すなわち、本発明は、下記一般式(I):
【化1】

[式中、Rは8〜30個の炭素原子からなるアルキル基又はアルケニル基を示し;Lは2価の連結基を表し(Lは炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、及び水素原子からなる群から選択される原子により構成され、かつLを構成する炭素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子の総原子数は1〜30個であり、このうち該酸素原子の数は0〜15個であり、該窒素原子の数は0〜6個であり、該硫黄原子の数は0〜3個である);Chは下記の一般式(II)又は(III)を示す]で表される化合物又はその塩を提供するものである。
【化2】

【化3】

【0008】
本発明の好ましい態様によれば、Rが直鎖又は分枝鎖のアルキル基、もしくは直鎖又は分枝鎖のアルケニル基である上記化合物又はその塩:Rが下記一般式(IV)[qは6〜28の整数を示し;rq、r'qはそれぞれ独立に水素原子、メチル基、又はエチル基を示す。ただし、全てのrq、r'qが同時に水素原子を示すことはなく; Rを構成する炭素原子の総数が30個を超えることはない]で表される基である上記の化合物又はその塩が提供される。
【化4】

【0009】
本発明の別の好ましい態様によれば、Lが主鎖中に−X1−CO−又は−CO−X1−:[X1は−O−又は−NZ1−を示し;Z1は水素原子又は1〜3個の炭素原子からなる低級アルキル基を示す]で示される部分構造を少なくとも1つ以上有する連結基である上記の化合物又はその塩;Lが−W1−X2−CO−W2−又は−W1−CO−X2−W2−[W1は単結合、又は炭素数1〜5個のアルキレン基又はアルケニレン基を示し;X2は−O−又は−NZ2−を示し(Z2は水素原子又は1〜3個の炭素原子からなる低級アルキル基を示す);W2は炭素数1〜20個のアルキレン基又はアルケニレン基を示す] で表される連結基である上記の化合物又はその塩;Lが主鎖中に、−(OCH2CH2)n−、−(CH2CH2O)n−、−(OCH2CH2CH2)m−、又は−(CH2CH2CH2O)m−(nは1〜8の整数を示し;mは1〜6の整数を示す)のいずれか1つの構造で示される部分構造を有する連結基である上記の化合物又はその塩;Lが、−W3−X3−CO−W4−又は−W3−CO−X3−W5−[W3は単結合、又は炭素数1〜5個のアルキレン基又はアルケニレン基を示し;X3は−O−又は−NZ3−を示し;Z3は水素原子又は1〜3個の炭素原子からなる低級アルキル基を示し;W4は−(OCH2CH2)n−、−CH2−(OCH2CH2)n−、−(OCH2CH2CH2)m−、−CH2−(OCH2CH2CH2)m−、又は−CH2CH2−(OCH2CH2CH2)m−(nは1〜8の整数を表し;mは1〜6の整数を表す)のいずれか1つの構造を示し;W5は−(CH2)2−(OCH2CH2)n−又は−(CH2)3−(OCH2CH2CH2)m−(nは1〜8の整数を示し;mは1〜6の整数を示す)の構造を示す] で表される連結基である上記の化合物又はその塩が提供される。
【0010】
本発明のさらに好ましい態様によれば、上記いずれかの化合物及び金属イオンから成るキレート化合物又はその塩;金属イオンが原子番号21-29、31、32、37-39、42-44、49及び、57-83に選択される元素の金属イオンである該キレート化合物又はその塩;金属イオンが原子番号21-29、42、44及び、57-71から選択される常磁性元素の金属イオンである該キレート化合物又はその塩が提供される。
【0011】
別の観点からは、本発明により、上記の化合物又はその塩を膜構成成分として含むリポソームが提供され、その好ましい態様によれば、ホスファチジルコリン及びホスファチジルセリンを膜構成成分として含む上記リポソームが提供される。
また、本発明により、上記のリポソームを含むMRI造影剤が提供される。この発明の好ましい態様によれば、血管疾患の造影に用いる上記MRI造影剤;泡沫化マクロファージの影響で異常増殖した血管平滑筋細胞の造影に用いる上記MRI造影剤;マクロファージが局在化する組織又は疾患部位の造影に用いる上記のMRI造影剤;マクロファージが局在化する組織が肝臓、脾臓、肺胞、リンパ節、リンパ管、及び腎臓上皮からなる群から選ばれる上記のMRI造影剤;マクロファージが局在化する疾患部位が腫瘍、炎症部位、及び感染部位からなる群から選ばれる上記のMRI造影剤が提供される。
【0012】
また、同様に、本発明により上記のリポソームを含むシンチグラフィー造影剤が提供される。この発明の好ましい態様によれば、血管疾患の造影に用いる上記シンチグラフィー造影剤;泡沫化マクロファージの影響で異常増殖した血管平滑筋細胞の造影に用いる上記シンチグラフィー造影剤;マクロファージが局在化する組織又は疾患部位の造影に用いる上記のシンチグラフィー造影剤;マクロファージが局在化する組織が肝臓、脾臓、肺胞、リンパ節、リンパ管、及び腎臓上皮からなる群から選ばれる上記のシンチグラフィー造影剤;マクロファージが局在化する疾患部位が腫瘍、炎症部位、及び感染部位からなる群から選ばれる上記のシンチグラフィー造影剤が提供される。
【0013】
さらに、上記MRI造影剤/シンチグラフィー造影剤の製造のための上記の化合物、キレート化合物又はそれらいずれかの塩の使用;MRI造影/シンチグラフィー造影法であって、上記の化合物、キレート化合物又はそれらいずれかの塩を膜構成成分として含むリポソームを、ヒトを含む哺乳類動物に投与した後にMRI造影/シンチグラフィー造影する工程を含む方法;血管疾患の病巣の造影方法であって、上記の化合物、キレート化合物又はそれらいずれかの塩を膜構成成分として含むリポソームを、ヒトを含む哺乳類動物に投与した後にMRI造影/シンチグラフィー造影する工程を含む方法が本発明により提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の化合物、キレート化合物及びこれらいずれかの塩は、MRI造影剤のためのリポソームの構成脂質として、その溶解性等において、優れた性質を有しており、この化合物を含むリポソームを用いてMRI造影/シンチグラフィー造影することにより血管の病巣を選択的に造影できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
Rで表される8〜30個の炭素原子からなるアルキル基又はアルケニル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状、又はそれらの組み合わせのいずれであってもよいが、直鎖状、又は分岐鎖状が好ましい。またRを構成する炭素原子の数は8〜24個が好ましく、12〜20個が最も好ましい。
【0016】
Rが分岐鎖状のアルキル基を表す場合、下記一般式(IV)で表される構造であることが好ましい。qは、6〜28の整数を表し、7〜22の整数を表すことが好ましく、10〜18の整数を表すことがより好ましい。
【0017】
【化5】

【0018】
上記一般式(IV)において、r1〜rq及びr'1〜r'qはそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、水素原子又はメチル基を表すことが好ましい。しかし、すべてのr1〜rq及びr'1〜r'qが同時に水素原子を表すことはない。また、すべてのr1〜rq及びr'1〜r'q がそれぞれ独立にメチル基又はエチル基を表してもよい。同一の炭素に置換するrp及びr'p(ただし1<p<q、1<'p<'qである)のいずれか一方がメチル基又はエチル基である場合、他方は'pは水素原子であることがより好ましく、更にrp-1、r'p-1、rp+1、r'p+1が水素原子であることが好ましい。
このようなRとして好ましい例を以下に示すが、これらは一例であり、Rがこれらの例に限定されることはない。
【0019】
【化6】

【0020】
Rがアルケニル基を表す場合、その二重結合はE又はZ配置のいずれであってもよく、また、二重結合が複数ある場合はE及びZ配置の混合物であってもよい。ビシナル2置換の場合はZ体が好ましく、3置換又は4置換の場合はE体がより好ましいが、これに限定されることはない。二重結合の位置、及び個数は特に規定されないが、二重結合の数は8個以下であることが好ましく、4個以下であることがより好ましい。また一般式(V)又は(VI)に示されるような部分構造を有することがより好ましいが、これに限定されることはない。
【化7】

【0021】
このようなRとして好ましい例を示すが、これらは一例でありRがこれらの例に限定されることはない。
【化8】

【0022】
Lは2価の連結基を表し(Lは炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子及び水素原子からなる群から選択される原子により構成され、かつLを構成する炭素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子の総原子数は1〜30個であり、このうち該酸素原子の数は0〜15個であり、該窒素原子の数は0〜6個であり、該硫黄原子の数は0〜3個である)、飽和の基であっても、不飽和結合を含む基であってもよい。Lが不飽和結合を含む連結基である場合、その種類、位置、個数は特に規定されない。Lが炭素原子のほかに、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を含む場合、該連結基中に、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、カルボキシル、アルコキシ、アシルオキシ、カルバモイルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アミノ、アシルアミノ、アミノカルボニルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、スルファモイルアミノ、アルキルスルホニルアミノ、メルカプト、アルキルチオ、スルファモイル、スルホ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アシル、アルコキシカルボニル、カルバモイル、アゾ、イミドなどの部分構造を形成していてもよいが、例示した部分構造に限定されることはない。またLが、炭素原子、酸素原子、窒素原子及び水素原子から構成される2価の連結基である場合がより好ましい。Lが炭素原子のほかに、酸素原子、又は窒素原子を含む場合、該連結基中に、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、カルボキシル、アルコキシ、アシルオキシ、カルバモイルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アミノ、アシルアミノ、アミノカルボニルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、アシル、アルコキシカルボニル、カルバモイル、アゾ、イミドなどの部分構造を形成していてもよいが、例示した部分構造に限定されることはない。
【0023】
Lで表される2価の連結基において、その主鎖の原子数は1〜25個の範囲であることが好ましい。ただしLの「主鎖」とは一般式(I)におけるCh−で表される基と−O-CO-Rで表される基との間を最小個数で結ぶ原子群を意味する。Lの主鎖の原子数は5〜23個がより好ましく、7〜18個が最も好ましい。Lの主鎖が不飽和結合を含む場合、その種類、位置、個数は特に限定されない。主鎖は炭素原子のほかに、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を含むことが好ましい。この場合、該連結基中に形成される部分構造として、エーテル、チオエーテル、カルボニル、エステル、アミド、ジスルフィド、アミノ、イミドなどが挙げられるが、例示した部分構造に限定されることはない。主鎖に炭素原子のほかに、酸素原子、又は窒素原子を含むことがより好ましい。この場合、該連結基中に形成される部分構造としてエーテル、エステル、アミノ、又はアミドなどが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0024】
Lで表される2価の連結基において、Lを構成する原子は上述の主鎖への置換基として含まれていてもよい。該置換基の個数、置換位置は特に限定されず、2個以上の置換基が存在する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。ただし、置換基を有する部分構造を含めたLを構成する炭素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子の総数は30個を超えないものとする。置換基の例としては、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基が挙げられるが、これらに限定されることはない。また、置換基は、炭素原子、酸素原子、窒素原子及び水素原子から選択される原子で構成されていることが好ましい。この場合、該置換基の例としては、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0025】
Lで表される2価の連結基としてより好ましくは、Lが、主鎖中に、−X1−CO−又は−CO−X1−で表される部分構造を少なくとも1個以上有する場合が挙げられる。Lの主鎖における上記部分構造の数は特に限定されないが、通常は5個以下であり、好ましくは3個以下であり、最も好ましくは1個である。X1は−O−又は−NZ1−を表し、Z1は水素原子又は1〜3個の炭素原子からなる低級アルキル基を表すが、X1が−O−、−NH−、又は-N(CH3)-を表す場合がより好ましい。ただし、Lの部分構造の表記として、例えば−X1−CO−と表した場合、Ch−はX1の左側、-O-CO-RはCOの右側に、それぞれ直接、又は任意の2価の連結基を介して結合しているものとする。
【0026】
また、Lが−W1−X2−CO−W2−又は−W1−CO−X2−W2−によって表される連結基であることがより好ましい。ここでW1は単結合、又は炭素数1〜5個のアルキレン基又はアルケニレン基を表すが、炭素数1〜3個のアルキレン基又はアルケニレン基を表すことがより好ましい。またW1は飽和の基であっても、不飽和結合を含む基であってもよい。W1が不飽和結合を含む基である場合、その種類、位置、個数は特に規定されない。またW1は直鎖状、分岐鎖状、環状、又はそれらの組み合わせのいずれであってもよいが、直鎖状、又は分岐鎖状が好ましく、直鎖状であることがより好ましい。またW1は置換基を有していてもよい。X2は−O−又は−NZ2−を表し、Z2は水素原子又は1〜3個の炭素原子からなる低級アルキル基を表すが、X2が−O−、−NH−、又は-N(CH3)-を表す場合がより好ましい。また、W2は炭素数1〜20個のアルキレン基又はアルケニレン基を表すが、炭素原子の数は1〜15個がより好ましく、1〜10個が最も好ましい。またW2は飽和の基であっても、不飽和結合を含む基であってもよい。W2が不飽和結合を含む基である場合、その種類、位置、個数は特に規定されない。またW2は直鎖状、分岐鎖状、環状、又はそれらの組み合わせのいずれであってもよいが、直鎖状、又は分岐鎖状が好ましく、直鎖状であることがより好ましい。またW2は置換基を有していてもよい。
【0027】
別の観点からは、Lは主鎖中に−(OCH2CH2)n−、−(CH2CH2O)n−、−(OCH2CH2CH2)m−、又は−(CH2CH2CH2O)m−のいずれか1つで表される部分構造を有することが好ましく、−(OCH2CH2)n−、又は−(CH2CH2O)n−で表される部分構造を有することがより好ましい。またLが主鎖中に−(OCH2CH2)n−、又は−(OCH2CH2CH2)m−で表される部分構造を有する場合、該部分構造は-O-CO-Rと直接連結し、−(OCH2CH2)n-O-CO-R、又は−(OCH2CH2CH2)m-O-CO-Rを構成していることが好ましい。nは1〜8の整数を表すが、好ましくは2〜6、より好ましくは3〜5の整数を表す。mは1〜6の整数を表すが、好ましくは2〜5、より好ましくは2〜4の整数を表す。ただし、−(OCH2CH2)n−又は−(OCH2CH2CH2)m−がCh−と直接結合することはなく、−(CH2CH2O)n−又は−(CH2CH2CH2O)m−が-O-CO-Rと直接結合することもない。
【0028】
さらに、Lは−W3−X3−CO−W4−又は−W3−CO−X3−W5−によって表される連結基であることが好ましい。ここでW3は単結合、又は炭素数1〜5個のアルキレン基又はアルケニレン基を表すが、炭素数1〜3個のアルキレン基又はアルケニレン基を表す場合がより好ましい。またW3は飽和の基であっても、不飽和結合を含む基であってもよい。W3が不飽和結合を含む基である場合、その種類、位置、個数は特に規定されない。またW3は直鎖状、分岐鎖状、環状、又はそれらの組み合わせのいずれであってもよいが、直鎖状、又は分岐鎖状が好ましく、直鎖状であることがより好ましい。またW3は置換基を有していてもよい。X3は−O−又は−NZ3−を表し、Z3は水素原子又は1〜3個の炭素原子からなる低級アルキル基を表すが、X3が−O−、−NH−、又は-N(CH3)-を表すことがより好ましい。またW4は−(OCH2CH2)n−、−CH2(OCH2CH2)n−、−(OCH2CH2CH2)m−、−CH2(OCH2CH2CH2)m−、又は−(CH2)2(OCH2CH2CH2)m−を表すが、−(OCH2CH2)n−、又は−CH2(OCH2CH2)n−を表すことがより好ましい。W5は−(CH2)2(OCH2CH2)n−又は−(CH2)3(OCH2CH2CH2)m−を表すが、−(CH2)2(OCH2CH2)n−であることがより好ましい。またnは1〜8の整数を表すが、好ましくは2〜6、より好ましくは3〜5の整数を表す。mは1〜6の整数を表すが、好ましくは2〜5、より好ましくは2〜4の整数を表す。W4及びW5は置換基を有していてもよい。
【0029】
以下に本発明の化合物の好ましい例を示すが、本発明の化合物はこれらの例に限定されることはない。
【0030】
【化9】

【0031】
【化10】

【0032】
【化11】

【0033】
【化12】

【0034】
【化13】

【0035】
以下に、本発明の化合物の一般的な合成法について説明するが、本発明の化合物の合成法はこれらに限定されるものではない。本発明の化合物の部分構造である長鎖脂肪酸は、通常市販されているものを使用してもよく、あるいは用途に応じて適宜合成してもよい。合成により入手する場合には、例えばRichard C. Larock著、Comprehensive organic transformations(VCH)に記載の方法により、対応するアルコールやアルキルハライド等を原料として用いることができる。
【0036】
上記の長鎖脂肪酸は、適宜必要な連結基を結合した後に、金属配位能を有するポリアミン誘導体と連結することで本発明の化合物が合成できる。この際、必要な場合には保護基を用いることもできるが、この場合の保護基とは、例えば、T. W. Green & P. G. M. Wuts著、Protecting groups in organic synthesis(John Wiley & sonc, inc.)に記載のものを適宜選択して用いることができる。ポリアミン誘導体との連結方法は、例えば、Bioconjugate Chem., 10, 137 (1999)や Tetrahedron Lett., 37, 4685 (1996) 、J. Chem. Soc., Perkin Trans 2, 348 (2002) 、又は J. Heterocycl. Chem., 37, 387 (2000) に記載の手法に準じて合成することができる。しかし、これらの方法は一例であり、これに限定されるものではない。
【0037】
本発明のキレート化合物は上述の化合物及び金属イオンからなるキレート化合物である。金属イオンとしては、特に限定されないが、MRI、X線、超音波コントラスト、シンチグラフィーなどの造影、放射線治療の目的に適切な金属イオンとして、常磁性金属、重金属、放射性金属同位体の放射性金属の金属イオンを用いることが好ましい。より具体的には、原子番号21-29、31、32、37-39、42-44、49、及び57-83から選択される元素の金属イオンが好ましい。MRI造影剤として本発明のキレート化合物を使用する場合に適切な金属イオンとしては、原子番号21-29、42、44、及び57-71から選択される元素の金属イオンが挙げられる。正のMRI剤の調製に用いるためにより好ましい金属は、原子番号24(Cr)、25(Mn)、26(Fe)、63(Eu)、64(Gd)、66(Dy)、67(Ho)であり、原子番号25(Mn)、26(Fe)、64(Gd)がより好ましく、特にMn(II)、Fe(III)、Gd(III)が好ましい。負のMRI剤の調製に用いるためにより好ましい金属は、原子番号62(Sm)、65(Tb)、66(Dy)である。
【0038】
本発明の化合物又はキレート化号物は1以上の不斉中心を有する場合があるが、この場合、不斉中心に基づく光学活性体又はジアステレオ異性体などの立体異性体が存在する。純粋な形態の任意の立体異性体、任意の立体異性体の混合物、又はラセミ体などは、いずれも本発明の範囲に包含される。また、本発明の化合物はオレフィン性の二重結合を1個又は2個以上有する場合があるが、その配置はE又はZのいずれであってもよく、両者の混合物として存在していてもよい。本発明の化合物は互変異性体として存在する場合もあるが、任意の互変異性体、又はそれらの混合物は本発明の範囲に包含される。さらに、本発明の化合物は塩を形成する場合があり、遊離形態の化合物又は塩の形態の化合物が水和物又は溶媒和物を形成する場合もあるが、このような場合も本発明の範囲に包含される。塩の種類は特に限定されず、酸付加塩又は塩基付加塩のいずれであってもよい。
【0039】
本発明の化合物又はその塩はリポソームの膜構成成分として用いることができる。本発明の化合物又はその塩を用いてリポソームを調製する場合、本発明の化合物又はその塩の使用量は、膜構成成分の全質量に対して10から90質量%程度、好ましくは10から80質量%、さらに好ましくは20から80質量%である。本発明の化合物は膜構成成分として1種類を用いてもよいが、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
リポソームの他の膜構成成分としては、リポソームの製造に通常用いられている脂質化合物をいずれも用いてもよい。例えば、Biochim. Biophys. Acta 150(4), 44 (1982)、Adv. In Lipid. Res. 16(1), 1 (1978)、RESEARCH IN LIPOSOMES_ (P. Machy, L. Leserman著、John Libbey EUROTEXT社)、「リポソーム」(野島、砂本、井上編、南江堂)等に記載されている。脂質化合物としてはリン脂質が好ましく、特に好ましいのはホスファチジルコリン(PC)類である。ホスファチジルコリン類の好ましい例としては、eggPC、ジミリストイルPC(DMPC)、ジパルミトイルPC(DPPC)、ジステアロイルPC(DSPC)、ジオレイルPC(DOPC)等があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
リポソームの膜構成成分として好ましい例としては、ホスファチジルコリンとホスファチジルセリン(PS)との組み合わせを挙げることができる。ホスファチジルセリンとしては、ホスファチジルコリンの好ましい例として挙げたリン脂質と同様の脂質部位を有する化合物が挙げられる。ホスファチジルコリンとホスファチジルセリンとを組み合わせて用いる場合、PCとPSの好ましい使用モル比はPC:PS=90:10から10:90の間であり、さらに好ましくは、30:70から70:30の間である。
本発明のリポソームとして好ましい別の例としては、膜構成成分として、ホスファチジルコリンとホスファチジルセリンとを含み、さらにリン酸ジアルキルエステルを含むリポソームが挙げられる。リン酸ジアルキルエステルのジアルキルエステルを構成する2個のアルキル基は同一であることが好ましく、それぞれのアルキル基の炭素数は6以上であることが好ましく、10以上がより好ましく、12以上がさらに好ましい。好ましいリン酸ジアルキルエステルの例としては、ジラウリルフォスフェート、ジミリスチルフォスフェート、ジセチルフォスフェート等が挙げられるが、これらに限定されることはない。この態様において、ホスファチジルコリン及びホスファチジルセリンの合計質量に対するリン酸ジアルキルエステルの好ましい使用量は1から50質量%までであり、好ましくは1から30質量%であり、さらに好ましくは1から20質量%である。
【0041】
ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、リン酸ジアルキルエステ及び本発明の化合物を膜構成成分として含むリポソームにおいて、上記成分の好ましい質量比はPC:PS:リン酸ジアルキルエステル:本発明の化合物が5〜40質量%:5〜40質量%:1〜10質量%:15〜80質量%の間で選択することができる。
本発明のリポソームの構成成分は上記4者に限定されず、他の成分を加えることができる。その例としては、コレステロール、コレステロールエステル、スフィンゴエミリン、FEBS Lett. 223, 42 (1987); Proc. Natl. Acad. Sci., USA 85, 6949 (1988)等に記載のモノシアルガングリオキシドGM1誘導体、Chem. Lett. 2145 (1989); Biochim. Biophys. Acta 1148, 77 (1992)等に記載のグルクロン酸誘導体、Biochim. Biophys. Acta 1029, 91 (1990); FEBS Lett. 268, 235 (1990)等に記載のポリエチレングリコール誘導体が挙げられるが、これに限られるものではない。
【0042】
本発明のリポソームは、当業者が利用可能ないかなる方法で製造してもよい。製造法の例としては、先に挙げたリポソームの総説成書類の他、Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 9, 467 (1980)、"Liposomes" (M. J. Ostro編、MARCELL DEKKER、INC.)等に記載されている。具体例としては、超音波処理法、エタノール注入法、フレンチプレス法、エーテル注入法、コール酸法、カルシウム融合法、凍結融解法、逆相蒸発法等が挙げられるが、これらに限られるものではない。本発明のリポソームのサイズは、上記の方法で作成できるサイズのいずれであってもよいが、通常は平均が400 nm以下であり、200 nm以下が好ましい。リポソームの構造は特に限定されず、ユニラメラ又はマルチラメラなどのいずれの形態でもよい。また、リポソームの内部に適宜の薬物や他の造影剤の1種又は2種以上を配合することも可能である。
【0043】
本発明のリポソームを造影剤として用いる場合には、好ましくは非経口的に投与することができ、より好ましくは静脈内投与することができる。例えば、注射剤や点滴剤などの形態の製剤を凍結乾燥形態の粉末状組成物として提供し、用事に水又は他の適当な媒体(例えば生理食塩水、ブドウ等輸液、緩衝液など)に溶解ないし再懸濁して用いることができる。本発明のリポソームを造影剤として用いる場合、投与量はリポソーム中の化合物含有量が従来の造影剤の化合物含有量と同程度になるように適宜決定することが可能である。
【0044】
いかなる特定の理論に拘泥するわけではないが、動脈硬化、若しくはPTCA後の再狭窄等の血管疾患においては、血管の中膜を形成する血管平滑筋細胞が異常増殖を起こすと同時に内膜に遊走し、血流路を狭くすることが知られている。正常の血管平滑筋細胞が異常増殖を始めるトリガーはまだ完全に明らかにされていないが、マクロファージの内膜への遊走と泡沫化が重要な要因であることが知られており、その後に血管平滑筋細胞がフェノタイプ変換(収縮型から合成型)をおこすことが報告されている。
【0045】
本発明のリポソームを用いると、泡沫化マクロファージの影響で異常増殖した血管平滑筋に対して規定の造影剤となる化合物を選択的に取り込ませることができる。その結果、病巣と非疾患部位とをコントラストをつけて造影することが可能である。従って、本発明の造影剤は、特に血管疾患のMRI造影に好適に使用でき、例えば、動脈硬化巣やPTCA後の再狭窄等の造影を行うことができる。
【0046】
また、例えば J. Biol. Chem., 265, 5226 (1990)に記載されているように、リン脂質よりなるリポソーム、特にPCとPSから形成されるリポソームが、スカベンジャーレセプターを介してマクロファージに集積しやすいことが知られている。従って本発明のリポソームを使用することにより、本発明の化合物をマクロファージが局在化している組織又は疾患部位に集積させることができる。本発明のリポソームを用いると、公知技術であるサスペンジョン又はオイルエマルジョンを用いる場合に比べて、より多くの規定の化合物をマクロファージに集積させることが可能である。
【0047】
マクロファージの局在化が認められ、本発明のリポソームで好適に造影可能な組織としては、例えば、血管、肝臓、肺胞、リンパ節、リンパ管、腎臓上皮を挙げることができる。また、ある種の疾患においては、疾患部位にはマクロファージが集積していることが知られている。こうした疾患としては、腫瘍、動脈硬化、炎症、感染等を挙げることができる。従って、本発明のリポソームを用いることにより、これらの疾患部位を特定することができる。特に、アテローム性動脈硬化病変の初期過程において、スカベンジャーレセプターを介して変性LDLを大量に取り込んだ泡沫化マクロファージが集積していることが知られており〔Am. J. Pathol., 103, 181(1981)、Annu. Rev. Biochem., 52, 223(1983)〕、このマクロファージに本発明のリポソームを集積化させてMRI造影をすることにより、他の手段では困難な動脈硬化初期病変の位置を特定することが可能である。
【0048】
本発明のリポソームを用いた造影方法は特に限定されない。例えば、通常のMRI造影剤を用いた造影方法と同様にして水のT1/T2緩和時間の変化を測定することにより造影を行うことができる。また、適宜、適切な金属イオン同等物を用いることで、シンチグラフィー造影剤、X線造影剤、光像形成剤、超音波コントラスト剤としても使用することも可能である。
【実施例】
【0049】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。なお、下記の実施例中の化合物番号は上記に示した化合物例の番号に対応している。また、実施例中の化合物の構造はNMRスペクトル、及びマススペクトルにより確認した。
【0050】
製造例1:化合物7−3の調製
(1)4−ブロモブタン酸 3.51gをテトラヒドロフラン30mLに溶解した後、0度において無水トリフルオロ酢酸 6mLを滴下し、ついでテトラヒドロフラン5mLに溶解したtert−ブタノール 25mLを滴下した。室温にて1時間攪拌した後、溶液を飽和炭酸ナトリウム水溶液に加え、100mLの酢酸エチルで3度抽出した後、有機層を水と食塩水で洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、除媒、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、4−ブロモブタン酸ブチルエステルを3.42 g (73%)得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) d: 3.45 (2H, t) 2.41 (2H, t) 2.1-2.2 (2H, m) 1.45(9H, s).
【0051】
(2)上記エステル体1.1 gをフィタン酸1.3 gと炭酸水素ナトリウム0.42 g存在下、N,N-ジメチルホルムアミド15mL中、80度で1日間加熱攪拌した。反応溶液にジクロロメタン100mLと水100mLを加えて、200mLのジクロロメタンで3度抽出した後、有機層を飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、除媒、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することによりフィタン酸誘導体エステルを2.07 g (54%)得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) d: 4.10 (2H, t) 2.20 (2H, t) 2.05-2.15 (2H, m) 1.90-2.00 (4H, m) 1.5-1.55 (2H, m) 1.45 (9H, s) 1.00-1.40 (27H, m) 0.80-1.00 (6H, m).
【0052】
(3)上記フィタン酸誘導体エステル2.0 gをジクロロメタン46mLに溶解した後にトリフルオロ酢酸5.0mLを加え、0度で1時間攪拌した。反応溶液にジクロロメタン100mLと水150mLを加えて、200mLのジクロロメタンで3度抽出した後、有機層を飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、除媒することでフィタン酸誘導体を1.61 g (89%)得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) d: 4.13 (2H, t) 2.45 (2H, t) 2.10-2.40 (2H, m) 1.90-2.10 (4H, m) 1.45-1.60 (2H, m) 1.00-1.60 (27H, br) 0.80-1.00 (6H, m).
【0053】
(4)上記フィタン酸誘導体156 mgを、非特許文献5(シンセティック コミュニケーションズ (SYNTHETIC COMMUNICATIONS), 26(13),2511 (1996))に記載の方法で合成した1-(R)-ヒドロキシメチル−DTPAペンタ−t−ブチルエステル230 mgと、EDC49 mg、ジメチルアミノピリジン6.5 mg存在下、ジクロロメタン1.5mL中、室温で5時間攪拌した。反応終了後、除媒することで得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、化合物7-3のtert-ブチルエステル体を280 mg (79%)得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) d: 4.32-4.53 (2H, m) 4.07-4.16 (1H, m) 4.13 (2H, t) 3.43 (4H, s) 3.30 (2H, s) 3.25-3.76 (4H, m) 3.13-3.23 (2H, m) 2.72-2.86 (4H, m) 2.49-2.65 (1H, m) 2.46 (2H, t) 2.22-2.35 (2H, m) 2.07-2.15 (1H, m) 1.90-2.03 (2H, m) 1.00-1.60 (74H, br) 0.80-0.95 (6H, m)
Mass(MALDI-TOF) : m/z (a-cyano-4-hydroxycinnamic acid) 1084.9 (M+H)
【0054】
(5)上記化合物7-3のtert-ブチルエステル体100 mgを4規定の塩酸ジオキサン溶液2.0mL中、室温で3時間半攪拌した。除媒することで化合物7-3を65 mg (88%)得た。
1H-NMR (300MHz, CD3OD) d: 3.97-4.45 (5H, m) 3.53-3.96 (16H, m) 2.20-2.54 (5H, m) 1.86-2.03 (2H, m) 1.02-1.61 (29H, m) 0.82-0.96 (6H, m) Mass(MALDI-TOF) : m/z (a-cyano-4-hydroxycinnamic acid) 802 (M-H)
【0055】
(6)メタノール4mLに65 mgの化合物7-3を溶解した後に、酢酸ガドリニウム4水和物49 mgを加え、室温にて1時間半攪拌した。溶液を1規定水酸化ナトリウム水溶液でpH6に調整した。生じた結晶を濾別し、水、メタノール、アセトンで洗浄後、乾燥させることで化合物7-3のガドリニウム錯体30 mg (36%)を得た。
【0056】
製造例2:化合物1−5の調製
(1)6−ブロモヘキサン酸 18.85gをテトラヒドロフラン130mLに溶解した後、0度において無水トリフルオロ酢酸 28mLを滴下し、ついでテトラヒドロフラン23mLに溶解したtert−ブタノール 118mLを滴下した。室温にて1時間攪拌した後、溶液を飽和炭酸ナトリウム水溶液に加え、100mLの酢酸エチルで3度抽出した後、有機層を水と食塩水で洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、除媒、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、6−ブロモヘキサン酸ブチルエステルを15.9 g (67%)得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) d: 3.40 (2H, t) 2.23 (2H, t) 1.85-1.95 (2H, m) 1.55-1.70 (2H, m) 1.45-1.55 (11H, m).
【0057】
(2)6−ブロモヘキサン酸ブチルエステル1.70 gをパルミチン酸1.40 gと炭酸水素ナトリウム0.60 g存在下、N,N-ジメチルホルムアミド20mL中、80度で1日間加熱攪拌した。反応溶液にジクロロメタン100mLと水100mLを加えて、200mLのジクロロメタンで3度抽出した後、有機層を飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、除媒、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することによりパルミチン酸誘導体エステルを1.55 g (66%)得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) d: 4.05 (2H, t) 2.30 (2H, t) 2.25 (2H, t) 1.55-1.70 (6H, m) 1.45 (9H, s) 1.25-1.35 (26H, m) 0.90 (3H, t).
【0058】
(3)上記パルミチン酸誘導体エステル1.3 gをジクロロメタン15mLに溶解した後にトリフルオロ酢酸3.3mLを加え、室温で1時間攪拌した。反応溶液にジクロロメタン100mLと水150mLを加えて、200mLのジクロロメタンで3度抽出した後、有機層を飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、除媒することでパルミチン酸誘導体を1.13 g (99%)得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) d: 4.05 (2H, t) 2.38 (2H, t) 2.30 (2H, t) 1.55-1.76 (6H, m) 1.38-1.50 (2H, m) 1.20-1.38 (26H, m) 0.90 (3H, t).
【0059】
(4)上記パルミチン酸誘導体252 mgを、非特許文献5に記載方法で合成した1-(R)-ヒドロキシメチル−DTPAペンタ−t−ブチルエステル400 mgと、EDC130 mg、ジメチルアミノピリジン6.9 mg存在下、ジクロロメタン5.6mL中、室温で5時間攪拌した。反応終了後、除媒することで得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、化合物1-5のtert-ブチルエステル体を270 mg (45%)得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) d: 4.13-4.30 (2H, m) 4.07-4.16 (1H, m) 4.06 (2H, t) 3.50 (4H, s) 3.45 (2H, s) 3.35 (2H, s) 3.13-3.23 (2H, br) 2.78 (s, 2H) 2.60-2.95 (2H, m) 2.35 (1H, t) 2.30 (2H, t) 1.71-1.60 (6H, m) 1.55 (9H, s) 1.46 (45H, s) 1.23-1.35 (26H, m) 0.88 (3H, t)
Mass(MALDI-TOF) : m/z (a-cyano-4-hydroxycinnamic acid) 1056.3 (M+H)
【0060】
(5)上記化合物1-5のtert-ブチルエステル体270 mgを4規定の塩酸ジオキサン溶液3.5mL中、室温で3時間半攪拌した。除媒することで化合物1-5を90 mg (45%)得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) d: 4.20-4.35 (2H, m) 4.08 (2H, t) 3.55-3.75 (16H, m) 2.38 (1H, t) 2.30 (2H, t) 1.55-1.70 (6H, m) 1.25-1.40 (26H, m) 0.90 (3H, t)
Mass(MALDI-TOF) : m/z (a-cyano-4-hydroxycinnamic acid) 776 (M)
【0061】
(6)メタノール6.0mLに90 mgの化合物1-5を溶解した後に、酢酸ガドリニウム4水和物 47 mgを加え、室温にて1時間半攪拌した。溶液を1規定水酸化ナトリウム水溶液でpH6に調整した。生じた結晶を濾別し、水、メタノール、アセトンで洗浄後、乾燥させることで化合物1-5のガドリニウム錯体33 mg (31%)を得た。
【0062】
製造例3:化合物1−8の調製
(1)8−ブロモオクタン酸 10.0gをテトラヒドロフラン60mLに溶解した後、0度において無水トリフルオロ酢酸 12.5mLを滴下し、ついでテトラヒドロフラン10mLに溶解したtert−ブタノール 52mLを滴下した。室温にて1時間攪拌した後、溶液を飽和炭酸ナトリウム水溶液に加え、100mLの酢酸エチルで3度抽出した後、有機層を水と食塩水で洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、除媒、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、8−ブロモオクタン酸ブチルエステルを10.3g(51%)得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) d: 3.40 (2H, t) 2.20 (2H, t) 1.80-1.90 (2H, m) 1.55-1.70 (2H, m) 1.40-1.50 (11H, m) 1.20-1.40 (4H, s).
【0063】
(2)8−ブロモオクタン酸ブチルエステル1.90 gをパルミチン酸1.40 gと炭酸水素ナトリウム0.60 g存在下、N,N-ジメチルホルムアミド20mL中、80度で1日間加熱攪拌した。反応溶液にジクロロメタン100mLと水100mLを加えて、200mLのジクロロメタンで3度抽出した後、有機層を飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、除媒、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することによりパルミチン酸誘導体エステルを1.40 g (56%)得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) d: 4.05 (2H, t) 2.30 (2H, t) 2.20 (2H, t) 1.53-1.70 (10H, m) 1.45 (9H, s) 1.20-1.40 (26H, m) 0.88 (3H, t).
【0064】
(3)上記パルミチン酸誘導体エステル1.3 gをジクロロメタン14mLに溶解した後にトリフルオロ酢酸3.2mLを加え、室温で1時間攪拌した。反応溶液にジクロロメタン100mLと水150mLを加えて、200mLのジクロロメタンで3度抽出した後、有機層を飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、除媒することでパルミチン酸誘導体を1.01 g (89%)得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) d: 4.05 (2H, t) 2.35 (2H, t) 2.28 (2H, t) 1.55-1.70 (10H, m) 1.20-1.40 (26H, m) 0.90 (3H, t).
【0065】
(4)上記パルミチン酸誘導体255 mgを、非特許文献5に記載方法で合成した1-(R)-ヒドロキシメチル−DTPAペンタ−t−ブチルエステル300 mgと、EDC122 mg、ジメチルアミノピリジン5.2 mg存在下、ジクロロメタン4.0mL中、室温で5時間攪拌した。反応終了後、除媒することで得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、化合物1-8のtert-ブチルエステル体を260 mg (56%)得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) d: 4.13-4.30 (2H, m) 4.07-4.16 (1H, m) 4.06 (2H, t) 3.50 (4H, s) 3.45 (2H, s) 3.35 (2H, s) 3.13-3.23 (2H, br) 2.80 (s, 2H) 2.60-2.95 (2H, m) 2.25-2.35 (3H, m) 1.70-1.50 (15H, m) 1.45 (45H, s) 1.20-1.40 (26H, m) 0.90 (3H, t)
Mass(MALDI-TOF) : m/z (a-cyano-4-hydroxycinnamic acid) 1084.7 (M+H)
【0066】
(5)上記化合物1-8のtert-ブチルエステル体260 mgを4規定の塩酸ジオキサン溶液3.5mL中、室温で3時間半攪拌した。除媒することで化合物1-8を80 mg (41%)得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) d: 4.20-4.35 (2H, m) 4.08 (2H, t) 3.55-3.75 (16H, m) 2.38 (1H, t) 2.30 (2H, t) 1.55-1.70 (10H, m) 1.25-1.40 (26H, m) 0.90 (3H, t)
Mass(MALDI-TOF) : m/z (a-cyano-4-hydroxycinnamic acid) 804.0 (M+H)
【0067】
(6)メタノール5mLに80 mgの化合物1-8を溶解した後に、塩酸ガドリニウム 61 mgを加え、室温にて1時間半攪拌した。溶液を1規定水酸化ナトリウム水溶液でpH6に調整した。生じた結晶を濾別し、水、メタノール、アセトンで洗浄後、乾燥させることで化合物1-8のガドリニウム錯体59 mg (62%)を得た。
【0068】
製造例4:化合物1−3の調製
(1)4−ブロモブタン酸ブチルエステル1.98 gをパルミチン酸1.52 gと炭酸水素ナトリウム0.60 g存在下、N,N-ジメチルホルムアミド20mL中、80度で1日間加熱攪拌した。反応溶液にジクロロメタン100mLと水100mLを加えて、200mLのジクロロメタンで3度抽出した後、有機層を飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、除媒、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することによりパルミチン酸誘導体エステルを1.92 g (81%)得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) d: 4.10 (2H, t) 2.25-2.35 (4H, m) 1.88-1.98 (2H, m) 1.60-1.70 (2H, m) 1.45 (9H, s) 1.25-1.40 (26H, m) 0.90 (3H, t).
【0069】
(2)上記パルミチン酸誘導体エステル1.9 gをジクロロメタン48mLに溶解した後にトリフルオロ酢酸4.8mLを加え、室温で1時間攪拌した。反応溶液にジクロロメタン100mLと水150mLを加えて、200mLのジクロロメタンで3度抽出した後、有機層を飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、除媒することでパルミチン酸誘導体を1.29 g (79%)得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) d: 4.13 (2H, t) 2.45 (2H, t) 2.30 (4H, t) 1.93-2.12 (2H, m) 1.5 5-1.65 (2H, m) 1.20-1.35 (26H, br) 0.88 (6H, m).
【0070】
(3)上記パルミチン酸誘導体1.23 gを、非特許文献5に記載方法で合成した1-(R)-ヒドロキシメチル−DTPAペンタ−t−ブチルエステル0.6 gと、EDC0.4 g、ジメチルアミノピリジン0.12 g存在下、ジクロロメタン9mL中、室温で5時間攪拌した。反応終了後、除媒することで得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、化合物1-3のtert-ブチルエステル体を0.85 g (97%)得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) d: 4.20-4.30 (2H, m) 4.05-4.15 (3H, m) 3.50 (4H, s) 3.45 (2H, s) 3.35 (2H, s) 3.08-3.15 (2H, br) 2.80 (s, 2H) 2.55-2.95 (2H, m) 2.35-2.50 (2H, m) 2.25-2.35 (2H, m) 1.55-1.70 (2H, m) 1.45 (45H, s) 1.20-1.40 (26H, m) 0.90 (3H, t)
Mass(MALDI-TOF) : m/z (a-cyano-4-hydroxycinnamic acid) 1028.2 (M)
【0071】
(4)上記化合物1-3のtert-ブチルエステル体0.53 gを4規定の塩酸ジオキサン溶液7.5mL中、室温で3時間半攪拌した。除媒することで化合物1-3を0.35 g (90%)得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) d: 4.20-4.45 (2H, m) 4.05-4.20 (6H, t) 3.90-4.05 (1H ,m) 3.88 (2H, s) 3.70-3.85 (4H, m) 3.40-3.70 (2H, m) 2.45-2.53 (2H, m) 2.35-2.45 (2H, m) 2.27-2.35 (2H, m) 1.90-2.00 (2H, m) 1.55-1.65 (2H, m) 1.25-1.40 (26H, m) 0.90 (3H, t)
Mass(MALDI-TOF) : m/z (a-cyano-4-hydroxycinnamic acid) 748.1 (M)
【0072】
(5)メタノール12mLに200 mgの化合物1-3を溶解した後に、塩酸ガドリニウム 80 mgを加え、室温にて1時間半攪拌した。溶液を1規定水酸化ナトリウム水溶液でpH6に調整した。生じた結晶を濾別し、水、メタノール、アセトンで洗浄後、乾燥させることで化合物1-3のガドリニウム錯体167 mg (65%)を得た。
Mass(ESI) : m/z 450.1 (M-2Na)2-
【0073】
試験例1:溶解性試験
本発明の化合物のガドリニウム錯体(Gd錯体)、及び既知の比較化合物1をそれぞれ1mMになるように秤量し、それぞれの溶媒を1mL加え、その際の溶解性(室温25℃)を調べた。その結果、本発明の化合物のGd錯体は、比較化合物1に比べて、特にジクロロメタン、クロロホルムに対する溶解性が向上しており、リポソーム製剤化するための優れた特性を有していることが明らかである。
【表1】

【0074】
【化14】

【0075】
試験例2:リポソームの作成方法
J. Med. Chem., 25(12), 1500 (1982) に記載の方法に従い、下記に示した割合のジ・パルミトイル PC(フナコシ社製、No.1201-41-0225)、ジ・パルミトイル PS(フナコシ社製、No.1201-42-0237)を、本発明の化合物とともにナス型フラスコ内でクロロホルムに溶解して均一溶液とした後、溶媒を減圧で留去してフラスコ底面に薄膜を形成した。この薄膜を真空で乾燥後、0.9%生理食塩水(光製薬社製、No512)を適当量加え、超音波照射(Branson社製、No.3542プローブ型発振器、0.1mW)を氷冷下5分実施した後に、リポソーム調製器(セントラル科学社製)を用いて粒子径85から120 nmのリポソーム分散液を調製した。
【0076】
試験例3:リポソーム形成試験
上記方法に従い、ジ・パルミトイル PC、ジ・パルミトイル PS、及び化合物7-3のGd錯体の混合比率を変えてリポソーム形成を行った結果、化合物7-3のGd錯体はジ・パルミトイル PSの含量が高い時でも安定してリポソームの形成が確認され、リポソーム製剤化するための優れた特性を有していることが明らかになった。

ジ・パルミトイル PC ジ・パルミトイル PS 化合物7−3のGd錯体
50 : 50 : 5
【0077】
試験例4:マウス3日間連続投与毒性試験
化合物1-3のGd錯体、化合物1-5のGd錯体、化合物1-7のGd錯体、及び化合物7-3のGd錯体につきそれぞれ下記の手順で毒性試験を行った。
ICRマウス雄6週齢(日本チャールスリバー)を購入し、1週間の検疫期間の後、クリーン動物舎内(空調:へパフィルター クラス1000、室温:20℃〜24℃ 湿度:35%〜60%)で1週間馴化した。その後、MTD値を求めるため、尾静脈よりマウス血清懸濁液を投与した。マウス血清懸濁液は、生理食塩水(光製薬社製)又はグルコース溶液(大塚製薬社製)のいずれかを溶媒として投与した。次に求められたMTD値をもとに、その1/2量の各錯体を3日間、尾静脈より3日間連続で投与した(n=3匹とする)。症状観察は各投与後6時間までとし、神経毒性を観察後、剖検を行ない、主要臓器について所見を取った。結果を下記に示す。本発明の化合物は低毒性で、神経毒性も示さないことが明らかであり、MRI造影剤のためのリポソームの構成脂質として優れた性質を有することが明らかである。
化合物:MTD(mg/kg);神経毒性(「−」は神経毒性陰性、「+」は神経毒性陽性を示す)
化合物1-3のGd錯体(50mg/kg):−、
化合物1-5のGd錯体(100mg/kg):−、
化合物1-7のGd錯体(100mg/kg):−
化合物7-3のGd錯体(100mg/kg):−

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I):
【化1】

[式中、Rは8〜30個の炭素原子からなるアルキル基又はアルケニル基を示し;Lは2価の連結基を表し(Lは炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、及び水素原子からなる群から選択される原子により構成され、かつLを構成する炭素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子の総原子数は1〜30個であり、このうち該酸素原子の数は0〜15個であり、該窒素原子の数は0〜6個であり、該硫黄原子の数は0〜3個である);Chは下記の一般式(II)又は(III)を示す]で表される化合物又はその塩。
【化2】

【化3】

【請求項2】
Rが直鎖又は分枝鎖のアルキル基、もしくは直鎖又は分枝鎖のアルケニル基である請求項1に記載の化合物又はその塩。
【請求項3】
Rが下記一般式(IV)[qは6〜28の整数を示し;rq、r'qはそれぞれ独立に水素原子、メチル基、又はエチル基を示す。ただし、全てのrq、r'qが同時に水素原子を示すことはなく; Rを構成する炭素原子の総数が30個を超えることはない]で表される基である請求項1に記載の化合物又はその塩。
【化4】

【請求項4】
Lが主鎖中に−X1−CO−又は−CO−X1−:[X1は−O−又は−NZ1−を示し;Z1は水素原子又は1〜3個の炭素原子からなる低級アルキル基を示す]で示される部分構造を少なくとも1つ以上有する連結基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物又はその塩。
【請求項5】
Lが−W1−X2−CO−W2−又は−W1−CO−X2−W2−[W1は単結合、又は炭素数1〜5個のアルキレン基又はアルケニレン基を示し;X2は−O−又は−NZ2−を示し(Z2は水素原子又は1〜3個の炭素原子からなる低級アルキル基を示す);W2は炭素数1〜20個のアルキレン基又はアルケニレン基を示す] で表される連結基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物又はその塩。
【請求項6】
Lが主鎖中に、−(OCH2CH2)n−、−(CH2CH2O)n−、−(OCH2CH2CH2)m−、又は−(CH2CH2CH2O)m−(nは1〜8の整数を示し;mは1〜6の整数を示す)のいずれか1つの構造で示される部分構造を有する連結基である請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物又はその塩。
【請求項7】
Lが、−W3−X3−CO−W4−又は−W3−CO−X3−W5−[W3は単結合、又は炭素数1〜5個のアルキレン基又はアルケニレン基を示し;X3は−O−又は−NZ3−を示し;Z3は水素原子又は1〜3個の炭素原子からなる低級アルキル基を示し;W4は−(OCH2CH2)n−、−CH2−(OCH2CH2)n−、−(OCH2CH2CH2)m−、−CH2−(OCH2CH2CH2)m−、又は−CH2CH2−(OCH2CH2CH2)m−(nは1〜8の整数を表し;mは1〜6の整数を表す)のいずれか1つの構造を示し;W5は−(CH2)2−(OCH2CH2)n−又は−(CH2)3−(OCH2CH2CH2)m−(nは1〜8の整数を示し;mは1〜6の整数を示す)の構造を示す] で表される連結基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物又はその塩。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物及び金属イオンからなるキレート化合物又はその塩。
【請求項9】
金属イオンが原子番号21-29、31、32、37-39、42-44、49、57-83から選択される元素の金属イオンである請求項8に記載のキレート化合物又はその塩。
【請求項10】
金属イオンが原子番号21-29、42、44、57-71に相当する常磁性元素から選択される元素の金属イオンである請求項8に記載のキレート化合物又はその塩。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物又はその塩を膜構成成分として含むリポソーム。
【請求項12】
ホスファチジルコリン及びホスファチジルセリンを膜構成成分として含む請求項11に記載のリポソーム。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のリポソームを含むMRI造影剤。
【請求項14】
血管疾患の造影に用いるための請求項13に記載のMRI造影剤。
【請求項15】
泡沫化マクロファージの影響で異常増殖した血管平滑筋細胞の造影に用いる請求項13に記載のMRI造影剤。
【請求項16】
マクロファージが局在化する組織又は疾患部位の造影のための請求項13に記載のMRI造影剤。
【請求項17】
マクロファージが局在化する組織が肝臓、脾臓、肺胞、リンパ節、リンパ管、及び腎臓上皮からなる群から選ばれる請求項16に記載のMRI造影剤。
【請求項18】
マクロファージが局在化する疾患部位が腫瘍、炎症部位、及び感染部位からなる群から選ばれる請求項16に記載のMRI造影剤。
【請求項19】
請求項11又は12に記載のリポソームを含むシンチグラフィー造影剤。
【請求項20】
血管疾患の造影に用いるための請求項19に記載のシンチグラフィー造影剤。
【請求項21】
泡沫化マクロファージの影響で異常増殖した血管平滑筋細胞の造影に用いる請求項19に記載のシンチグラフィー造影剤。
【請求項22】
マクロファージが局在化する組織又は疾患部位の造影のための請求項19に記載のシンチグラフィー造影剤。
【請求項23】
マクロファージが局在化する組織が肝臓、脾臓、肺胞、リンパ節、リンパ管、及び腎臓上皮からなる群から選ばれる請求項22に記載のシンチグラフィー造影剤。
【請求項24】
マクロファージが局在化する疾患部位が腫瘍、炎症部位、及び感染部位からなる群から選ばれる請求項22に記載のシンチグラフィー造影剤。

【公開番号】特開2007−91639(P2007−91639A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283460(P2005−283460)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】