ジオキソランヌクレオシド類似体の立体選択的製造方法
【課題】ジオキソランヌクレオシド類似体の立体選択的製造方法の提供。
【解決手段】本発明は、式(I)
【化1】
で表わされる化合物の製造方法であって、該方法は、
a)豚肝臓エステラーゼ又は豚膵臓リパーゼから選択された適当量の酵素の存在下において、式(II)
【化2】
で表わされる化合物を酵素によるジアステレオマー分割に付す工程、
b)式(I)で表わされる前記化合物を回収する工程
を含む方法に関する。本発明はまた、式(III)
【化3】
で表わされる化合物の製造方法であって、該方法は、
a)カンジダ アンタルクチカ‘‘A’’リパーゼ、カンジダ アンタルクチカ‘‘B’’リパーゼ、カンジダ リポリチカリパーゼ又はリゾムコール ミエヘイリパーゼから選択された適当量の酵素の存在下において、式(IV)
【化4】
で表わされる化合物を酵素によるジアステレオマー分割に付す工程、
b)式(III)で表わされる前記化合物を回収する工程
を含む方法を提供する。
【解決手段】本発明は、式(I)
【化1】
で表わされる化合物の製造方法であって、該方法は、
a)豚肝臓エステラーゼ又は豚膵臓リパーゼから選択された適当量の酵素の存在下において、式(II)
【化2】
で表わされる化合物を酵素によるジアステレオマー分割に付す工程、
b)式(I)で表わされる前記化合物を回収する工程
を含む方法に関する。本発明はまた、式(III)
【化3】
で表わされる化合物の製造方法であって、該方法は、
a)カンジダ アンタルクチカ‘‘A’’リパーゼ、カンジダ アンタルクチカ‘‘B’’リパーゼ、カンジダ リポリチカリパーゼ又はリゾムコール ミエヘイリパーゼから選択された適当量の酵素の存在下において、式(IV)
【化4】
で表わされる化合物を酵素によるジアステレオマー分割に付す工程、
b)式(III)で表わされる前記化合物を回収する工程
を含む方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明分野
本発明は、ジオキソランヌクレオシド類似体及びそれらの中間体の立体選択的製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ヌクレオシド類似体は、重要な種類の治療剤である。より特には、置換1,3−ジオキソランが天然ヌクレオシド中に見られる糖部分を置換しているジオキソランヌクレオシド類似体は、生物活性を有することが示されている。
【0003】
ジオキソラン類似体は、最初に、ベレアウ他によって、1989年10月19日に公開された欧州特許第0337713号明細書、1991年8月20日に発行された米国特許第5,041,449号明細書及び1993年12月14日に発行された米国特許第5,270,315号明細書中で報告された。
【0004】
9−(β−D−2−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−2,6−ジアミノプリン(β−D−DAPD)及び9−(β−D−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−9−グアニン(β−D−DXG)は、様々な細胞系中のHIV−1に対して有用な効力を有することが、グ他によって報告されている(Antimicrob.Agents Chemother.(1999年),43(10),2376頁−2382頁及びNucleosides Nucleotides(1999年),18(4&5),891頁−892頁)。
【0005】
更に、1−(β−L−2−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−シトシン(β−L−OddC、トロキサシタビン(troxacitabine))が、様々な形態(例えば、固形腫瘍、成人白血病及びリンパ腫)の癌の治療において効力を示すこともまた、報告されている(ウェイトマン他,Clinical Cancer Research(2000年),6(4),1574頁−1578頁及びガイルス他,Journal of Clinical Oncology(2001年),19(3),762頁−771頁、及びまた、ゴウルデアウ他,Cancer Chemother.Pharmacol.(2001年),47(3),236頁−240頁)。
【0006】
2−ベンゾイルオキシメチル−[1,3]ジオキソラン−4−カルボキシレートエステル等のジオキソラン中間体は、1997年6月19日、マンサワー,タレク他による国際公開第97/21706号パンフレット、2000年8月17日、シムポイア,アレックス他による国際公開第00/47759号パンフレット及び2000年7月6日、ングエン−バ,ングヘ他による国際公開第00/39143号パンフレットに記載されたようなジオキソランヌクレオシド類似体の合成において使用される重要な中間体である。これまで、文献は、生物分割法の開発に注意を向けた努力を報告している。酵素的分割法は、経済的で、再利用可能であり、かつ環境に優しいという触媒量の酵素を使用することによる利点を有する。それ故、2−ベンゾイルオキシメチル−[1,3]ジオキソラン−4−カルボキシレートエステルのジアステレオマー分割を行うための適当な酵素の同定が強く望まれている。
【特許文献1】欧州特許第0337713号明細書
【特許文献2】米国特許第5,041,449号明細書
【特許文献3】米国特許第5,270,315号明細書
【非特許文献1】Antimicrob.Agents Chemother.(1999年),43(10),2376頁−2382頁
【非特許文献2】Nucleosides Nucleotides(1999年),18(4&5),891頁−892頁
【非特許文献3】ウェイトマン他,Clinical Cancer Research(2000年),6(4),1574頁−1578頁
【非特許文献4】ガイルス他,Journal of Clinical Oncology(2001年),19(3),762頁−771頁
【非特許文献5】ゴウルデアウ他,Cancer Chemother.Pharmacol.(2001年),47(3),236頁−240頁
【特許文献4】国際公開第97/21706号パンフレット
【特許文献5】国際公開第00/47759号パンフレット
【特許文献6】国際公開第00/39143号パンフレット
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
1つの観点において、本発明は、式I
【化1】
(式中、R1は、炭素原子数1ないし12のアルキル基、炭素原子数2ないし12のアルケニル基、炭素原子数2ないし12のアルキニル基、炭素原子数6ないし12のアリール基、炭素原子数3ないし10のヘテロ環式基、炭素原子数6ないし12のアラルキル基又は炭素原子数3ないし10のヘテロアラルキル基から選択され、R2は、ヒドロキシル保護基を表わす。)で表わされる化合物の製造方法であって、該方法は、
a)豚肝臓エステラーゼ又は豚膵臓リパーゼから選択された適当量の酵素の存在下において、式II
【化2】
(式中、R1は、炭素原子数1ないし12のアルキル基、炭素原子数2ないし12のアルケニル基、炭素原子数2ないし12のアルキニル基、炭素原子数6ないし12のアリール基、炭素原子数3ないし10のヘテロ環式基、炭素原子数6ないし12のアラルキル基又は炭素原子数3ないし10のヘテロアラルキル基から選択され、R2は、ヒドロキシル保護基を表わす。)
で表わされる化合物を酵素によるジアステレオマー分割に付す工程、
b)式Iで表わされる前記化合物を回収する工程
を含む方法を提供する。
【0008】
他の観点において、式III
【化3】
(式中、R11は、炭素原子数1ないし12のアルキル基、炭素原子数2ないし12のアルケニル基、炭素原子数2ないし12のアルキニル基、炭素原子数6ないし12のアリール基、炭素原子数3ないし10のヘテロ環式基、炭素原子数6ないし12のアラルキル基又は炭素原子数3ないし10のヘテロアラルキル基から選択され、R12は、ヒドロキシル保護基を表わす。)で表わされる化合物の製造方法であって、該方法は、
a)カンジダ アンタルクチカ‘‘A’’リパーゼ(Candida Antarctica ‘‘A’’ lipase)、カンジダ アンタルクチカ‘‘B’’リパーゼ(Candida Antarctica ‘‘B’’ lipase)、カンジダ リポリチカリパーゼ(Candida Lypolitica lipase)又はリゾムコール ミエヘイリパーゼ(Rhizomucor Miehei lipase)から選択された適当量の酵素の存在下において、式IV
【化4】
(式中、R11は、炭素原子数1ないし12のアルキル基、炭素原子数2ないし12のアルケニル基、炭素原子数2ないし12のアルキニル基、炭素原子数6ないし12のアリール基、炭素原子数3ないし10のヘテロ環式基、炭素原子数6ないし12のアラルキル基又は炭素原子数3ないし10のヘテロアラルキル基から選択され、R12は、ヒドロキシル保護基を表わす。)で表わされる化合物を酵素によるジアステレオマー分割に付す工程、
b)式IIIで表わされる前記化合物を回収する工程
を含む方法を提供する。
【0009】
本発明の詳細な説明
本発明は、一般的に、ジオキソランヌクレオシド類似体及びそれらの中間体の製造のための、酵素によるジアステレオマー分割法に関する。
【0010】
1つの態様において、本発明の方法は、以下の態様が、独立して又は組合されて存在する方法を含む。
【0011】
他に特に定義がない限りは、ここで使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が属するところの当業者に一般的に理解されるものと同一の意味を有する。全ての刊行物、特許出願、特許及びここで言及された他の参照文献は、完全に参照文献として組込まれる。矛盾する場合、本願明細書は、定義を含め、調整され得る。更に、材料、方法及び実施例は、例証のみであり、制限することを意図しない。
【0012】
本願で使用される用語‘‘アルキル基’’は、1つ以上のハロゲン原子、ニトロ基、ニトロソ基、SO3R12、PO3RcRd、CONR13R14、炭素原子数1ないし6のアルキル基、炭素原子数2ないし6のアルケニル基、炭素原子数2ないし6のアルキニル基、炭素原子数6ないし12のアラルキル基、炭素原子数6ないし12のアリール基、炭素原子
数1ないし6のアルキルオキシ基、炭素原子数2ないし6のアルケニルオキシ基、炭素原子数2ないし6のアルキニルオキシ基、炭素原子数6ないし12のアリールオキシ基、C(O)炭素原子数1ないし6のアルキル基、C(O)炭素原子数2ないし6のアルケニル基、C(O)炭素原子数2ないし6のアルキニル基、C(O)炭素原子数6ないし12のアリール基、C(O)炭素原子数6ないし12のアラルキル基、炭素原子数3ないし10のヘテロ環式基、ヒドロキシル基、NR13R14、C(O)OR12、シアノ基、アジド基、アミジノ基又はグアニド基(ここで、R12、Rc、Rd、R13及びR14は、互いに独立して、H、炭素原子数1ないし12のアルキル基、炭素原子数2ないし12のアルケニル基、炭素原子数2ないし12のアルキニル基、炭素原子数6ないし14のアリール基、炭素原子数3ないし12のヘテロ環式基、炭素原子数3ないし18のヘテロアラルキル基、炭素原子数6ないし18のアラルキル基から選択されるか;又は、Rc及びRdは、酸素原子と一緒になって、5ないし10員のヘテロ環式基を形成するか;又は、R13及びR14は、窒素原子と一緒になって、3ないし10員のヘテロ環式基を形成する。)によって所望により置換され得る直鎖、枝分かれ鎖又は環状炭化水素部分を表わす。アルキル基の有用な例は、イソプロピル基、エチル基、フルオロヘキシル基又はシクロプロピル基を含む。用語‘‘アルキル基’’はまた、1つ以上の水素原子が酸素原子(例えば、ベンゾイル基)又はハロゲン原子、より好ましくは、弗素原子(例えば、CF3−又はCF3CH2−)によって置換され得るアルキル基を含むことを意味する。
【0013】
用語‘‘アルケニル基’’及び‘‘アルキニル基’’は、少なくとも1つの不飽和基(例えば、アリル基)を含むアルキル基を表わす。
【0014】
用語‘‘アルコキシ基’’は、酸素原子を通して隣接する原子に共有結合したアルキル基を表わす。
【0015】
用語‘‘アリール基’’は、1つ以上のハロゲン原子、ニトロ基、ニトロソ基、SO3R12、PO3RcRd、CONR13R14、炭素原子数1ないし6のアルキル基、炭素原子数2ないし6のアルケニル基、炭素原子数2ないし6のアルキニル基、炭素原子数6ないし12のアラルキル基、炭素原子数6ないし12のアリール基、炭素原子数1ないし6のアルキルオキシ基、炭素原子数2ないし6のアルケニルオキシ基、炭素原子数2ないし6のアルキニルオキシ基、炭素原子数6ないし12のアリールオキシ基、C(O)炭素原子数1ないし6のアルキル基、C(O)炭素原子数2ないし6のアルケニル基、C(O)炭素原子数2ないし6のアルキニル基、C(O)炭素原子数6ないし12のアリール基、C(O)炭素原子数6ないし12のアラルキル基、炭素原子数3ないし10のヘテロ環式基、ヒドロキシル基、NR13R14、C(O)OR12、シアノ基、アジド基、アミジノ基又はグアニド基(ここで、R12、Rc、Rd、R13及びR14は、互いに独立して、H、炭素原子数1ないし12のアルキル基、炭素原子数2ないし12のアルケニル基、炭素原子数2ないし12のアルキニル基、炭素原子数6ないし14のアリール基、炭素原子数3ないし12のヘテロ環式基、炭素原子数3ないし18のヘテロアラルキル基、炭素原子数6ないし18のアラルキル基から選択されるか;又は、Rc及びRdは、酸素原子と一緒になって、5ないし10員のヘテロ環式基を形成するか;又は、R13及びR14は、窒素原子と一緒になって、3ないし10員のヘテロ環式基を形成する。)によって所望により置換され得るベンゼノイド型環を少なくとも1つ含む炭素環式部分を表わす。アリール基の例は、フェニル基及びナフチル基を含む。
【0016】
用語‘‘アリールアルキル基’’は、炭素原子数1ないし6のアルキル基によって隣接する原子に結合したアリール基(例えば、ベンジル基)を表わす。
【0017】
用語‘‘アリールオキシ基’’は、酸素原子を通して隣接する原子に共有結合したアリール基を表わす。
【0018】
用語‘‘アシル基’’は、−OH基の置換によって得られたカルボン酸から誘導された基として定義される。酸等に関連して、アシル基は、所望により1つ以上のハロゲン原子、ニトロ基、ニトロソ基、SO3R12、PO3RcRd、CONR13R14、炭素原子数1ないし6のアルキル基、炭素原子数2ないし6のアルケニル基、炭素原子数2ないし6のアルキニル基、炭素原子数6ないし12のアラルキル基、炭素原子数6ないし12のアリール基、炭素原子数1ないし6のアルキルオキシ基、炭素原子数2ないし6のアルケニルオキシ基、炭素原子数2ないし6のアルキニルオキシ基、炭素原子数6ないし12のアリールオキシ基、C(O)炭素原子数1ないし6のアルキル基、C(O)炭素原子数2ないし6のアルケニル基、C(O)炭素原子数2ないし6のアルキニル基、C(O)炭素原子数6ないし12のアリール基、C(O)炭素原子数6ないし12のアラルキル基、炭素原子数3ないし10のヘテロ環式基、ヒドロキシル基、NR13R14、C(O)OR12、シアノ基、アジド基、アミジノ基又はグアニド基(ここで、R12、Rc、Rd、R13及びR14は、互いに独立して、H、炭素原子数1ないし12のアルキル基、炭素原子数2ないし12のアルケニル基、炭素原子数2ないし12のアルキニル基、炭素原子数6ないし14のアリール基、炭素原子数3ないし12のヘテロ環式基、炭素原子数3ないし18のヘテロアラルキル基、炭素原子数6ないし18のアラルキル基から選択されるか;又は、Rc及びRdは、酸素原子と一緒になって、5ないし10員のヘテロ環式基を形成するか;又は、R13及びR14は、窒素原子と一緒になって、3ないし10員のヘテロ環式基を形成する。)で置換された直鎖、枝分かれ鎖又は脂環式又は芳香族であり得る。有用なアシル基の例は、アセチル基、プロピオニル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、トリフルオロアセチル基、シクロヘキサノイル基及びベンゾイル基を含む。
【0019】
‘‘アシルオキシ基’’は、酸素原子によって隣接する原子に結合したアシル基(例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基)として定義される。
【0020】
本願において使用される用語‘‘シクロアルキル基’’は、環を形成する上記で定義したような‘‘アルキル基’’(例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基)を表わす。
【0021】
用語‘‘シクロアルキルアミノ基’’は、窒素原子を通して隣接する原子に共有結合したシクロアルキル基を表わす。
【0022】
用語‘‘アルカノール基’’は、水素原子の1つがヒドロキシル基によって置換された‘‘アルキル基’’部分(例えば、イソプロパノール、エタノール又はシクロプロパノール)を表わす。用語‘‘アルカノール基’’はまた、1つ以上の水素原子が、ハロゲン原子、より好ましくは弗素原子(例えば、CF3CH2OH)によって置換されたアルカノール基を含むことを意味する。
【0023】
用語‘‘独立して’’は、置換基が、各項目において同じ又は異なる定義であり得ることを意味する。
【0024】
用語‘‘ヒドロキシル保護基’’は、有機化学の分野でよく知られている。このような保護基は、T.グリーン,Protective Group In Organic Synthesis,(ジョン ウィリー&サン,1981年)中で見られ得る。ヒドロキシル保護基の例は、ベンジル基、アセチル基、ベンゾイル基、ピバロイル基及びイソプロピルオキシカルボニル基を含むが、これらに制限されない。
【0025】
‘‘ジオキソラン環’’は、以下に図示したように、環の1位及び3位に酸素原子を有する、いかなる置換又は未置換の5員の単環も表わす:
【化5】
【0026】
ハロゲン原子は、F、Cl、I及びBrから選択される。
【0027】
本願で使用される用語‘‘プリン塩基又はピリミジン塩基、もしくはその類似体’’は、構造(原子の種類及びそれらの配列)は通常の塩基と同一であるが、更なる機能性を有し得るか又は通常の塩基の特定の機能性が欠けているという点で、このような塩基と類似するヌクレオチド又はその類似体中に見られるプリン塩基又はピリミジン塩基を意味する。このような類似体は、窒素原子によるCH部分の置換によって誘導されたもの(例えば、5−アザシトシンのような5−アザピリミジン)又は、逆の置換によって誘導されたもの(例えば、7−デアザアデノシン又は7−デアザグアノシンのような7−デアザプリン)又は、両方の置換によって誘導されたもの(例えば、7−デアザ、8−アザプリン)を含む。このような塩基の類似体はまた、環置換基が、組込まれる、除去される又は従来技術で慣用の置換基、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、炭素原子数1ないし6のアルキル基によって変性されるところのそれらの化合物を含む。このようなプリン塩基又はピリミジン塩基、その類似体及び誘導体は、当業者によく知られ得る。
【0028】
ここに記載された化合物はまた、前記化合物の薬学的に許容可能な塩を含む。
【0029】
用語、前記化合物の‘‘薬学的に許容可能な塩’’は、薬学的に許容可能な無機及び有機酸及び塩基から誘導されたそれらの化合物を含むことを意味する。適当な酸の例は、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、琥珀酸、トルエン−p−スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン−2−スルホン酸及びベンゼンスルホン酸を含む。
【0030】
適当な塩基から誘導された塩は、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)塩、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)塩、アンモニウム塩及びNR4+塩(式中、Rは炭素原子数1ないし4のアルキル基を表わす。)を含む。
【0031】
本願での使用において、本発明で使用され得る用語‘‘適当量の酵素’’は、特に制限されない。使用される酵素の量は、出発材料の十分な化学変換を得るために、所望の純度又は所望の収量の反応生成物、所望の反応時間又はそれらの組合せを得るために、選択され得ることが、当業者によって予期され得る。‘‘適当量の酵素’’の有用な例は、式II又はIVで表わされる化合物に対して、酵素約1%ないし200%の質量比であり得る。
【0032】
酵素によるジアステレオマー分割は、様々な溶媒中で行われ得ることが当業者によって予期され得る。所望の方法を行うために有用なこのような溶媒は、反応に悪影響を及ぼすべきではない。溶媒の有用な例は、水、炭素原子数1ないし12のアルカノール(例えば、エタノール、ブタノール、t−アミルアルコール及び3−メチル−3−ペンタノール)、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホンアミド、N−メチルピロリドン、イソオクタン、t−ブチルメチルエーテル及びこれらの混合物を含む。溶媒の混合物は、単相(例えば、水とイソプロパノールの混合物)
又は2相であり得り、所望により、従来技術でよく知られる相間移動触媒が使用され得る。
【0033】
水性溶媒は、所望により、緩衝液であり得る。緩衝液の有用な例は、ホルメート、アセテート、ホスフェート、TRIS、シトレート及びボレートを含む。このような緩衝液又は異なる緩衝液がどのように製造され得るかは、当業者に容易に予期され得る。二者択一的に、pH値の範囲内でプレミックスされた緩衝液が、市販の実験室用供給品から購入され得る。緩衝溶液のpHを測定するために、pHメーター(又は他のpH測定器)の使用もまた可能である。
【0034】
本発明において使用するために適当なpH範囲は、この分野の当業者によって容易に決定され得る。選択されたpHは、該反応条件下で該方法を発生させ、かつ反応に悪影響を及ぼすこと又は酵素を多量に失活させることなく、所望の生成物を提供し得る。
【0035】
本発明の更なる態様において:
該方法は、約4ないし9のpH範囲で行われ;
該方法は、約6ないし8のpH範囲で行われ;
該方法は、約6.8ないし7.2のpH範囲で行われる。
【0036】
本発明で使用され得る酵素の濃度範囲は、特に制限されない。例えば、溶媒又は溶液に対する酵素の濃度は、約1mg/mLないし約200mg/mLであり得る。二者択一的に、溶媒又は溶液に対する酵素の濃度は、
約1mg/mLないし約100mg/mL、
約5mg/mLないし約20mg/mL、
約10mg/mL、
約7.5mg/mL
であり得る。
【0037】
所望の方法を行うために有用な酵素は、標準方法(例えば、分別沈殿)によって単離され得る酵素又は粗酵素の供給源として使用される細胞残骸の除去後に得られる無細胞抽出液及び酵素として使用される結果として生じる粉末であり得ることもまた予期され得る。二者択一的に、固定化酵素、精製酵素、可溶性酵素又は組換え酵素(engineered enzyme)が使用され得る。このような酵素技術の例は、カールヘインズ ドラウツ及びハーバート ウォルドマンによる‘‘Enzyme Catalysis in
Organic Synthesis:A Comprehensive Handbook’’,第2版(ウィリー出版社)で見られ得る。
【0038】
1つの態様において、本発明の方法は、更に、酵素によるジアステレオマー分割に使用された酵素を回収する工程を含む。
【0039】
本発明の使用のために適当な温度は、この分野の当業者によって容易に決定され得る。選択された温度は、該反応条件下で該方法を発生させ、かつ反応に悪影響を及ぼすこと又は酵素を多量に失活させることなく、所望の生成物を提供し得る。
【0040】
本発明の更なる態様において:
該方法は、約5ないし50℃の範囲の温度で行われ;
該方法は、約20ないし40℃の範囲の温度で行われ;
該方法は、約室温で行われ;
該方法は、約30℃の温度で行われる。
【0041】
本方法における化合物II又はIVの濃度範囲は、0.1%ないし100%以上であり得る。あるいは、濃度は、約1%ないし約50%の範囲である。また、濃度は、約5%ないし約15%の範囲である。あるいは、濃度は、約12.5%又は約11.2%である。濃度は、パーセント(%)で表わされ、かつ溶媒又は溶液の単位体積当りの化合物のグラム量で示される(例えば、化合物50g/水性ホスフェート緩衝液400mL×100=12.5%)。酵素によるジアステレオマー分割は、化合物IIの溶液、エマルジョン又は懸濁液で行われ得る。
【0042】
1つの態様において、本発明は、式I
【化6】
(式中、R1及びR2の各々は、上記で定義した通りである。)で表わされる化合物の製造方法であって、該方法は、
a)豚肝臓エステラーゼ又は豚膵臓リパーゼから選択された適当量の酵素の存在下において、式II
【化7】
(式中、R1及びR2の各々は、上記で定義した通りである。)
で表わされる化合物を酵素によるジアステレオマー分割に付す工程、
b)式Iで表わされる前記化合物を回収する工程
を含む方法を提供する。
【0043】
式IIで表わされる化合物が、同様に、式IIa及びIIbで表わされ得ることが当業者に予期され得る。式IIa及びIIbで表わされる化合物の混合物は、IIa対IIbが約1%ないし約99%(例えば、1:1又は1.5:1又は2:1)等の様々な比で存在し得る。全てのこのような可能な比は、本発明の範囲内に含まれる。
【化8】
【0044】
更なる態様において:
R1は、炭素原子数1ないし12のアルキル基を表わし;
R1は、炭素原子数1ないし6のアルキル基を表わし;
R1は、メチル基を表わす。
【0045】
更なる態様において:
R2は、CO−炭素原子数1ないし6のアルキル基、CO−炭素原子数6ないし12のアリール基、CO−炭素原子数1ないし6のアルコキシ基、CO−炭素原子数6ないし12のアリールオキシ基又はCO−炭素原子数6ないし12のアリールアルキル基から選択され;
R2は、CO−炭素原子数6ないし12のアリール基を表わし;
R2は、ベンゾイル基を表わす。
【0046】
1つの態様において、酵素は豚肝臓エステラーゼである。
【0047】
他の態様において、酵素は豚膵臓リパーゼである。
【0048】
1つの態様において、適当量の酵素は、式IIで表わされる化合物に対して、約0.1%ないし約100%の質量比で使用される。
【0049】
1つの態様において、適当量の酵素は、式IIで表わされる化合物に対して、約1%ないし約25%の質量比で使用される。
【0050】
更なる態様において、適当量の酵素は、式IIで表わされる化合物に対して、約5%ないし約10%の質量比で使用される。
【0051】
更なる態様において:
式Iで表わされる化合物は、少なくとも80%のジアステレオマー純度を有し;
式Iで表わされる化合物は、少なくとも90%のジアステレオマー純度を有し;
式Iで表わされる化合物は、少なくとも95%のジアステレオマー純度を有し;
式Iで表わされる化合物は、少なくとも98%のジアステレオマー純度を有する。
【0052】
1つの態様において、本発明は、式I
【化9】
(式中、R1及びR2の各々は、上記で定義した通りである。)で表わされる化合物の製造方法であって、該方法は、
a)豚肝臓エステラーゼ又は豚膵臓リパーゼから選択された適当量の酵素の存在下において、式II
【化10】
(式中、R1及びR2の各々は、上記で定義した通りである。)で表わされる化合物を酵素によるジアステレオマー分割に付す工程、
b)式Iで表わされる前記化合物を回収する工程
を含む方法、
及び、更に、
c)式Iで表わされる化合物のC4位における官能基を置換し、式V
【化11】
(式中、Bは、プリン塩基又はピリミジン塩基、もしくはその類似体を表わす。)
で表わされる化合物を製造する工程、
d)式Vで表わされる前記化合物の基R2を除去する工程、
e)式VI
【化12】
(式中、Bは、プリン塩基又はピリミジン塩基、もしくはその類似体を表わす。)で表わされる化合物又はその薬学的に許容可能な塩を回収する工程
を含む前記方法を提供する。
【0053】
1つの態様において、Bは、
【化13】
[式中、
R3は、H、炭素原子数1ないし6のアルキル基、炭素原子数1ないし6のアシル基及びCO−R9(式中、R9は、H又は炭素原子数1ないし6のアルキル基を表わす。)から選択され
R4及びR5は、互いに独立して、H、炭素原子数1ないし6のアルキル基、ブロミド、クロリド、フルオリド、ヨージド又はCF3から選択され、
R6、R7及びR8は、互いに独立して、H、ブロミド、クロリド、フルオリド、ヨージド、アミノ基、ヒドロキシル基又は炭素原子数3ないし6のシクロアルキルアミノ基から選択される。]から選択される。
【0054】
他の態様において、Bは、
【化14】
から選択される。
【0055】
1つの態様において、本発明は、式I
【化15】
(式中、R1及びR2の各々は、上記で定義した通りである。)で表わされる化合物の製造方法であって、該方法は、
a)豚肝臓エステラーゼ又は豚膵臓リパーゼから選択された適当量の酵素の存在下において、式II
【化16】
(式中、R1及びR2の各々は、上記で定義した通りである。)で表わされる化合物を酵素によるジアステレオマー分割に付す工程、
b)式Iで表わされる前記化合物を回収する工程
を含む方法、
及び、更に、式VII
【化17】
で表わされる化合物を回収する工程を含む前記方法を提供する。
【0056】
1つの態様において、本発明は、式III
【化18】
(式中、R11及びR12は、上記に記載した通りである。)で表わされる化合物の製造方法であって、該方法は、
a)カンジダ アンタルクチカ‘‘A’’リパーゼ(Candida Antarctica ‘‘A’’ lipase)、カンジダ アンタルクチカ‘‘B’’リパーゼ(Candida Antarctica ‘‘B’’ lipase)、カンジダ リポリチカリパーゼ(Candida Lypolitica lipase)又はリゾムコール ミエヘイリパーゼ(Rhizomucor Miehei lipase)から選択された適当量の酵素の存在下において、式IV
【化19】
(式中、R11及びR12は、上記に記載した通りである。)で表わされる化合物を酵素によるジアステレオマー分割に付す工程、
b)式IIIで表わされる前記化合物を回収する工程
を含む方法を提供する。
【0057】
式IVで表わされる化合物が、同様に、式IVa及びIVbで表わされ得ることが当業者に予期され得る。式IVa及びIVbで表わされる化合物の混合物は、IVa対IVbが約1%ないし約99%(例えば、1:1又は1.5:1又は2:1)等の様々な比で存在し得る。全てのこのような可能な比は、本発明の範囲内に含まれる。
【化20】
【0058】
更なる態様において:
R11は、炭素原子数1ないし12のアルキル基を表わし;
R11は、炭素原子数1ないし6のアルキル基を表わし;
R11は、メチル基を表わす。
【0059】
更なる態様において:
R12は、CO−炭素原子数1ないし6のアルキル基、CO−炭素原子数6ないし12のアリール基、CO−炭素原子数1ないし6のアルコキシ基、CO−炭素原子数6ないし12のアリールオキシ基又はCO−炭素原子数6ないし12のアリールアルキル基から選択され;
R12は、CO−炭素原子数6ないし12のアリール基を表わし;
R12は、ベンゾイル基を表わす。
【0060】
1つの態様において、酵素はカンジダ アンタルクチカ‘‘A’’リパーゼであるである。
【0061】
更なる態様において、酵素はカンジダ アンタルクチカ‘‘B’’リパーゼである。
【0062】
また、更なる態様において、酵素はカンジダ リポリチカリパーゼである。
【0063】
また、更なる態様において、酵素はリゾムコール ミエヘイリパーゼである。
【0064】
1つの態様において、適当量の酵素は、式IVで表わされる化合物に対して、約0.1%ないし約100%の質量比で使用される。
【0065】
1つの態様において、適当量の酵素は、式IVで表わされる化合物に対して、約1%ないし約25%の質量比で使用される。
【0066】
1つの態様において、適当量の酵素は、式IVで表わされる化合物に対して、約5%ないし約10%の質量比で使用される。
【0067】
更なる態様において:
式IIIで表わされる化合物は、少なくとも80%のジアステレオマー純度を有し;
式IIIで表わされる化合物は、少なくとも90%のジアステレオマー純度を有し;
式IIIで表わされる化合物は、少なくとも95%のジアステレオマー純度を有し;
式IIIで表わされる化合物は、少なくとも98%のジアステレオマー純度を有する。
【0068】
1つの態様において、本発明は、式III
【化21】
(式中、R11及びR12は、上記に記載した通りである。)で表わされる化合物の製造方法であって、該方法は、
a)カンジダ アンタルクチカ‘‘A’’リパーゼ、カンジダ アンタルクチカ‘‘B’’リパーゼ、カンジダ リポリチカリパーゼ又はリゾムコール ミエヘイリパーゼから選択された適当量の酵素の存在下において、式IV
【化22】
(式中、R11及びR12は、上記に記載した通りである。)で表わされる化合物を酵素によるジアステレオマー分割に付す工程、
b)式IIIで表わされる前記化合物を回収する工程
を含む方法、
及び、更に、
c)式IIIで表わされる化合物のC4位における官能基を置換し、式VIII
【化23】
(式中、Bは、プリン塩基又はピリミジン塩基、もしくはその類似体を表わす。)
で表わされる化合物を製造する工程、
d)式VIIIで表わされる前記化合物の基R12を除去する工程、
e)式IX
【化24】
(式中、Bは、プリン塩基又はピリミジン塩基、もしくはその類似体を表わす。)で表わされる化合物又はその薬学的に許容可能な塩を回収する工程
を含む前記方法を提供する。
【0069】
1つの態様において、Bは、
【化25】
[式中、
R3は、H、炭素原子数1ないし6のアルキル基、炭素原子数1ないし6のアシル基及びCO−R9(式中、R9は、H又は炭素原子数1ないし6のアルキル基を表わす。)から選択され
R4及びR5は、互いに独立して、H、炭素原子数1ないし6のアルキル基、ブロミド、クロリド、フルオリド、ヨージド又はCF3から選択され、
R6、R7及びR8は、互いに独立して、H、ブロミド、クロリド、フルオリド、ヨージド、アミノ基、ヒドロキシル基又は炭素原子数3ないし6のシクロアルキルアミノ基から
選択される。]から選択される。
【0070】
他の態様において、Bは、
【化26】
から選択される。
【0071】
1つの態様において、本発明は、式III
【化27】
(式中、R11及びR12は、上記に記載した通りである。)で表わされる化合物の製造方法であって、該方法は、
a)カンジダ アンタルクチカ‘‘A’’リパーゼ、カンジダ アンタルクチカ‘‘B’’リパーゼ、カンジダ リポリチカリパーゼ又はリゾムコール ミエヘイリパーゼから選択された適当量の酵素の存在下において、式IV
【化28】
(式中、R11及びR12は、上記に記載した通りである。)で表わされる化合物を酵素によるジアステレオマー分割に付す工程、
b)式IIIで表わされる前記化合物を回収する工程
を含む方法、
及び、更に、式X
【化29】
で表わされる化合物を回収する工程を含む前記方法を提供する。
【0072】
不均一な部分なく系をより完全に混合するために、オーバーヘッド攪拌機(Overhead Stirrer)又は磁気攪拌子を備えた丸底フラスコ又は標準実験室用反応器が使用され得ることもまた、当業者によって予期され得る。初めに、化合物IIが、反応器の底に分離相を形成し得り、反応の進行につれて、より均一に分散する。
【0073】
攪拌は、所望により使用され得ることが予期され得る。酵素の添加工程中、(試薬のために不適当であり得る高い局所的なpHを防止するための)塩基の添加中、又は方法中に連続して使用され得る適当な攪拌速度は、該反応条件下で該方法を発生させ、かつ反応に悪影響を及ぼすこと又は酵素を多量に失活させることなく、所望の生成物を提供させるために選択され得る。
【0074】
当業者は、酵素によるジアステレオマー分割(スキーム1及び2)を行うために使用されるジオキソラン化合物は、既知の方法を使用して製造され得ることを予期し得る。このような方法の例は、
1.1997年6月19日、マンサワー,タレク他による国際公開第97/21706号パンフレット、
2.2000年8月17日、シムポイア,アレックス他による国際公開第00/47759号パンフレット、及び
3.2000年7月6日、ングエン−バ,ングヘ他による国際公開第00/39143号パンフレット
に記載されている。
【0075】
1つの態様において、本発明の方法は、一般的なスキーム1又はスキーム2
【化30】
に図示されたように行われ得る。
【0076】
式I又は式IIIで表わされるジオキソラン化合物からのジオキソランヌクレオシド類似体の製造方法については、当業者に既知である様々な方法がある。例えば、ジオキソラン環のC−4位において、プリン塩基、ピリミジン塩基又は類似体を結合する方法が、国際公開第97/21706号パンフレット及び国際公開第00/39143号パンフレットに記載されている。スキーム3及びスキーム4
【化31】
は、ジオキソラン環にプリン塩基、ピリミジン塩基又は類似体を結合する方法を図示している。
【0077】
メチルエステルの加水分解及び酸化的脱カルボキシ化の後、結果として生じたジオキソランは、プリン塩基、ピリミジン塩基、又は類似体に結合され、更に、脱保護され、所望のジオキソランヌクレオシド類似体が得られ得る。
【0078】
以下の実施例は、本発明の様々な態様を説明するために提供され、範囲を制限するように解釈されるべきではない。
【実施例】
【0079】
実施例
実施例1:2(S)−ベンゾイルオキシメチル−[1,3]ジオキソラン−4(S)−カルボン酸メチルエステル
2−ベンゾイルオキシメチル−[1,3]ジオキソラン−4(S)−カルボン酸メチルエステル(50g、1:1のシス対トランス比)及び磁気攪拌子を1L三角フラスコに入れた。その後、水性ホスフェート緩衝液(400mL、0.3M、pH=7.1)をフラスコに入れた。反応フラスコを、外部水浴を使用して30℃まで加熱した。
反応混合物のpHを1N NaOHを用いて7に調整し、その後、豚膵臓リパーゼ粉末4gを少しずつ添加した。結果として生じた懸濁液を穏やかに攪拌し、ピペットを通して2N NaOHを定期的に添加するすることによって、pHを6.8ないし7.2に維持した。2N NaOH約35mLを、反応過程を通して添加した。該反応を、キラルカラム(キラセル(登録商標:CHIRACEL)OD;0.46×25cm)を使用したHPLC分析によって観察し、未反応エステルの光学純度と反応転化率を決定した(試料は、1、2、4、6及び8時間において回収した)。5時間後、反応進行が停止したため、豚膵臓リパーゼ1.5gを、更に添加した。シス−エステルとトランス−エステルの比が>98:2となったら(2.5時間追加)、酢酸エチル200mLを添加することによって、反応を停止させた。
珪藻土(15g)を添加し、2相混合物を5分間攪拌した。その後、混合物を穏やかな吸引を用いて濾過し、その濾過ケークを酢酸エチル25mLで2回洗浄した。2相混合物を分液漏斗に移し、該2相ができるだけ多く分離するまで処理した。下相の透明な水相(約400mL)を排水し、その後、酢酸エチル(25mLで1回抽出した。組合せた有機層及びエマルジョン相を、飽和重炭酸ナトリウム100mLで2回洗浄し、飽和食塩水75mLで1回洗浄することによって乾燥させた(必要に応じて、生成物は、少量の無水硫酸ナトリウムで処理することによって、更に乾燥させられ得る。)。その後、溶媒を、減圧下で蒸発させ、2(S)−ベンゾイルオキシメチル−[1,3]ジオキソラン−4(S)−カルボン酸メチルエステルを、淡黄色液体として得た(25.8g)。HPLCによる分析は、2(R)−ベンゾイルオキシメチル−[1,3]ジオキソラン−4(S)−カルボン酸メチルエステルが2%未満であることを示した。
【0080】
実施例2:2(R)−ベンゾイルオキシメチル−[1,3]ジオキソラン−4(S)−カルボン酸メチルエステル
2−ベンゾイルオキシメチル−[1,3]ジオキソラン−4(S)−カルボン酸メチルエステル(2(S)−ベンゾイルオキシメチル−[1,3]ジオキソラン−4(S)−カルボン酸メチルエステル及び2(R)−ベンゾイルオキシメチル−[1,3]ジオキソラン−4(S)−カルボン酸メチルエステルの1:1.27混合物 1.12g)を、攪拌子及び0.04M、pH7.2のホスフェート緩衝液10mLを含む25mLビーカーに添加した。リゾムコール ミエヘイリパーゼ75mgをこれに添加し、2N NaOHを用いて、pHを7.2に調整した。懸濁液を、磁気攪拌機を使用して攪拌し、反応を室温で進行させた。2N NaOHを定期的に添加することによって、pHを再調整した。アリコート50μを分離して、HPLC(キラセル(登録商標:CHIRACEL)OD;0.46×25cm カラム)によって分析することによって、転化率を観察した。1時間後、加水分解度は25%であった。9時間後、ジクロロメタン(10mL)で抽出することによって、反応を停止させた。有機相を回収し、水相をジクロロメタン(10mL)で再抽出した。持続性のエマルジョンが形成されたため、珪藻土(3g)を添加し、混合物を、焼結ガラス漏斗を通して濾過し、濾過ケークをジクロロメタン(10mL)で洗浄した。濾液を分離し、組合せた有機相を飽和重炭酸ナトリウム(2×20mL)及び1回分の5%食塩水(15mL)で抽出した。溶液を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。約3.5%の2(S)−ベンゾイルオキシメチル−[1,3]ジオキソラン−4(S)−カルボン酸メチルエステルを含む2(R)−ベンゾイルオキシメチル−[1,3]ジオキソラン−4(S)−カルボン酸メチルエステル(0.45g)が黄色オイルとして得られた。
【0081】
本発明の方法を行うために有用な酵素は、マサチューセッツ州、ケンブリッジのアルツス バイオロジックス インコーポレーテッドから得ることができる。
【技術分野】
【0001】
発明分野
本発明は、ジオキソランヌクレオシド類似体及びそれらの中間体の立体選択的製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ヌクレオシド類似体は、重要な種類の治療剤である。より特には、置換1,3−ジオキソランが天然ヌクレオシド中に見られる糖部分を置換しているジオキソランヌクレオシド類似体は、生物活性を有することが示されている。
【0003】
ジオキソラン類似体は、最初に、ベレアウ他によって、1989年10月19日に公開された欧州特許第0337713号明細書、1991年8月20日に発行された米国特許第5,041,449号明細書及び1993年12月14日に発行された米国特許第5,270,315号明細書中で報告された。
【0004】
9−(β−D−2−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−2,6−ジアミノプリン(β−D−DAPD)及び9−(β−D−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−9−グアニン(β−D−DXG)は、様々な細胞系中のHIV−1に対して有用な効力を有することが、グ他によって報告されている(Antimicrob.Agents Chemother.(1999年),43(10),2376頁−2382頁及びNucleosides Nucleotides(1999年),18(4&5),891頁−892頁)。
【0005】
更に、1−(β−L−2−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−シトシン(β−L−OddC、トロキサシタビン(troxacitabine))が、様々な形態(例えば、固形腫瘍、成人白血病及びリンパ腫)の癌の治療において効力を示すこともまた、報告されている(ウェイトマン他,Clinical Cancer Research(2000年),6(4),1574頁−1578頁及びガイルス他,Journal of Clinical Oncology(2001年),19(3),762頁−771頁、及びまた、ゴウルデアウ他,Cancer Chemother.Pharmacol.(2001年),47(3),236頁−240頁)。
【0006】
2−ベンゾイルオキシメチル−[1,3]ジオキソラン−4−カルボキシレートエステル等のジオキソラン中間体は、1997年6月19日、マンサワー,タレク他による国際公開第97/21706号パンフレット、2000年8月17日、シムポイア,アレックス他による国際公開第00/47759号パンフレット及び2000年7月6日、ングエン−バ,ングヘ他による国際公開第00/39143号パンフレットに記載されたようなジオキソランヌクレオシド類似体の合成において使用される重要な中間体である。これまで、文献は、生物分割法の開発に注意を向けた努力を報告している。酵素的分割法は、経済的で、再利用可能であり、かつ環境に優しいという触媒量の酵素を使用することによる利点を有する。それ故、2−ベンゾイルオキシメチル−[1,3]ジオキソラン−4−カルボキシレートエステルのジアステレオマー分割を行うための適当な酵素の同定が強く望まれている。
【特許文献1】欧州特許第0337713号明細書
【特許文献2】米国特許第5,041,449号明細書
【特許文献3】米国特許第5,270,315号明細書
【非特許文献1】Antimicrob.Agents Chemother.(1999年),43(10),2376頁−2382頁
【非特許文献2】Nucleosides Nucleotides(1999年),18(4&5),891頁−892頁
【非特許文献3】ウェイトマン他,Clinical Cancer Research(2000年),6(4),1574頁−1578頁
【非特許文献4】ガイルス他,Journal of Clinical Oncology(2001年),19(3),762頁−771頁
【非特許文献5】ゴウルデアウ他,Cancer Chemother.Pharmacol.(2001年),47(3),236頁−240頁
【特許文献4】国際公開第97/21706号パンフレット
【特許文献5】国際公開第00/47759号パンフレット
【特許文献6】国際公開第00/39143号パンフレット
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
1つの観点において、本発明は、式I
【化1】
(式中、R1は、炭素原子数1ないし12のアルキル基、炭素原子数2ないし12のアルケニル基、炭素原子数2ないし12のアルキニル基、炭素原子数6ないし12のアリール基、炭素原子数3ないし10のヘテロ環式基、炭素原子数6ないし12のアラルキル基又は炭素原子数3ないし10のヘテロアラルキル基から選択され、R2は、ヒドロキシル保護基を表わす。)で表わされる化合物の製造方法であって、該方法は、
a)豚肝臓エステラーゼ又は豚膵臓リパーゼから選択された適当量の酵素の存在下において、式II
【化2】
(式中、R1は、炭素原子数1ないし12のアルキル基、炭素原子数2ないし12のアルケニル基、炭素原子数2ないし12のアルキニル基、炭素原子数6ないし12のアリール基、炭素原子数3ないし10のヘテロ環式基、炭素原子数6ないし12のアラルキル基又は炭素原子数3ないし10のヘテロアラルキル基から選択され、R2は、ヒドロキシル保護基を表わす。)
で表わされる化合物を酵素によるジアステレオマー分割に付す工程、
b)式Iで表わされる前記化合物を回収する工程
を含む方法を提供する。
【0008】
他の観点において、式III
【化3】
(式中、R11は、炭素原子数1ないし12のアルキル基、炭素原子数2ないし12のアルケニル基、炭素原子数2ないし12のアルキニル基、炭素原子数6ないし12のアリール基、炭素原子数3ないし10のヘテロ環式基、炭素原子数6ないし12のアラルキル基又は炭素原子数3ないし10のヘテロアラルキル基から選択され、R12は、ヒドロキシル保護基を表わす。)で表わされる化合物の製造方法であって、該方法は、
a)カンジダ アンタルクチカ‘‘A’’リパーゼ(Candida Antarctica ‘‘A’’ lipase)、カンジダ アンタルクチカ‘‘B’’リパーゼ(Candida Antarctica ‘‘B’’ lipase)、カンジダ リポリチカリパーゼ(Candida Lypolitica lipase)又はリゾムコール ミエヘイリパーゼ(Rhizomucor Miehei lipase)から選択された適当量の酵素の存在下において、式IV
【化4】
(式中、R11は、炭素原子数1ないし12のアルキル基、炭素原子数2ないし12のアルケニル基、炭素原子数2ないし12のアルキニル基、炭素原子数6ないし12のアリール基、炭素原子数3ないし10のヘテロ環式基、炭素原子数6ないし12のアラルキル基又は炭素原子数3ないし10のヘテロアラルキル基から選択され、R12は、ヒドロキシル保護基を表わす。)で表わされる化合物を酵素によるジアステレオマー分割に付す工程、
b)式IIIで表わされる前記化合物を回収する工程
を含む方法を提供する。
【0009】
本発明の詳細な説明
本発明は、一般的に、ジオキソランヌクレオシド類似体及びそれらの中間体の製造のための、酵素によるジアステレオマー分割法に関する。
【0010】
1つの態様において、本発明の方法は、以下の態様が、独立して又は組合されて存在する方法を含む。
【0011】
他に特に定義がない限りは、ここで使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が属するところの当業者に一般的に理解されるものと同一の意味を有する。全ての刊行物、特許出願、特許及びここで言及された他の参照文献は、完全に参照文献として組込まれる。矛盾する場合、本願明細書は、定義を含め、調整され得る。更に、材料、方法及び実施例は、例証のみであり、制限することを意図しない。
【0012】
本願で使用される用語‘‘アルキル基’’は、1つ以上のハロゲン原子、ニトロ基、ニトロソ基、SO3R12、PO3RcRd、CONR13R14、炭素原子数1ないし6のアルキル基、炭素原子数2ないし6のアルケニル基、炭素原子数2ないし6のアルキニル基、炭素原子数6ないし12のアラルキル基、炭素原子数6ないし12のアリール基、炭素原子
数1ないし6のアルキルオキシ基、炭素原子数2ないし6のアルケニルオキシ基、炭素原子数2ないし6のアルキニルオキシ基、炭素原子数6ないし12のアリールオキシ基、C(O)炭素原子数1ないし6のアルキル基、C(O)炭素原子数2ないし6のアルケニル基、C(O)炭素原子数2ないし6のアルキニル基、C(O)炭素原子数6ないし12のアリール基、C(O)炭素原子数6ないし12のアラルキル基、炭素原子数3ないし10のヘテロ環式基、ヒドロキシル基、NR13R14、C(O)OR12、シアノ基、アジド基、アミジノ基又はグアニド基(ここで、R12、Rc、Rd、R13及びR14は、互いに独立して、H、炭素原子数1ないし12のアルキル基、炭素原子数2ないし12のアルケニル基、炭素原子数2ないし12のアルキニル基、炭素原子数6ないし14のアリール基、炭素原子数3ないし12のヘテロ環式基、炭素原子数3ないし18のヘテロアラルキル基、炭素原子数6ないし18のアラルキル基から選択されるか;又は、Rc及びRdは、酸素原子と一緒になって、5ないし10員のヘテロ環式基を形成するか;又は、R13及びR14は、窒素原子と一緒になって、3ないし10員のヘテロ環式基を形成する。)によって所望により置換され得る直鎖、枝分かれ鎖又は環状炭化水素部分を表わす。アルキル基の有用な例は、イソプロピル基、エチル基、フルオロヘキシル基又はシクロプロピル基を含む。用語‘‘アルキル基’’はまた、1つ以上の水素原子が酸素原子(例えば、ベンゾイル基)又はハロゲン原子、より好ましくは、弗素原子(例えば、CF3−又はCF3CH2−)によって置換され得るアルキル基を含むことを意味する。
【0013】
用語‘‘アルケニル基’’及び‘‘アルキニル基’’は、少なくとも1つの不飽和基(例えば、アリル基)を含むアルキル基を表わす。
【0014】
用語‘‘アルコキシ基’’は、酸素原子を通して隣接する原子に共有結合したアルキル基を表わす。
【0015】
用語‘‘アリール基’’は、1つ以上のハロゲン原子、ニトロ基、ニトロソ基、SO3R12、PO3RcRd、CONR13R14、炭素原子数1ないし6のアルキル基、炭素原子数2ないし6のアルケニル基、炭素原子数2ないし6のアルキニル基、炭素原子数6ないし12のアラルキル基、炭素原子数6ないし12のアリール基、炭素原子数1ないし6のアルキルオキシ基、炭素原子数2ないし6のアルケニルオキシ基、炭素原子数2ないし6のアルキニルオキシ基、炭素原子数6ないし12のアリールオキシ基、C(O)炭素原子数1ないし6のアルキル基、C(O)炭素原子数2ないし6のアルケニル基、C(O)炭素原子数2ないし6のアルキニル基、C(O)炭素原子数6ないし12のアリール基、C(O)炭素原子数6ないし12のアラルキル基、炭素原子数3ないし10のヘテロ環式基、ヒドロキシル基、NR13R14、C(O)OR12、シアノ基、アジド基、アミジノ基又はグアニド基(ここで、R12、Rc、Rd、R13及びR14は、互いに独立して、H、炭素原子数1ないし12のアルキル基、炭素原子数2ないし12のアルケニル基、炭素原子数2ないし12のアルキニル基、炭素原子数6ないし14のアリール基、炭素原子数3ないし12のヘテロ環式基、炭素原子数3ないし18のヘテロアラルキル基、炭素原子数6ないし18のアラルキル基から選択されるか;又は、Rc及びRdは、酸素原子と一緒になって、5ないし10員のヘテロ環式基を形成するか;又は、R13及びR14は、窒素原子と一緒になって、3ないし10員のヘテロ環式基を形成する。)によって所望により置換され得るベンゼノイド型環を少なくとも1つ含む炭素環式部分を表わす。アリール基の例は、フェニル基及びナフチル基を含む。
【0016】
用語‘‘アリールアルキル基’’は、炭素原子数1ないし6のアルキル基によって隣接する原子に結合したアリール基(例えば、ベンジル基)を表わす。
【0017】
用語‘‘アリールオキシ基’’は、酸素原子を通して隣接する原子に共有結合したアリール基を表わす。
【0018】
用語‘‘アシル基’’は、−OH基の置換によって得られたカルボン酸から誘導された基として定義される。酸等に関連して、アシル基は、所望により1つ以上のハロゲン原子、ニトロ基、ニトロソ基、SO3R12、PO3RcRd、CONR13R14、炭素原子数1ないし6のアルキル基、炭素原子数2ないし6のアルケニル基、炭素原子数2ないし6のアルキニル基、炭素原子数6ないし12のアラルキル基、炭素原子数6ないし12のアリール基、炭素原子数1ないし6のアルキルオキシ基、炭素原子数2ないし6のアルケニルオキシ基、炭素原子数2ないし6のアルキニルオキシ基、炭素原子数6ないし12のアリールオキシ基、C(O)炭素原子数1ないし6のアルキル基、C(O)炭素原子数2ないし6のアルケニル基、C(O)炭素原子数2ないし6のアルキニル基、C(O)炭素原子数6ないし12のアリール基、C(O)炭素原子数6ないし12のアラルキル基、炭素原子数3ないし10のヘテロ環式基、ヒドロキシル基、NR13R14、C(O)OR12、シアノ基、アジド基、アミジノ基又はグアニド基(ここで、R12、Rc、Rd、R13及びR14は、互いに独立して、H、炭素原子数1ないし12のアルキル基、炭素原子数2ないし12のアルケニル基、炭素原子数2ないし12のアルキニル基、炭素原子数6ないし14のアリール基、炭素原子数3ないし12のヘテロ環式基、炭素原子数3ないし18のヘテロアラルキル基、炭素原子数6ないし18のアラルキル基から選択されるか;又は、Rc及びRdは、酸素原子と一緒になって、5ないし10員のヘテロ環式基を形成するか;又は、R13及びR14は、窒素原子と一緒になって、3ないし10員のヘテロ環式基を形成する。)で置換された直鎖、枝分かれ鎖又は脂環式又は芳香族であり得る。有用なアシル基の例は、アセチル基、プロピオニル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、トリフルオロアセチル基、シクロヘキサノイル基及びベンゾイル基を含む。
【0019】
‘‘アシルオキシ基’’は、酸素原子によって隣接する原子に結合したアシル基(例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基)として定義される。
【0020】
本願において使用される用語‘‘シクロアルキル基’’は、環を形成する上記で定義したような‘‘アルキル基’’(例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基)を表わす。
【0021】
用語‘‘シクロアルキルアミノ基’’は、窒素原子を通して隣接する原子に共有結合したシクロアルキル基を表わす。
【0022】
用語‘‘アルカノール基’’は、水素原子の1つがヒドロキシル基によって置換された‘‘アルキル基’’部分(例えば、イソプロパノール、エタノール又はシクロプロパノール)を表わす。用語‘‘アルカノール基’’はまた、1つ以上の水素原子が、ハロゲン原子、より好ましくは弗素原子(例えば、CF3CH2OH)によって置換されたアルカノール基を含むことを意味する。
【0023】
用語‘‘独立して’’は、置換基が、各項目において同じ又は異なる定義であり得ることを意味する。
【0024】
用語‘‘ヒドロキシル保護基’’は、有機化学の分野でよく知られている。このような保護基は、T.グリーン,Protective Group In Organic Synthesis,(ジョン ウィリー&サン,1981年)中で見られ得る。ヒドロキシル保護基の例は、ベンジル基、アセチル基、ベンゾイル基、ピバロイル基及びイソプロピルオキシカルボニル基を含むが、これらに制限されない。
【0025】
‘‘ジオキソラン環’’は、以下に図示したように、環の1位及び3位に酸素原子を有する、いかなる置換又は未置換の5員の単環も表わす:
【化5】
【0026】
ハロゲン原子は、F、Cl、I及びBrから選択される。
【0027】
本願で使用される用語‘‘プリン塩基又はピリミジン塩基、もしくはその類似体’’は、構造(原子の種類及びそれらの配列)は通常の塩基と同一であるが、更なる機能性を有し得るか又は通常の塩基の特定の機能性が欠けているという点で、このような塩基と類似するヌクレオチド又はその類似体中に見られるプリン塩基又はピリミジン塩基を意味する。このような類似体は、窒素原子によるCH部分の置換によって誘導されたもの(例えば、5−アザシトシンのような5−アザピリミジン)又は、逆の置換によって誘導されたもの(例えば、7−デアザアデノシン又は7−デアザグアノシンのような7−デアザプリン)又は、両方の置換によって誘導されたもの(例えば、7−デアザ、8−アザプリン)を含む。このような塩基の類似体はまた、環置換基が、組込まれる、除去される又は従来技術で慣用の置換基、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、炭素原子数1ないし6のアルキル基によって変性されるところのそれらの化合物を含む。このようなプリン塩基又はピリミジン塩基、その類似体及び誘導体は、当業者によく知られ得る。
【0028】
ここに記載された化合物はまた、前記化合物の薬学的に許容可能な塩を含む。
【0029】
用語、前記化合物の‘‘薬学的に許容可能な塩’’は、薬学的に許容可能な無機及び有機酸及び塩基から誘導されたそれらの化合物を含むことを意味する。適当な酸の例は、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、琥珀酸、トルエン−p−スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン−2−スルホン酸及びベンゼンスルホン酸を含む。
【0030】
適当な塩基から誘導された塩は、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)塩、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)塩、アンモニウム塩及びNR4+塩(式中、Rは炭素原子数1ないし4のアルキル基を表わす。)を含む。
【0031】
本願での使用において、本発明で使用され得る用語‘‘適当量の酵素’’は、特に制限されない。使用される酵素の量は、出発材料の十分な化学変換を得るために、所望の純度又は所望の収量の反応生成物、所望の反応時間又はそれらの組合せを得るために、選択され得ることが、当業者によって予期され得る。‘‘適当量の酵素’’の有用な例は、式II又はIVで表わされる化合物に対して、酵素約1%ないし200%の質量比であり得る。
【0032】
酵素によるジアステレオマー分割は、様々な溶媒中で行われ得ることが当業者によって予期され得る。所望の方法を行うために有用なこのような溶媒は、反応に悪影響を及ぼすべきではない。溶媒の有用な例は、水、炭素原子数1ないし12のアルカノール(例えば、エタノール、ブタノール、t−アミルアルコール及び3−メチル−3−ペンタノール)、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホンアミド、N−メチルピロリドン、イソオクタン、t−ブチルメチルエーテル及びこれらの混合物を含む。溶媒の混合物は、単相(例えば、水とイソプロパノールの混合物)
又は2相であり得り、所望により、従来技術でよく知られる相間移動触媒が使用され得る。
【0033】
水性溶媒は、所望により、緩衝液であり得る。緩衝液の有用な例は、ホルメート、アセテート、ホスフェート、TRIS、シトレート及びボレートを含む。このような緩衝液又は異なる緩衝液がどのように製造され得るかは、当業者に容易に予期され得る。二者択一的に、pH値の範囲内でプレミックスされた緩衝液が、市販の実験室用供給品から購入され得る。緩衝溶液のpHを測定するために、pHメーター(又は他のpH測定器)の使用もまた可能である。
【0034】
本発明において使用するために適当なpH範囲は、この分野の当業者によって容易に決定され得る。選択されたpHは、該反応条件下で該方法を発生させ、かつ反応に悪影響を及ぼすこと又は酵素を多量に失活させることなく、所望の生成物を提供し得る。
【0035】
本発明の更なる態様において:
該方法は、約4ないし9のpH範囲で行われ;
該方法は、約6ないし8のpH範囲で行われ;
該方法は、約6.8ないし7.2のpH範囲で行われる。
【0036】
本発明で使用され得る酵素の濃度範囲は、特に制限されない。例えば、溶媒又は溶液に対する酵素の濃度は、約1mg/mLないし約200mg/mLであり得る。二者択一的に、溶媒又は溶液に対する酵素の濃度は、
約1mg/mLないし約100mg/mL、
約5mg/mLないし約20mg/mL、
約10mg/mL、
約7.5mg/mL
であり得る。
【0037】
所望の方法を行うために有用な酵素は、標準方法(例えば、分別沈殿)によって単離され得る酵素又は粗酵素の供給源として使用される細胞残骸の除去後に得られる無細胞抽出液及び酵素として使用される結果として生じる粉末であり得ることもまた予期され得る。二者択一的に、固定化酵素、精製酵素、可溶性酵素又は組換え酵素(engineered enzyme)が使用され得る。このような酵素技術の例は、カールヘインズ ドラウツ及びハーバート ウォルドマンによる‘‘Enzyme Catalysis in
Organic Synthesis:A Comprehensive Handbook’’,第2版(ウィリー出版社)で見られ得る。
【0038】
1つの態様において、本発明の方法は、更に、酵素によるジアステレオマー分割に使用された酵素を回収する工程を含む。
【0039】
本発明の使用のために適当な温度は、この分野の当業者によって容易に決定され得る。選択された温度は、該反応条件下で該方法を発生させ、かつ反応に悪影響を及ぼすこと又は酵素を多量に失活させることなく、所望の生成物を提供し得る。
【0040】
本発明の更なる態様において:
該方法は、約5ないし50℃の範囲の温度で行われ;
該方法は、約20ないし40℃の範囲の温度で行われ;
該方法は、約室温で行われ;
該方法は、約30℃の温度で行われる。
【0041】
本方法における化合物II又はIVの濃度範囲は、0.1%ないし100%以上であり得る。あるいは、濃度は、約1%ないし約50%の範囲である。また、濃度は、約5%ないし約15%の範囲である。あるいは、濃度は、約12.5%又は約11.2%である。濃度は、パーセント(%)で表わされ、かつ溶媒又は溶液の単位体積当りの化合物のグラム量で示される(例えば、化合物50g/水性ホスフェート緩衝液400mL×100=12.5%)。酵素によるジアステレオマー分割は、化合物IIの溶液、エマルジョン又は懸濁液で行われ得る。
【0042】
1つの態様において、本発明は、式I
【化6】
(式中、R1及びR2の各々は、上記で定義した通りである。)で表わされる化合物の製造方法であって、該方法は、
a)豚肝臓エステラーゼ又は豚膵臓リパーゼから選択された適当量の酵素の存在下において、式II
【化7】
(式中、R1及びR2の各々は、上記で定義した通りである。)
で表わされる化合物を酵素によるジアステレオマー分割に付す工程、
b)式Iで表わされる前記化合物を回収する工程
を含む方法を提供する。
【0043】
式IIで表わされる化合物が、同様に、式IIa及びIIbで表わされ得ることが当業者に予期され得る。式IIa及びIIbで表わされる化合物の混合物は、IIa対IIbが約1%ないし約99%(例えば、1:1又は1.5:1又は2:1)等の様々な比で存在し得る。全てのこのような可能な比は、本発明の範囲内に含まれる。
【化8】
【0044】
更なる態様において:
R1は、炭素原子数1ないし12のアルキル基を表わし;
R1は、炭素原子数1ないし6のアルキル基を表わし;
R1は、メチル基を表わす。
【0045】
更なる態様において:
R2は、CO−炭素原子数1ないし6のアルキル基、CO−炭素原子数6ないし12のアリール基、CO−炭素原子数1ないし6のアルコキシ基、CO−炭素原子数6ないし12のアリールオキシ基又はCO−炭素原子数6ないし12のアリールアルキル基から選択され;
R2は、CO−炭素原子数6ないし12のアリール基を表わし;
R2は、ベンゾイル基を表わす。
【0046】
1つの態様において、酵素は豚肝臓エステラーゼである。
【0047】
他の態様において、酵素は豚膵臓リパーゼである。
【0048】
1つの態様において、適当量の酵素は、式IIで表わされる化合物に対して、約0.1%ないし約100%の質量比で使用される。
【0049】
1つの態様において、適当量の酵素は、式IIで表わされる化合物に対して、約1%ないし約25%の質量比で使用される。
【0050】
更なる態様において、適当量の酵素は、式IIで表わされる化合物に対して、約5%ないし約10%の質量比で使用される。
【0051】
更なる態様において:
式Iで表わされる化合物は、少なくとも80%のジアステレオマー純度を有し;
式Iで表わされる化合物は、少なくとも90%のジアステレオマー純度を有し;
式Iで表わされる化合物は、少なくとも95%のジアステレオマー純度を有し;
式Iで表わされる化合物は、少なくとも98%のジアステレオマー純度を有する。
【0052】
1つの態様において、本発明は、式I
【化9】
(式中、R1及びR2の各々は、上記で定義した通りである。)で表わされる化合物の製造方法であって、該方法は、
a)豚肝臓エステラーゼ又は豚膵臓リパーゼから選択された適当量の酵素の存在下において、式II
【化10】
(式中、R1及びR2の各々は、上記で定義した通りである。)で表わされる化合物を酵素によるジアステレオマー分割に付す工程、
b)式Iで表わされる前記化合物を回収する工程
を含む方法、
及び、更に、
c)式Iで表わされる化合物のC4位における官能基を置換し、式V
【化11】
(式中、Bは、プリン塩基又はピリミジン塩基、もしくはその類似体を表わす。)
で表わされる化合物を製造する工程、
d)式Vで表わされる前記化合物の基R2を除去する工程、
e)式VI
【化12】
(式中、Bは、プリン塩基又はピリミジン塩基、もしくはその類似体を表わす。)で表わされる化合物又はその薬学的に許容可能な塩を回収する工程
を含む前記方法を提供する。
【0053】
1つの態様において、Bは、
【化13】
[式中、
R3は、H、炭素原子数1ないし6のアルキル基、炭素原子数1ないし6のアシル基及びCO−R9(式中、R9は、H又は炭素原子数1ないし6のアルキル基を表わす。)から選択され
R4及びR5は、互いに独立して、H、炭素原子数1ないし6のアルキル基、ブロミド、クロリド、フルオリド、ヨージド又はCF3から選択され、
R6、R7及びR8は、互いに独立して、H、ブロミド、クロリド、フルオリド、ヨージド、アミノ基、ヒドロキシル基又は炭素原子数3ないし6のシクロアルキルアミノ基から選択される。]から選択される。
【0054】
他の態様において、Bは、
【化14】
から選択される。
【0055】
1つの態様において、本発明は、式I
【化15】
(式中、R1及びR2の各々は、上記で定義した通りである。)で表わされる化合物の製造方法であって、該方法は、
a)豚肝臓エステラーゼ又は豚膵臓リパーゼから選択された適当量の酵素の存在下において、式II
【化16】
(式中、R1及びR2の各々は、上記で定義した通りである。)で表わされる化合物を酵素によるジアステレオマー分割に付す工程、
b)式Iで表わされる前記化合物を回収する工程
を含む方法、
及び、更に、式VII
【化17】
で表わされる化合物を回収する工程を含む前記方法を提供する。
【0056】
1つの態様において、本発明は、式III
【化18】
(式中、R11及びR12は、上記に記載した通りである。)で表わされる化合物の製造方法であって、該方法は、
a)カンジダ アンタルクチカ‘‘A’’リパーゼ(Candida Antarctica ‘‘A’’ lipase)、カンジダ アンタルクチカ‘‘B’’リパーゼ(Candida Antarctica ‘‘B’’ lipase)、カンジダ リポリチカリパーゼ(Candida Lypolitica lipase)又はリゾムコール ミエヘイリパーゼ(Rhizomucor Miehei lipase)から選択された適当量の酵素の存在下において、式IV
【化19】
(式中、R11及びR12は、上記に記載した通りである。)で表わされる化合物を酵素によるジアステレオマー分割に付す工程、
b)式IIIで表わされる前記化合物を回収する工程
を含む方法を提供する。
【0057】
式IVで表わされる化合物が、同様に、式IVa及びIVbで表わされ得ることが当業者に予期され得る。式IVa及びIVbで表わされる化合物の混合物は、IVa対IVbが約1%ないし約99%(例えば、1:1又は1.5:1又は2:1)等の様々な比で存在し得る。全てのこのような可能な比は、本発明の範囲内に含まれる。
【化20】
【0058】
更なる態様において:
R11は、炭素原子数1ないし12のアルキル基を表わし;
R11は、炭素原子数1ないし6のアルキル基を表わし;
R11は、メチル基を表わす。
【0059】
更なる態様において:
R12は、CO−炭素原子数1ないし6のアルキル基、CO−炭素原子数6ないし12のアリール基、CO−炭素原子数1ないし6のアルコキシ基、CO−炭素原子数6ないし12のアリールオキシ基又はCO−炭素原子数6ないし12のアリールアルキル基から選択され;
R12は、CO−炭素原子数6ないし12のアリール基を表わし;
R12は、ベンゾイル基を表わす。
【0060】
1つの態様において、酵素はカンジダ アンタルクチカ‘‘A’’リパーゼであるである。
【0061】
更なる態様において、酵素はカンジダ アンタルクチカ‘‘B’’リパーゼである。
【0062】
また、更なる態様において、酵素はカンジダ リポリチカリパーゼである。
【0063】
また、更なる態様において、酵素はリゾムコール ミエヘイリパーゼである。
【0064】
1つの態様において、適当量の酵素は、式IVで表わされる化合物に対して、約0.1%ないし約100%の質量比で使用される。
【0065】
1つの態様において、適当量の酵素は、式IVで表わされる化合物に対して、約1%ないし約25%の質量比で使用される。
【0066】
1つの態様において、適当量の酵素は、式IVで表わされる化合物に対して、約5%ないし約10%の質量比で使用される。
【0067】
更なる態様において:
式IIIで表わされる化合物は、少なくとも80%のジアステレオマー純度を有し;
式IIIで表わされる化合物は、少なくとも90%のジアステレオマー純度を有し;
式IIIで表わされる化合物は、少なくとも95%のジアステレオマー純度を有し;
式IIIで表わされる化合物は、少なくとも98%のジアステレオマー純度を有する。
【0068】
1つの態様において、本発明は、式III
【化21】
(式中、R11及びR12は、上記に記載した通りである。)で表わされる化合物の製造方法であって、該方法は、
a)カンジダ アンタルクチカ‘‘A’’リパーゼ、カンジダ アンタルクチカ‘‘B’’リパーゼ、カンジダ リポリチカリパーゼ又はリゾムコール ミエヘイリパーゼから選択された適当量の酵素の存在下において、式IV
【化22】
(式中、R11及びR12は、上記に記載した通りである。)で表わされる化合物を酵素によるジアステレオマー分割に付す工程、
b)式IIIで表わされる前記化合物を回収する工程
を含む方法、
及び、更に、
c)式IIIで表わされる化合物のC4位における官能基を置換し、式VIII
【化23】
(式中、Bは、プリン塩基又はピリミジン塩基、もしくはその類似体を表わす。)
で表わされる化合物を製造する工程、
d)式VIIIで表わされる前記化合物の基R12を除去する工程、
e)式IX
【化24】
(式中、Bは、プリン塩基又はピリミジン塩基、もしくはその類似体を表わす。)で表わされる化合物又はその薬学的に許容可能な塩を回収する工程
を含む前記方法を提供する。
【0069】
1つの態様において、Bは、
【化25】
[式中、
R3は、H、炭素原子数1ないし6のアルキル基、炭素原子数1ないし6のアシル基及びCO−R9(式中、R9は、H又は炭素原子数1ないし6のアルキル基を表わす。)から選択され
R4及びR5は、互いに独立して、H、炭素原子数1ないし6のアルキル基、ブロミド、クロリド、フルオリド、ヨージド又はCF3から選択され、
R6、R7及びR8は、互いに独立して、H、ブロミド、クロリド、フルオリド、ヨージド、アミノ基、ヒドロキシル基又は炭素原子数3ないし6のシクロアルキルアミノ基から
選択される。]から選択される。
【0070】
他の態様において、Bは、
【化26】
から選択される。
【0071】
1つの態様において、本発明は、式III
【化27】
(式中、R11及びR12は、上記に記載した通りである。)で表わされる化合物の製造方法であって、該方法は、
a)カンジダ アンタルクチカ‘‘A’’リパーゼ、カンジダ アンタルクチカ‘‘B’’リパーゼ、カンジダ リポリチカリパーゼ又はリゾムコール ミエヘイリパーゼから選択された適当量の酵素の存在下において、式IV
【化28】
(式中、R11及びR12は、上記に記載した通りである。)で表わされる化合物を酵素によるジアステレオマー分割に付す工程、
b)式IIIで表わされる前記化合物を回収する工程
を含む方法、
及び、更に、式X
【化29】
で表わされる化合物を回収する工程を含む前記方法を提供する。
【0072】
不均一な部分なく系をより完全に混合するために、オーバーヘッド攪拌機(Overhead Stirrer)又は磁気攪拌子を備えた丸底フラスコ又は標準実験室用反応器が使用され得ることもまた、当業者によって予期され得る。初めに、化合物IIが、反応器の底に分離相を形成し得り、反応の進行につれて、より均一に分散する。
【0073】
攪拌は、所望により使用され得ることが予期され得る。酵素の添加工程中、(試薬のために不適当であり得る高い局所的なpHを防止するための)塩基の添加中、又は方法中に連続して使用され得る適当な攪拌速度は、該反応条件下で該方法を発生させ、かつ反応に悪影響を及ぼすこと又は酵素を多量に失活させることなく、所望の生成物を提供させるために選択され得る。
【0074】
当業者は、酵素によるジアステレオマー分割(スキーム1及び2)を行うために使用されるジオキソラン化合物は、既知の方法を使用して製造され得ることを予期し得る。このような方法の例は、
1.1997年6月19日、マンサワー,タレク他による国際公開第97/21706号パンフレット、
2.2000年8月17日、シムポイア,アレックス他による国際公開第00/47759号パンフレット、及び
3.2000年7月6日、ングエン−バ,ングヘ他による国際公開第00/39143号パンフレット
に記載されている。
【0075】
1つの態様において、本発明の方法は、一般的なスキーム1又はスキーム2
【化30】
に図示されたように行われ得る。
【0076】
式I又は式IIIで表わされるジオキソラン化合物からのジオキソランヌクレオシド類似体の製造方法については、当業者に既知である様々な方法がある。例えば、ジオキソラン環のC−4位において、プリン塩基、ピリミジン塩基又は類似体を結合する方法が、国際公開第97/21706号パンフレット及び国際公開第00/39143号パンフレットに記載されている。スキーム3及びスキーム4
【化31】
は、ジオキソラン環にプリン塩基、ピリミジン塩基又は類似体を結合する方法を図示している。
【0077】
メチルエステルの加水分解及び酸化的脱カルボキシ化の後、結果として生じたジオキソランは、プリン塩基、ピリミジン塩基、又は類似体に結合され、更に、脱保護され、所望のジオキソランヌクレオシド類似体が得られ得る。
【0078】
以下の実施例は、本発明の様々な態様を説明するために提供され、範囲を制限するように解釈されるべきではない。
【実施例】
【0079】
実施例
実施例1:2(S)−ベンゾイルオキシメチル−[1,3]ジオキソラン−4(S)−カルボン酸メチルエステル
2−ベンゾイルオキシメチル−[1,3]ジオキソラン−4(S)−カルボン酸メチルエステル(50g、1:1のシス対トランス比)及び磁気攪拌子を1L三角フラスコに入れた。その後、水性ホスフェート緩衝液(400mL、0.3M、pH=7.1)をフラスコに入れた。反応フラスコを、外部水浴を使用して30℃まで加熱した。
反応混合物のpHを1N NaOHを用いて7に調整し、その後、豚膵臓リパーゼ粉末4gを少しずつ添加した。結果として生じた懸濁液を穏やかに攪拌し、ピペットを通して2N NaOHを定期的に添加するすることによって、pHを6.8ないし7.2に維持した。2N NaOH約35mLを、反応過程を通して添加した。該反応を、キラルカラム(キラセル(登録商標:CHIRACEL)OD;0.46×25cm)を使用したHPLC分析によって観察し、未反応エステルの光学純度と反応転化率を決定した(試料は、1、2、4、6及び8時間において回収した)。5時間後、反応進行が停止したため、豚膵臓リパーゼ1.5gを、更に添加した。シス−エステルとトランス−エステルの比が>98:2となったら(2.5時間追加)、酢酸エチル200mLを添加することによって、反応を停止させた。
珪藻土(15g)を添加し、2相混合物を5分間攪拌した。その後、混合物を穏やかな吸引を用いて濾過し、その濾過ケークを酢酸エチル25mLで2回洗浄した。2相混合物を分液漏斗に移し、該2相ができるだけ多く分離するまで処理した。下相の透明な水相(約400mL)を排水し、その後、酢酸エチル(25mLで1回抽出した。組合せた有機層及びエマルジョン相を、飽和重炭酸ナトリウム100mLで2回洗浄し、飽和食塩水75mLで1回洗浄することによって乾燥させた(必要に応じて、生成物は、少量の無水硫酸ナトリウムで処理することによって、更に乾燥させられ得る。)。その後、溶媒を、減圧下で蒸発させ、2(S)−ベンゾイルオキシメチル−[1,3]ジオキソラン−4(S)−カルボン酸メチルエステルを、淡黄色液体として得た(25.8g)。HPLCによる分析は、2(R)−ベンゾイルオキシメチル−[1,3]ジオキソラン−4(S)−カルボン酸メチルエステルが2%未満であることを示した。
【0080】
実施例2:2(R)−ベンゾイルオキシメチル−[1,3]ジオキソラン−4(S)−カルボン酸メチルエステル
2−ベンゾイルオキシメチル−[1,3]ジオキソラン−4(S)−カルボン酸メチルエステル(2(S)−ベンゾイルオキシメチル−[1,3]ジオキソラン−4(S)−カルボン酸メチルエステル及び2(R)−ベンゾイルオキシメチル−[1,3]ジオキソラン−4(S)−カルボン酸メチルエステルの1:1.27混合物 1.12g)を、攪拌子及び0.04M、pH7.2のホスフェート緩衝液10mLを含む25mLビーカーに添加した。リゾムコール ミエヘイリパーゼ75mgをこれに添加し、2N NaOHを用いて、pHを7.2に調整した。懸濁液を、磁気攪拌機を使用して攪拌し、反応を室温で進行させた。2N NaOHを定期的に添加することによって、pHを再調整した。アリコート50μを分離して、HPLC(キラセル(登録商標:CHIRACEL)OD;0.46×25cm カラム)によって分析することによって、転化率を観察した。1時間後、加水分解度は25%であった。9時間後、ジクロロメタン(10mL)で抽出することによって、反応を停止させた。有機相を回収し、水相をジクロロメタン(10mL)で再抽出した。持続性のエマルジョンが形成されたため、珪藻土(3g)を添加し、混合物を、焼結ガラス漏斗を通して濾過し、濾過ケークをジクロロメタン(10mL)で洗浄した。濾液を分離し、組合せた有機相を飽和重炭酸ナトリウム(2×20mL)及び1回分の5%食塩水(15mL)で抽出した。溶液を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。約3.5%の2(S)−ベンゾイルオキシメチル−[1,3]ジオキソラン−4(S)−カルボン酸メチルエステルを含む2(R)−ベンゾイルオキシメチル−[1,3]ジオキソラン−4(S)−カルボン酸メチルエステル(0.45g)が黄色オイルとして得られた。
【0081】
本発明の方法を行うために有用な酵素は、マサチューセッツ州、ケンブリッジのアルツス バイオロジックス インコーポレーテッドから得ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】
(式中、R1は、炭素原子数1ないし12のアルキル基、炭素原子数2ないし12のアルケニル基、炭素原子数2ないし12のアルキニル基、炭素原子数6ないし12のアリール基、炭素原子数3ないし10のヘテロ環式基、炭素原子数6ないし12のアラルキル基又は炭素原子数3ないし10のヘテロアラルキル基から選択され、R2は、ヒドロキシル保護基を表わす。)で表わされる化合物の製造方法であって、該方法は、
a)豚肝臓エステラーゼ又は豚膵臓リパーゼから選択された適当量の酵素の存在下において、式II
【化2】
(式中、R1は、炭素原子数1ないし12のアルキル基、炭素原子数2ないし12のアルケニル基、炭素原子数2ないし12のアルキニル基、炭素原子数6ないし12のアリール基、炭素原子数3ないし10のヘテロ環式基、炭素原子数6ないし12のアラルキル基又は炭素原子数3ないし10のヘテロアラルキル基から選択され、R2は、ヒドロキシル保護基を表わす。)
で表わされる化合物を酵素によるジアステレオマー分割に付す工程、
b)式Iで表わされる前記化合物を回収する工程
を含む方法。
【請求項2】
R1が炭素原子数1ないし12のアルキル基を表わす、請求項1記載の方法。
【請求項3】
R2が、CO−炭素原子数1ないし6のアルキル基、CO−炭素原子数6ないし12のアリール基、CO−炭素原子数1ないし6のアルコキシ基、CO−炭素原子数6ないし12のアリールオキシ基又はCO−炭素原子数6ないし12のアリールアルキル基から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
R2がCO−炭素原子数6ないし12のアリール基を表わす、請求項1記載の方法。
【請求項5】
酵素が豚肝臓エステラーゼである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
酵素が豚膵臓リパーゼである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
更に、
a)式Iで表わされる化合物のC4位における官能基を置換し、式V
【化3】
(式中、Bは、プリン塩基又はピリミジン塩基、もしくはその類似体を表わす。)
で表わされる化合物を製造する工程、
b)式Vで表わされる前記化合物の基R2を除去する工程、
c)式VI
【化4】
(式中、Bは、プリン塩基又はピリミジン塩基、もしくはその類似体を表わす。)で表わされる化合物又はその薬学的に許容可能な塩を回収する工程
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
Bが、
【化5】
[式中、
R3は、H、炭素原子数1ないし6のアルキル基、炭素原子数1ないし6のアシル基及びCO−R9(式中、R9は、H又は炭素原子数1ないし6のアルキル基を表わす。)から選択され、
R4及びR5は、互いに独立して、H、炭素原子数1ないし6のアルキル基、ブロミド、クロリド、フルオリド、ヨージド又はCF3から選択され、
R6、R7及びR8は、互いに独立して、H、ブロミド、クロリド、フルオリド、ヨージド、アミノ基、ヒドロキシル基又は炭素原子数3ないし6のシクロアルキルアミノ基から選択される。]から選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
更に、式VII
【化6】
で表わされる化合物を回収する工程を含む請求項1記載の方法。
【請求項10】
R1が炭素原子数1ないし12のアルキル基を表わし、R2がCO−炭素原子数6ないし
12のアリール基を表わす、請求項1記載の方法。
【請求項11】
R1がメチル基を表わし、R2がベンゾイル基を表わす、請求項1記載の方法。
【請求項12】
式III
【化7】
(式中、R11は、炭素原子数1ないし12のアルキル基、炭素原子数2ないし12のアルケニル基、炭素原子数2ないし12のアルキニル基、炭素原子数6ないし12のアリール基、炭素原子数3ないし10のヘテロ環式基、炭素原子数6ないし12のアラルキル基又は炭素原子数3ないし10のヘテロアラルキル基から選択され、R12は、ヒドロキシル保護基を表わす。)で表わされる化合物の製造方法であって、該方法は、
a)カンジダ アンタルクチカ‘‘A’’リパーゼ(Candida Antarctica ‘‘A’’ lipase)、カンジダ アンタルクチカ‘‘B’’リパーゼ(Candida Antarctica ‘‘B’’ lipase)、カンジダ リポリチカリパーゼ(Candida Lypolitica lipase)又はリゾムコール ミエヘイリパーゼ(Rhizomucor Miehei lipase)から選択された適当量の酵素の存在下において、式IV
【化8】
(式中、R11は、炭素原子数1ないし12のアルキル基、炭素原子数2ないし12のアルケニル基、炭素原子数2ないし12のアルキニル基、炭素原子数6ないし12のアリール基、炭素原子数3ないし10のヘテロ環式基、炭素原子数6ないし12のアラルキル基又は炭素原子数3ないし10のヘテロアラルキル基から選択され、R12は、ヒドロキシル保護基を表わす。)で表わされる化合物を酵素によるジアステレオマー分割に付す工程、
b)式IIIで表わされる前記化合物を回収する工程
を含む方法。
【請求項13】
R11が炭素原子数1ないし12のアルキル基を表わす、請求項12記載の方法。
【請求項14】
R12が、CO−炭素原子数1ないし6のアルキル基、CO−炭素原子数6ないし12のアリール基、CO−炭素原子数1ないし6のアルコキシ基、CO−炭素原子数6ないし12のアリールオキシ基又はCO−炭素原子数6ないし12のアリールアルキル基から選択される、請求項12記載の方法。
【請求項15】
R12がCO−炭素原子数6ないし12のアリール基を表わす、請求項12記載の方法。
【請求項16】
酵素がカンジダ アンタルクチカ‘‘A’’リパーゼである、請求項12記載の方法。
【請求項17】
酵素がカンジダ アンタルクチカ‘‘B’’リパーゼである、請求項12記載の方法。
【請求項18】
酵素がカンジダ リポリチカリパーゼである、請求項12記載の方法。
【請求項19】
酵素がリゾムコール ミエヘイリパーゼである、請求項12記載の方法。
【請求項20】
更に、
a)式IIIで表わされる化合物のC4位における官能基を置換し、式VIII
【化9】
(式中、Bは、プリン塩基又はピリミジン塩基、もしくはその類似体を表わす。)
で表わされる化合物を製造する工程、
b)式VIIIで表わされる前記化合物の基R12を除去する工程、
c)式IX
【化10】
(式中、Bは、プリン塩基又はピリミジン塩基、もしくはその類似体を表わす。)で表わされる化合物又はその薬学的に許容可能な塩を回収する工程
を含む、請求項12記載の方法。
【請求項21】
Bが、
【化11】
[式中、
R3は、H、炭素原子数1ないし6のアルキル基、炭素原子数1ないし6のアシル基及びCO−R9(式中、R9は、H又は炭素原子数1ないし6のアルキル基を表わす。)から選択され
R4及びR5は、互いに独立して、H、炭素原子数1ないし6のアルキル基、ブロミド、クロリド、フルオリド、ヨージド又はCF3から選択され、
R6、R7及びR8は、互いに独立して、H、ブロミド、クロリド、フルオリド、ヨージド、アミノ基、ヒドロキシル基又は炭素原子数3ないし6のシクロアルキルアミノ基から選択される。]から選択される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
更に、式X
【化12】
で表わされる化合物を回収する工程を含む請求項26記載の方法。
【請求項23】
R11が炭素原子数1ないし12のアルキル基を表わし、R12がCO−炭素原子数6ないし12のアリール基を表わす、請求項12記載の方法。
【請求項24】
R11がメチル基を表わし、R12がベンゾイル基を表わす、請求項12記載の方法。
【請求項1】
式I
【化1】
(式中、R1は、炭素原子数1ないし12のアルキル基、炭素原子数2ないし12のアルケニル基、炭素原子数2ないし12のアルキニル基、炭素原子数6ないし12のアリール基、炭素原子数3ないし10のヘテロ環式基、炭素原子数6ないし12のアラルキル基又は炭素原子数3ないし10のヘテロアラルキル基から選択され、R2は、ヒドロキシル保護基を表わす。)で表わされる化合物の製造方法であって、該方法は、
a)豚肝臓エステラーゼ又は豚膵臓リパーゼから選択された適当量の酵素の存在下において、式II
【化2】
(式中、R1は、炭素原子数1ないし12のアルキル基、炭素原子数2ないし12のアルケニル基、炭素原子数2ないし12のアルキニル基、炭素原子数6ないし12のアリール基、炭素原子数3ないし10のヘテロ環式基、炭素原子数6ないし12のアラルキル基又は炭素原子数3ないし10のヘテロアラルキル基から選択され、R2は、ヒドロキシル保護基を表わす。)
で表わされる化合物を酵素によるジアステレオマー分割に付す工程、
b)式Iで表わされる前記化合物を回収する工程
を含む方法。
【請求項2】
R1が炭素原子数1ないし12のアルキル基を表わす、請求項1記載の方法。
【請求項3】
R2が、CO−炭素原子数1ないし6のアルキル基、CO−炭素原子数6ないし12のアリール基、CO−炭素原子数1ないし6のアルコキシ基、CO−炭素原子数6ないし12のアリールオキシ基又はCO−炭素原子数6ないし12のアリールアルキル基から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
R2がCO−炭素原子数6ないし12のアリール基を表わす、請求項1記載の方法。
【請求項5】
酵素が豚肝臓エステラーゼである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
酵素が豚膵臓リパーゼである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
更に、
a)式Iで表わされる化合物のC4位における官能基を置換し、式V
【化3】
(式中、Bは、プリン塩基又はピリミジン塩基、もしくはその類似体を表わす。)
で表わされる化合物を製造する工程、
b)式Vで表わされる前記化合物の基R2を除去する工程、
c)式VI
【化4】
(式中、Bは、プリン塩基又はピリミジン塩基、もしくはその類似体を表わす。)で表わされる化合物又はその薬学的に許容可能な塩を回収する工程
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
Bが、
【化5】
[式中、
R3は、H、炭素原子数1ないし6のアルキル基、炭素原子数1ないし6のアシル基及びCO−R9(式中、R9は、H又は炭素原子数1ないし6のアルキル基を表わす。)から選択され、
R4及びR5は、互いに独立して、H、炭素原子数1ないし6のアルキル基、ブロミド、クロリド、フルオリド、ヨージド又はCF3から選択され、
R6、R7及びR8は、互いに独立して、H、ブロミド、クロリド、フルオリド、ヨージド、アミノ基、ヒドロキシル基又は炭素原子数3ないし6のシクロアルキルアミノ基から選択される。]から選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
更に、式VII
【化6】
で表わされる化合物を回収する工程を含む請求項1記載の方法。
【請求項10】
R1が炭素原子数1ないし12のアルキル基を表わし、R2がCO−炭素原子数6ないし
12のアリール基を表わす、請求項1記載の方法。
【請求項11】
R1がメチル基を表わし、R2がベンゾイル基を表わす、請求項1記載の方法。
【請求項12】
式III
【化7】
(式中、R11は、炭素原子数1ないし12のアルキル基、炭素原子数2ないし12のアルケニル基、炭素原子数2ないし12のアルキニル基、炭素原子数6ないし12のアリール基、炭素原子数3ないし10のヘテロ環式基、炭素原子数6ないし12のアラルキル基又は炭素原子数3ないし10のヘテロアラルキル基から選択され、R12は、ヒドロキシル保護基を表わす。)で表わされる化合物の製造方法であって、該方法は、
a)カンジダ アンタルクチカ‘‘A’’リパーゼ(Candida Antarctica ‘‘A’’ lipase)、カンジダ アンタルクチカ‘‘B’’リパーゼ(Candida Antarctica ‘‘B’’ lipase)、カンジダ リポリチカリパーゼ(Candida Lypolitica lipase)又はリゾムコール ミエヘイリパーゼ(Rhizomucor Miehei lipase)から選択された適当量の酵素の存在下において、式IV
【化8】
(式中、R11は、炭素原子数1ないし12のアルキル基、炭素原子数2ないし12のアルケニル基、炭素原子数2ないし12のアルキニル基、炭素原子数6ないし12のアリール基、炭素原子数3ないし10のヘテロ環式基、炭素原子数6ないし12のアラルキル基又は炭素原子数3ないし10のヘテロアラルキル基から選択され、R12は、ヒドロキシル保護基を表わす。)で表わされる化合物を酵素によるジアステレオマー分割に付す工程、
b)式IIIで表わされる前記化合物を回収する工程
を含む方法。
【請求項13】
R11が炭素原子数1ないし12のアルキル基を表わす、請求項12記載の方法。
【請求項14】
R12が、CO−炭素原子数1ないし6のアルキル基、CO−炭素原子数6ないし12のアリール基、CO−炭素原子数1ないし6のアルコキシ基、CO−炭素原子数6ないし12のアリールオキシ基又はCO−炭素原子数6ないし12のアリールアルキル基から選択される、請求項12記載の方法。
【請求項15】
R12がCO−炭素原子数6ないし12のアリール基を表わす、請求項12記載の方法。
【請求項16】
酵素がカンジダ アンタルクチカ‘‘A’’リパーゼである、請求項12記載の方法。
【請求項17】
酵素がカンジダ アンタルクチカ‘‘B’’リパーゼである、請求項12記載の方法。
【請求項18】
酵素がカンジダ リポリチカリパーゼである、請求項12記載の方法。
【請求項19】
酵素がリゾムコール ミエヘイリパーゼである、請求項12記載の方法。
【請求項20】
更に、
a)式IIIで表わされる化合物のC4位における官能基を置換し、式VIII
【化9】
(式中、Bは、プリン塩基又はピリミジン塩基、もしくはその類似体を表わす。)
で表わされる化合物を製造する工程、
b)式VIIIで表わされる前記化合物の基R12を除去する工程、
c)式IX
【化10】
(式中、Bは、プリン塩基又はピリミジン塩基、もしくはその類似体を表わす。)で表わされる化合物又はその薬学的に許容可能な塩を回収する工程
を含む、請求項12記載の方法。
【請求項21】
Bが、
【化11】
[式中、
R3は、H、炭素原子数1ないし6のアルキル基、炭素原子数1ないし6のアシル基及びCO−R9(式中、R9は、H又は炭素原子数1ないし6のアルキル基を表わす。)から選択され
R4及びR5は、互いに独立して、H、炭素原子数1ないし6のアルキル基、ブロミド、クロリド、フルオリド、ヨージド又はCF3から選択され、
R6、R7及びR8は、互いに独立して、H、ブロミド、クロリド、フルオリド、ヨージド、アミノ基、ヒドロキシル基又は炭素原子数3ないし6のシクロアルキルアミノ基から選択される。]から選択される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
更に、式X
【化12】
で表わされる化合物を回収する工程を含む請求項26記載の方法。
【請求項23】
R11が炭素原子数1ないし12のアルキル基を表わし、R12がCO−炭素原子数6ないし12のアリール基を表わす、請求項12記載の方法。
【請求項24】
R11がメチル基を表わし、R12がベンゾイル基を表わす、請求項12記載の方法。
【公表番号】特表2006−506096(P2006−506096A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−554100(P2004−554100)
【出願日】平成15年11月18日(2003.11.18)
【国際出願番号】PCT/CA2003/001798
【国際公開番号】WO2004/048590
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(505182409)シェア バイオケム インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年11月18日(2003.11.18)
【国際出願番号】PCT/CA2003/001798
【国際公開番号】WO2004/048590
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(505182409)シェア バイオケム インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】
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