説明

ジクロロプロパノールの製造方法

【課題】 ジクロロプロパノールの製造において、高い活性を有する塩素化触媒の存在下、特殊な反応装置を用いることなく、塩化水素ガスとの反応で含水グリセリンを効率的に塩素化することができるジクロロプロパノールの製造法を提供する。
【解決手段】 金属塩化物及び/又は金属酸化物と炭素数が9個以上の脂肪族カルボン酸及び/又は当該脂肪族カルボン酸誘導体との混合触媒を用い、塩化水素ガスの存在下でグリセリン及び/又はグリセリン誘導体の水酸基を塩素化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリセリンを塩素化してジクロロプロパノールを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ジクロロプロパノールは、エピクロロヒドリン、エポキシ樹脂等の原料又は有機合成の中間体として使用されている。
【0003】
一般に、グリセリンからジクロロプロパノールを製造する方法としては、塩化水素ガス、又は塩化水素水溶液を用いて塩素化する方法が知られている。例えば、種々のカルボン酸を触媒として塩化水素ガスを吹き込みながら塩素化を行う方法(例えば、特許文献1参照)が知られており、特に酢酸を触媒とした場合にジクロロプロパノール混合物が84%の収率で得られている。また、種々のカルボン酸の存在下、同様の反応系で副生水を連続的に反応系から除去すると反応が効率的に進行することも知られている(例えば、特許文献2及び特許文献3参照)。反応は逐次的に進行し、塩化水素ガスを通じるとモノクロロプロパノールが初めに生成し、次いで塩化水素ガスを2モルまで供給し続けるとジクロロプロパノールが高収率で得られる(例えば、特許文献2参照)。その際、生成するジクロロプロパノールは、1,3−ジクロロ−2−プロパノールと2,3−ジクロロ−1−プロパノールの混合物であることが示されている(例えば、特許文献3参照)。また、アジピン酸等のジカルボン酸をはじめとする種々のカルボン酸及び/又はその誘導体の存在下に、塩化水素水溶液を連続的に供給しながら酸性水とジクロロプロパノールを共沸の形で留出させて、安定的に該ジクロロプロパノールを単離製造できる方法が開示されている。しかし、用いられる原料のグリセリンの含水率が高い場合、それらの方法では一般に反応時間が長くなる傾向がある。塩素化を促進するためには反応系中の塩化水素の濃度を高める必要があり、そのための段階的な脱水法として、複数反応器を用いた反応が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0004】
それに対して、一段階の効率的な塩素化方法として、種々のカルボン酸及び/又はその誘導体の存在下、塩化水素ガスでの加圧反応が提案されている(例えば、特許文献5参照)。但し、その際の加圧反応装置としては耐腐食性の材質が必要となる。
【0005】
グリセリンの塩素化反応は、アルコール部位がカルボン酸との脱水反応でエステルを生成する工程が反応促進に重要であり、グリセリンからのモノクロロ化反応に比べ、ジクロロ化反応が遅いと推定されることが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。従って、モノクロロプロパンジオールからジクロロプロパノールへの反応が促進される触媒が求められている。
【0006】
しかし、以上の先行文献で開示されているように、これまでのグリセリンの塩素化によりジクロロプロパノールを製造するための反応触媒は、カルボン酸及び/又はその誘導体が主なものであり、塩化亜鉛等の金属塩化物や金属酸化物を触媒として用いた反応例はほとんど報告されていない。
【0007】
一方、一般的なアルコールの塩素化反応に塩化亜鉛を触媒として用い、種々の塩化アルキルを合成した例が知られている(例えば、非特許文献2参照)。また、オキシメチルを有する化合物を金属塩化物とカルボン酸の存在下に、塩化水素ガスにより塩素化する方法が報告されているが、カルボン酸としては炭素数が2〜8個の低級脂肪族カルボン酸が有効であることが示されている(例えば、特許文献6参照)。
【0008】
【特許文献1】ドイツ国特許第197308号明細書
【特許文献2】米国特許第2198600号明細書
【特許文献3】特表2007−504101公報
【特許文献4】特表2007−511583公報
【特許文献5】WO2006/20234号パンフレット
【特許文献6】特開2002−20333公報
【非特許文献1】Indusrial & Engineering Chemistry Research 46(20),6456頁(2007)
【非特許文献2】Organic Synthesis Coll. Vol.I 142頁(1941)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現状では、ジクロロプロパノールの製造には専用の装置を用いることが求められている。
【0010】
本発明は、前記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、ジクロロプロパノールの製造において高い活性を有する塩素化触媒の存在下、特殊な反応装置を用いることなく、塩化水素ガスとの反応で含水グリセリンを効率的に塩素化することが可能なジクロロプロパノールの製造法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは前記の課題を解決するために鋭意検討した結果、金属塩化物及び/又は金属酸化物と炭素数が9個以上の脂肪族カルボン酸及び/又は当該脂肪族カルボン酸誘導体との混合触媒を用いると、塩化水素ガスの存在下でグリセリン及び/又はグリセリン誘導体の水酸基を効率的に高収率で塩素化することが可能なことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、金属塩化物及び/又は金属酸化物と炭素数が9個以上の脂肪族カルボン酸及び/又は当該脂肪族カルボン酸誘導体との混合触媒を用い、塩化水素ガスの存在下でグリセリン及び/又はグリセリン誘導体の水酸基を塩素化することを特徴とするジクロロプロパノールの製造方法に関する。
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明で用いる触媒成分である炭素数が9個以上の脂肪族カルボン酸及び/又は当該脂肪族カルボン酸誘導体としては、アゼライン酸、デカン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ラウリン酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、アゼライン酸無水物、デカン酸無水物、セバシン酸無水物、ウンデカン二酸無水物、ラウリン酸無水物、ドデカン二酸無水物、トリデカン二酸無水物、テトラデカン酸無水物、テトラデカン二酸無水物、ペンタデカン二酸無水物、ヘキサデカン二酸無水物、アゼライン酸塩素化物、デカン酸塩素化物、セバシン酸塩素化物、ウンデカン二酸塩素化物、ラウリン酸塩素化物、ドデカン二酸塩素化物、トリデカン二酸塩素化物、テトラデカン酸塩素化物、テトラデカン二酸塩素化物、ペンタデカン二酸塩素化物、ヘキサデカン二酸塩素化物、アゼライン酸塩、デカン酸塩、セバシン酸塩、ウンデカン二酸塩、ラウリン酸塩、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸塩、テトラデカン酸塩、テトラデカン二酸塩、ペンタデカン二酸塩、ヘキサデカン二酸塩、アゼライン酸エステル、デカン酸エステル、セバシン酸エステル、ウンデカン二酸エステル、ラウリン酸エステル、ドデカン二酸エステル、トリデカン二酸エステル、テトラデカン酸エステル、テトラデカン二酸エステル、ペンタデカン二酸エステル、及びヘキサデカン二酸エステルなどが挙げられ、これらの中でも各酸の二酸又は二酸誘導体が好ましく、入手のし易さ及び工業的な取り扱い易さの面からセバシン酸が特に好ましい。前記炭素数が9個以上の脂肪族カルボン酸及び/又は当該脂肪族カルボン酸誘導体の使用量は、グリセリン及び/又はグリセリン誘導体1.0モル当たり0.01〜0.5モルであることが好ましく、0.01モル未満であると十分な反応速度が得られず、0.5モルを超えると反応速度の向上は見られず、逆に塩素化物のエステル体の生成物が増加する。
【0015】
本発明で用いる触媒成分である金属塩化物及び/又は金属酸化物としては、塩化亜鉛、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化銅、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、酸化亜鉛、酸化第一鉄、酸化第二鉄、酸化銅、酸化マグネシウム、及び酸化カルシウムが好ましい。前記金属塩化物及び/又は金属酸化物の使用量は、グリセリン及び/又はグリセリン誘導体1.0モル当たり0.01〜0.5モルであることが好ましく、0.01モル未満であると十分な反応速度が得られず、0.5モルを超えると反応速度の向上は見られず、逆に副生成物が増加する。なお、本発明において金属塩化物を金属水酸化物等の形態で供給しても良く、供給する塩化水素ガスにより、金属水酸化物は金属塩化物となり反応すると考えられる。
【0016】
本発明で使用されるグリセリン及び/又はグリセリン誘導体としては、合成グリセリン、バイオディーゼルからの粗グリセリン、精製グリセリン、3−クロロ−1,2−プロパンジオール、ジグリセロール、ジグリセロールモノクロロヒドリン、ジグリセロールジクロロヒドリン、グリセロールカルボン酸エステル、グリセロールモノクロロヒドリンカルボン酸エステル、ジグリセロールモノクロロヒドリンカルボン酸エステル、グリセロールジカルボン酸ジエステル、グリセロールモノクロロヒドリンジカルボン酸ジエステル、ジグリセロールモノクロロヒドリンジカルボン酸ジエステル、グリセロールジカルボン酸モノエステル、グリセロールモノクロロヒドリンジカルボン酸モノエステル、及びジグリセロールモノクロロヒドリンジカルボン酸モノエステルなどが挙げられ、これらを単独、又は任意の溶媒と混合して使用しても良い。
【0017】
原料であるグリセリン及び/又はグリセリン誘導体の含水率は、グリセリン及び/又はグリセリン誘導体の重量に対して重量比で50%以下であれば問題はないが、反応後に目的物を蒸留単離する際に水除去を行うことを考えると、反応時に共沸脱水することが可能な範囲である30%以下であることが好ましい。
【0018】
本発明で使用される塩化水素(ガス)量は、未反応の塩酸は再使用が可能なため、供給速度、供給量ともに何等制限は受けないが、グリセリン及び/又はグリセリン誘導体1.0モル当たり2.0〜10.0モルであることが好ましく、2.0モル未満であると反応が完結せず、10.0モルを越えると副生成物の増加や余剰な塩化水素の回収を行う必要が生じる。
【0019】
反応温度として好適な温度範囲は50〜250℃であるが、特に反応に使用する水、反応生成水を留去できる温度であることが望ましく、好ましくは100〜200℃である。50℃よりも低い温度では、十分な反応速度が得られず、また、250℃を超える温度では、ポリマー状の副生成物が増加し、目的生成物の分解等も起こりやすくなる。
【0020】
精製法としては、塩素化後に得られるジクロロプロパノール溶液を酸性水と共に減圧又は常圧条件下で留出させ、中和後、蒸留によりジクロロプロパノールを単離精製する方法が挙げられる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のジクロロプロパノールの製造方法によれば、含水グリセリン及び/又はグリセリン誘導体を効率的に高収率で塩素化することができる。
【実施例】
【0022】
以下に、本発明の詳細について実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、本実施例における生成物の収率は、ガスクロマトグラフィーにて確認した。
【0023】
ガスクロマトグラフィー:(島津製作所製 GC−17A、測定条件 キャピラリーカラム(J&WScience社製 DB−5)、昇温、検出器FID)。
【0024】
まず、反応の律速となると推測される3−クロロ−1,2−プロパンジオールの塩素化反応について示す。
【0025】
実施例1
攪拌器と吹き込み管を備え、更に蒸留塔と留去用蒸留器を備え付けた200mlの丸底四つ口フラスコに、水を17重量%含有した3−クロロ−1,2−プロパンジオール 36.8g(0.33mol)、セバシン酸1.35g(6.7mmol)及び塩化亜鉛3.86g(28.3mmol)を入れ、反応器内に塩化水素ガスを0.06モル/時間で供給しながら、攪拌下で120℃まで昇温し、続けて同条件で25時間反応を行った。反応終了後に得られた留出液及び反応液についてガスクロマトグラフィー分析(内部標準法)を行った結果、3−クロロ−1,2−プロパンジオールのピークは消失し、1,3−ジクロロ−2−プロパノールが87.2%及び2,3−ジクロロ−1−プロパノールが7.6%得られたことを確認した。
【0026】
その際、途中の12時間後の反応液についてキャピラリーカラムを備えたガスクロマトグラフィー分析(面積%法)を行った結果、3−クロロ−1,2−プロパンジオールの転化率は95.4%であった。その転化率の結果を表1に示す。
【0027】
次に、反応触媒の効果を比較するため、種々のカルボン酸をはじめとする他の触媒での塩素化反応についての12時間後の転化率を測定した。
【0028】
実施例2
実施例1で、塩化亜鉛3.86g(28.3mmol)を使用した代わりに、塩化亜鉛7.72g(56.7mmol)を使用した以外は全て実施例1と同様に反応を行った。
他の例とともに実施例2の12時間後の転化率を表1に示す。
【0029】
実施例3
実施例1で、塩化亜鉛3.86g(28.3mmol)を使用した代わりに、酸化亜鉛2.30g(28.3mmol)を使用した以外は全て実施例1と同様に反応を行った。
他の例とともに実施例3の12時間後の転化率を表1に示す。
【0030】
実施例4
実施例1で、セバシン酸1.35g(6.7mmol)を使用した代わりに、ラウリン酸1.34g(6.7mmol)を使用した以外は全て実施例1と同様に反応を行った。他の例とともに実施例4の12時間後の転化率を表1に示す。
【0031】
実施例5
実施例1で、セバシン酸1.35g(6.7mmol)を使用した代わりに、ドデカン二酸1.54g(6.7mmol)を使用した以外は全て実施例1と同様に反応を行った。他の例とともに実施例5の12時間後の転化率を表1に示す。
【0032】
実施例6
実施例1で、セバシン酸1.35g(6.7mmol)を使用した代わりに、ヘキサデカン二酸1.91g(6.7mmol)を使用した以外は全て実施例1と同様に反応を行った。他の例とともに実施例6の12時間後の転化率を表1に示す。
【0033】
比較例1
実施例1で使用した塩化亜鉛3.86g(28.3mmol)を使用しなかった以外は全て実施例1と同様に反応を行った。他の例とともに比較例1の12時間後の転化率を表1に示す。
【0034】
比較例2
実施例1で、セバシン酸1.35g(6.7mmol)を使用した代わりに、酢酸0.40g(6.7mmol)を使用した以外は全て実施例1と同様に反応を行った。他の例とともに比較例2の12時間後の転化率を表1に示す。
【0035】
比較例3
実施例1で、セバシン酸1.35g(6.7mmol)を使用した代わりに、コハク酸0.79g(6.7mmol)を使用した以外は全て実施例1と同様に反応を行った。他の例とともに比較例3の12時間後の転化率を表1に示す。
【0036】
比較例4
実施例1で、セバシン酸1.35g(6.7mmol)を使用した代わりに、グルタル酸0.88g(6.7mmol)を使用した以外は全て実施例1と同様に反応を行った。他の例とともに比較例4の12時間後の転化率を表1に示す。
【0037】
【表1】

以上の検討結果から、表1に示されるように、3−クロロ−1,2−プロパンジオールの塩素化反応において、本発明による混合触媒を用いた場合には、12時間後の転化率が高いことが分かった。従って、金属塩化物及び/又は金属酸化物と炭素数が9個以上の脂肪族カルボン酸及び/又は当該脂肪族カルボン酸誘導体との混合触媒は、明らかに有効であることが判明した。
【0038】
次いで、グリセリンの塩素化反応について以下に示す。
【0039】
実施例7
実施例1と同様に、攪拌器と吹き込み管を備え、更に蒸留塔と留去用蒸留器を備え付けた200mlの丸底四つ口フラスコに、水を28重量%含有したグリセリン42.8g(0.33mol)、セバシン酸1.35g(6.7mmol)及び塩化亜鉛3.86g(28.3mmol)を入れ、反応器内に塩化水素ガスを0.06モル/時間で供給しながら、攪拌下に120℃まで昇温した。続けて同条件で15時間反応を行った。15時間後の反応液についてキャピラリーカラムを備えたガスクロマトグラフィー分析(面積%法)を行った結果、3−クロロ−1,2−プロパンジオールの残存率は10.7%であった。また、25時間反応を継続し、反応終了後得られた留出液及び反応液についてガスクロマトグラフィー分析(内部標準法)を行った結果、1,3−ジクロロ−2−プロパノールが87.6%及び2,3−ジクロロ−1−プロパノールが3.7%得られたことを確認した。実施例7の結果を表2に示す。
【0040】
比較例5
実施例7で使用した塩化亜鉛3.86g(28.3mmol)を使用しなかった以外は全て実施例7と同様に反応を行った。15時間後の反応液についてキャピラリーカラムを備えたガスクロマトグラフィー分析(面積%法)を行った結果、3−クロロ−1,2−プロパンジオールの残存率は20.7%であり、反応は遅かった。そこで、更に150℃まで昇温して同条件で10時間反応を行った。反応終了後に得られた留出液及び反応液についてガスクロマトグラフィー分析(内部標準法)を行った結果、1,3−ジクロロ−2−プロパノールが72.7%及び2,3−ジクロロ−1−プロパノールが11.5%得られたことを確認した。比較例5の結果を表2に示す。
【0041】
比較例6
比較例5で、セバシン酸1.35g(6.7mmol)を使用した代わりに、セバシン酸4.04g(20.0mmol)を使用した以外は全て比較例5と同様に反応を行った。比較例6の結果を表2に示す。
【0042】
比較例7
比較例5で、セバシン酸1.35g(6.7mmol)を使用した代わりに、セバシン酸5.72g(28.3mmol)を使用した以外は全て比較例5と同様に反応を行った。比較例7の結果を表2に示す。
【0043】
【表2】

以上の検討結果から、表2に示されるように、グリセリンの塩素化反応において、本発明による混合触媒を用いた場合には、15時間後の3−クロロ−1,2−プロパンジオールの残存率は低く、また、反応終了後のジクロロプロパノールの収率も高いため、金属塩化物及び/又は金属酸化物と炭素数が9個以上の脂肪族カルボン酸及び/又は当該脂肪族カルボン酸誘導体との混合触媒は、明らかに有効であることが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属塩化物及び/又は金属酸化物と炭素数が9個以上の脂肪族カルボン酸及び/又は当該脂肪族カルボン酸誘導体との混合触媒を用い、塩化水素ガスの存在下でグリセリン及び/又はグリセリン誘導体の水酸基を塩素化することを特徴とするジクロロプロパノールの製造方法。
【請求項2】
グリセリン誘導体が、3−クロロ−1,2−プロパンジオール、ジグリセロール、ジグリセロールモノクロロヒドリン、ジグリセロールジクロロヒドリン、グリセロールカルボン酸エステル、グリセロールモノクロロヒドリンカルボン酸エステル、ジグリセロールモノクロロヒドリンカルボン酸エステル、グリセロールジカルボン酸ジエステル、グリセロールモノクロロヒドリンジカルボン酸ジエステル、ジグリセロールモノクロロヒドリンジカルボン酸ジエステル、グリセロールジカルボン酸モノエステル、グリセロールモノクロロヒドリンジカルボン酸モノエステル、及びジグリセロールモノクロロヒドリンジカルボン酸モノエステルからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載のジクロロプロパノールの製造方法。
【請求項3】
金属塩化物が、塩化亜鉛、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化銅、塩化マグネシウム、及び塩化カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜2に記載のジクロロプロパノールの製造方法。
【請求項4】
金属酸化物が、酸化亜鉛、酸化第一鉄、酸化第二鉄、酸化銅、酸化マグネシウム、及び酸化カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜2に記載のジクロロプロパノールの製造方法。
【請求項5】
脂肪族カルボン酸が、アゼライン酸、デカン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ラウリン酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、及びヘキサデカン二酸からなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜4に記載のジクロロプロパノールの製造方法。
【請求項6】
脂肪族カルボン酸誘導体が、アゼライン酸無水物、デカン酸無水物、セバシン酸無水物、ウンデカン二酸無水物、ラウリン酸無水物、ドデカン二酸無水物、トリデカン二酸無水物、テトラデカン酸無水物、テトラデカン二酸無水物、ペンタデカン二酸無水物、ヘキサデカン二酸無水物、アゼライン酸塩素化物、デカン酸塩素化物、セバシン酸塩素化物、ウンデカン二酸塩素化物、ラウリン酸塩素化物、ドデカン二酸塩素化物、トリデカン二酸塩素化物、テトラデカン酸塩素化物、テトラデカン二酸塩素化物、ペンタデカン二酸塩素化物、ヘキサデカン二酸塩素化物、アゼライン酸塩、デカン酸塩、セバシン酸塩、ウンデカン二酸塩、ラウリン酸塩、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸塩、テトラデカン酸塩、テトラデカン二酸塩、ペンタデカン二酸塩、ヘキサデカン二酸塩、アゼライン酸エステル、デカン酸エステル、セバシン酸エステル、ウンデカン二酸エステル、ラウリン酸エステル、ドデカン二酸エステル、トリデカン二酸エステル、テトラデカン酸エステル、テトラデカン二酸エステル、ペンタデカン二酸エステル、及びヘキサデカン二酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜4に記載のジクロロプロパノールの製造方法。
【請求項7】
脂肪族カルボン酸及び/又は当該脂肪族カルボン酸誘導体の使用量が、グリセリン及び/又はグリセリン誘導体1.0モル当たり0.01〜0.5モルであることを特徴とする請求項1〜6に記載のジクロロプロパノールの製造方法。
【請求項8】
金属塩化物及び/又は金属酸化物の使用量が、グリセリン及び/又はグリセリン誘導体1.0モル当たり0.01〜0.5モルであることを特徴とする請求項1〜7に記載のジクロロプロパノールの製造方法。
【請求項9】
グリセリン及び/又はグリセリン誘導体が、重量比で50%以下の水を含有することを特徴とする請求項1〜8に記載のジクロロプロパノールの製造方法。
【請求項10】
塩化水素ガスの使用量が、グリセリン及び/又はグリセリン誘導体1.0モル当たり2.0〜10.0モルであることを特徴とする請求項1〜9に記載のジクロロプロパノールの製造方法。
【請求項11】
50〜250℃の温度範囲で塩素化を実施することを特徴とする請求項1〜10に記載のジクロロプロパノールの製造方法。
【請求項12】
塩素化後に得られるジクロロプロパノール溶液を酸性水と共に留出させ、中和後、蒸留によりジクロロプロパノールを単離精製することを特徴とする請求項1〜11に記載のジクロロプロパノールの製造方法。

【公開番号】特開2010−47492(P2010−47492A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−211008(P2008−211008)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】