説明

ジスチルベンポリカーボネート、それを用いた電子写真感光体、画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジ

【課題】耐摩耗性が高く、耐傷性が高く、且つ電気的特性が良好であるほか、特に架橋表面層の全層にわたり均一な硬化による膜の平滑性に優れ、クリアな架橋表面層の感光層を形成することにより、クリーニング特性が良好で、高耐久性を有し、かつ長期間にわたり高画質化を実現した電子写真感光体を提供することであり、また、それらの長寿命、高性能感光体を使用した画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジを提供する。
【解決手段】ジスチルベンポリカーボネートユニットを複数含むポリカーボネート、及びジスチルベンポリカーボネートユニットを複数含むポリカーボネートと炭素−炭素二重結合を有する重合性電荷輸送物質とからの重合反応生成物を含む層を有することを特徴とする電子写真感光体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐摩耗性が高く、平滑な表面性を有し、且つ電気的特性が良好な感光層を用いることにより、高耐久性を有し、且つ長期間にわたり高画質化を実現した電子写真感光体に関する。また、それらの長寿命、高性能感光体を使用した画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機感光体(OPC)は良好な性能、様々な利点から、無機感光体に換わり複写機、ファクシミリ、レーザープリンタ及びこれらの複合機に多く用いられている。この理由としては、例えば(1)光吸収波長域の広さ及び吸収量の大きさ等の光学特性、(2)高感度、安定な帯電特性等の電気的特性、(3)材料の選択範囲の広さ、(4)製造の容易さ、(5)低コスト、(6)無毒性、等が挙げられる。
【0003】
一方、最近画像形成装置の小型化から感光体の小径化が進み、機械の高速化やメンテナンスフリーの動きも加わり感光体の高耐久化が切望されるようになってきた。この観点からみると、有機感光体は、表面層が低分子電荷輸送材料と不活性高分子を主成分としているため一般に柔らかく、電子写真プロセスにおいて繰り返し使用された場合、現像システムやクリーニングシステムによる機械的な負荷により摩耗が発生しやすいという欠点を有している。加えて高画質化の要求からトナー粒子の小粒径化に伴いクリーニング性を向上させる目的でクリーニングブレードのゴム硬度の上昇と当接圧力の上昇を余儀なくされ、このことも感光体の摩耗を促進する要因となっている。この様な感光体の摩耗は、感度の劣化、帯電性の低下などの電気的特性を劣化させ、画像濃度低下、地肌汚れ等の異常画像の原因となる。また摩耗が局所的に発生した傷は、クリーニング不良によるスジ状汚れ画像をもたらす。現状では感光体の寿命はこの摩耗や傷が律速となり、交換に至っている。
【0004】
したがって、有機感光体の高耐久化においては前述の摩耗量を低減することが不可欠であり、これが当分野でもっとも解決が迫られている課題である。
【0005】
感光層の耐摩耗性を改良する技術としては、2,2’−ジアリルビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂の硬化が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、2,2’−ジアリルビスフェノール型ポリカーボネート樹脂とアクリル基置換電荷輸送物質との硬化電荷輸送層が提案(例えば、特許文献2参照)されているが、これらは側鎖からのアリル基の反応で硬度等耐摩耗性は十二分とはいえない。また、スチルベンカーボネート樹脂が開示(例えば、特許文献3参照)されているが、これは結晶性が高く、分子鎖の二次構造性が高く靱性が高い。
【特許文献1】特開平4−291348号公報
【特許文献2】特許第3081705号公報
【特許文献3】特表平10−508064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、耐摩耗性が高く、耐傷性が高く、且つ電気的特性が良好であるほか、特に架橋表面層の全層にわたり均一な硬化による膜の平滑性に優れ、クリアな架橋表面層の感光層を形成することにより、クリーニング特性が良好で、高耐久性を有し、かつ長期間にわたり高画質化を実現した電子写真感光体を提供することであり、また、それらの長寿命、高性能感光体を使用した画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の本発明により解決される。
【0008】
(1)下記一般式(1)で示されるジスチルベンポリカーボネートユニットを複数含むポリカーボネート。
【0009】
【化14】

一般式(1)
(式中、R,Rは水素、同一、又は異なる炭素数1〜4のアルキル基を表わす。)
(2)下記一般式(2)で示されるジスチルベンカーボネートユニットとビスフェノール誘導体型カーボネートユニットとを複数含むポリカーボネート共重合体。
【0010】
【化15】

一般式(2)
(式中、R,Rは水素、同一、又は異なる炭素数1〜4のアルキル基、R、Rは水素、同一、又は異なる炭素数1〜4のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基を表わし、Aは単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO−、−SiO(CH−、−CR−(R及びRはそれぞれ独立に水素原子、トリフオロメチル基、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基である。)、炭素数5〜11の1,1−シクロアルキリデン基を表わし、a,bはそれぞれ独立に0〜4の整数を表わし、h,iは共重合mol%を表わし、hは5〜80、iは20〜95を表わす。)
(3)下記一般式(1)で示されるジスチルベンポリカーボネートユニットを複数含むポリカーボネートと、炭素−炭素二重結合を有する重合性電荷輸送物質とからの重合反応生成物を含む層を有することを特徴とする電子写真感光体。
【0011】
【化16】

一般式(1)
(式中、R,Rは水素、同一、又は異なる炭素数1〜4のアルキル基を表わす。)
(4)下記一般式(2)で示されるジスチルベンカーボネートユニットとビスフェノール誘導体型カーボネートユニットとを複数含むポリカーボネート共重合体と、前記炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質とからの硬化させられた最上層を有することを特徴とする電子写真感光体。
【0012】
【化17】

一般式(2)
(式中、R,Rは水素、同一、又は異なる炭素数1〜4のアルキル基、R、Rは水素、同一、又は異なる炭素数1〜4のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基を表わし、Aは単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO−、−SiO(CH−、−CR−(R及びRはそれぞれ独立に水素原子、トリフオロメチル基、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基である。)、炭素数5〜11の1,1−シクロアルキリデン基を表わし、a,bはそれぞれ独立に0〜4の整数を表わし、h,iは共重合mol%を表わし、hは5〜80、iは20〜95を表わす。)
(5)前記炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質が下記一般式(3)、一般式(4)で示されるものであることを特徴とする前記(3)又は(4)に記載の電子写真感光体。
【0013】
【化18】

一般式(3)
【0014】
【化19】

一般式(4)
(式中、Actは、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基から選択される炭素−炭素二重結合を表わし、R,R,R,R10,R11,R12は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基を表わし、c,dは1≦c+d≦4を満たす整数、e,fは1≦e+f≦4を満たす整数である。)
(6)前記炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質が下記一般式(5)で示されるものであることを特徴とする前記(3)又は(4)に記載の電子写真感光体。
【0015】
【化20】

一般式(5)
(式中、Actは炭素−炭素二重結合を表わし、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基を表わし、R20,R21は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を表わし、Arは置換、無置換のアリーレン基を表わし、g,k,oはそれぞれ独立に0〜2の整数を表わし、vは0又は1を表わす。)
(7)前記炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質が下記一般式(6)で示されるものであることを特徴とする前記(3)又は(4)に記載の電子写真感光体。
【0016】
【化21】

一般式(6)
(式中、Actは、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基から選択される炭素−炭素二重結合を表わし、R22,R23は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を表わし、炭素数1〜4のアルコキシ基を表わし、p,qはそれぞれ独立に0〜2の整数を表わす。)
(8)前記炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質が下記一般式(7)で示されるものであることを特徴とする前記(3)又は(4)に記載の電子写真感光体。
【0017】
【化22】

一般式(7)
(式中、Actは、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基から選択された炭素−炭素二重結合を表わし、Ar,Arは置換、無置換のアリール基を表わし、
Bは、
【0018】
【化23】

を表わし、ここでR24,R25は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、置換、無置換のアリール基を表わし、rは1〜2の整数を表わす。)
(9)前記炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質が下記一般式(8)で示されるものであることを特徴とする前記(3)又は(4)に記載の電子写真感光体。
【0019】
【化24】

一般式(8)
(式中、Actは、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基から選択された炭素−炭素二重結合を表わし、Arは置換、無置換のアリール基を表わし、s,uはそれぞれ独立に0〜2の整数を表わす。)
(10)下記一般式(1)又は一般式(2)で示されるポリカーボネート共重合体、炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質、及びアクリロイルオキシ基及び/又はメタクリロイルオキシ基を有するラジカル重合性モノマーの重合反応性生成物が感光層の最上層に含有されたことを特徴とする電子写真感光体。
【0020】
【化25】

一般式(1)
(式中、R,Rは水素、同一、又は異なる炭素数1〜4のアルキル基を表わす。)
【0021】
【化26】

一般式(2)
(式中、R,Rは水素、同一、又は異なる炭素数1〜4のアルキル基、R、Rは水素、同一、又は異なる炭素数1〜4のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基を表わし、Aは単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO−、−SiO(CH−、−CR−(R及びRはそれぞれ独立に水素原子、トリフオロメチル基、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基である。)、又は炭素数5〜11の1,1−シクロアルキリデン基を表わし、a,bはそれぞれ独立に0〜4の整数を表わし、h,iは共重合mol%を表わし、hは5〜80、iは20〜95を表わす。)
(11)前記炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質は、上記一般式(3)乃至(8)の群から選択できることを特徴とする前記(10)に記載の電子写真感光体。
【0022】
(12)電子写真感光体が前記(3)乃至(11)のいずれか一項に記載のものである電子写真感光体を用い、少なくとも該電子写真感光体に帯電、画像露光、現像の過程を経た後、画像保持体へのトナー画像の転写、定着及び該電子写真感光体表面のクリーニングによって画像形成を行うことを特徴とする画像形成方法。
【0023】
(13)少なくとも、帯電手段、画像露光手段、現像手段、転写手段及び電子写真感光体を具備した画像形成装置において、該電子写真感光体が前記(3)乃至(11)のいずれか一項に記載のものであることを特徴とする画像形成装置。
【0024】
(14)前記(3)乃至(11)のいずれか一項に記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、クリーニング手段より選ばれる少なくとも1つの手段とを一体的に支持し、画像形成装置本体に着脱自在であることを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、ジスチルベンユニットを有するポリカーボネート樹脂と炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質との架橋によって、硬度上昇、弾性率向上で機械的強度で耐摩耗性向上による高耐久感光体の提供ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は、感光層の表面層が少なくとも下記一般式(1)で示されるジスチルベン骨格ユニットを複数もつ(樹脂状)ポリカーボネート化合物と炭素−炭素二重結合を有する重合性電荷輸送物質からの硬化反応(重合反応)生成物を含有させた高感度感光体を提供するものである。
【0027】
【化27】

一般式(1)
(式中、R,Rは水素、同一、又は異なる炭素数1〜4のアルキル基、a,bは1〜4の整数を表わす。)
[ジスチルベンユニットを有するポリカーボネート、前記一般式(2)で示される共重合体]
前記一般式(1)で示されるポリカーボネートは、以下のスキームで合成される。モノマーの合成はヒドロキベンズアルデヒドとジベンジルホスフォネートとのウィティヒ反応でジスチルベンを合成した。ポリカーボネート化はピリジン中で溶液重合法でトリホスゲンを作用させ、ポリカーボネートを合成した。
【0028】
【化28】

(式中R,Rは水素、同一、又は異なる炭素数1〜4のアルキル基を表わす。)
本発明においては、ジスチルベンユニットを有するポリカーボネートとして、下記一般式(2)で示される共重合体も好ましく用いることができる。
【0029】
【化29】

一般式(2)
ジヒドロキシジスチルベンの単重合ポリマーは高い結晶性を示し、反応途中から析出してしまい、また溶媒に溶けなくなるが、他のビスフェノールとの共重合によって溶媒可溶にフィルム形成を行なう。共重合比率は全モル数で70%以下、あるいは重量比率でも70%以下が好ましい。
【0030】
前記一般式(2)で示される共重合体を得るために用いられる二価フェノールとしては、下記一般式(9)で示されるものが挙げられる。
【0031】
【化30】

一般式(9)
(R、Rは水素、同一、又は異なる炭素数1〜4のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基を表わし、Aは単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO−、−SiO(CH−、−CR−(R及びRはそれぞれ独立に水素原子、トリフオロメチル基、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基である。)、炭素数5〜11の1,1−シクロアルキリデン基を表わし、c,dはそれぞれ独立に0〜4の整数を表わす。)
具体例としては、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジフルオロ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジシクロヘキシルビフェニル等の4,4’−ジヒドロキシビフェニル類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名:ビスフェノールA)、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)イソブタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−1−フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチル−5−tert−ペンチルフェニル)ブタン、ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名:テトラフルオロビスフェノールA)、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名:テトラクロロビスフェノールA)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名:テトラブロモビスフェノールA)、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシ−5−クロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1−フェニル−1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル等のビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド等のビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン等のビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン類;4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0032】
中でも好適に用いられる二価フェノールは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル及びビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンであり、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが好適に用いられる。
【0033】
これら一般式(9)の二価フェノールは、上記特許文献1の特開平4−291348号公報に記載されている。
【0034】
[炭素−炭素二重結合を有する重合性電荷輸送材(物質)]
炭素−炭素二重結合を有する重合性電荷輸送材は、下記一般式(3)、一般式(4)で示されるベンジジン化合物であり、構造式中Actは、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基から選択された炭素−炭素二重結合を表わし、R,R,R30,R31,R32,R33は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基を表わし、e,fは1≦e+f≦4、l,mは1≦l+m≦4で示される。
【0035】
【化31】

一般式(3)
【0036】
【化32】

一般式(4)
アクリロイル基の導入は以下のルートで合成される。
【0037】
【化33】

ビニル基の導入は以下のルートで合成される。
【0038】
【化34】

以下に具体例を示すが、これらに限定されるものでない。
【0039】
【化35】

炭素−炭素二重結合を有する重合性電荷輸送材としては、下記一般式(5)で示されるアミノビフェニル化合物が挙げられる。
【0040】
【化36】

一般式(5)
式中、Actは炭素−炭素二重結合を表わし、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基を表わし、R,R10は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を表わし、Arは置換、無置換のアリーレン基を表わし、g,k、oはそれぞれ独立に0〜2の整数、好ましくは1≦g+k+o≦4を満たす整数を表わし、vは0〜1の整数を表わす。
【0041】
以下に具体例を示すが、これらに限定されるものでない。これらは、前記特許文献2の特許第3081705号明細書に記載されている。
【0042】
【化37】

炭素−炭素二重結合を有する重合性電荷輸送材としては、下記一般式(6)で示されるフェニレンジアミン化合物が挙げられる。
【0043】
【化38】

一般式(6)
式中、Actは炭素−炭素二重結合を表わし、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基を表わし、R11,R12は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を表わし、p,qは、それぞれ独立に0〜2の整数、好ましくは1≦p+q≦4を満たす整数を表わす。
【0044】
以下に具体例を示すが、これらに限定されるものでない。
【0045】
【化39】

炭素−炭素二重結合を有する重合性電荷輸送材としては、下記一般式(7)で示される化合物が挙げられる。
【0046】
【化40】

一般式(7)
式中、Actは、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基から選択された炭素−炭素二重結合を表わし、Ar,Arは置換、無置換のアリール基を表わし、Bは
【0047】
【化41】

を表わし、ここでR24,R25は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、置換、無置換のアリール基を表わす。rは1〜2の整数を表わす。)
以下に具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0048】
【化42】

炭素−炭素二重結合を有する重合性電荷輸送材としては、下記一般式(8)で示されるトリフェニルアミン化合物が挙げられる。
【0049】
【化43】

一般式(8)
式中、Actは、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基から選択された炭素−炭素二重結合を表わしを表わし、Arは置換、無置換のアリール基を表わし、s,uはそれぞれ独立に0〜2の整数、好ましくは1≦s+u≦4を満たす整数を表わす。
【0050】
以下に具体例を示すが、これらに限定されるものでない。
【0051】
【化44】

一般式(3)〜(8)の炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質と、一般式(1)で示されるユニットを有するポリカーボネート樹脂の配合比率は、炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質10重量に対しポリカーボネート樹脂6〜20重量であり、好ましくは7〜15重量である。
【0052】
ここで炭素数1〜5のアルキル基とは、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられる。
【0053】
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ピレニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基等が挙げられ、置換基としては炭素数1〜5の前記したアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0054】
本発明において好ましくは、前記一般式(1)又は一般式(2)で示されるユニットを有するポリカーボネート樹脂、炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質と共にアクリロイルオキシ基及び/又はメタクリロイルオキシ基を有するラジカル重合性モノマー(又は、これらの硬化物)で感光層を形成する。
【0055】
アクリロイルオキシ基及び/又はメタクリロイルオキシ基化合物は2官能のモノマー、オリゴマー、ポリマーとしてはジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等;3官能のモノマー、オリゴマー、ポリマーとしてはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、脂肪族トリ(メタ)アクリレート等;4官能のモノマー、オリゴマー、ポリマーとしてはペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、脂肪族テトラ(メタ)アクリレート等が挙げられ;5官能以上のモノマー、オリゴマー、ポリマーとしてはジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の他、ポリエステル骨格、ウレタン骨格、フォスファゼン骨格を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。本発明では、上記モノマーを1種又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0056】
これらアクリロイルオキシ基及び/又はメタクリロイルオキシ基を有するラジカル重合性モノマーは一般式(1)又は一般式(2)で示されるユニットを有するポリカーボネート樹脂、炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質の全重量に対して2〜50重量%添加され、好ましくは10〜30重量%の添加量である。
【0057】
前記一般式(1)又は一般式(2)で示される繰返しユニットを有するポリカーボネート樹脂と炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質、あるいは適宜アクリロイルオキシ基及び/又はメタクリロイルオキシ基化合物を添加した塗工膜をラジカル重合させるには熱重合開始剤、あるいは、光重合開始剤を含有させ硬化させる。熱重合開始剤、及び光重合開始剤として以下のものが挙げられる。
【0058】
熱重合開始剤としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、2,4−ジクロルベンゾイルパーオキサイド、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロルベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−(t−ブチルオキシ)−ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−tブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−(ジt−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3、トリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、1,1−ジt−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジt−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、4,4−ジ−t−ブチルパーオキシバレリックアッシドn−ブチルエステル、2,2−ビス(4,4−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ジt−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジt−ブチルパーオキシトリメチルアジペートなどの過酸化物、あるいはアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキシルニトリルなどのアゾ系が使用される。
【0059】
光重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、などのアセトフェノン系又はケタール系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、などのベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン、などのベンゾフェノン系光重合開始剤、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、などのチオキサントン系光重合開始剤、その他の光重合開始剤としては、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物、が挙げられる。また、光重合促進効果を有するものを単独又は上記光重合開始剤と併用して用いることもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、などが挙げられる。
【0060】
これらの熱、光重合開始剤はそれぞれ処方液中に添加され、熱重合開始剤の1種又は2種以上、あるいは光重合開始剤の1種又は2種以上混合して用いてもよい。重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性を有する総含有物100重量部に対し、0.5〜40重量部、好ましくは1〜20重量部である。熱重合開始剤の半減期は80℃以上が好ましく、50℃以下であると塗工液の保存性が悪くなり、硬化する。
【0061】
更に、本発明の塗工液は必要に応じて各種可塑剤(応力緩和や接着性向上の目的)、レベリング剤、ラジカル反応性を有しない低分子電荷輸送物質などの添加剤が含有できる。これらの添加剤は公知のものが使用可能であり、可塑剤としてはジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂に使用されているものが利用可能で、その使用量は塗工液の総固形分に対し20重量%以下、好ましくは10%以下に抑えられる。また、レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが利用でき、その使用量は塗工液の総固形分に対し3重量%以下が適当である。
【0062】
前記一般式(1)又は一般式(2)で示されるユニットを有するポリカーボネート樹脂、炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質と適宜添加されたアクリロイルオキシ基及び/又はメタクリロイルオキシ基化合物ラジカル重合性化合物を含有する塗工液を塗布、硬化することにより形成される。かかる塗工液はラジカル重合性モノマーが液体である場合、これに他の成分を溶解して塗布することも可能であるが、必要に応じて溶媒により希釈して塗布される。このとき用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテルなどのエーテル系、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテートなどのセロソルブ系などが挙げられる。これらの溶媒は単独又は2種以上を混合して用いてもよい。溶媒による希釈率は組成物の溶解性、塗工法、目的とする膜厚により変わり、任意である。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行なうことができる。
【0063】
本発明においては、かかる塗工液を塗布後、外部からエネルギーを与えて硬化させ、架橋表面層を形成するものであるが、このとき用いられる外部エネルギーとしては熱、光、放射線がある。熱のエネルギーを加える方法としては、空気、窒素などの気体、蒸気、あるいは各種熱媒体、赤外線、電磁波を用い塗工表面側あるいは支持体側から加熱することによって行なわれる。加熱温度は80℃以上、170℃以下が好ましく、80℃未満では反応速度が遅く、完全に反応が終了しない。170℃より高温では反応が不均一に進行し架橋表面層中に大きな歪みが発生する。硬化反応を均一に進めるために、50℃未満の比較的低温で加熱後、更に100℃以上に加温し反応を完結させる方法も有効である。光のエネルギーとしては主に紫外光に発光波長を有する高圧水銀灯やメタルハライドランプなどのUV照射光源が利用できるが、ラジカル重合性含有物や光重合開始剤の吸収波長に合わせ可視光光源の選択も可能である。照射光量は50mW/cm以上、1000mW/cm以下が好ましく、50mW/cm未満では硬化反応に時間を要する。1000mW/cmより強いと反応の進行が不均一となり、架橋表面層の荒れが激しくなる。放射線のエネルギーとしては電子線を用いるものが挙げられる。これらのエネルギーの中で、反応速度制御の容易さ、装置の簡便さから熱と光のエネルギーを用いたものが有用である。
【0064】
本発明の光硬化開始剤と熱硬化開始剤を添加した系では、光エネルギー、熱エネルギーのどちらを先に与えても良く、また高圧水銀灯などの光エネルギーを与えた時には被射物は高温になり、80℃以上になり、それで熱重合硬化が進行する、
本発明の架橋表面層の膜厚は、架橋表面層が用いられる感光体の層構造によって異なるため、層構造とともに以降に記載する。
【0065】
以下、本発明をその層構造に従い説明する。
<電子写真感光体の層構造について>
本発明に用いられる電子写真感光体を図面に基づいて説明する。
【0066】
図1は、本発明の電子写真感光体を表わす断面図であり、導電性支持体(31)上に、電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する感光層(33)が設けられた単層構造の感光体である。架橋表面層が感光層全体の場合を示したのが図1−Aであり、架橋表面層が感光層の表面部分である場合を示したのが図1−Bである。
【0067】
図2は、導電性支持体(31)上に、電荷発生機能を有する電荷発生層(35)と、電荷輸送物機能を有する電荷輸送層(37)とが積層された積層構造の感光体である。架橋表面層が電荷輸送層全体の場合を示すのが図2−Aであり、架橋表面層が電荷輸送層の表面部分である場合を示すのが図2−Bである。
【0068】
<導電性支持体について>
導電性支持体(31)としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板及びそれらを押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理を施した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体(31)として用いることができる。
【0069】
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、本発明の導電性支持体(31)として用いることができる。
【0070】
この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、また、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などが挙げられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が挙げられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
【0071】
さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体(31)として良好に用いることができる。
【0072】
<感光層について>
次に感光層について説明する。感光層は積層構造でも単層構造でもよい。
【0073】
積層構造の場合には、感光層は電荷発生機能を有する電荷発生層と電荷輸送機能を有する電荷輸送層とから構成される。また、単層構造の場合には、感光層は電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層である。
【0074】
以下、積層構造の感光層及び単層構造の感光層のそれぞれについて述べる。
【0075】
<感光層が電荷発生層と電荷輸送層からなるもの>
(電荷発生層)
電荷発生層(35)は、電荷発生機能を有する電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じてバインダー樹脂を併用することもできる。電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
【0076】
無機系材料には、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物や、アモルファス・シリコン等が挙げられる。アモルファス・シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが良好に用いられる。
【0077】
一方、有機系材料としては、公知の材料を用いることができる。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系又は多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0078】
電荷発生層(35)に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが挙げられる。これらのバインダー樹脂は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。また、電荷発生層のバインダー樹脂として上述のバインダー樹脂の他に、電荷輸送機能を有する高分子電荷輸送物質、例えば、アリールアミン骨格やベンジジン骨格やヒドラゾン骨格やカルバゾール骨格やスチルベン骨格やピラゾリン骨格等を有するポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリシロキサン、アクリル樹脂等の高分子材料やポリシラン骨格を有する高分子材料等を用いることができる。
【0079】
前者の具体的な例としては、特開平01−001728号公報、特開平01−009964号公報、特開平01−013061号公報、特開平01−019049号公報、特開平01−241559号公報、特開平04−011627号公報、特開平04−175337号公報、特開平04−183719号公報、特開平04−225014号公報、特開平04−230767号公報、特開平04−320420号公報、特開平05−232727号公報、特開平05−310904号公報、特開平06−234836号公報、特開平06−234837号公報、特開平06−234838号公報、特開平06−234839号公報、特開平06−234840号公報、特開平06−234841号公報、特開平06−239049号公報、特開平06−236050号公報、特開平06−236051号公報、特開平06−295077号公報、特開平07−056374号公報、特開平08−176293号公報、特開平08−208820号公報、特開平08−211640号公報、特開平08−253568号公報、特開平08−269183号公報、特開平09−062019号公報、特開平09−043883号公報、特開平09−71642号公報、特開平09−87376号公報、特開平09−104746号公報、特開平09−110974号公報、特開平09−110976号公報、特開平09−157378号公報、特開平09−221544号公報、特開平09−227669号公報、特開平09−235367号公報、特開平09−241369号公報、特開平09−268226号公報、特開平09−272735号公報、特開平09−302084号公報、特開平09−302085号公報、特開平09−328539号公報等に記載の電荷輸送性高分子材料が挙げられる。
【0080】
また、後者の具体例としては、例えば特開昭63−285552号公報、特開平05−19497号公報、特開平05−70595号公報、特開平10−73944号公報等に記載のポリシリレン重合体が例示される。
【0081】
また、電荷発生層(35)には低分子電荷輸送物質を含有させることができる。
【0082】
電荷発生層(35)に併用できる低分子電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
【0083】
電子輸送物質としては、たとえばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ジフェノキノン誘導体などの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0084】
正孔輸送物質としては、以下に表わされる電子供与性物質が挙げられ、良好に用いられる。正孔輸送物質としては、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等、その他公知の材料が挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0085】
電荷発生層(35)を形成する方法には、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とが大きく挙げられる。
【0086】
前者の方法には、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が用いられ、上述した無機系材料、有機系材料が良好に形成できる。
【0087】
また、後述のキャスティング法によって電荷発生層を設けるには、上述した無機系もしくは有機系電荷発生物質を必要ならばバインダー樹脂と共にテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。また、必要に応じて、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のレベリング剤を添加することができる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行なうことができる。
【0088】
以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
【0089】
(電荷輸送層について)
電荷輸送層(37)は電荷輸送機能を有する層で、本発明の一般式(1)又は一般式(2)で示されるユニットを有するポリカーボネート樹脂、炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質を有する架橋表面層は電荷輸送層として有用に用いられる。架橋表面層が電荷輸送層(37)の全体である場合、前述の架橋表面層作製方法に記載したように電荷発生層(35)上に塗工液を塗布、必要に応じて乾燥後、外部エネルギーにより硬化反応を開始させ、架橋表面層が形成される。このとき、架橋表面層の膜厚は、10〜30μm、好ましくは10〜25μmである。10μmより薄いと充分な帯電電位が維持できず、30μmより厚いと硬化時の体積収縮により下層との剥離が生じやすくなる。
【0090】
また、架橋表面層が電荷輸送層(37)の表面部分に形成され、電荷輸送層(37)が積層構造である場合、電荷輸送層の下層部分は電荷輸送機能を有する電荷輸送物質及び結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層(35)上に塗布、乾燥することにより形成し、この上に上記本発明の一般式(1)又は一般式(2)で示されるユニットを有するポリカーボネート樹脂、炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質を含有する塗工液を塗布し、外部エネルギーにより架橋硬化させる。
【0091】
電荷輸送物質としては、前記電荷発生層(35)で記載した電子輸送物質、正孔輸送物質及び高分子電荷輸送物質を用いることができる。前述したように高分子電荷輸送物質を用いることにより、表面層塗工時の下層の溶解性を低減でき、とりわけ有用である。
【0092】
結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0093】
電荷輸送物質の量は結着樹脂100重量に対し、20〜300重量、好ましくは40〜150重量が適当である。但し、高分子電荷輸送物質を用いる場合は、単独でも結着樹脂との併用も可能である。
【0094】
電荷輸送層の下層部分の塗工に用いられる溶媒としては前記電荷発生層と同様なものが使用できるが、電荷輸送物質及び結着樹脂を良好に溶解するものが適している。これらの溶剤は単独で使用しても2種以上混合して使用しても良い。また、電荷輸送層の下層部分の形成には電荷発生層(35)と同様な塗工法が可能である。
【0095】
また、必要により可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。
【0096】
電荷輸送層の下層部分に併用できる可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、結着樹脂100重量部に対して0〜30重量部程度が適当である。
【0097】
電荷輸送層の下層部分に併用できるレベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、結着樹脂100重量部に対して0〜1重量部程度が適当である。
【0098】
電荷輸送層の下層部分の膜厚は、5〜40μm程度が適当であり、好ましくは10〜30μm程度が適当である。
【0099】
架橋表面層が電荷輸送層(37)の表面部分である場合、前述の架橋表面層作製方法に記載したように、かかる電荷輸送層の下層部分上に本発明の一般式(1)又は一般式(2)で示されるユニットを有するポリカーボネート樹脂、炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質を含有する塗工液を塗布、必要に応じて乾燥後、熱や光の外部エネルギーにより硬化反応を開始させ、架橋表面層が形成される。このとき、架橋表面層の膜厚は、1〜20μm、好ましくは2〜10μmである。1μmより薄いと膜厚ムラによって耐久性がバラツキ、20μmより厚いと電荷輸送層全体の膜厚が厚くなり電荷の拡散から画像の再現性が低下する。
【0100】
<感光層が単層のもの>
単層構造の感光層は電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層で、本発明の電荷輸送性構造を有する架橋表面層は電荷発生機能を有する電荷発生物質を含有させることにより、単層構造の感光層として有用に用いられる。上記の電荷発生層のキャスティング形成方法に記載したように、電荷発生物質を本発明の一般式(1)又は一般式(2)で示されるユニットを持つポリカーボネート樹脂、炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質を含有する塗工液と共に分散し、導電性支持体(31)上に塗布、必要に応じて乾燥後、光と熱エネルギーにより硬化反応を開始させ、架橋表面層が形成される。なお、電荷発生物質はあらかじめ溶媒と共に分散した液を本架橋表面層用塗工液に加えてもよい。このとき、架橋表面層の膜厚は、10〜30μm、好ましくは10〜25μmである。10μmより薄いと充分な帯電電位が維持できず、30μmより厚いと硬化時の体積収縮により導電性基体又は下引き層との剥離が生じやすくなる。
【0101】
また、架橋表面層が単層構造の感光層の表面部分である場合、感光層の下層部分は電荷発生機能を有する電荷発生物質と電荷輸送機能を有する電荷輸送物質と結着樹脂を適当な溶媒に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。また、必要により可塑剤やレベリング剤等を添加することもできる。電荷発生物質の分散方法、それぞれ電荷発生物質、電荷輸送物質、可塑剤、レベリング剤は前記電荷発生層(35)、電荷輸送層(37)において既に述べたものと同様なものが使用できる。結着樹脂としては、先に電荷輸送層(37)の項で挙げた結着樹脂のほかに、電荷発生層(35)で挙げたバインダー樹脂を混合して用いてもよい。また、先に挙げた高分子電荷輸送物質も使用可能で、架橋表面層への下層感光層組成物の混入を低減できる点で有用である。かかる感光層の下層部分の膜厚は、5〜30μm程度が適当であり、好ましくは10〜25μm程度が適当である。
【0102】
架橋表面層が単層構造の感光層の表面部分である場合、前述のようにかかる感光層の下層部分上に本発明の一般式(1)又は一般式(2)で示されるユニットを持つポリカーボネート樹脂、炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質と電荷発生物質を含有する塗工液を塗布、必要に応じて乾燥後、熱と光の外部エネルギーにより硬化し、架橋表面層を形成する。このとき、架橋表面層の膜厚は、1〜20μm、好ましくは2〜10μmである。1μmより薄いと膜厚ムラによって耐久性のバラツキが生じる。
【0103】
単層構造の感光層中に含有される電荷発生物質は感光層全量に対し1〜30重量%が好ましく、感光層の下層部分に含有される結着樹脂は全量の20〜80重量%、電荷輸送物質は10〜70重量部が良好に用いられる。
【0104】
<中間層について>
本発明の感光体においては、架橋表面層が感光層の表面部分となる場合、架橋表面層と下層感光層の間に中間層を設けることが可能である。この中間層はラジカル重合性組成物を含有する架橋表面層中に下部感光層組成物の混入により生ずる、硬化反応の阻害や架橋表面層の凹凸を防止する。また、下層の感光層と表面架橋層の接着性を向上させることも可能である。
【0105】
中間層には、一般にバインダー樹脂を主成分として用いる。これら樹脂としては、ポリアミド、アルコール可溶性ナイロン、水溶性ポリビニルブチラール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。中間層の形成法としては、前述のごとく一般に用いられる塗工法が採用される。なお、中間層の厚さは0.05〜2μm程度が適当である。
【0106】
<下引き層について>
本発明の感光体においては、導電性支持体(31)と感光層との間に下引き層を設けることができる。下引き層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、下引き層にはモアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
【0107】
これらの下引き層は、前述の感光層の如く適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。更に本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、本発明の下引き層には、Alを陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO、SnO、TiO、ITO、CeO等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。下引き層の膜厚は0〜5μmが適当である。
【0108】
<各層への酸化防止剤の添加について>
また、本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、表面架橋層、感光層、電荷発生層、電荷輸送層、下引き層、中間層等の各層に酸化防止剤を添加することができる。
【0109】
本発明に用いることができる酸化防止剤として、下記のものが挙げられる。
(フェノール系化合物)
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコ−ルエステル、トコフェロール類など。
【0110】
(パラフェニレンジアミン類)
N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなど。
【0111】
(ハイドロキノン類)
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
【0112】
(有機硫黄化合物類)
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなど。
【0113】
(有機燐化合物類)
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
【0114】
これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。
【0115】
本発明における酸化防止剤の添加量は、添加する層の総重量に対して0.01〜10重量%である。
【0116】
<画像形成方法及び装置について>
次に図面に基づいて本発明の画像形成方法ならびに画像形成装置を詳しく説明する。
【0117】
本発明の画像形成方法ならびに画像形成装置とは、本発明は平滑な電荷輸送性表面架橋層を有する感光体を用い、例えば少なくとも感光体に帯電、画像露光、現像の過程を経た後、画像保持体(転写紙)へのトナー画像の転写、定着及び感光体表面のクリーニングというプロセスよりなる画像形成方法ならびに画像形成装置である。
【0118】
場合により、静電潜像を直接転写体に転写し現像する画像形成方法等では、感光体に配した上記プロセスを必ずしも有するものではない。
【0119】
図3は、画像形成装置の一例を示す概略図である。この例の画像形成装置においては、感光体(1)の周囲に、帯電手段の1例としての帯電チャージャ(3)、イレーサ(4)、画像露光部(5)、現像ユニット(6)、転写前チャージャ(7)、図示してない転写紙トレーからレジストローラ(8)により搬送された転写紙(9)にトナー像を転写する転写チャージャ(10)と一体に形成された分離チャージャ(11)、分離爪(12)、クリーニング前チャージャ(13)、クリーニング用ファーブラシ(14)、クリーニングブレード(15)、除電ランプ(2)が配置されている。感光体(1)を平均的に帯電させる手段として、帯電チャージャ(3)が用いられる。この帯電手段としては、コロトロンデバイス、スコロトロンデバイス、固体放電素子、針電極デバイス、ローラ帯電デバイス、導電性ブラシデバイス等が用いられ、公知の方式が使用可能である。
【0120】
特に本発明の構成は、接触帯電方式又は非接触近接配置帯電方式のような帯電手段からの近接放電により感光体組成物が分解する様な帯電手段を用いた場合に有効である。ここで言う接触帯電方式とは、感光体に帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電ブレード等が直接接触する帯電方式である。一方の近接帯電方式とは、例えば帯電ローラが感光体表面と帯電手段との間に200μm以下の空隙を有するように非接触状態で近接配置したタイプのものである。この空隙は、大きすぎた場合には帯電が不安定になりやすく、また、小さすぎた場合には、感光体に残留したトナーが存在する場合に、帯電部材表面が汚染されてしまう可能性がある。したがって、空隙は10〜200μm、好ましくは10〜100μmの範囲が適当である。
【0121】
次に、均一に帯電された感光体(1)上に静電潜像を形成するために画像露光部(5)が用いられる。この光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
【0122】
次に、感光体(1)上に形成された静電潜像を可視化するために現像ユニット(6)が用いられる。現像方式としては、乾式トナーを用いた一成分現像法、二成分現像法、湿式トナーを用いた湿式現像法がある。感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
【0123】
次に、感光体上で可視化されたトナー像を転写体(9)上に転写するために転写チャージャ(10)が用いられる。また、転写をより良好に行なうために転写前チャージャ(7)を用いてもよい。これらの転写手段としては、転写チャージャ、バイアスローラーを用いる静電転写方式、粘着転写法、圧力転写法等の機械転写方式、磁気転写方式が利用可能である。静電転写方式としては、前記帯電手段が利用可能である。
【0124】
次に、転写体(9)を感光体(1)より分離する手段として分離チャージャ(11)、分離爪(12)が用いられる。その他分離手段としては、静電吸着誘導分離、側端ベルト分離、先端グリップ搬送、曲率分離等が用いられる。分離チャージャ(11)としては、前記帯電手段が利用可能である。
【0125】
次に、転写後感光体上に残されたトナーをクリーニングするためにファーブラシ(14)、クリーニングブレード(15)が用いられる。また、クリーニングをより効率的に行なうためにクリーニング前チャージャ(13)を用いてもよい。その他クリーニング手段としては、ウェブ方式、マグネットブラシ方式等があるが、それぞれ単独又は複数の方式を一緒に用いてもよい。
【0126】
次に、必要に応じて感光体上の潜像を取り除く目的で除電手段が用いられる。除電手段としては除電ランプ(2)、除電チャージャが用いられ、それぞれ前記露光光源、帯電手段が利用できる。
【0127】
その他、感光体に近接していない原稿読み取り、給紙、定着、排紙等のプロセスは公知のものが使用できる。
【0128】
本発明は、このような画像形成手段に本発明に係る電子写真感光体を用いる画像形成方法及び画像形成装置である。
【0129】
この画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形態でそれら装置内に組み込まれ、着脱自在としたものであってもよい。プロセスカートリッジの一例を図4に示す。
【0130】
画像形成装置用プロセスカートリッジとは、感光体(101)を内蔵し、他に帯電手段(102)、現像手段(104)、転写手段(106)、クリーニング手段(107)、除電手段(図示せず)の少なくとも一つを具備し、画像形成装置本体に着脱可能とした装置(部品)である。
【0131】
図4に例示される装置による画像形成プロセスについて示すと、感光体(101)は、矢印方向に回転しながら、帯電手段(102)による帯電、露光手段(103)による露光により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成され、この静電潜像は、現像手段(104)でトナー現像され、該トナー現像は転写手段(106)により、転写体(105)に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の感光体表面は、クリーニング手段(107)によりクリーニングされ、さらに除電手段(図示せず)により除電されて、再び以上の操作を繰り返すものである。
【0132】
本発明は、平滑な電荷輸送性表面架橋層を有する感光体と帯電、現像、転写、クリーニング、除電手段の少なくとも一つを一体化した画像形成装置用プロセスカートリッジを提供するものである。
【0133】
以上の説明から明らかなように、本発明の電子写真感光体は電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンター及びレーザー製版等の電子写真応用分野にも広く用いることができるものである。
【実施例】
【0134】
(実施例1)
1、4−ビス(3−ヒドロキシスチリル)ベンゼンの合成
3−ヒドロキシベンズアルデヒド 25g(0.2047mol)、1,4−キシリレン−ビス(ホスホニックアッシドジエチルエステル)34.8g(0.092mol)、DMF 300mlを四径フラスコにとり、室温下攪拌溶解させる。これに40℃を超えない温度範囲でカリウムタシャリーブチルオキシドを1時間30分で加えた、その後5時間反応し、反応物を水400ml中に注ぎ、酢酸で酸性に析出物をロ別した。ロ過物を500mlの水で3回洗浄後、乾燥し、エタノール:酢酸エチル=300:100volで熱ろ過し再結晶した。黄色 20.9g m.p.:279〜281℃ LCMS m/z 314
I.R.:図5
ポリカーボネートの合成
上記ジスチリル体2.22g(7.06mmol)、ビスフェノールA 1.62g(7.1mmol)、脱水ピリジン100mlを四径フラスコにとり、氷−水浴で5℃に冷却し、冷却後、氷−水浴を取り除き、トリホスゲン2.63g(8.86mmol)の塩化メチレン30ml溶液を強攪拌下20分で滴下した、黄色物が析出しエマルジョン状態になり、26℃まで発熱した、その後2時間反応し、塩化メチレン200ml添加し、有機層を分離した、有機層は透明にはならず、7%塩酸水溶液150mlで3回洗浄、2%塩酸水溶液で2回洗浄、イオン交換水150mlで5回洗浄した、有機層は透明になった。有機層をメタノール1.5Lに注ぎ析出させポリカーボネートを3g得た。
GPCでポリスチレン換算分子量はMn:4400,Mw:10500であった。これによって作成されたポリカーボネート共重合体を合成例1とする。
I.R.:図6
また、同様にして実施例2、3を下記表1のモノマーを用いて共重合した。この実施例2、3によって作成されたポリカーボネート共重合体をそれぞれ合成例2、3とする。
【0135】
【表1】

<実施例4>
φ30mmのアルミニウムシリンダー上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布、乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、22μmの電荷輸送層を形成した。メタルハライドランプ:160W/cm、照射距離:120mm、照射強度:500mW/cm、照射時間:30秒の条件で光照射を行ない、その後150℃で30分間乾燥し本発明の電子写真感光体を得た。
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂 6部
(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業製)
メラミン樹脂 4部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業製)
酸化チタン 40部
メチルエチルケトン 50部
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造式(I)のビスアゾ顔料 2.5部
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC製) 0.5部
シクロヘキサノン 200部
メチルエチルケトン 80部
【0136】
【化45】

構造式I
〔電荷輸送層用塗工液〕
合成例1のポリカーボネート共重合体 2部
炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質No.1 2部
トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA) 0.5部
光重合開始剤 0.2部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
テトラヒドロフラン(THF) 16部
1%シリコーンオイル(KF50 信越化学社製)THF溶液 0.1部
<実施例5〜8>
実施例4と同様にして表2の電荷輸送層用塗工液のポリカーボネート樹脂と電荷輸送物質に変えて本発明の感光体を作成した。
【0137】
【表2】

<比較例1>
実施例4と同様に下引き層、電荷発生層を設けた上に下記電荷輸送層22μmを設けた。
〔電荷輸送層用塗工液〕
ビスフェノールZポリカーボネート 10部
(パンライトTS−2050、帝人化成製)
下記構造式(II)の低分子電荷輸送物質(D−1) 7部
テトラヒドロフラン 100部
1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液 0.2部
(KF50−100CS、信越化学工業製)
【0138】
【化46】

構造式II
<比較例2>
実施例4と同様に下引き層、電荷発生層を設けた上に下記電荷輸送層22μmを設けた。
〔電荷輸送層用塗工液〕
合成例1のポリカーボネート共重合体 2部
下記構造式(II)の低分子電荷輸送物質(D−1) 1.4部
テトラヒドロフラン 14部
1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液 0.1部
(KF50−100CS、信越化学工業製)
【0139】
【化47】

構造式II
<評価>
硬度計測にはフィシャー・インストルメンツ社製、微小硬度計 H−100を用いて、ビッカース圧子9.8mNの力で30秒で押し込み、5秒保持し、9.8mNの力で30秒間で抜き、マルテンス硬度、変形回復率を求めた。結果を以下に示す。
【0140】
【表3】

実施例4〜8、比較例1、2の電子写真感光体について、A4サイズ1万枚の通紙試験を実施した。まず、前記感光体を電子写真装置用プロセスカートリッジに装着し、画像露光光源として655nmの半導体レーザーを用いたリコー製imagio Neo 270改造機にて初期暗部電位を−700Vに設定した。その後通紙試験を開始し、1万枚複写後の膜厚減少量の測定を行なった。結果を以下に示す。なお、初期から画像不良が著しい感光体は通紙試験を中止した。
【0141】
膜厚計測は、フィシャー・インストルメンツ社製 渦電流膜厚計フィシャースコープMMSで計測した。
【0142】
【表4】

以上のように本発明の感光体は機械的強度が高く、耐摩耗性が高いものであり、高耐久性が高い。
【0143】
<実施例9>
φ100mmアルミニウムシリンダー上に、下記組成の中間層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、3.5μmの中間層、0.2μmの電荷発生層、20μmの電荷輸送層を形成した。更に、その上に架橋表面層用塗工液をスプレー法で塗工して、光硬化装置で光硬化させ、その後150℃で30分間乾燥させ7μ硬化電荷輸送層を設けた。
〔中間層用塗工液〕
下記組成をボールミルで24時間分散して調整した。
【0144】
アルキッド樹脂 6部
(ベッコゾール 1307−60−EL,大日本インキ化学工業製)
メラミン樹脂 4部
(スーパーベッカミン G−821−60,大日本インキ化学工業製)
酸化チタン(CREL 石原産業社製) 40部
メチルエチルケトン 200部
〔電荷発生層用塗工液〕
下記組成をボールミルで24時間分散して調整した。
【0145】
オキソチタニウムフタロシアニン顔料 2部
ポリビニルブチラール(UCC:XYHL) 0.2部
テトラヒドロフラン 50部
〔電荷輸送層用塗工液〕
下記組成を溶解し調整した。
【0146】
ポリスチレン(MW1C 東洋スチレン社製) 12部
下記構造式(V)の低分子電荷輸送物質 12部
【0147】
【化48】

構造式V
THF 90部
1%シリコーンオイル(KF50信越シリコーン社製)ジクロルメタン溶液
1部
〔架橋表面層用塗工液〕
合成例2のポリカーボネート共重合体 1部
No.20の化合物 1部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート
(SR−295、日本化薬製) 0.5部
ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート
(SR−355、日本化薬製) 0.25部
光重合開始剤 0.2部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
テトラヒドロフラン 30部
シクロヘキサノン 10部
<実施例10>
実施例9と同様にして下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を設けた上に下記表面架橋層を実施例9と同様に設けた。
〔架橋表面層用塗工液〕
合成例1のポリカーボネート共重合体 1部
No.24の化合物 1部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート
(SR−295、日本化薬製) 0.5部
ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート
(SR−355、日本化薬製) 0.25部
光重合開始剤 0.2部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
テトラヒドロフラン 30部
シクロヘキサノン 10部
<比較例3>
実施例9と同様に中間層、電荷発生層を設けた上に電荷輸送層バインダー樹脂をZポリカ樹脂(TS2050 帝人化成社製)に変え、膜厚を27μmを順次、塗布乾燥することにより感光体を作成した。
【0148】
実施例6、7、比較例3の感光体を図3に示した装置、リコー社製イマジオ Neo1050Proに装着して100万枚の通紙試験を行なった。
【0149】
【表5】

本来比較例は架橋表面層がないものではあるが、使用した電荷輸送層バインダー樹脂がポリスチレン表層であると機械的強度がなく耐久試験には適さないため強靱なZポリカ樹脂とした。
【0150】
<実施例11>
(分散液1)
15cmボールミルポットに下記電荷発生物質、溶剤を仕込み、10φジルコニアメディアを用いて48時間ボールミルし、その後シクロヘキサノン500部を加えミルベースを調整した。
【0151】
下記構造式の電荷発生物質 22部
【0152】
【化49】

シクロヘキサノン 400部
(塗工液1)
テトラヒドロフラン(THF) 66部
合成例2のポリカーボネート共重合体 8部
No.24化合物 4部
ポリエチレングリコール 0.2部
(イオネットMC1400 三洋化成社)
シリコーンオイル(KF50 信越化学社製) 0.01部
分散液1を12部、塗工液1を20部、混合攪拌して塗工液2を調整した。
【0153】
φ30mmアルミニウムシリンダー上にポリアミド樹脂(CM8000 東レ社製)10部、メタノール220部、n−ブタノール100部の溶液を5mm/secで浸漬塗工し、100℃で10分間乾燥して0.3μmの下引き層を設けた。この上に上記塗工液2を塗工して20μmの単層感光体を設けた。これをメタルハライドランプ:160W/cm、照射距離:120mm、照射強度:500mW/cm、照射時間:60秒の条件で光照射を行ない、その後150℃で30分間乾燥し本発明の電子写真感光体を得た。
【0154】
<比較例4>
(塗工液3)
テトラヒドロフラン(THF) 66部
ポリカーボネート樹脂(C1400 帝人化成社製) 8部
下記構造式(II)の低分子電荷輸送物質(D−1) 4部
【0155】
【化50】

構造式II
ポリエチレングリコール
(イオネットMC1400、三洋化成社) 0.2部
シリコーンオイル(KF50 信越化学社製) 0.01部
分散液1を12部、塗工液3を20部、混合攪拌して塗工液4を調整した。
【0156】
φ30mmアルミニウムシリンダー上にポリアミド樹脂(CM8000 東レ社製)10部、メタノール220部、n−ブタノール100部の溶液を浸漬塗工し、100℃で10分間乾燥して0.3μmの下引き層を設けた。この上に塗工液4を塗工して20μmの比較感光体を作成した。
【0157】
実施例11と比較例4の感光体を電子写真装置用プロセスカートリッジに装着し、画像露光光源として655nmの半導体レーザーを用い、帯電極性を正帯電としたリコー製imagio Neo 270改造機にて初期暗部電位を700Vに設定した。その後通紙試験を開始し、1000枚複写試験を行なった。
【0158】
実施例11は鮮明な画像であったが、比較例4の感光体は白スジ、黒スジの発生が確認された。これは表面硬度違いと思われ、実施例感光体は架橋したことによって硬度上昇に伴い耐傷性が向上し鮮明な画像が得られたと考えられる。
【0159】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】本発明の電子写真感光体の断面図の一例である。
【図2】本発明の電子写真感光体の断面図の他の例である。
【図3】本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。
【図4】本発明の画像形成装置用プロセスカートリッジの一例を示す概略図である。
【図5】本発明のジスチリルモノマーの赤外線スペクトルを示すグラフである。
【図6】本発明のジスチリルポリカーボネートの赤外線スペクトルを示すグラフである。
【符号の説明】
【0161】
1 感光体
2 除電ランプ
3 帯電チャージャ
4 イレーサ
5 画像露光部
6 現像ユニット
7 転写前チャージャ
8 レジストローラ
9 転写紙
10 転写チャージャ
11 分離チャージャ
12 分離爪
13 クリーニング前チャージャ
14 ファーブラシ
15 クリーニングブレード
31 導電性支持体
33 感光層
35 電荷発生層
37 電荷輸送層
39 保護層
101 感光ドラム
102 帯電装置
103 露光
104 現像装置
105 転写体
106 転写装置
107 クリーニングブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるジスチルベンポリカーボネートユニットを複数含むポリカーボネート。
【化1】

一般式(1)
(式中、R,Rは水素、同一、又は異なる炭素数1〜4のアルキル基を表わす。)
【請求項2】
下記一般式(2)で示されるジスチルベンカーボネートユニットとビスフェノール誘導体型カーボネートユニットとを複数含むポリカーボネート共重合体。
【化2】

一般式(2)
(式中、R,Rは水素、同一、又は異なる炭素数1〜4のアルキル基、R、Rは水素、同一、又は異なる炭素数1〜4のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基を表わし、Aは単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO−、−SiO(CH−、−CR−(R及びRはそれぞれ独立に水素原子、トリフオロメチル基、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基である。)、炭素数5〜11の1,1−シクロアルキリデン基を表わし、a,bはそれぞれ独立に0〜4の整数を表わし、h,iは共重合mol%を表わし、hは5〜80、iは20〜95を表わす。)
【請求項3】
下記一般式(1)で示されるジスチルベンポリカーボネートユニットを複数含むポリカーボネートと、炭素−炭素二重結合を有する重合性電荷輸送物質とからの重合反応生成物を含む層を有することを特徴とする電子写真感光体。
【化3】

一般式(1)
(式中、R,Rは水素、同一、又は異なる炭素数1〜4のアルキル基を表わす。)
【請求項4】
下記一般式(2)で示されるジスチルベンカーボネートユニットとビスフェノール誘導体型カーボネートユニットとを複数含むポリカーボネート共重合体と、前記炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質とからの硬化させられた最上層を有することを特徴とする電子写真感光体。
【化4】

一般式(2)
(式中、R,Rは水素、同一、又は異なる炭素数1〜4のアルキル基、R、Rは水素、同一、又は異なる炭素数1〜4のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基を表わし、Aは単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO−、−SiO(CH−、−CR−(R及びRはそれぞれ独立に水素原子、トリフオロメチル基、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基である。)、炭素数5〜11の1,1−シクロアルキリデン基を表わし、a,bはそれぞれ独立に0〜4の整数を表わし、h,iは共重合mol%を表わし、hは5〜80、iは20〜95を表わす。)
【請求項5】
前記炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質が下記一般式(3)、一般式(4)で示されるものであることを特徴とする請求項3又は4に記載の電子写真感光体。
【化5】

一般式(3)
【化6】

一般式(4)
(式中、Actは、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基から選択される炭素−炭素二重結合を表わし、R,R,R,R10,R11,R12は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基を表わし、c,dは1≦c+d≦4を満たす整数、e,fは1≦e+f≦4を満たす整数である。)
【請求項6】
前記炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質が下記一般式(5)で示されるものであることを特徴とする請求項3又は4に記載の電子写真感光体。
【化7】

一般式(5)
(式中、Actは炭素−炭素二重結合を表わし、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基を表わし、R20,R21は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を表わし、Arは置換、無置換のアリーレン基を表わし、g,k,oはそれぞれ独立に0〜2の整数を表わし、vは0又は1を表わす。)
【請求項7】
前記炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質が下記一般式(6)で示されるものであることを特徴とする請求項3又は4に記載の電子写真感光体。
【化8】

一般式(6)
(式中、Actは、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基から選択される炭素−炭素二重結合を表わし、R22,R23は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を表わし、炭素数1〜4のアルコキシ基を表わし、p,qはそれぞれ独立に0〜2の整数を表わす。)
【請求項8】
前記炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質が下記一般式(7)で示されるものであることを特徴とする請求項3又は4に記載の電子写真感光体。
【化9】

一般式(7)
(式中、Actは、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基から選択された炭素−炭素二重結合を表わし、Ar,Arは置換、無置換のアリール基を表わし、
Bは、
【化10】

を表わし、ここでR24,R25は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、置換、無置換のアリール基を表わし、rは1〜2の整数を表わす。)
【請求項9】
前記炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質が下記一般式(8)で示されるものであることを特徴とする請求項3又は4に記載の電子写真感光体。
【化11】

一般式(8)
(式中、Actは、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基から選択された炭素−炭素二重結合を表わし、Arは置換、無置換のアリール基を表わし、s,uはそれぞれ独立に0〜2の整数を表わす。)
【請求項10】
下記一般式(1)又は(2)で示されるポリカーボネート共重合体、炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質、及びアクリロイルオキシ基及び/又はメタクリロイルオキシ基を有するラジカル重合性モノマーの重合反応性生成物が感光層の最上層に含有されたことを特徴とする電子写真感光体。
【化12】

一般式(1)
(式中、R,Rは水素、同一、又は異なる炭素数1〜4のアルキル基を表わす。)
【化13】

一般式(2)
(式中、R,Rは水素、同一、又は異なる炭素数1〜4のアルキル基、R、Rは水素、同一、又は異なる炭素数1〜4のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基を表わし、Aは単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO−、−SiO(CH−、−CR−(R及びRはそれぞれ独立に水素原子、トリフオロメチル基、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基である。)、又は炭素数5〜11の1,1−シクロアルキリデン基を表わし、a,bはそれぞれ独立に0〜4の整数を表わし、h,iは共重合mol%を表わし、hは5〜80、iは20〜95を表わす。)
【請求項11】
前記炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質は、上記一般式(3)乃至(8)の群から選択できることを特徴とする請求項10に記載の電子写真感光体。
【請求項12】
電子写真感光体が請求項3乃至11のいずれか一項に記載のものである電子写真感光体を用い、少なくとも該電子写真感光体に帯電、画像露光、現像の過程を経た後、画像保持体へのトナー画像の転写、定着及び該電子写真感光体表面のクリーニングによって画像形成を行うことを特徴とする画像形成方法。
【請求項13】
少なくとも、帯電手段、画像露光手段、現像手段、転写手段及び電子写真感光体を具備した画像形成装置において、該電子写真感光体が請求項3乃至11のいずれか一項に記載のものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
請求項3乃至11のいずれか一項に記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、クリーニング手段より選ばれる少なくとも1つの手段とを一体的に支持し、画像形成装置本体に着脱自在であることを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−115337(P2008−115337A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302138(P2006−302138)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】