説明

ジフェニルアルカンの水素化分解

酸性担持体に好ましくは担持されたIB族およびVIII族金属から成る群より選択される金属を含む触媒を使用し、R1R2C(Ph)−(C)n(H)m−C(Ph)R3R4の式を有するジフェニルアルカンと水素を反応させて、R1R2C(Ph)R5およびR6(Ph)CR3R4の構造を有するアルキルベンゼン(複数を含む)を製造する段階(この場合、R5およびR6についての炭素原子の総数は、nであり;R1、R2、R3、R4は、各々、Hであるか、炭素原子を1から10個有する炭化水素基である)を含む水素化分解方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキルベンゼンを製造するためのジフェニルアルカンの接触水素化分解に関する。さらに、本発明は、イソプロピルベンゼン(「クメン」)を製造するための2−メチル−2,4−ジフェニルペンタンの接触水素化分解に関する。
【背景技術】
【0002】
相当量のジフェニルアルカンが、スチレン、フェノール、ジアルキルベンゼンおよびクメンなどの(置換)ベンゼン含有化合物の反応または製造を含む様々な化学プロセスにおいて副産物として生産される。例えば、2−メチル−2,4−ジフェニルペンタンおよびジメチル−2,3−ジフェニルブタンは、クメンを使用する多数のプロセス、例えば、クメン−フェノール過酸化プロセスおよびクミルアルコールからクメンを回収するためのプロセスにおいて、副産物として生産される。
【0003】
住友(Sumitomo)に譲渡された国際公開公報第01/70714号には、酸化プロピレンおよびイソプロピルベンゼンアルコール(クミルアルコール)を製造するためのプロピレンのエポキシ化用酸素担体として過酸化イソプロピルベンゼンを得るための、イソプロピルベンゼン(「クメン」としても知られている)の酸化に関する方法が記載されている。このイソプロピルアリールアルコールは、水素化分解段階によってイソプロピルベンゼン(クメン)に脱水/水素化し、再循環させて、繰り返し使用する。水素化分解段階の間に、かなりな量のクメンダイマーが、望ましくない副産物として生産される。クメンは、生産された後、しかし出て行く前に、水素化床に留まって、さらに水素化または二量化し得るからである。
【0004】
シェル(Shell)に譲渡された米国特許第6,455,712号には、アルキルベンゼンを酸素で酸化することによって得られたアルキルベンゼンヒドロペルオキシドでオレフィンを酸化することによる、酸化プロピレンなどの酸化アルキレン(オキシランとしても知られている)の製造方法を記載されている。このアルキルベンゼンヒドロペルオキシドは、アルキルアリールアルコールに転化させ、これを、水素化分解し、続いて、分留してアルキルベンゼンと他の副産物を分離する多段法により脱水/水素化して、アルキルベンゼンの製造に再利用する。アルキルアリールアルコールの相当量が、副産物として、アルキルベンゼンのダイマー/オリゴマーに転化され得る。
【0005】
住友に譲渡された国際公開公報第02/072507号には、銅クロム触媒の存在下での2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの水素化分解法が記載されている。220℃でのこの転化率は、84%にすぎない。さらに、この特許では言及されていないクメンを伴う方法において副産物として生産される、2−メチル−2,4−ジフェニルペンタンなどの他のクメンダイマーも、通常、存在する。
【0006】
従って、生産される望ましくないアルキルベンゼンダイマーまたはオリゴマー副産物を、高収率、比較的低温度および低コストで、より価値の高いアルキルベンゼンに回収して、アルキルベンゼンを同じ工業プロセスでの反復使用のためにまたは他の工業用途のために経済的に再循環させることができる、有効な方法を開発することが望ましい。
【発明の開示】
【0007】
(発明の要約)
本発明は、酸性担持体に担持されたIB族およびVIII族金属化合物から成る群より選択される金属を含む触媒を使用し、R1R2C(Ph)−(C)n(H)m−C(Ph)R3R4の式を有するジフェニルアルカンと水素を反応させて、R1R2C(Ph)R5およびR6(Ph)CR3R4の構造を有するアルキルベンゼン(複数を含む)を製造する段階(この場合、R5およびR6についての炭素原子の総数は、nであり;ならびにR1、R2、R3、R4は、各々、水素であるか、炭素原子を1から10個有する炭化水素基である)を含む水素化分解方法に関する。
【0008】
(発明の詳細な説明)
本発明は、アルキルベンゼンを製造するためのジフェニルアルカンの接触水素化分解方法に関する。適する水素化または水素化分解触媒の例示的な非限定的な例には、VIII族金属またはIB族金属を含む触媒、特に、銅、パラジウム、白金およびニッケルを含むものが挙げられる。
【0009】
本発明の特定の実施態様として、利用される触媒は、酸性担体(「担持体」としても知られている)、特に、「酸性水素形」である担体に担持されている。「酸性水素形」という用語は、イオン交換性カチオンの50%またはそれ以上がプロトン(「H」または「水素(+)イオン」としても知られている)であることを意味する。理論に拘束されるつもりはないが、酸性水素は、水素化分解反応の促進および触媒の酸性度上昇を助長することを申し述べておく。活性が高い触媒は、比較的穏やかな条件でジフェニルアルカンを水素化分解することができ、この結果、アルキルシクロヘキサンなどの副産物の生産を最小にし、ユーティリティーコストを低下させることができる。酸性担持体の非限定的な例示には、シリカ、シリカ−アルミナ、およびゼオライト(モルデナイト、Na/H−モルデナイト、H−モルデナイト、β−ゼオライト、H−β−ゼオライト、Y−ゼオライト、H−Y−ゼオライトなど)などが挙げられる。ゼオライトを使用する場合、酸性水素形であることが好ましい。
【0010】
本発明の1つの特定の実施態様において、触媒は、この触媒の総重量を基準にした金属の重量として計算して0.1から5重量%、特に0.2から2重量%のVIII族金属またはVIII金属化合物、好ましくは酸性担持体に担持されたもの、さらに好ましくは酸性水素形の酸性担持体に担持されたものを、主触媒成分として、単独で、または助触媒および改質剤、例えばパラジウム/金、パラジウム/銀、コバルト/ジルコニウム、ニッケルとともに含有する。適する触媒金属の1つの実例は、適切な担持媒体、例えばゼオライト(特に、モルデナイトもしくはH−モルデナイト)またはシリカに担持された酸化パラジウムまたはパラジウムを、この触媒の総重量を基準にした金属の重量として計算して特に0.1から5.0重量%、さらに特に0.2から2重量%含む。好ましい触媒は、0.2から2重量%のH−モルデナイト担持パラジウムを含む。
【0011】
本発明の他の特定の実施態様として、元素の周期表のIB族金属、例えば銅が、主触媒成分として、単独で、または助触媒および改質剤、例えばクロム、亜鉛、ジルコニウム、アルミニウム、マグネシウム、希土類金属、VIII族金属などとともに、水素化に使用される。IB族金属含有触媒は、この触媒の総重量を基準にした酸化物の重量として10から80重量%、特に30から75重量%、さらに特に50から70重量%のIB族金属、特に酸性担持体、さらに特に酸性水素形の担持体に担持されたIB族金属を好ましくは含有する。そうした触媒の具体的で非限定的な例には、銅、ラネー銅、銅/クロム、銅/亜鉛、銅/亜鉛/クロム、銅/亜鉛/ジルコニウム、銅/シリカ、銅/アルミナおよび他の銅基触媒系、特に、酸性担持体に担持されているもの、さらに特に酸性水素形の担持体に担持されているものが挙げられる。幾つかの具体的な例示には、Sud Chemieから入手できる市販のシリカ担持銅触媒、T−366(プレス押出品または成形押出品として、約54重量%銅/シリカを有する);Sud Chemieから入手できる銅クロム触媒、G−22/2;および米国特許第5,475,159号の実施例3に従って調製したCu/Zn/Zr触媒などが挙げられる。これらの触媒を併用することもできる。こうした触媒は、比較的低温で良好な結果をもたらすことが判明した。本発明の1つの非限定的で例示的な実施態様において、これらの触媒は、好ましくは100℃から250℃の温度で使用される。こうした触媒は、限定ではないが、この触媒の総重量を基準にして酸化物として計算して5重量%から80重量%の銅を含む。さらに、こうした触媒は、この触媒の総重量を基準にして酸化物として計算して10重量%から80重量%の亜鉛、15から85重量%の酸性担体、特に酸性水素形の担持体を含有することができる。この触媒の特定の例は、この触媒の総重量を基準にして酸化物として計算して10重量%から80重量%の銅、この触媒の総重量を基準にして酸化物として計算して10重量%から80重量%の亜鉛、この触媒の総重量を基準にして酸化物として計算して0.1重量%から20重量%の希土類、および10から80重量%の酸性担体、特に酸性水素形の担持体を含有する。さらに特定の触媒は、この触媒の総重量を基準にして酸化物として計算して10重量%から80重量%の銅、この触媒の総重量を基準にして酸化物として計算して10重量%から80重量%の亜鉛、およびこの触媒の総重量を基準にして酸化物として計算して0.05重量%から30重量%のアルミニウムを含有する。さらに特定の触媒は、この触媒の総重量を基準にして酸化物として計算して10重量%から80重量%の銅、この触媒の総重量を基準にして酸化物として計算して10重量%から80重量%の亜鉛、この触媒の総重量を基準にして酸化物として計算して0.05重量%から30重量%のジルコニウム、および10から80重量%の酸性担体、特に酸性水素形の担持体を含有する。もう1つの好ましい触媒は、この触媒の総重量を基準にして酸化物として計算して10重量%から80重量%の銅、この触媒の総重量を基準にして酸化物として計算して10重量%から80重量%の亜鉛、この触媒の総重量を基準にして酸化物として計算して0.05重量%から30重量%のジルコニウム、この触媒の総重量を基準にして酸化物として計算して0.05重量%から30重量%のアルミニウム、および10から80重量%の酸性担体、特に酸性水素形の担持体を含有する。およびさらに好ましい触媒は、この触媒の総重量を基準にして酸化物として計算して10重量%から80重量%の銅、この触媒の総重量を基準にして酸化物として計算して10重量%から80重量%の亜鉛、この触媒の総重量を基準にして酸化物として計算して0.05重量%から30重量%のマグネシウム、この触媒の総重量を基準にして酸化物として計算して0.1重量%から20重量%の希土類、および10から80重量%の酸性担体、特に酸性水素形の担持体を含有する。
【0012】
本発明の特定の実施態様として、上述の水素化分解触媒は、反応器に装填する前に水素によって還元する。非限定的な例示として、水素化分解触媒は、粉砕し、適切なサイズ、例えば6から20メッシュにする。この触媒を反応器に導入し、窒素中0.001から0.1重量%、特定的には0.02から0.10重量%の水素を1から200L/時、特定的には2から30L/時の速度で流しながら、分あたり1から10℃、特に1.5から5℃の速度で例えば150から250℃の温度に触媒粒子を加熱することにより、ゆっくりと還元する。触媒を150から250℃で1から10時間還元させ、次いで、窒素中の水素含量を、このガスが窒素中1から10重量%、特定的には2から5重量%の水素になるまで、1から5時間毎に倍増する。銅を含有する触媒は、好ましくは150から200℃の間の温度で還元して、焼結を最小限にする。触媒を最後の1から5時間還元し、次いで、ガス流を維持しながら冷却する。冷却後、空気が一切侵入できないように反応器に蓋をし、ガス流を止める。環境および触媒が窒素で満たされている状態で、この反応器を開ける。
【0013】
上述の手順によって調製した被還元触媒粒子を、場合により窒素で満たされた環境下で、反応器の床台、例えば多孔質板/トレーまたはスクリーン製の床台上に装填する。前記被還元粒子は、この床台上に留まるようなサイズおよび形にする。
【0014】
本発明の範囲を限定するのではないが、ジフェニルアルカンは、R1R2C(Ph)−(C)n(H)m−C(Ph)R3R4の式を有し、製造されるアルキルベンゼンは、R1R2C(Ph)R5およびR6(Ph)CR3R4の構造を有する(これらの式中、R5およびR6についての炭素原子の総数は、nであり;nは、0から10、好ましくは0から5であり;ならびにR1、R2、R3、R4は、各々、水素であるか、炭素原子を1から10個有する炭化水素基である)。水素の数は、(C)n(H)mの枝分れ度に依存して、2nまたはそれ以下である。
【0015】
本発明の1つの特定の実施態様において、ジフェニルアルカンは、2−メチル−2,4−ジフェニルペンタンである。もう1つの特定の実施態様は、2−メチル−2,4−ジフェニルペンタンとジメチル−2,3−ジフェニルブタンの混合物に関する。
【0016】
本発明のもう1つの特定の実施態様として、ジフェニルアルカンの芳香族環上にさらなるアルキル基が存在することがあり、ならびに製造されるアルキルベンゼンには、p−ジ(イソプロピル)ベンゼン、m−ジ(イソプロピル)ベンゼン、o−ジ(イソプロピル)ベンゼン、1−エチル−4−(イソプロピル)ベンゼン、1−エチル−3−(イソプロピル)ベンゼン、1−エチル−4−(イソプロピル)ベンゼン、およびこれらの混合物から成る群より選択されるアルキルベンゼンが含まれる。
【0017】
水素化分解反応のための圧力は、0から400ゲージpsig、特に5から300ケージpsi、さらに特に0から140ケージpsi(すなわち1から10バール)の間の範囲でなければならない。水素化分解反応器の温度は、140から300℃、特に160から280℃、さらに特に180から235℃である。
【0018】
水素化流量は、水素化分解反応を支え、かつ触媒から失われた水素の補充に充分であるように調整しなければならない。アルキルベンゼンダイマーに対して少なくとも理論量の水素が、反応に利用できる系の中に存在しなければならない。非限定的な例として、少し過剰な水素流を供給して、水素を液体に吸蔵させ、この反応の性質を気体−液体間に合わせる。
【0019】
供給物の時間あたりの重量速度(WHSV)は、他の条件境界線の中で非常に広い範囲にわたって変化し得、1時間あたり0.1から100リットル、0.2から20リットル、特に0.5から15リットルであり得る。ここで用いるWHSVは、反応触媒床内の触媒の単位重量あたりの、反応蒸留反応器に入る時間あたりの供給物の単位重量を意味する。
【0020】
ここで用いるアルキルベンゼンダイマーのアルキルベンゼンへの転化%は、次のように定義する:
【0021】
【数1】

本発明の特定の実施態様として、水素化分解反応媒体中のアルキルベンゼンダイマーの86.0から100.0重量%、特に90.0重量%から100.0重量%、さらに特に94.0から100重量%、さらにいっそう特に97.5.0から100.0重量%、さらにいっそう特に98.0から100.0重量%を、185℃から235℃の温度で、ベンゼン環を1つ(だけ)有する化合物に転化させることができる。同分解範囲は、140℃から300℃、特に160℃から280℃でも達成することができる。例示的な特定の実施態様として、アルキルベンゼンダイマーの97.5から100.0重量%が、185℃から235℃の温度で、ベンゼン環を1つ(だけ)有する化合物に転化される。もう1つの例示的な特定の実施態様として、アルキルベンゼンダイマーの97.5から100.0重量%、さらに特に98.0から100.0重量%が、185℃から225℃の温度で、ベンゼン環を1つ(だけ)有する化合物に転化される。
【0022】
本発明の特定の実施態様として、2−メチル−2,4−ジ(3−イソプロピルフェニル)ペンタンの86.0から100.0重量%、特に90.0重量%から100重量%、さらに特に94.0重量%から100重量%、さらにいっそう特に97.5から100.0重量%、およびさらにいっそう特に、98.0から100.0重量%を、180℃から235℃の温度で、ベンゼン環を1つだけ有する化合物、例えばイソプロピルベンゼンに転化させることができる。本発明のもう1つの特定の実施態様として、2−メチル−2,4−ジ(3−イソプロピルフェニル)ペンタンの86.0から100.0重量%、特に90.0重量%から100重量%、さらに特に94.0重量%から100重量%、さらにいっそう特に97.5から100.0重量%、およびさらにいっそう特に、98.0から100.0重量%を、185℃から235℃の温度で、イソプロピルベンゼンに転化させることができる。同分解範囲は、140℃から300℃、特に160℃から280℃でも達成することができる。例示的な特定の実施態様として、2−メチル−2,4−ジ(3−イソプロピルフェニル)ペンタンの97.5から100.0重量%が、185℃から235℃の温度で、クメンに転化される。もう1つの例示的な特定の実施態様として、2−メチル−2,4−ジ(3−イソプロピルフェニル)ペンタンの97.5重量%、さらに特に98.0から100.0重量%が、185℃から225℃の温度で、クメンに転化される。
【0023】
本発明の特定の実施態様として、2−メチル−2,4−ジ(3−イソプロピルフェニル)ペンタンと2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの混合物の86.0から100重量%、特に90.0重量%から100.0重量%、さらに特に94.0重量%から100.0重量%、さらにいっそう特に97.5重量%から100重量%、およびさらにいっそう特に98.0から100.0重量%を、180℃から235℃の温度で、ベンゼン環を1つだけ有する化合物に転化させることができる。同分解範囲は、140℃から300℃、特に160℃から280℃でも達成することができる。例示的な実施態様として、2−メチル−2,4−ジ(3−イソプロピルフェニル)ペンタンと2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの混合物の97.5から100.0重量%が、185℃から235℃の温度で、クメンに転化される。もう1つの例示的な実施態様として、2−メチル−2,4−ジ(3−イソプロピルフェニル)ペンタンと2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの混合物の97.5から100.0重量%、さらに特に98.0から100.0重量%が、185℃から225℃の温度で、クメンに転化される。
【0024】
供給流は、固定床反応器から来ることがあり(分別蒸留後に回収)、より軽い重量のアルキルフェニルアルコールなどを除去するために場合により分別された、アルキルフェニルアルコール水素化反応の反応蒸留反応器の底流から来ることがあり、またはクメン−フェノール過酸化プロセスから来ることがある。これらの流れは、水素化分解反応器に供給する前に場合によりアルキルベンゼンで希釈して、水素化反応において発生する熱を緩和し、これによって水素化分解装置内の反応の制御を改善する。
【0025】
例示として、供給流は、0.1から100重量%、特に0.1から10重量%、さらに特に0.2から2重量%のジフェニルアルカン、0から99重量%、特に25から95重量%、さらに特に60から90重量%のアルキルベンゼン、0から20重量%、特に0から5重量%、さらに特に0から1重量%のアルケニルベンゼン、および0から25重量%、特に0から10重量%、さらに特に0から5重量%のアルキルフェニルアルコールを含有する。本発明の特定の実施態様の具体的な例示として、供給流は、0.1から100重量%、特に0.1から1−重量%、さらに特に0.2から2重量%の2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンおよび/または2−メチル−2,4−ジフェニルペンタン、0から99重量%、特に25から95重量%、さらに特に60から90重量%のクメン、0から20重量%、特に0から5重量%、さらに特に0から1重量%のα−メチルスチレン、0から5重量%のエチルベンゼン、0から5重量%のジ−、トリ−イソプロピルベンゼン、エチルベンゼン、プロピル−ベンゼン、エチル−イソプロピルベンゼンなど、またはこれらの混合物、ならびに0から25重量%、特に0から10重量%、さらに特に0から5重量%のクミルアルコールを含有する。
【0026】
本発明を以下の例示的な実施態様によって説明することにする。これらの実施態様は、説明のためだけに提供するものであり、本発明の範囲を制限するためのものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
I.例示的な実施態様I:
I(A)水素化分解触媒Pd−モルデナイト触媒の調製
1500グラムのナトリウムモルデナイト(次の特性を有するもの:1グラムあたり430平方メートルの表面積;約1マイクロメートルの平均微結晶サイズ;7.6cc/gのシクロヘキサン吸収量;および11.1のシリカ対アルミナのモル比)、9000グラムの硝酸アンモニウムおよび15リットルの1.5M硝酸の混合物を50℃に加熱し、5時間攪拌した。固形物を濾過して除去し、25リットルの脱イオン水で洗浄した。硝酸中の硝酸アンモニウムでのモルデナイトのこの処理を、各回、新たな硝酸アンモニウムおよび硝酸を用いて2回繰り返した。各処理後、固形物を濾過して除去し、水で洗浄して、120℃で一晩乾燥させた。308グラムの脱イオン水に6.55グラムの硝酸テトラアミンパラジウムを溶解し、この溶液に4.92グラムの硝酸アンモニウムを添加することによって調製した、硝酸テトラアミンパラジウムおよび過剰の硝酸アンモニウムを含有する水溶液で処理することにより、パラジウムを0.35重量%のレベルまでこのゼオライトに付加させた。次いで、このパラジウム溶液を、10.6%のLOI(2時間、750℃での強熱減量)を有する1083グラムの脱アルミニウムモルデナイトとともに混練した。パラジウム含有モルデナイトを均一に混合して、28.4%のLOIを有する338グラムの擬ベーマイトアルミナ(Vista Chemical Companyから市販されているCatapal B)を添加し、混合させた。この混合物を押し出し、1.6mmの押出品を125℃で16時間、空気中で乾燥させて、500℃の気流の中で2時間焼成した。この触媒を粉砕して、6から20メッシュのサイズにし、次いで、下のIIAで説明するような手順を用いて還元した。
【0028】
IB.H−モルデナイト担持Pd触媒を使用するクメンダイマーの水素化分解
クミルアルコールを反応蒸留してクメンを製造するための反応蒸留塔からの底流を蒸留して、クメンダイマーが豊富な混合物を得、これをクメンで希釈し、下の表1に与えるような条件下、I(A)に記載したような水素化分解用H−モルデナイト担持パラジウム酸性触媒を装填した固定床での水素化に送り込んだ。結果を下の表2に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
II.例示的な実施態様II
IIA 水素化分解触媒T−366触媒の調製
3.2mmの押出品に押し出された54重量%Cu/シリカを有する、Sud Chemieから入手できる、市販のシリカ担持銅触媒、T−366を、以下の接触分解試験手順を用いてさらに処理する。
【0032】
5グラムのSud Chemie T−366 シリカ担持銅触媒(3mmタブレット)を粉砕し、6から20メッシュのサイズにした。この触媒を45グラムの80メッシュ炭化ケイ素と混合し、20メッシュSiC床とガラスウール床の間の69cmの長さのステンレス鋼反応管内の中央に配置した。この反応管の内径は、1.5cmであった。10L/時の速度で窒素中0.05重量%の水素を流しながら、1分あたり3℃の速度で20℃から180℃に触媒粒子を加熱することにより、ゆっくりと触媒を還元した。180℃で2時間、触媒を還元させ、次いで、窒素中の水素含量を、このガスが窒素中3.2重量%の水素になるまで、2時間毎に倍増した。触媒を最後の2時間還元し、次いで、ガス流を維持しながら冷却した。冷却後、空気が一切侵入できないように反応器に蓋をし、ガス流を止めた。窒素で満たされているグローブボックスの中でこの反応器を開け、触媒および炭化ケイ素を網ふるいによって分離した。
【0033】
IIB.T−366 シリカ担持銅触媒を使用するクメンダイマーの水素化分解
クミルアルコールを反応蒸留してクメンを製造するための反応蒸留塔からの底流を蒸留して、クメンダイマーが豊富な混合物を得、これをクメンで希釈し、下の表3に与えるような条件下、II(A)に記載したような水素化分解用T−366触媒を装填した固定床での水素化に送り込んだ。結果を下の表4に示す。
【0034】
【表3】

【0035】
【表4】

【0036】
III.比較例
IIIA.炭素担持パラジウム水素化触媒の調製
the Calsicat division of Mallinckrodt Incorporatedから入手できる、0.5重量%パラジウム/炭素の圧縮造粒品を炭化ケイ素と混合し、上のIIAに記載したものと同じ手順に従って還元した。
【0037】
IIIB.炭素担持パラジウム触媒でのクメンダイマーの水素化分解
クミルアルコールを反応蒸留してクメンを製造するための反応蒸留塔からの底流を蒸留して、クメンダイマーが豊富な混合物を得、これをクメンで希釈し、下の表5に与えるような条件下、III(A)に記載したような水素化分解用炭素担持パラジウム酸性触媒を装填した固定床での水素化に送り込んだ。結果を下の表6に示す。
【0038】
【表5】

【0039】
【表6】

【0040】
IV.結論
例示的な実施態様IBに示したように、高酸性担持体に担持されたPdの触媒を、クメンへのクメンダイマー2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンおよび2−メチル−2,4−ジフェニルペンタンの水素化分解に使用すると、220℃Cでの転化率は、98.0%であり、クメンへの選択率は、100%に近い。例示的な実施態様IIBに示したように、シリカ(酸性担持体)に担持されたCuの触媒を、クメンへのクメンダイマー(2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンおよび2−メチル−2,4−ジフェニルペンタン)の水素化分解に使用すると、転化率は、95.3%であり、選択率は、100%である。
【0041】
対照的に、比較例IIIBに示したように、炭素担持体に担持された0.5重量%Pdの非酸性触媒を、クメンへのクメンダイマー(2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンおよび2−メチル−2,4−ジフェニルペンタン)の水素化分解に使用すると、転化率は、93.3であり、選択率は、100%である。
【0042】
以上を考慮して、高酸性担持体(H−モルデナイト)担持Pdは、非酸性担持体に担持されたPdと比較して、より高い水素化分解転換率の優れた特性をもたらす。
【0043】
本明細書および特許請求の範囲において提供した範囲および制限は、本発明を特に指摘し、明確に請求すると考えられるものである。しかし、実質的に同じ機能を実質的に同じ手法で実行して、同じまたは実質的に同じ結果を得る他の範囲および制限は、本明細書および特許請求の範囲により定義する本発明の範囲内であると考える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性担持体に担持されたIB族およびVIII族金属化合物から成る群より選択される金属を含む触媒を使用し、R1R2C(Ph)−(C)n(H)m−C(Ph)R3R4の式を有するジフェニルアルカンと水素を反応させて、R1R2C(Ph)R5およびR6(Ph)CR3R4の構造を有するアルキルベンゼン(複数を含む)を製造する段階(この場合、R5およびR6についての炭素原子の総数は、nであり;ならびにR1、R2、R3、R4は、各々、水素であるか、炭素原子を1から10個有する炭化水素基である)を含む水素化分解方法。
【請求項2】
触媒が、VIII族金属化合物から選択される金属、好ましくはパラジウムを、0.1重量%から5重量%、好ましくは0.2重量%から2重量%含み;酸性担持体が、シリカ、シリカ−アルミナ、ゼオライト、およびこれらの混合物から成る群より選択され、好ましくはH−モルデナイトであり;反応が、140℃から300℃、好ましくは180℃から235℃の温度で行われ;86.0重量%から100.0重量%、好ましくは90.0重量%から100.0重量%のジフェニルアルカンが、ベンゼン環を1つだけ有する化合物、好ましくはイソプロピルベンゼンに転化される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
触媒が、触媒の総重量を基準にして10重量%から80重量%、好ましくは30重量%から75重量%、さらに好ましくは50重量%から70重量%のIB族金属、好ましくは銅を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ジフェニルアルカンが、2−メチル−2,4−ジ(3−イソプロピルフェニル)ペンタンと2,3−ジメチル−2,3−ジ(3−イソプロピルフェニル)ブタンの混合物を含み;2−メチル−2,4−ジ(3−イソプロピルフェニル)ペンタン、3−ジメチル−2,3−ジ(3−イソプロピルフェニル)ブタンを併せた重量の86.0重量%から100.0重量%が、イソプロピルベンゼンに転化される、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ジフェニルアルカンが、2−メチル−2,4−ジ(3−イソプロピルフェニル)ペンタンを含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
製造される前記アルキルベンゼンが、p−ジ(イソプロピル)ベンゼン、m−ジ(イソプロピル)ベンゼン、o−ジ(イソプロピル)ベンゼン、1−エチル−4−(イソプロピル)ベンゼン、1−エチル−3−(イソプロピル)ベンゼン、および1−エチル−4−(イソプロピル)ベンゼンから成る群より選択されるアルキルベンゼンを含む、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
触媒が、ジフェニルアルカンと水素を反応させる前に水素によって還元される、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
窒素中0.001重量%から0.1重量%、好ましくは0.02重量%から0.10重量%の水素を1から200L/時、好ましくは2から30L/時の速度で流しながら、分あたり1℃から10℃、好ましくは1.5℃から5℃の速度で150℃から250℃の温度に加熱することにより、触媒が還元される、請求項7に記載の方法。

【公表番号】特表2007−522089(P2007−522089A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518707(P2006−518707)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/020812
【国際公開番号】WO2005/005351
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】