説明

ジメチルエーテルと二酸化炭素の混合物冷媒

【課題】ジメチルエーテルと二酸化炭素を混合して、オゾン層を破壊しない、地球温暖化係数の小さい安全で毒性のない、低圧で作動する優れた性能を有する暖房/給湯用の混合冷媒を提供する。
【解決する手段】ジメチルエーテルと二酸化炭素の総モル数を基準として、ジメチルエーテルを10〜80モル%、二酸化炭素を90〜10モル%含有して形成される組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ給湯機に使用される、ジメチルエーテルと二酸化炭素を含有する冷媒組成物に関る。
【背景技術】
【0002】
現在、二酸化炭素は、オゾン破壊係数ゼロ、地球温暖化係数1で、環境への負荷が極めて小さく、且つ毒性、可燃性が無く安全で安価であること、臨界温度が31.1℃と低く、空調や給湯用では、サイクルの高圧側が容易に超臨界になることから冷媒と被冷却流体との温度差が小さい加熱を行うことができるので、給湯のように昇温幅が大きい加熱プロセスでは、高い成績係数が得られること、圧縮機単位流入体積当たりの加熱能力が大きく、熱伝導率が高いことから、エコキュートのネーミングでヒートポンプ給湯機用冷媒として普及利用されている。
【0003】
しかしながら、これまで二酸化炭素冷媒の作動圧は約10MPaと他の冷媒と比べると非常に高く、そのため、システム機器ひとつひとつのパーツを超高圧仕様にしなければならないことから、適切な価格でのサイクルシステムの要素技術開発が大きな課題となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、二酸化炭素超臨界冷媒に代わる、オゾン層破壊の危険性がなく、地球温暖化に及ぼす悪影響が小さく、且つ不燃性ないし難燃性で、低圧において作動する等の優れた性能を有する安全で毒性のない給湯/暖房用冷媒組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
二酸化炭素は、臨界温度が31.1℃、沸点が−56.6℃であるのに対して、ジメチルエーテルは、臨界温度が126.85℃、沸点が−25℃と、両者の2種の物性は大きく異なる。そのために二酸化炭素は、低圧約3MPa〜高圧約10MPaという非常に高圧領域で冷媒として利用されるのに対して、ジメチルエーテルは、低圧約0.7MPa〜高圧約2MPaの比較的低圧下で溶媒として利用され、そのような圧力条件下で最も優れた冷媒としての性能を発揮することが知られている。従って、二酸化炭素とジメチルエーテルは、それぞれ単独で冷媒として利用されることがあっても、全く物性の異なる二酸化炭素とジメチルエーテルを混合して冷媒として利用しようという発想はこれまでなされなかったし、検討もされなかった。
【0006】
これに対して、本発明者等は、ジメチルエーテルに対する二酸化炭素溶解性評価試験と溶解目視試験を行った結果、温度、圧力条件によって気液平衡到達量(溶解量)が変化するものの、ジメチルエーテルに二酸化炭素が良く溶解し、且つ分散していることを確認した。そして、本発明者等は、物性的に伝熱効果の高い二酸化炭素(0.02W/mK)とより高い比熱を有するジメチルエーテル(138J/molK)を混合することによって極めて高い熱効率を示す物性になるのではと考え、シミュレーションを含む開発を重ねた結果、ジメチルエーテルと二酸化炭素の混合物は、低圧で作動する成績係数の優れた暖房用/給湯用冷媒であることを見出し本発明に到達したものである。
【0007】
【表1】

【0008】
即ち、本発明は、ジメチルエーテルと二酸化炭素の総モル数を基準として、ジメチルエーテルを10〜80モル%、二酸化炭素を90〜20モル%含有することを特徴とする給湯/暖房用冷媒組成物に関る。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明のジメチルエーテルと二酸化炭素の混合物は、オゾン層を破壊することがない、地球温暖化係数(GWP)がほぼゼロの安全で毒性のない、低圧下で作動する優れた暖房及び給湯能力を有する冷媒である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施態様について詳細に説明する。
【0011】
本発明の冷媒組成物に使用されるジメチルエーテルは、例えば、石炭ガス化ガス、LNGタンクのBOG(Boil of Gas)、天然ガス、製鉄所の副生ガス、石油残渣、廃棄物及びバイオガスを原料として、水素と一酸化炭素から直接ジメチルエーテルを合成するか、水素と一酸化炭素から間接的にメタノール合成を経由して得られる。
【0012】
本発明の冷媒組成物に使用される二酸化炭素は、例えば、アンモニア合成ガスや重油脱硫用水素製造プラントなどから発生する副生ガスを原料として圧縮・液化・精製して得られる。
【0013】
本発明の冷媒組成物におけるジメチルエーテルと二酸化炭素の混合割合は、冷媒が用いられる給湯機/暖房機の種類等に応じて適宜定められるが、本発明の冷媒組成物は、ジメチルエーテルと二酸化炭素の総モル数を基準として、好ましくは、ジメチルエーテルを10〜80モル%、二酸化炭素を90〜20モル%、更に好ましくは、ジメチルエーテルを30モル%〜70モル%、二酸化炭素を70〜30モル%含有する。ジメチルエーテルが10モル%未満であると、後述する成績係数が低くなり好ましくない。一方、ジメチルエーテルが80モル%より大きいと、冷媒組成物が可燃性となる傾向があり安全上好ましくない。
【0014】
本発明の冷媒組成物は、例えば、容器に液化ジメチルエーテル充填タンクから所定量の液化ジメチルエーテルを充填し、その後に液化二酸化炭素充填タンクから所定量の液化二酸化炭素を充填することにより前記混合比の冷媒組成物を得ることができる。また、容器に所定量の液化ジメチルエーテルを充填した後、容器の気相部に二酸化炭素のガスを充填し、ジメチルエーテルに加圧溶解、混合させて調製することもできる。
【0015】
本発明の冷媒組成物には、他の添加剤として例えば水を添加することができる。水は、1気圧、温度18℃の条件下でジメチルエーテルに約7モル%強溶解することと、蒸発(凝縮)潜熱が高いという特徴を持ち、且つ臨界点が高いので蒸発潜熱の温度に対する変化率が小さいことから、高温領域でも大きな潜熱を得ることができる。したがって、顕熱効果が高い二酸化炭素と潜熱効果の高いジメチルエーテルと水の3種類を混合することによって、更に高い熱効率が得られることが予想される。この場合の水の混合比率は、ジメチルエーテルへの溶解性を考慮して、7モル%を越えない範囲とする。
【0016】
冷媒特性の評価方法
給湯システム
給湯システムは、一般に、図1に示すように、圧縮器、凝縮器、膨張弁及び蒸発器から構成され、給湯用高温水は圧縮器からの高温冷媒が凝縮器で低温水との熱交換により行われる。CO冷媒給湯用サイクルでは凝縮器側の作動圧力は9MPa以上の高圧で超臨界(CO臨界圧力:7.4MPa)になり、低圧側の蒸発器作動圧が3MPa以上の遷臨界サイクルを構成する。
【0017】
CO/DME冷媒の給湯能力評価シミュレーション
CO/DME冷媒の給湯能力を評価するために、図1の給湯用基準サイクルを数値モデル化し、汎用の数値ケミカルプロセスシミュレーターを用いて、公知の方法(例えば、宮良等の「非共沸混合冷媒ヒートポンプサイクルの性能に及ぼす熱交換器の伝熱特性の影響」日本冷凍協会論文集第7巻、第1号、65−73頁、1990年等を参照)により、その能力を解析・評価することができる。汎用の数値ケミカルプロセスシミュレーターは多種多様な成分の熱力学物性のデータベースを内蔵し、さまざまなシステムの機械工学的機能に対応した化学成分相互の平衡熱力学計算を行う。
【0018】
数値シミュレーションでは、冷媒が循環する圧縮器、循環器、膨張弁、蒸発器を構成するシステムを各々数値化し、圧縮器出力圧(P1)、凝縮器出力温度(T2)、蒸発器温度(T3)及びジメチルエーテル/COモル濃度をパラメーターとし、給湯能力を成績係数(COP)として評価する。
【0019】
給湯の成績係数=冷媒の凝縮器での総排熱量÷圧縮器動力量
【0020】
また、本発明においては、好ましくは、冷媒の熱力学物性値推定式として、溶解に関しては正則溶解モデル、状態方程式に関してはSPK(Soave−Redlich−Kwong)の式をそれぞれ適用してより高精度の評価をすることができる。
【0021】
本発明の冷媒組成物は、エコキュートのネーミングで知られる既存の二酸化炭素ヒートポンプ給湯機にそのまま使用することが基本的に可能である。しかしながら、本発明の冷媒組成物の物性を考慮して、凝縮器やピストン等の機構面を本発明の冷媒組成物に適合させるように適宜改良・設計することができる。
【0022】
[実施例]
以下、実施例により本発明の内容を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何等限定されるものではない。
【0023】
ジメチルエーテル/二酸化炭素の溶解性試験
ジメチルエーテル(DME)と二酸化炭素(CO)混合系の溶解の程度を調べるため、及び後述する給湯システムにおける混合冷媒の成績係数を求めるために、DME/COの溶解性試験を行った。試験方法は以下の通りである。
(1)圧力容器(500mL)に300gのジメチルエーテルを封入し、封入後の重量を電子天秤で測定する。
(2)恒温槽に圧力容器を入れ、一定温度にする。
(3)ブースターポンプで一定圧力まで、二酸化炭素を注入する。
(4)充填した二酸化炭素は充填前後の重量から算出する(d=0.1g)。
【0024】
尚、充填時には、DME/COが十分に混合するように圧力容器を上下に振とうさせ、縦置きに静置して試験を行った。
【0025】
得られた結果を表1に示す。表1に示したとおり、CO及びDMEのK−volumeの値は、測定条件においてそれぞれ0.66<KDME<0.80及び2.59<KCO<3.42の範囲であり、DMEに二酸化炭素が良く溶解することが分かる。
【0026】
【表2】

【0027】
(第1実施例)
図1に示す給湯システムにおけるジメチルエーテルと二酸化炭素との混合冷媒の成績係数(COP)を求める。数値ケミカルプロセスシミュレーターを用いてシミュレーションを以下の手順で行った。
【0028】
シミュレーション手順
図1の給湯システムにおけるストリーム(1)〜(4)の状態量(体積、エンタルピー、エントロピー等)をシミュレーションにより決定し、次式の成績係数COPを求める。
【0029】
COP=H1/H2
H1:冷媒の凝縮器での総排熱量
H2:(4)から(1)に至る圧縮器の動力量
このとき、以下の条件設定をした。
(1)CO単独冷媒
T2=15℃
P1=9.2MPa
P3=3.2MPa
(2)CO/DME混合冷媒
CO/DME混合冷媒の給湯能力を評価するために、圧縮器の吐出圧力、蒸気圧力、CO/DME混合比を変動パラメーターとして計算を行う。
【0030】
P1=9.2〜2.0MPa
P3=0.5〜3.2MPa
DME/CO混合比(0%、30%、50%、70%、90%:モル分率)
冷媒蒸発温度1℃前後
【0031】
DME+CO混合系の気液平衡物性値の推算
シミュレーション・スタディーにおいては、採用する物性推算モデルの精度が重要なファクターであり、その検討を以下のとおり行った。
【0032】
一般に、気液平衡関係は次式で表される。
【0033】
【数1】

【0034】
ここで、検討すべきは次の3点である。
(1)DMEに対するγ(0)モデル
(2)DMEとCOの相対的揮発性の程度
(3)エンタルピー及びエントロピーモデル
【0035】
DMEは含酸素低分子化合物であるが、その代表例であるエタノールの沸点は78℃に対して、DMEの沸点は−25℃であることから、アルコール、アルデヒド、ケトン基等のように強い極性を持たないことが分かる。従って、DMEのγ(0)に対しては正則溶解モデルが適用できる。
【0036】
前記で得たDME/COの溶解性試験データ(表1)から、CO及びDMEのK−volumeの値は、測定条件においてそれぞれ0.66<KDME<0.80及び2.59<KCO<3.42の範囲にあり、DMEとCOの揮発性にはそれほど大きな差がないことが分かる。これにより、f(0)に対しては、蒸気圧モデルが適用できる。
【0037】
また、エンタルピー及びエントロピーに対しては、DME+CO系の想定される最高使用圧力は10MPa程度であることからSPK(Soave−Redlich−Kwong)の状態方程式を採用することが適切である。
【0038】
【数2】

【0039】
尚、系の圧力がある程度高圧(数MPa)になるとPoynting Factorも無視できなくなるので、この点も考慮することとした。
【0040】
プログラム
次のA、B2種類のプログラムを使用した。
(1)DME CO
与えられた組成、T(温度)、P(圧力)のもとでのフラッシュ計算。
【0041】
与えられた組成及びP1(圧縮器圧力)のもとでバブルポイント(Bubble Point)を計算した。
【0042】
これらにより、気液平衡物性値推算モデルの精度の確認及び凝縮器における全凝縮が可能か否かの目処をつけることができる。
(2)DME CO
【0043】
以上説明したシミュレーターを用いて、二酸化炭素単独、ジメチルエーテルと二酸化炭素を含む冷媒組成物、比較としてR22、ジメチルエーテル単独、二酸化炭素単独についてCOPを以下のように得た。
【0044】
[比較例1]
図1のシステムにおいて、吐出圧力=9.2MPa、凝縮器出口温度=15℃、蒸発圧力=3.2MPaでの、二酸化炭素100モル%のCOPは3.44であり、その場合の吐出温度は116℃、T3/T4蒸発温度は1.2℃/1.2℃である。このサイクルシステムにおいて、吐出圧力から蒸発圧力に至る圧力は、超臨界圧力から遷臨界圧力下で作動させたものである。
【実施例1】
【0045】
同一システムにおいて、吐出圧力=2MPa、凝縮器出口温度=15℃、蒸発圧力=0.55MPaでの、二酸化炭素30モル%、ジメチルエーテル70モル%を含む冷媒組成物のCOPは4.20である。その場合の吐出温度は111℃、T3/T4蒸発温度は−12.8℃/11.6℃である。
【実施例2】
【0046】
同一システムにおいて、吐出圧力=2.5MPa、凝縮器出口温度=15℃、蒸発圧力=0.8MPaでの、二酸化炭素50モル%、ジメチルエーテル50モル%を含む冷媒組成物のCOPは4.28である。その場合の吐出温度は111℃、T3/T4蒸発温度は−18.0℃/13.6℃である。
【実施例3】
【0047】
同一システムにおいて、吐出圧力=3.5MPa、凝縮器出口温度=15℃、蒸発圧力=1.3MPaでの、二酸化炭素70モル%、ジメチルエーテル30モル%を含む冷媒組成物のCOPは4.36である。その場合の吐出温度は110℃、T3/T4蒸発温度は−16.8℃/14.8℃である。
【実施例4】
【0048】
同一システムにおいて、吐出圧力=6MPa、凝縮器出口温度=15℃、蒸発圧力=2.3MPaでの、二酸化炭素90モル%、ジメチルエーテル10モル%を含む冷媒組成物のCOPは3.90である。その場合の吐出温度は110℃、T3/T4蒸発温度は−9.5℃/8.4℃である。このサイクルシステムにおいて、吐出圧力から蒸発圧力に至る圧力は超臨界圧力から遷臨界下で作動させたものである。
【0049】
各実施例で得られたCOP、膨張弁出口温度、蒸発器出口温度及び圧縮器吐出温度を表2に示す。表2から明らかな通り、実施例1〜4において、二酸化炭素単独より高いCOPが得られ、且つ二酸化炭素単独に比べて非常に低い吐出圧で給湯システムを作動させることができる。
【0050】
【表3】

【0051】
上記の結果から、本発明の冷媒組成物は、凝縮器出口温度が15℃以下で作動するシステムにおいては、家庭用の給湯/暖房用冷媒、産業用・工業用空調(ヒートポンプ)・冷凍機用冷媒として、また、ヒートアイランド現象を緩和する地中熱を利用したヒートポンプ用冷媒としての利用が見込まれる。
【0052】
(第2実施例)
次に、本願発明のジメチルエーテル/二酸化炭素混合冷媒組成物が、実際の給湯・暖房システムにおいてどのような挙動を示すかを調べる実験を行った。本実験に用いた装置の概略を図3に示す。この冷媒サイクル実験装置の基本的な構成は、凝縮器の後に冷媒の温度を調整するための過冷却器を備えている以外は、図1に示した給湯システムと同様であり、蒸発器、凝縮器、膨張弁及び圧縮器からなる。凝縮器・蒸発器内部での熱交換は二重管の内管(冷媒通路)と外管(水/ブライン通路)の間で行われる。凝縮器と圧縮器の長さは3.6mであり、30cmの間隔で熱交換水の温度を測定し、60cmの間隔で冷媒温度を測定するように構成されている。また、圧縮器の動力源として、R410用のモータ(500W)を用い、その回転数は69Hzとした。
【0053】
実験条件は、以下の通りである。
凝縮器の熱源水 入口温度:約16℃、出口温度:約46℃
流量:10.7×10−3kg/秒
蒸発器の熱源水 入口温度:約6℃、出口温度:約−6℃
【0054】
上記装置と実験条件を用いて、ジメチルエーテル/二酸化炭素=74/26(モル%)の混合冷媒について冷媒特性を調べた。その結果、凝縮器での熱源水の被加熱量(即ち、冷媒の凝縮器での総排熱量)は1350Wであり、圧縮器の電気入力量(動力量)は382Wであった。これらの測定値からCOPは3.53と計算される。また、圧縮器冷媒温度(吐出温度)は93.4℃で、冷媒の蒸発器入口温度/出口温度は−11.7℃/−1.0℃であった。従って、本実験により、本発明のジメチルエーテル/二酸化炭素混合冷媒は、実際の冷媒サイクルにおいても有効な給湯能力を有することが示された。
【0055】
また、混合冷媒について第1実施例におけるシミュレーションを行ったところ、吐出圧力=1.5MPaでのCOPは3.2で、吐出温度は110℃、T3/T4蒸発温度は−11.7℃/−0.7℃であった。
【0056】
上記で得られたジメチルエーテル/二酸化炭素=74/26(モル%)の冷媒サイクル実験装置による実験値とシミュレーションの値を表3に示す。表3から明らかなように、実験値とシミュレーション値は非常によく対応している。従って、第1実施例で行ったシミュレーションによる結果は、実際の冷媒サイクル装置において示される冷媒能力を精度よく再現するものといえる。
【0057】
【表4】

【0058】
(第3実施例)
可燃性評価試験
本発明の冷媒組成物について、日本エアゾール協会の火炎長テストに準じた可燃性評価を行った。試験方法は以下の通りである。
試料温度:24℃〜26℃。
試料ブロアーの噴射口を点火バーナーより15cmの位置に置く。
バーナーの火炎の長さを4.5cm〜5.5cmに調整する。
噴射ボタンを押して一番良く噴射する状態で噴射し、3秒後の火炎の突端と末端を鉛直に下ろして火炎の水平距離を火炎長として測定する。
【0059】
評価基準は以下の通りである。
×:火炎長が20cm以上(可燃)
○:火炎長が20cm未満(微燃)
◎:火炎が認められない(不燃)
ブロー初期:内容物を20%まで噴射
ブロー中期:内容物を50%まで噴射
ブロー終期:内容物を80%まで噴射
【0060】
表4の試料No.1〜5について可燃性評価試験を行い、結果を表5に示す。
【0061】
【表5】

【0062】
【表6】

【0063】
上記の結果から明らかなとおり、二酸化炭素にジメチルエーテルを80モル%まで混合しても不燃又は難燃化することが可能であることが分かる。
【0064】
(第4実施例)
冷媒組成物の他の物性
本発明の冷媒組成物、ジメチルエーテル単独、二酸化炭素単独及びR22について測定した他の冷媒物性を表6に示す。ここで、飽和液体密度、蒸発潜熱、気体熱伝導率、液体粘性及び気体粘性は冷凍機の作動時での物性値である。
【0065】
表6から明らかなとおり、本発明の冷媒組成物は、蒸発潜熱、気体熱伝導率、気体粘性等においてR22と大きな差がない。
【0066】
【表7】

【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】給湯システムの模式図。
【図2】DME CO B ブログラムフロー。
【図3】DME/CO混合冷媒サイクルの実験装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジメチルエーテルと二酸化炭素の総モル数を基準として、ジメチルエーテルを10〜80モル%、二酸化炭素を90〜20モル%含有することを特徴とする給湯/暖房用冷媒組成物。
【請求項2】
ジメチルエーテルを30モル%〜70モル%、二酸化炭素を70〜30モル%含有することを特徴とする請求項1に記載の冷媒組成物。
【請求項3】
ジメチルエーテルと二酸化炭素の総モル数を基準として、ジメチルエーテルを10〜80モル%、二酸化炭素を90〜20モル%含有する冷媒組成物を給湯/暖房機に使用する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−22305(P2006−22305A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−55957(P2005−55957)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(591090736)石油資源開発株式会社 (70)
【出願人】(000187149)昭和炭酸株式会社 (60)
【出願人】(397066627)エヌ・ケイ・ケイ株式会社 (18)
【出願人】(504217203)