ジメチルエーテルのカルボニル化のためのプロセス
実質的に無水条件下、250℃を上回り350℃までの範囲における温度にて、および10bargを上回り100bargまでの範囲における圧力にて、ゼオライト触媒の存在下で、一酸化炭素でジメチルエーテル供給原料をカルボニル化することによる酢酸メチルの生成。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライト触媒の存在下、ジメチルエーテルと、一酸化炭素とを反応することにより酢酸メチルを調製するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
酢酸メチルは、石油化学プロセスにおいて、特に酢酸および/または酢酸無水物の生産のための供給原料として、工業的に使用される。
【0003】
酢酸の商業的生産は、カルボニル化反応が、ロジウムまたはイリジウムのような第VIII族貴金属、およびヨウ化メチルのようなヨウ化アルキルにより触媒される、均一な液相プロセスとして操作される。このプロセスの主な欠点は、腐食問題を導き得るヨウ素の使用、ならびに生成物および触媒成分の単相からの分離と関連される困難性である。これらの欠点の両方は、ヨウ素非含有の固体触媒を使用する不均一な気相プロセスが開発され得る場合、克服され得る。
【0004】
欧州特許出願公開第0 596 632号明細書は、メタノールのカルボニル化のための蒸気相プロセスを記載し、高温および高圧にて、改質されたモルデン沸石触媒の存在下、酢酸を生成する。
【0005】
国際公開第01/07393号パンフレットは、一酸化炭素および水素を含む原料の触媒的変換のためのプロセスを記載し、少なくとも1つのアルコール、エーテル、およびそれらの混合物を生成し、そして固形超酸、ヘテロポリ酸、クレイ、ゼオライト、および分子ふるいから選択される触媒の存在下、ハロゲン化物助触媒の不在下、少なくとも1つのエステル、酸、酸無水物、およびそれらの混合物を生成するのに十分な温度および圧力の条件下で、一酸化炭素と、少なくとも1つのアルコール、エーテル、およびそれらの混合物とを反応した。しかし、カルボニル化反応を触媒するためのゼオライトの使用は、例示されていない。
【0006】
国際公開第2005/105720号パンフレットは、ハロゲンの実質的な不在下、改質モルデン沸石触媒の存在下、250〜600℃の範囲における温度および10〜200barの範囲における圧力にて、一酸化炭素で脂肪族アルコールまたはその反応性誘導体をカルボニル化することによる、カルボン酸および/もしくはエステルまたはそれらの無水物の生成のためのプロセスを記載する。原料としてのジメチルエーテルの使用は、例示されていない。
【0007】
国際公開第2006/121778号パンフレットは、モルデン沸石またはフェリエ沸石触媒の存在下、一酸化炭素で低級アルキルエーテルを、実質的に無水条件下でカルボニル化することによる、低級脂肪族カルボン酸の低級アルキルエステルの生成のためのプロセスを記載する。この特許出願によれば、カルボニル化プロセスは、副産物の形成を最小にするために、250℃またはそれを下回る温度、好ましくは約150〜約180℃にて行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0 596 632号明細書
【特許文献2】国際公開第01/07393号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2005/105720号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2006/121778号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の先行技術を考慮して、カルボニル化可能な反応物を供給原料として使用する他のプロセスよりも優れた、実質的に無水条件下で、ゼオライト触媒を使用する、ジメチルエーテルからの酢酸メチルの生成のための、不均一な気相プロセスについての必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
カルボニル化プロセスが250℃を上回り350℃までの範囲における温度にて、および10bargよりも大きい圧力にて行われる場合、改善された生産性および/または選択性が達成され得ることが今や見出された。
【0011】
従って、本発明は、酢酸メチルの生成のためのプロセスを提供し、このプロセスは、実質的に無水条件下、当該カルボニル化に有効なゼオライト触媒の存在下において、一酸化炭素でジメチルエーテル供給原料をカルボニル化する工程を包含し、ここで当該カルボニル化は、250℃を上回り350℃までの範囲における温度にて、および10bargを上回り100bargまでの範囲における圧力にて行われる。
【0012】
本発明は、高温および高圧にてプロセスを操作することにより上記で規定される問題を解決して、良好な選択性および/または生産性を酢酸メチル生成物に与える。このことが高温および高圧にて達成され得るというこの知見は、上記の国際公開第2006/121778号パンフレットにおいて記載される研究から、ジメチルエーテルのゼオライトで触媒されるカルボニル化の反応温度を上昇する効果は、酢酸メチル形成速度およびそれに対する選択性を有意に減少するにすぎないことが予期されたので、驚くべきことである。さらに、ゼオライト触媒の存在下でのメタノールのカルボニル化は一般に、250℃を上回る反応温度を必要とし、従って、メタノールのカルボニル化と同じ反応条件下でのジメチルエーテルのカルボニル化により達成される生産性および/または反応性は、劣ることが予測され得た。
【0013】
本発明のプロセスにおいて供給原料として使用されるジメチルエーテルは、実質的に純粋なジメチルエーテルであり得る。商業的な実施において、ジメチルエーテルは、メタノール合成およびメタノール脱水の触媒上での合成ガス(水素および一酸化炭素の混合物)の触媒的な変換によって生成される。この触媒的な変換は、優先的にジメチルエーテルである生成物を生じるが、これはまたある程度のメタノールを含み得る。本発明のプロセスにおいて、ジメチルエーテル供給原料は、少量のメタノールを含み得るが、但し、供給原料に存在するメタノールの量は、酢酸メチル生成物へのジメチルエーテルのカルボニル化を阻害するほど多くはない。ジメチルエーテル供給原料中の5重量%未満、例えば1重量%未満のメタノールは、許容され得ることが見出されている。
【0014】
適切には、ジメチルエーテルは、総供給原料(再利用も含む)に基づいて0.1モル%〜20モル%、例えば、1モル%〜20モル%、例えば、1.5〜10モル%、例えば、1.5〜5モル%の範囲における濃度にて、供給原料に存在する。
【0015】
一酸化炭素は、実質的に純粋な一酸化炭素、例えば、工業用気体の供給元により典型的に提供される一酸化炭素であり得るか、またはこれは酢酸メチルへのジメチルエーテルの変換を妨げない、窒素、ヘリウム、アルゴン、メタン、および/または二酸化炭素のような不純物を含み得る。
【0016】
一酸化炭素供給原料は、水素を含み得る。水素と一酸化炭素との混合物は、炭化水素の水蒸気改質により、および炭化水素の部分酸化により商業的に生産される。このような混合物は、合成ガスと一般に言及される。合成ガスは、主に一酸化炭素および水素を含むが、より少量の二酸化炭素をまた含み得る。
【0017】
適切には、一酸化炭素:水素のモル比は、1:3〜15:1、例えば、1:1〜10:1、例えば、1:1〜4:1の範囲にあり得る。
【0018】
一酸化炭素対ジメチルエーテルのモル比は、適切には、1:1〜99:1、例えば、2:1〜60:1の範囲にある。
【0019】
ゼオライト触媒は、一酸化炭素でのジメチルエーテルのカルボニル化を触媒して酢酸メチルを生成するのに有効である任意のゼオライトであり得る。
【0020】
ゼオライトは、一般にゼオライトのNa、NH4形態、またはH−形態において、市販の供給元から入手可能である。NH4形態は、高温度での焼成のような公知の技術により酸(H−形態)に変換され得る。Na形態は、硝酸アンモニウムのようなアンモニウム塩でのイオン交換によりNH4形態に先ず変換することにより、酸(H−形態)に変換され得る。あるいは、ゼオライトは、公知の技術を使用して合成され得る。
【0021】
ゼオライトは、他のチャネル系、またはサイド−ポケットもしくはケージのような空洞と相互接続され得るチャネルの系を含む。環構造は、一般に12員環、10員環、または8員環である。ゼオライトは、異なる大きさの環を保有し得る。本発明における使用のためのゼオライトは好ましくは、8員環によって規定される少なくとも1つのチャネルを含む。最も好ましくは、8員環チャネルは、10および/または12員を備える環により規定される少なくとも1つのチャネルと相互接続される。チャネル系のウィンドウサイズは、反応物のジメチルエーテルおよび一酸化炭素分子がゼオライト骨格の内部および外部を自由に拡散し得るようにあるべきである。適切には、8員環チャネルのウィンドウサイズは、少なくとも2.5×3.6オングストロームであり得る。The Atlas of Zeolite Framework Types(C.Baerlocher、W.M.Meier,D.H. Olson、第5版、Elsevier、Amsterdam、2001)は、ウェブベース版(http://www.iza−structure.org/databases/)と合わせて、ゼオライトに存在する環構造の型および各環型により規定されるチャネルの大きさを含む、ゼオライト骨格についての位相的および構造的な詳細の概論である。本発明の使用に適切なゼオライトの例としては、骨格型、MOR、例えば、モルデン沸石、FER、例えば、フェリエ沸石、OFF、例えば、オフレット沸石、およびGME、例えば、グメリン沸石が挙げられる。
【0022】
本発明のプロセスについて、ゼオライトは、少なくとも5の、しかし好ましくは100未満の、または100に等しい、例えば、7〜40、例えば、10〜30の範囲にある、シリカ:アルミナ比率を有する。アルミニウム原子が、ガリウムのような骨格修飾元素により置換されている場合、シリカ:X2O3の比率(ここでXは、アルミニウム、ガリウム、鉄、および/またはホウ素のような三価元素である)は、少なくとも5、および好ましくは100未満または100に等しい、例えば、7〜40、例えば、10〜30の範囲にあることが好ましい。
【0023】
本発明の1つの実施態様において、ゼオライト触媒はモルデン沸石ゼオライトである。モルデン沸石は、酸形態(H−モルデン沸石)において用いられ得るか、またはこれは必要に応じてイオン交換され得るか、またはそうでなければ、銅、銀、ニッケル、イリジウム、ロジウム、白金、パラジウム、もしくはコバルトのような1つ以上の金属を負荷され得る。
【0024】
モルデン沸石ゼオライトに対する金属負荷は、金属の部分負荷の観点から、モルデン沸石中のアルミニウムのグラム原子当たりの金属のグラム原子として、表され得る。金属負荷はまた、以下の関係を通して、モルデン沸石中のアルミニウムに対するモル百分率負荷として表され得る:
モル%金属=(グラム原子 金属/グラム原子 アルミニウム)×100
従って、例えば、モルデン沸石中のアルミニウム当たりの銅の0.55グラム原子の負荷は、モルデン沸石中のアルミニウムに対する銅の55モル%負荷に同等である。
【0025】
適切には、金属負荷は、アルミニウムに対して1〜200モル%、例えば、50〜120モル%、例えば、50〜110モル%、または55〜120%、例えば、55〜110%の範囲にあり得る。
【0026】
モルデン沸石の骨格は、シリコンおよびアルミニウム原子に加えて、ホウ素、ガリウム、および/または鉄のようなさらなる三価元素を含み得る。
【0027】
モルデン沸石が少なくとも1つ以上の三価骨格を含む場合、モルデン沸石中の金属負荷は、金属の部分負荷の観点から、モルデン沸石中の総三価元素のグラム原子当たりの金属のグラム原子として、表され得る。金属負荷はまた、以下の関係を通して、モルデン沸石中の総三価元素に対するモル百分率負荷として表され得る:
モル%金属=(グラム原子 金属/総三価原子のグラム原子)×100
【0028】
カルボニル化反応は、実質的に水の不在下で行われるべきであるので、ゼオライト触媒は使用の前に乾燥されることが好ましい。ゼオライトは、例えば、400〜500℃の温度に加熱することにより乾燥され得る。
【0029】
ゼオライト触媒は、使用の直前に、上昇された温度にて、少なくとも1時間、流動する窒素、一酸化炭素、水素、またはそれらの混合物の下、ゼオライトを加熱することにより活性化されることが好ましい。
【0030】
プロセスは、実質的に無水条件下で、すなわち実質的に水の不在下で、行われる。酢酸メチルへの、ジメチルエーテルのカルボニル化は、その場で水を生じない。水は、酢酸メチルを形成するためのジメチルエーテルのカルボニル化を、阻害することが見出されている。従って、本発明のプロセスは、水は可能な限り低く維持される。このことを達成するために、ジメチルエーテルおよび一酸化炭素反応物(および触媒)は好ましくは、プロセスへの導入の前に乾燥される。しかし、酢酸メチルの形成を有害に影響しない少量の水は、許容され得る。適切には、2.5重量%未満、例えば、0.5重量%未満の水が、ジメチルエーテル供給原料に存在し得る。
【0031】
本発明のプロセスは、250℃を上回り350℃までの範囲における温度にて、および10bargを上回り100bargまでの範囲における圧力にて行われる。適切には、温度は、275〜350℃、例えば、300℃〜350℃、または275〜325℃の範囲にあり得る。
【0032】
適切には、圧力は、10bargを上回り80bargまで、例えば、10bargを上回り50bargまで、15〜80barg、15〜50barg、30〜80barg、および30〜100barg、例えば50barg〜100bargの範囲にあり得る。
【0033】
適切には、プロセスは、275〜350℃、例えば、300〜350℃の範囲の温度にて、および10bargを上回り100bargまでの、例えば、10bargを上回り80bargまでの、例えば、15〜50barg、および30〜80bargの圧力にて行われ得る。
【0034】
気体空間速度(Gas Hourly Space Velocity(GHSV))は、適切には、500〜40,000h−1、例えば、1000〜20,000h−1、例えば、2000〜20,000h−1の範囲にある。
【0035】
本発明のプロセスは、適切には、ジメチルエーテル蒸気および一酸化炭素ガスを、必要とされる温度および圧力にて維持されるゼオライトの固定床または流動床を通過することにより行われる。
【0036】
好ましくは、本発明のプロセスは、実質的に、ヨウ素のようなハロゲン化物の不在下で行われる。「実質的に」の用語により、ハロゲン化物、例えば、ヨウ素の、反応ガス(ジメチルエーテルおよび一酸化炭素)の含量は、500ppm未満、好ましくは100ppm未満である。
【0037】
プロセスの一次産物は酢酸メチルであるが、少量の酢酸がまた生成され得る。本発明のプロセスにより生成される酢酸メチルは、蒸気の形態において取り出され得、そしてその後液体に濃縮される。
【0038】
酢酸メチルは回収され得、そしてそのまま販売され得るか、またはこれは他の化学プロセスに進められ得る。酢酸メチルがカルボニル化反応産物から回収される場合、そのいくつかまたは全ては、加水分解されて酢酸を形成し得る。あるいは、全カルボニル化反応産物が、加水分解段階に通され得、そして酢酸はその後に分離され得る。加水分解は、酸触媒の存在下での反応性蒸留のような公知の技術により行われ得る。
【0039】
プロセスは、連続プロセス、またはバッチプロセスのいずれかとして、好ましくは連続プロセスとして操作され得る。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】ジメチルエーテルのカルボニル化反応の生産性を示す。
【図2】ジメチルエーテルのカルボニル化反応の選択性を示す。
【図3】ジメチルエーテルのカルボニル化反応の生産性を示す。
【図4】ジメチルエーテルのカルボニル化反応の選択性を示す。
【図5】ジメチルエーテルのカルボニル化反応の生産性を示す。
【図6】ジメチルエーテルのカルボニル化反応の選択性を示す。
【図7】メタノールのカルボニル化反応の生産性を示す。
【図8】メタノールのカルボニル化反応の選択性を示す。
【図9】ジメチルエーテルのカルボニル化反応とメタノールのカルボニル化反応についての達成された生産性を示す。
【図10】ジメチルエーテルのカルボニル化反応とメタノールのカルボニル化反応についての選択性を示す。
【図11】ジメチルエーテルのカルボニル化反応についての生産性の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、以下の実施例を参照して今や説明される。
【実施例】
【0042】
触媒調製
触媒A−H−モルデン沸石
20のシリカ対アルミニウム比率を備えるH−モルデン沸石(H−MOR)(例えばSued−Chemie)を、静的雰囲気下、マッフルオーブン(オーブン容量=18L)中で焼成した。温度を、5℃/分のランプ速度にて室温から500℃に上昇させ、次いでこの温度にて24時間保持した。次いでモルデン沸石を、Specac Pressを使用して33mm金型装置中で12メートルトンにて圧縮し、次いで212〜335ミクロンの粒径画分にふるい分けした。
【0043】
触媒B−Cu−モルデン沸石−Cu(55)−MOR
20のシリカ対アルミニウム比率を備えるH−モルデン沸石(40g)(例えばSued−Chemie)を、6.43gの硝酸銅(II)2.5水和物(98% ACS)および攪拌棒とともに、500mLの丸底フラスコに秤量した。次いで、厚いスラリーが得られるまで、十分な脱イオン化水(約100mL)をフラスコに添加した。次いで、フラスコの上部を緩く覆い、そしてフラスコを一晩攪拌し続けた。次いでゼオライトを、回転式エバポレーターを使用して減圧下で乾燥した後、100℃にて12時間、オーブン中で乾燥した。次いで、ゼオライトを、静的雰囲気下、マッフルオーブン(オーブン容量18L)中で焼成した。温度を、5℃/分のランプ速度にて室温から500℃に上昇させ、次いでこの温度にて24時間保持した。次いでゼオライトを、Specac Pressを使用して33mm金型装置中で12メートルトンにて圧縮し、次いで212〜335ミクロンの粒径画分にふるい分けした。ゼオライトは、モルデン沸石中に含有されるAlに対して55モル%のCu負荷を有した。
【0044】
触媒C−Ag−モルデン沸石−Ag(55)−MOR
このゼオライトを、硝酸銀(99+% ACS)(50gモルデン沸石について7.16g)を硝酸銅(II)2.5水和物(98% ACS)の代わりに使用した以外は、調製Bについてと同じ方法において調製した。これは、アルミニウムに対して55モル%のAg負荷を有するモルデン沸石を生じた。
【0045】
触媒D−Ag−モルデン沸石−Ag(70)−MOR
このゼオライトを、硝酸銀(99+% ACS)(10gモルデン沸石について1.82g)を硝酸銅(II)2.5水和物(98% ACS)の代わりに使用した以外は、調製Bについてと同じ方法において調製した。これは、アルミニウムに対して70モル%のAg負荷を有するモルデン沸石を生じた。
【0046】
実施例1−ジメチルエーテルのカルボニル化
ジメチルエーテルを、温度220〜350℃の範囲にて、圧力10〜50bargの範囲にて、ゼオライト触媒A〜Cの存在下で、一酸化炭素でカルボニル化した。実験を、例えば、国際公開第2006/107187号パンフレットにおいて記載されるタイプの60個の同一の平行な等温並流管状反応器からなる圧力流動反応器装置において行った。反応器を、15反応器の4ブロックに配置し、各ブロックは独立した温度制御を有した。各管中に、50、100、または200マイクロリットルのゼオライト触媒(それぞれ、4000、2000、および1000h−1に対応するGHSVを与えるように設計された)を、20マイクロメートルの孔径を有する金属焼成物上に負荷した。全てのゼオライト触媒サンプルを、5℃/分のランプ速度にて、98.6モル%N2および1.4モル%He下、大気圧にて、3.4ml/分の流動速度で、100℃に加熱し、そしてこの温度にて1時間保持した。次いで、反応器を10bargに加圧し、そして系をこの条件にて1時間保持した。次いで、気体供給原料を、63.1モル%一酸化炭素、15.8モル%水素、19.7モル%窒素、および1.4モル%Heからなる混合物に、3.4ml/分の気体流動速度にて交換し、そして系を3℃/分のランプ速度にて300℃の温度に加熱した。次いで、系をこの条件にて3時間保持した。ブロック1〜4の温度を、それぞれ、220、250、300、および350℃に調節した後、系を10分間、安定化させた。この時点で、触媒活性化は完成したと考慮し、そして気体供給原料を、63.1モル%一酸化炭素、15.8モル%水素、14.8モル%窒素、1.4モル%He、および4.9モル%ジメチルエーテルを含む混合物に、3.4ml/分の気体流動速度にて交換した。反応を上述の条件下で約78.6時間継続させ、次いで圧力を10から30bargに増加し、そして系を30分間安定化させた。これらの条件を約28時間維持し、次いで圧力を30bargから50bargに増加した。系を再度、30分間安定化させ、次いでこれらの条件にてさらに28時間維持した。反応器からの出口流を、2つのガスクロマトグラフに通過させた。これらのうちの一方は、それぞれ熱伝導検出器を備えた3つのカラム(分子ふるい5A、Porapak(登録商標)Q、およびCP−Wax−52)を備えるVarian 4900マイクロGCであった。他方は、それぞれフレームイオン化検出器を備えた2つのカラム(CP−Sil 5およびCP−Wax52)を備えるInterscience Trace GCであった。10bargの結果を作製するために50.1と78.6時間との間で;30bargの結果を作製するために78.6と107.1時間との間で、および50bargの結果を作製するために107.1と135.6時間との間で、データを平均した。
【0047】
ジメチルエーテルのカルボニル化反応の生産性および選択性の結果が、図1〜6において示される。生産性、STYアセチルは、AcOHの生成についてのSTY+MeOAcの生成についてのSTYにMWAcOH/MWMeOAcを乗じたものとして規定される。選択性は、([MeOAc]out+[AcOH]out)/([DME]in−[DME]out−0.5*[MeOH]out−0.5*[MeOAc]out)*100に基づいて算定された。
【0048】
図1は、反応温度220、250、300、および350℃のそれぞれについて、50bargの反応圧力にて達成された生産性を描く。図2は、反応温度220、250、300、および350℃のそれぞれについて、50bargの反応圧力にて達成された、カルボニル化生成物、酢酸メチル、および酢酸に対する選択性を描く。図3は、反応温度220、250、300、および350℃のそれぞれについて、30bargの反応圧力にて達成された生産性を描く。図4は、反応温度220、250、300、および350℃のそれぞれについて、30bargの反応圧力にて達成された、カルボニル化生成物、酢酸メチル、および酢酸に対する選択性を描く。図5および図6は、10barg、30barg、または50barg、および300℃の温度にて操作することにより達成された生産性および選択性をそれぞれ描く。
【0049】
図1〜4から見られ得るように、250℃を上回る温度にて、および10bargを上回る圧力にて、無水ジメチルエーテルのカルボニル化プロセスを操作することにより、優れた生産性および選択性が達成される。
【0050】
実験A−メタノールのカルボニル化
メタノールを、ゼオライト触媒A〜Dの存在下、一酸化炭素でカルボニル化した。実験を、例えば、国際公開第2006/107187号パンフレットにおいて記載されるタイプの60個の同一の平行な等温並流管状反応器からなる圧力流動反応器装置において行った。反応器を、15反応器の4ブロックに配置し、各ブロックは独立した温度制御を有した。各管中に、25、50、または100マイクロリットルのゼオライト触媒(それぞれ、4000、2000、および1000h−1に対応するGHSVを与えるように設計された)を、20マイクロメートルの孔径を有する金属焼成物上に負荷した。全ての触媒サンプルを、5℃/分のランプ速度にて、98.8モル%N2および1.2モル%He下、大気圧にて、3.4ml/分の流動速度で、100℃に加熱し、そしてこの温度にて1時間保持した。次いで、反応器を、所望の圧力(30barg、50barg、または80barg)に加圧し、そして系を所望の圧力にて1時間保持した。次いで、気体供給原料を、63.2モル%一酸化炭素、15.8モル%水素、19.8モル%窒素、および1.2モル%Heからなる混合物に、3.33ml/分の気体流動速度にて交換し、そして系を3℃/分のランプ速度にて300℃の温度に加熱した。次いで、系をこの条件にて3時間保持した。この後、ブロック1〜4の温度を、それぞれ、275、300、325、および350℃に調節し、そして系を10分間、安定化させた。この時点で、触媒活性化は完成したと考慮し、そして気体供給原料を、63.2モル%一酸化炭素、15.8モル%水素、9.9モル%窒素、1.2モル%He、および9.9モル%メタノールを含む混合物に、3.4ml/分の気体流動速度にて交換した。メタノールを各反応器の入口に液体として供給し、ここでこれを上述の気体供給原料組成を与えるようにエバポレートした。反応を、上述の条件下で、少なくとも56.5時間継続させた。反応器からの出口流を、2つのガスクロマトグラフに通過させた。これらのうちの一方は、それぞれ熱伝導検出器を備えた3つのカラム(分子ふるい5A、Porapak(登録商標)Q、およびCP−Wax−52)を備えるVarian 4900マイクロGCであった。他方は、それぞれフレームイオン化検出器を備えた2つのカラム(CP−Sil 5およびCP−Wax52)を備えるInterscience Trace GCであった。実行データのそれぞれを、約27.8と56.3時間との間の28.5時間にわたって平均した。
【0051】
325℃での、および10barg、30barg、および50bargの圧力でのカルボニル化の生産性および選択性の結果が、図7および8において与えられる。生産性、STYアセチルは、AcOHの生成についてのSTY+MeOAcの生成についてのSTYにMWAcOH/MWMeOAcを乗じたものとして規定される。選択性は、([MeOAc]out+[AcOH]out)/([MeOH]in−[MeOH]out−(2*[Me2O]out)−[MeOAc]out)*100として算定された。
【0052】
図7および8から、メタノールのカルボニル化反応についての生産性および選択性は、圧力の上昇とともに減少することが見られ得る。このことは、図5および6において示される、圧力の上昇とともに増加するジメチルエーテル反応についての生産性および選択性と正反対である。
【0053】
実施例2−ジメチルエーテルのカルボニル化
実施例1を、25、50、100マイクロリットルの触媒A〜Dを使用して、反応器(それぞれ、8000、4000、および2000hr−1に対応するGHSVを与えるように設計された)において反復した。反応器を30bargに加圧し、そしてブロック1〜4の温度を、それぞれ、275、300、325、および350℃に調節した。反応を、93時間、3.4ml/分の気体流動速度にて、63.1モル%一酸化炭素、15.8モル%水素、14.8モル%窒素、1.4モル%ヘリウム、および4.9モル%ジメチルエーテルの供給ガス構成で行った。図9および10は、達成された生産性および選択性をそれぞれ描く。
【0054】
実験B−メタノールのカルボニル化
実験Aを、30bargの圧力を使用して、および3.4mol/分の気体流動速度にて63.25モル%一酸化炭素、15.8モル%水素、14.8モル%窒素、1.2モル%ヘリウム、および4.95モル%メタノールの反応供給ガス組成で、反復した。反応を約92時間継続させた。生産性および選択性データを65.5から92.1時間までの期間にわたって平均した。図9および10は、達成された生産性および選択性をそれぞれ示す。
【0055】
ゼオライト触媒の存在下でのメタノールのカルボニル化は、受容される反応速度を達成するために250℃を上回る温度を必要とする。これは、ゼオライト触媒の存在下でのジメチルエーテルのカルボニル化は、反対の、すなわち250℃を下回る反応温度を必要とする見解であった。しかし、図9および10は明らかに、高温および高圧の両方にて、ゼオライトで触媒されるジメチルエーテルのカルボニル化を操作することにより、高い生産性および選択性が達成されるのみでなく、これらの生産性および選択性は、同じ反応条件下で同じ触媒を用いるメタノールのカルボニル化において得られる生産性および選択性よりも優れることを実証する。
【0056】
実施例3
触媒調製
触媒E−H−フェリエ沸石
55のシリカ対アルミナ比率を備えるNH4−フェリエ沸石(例えば、Zeolyst)を、静的雰囲気下、マッフルオーブン中で焼成した。温度を、5℃/分のランプ速度にて室温から110℃に上昇させ、この温度にて2時間保持した。次いで、温度を、5℃/分のランプ速度にて450℃に上昇させ、そしてこの温度にて12時間保持した。次いでH−フェリエ沸石を、Specac Pressを使用して33mm金型装置中で12メートルトンにて圧縮し、次いで212〜335ミクロンの粒径画分にふるい分けした。
【0057】
触媒F−Cu−オフレット沸石−Cu(55)−オフレット沸石
10のシリカ対アルミナ比率を備える、0.3gのNH4−オフレット沸石(例えばSintef)に、1mlの水当たり0.3グラムの硝酸銅(II)2.5水和物(98% ACS)を含有する430マイクロリットルの溶液を添加した。さらなる水(約700マイクロリットルまで添加される溶液の総量をなすため)を同時に添加し、そして得られるスラリーを回転式ベンチ上で少なくとも1時間攪拌して、完全な混合を確実にした。次いでゼオライトを、50℃にて少なくとも16時間、次いで110℃にて4時間乾燥した後、静的雰囲気下、マッフルオーブン中で焼成した。焼成のための温度は、2℃/分の速度にて、室温から500℃に上昇させ、次いでこの温度にて2時間保持した。次いでCuが負荷されたオフレット沸石を、Specac Pressを使用して33mm金型装置中で12メートルトンにて圧縮し、次いで破砕し、そして212〜335ミクロンの粒径画分にふるい分けした。Cu−オフレット沸石は、オフレット沸石中に含まれるAlに対して約55モル%のCu負荷を有した。
【0058】
ジメチルエーテルのカルボニル化
実施例1を、70bargの圧力にて、反応器(4000hr−1のGHSVを与えるように設計した)中で、50マイクロリットルの触媒EおよびFを使用して反復した。300℃にて3時間、反応器の温度を保持した後、温度を180℃に調節し、そして系を10分間安定化させた後、気体供給原料を、63.1モル%一酸化炭素、15.8モル%水素、14.8モル%窒素、1.4モル%ヘリウム、および4.9モル%ジメチルエーテルに、3.4ml/分の気体流動速度にて交換した。反応をこれらの条件下で32.2時間行わせた後、温度を300℃に上昇した。次いで、反応をさらに88時間継続させた。生産性の結果は図11において描かれる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライト触媒の存在下、ジメチルエーテルと、一酸化炭素とを反応することにより酢酸メチルを調製するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
酢酸メチルは、石油化学プロセスにおいて、特に酢酸および/または酢酸無水物の生産のための供給原料として、工業的に使用される。
【0003】
酢酸の商業的生産は、カルボニル化反応が、ロジウムまたはイリジウムのような第VIII族貴金属、およびヨウ化メチルのようなヨウ化アルキルにより触媒される、均一な液相プロセスとして操作される。このプロセスの主な欠点は、腐食問題を導き得るヨウ素の使用、ならびに生成物および触媒成分の単相からの分離と関連される困難性である。これらの欠点の両方は、ヨウ素非含有の固体触媒を使用する不均一な気相プロセスが開発され得る場合、克服され得る。
【0004】
欧州特許出願公開第0 596 632号明細書は、メタノールのカルボニル化のための蒸気相プロセスを記載し、高温および高圧にて、改質されたモルデン沸石触媒の存在下、酢酸を生成する。
【0005】
国際公開第01/07393号パンフレットは、一酸化炭素および水素を含む原料の触媒的変換のためのプロセスを記載し、少なくとも1つのアルコール、エーテル、およびそれらの混合物を生成し、そして固形超酸、ヘテロポリ酸、クレイ、ゼオライト、および分子ふるいから選択される触媒の存在下、ハロゲン化物助触媒の不在下、少なくとも1つのエステル、酸、酸無水物、およびそれらの混合物を生成するのに十分な温度および圧力の条件下で、一酸化炭素と、少なくとも1つのアルコール、エーテル、およびそれらの混合物とを反応した。しかし、カルボニル化反応を触媒するためのゼオライトの使用は、例示されていない。
【0006】
国際公開第2005/105720号パンフレットは、ハロゲンの実質的な不在下、改質モルデン沸石触媒の存在下、250〜600℃の範囲における温度および10〜200barの範囲における圧力にて、一酸化炭素で脂肪族アルコールまたはその反応性誘導体をカルボニル化することによる、カルボン酸および/もしくはエステルまたはそれらの無水物の生成のためのプロセスを記載する。原料としてのジメチルエーテルの使用は、例示されていない。
【0007】
国際公開第2006/121778号パンフレットは、モルデン沸石またはフェリエ沸石触媒の存在下、一酸化炭素で低級アルキルエーテルを、実質的に無水条件下でカルボニル化することによる、低級脂肪族カルボン酸の低級アルキルエステルの生成のためのプロセスを記載する。この特許出願によれば、カルボニル化プロセスは、副産物の形成を最小にするために、250℃またはそれを下回る温度、好ましくは約150〜約180℃にて行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0 596 632号明細書
【特許文献2】国際公開第01/07393号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2005/105720号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2006/121778号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の先行技術を考慮して、カルボニル化可能な反応物を供給原料として使用する他のプロセスよりも優れた、実質的に無水条件下で、ゼオライト触媒を使用する、ジメチルエーテルからの酢酸メチルの生成のための、不均一な気相プロセスについての必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
カルボニル化プロセスが250℃を上回り350℃までの範囲における温度にて、および10bargよりも大きい圧力にて行われる場合、改善された生産性および/または選択性が達成され得ることが今や見出された。
【0011】
従って、本発明は、酢酸メチルの生成のためのプロセスを提供し、このプロセスは、実質的に無水条件下、当該カルボニル化に有効なゼオライト触媒の存在下において、一酸化炭素でジメチルエーテル供給原料をカルボニル化する工程を包含し、ここで当該カルボニル化は、250℃を上回り350℃までの範囲における温度にて、および10bargを上回り100bargまでの範囲における圧力にて行われる。
【0012】
本発明は、高温および高圧にてプロセスを操作することにより上記で規定される問題を解決して、良好な選択性および/または生産性を酢酸メチル生成物に与える。このことが高温および高圧にて達成され得るというこの知見は、上記の国際公開第2006/121778号パンフレットにおいて記載される研究から、ジメチルエーテルのゼオライトで触媒されるカルボニル化の反応温度を上昇する効果は、酢酸メチル形成速度およびそれに対する選択性を有意に減少するにすぎないことが予期されたので、驚くべきことである。さらに、ゼオライト触媒の存在下でのメタノールのカルボニル化は一般に、250℃を上回る反応温度を必要とし、従って、メタノールのカルボニル化と同じ反応条件下でのジメチルエーテルのカルボニル化により達成される生産性および/または反応性は、劣ることが予測され得た。
【0013】
本発明のプロセスにおいて供給原料として使用されるジメチルエーテルは、実質的に純粋なジメチルエーテルであり得る。商業的な実施において、ジメチルエーテルは、メタノール合成およびメタノール脱水の触媒上での合成ガス(水素および一酸化炭素の混合物)の触媒的な変換によって生成される。この触媒的な変換は、優先的にジメチルエーテルである生成物を生じるが、これはまたある程度のメタノールを含み得る。本発明のプロセスにおいて、ジメチルエーテル供給原料は、少量のメタノールを含み得るが、但し、供給原料に存在するメタノールの量は、酢酸メチル生成物へのジメチルエーテルのカルボニル化を阻害するほど多くはない。ジメチルエーテル供給原料中の5重量%未満、例えば1重量%未満のメタノールは、許容され得ることが見出されている。
【0014】
適切には、ジメチルエーテルは、総供給原料(再利用も含む)に基づいて0.1モル%〜20モル%、例えば、1モル%〜20モル%、例えば、1.5〜10モル%、例えば、1.5〜5モル%の範囲における濃度にて、供給原料に存在する。
【0015】
一酸化炭素は、実質的に純粋な一酸化炭素、例えば、工業用気体の供給元により典型的に提供される一酸化炭素であり得るか、またはこれは酢酸メチルへのジメチルエーテルの変換を妨げない、窒素、ヘリウム、アルゴン、メタン、および/または二酸化炭素のような不純物を含み得る。
【0016】
一酸化炭素供給原料は、水素を含み得る。水素と一酸化炭素との混合物は、炭化水素の水蒸気改質により、および炭化水素の部分酸化により商業的に生産される。このような混合物は、合成ガスと一般に言及される。合成ガスは、主に一酸化炭素および水素を含むが、より少量の二酸化炭素をまた含み得る。
【0017】
適切には、一酸化炭素:水素のモル比は、1:3〜15:1、例えば、1:1〜10:1、例えば、1:1〜4:1の範囲にあり得る。
【0018】
一酸化炭素対ジメチルエーテルのモル比は、適切には、1:1〜99:1、例えば、2:1〜60:1の範囲にある。
【0019】
ゼオライト触媒は、一酸化炭素でのジメチルエーテルのカルボニル化を触媒して酢酸メチルを生成するのに有効である任意のゼオライトであり得る。
【0020】
ゼオライトは、一般にゼオライトのNa、NH4形態、またはH−形態において、市販の供給元から入手可能である。NH4形態は、高温度での焼成のような公知の技術により酸(H−形態)に変換され得る。Na形態は、硝酸アンモニウムのようなアンモニウム塩でのイオン交換によりNH4形態に先ず変換することにより、酸(H−形態)に変換され得る。あるいは、ゼオライトは、公知の技術を使用して合成され得る。
【0021】
ゼオライトは、他のチャネル系、またはサイド−ポケットもしくはケージのような空洞と相互接続され得るチャネルの系を含む。環構造は、一般に12員環、10員環、または8員環である。ゼオライトは、異なる大きさの環を保有し得る。本発明における使用のためのゼオライトは好ましくは、8員環によって規定される少なくとも1つのチャネルを含む。最も好ましくは、8員環チャネルは、10および/または12員を備える環により規定される少なくとも1つのチャネルと相互接続される。チャネル系のウィンドウサイズは、反応物のジメチルエーテルおよび一酸化炭素分子がゼオライト骨格の内部および外部を自由に拡散し得るようにあるべきである。適切には、8員環チャネルのウィンドウサイズは、少なくとも2.5×3.6オングストロームであり得る。The Atlas of Zeolite Framework Types(C.Baerlocher、W.M.Meier,D.H. Olson、第5版、Elsevier、Amsterdam、2001)は、ウェブベース版(http://www.iza−structure.org/databases/)と合わせて、ゼオライトに存在する環構造の型および各環型により規定されるチャネルの大きさを含む、ゼオライト骨格についての位相的および構造的な詳細の概論である。本発明の使用に適切なゼオライトの例としては、骨格型、MOR、例えば、モルデン沸石、FER、例えば、フェリエ沸石、OFF、例えば、オフレット沸石、およびGME、例えば、グメリン沸石が挙げられる。
【0022】
本発明のプロセスについて、ゼオライトは、少なくとも5の、しかし好ましくは100未満の、または100に等しい、例えば、7〜40、例えば、10〜30の範囲にある、シリカ:アルミナ比率を有する。アルミニウム原子が、ガリウムのような骨格修飾元素により置換されている場合、シリカ:X2O3の比率(ここでXは、アルミニウム、ガリウム、鉄、および/またはホウ素のような三価元素である)は、少なくとも5、および好ましくは100未満または100に等しい、例えば、7〜40、例えば、10〜30の範囲にあることが好ましい。
【0023】
本発明の1つの実施態様において、ゼオライト触媒はモルデン沸石ゼオライトである。モルデン沸石は、酸形態(H−モルデン沸石)において用いられ得るか、またはこれは必要に応じてイオン交換され得るか、またはそうでなければ、銅、銀、ニッケル、イリジウム、ロジウム、白金、パラジウム、もしくはコバルトのような1つ以上の金属を負荷され得る。
【0024】
モルデン沸石ゼオライトに対する金属負荷は、金属の部分負荷の観点から、モルデン沸石中のアルミニウムのグラム原子当たりの金属のグラム原子として、表され得る。金属負荷はまた、以下の関係を通して、モルデン沸石中のアルミニウムに対するモル百分率負荷として表され得る:
モル%金属=(グラム原子 金属/グラム原子 アルミニウム)×100
従って、例えば、モルデン沸石中のアルミニウム当たりの銅の0.55グラム原子の負荷は、モルデン沸石中のアルミニウムに対する銅の55モル%負荷に同等である。
【0025】
適切には、金属負荷は、アルミニウムに対して1〜200モル%、例えば、50〜120モル%、例えば、50〜110モル%、または55〜120%、例えば、55〜110%の範囲にあり得る。
【0026】
モルデン沸石の骨格は、シリコンおよびアルミニウム原子に加えて、ホウ素、ガリウム、および/または鉄のようなさらなる三価元素を含み得る。
【0027】
モルデン沸石が少なくとも1つ以上の三価骨格を含む場合、モルデン沸石中の金属負荷は、金属の部分負荷の観点から、モルデン沸石中の総三価元素のグラム原子当たりの金属のグラム原子として、表され得る。金属負荷はまた、以下の関係を通して、モルデン沸石中の総三価元素に対するモル百分率負荷として表され得る:
モル%金属=(グラム原子 金属/総三価原子のグラム原子)×100
【0028】
カルボニル化反応は、実質的に水の不在下で行われるべきであるので、ゼオライト触媒は使用の前に乾燥されることが好ましい。ゼオライトは、例えば、400〜500℃の温度に加熱することにより乾燥され得る。
【0029】
ゼオライト触媒は、使用の直前に、上昇された温度にて、少なくとも1時間、流動する窒素、一酸化炭素、水素、またはそれらの混合物の下、ゼオライトを加熱することにより活性化されることが好ましい。
【0030】
プロセスは、実質的に無水条件下で、すなわち実質的に水の不在下で、行われる。酢酸メチルへの、ジメチルエーテルのカルボニル化は、その場で水を生じない。水は、酢酸メチルを形成するためのジメチルエーテルのカルボニル化を、阻害することが見出されている。従って、本発明のプロセスは、水は可能な限り低く維持される。このことを達成するために、ジメチルエーテルおよび一酸化炭素反応物(および触媒)は好ましくは、プロセスへの導入の前に乾燥される。しかし、酢酸メチルの形成を有害に影響しない少量の水は、許容され得る。適切には、2.5重量%未満、例えば、0.5重量%未満の水が、ジメチルエーテル供給原料に存在し得る。
【0031】
本発明のプロセスは、250℃を上回り350℃までの範囲における温度にて、および10bargを上回り100bargまでの範囲における圧力にて行われる。適切には、温度は、275〜350℃、例えば、300℃〜350℃、または275〜325℃の範囲にあり得る。
【0032】
適切には、圧力は、10bargを上回り80bargまで、例えば、10bargを上回り50bargまで、15〜80barg、15〜50barg、30〜80barg、および30〜100barg、例えば50barg〜100bargの範囲にあり得る。
【0033】
適切には、プロセスは、275〜350℃、例えば、300〜350℃の範囲の温度にて、および10bargを上回り100bargまでの、例えば、10bargを上回り80bargまでの、例えば、15〜50barg、および30〜80bargの圧力にて行われ得る。
【0034】
気体空間速度(Gas Hourly Space Velocity(GHSV))は、適切には、500〜40,000h−1、例えば、1000〜20,000h−1、例えば、2000〜20,000h−1の範囲にある。
【0035】
本発明のプロセスは、適切には、ジメチルエーテル蒸気および一酸化炭素ガスを、必要とされる温度および圧力にて維持されるゼオライトの固定床または流動床を通過することにより行われる。
【0036】
好ましくは、本発明のプロセスは、実質的に、ヨウ素のようなハロゲン化物の不在下で行われる。「実質的に」の用語により、ハロゲン化物、例えば、ヨウ素の、反応ガス(ジメチルエーテルおよび一酸化炭素)の含量は、500ppm未満、好ましくは100ppm未満である。
【0037】
プロセスの一次産物は酢酸メチルであるが、少量の酢酸がまた生成され得る。本発明のプロセスにより生成される酢酸メチルは、蒸気の形態において取り出され得、そしてその後液体に濃縮される。
【0038】
酢酸メチルは回収され得、そしてそのまま販売され得るか、またはこれは他の化学プロセスに進められ得る。酢酸メチルがカルボニル化反応産物から回収される場合、そのいくつかまたは全ては、加水分解されて酢酸を形成し得る。あるいは、全カルボニル化反応産物が、加水分解段階に通され得、そして酢酸はその後に分離され得る。加水分解は、酸触媒の存在下での反応性蒸留のような公知の技術により行われ得る。
【0039】
プロセスは、連続プロセス、またはバッチプロセスのいずれかとして、好ましくは連続プロセスとして操作され得る。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】ジメチルエーテルのカルボニル化反応の生産性を示す。
【図2】ジメチルエーテルのカルボニル化反応の選択性を示す。
【図3】ジメチルエーテルのカルボニル化反応の生産性を示す。
【図4】ジメチルエーテルのカルボニル化反応の選択性を示す。
【図5】ジメチルエーテルのカルボニル化反応の生産性を示す。
【図6】ジメチルエーテルのカルボニル化反応の選択性を示す。
【図7】メタノールのカルボニル化反応の生産性を示す。
【図8】メタノールのカルボニル化反応の選択性を示す。
【図9】ジメチルエーテルのカルボニル化反応とメタノールのカルボニル化反応についての達成された生産性を示す。
【図10】ジメチルエーテルのカルボニル化反応とメタノールのカルボニル化反応についての選択性を示す。
【図11】ジメチルエーテルのカルボニル化反応についての生産性の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、以下の実施例を参照して今や説明される。
【実施例】
【0042】
触媒調製
触媒A−H−モルデン沸石
20のシリカ対アルミニウム比率を備えるH−モルデン沸石(H−MOR)(例えばSued−Chemie)を、静的雰囲気下、マッフルオーブン(オーブン容量=18L)中で焼成した。温度を、5℃/分のランプ速度にて室温から500℃に上昇させ、次いでこの温度にて24時間保持した。次いでモルデン沸石を、Specac Pressを使用して33mm金型装置中で12メートルトンにて圧縮し、次いで212〜335ミクロンの粒径画分にふるい分けした。
【0043】
触媒B−Cu−モルデン沸石−Cu(55)−MOR
20のシリカ対アルミニウム比率を備えるH−モルデン沸石(40g)(例えばSued−Chemie)を、6.43gの硝酸銅(II)2.5水和物(98% ACS)および攪拌棒とともに、500mLの丸底フラスコに秤量した。次いで、厚いスラリーが得られるまで、十分な脱イオン化水(約100mL)をフラスコに添加した。次いで、フラスコの上部を緩く覆い、そしてフラスコを一晩攪拌し続けた。次いでゼオライトを、回転式エバポレーターを使用して減圧下で乾燥した後、100℃にて12時間、オーブン中で乾燥した。次いで、ゼオライトを、静的雰囲気下、マッフルオーブン(オーブン容量18L)中で焼成した。温度を、5℃/分のランプ速度にて室温から500℃に上昇させ、次いでこの温度にて24時間保持した。次いでゼオライトを、Specac Pressを使用して33mm金型装置中で12メートルトンにて圧縮し、次いで212〜335ミクロンの粒径画分にふるい分けした。ゼオライトは、モルデン沸石中に含有されるAlに対して55モル%のCu負荷を有した。
【0044】
触媒C−Ag−モルデン沸石−Ag(55)−MOR
このゼオライトを、硝酸銀(99+% ACS)(50gモルデン沸石について7.16g)を硝酸銅(II)2.5水和物(98% ACS)の代わりに使用した以外は、調製Bについてと同じ方法において調製した。これは、アルミニウムに対して55モル%のAg負荷を有するモルデン沸石を生じた。
【0045】
触媒D−Ag−モルデン沸石−Ag(70)−MOR
このゼオライトを、硝酸銀(99+% ACS)(10gモルデン沸石について1.82g)を硝酸銅(II)2.5水和物(98% ACS)の代わりに使用した以外は、調製Bについてと同じ方法において調製した。これは、アルミニウムに対して70モル%のAg負荷を有するモルデン沸石を生じた。
【0046】
実施例1−ジメチルエーテルのカルボニル化
ジメチルエーテルを、温度220〜350℃の範囲にて、圧力10〜50bargの範囲にて、ゼオライト触媒A〜Cの存在下で、一酸化炭素でカルボニル化した。実験を、例えば、国際公開第2006/107187号パンフレットにおいて記載されるタイプの60個の同一の平行な等温並流管状反応器からなる圧力流動反応器装置において行った。反応器を、15反応器の4ブロックに配置し、各ブロックは独立した温度制御を有した。各管中に、50、100、または200マイクロリットルのゼオライト触媒(それぞれ、4000、2000、および1000h−1に対応するGHSVを与えるように設計された)を、20マイクロメートルの孔径を有する金属焼成物上に負荷した。全てのゼオライト触媒サンプルを、5℃/分のランプ速度にて、98.6モル%N2および1.4モル%He下、大気圧にて、3.4ml/分の流動速度で、100℃に加熱し、そしてこの温度にて1時間保持した。次いで、反応器を10bargに加圧し、そして系をこの条件にて1時間保持した。次いで、気体供給原料を、63.1モル%一酸化炭素、15.8モル%水素、19.7モル%窒素、および1.4モル%Heからなる混合物に、3.4ml/分の気体流動速度にて交換し、そして系を3℃/分のランプ速度にて300℃の温度に加熱した。次いで、系をこの条件にて3時間保持した。ブロック1〜4の温度を、それぞれ、220、250、300、および350℃に調節した後、系を10分間、安定化させた。この時点で、触媒活性化は完成したと考慮し、そして気体供給原料を、63.1モル%一酸化炭素、15.8モル%水素、14.8モル%窒素、1.4モル%He、および4.9モル%ジメチルエーテルを含む混合物に、3.4ml/分の気体流動速度にて交換した。反応を上述の条件下で約78.6時間継続させ、次いで圧力を10から30bargに増加し、そして系を30分間安定化させた。これらの条件を約28時間維持し、次いで圧力を30bargから50bargに増加した。系を再度、30分間安定化させ、次いでこれらの条件にてさらに28時間維持した。反応器からの出口流を、2つのガスクロマトグラフに通過させた。これらのうちの一方は、それぞれ熱伝導検出器を備えた3つのカラム(分子ふるい5A、Porapak(登録商標)Q、およびCP−Wax−52)を備えるVarian 4900マイクロGCであった。他方は、それぞれフレームイオン化検出器を備えた2つのカラム(CP−Sil 5およびCP−Wax52)を備えるInterscience Trace GCであった。10bargの結果を作製するために50.1と78.6時間との間で;30bargの結果を作製するために78.6と107.1時間との間で、および50bargの結果を作製するために107.1と135.6時間との間で、データを平均した。
【0047】
ジメチルエーテルのカルボニル化反応の生産性および選択性の結果が、図1〜6において示される。生産性、STYアセチルは、AcOHの生成についてのSTY+MeOAcの生成についてのSTYにMWAcOH/MWMeOAcを乗じたものとして規定される。選択性は、([MeOAc]out+[AcOH]out)/([DME]in−[DME]out−0.5*[MeOH]out−0.5*[MeOAc]out)*100に基づいて算定された。
【0048】
図1は、反応温度220、250、300、および350℃のそれぞれについて、50bargの反応圧力にて達成された生産性を描く。図2は、反応温度220、250、300、および350℃のそれぞれについて、50bargの反応圧力にて達成された、カルボニル化生成物、酢酸メチル、および酢酸に対する選択性を描く。図3は、反応温度220、250、300、および350℃のそれぞれについて、30bargの反応圧力にて達成された生産性を描く。図4は、反応温度220、250、300、および350℃のそれぞれについて、30bargの反応圧力にて達成された、カルボニル化生成物、酢酸メチル、および酢酸に対する選択性を描く。図5および図6は、10barg、30barg、または50barg、および300℃の温度にて操作することにより達成された生産性および選択性をそれぞれ描く。
【0049】
図1〜4から見られ得るように、250℃を上回る温度にて、および10bargを上回る圧力にて、無水ジメチルエーテルのカルボニル化プロセスを操作することにより、優れた生産性および選択性が達成される。
【0050】
実験A−メタノールのカルボニル化
メタノールを、ゼオライト触媒A〜Dの存在下、一酸化炭素でカルボニル化した。実験を、例えば、国際公開第2006/107187号パンフレットにおいて記載されるタイプの60個の同一の平行な等温並流管状反応器からなる圧力流動反応器装置において行った。反応器を、15反応器の4ブロックに配置し、各ブロックは独立した温度制御を有した。各管中に、25、50、または100マイクロリットルのゼオライト触媒(それぞれ、4000、2000、および1000h−1に対応するGHSVを与えるように設計された)を、20マイクロメートルの孔径を有する金属焼成物上に負荷した。全ての触媒サンプルを、5℃/分のランプ速度にて、98.8モル%N2および1.2モル%He下、大気圧にて、3.4ml/分の流動速度で、100℃に加熱し、そしてこの温度にて1時間保持した。次いで、反応器を、所望の圧力(30barg、50barg、または80barg)に加圧し、そして系を所望の圧力にて1時間保持した。次いで、気体供給原料を、63.2モル%一酸化炭素、15.8モル%水素、19.8モル%窒素、および1.2モル%Heからなる混合物に、3.33ml/分の気体流動速度にて交換し、そして系を3℃/分のランプ速度にて300℃の温度に加熱した。次いで、系をこの条件にて3時間保持した。この後、ブロック1〜4の温度を、それぞれ、275、300、325、および350℃に調節し、そして系を10分間、安定化させた。この時点で、触媒活性化は完成したと考慮し、そして気体供給原料を、63.2モル%一酸化炭素、15.8モル%水素、9.9モル%窒素、1.2モル%He、および9.9モル%メタノールを含む混合物に、3.4ml/分の気体流動速度にて交換した。メタノールを各反応器の入口に液体として供給し、ここでこれを上述の気体供給原料組成を与えるようにエバポレートした。反応を、上述の条件下で、少なくとも56.5時間継続させた。反応器からの出口流を、2つのガスクロマトグラフに通過させた。これらのうちの一方は、それぞれ熱伝導検出器を備えた3つのカラム(分子ふるい5A、Porapak(登録商標)Q、およびCP−Wax−52)を備えるVarian 4900マイクロGCであった。他方は、それぞれフレームイオン化検出器を備えた2つのカラム(CP−Sil 5およびCP−Wax52)を備えるInterscience Trace GCであった。実行データのそれぞれを、約27.8と56.3時間との間の28.5時間にわたって平均した。
【0051】
325℃での、および10barg、30barg、および50bargの圧力でのカルボニル化の生産性および選択性の結果が、図7および8において与えられる。生産性、STYアセチルは、AcOHの生成についてのSTY+MeOAcの生成についてのSTYにMWAcOH/MWMeOAcを乗じたものとして規定される。選択性は、([MeOAc]out+[AcOH]out)/([MeOH]in−[MeOH]out−(2*[Me2O]out)−[MeOAc]out)*100として算定された。
【0052】
図7および8から、メタノールのカルボニル化反応についての生産性および選択性は、圧力の上昇とともに減少することが見られ得る。このことは、図5および6において示される、圧力の上昇とともに増加するジメチルエーテル反応についての生産性および選択性と正反対である。
【0053】
実施例2−ジメチルエーテルのカルボニル化
実施例1を、25、50、100マイクロリットルの触媒A〜Dを使用して、反応器(それぞれ、8000、4000、および2000hr−1に対応するGHSVを与えるように設計された)において反復した。反応器を30bargに加圧し、そしてブロック1〜4の温度を、それぞれ、275、300、325、および350℃に調節した。反応を、93時間、3.4ml/分の気体流動速度にて、63.1モル%一酸化炭素、15.8モル%水素、14.8モル%窒素、1.4モル%ヘリウム、および4.9モル%ジメチルエーテルの供給ガス構成で行った。図9および10は、達成された生産性および選択性をそれぞれ描く。
【0054】
実験B−メタノールのカルボニル化
実験Aを、30bargの圧力を使用して、および3.4mol/分の気体流動速度にて63.25モル%一酸化炭素、15.8モル%水素、14.8モル%窒素、1.2モル%ヘリウム、および4.95モル%メタノールの反応供給ガス組成で、反復した。反応を約92時間継続させた。生産性および選択性データを65.5から92.1時間までの期間にわたって平均した。図9および10は、達成された生産性および選択性をそれぞれ示す。
【0055】
ゼオライト触媒の存在下でのメタノールのカルボニル化は、受容される反応速度を達成するために250℃を上回る温度を必要とする。これは、ゼオライト触媒の存在下でのジメチルエーテルのカルボニル化は、反対の、すなわち250℃を下回る反応温度を必要とする見解であった。しかし、図9および10は明らかに、高温および高圧の両方にて、ゼオライトで触媒されるジメチルエーテルのカルボニル化を操作することにより、高い生産性および選択性が達成されるのみでなく、これらの生産性および選択性は、同じ反応条件下で同じ触媒を用いるメタノールのカルボニル化において得られる生産性および選択性よりも優れることを実証する。
【0056】
実施例3
触媒調製
触媒E−H−フェリエ沸石
55のシリカ対アルミナ比率を備えるNH4−フェリエ沸石(例えば、Zeolyst)を、静的雰囲気下、マッフルオーブン中で焼成した。温度を、5℃/分のランプ速度にて室温から110℃に上昇させ、この温度にて2時間保持した。次いで、温度を、5℃/分のランプ速度にて450℃に上昇させ、そしてこの温度にて12時間保持した。次いでH−フェリエ沸石を、Specac Pressを使用して33mm金型装置中で12メートルトンにて圧縮し、次いで212〜335ミクロンの粒径画分にふるい分けした。
【0057】
触媒F−Cu−オフレット沸石−Cu(55)−オフレット沸石
10のシリカ対アルミナ比率を備える、0.3gのNH4−オフレット沸石(例えばSintef)に、1mlの水当たり0.3グラムの硝酸銅(II)2.5水和物(98% ACS)を含有する430マイクロリットルの溶液を添加した。さらなる水(約700マイクロリットルまで添加される溶液の総量をなすため)を同時に添加し、そして得られるスラリーを回転式ベンチ上で少なくとも1時間攪拌して、完全な混合を確実にした。次いでゼオライトを、50℃にて少なくとも16時間、次いで110℃にて4時間乾燥した後、静的雰囲気下、マッフルオーブン中で焼成した。焼成のための温度は、2℃/分の速度にて、室温から500℃に上昇させ、次いでこの温度にて2時間保持した。次いでCuが負荷されたオフレット沸石を、Specac Pressを使用して33mm金型装置中で12メートルトンにて圧縮し、次いで破砕し、そして212〜335ミクロンの粒径画分にふるい分けした。Cu−オフレット沸石は、オフレット沸石中に含まれるAlに対して約55モル%のCu負荷を有した。
【0058】
ジメチルエーテルのカルボニル化
実施例1を、70bargの圧力にて、反応器(4000hr−1のGHSVを与えるように設計した)中で、50マイクロリットルの触媒EおよびFを使用して反復した。300℃にて3時間、反応器の温度を保持した後、温度を180℃に調節し、そして系を10分間安定化させた後、気体供給原料を、63.1モル%一酸化炭素、15.8モル%水素、14.8モル%窒素、1.4モル%ヘリウム、および4.9モル%ジメチルエーテルに、3.4ml/分の気体流動速度にて交換した。反応をこれらの条件下で32.2時間行わせた後、温度を300℃に上昇した。次いで、反応をさらに88時間継続させた。生産性の結果は図11において描かれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸メチルの生成のためのプロセスであって、プロセスは、実質的に無水条件下、該カルボニル化に有効なゼオライト触媒の存在下において、一酸化炭素でジメチルエーテル供給原料をカルボニル化する工程を包含し、ここで該カルボニル化は、250℃を上回り350℃までの範囲における温度にて、および10bargを上回り100bargまでの範囲における圧力にて行われるプロセス。
【請求項2】
温度が275〜350℃の範囲にある請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
温度が300〜350℃の範囲にある請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
圧力が10bargを上回り80bargまでの範囲にある請求項1〜3のいずれかに記載のプロセス。
【請求項5】
圧力が15〜80bargの範囲にある請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
圧力が30〜80bargの範囲にある請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
ジメチルエーテル供給原料が、メタノール合成およびメタノール脱水の触媒上での一酸化炭素と水素との混合物の触媒的な変換により得られる請求項1〜6のいずれかに記載のプロセス。
【請求項8】
ジメチルエーテル供給原料が、5重量%までの量におけるメタノールを含む請求項1〜7のいずれかに記載のプロセス。
【請求項9】
カルボニル化が、水素の存在下で行われる請求項1〜8のいずれかに記載のプロセス。
【請求項10】
ゼオライトが、8員環により規定される少なくとも1つのチャネルを含む請求項1〜9のいずれかに記載のプロセス。
【請求項11】
8員環チャネルが、10および/または12員を備える環により規定される少なくとも1つのチャネルと相互接続される請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
8員環チャネルが少なくとも2.5×3.6オングストロームのウィンドウサイズを有する請求項9または10に記載のプロセス。
【請求項13】
ゼオライトが、5〜100の範囲における、シリカ:X2O3比率を有し、Xは、少なくとも1つのアルミニウム、ガリウム、ホウ素、および鉄から選択される請求項1〜12のいずれかに記載のプロセス。
【請求項14】
ゼオライトがMOR、FER、OFF、およびGMEからなる群より選択される骨格型を有する請求項1〜13のいずれかに記載のプロセス。
【請求項15】
ゼオライトが、モルデン沸石、フェリエ沸石、オフレット沸石、およびグメリン沸石からなる群より選択される請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
モルデン沸石がH−モルデン沸石である請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
モルデン沸石が、イオン交換されるか、またはそうでなければ、銅、ニッケル、イリジウム、銀、ロジウム、白金、パラジウム、およびコバルトからなる群より選択される少なくとも1つの金属を負荷される請求項15に記載のプロセス。
【請求項18】
モルデン沸石が、イオン交換されるか、またはそうでなければ、銅、銀、およびそれらの混合物から選択される金属を負荷される請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
金属が、負荷時に、アルミニウムに対して1〜200モル%の範囲において、モルデン沸石に存在する請求項17または請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
金属の負荷が、アルミニウムに対して50〜120モル%の範囲にある請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
モルデン沸石の骨格が、ガリウム、鉄、またはそれらの混合物を含む請求項16〜20のいずれかに記載のプロセス。
【請求項22】
ジメチルエーテル、一酸化炭素、およびゼオライト触媒の総ハロゲン化物含量が、500ppm未満である請求項1〜21のいずれかに記載のプロセス。
【請求項23】
少なくともいくつかの酢酸メチル産物が酢酸に加水分解される請求項1〜22のいずれかに記載のプロセス。
【請求項24】
ジメチルエーテルが、総供給原料(再利用も含む)に基づいて0.1モル%〜20モル%の範囲における濃度にて、供給原料に存在する請求項1〜23のいずれかに記載のプロセス。
【請求項25】
カルボニル化が275℃〜350℃の範囲の温度にて、および10bargを上回り50bargまでにおける圧力にて、モルデン沸石ゼオライトの存在下で行われる請求項1に記載のプロセス。
【請求項1】
酢酸メチルの生成のためのプロセスであって、プロセスは、実質的に無水条件下、該カルボニル化に有効なゼオライト触媒の存在下において、一酸化炭素でジメチルエーテル供給原料をカルボニル化する工程を包含し、ここで該カルボニル化は、250℃を上回り350℃までの範囲における温度にて、および10bargを上回り100bargまでの範囲における圧力にて行われるプロセス。
【請求項2】
温度が275〜350℃の範囲にある請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
温度が300〜350℃の範囲にある請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
圧力が10bargを上回り80bargまでの範囲にある請求項1〜3のいずれかに記載のプロセス。
【請求項5】
圧力が15〜80bargの範囲にある請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
圧力が30〜80bargの範囲にある請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
ジメチルエーテル供給原料が、メタノール合成およびメタノール脱水の触媒上での一酸化炭素と水素との混合物の触媒的な変換により得られる請求項1〜6のいずれかに記載のプロセス。
【請求項8】
ジメチルエーテル供給原料が、5重量%までの量におけるメタノールを含む請求項1〜7のいずれかに記載のプロセス。
【請求項9】
カルボニル化が、水素の存在下で行われる請求項1〜8のいずれかに記載のプロセス。
【請求項10】
ゼオライトが、8員環により規定される少なくとも1つのチャネルを含む請求項1〜9のいずれかに記載のプロセス。
【請求項11】
8員環チャネルが、10および/または12員を備える環により規定される少なくとも1つのチャネルと相互接続される請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
8員環チャネルが少なくとも2.5×3.6オングストロームのウィンドウサイズを有する請求項9または10に記載のプロセス。
【請求項13】
ゼオライトが、5〜100の範囲における、シリカ:X2O3比率を有し、Xは、少なくとも1つのアルミニウム、ガリウム、ホウ素、および鉄から選択される請求項1〜12のいずれかに記載のプロセス。
【請求項14】
ゼオライトがMOR、FER、OFF、およびGMEからなる群より選択される骨格型を有する請求項1〜13のいずれかに記載のプロセス。
【請求項15】
ゼオライトが、モルデン沸石、フェリエ沸石、オフレット沸石、およびグメリン沸石からなる群より選択される請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
モルデン沸石がH−モルデン沸石である請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
モルデン沸石が、イオン交換されるか、またはそうでなければ、銅、ニッケル、イリジウム、銀、ロジウム、白金、パラジウム、およびコバルトからなる群より選択される少なくとも1つの金属を負荷される請求項15に記載のプロセス。
【請求項18】
モルデン沸石が、イオン交換されるか、またはそうでなければ、銅、銀、およびそれらの混合物から選択される金属を負荷される請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
金属が、負荷時に、アルミニウムに対して1〜200モル%の範囲において、モルデン沸石に存在する請求項17または請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
金属の負荷が、アルミニウムに対して50〜120モル%の範囲にある請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
モルデン沸石の骨格が、ガリウム、鉄、またはそれらの混合物を含む請求項16〜20のいずれかに記載のプロセス。
【請求項22】
ジメチルエーテル、一酸化炭素、およびゼオライト触媒の総ハロゲン化物含量が、500ppm未満である請求項1〜21のいずれかに記載のプロセス。
【請求項23】
少なくともいくつかの酢酸メチル産物が酢酸に加水分解される請求項1〜22のいずれかに記載のプロセス。
【請求項24】
ジメチルエーテルが、総供給原料(再利用も含む)に基づいて0.1モル%〜20モル%の範囲における濃度にて、供給原料に存在する請求項1〜23のいずれかに記載のプロセス。
【請求項25】
カルボニル化が275℃〜350℃の範囲の温度にて、および10bargを上回り50bargまでにおける圧力にて、モルデン沸石ゼオライトの存在下で行われる請求項1に記載のプロセス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2010−525045(P2010−525045A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504838(P2010−504838)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【国際出願番号】PCT/GB2008/001474
【国際公開番号】WO2008/132468
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(591001798)ビーピー ケミカルズ リミテッド (66)
【氏名又は名称原語表記】BP CHEMICALS LIMITED
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【国際出願番号】PCT/GB2008/001474
【国際公開番号】WO2008/132468
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(591001798)ビーピー ケミカルズ リミテッド (66)
【氏名又は名称原語表記】BP CHEMICALS LIMITED
【Fターム(参考)】
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