説明

ジメチルエーテル製造用触媒とその製造方法およびこれを用いたジメチルエーテルの製造方法

【課題】 高反応率および高選択率でメタノールからジメチルエーテルを製造でき、このような優れた触媒性能を長期間維持することができる触媒とその製造方法を提供する。
【解決手段】 SiO2/Al23モル比10〜1000のゼオライトを700〜1000℃で熱処理した熱処理ゼオライト0.1〜20重量部に、焼成した時にNa2O含有量0.1重量%以下を示す水酸化アルミニウムをアルミナ換算で100重量部混合して成形した後、焼成することにより、アルミナ100重量部に対して0.1〜20重量部のゼオライトを含み、SiO2/Al23モル比0.017〜0.3、Na2O含有量0.1重量%以下、アンモニア吸着酸量測定で400℃を超えて脱離するアンモニア量が50μmol/g以下であり、400℃以下で脱離するアンモニア量がその4倍以上である触媒を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジメチルエーテル製造用触媒とその製造方法およびこれを用いたジメチルエーテルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジメチルエーテルは、次世代合成クリーン燃料として需要が大いに期待されており、特にディーゼルエンジン用燃料として大量に利用されることが見込まれている。また、ジメチルエーテルは、燃料電池への応用も検討されており、水素へ転換する改質原料としても期待されている。そのため、ジメチルエーテルを効率的に製造する方法が求められており、それに用いる触媒の開発要請がある。
【0003】
ジメチルエーテルの製造方法としては、下式(1)
2CH3OH → CH3OCH3 + H2O (1)
に示すように、メタノールをアルミナ触媒存在下、脱水反応させる方法が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
さらに、ジメチルエーテルの収率向上を目指し、触媒として疎水性ゼオライトを用いて未精製メタノールからジメチルエーテルを製造する方法が提案されている(特許文献2参照)。なお、一般にジメチルエーテルの製造に用いられるゼオライトの最終焼成温度は通常500℃程度であり、該文献の実施例においても500℃であった。
【0005】
【特許文献1】特開昭59−16845号公報
【特許文献2】特開2004−189719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、充分なメタノール反応率が得られず、満足しうるレベルの収率には達していないのが現状であった。また、特許文献2の方法では、原料とするメタノールの水分量が少ない場合、メタノール反応率は高いものの、ジメチルエーテル選択率が非常に低くなり、収率が下がるという欠点があり、原料の選択や反応条件等が制限されることがあった。
【0007】
そこで、本発明者らは、先に、特定のゼオライトと特定のアルミナを混合することで、活性が高く選択率の優れたジメチルエーテルを製造する触媒を見出した(特願2006−208303号)。しかし、さらに検討を重ねた結果、該触媒は、加圧下で反応を行った場合、反応開始時には優れた活性を発揮して高反応率および高選択率を達成できるものの、長期間反応を継続すると徐々に触媒性能が低下することがわかった。
【0008】
そこで、本発明の課題は、高反応率および高選択率でメタノールからジメチルエーテルを製造でき、しかも、このような優れた触媒性能を長期間維持することができるジメチルエーテル製造用触媒とその製造方法および該触媒を用いたジメチルエーテルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、特定比率のアルミナとゼオライトとからなる混合触媒であって、SiO2/Al23モル比、Na2O含有量が特定範囲であるとともに、アンモニア吸着酸量測定において400℃を超えて脱離するアンモニア量および該アンモニア量と400℃以下で脱離するアンモニア量との割合が特定範囲である触媒であれば、メタノールからジメチルエーテルを製造するにあたり長期間にわたり高反応率かつ高選択率を達成できることを見出した。そして、前述したような各特性を有する触媒は、特定のゼオライトをあらかじめ特定温度で熱処理し、特定のアルミナと特定比率で混合した後、成形、焼成することにより、容易に得られることをも見出した。本発明は、これらの知見より完成したものである。
【0010】
すなわち、本発明のジメチルエーテル製造用触媒は、アルミナ100重量部に対して0.1〜20重量部のゼオライトが含有された成形体であり、SiO2/Al23モル比が0.017〜0.3であり、Na2O含有量が0.1重量%以下であり、アンモニア吸着酸量測定において、400℃以下で脱離するアンモニア量が400℃を超えて脱離するアンモニア量の4倍以上であり、400℃を超えて脱離するアンモニア量が50μmol/g以下である、ことを特徴とする。
【0011】
本発明のジメチルエーテル製造用触媒の製造方法は、SiO2/Al23モル比が10〜1000のゼオライトを700〜1000℃で熱処理して得られた熱処理ゼオライトと、焼成した時にNa2O含有量0.1重量%以下を示す水酸化アルミニウムとを、アルミナ換算で100重量部の水酸化アルミニウムに対して熱処理ゼオライト0.1〜20重量部の割合で混合して成形した後、焼成する、ことを特徴とする。
【0012】
本発明のジメチルエーテルの製造方法は、前記本発明のジメチルエーテル製造用触媒の存在下にメタノールを脱水反応させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高反応率および高選択率でメタノールからジメチルエーテルを製造することができ、しかも、このような優れた触媒性能を長時間維持することができる触媒を提供することができる。これにより、効率的に生産性よく安価にジメチルエーテルを製造することができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(ジメチルエーテル製造用触媒)
本発明のジメチルエーテル製造用触媒(以下、「本発明の触媒」と称することもある)は、アルミナとゼオライトとを主成分として含有する成形体である。具体的には、本発明の触媒では、アルミナ100重量部に対して0.1〜20重量部のゼオライトが含有されている。ゼオライトの含有量は、好ましくは、アルミナ100重量部に対して0.5〜18重量部であるのがよい。ゼオライトの含有量が前記範囲よりも少ないと、ゼオライトを含有させることによる直接的効果および相乗的効果が不充分で高活性が得られないこととなり、一方、多すぎると、活性は向上するものの、ジメチルエーテル選択率が低下し、結果として収率が下がることとなる。
【0015】
本発明の触媒においては、SiO2/Al23モル比が0.017〜0.3であることが重要である。好ましくは、触媒のSiO2/Al23モル比は0.020〜0.3であるのがよい。触媒のSiO2/Al23モル比が前記範囲を外れると、含有されるゼオライト分が少なくなりすぎるか、もしくは多くなりすぎるため、固体酸量が適当でなく、活性が低下するか、もしくは活性が強すぎて炭素析出が多くなり、活性の経時的維持率が低下する。
【0016】
本発明の触媒においては、Na2O含有量が0.1重量%以下である。好ましくは、触媒中のNa2O含有量は0.05重量%以下であるのがよい。触媒中のNa2O含有量が少ないほど、メタノールの脱水反応の反応率が向上する。
【0017】
なお、本発明の触媒においては、ナトリウム以外のアルカリ金属の含有量についても少ない方が好ましく、通常、K2O含有量は0.1重量%以下、Li2O含有量は0.01重量%以下であるのがよい。また、本発明の触媒は、イオウ、塩素、フッ素のような元素も少ない方が好ましく、その含有量はいずれも、通常0.5重量%以下であるのがよい。
【0018】
本発明の触媒は、アンモニア吸着酸量測定において、400℃以下で脱離するアンモニア量が400℃を超えて脱離するアンモニア量の4倍以上である。好ましくは、4.5倍以上であるのがよい。400℃以下で脱離するアンモニア量が400℃を超えて脱離するアンモニア量の4倍未満であると、触媒上での炭素析出が起こりやすくなり、触媒性能が経時的に劣化する。
【0019】
また、本発明の触媒は、アンモニア吸着酸量測定において、400℃を超えて脱離するアンモニア量が50μmol/g以下である。好ましくは、45μmol/g以下であるのがよい。400℃を超えて脱離するアンモニア量が50μmol/gを超えると、触媒性能が経時的に劣化する。
【0020】
なお、本発明において、アンモニア吸着酸量測定とは、触媒にアンモニアを吸着させた後、100℃から800℃まで昇温させたときに脱離するアンモニア量を測定するものである。触媒にアンモニアを吸着させる際には、例えば、真空下、300〜400℃で30分間〜2時間前処理した後、50〜100℃、圧力6.6〜26.3kPaの条件下で、15分間〜1時間、アンモニアガス気流下に曝すようにすればよい。昇温させたときに脱離するアンモニア量の測定は、例えば、ヘリウム等の不活性ガス気流中で行うことが好ましい。具体的には、後述する実施例に記載の方法により行うことができる。
【0021】
本発明の触媒においては、BET比表面積が100〜300m2/gであることが好ましい。触媒のBET比表面積が前記範囲よりも大きすぎると、メタノールの脱水反応で使用中に熱劣化を起こすおそれがあり、一方、小さすぎると、活性が低下する傾向がある。
【0022】
本発明の触媒は、通常、細孔を有するものであり、その細孔半径1.8nm〜100μmの細孔の累積容積が0.3cm3/g以上であることが好ましく、より好ましくは0.4cm3/g以上であるのがよい。細孔半径1.8nm〜100μmの細孔容積が大きいほど、脱水反応率が向上するからである。
【0023】
本発明の触媒に含まれるアルミナは、Al23・nH2O〔0≦n≦0.5〕で示されるものであればよく、例えば、通常、χ、η、γのような結晶相をもつ活性アルミナが挙げられる。本発明の触媒に含まれるアルミナは、高い脱水反応率を得られる点から、Na2O含有量が0.1重量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.05重量%以下であるのがよい。同様の理由から、ナトリウム以外のアルカリ金属も少ないことが好ましく、通常、K2O含有量は0.01重量%以下、Li2O含有量は0.01重量%以下であるのがよい。また、本発明の触媒に含まれるアルミナのBET比表面積は、通常100〜300m2/gであることが好ましい。アルミナのBET比表面積が大きすぎると、反応使用中に熱劣化を起こすおそれがあり、一方、小さすぎると、活性が低下する傾向があるからである。
【0024】
本発明の触媒に含まれるアルミナは、最終的に触媒として使用する段階でアルミナの形態になっていればよいのであり、どのような方法で生じたものであってもよい。例えば、水酸化アルミニウムを仮焼してアルミナ粉末を得たのちに洗浄する方法、アルミニウムアルコシドの加水分解で得られた水酸化アルミニウムを仮焼する方法、アルミニウム塩を熱分解する方法などで、所望のBLT比表面積やNa2O含有量を有するアルミナを生じさせればよい。また、市販のアルミナをそのまま、もしくはBLT比表面積やNa2O含有量が所望の値になるように焼成処理や洗浄処理等を施して、これを原料として含有させてもよい。
【0025】
本発明の触媒に含まれるゼオライトは、通常のアルミノ珪酸塩系ゼオライトであればよく、例えば、通常、Mordenaite型、β型、Ferrierite型、L型、Y型、ZSM系ゼオライトなどが挙げられる。なお、本発明の触媒に含まれるゼオライトは、通常、水素型である。
【0026】
本発明の触媒に含まれるゼオライトは、高い脱水反応率を得られる点から、Na2O含有量が1重量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1重量%以下であるのがよい。同様の理由から、ナトリウム以外のアルカリ金属も少ないことが好ましい。
【0027】
本発明の触媒は、脱水触媒性能を損なわない範囲で、例えば、酸化チタン(TiO2)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化セリウム(CeO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化銅(CuO)、酸化亜鉛(ZnO)などの無機化合物、特に金属酸化物を含むものであってもよい。また、活性に影響を与えない範囲で、シリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾル等の無機バインダー由来の酸化物を含んでいてもよく、これら無機バインダーを熱処理ゼオライトとアルミナ混合物の成形の際に用いることもできる。
【0028】
本発明の触媒は、後述する本発明のジメチルエーテル製造用触媒の製造方法によって容易に得られるものであるが、これに限定されるものではない。例えば、本発明の触媒に含まれるアルミナは、最終的に触媒として使用する段階でアルミナの形態になっていればよいのであり、後述する本発明のジメチルエーテル製造用触媒の製造方法のほか、アルミニウム塩とゼオライトと混合し、成形後アルミニウム塩を熱分解させるなどの方法によっても、本発明の触媒を得ることができる。
【0029】
(ジメチルエーテル製造用触媒の製造方法)
本発明のジメチルエーテル製造用触媒の製造方法(以下「本発明の触媒の製造方法」と称することもある)は、特定のゼオライトを熱処理して得られた熱処理ゼオライトと、特定の水酸化アルミニウムとを混合して成形した後、焼成するものである。
【0030】
前記特定のゼオライトとは、SiO2/Al23モル比が10〜1000であるゼオライトである。原料としてこのようなゼオライトを用いることにより、(ジメチルエーテル製造用触媒)の項で前述したようなSiO2/Al23モル比を有する触媒が得られる。原料として用いるゼオライトのSiO2/Al23モル比が前記範囲よりも小さいと、活性が低く、選択率が悪い触媒が得られることになり、一方、大きすぎると、ゼオライトの疎水性が高くなるので、脱水反応が起こりにくくなり、得られる触媒の活性が低くなる。
【0031】
また、前記特定のゼオライトは、そのNa2O含有量が1重量%以下であることが好ましい。Na2O含有量が少ないほど、脱水反応の反応率が高くなるからである。また、前記特定のゼオライトは、ナトリウム以外のアルカリ金属の含有量も少ないことが好ましい。
【0032】
また、前記特定のゼオライトは、(ジメチルエーテル製造用触媒の製造方法)の項で前述したような種々の型のゼオライトを用いることができる。また、前述したように、最終的に得られる本発明の触媒に含まれるゼオライトは、通常、水素型であるが、一般にゼオライトは後述する熱処理で水素型に変化するので、前記特定のゼオライトは、水素型でもよいし、アンモニウム型でもよい。
なお、前記特定のゼオライトは、前述した条件を満たす市販品を用いてもよいし、合成したものを用いてもよい。
【0033】
本発明の触媒の製造方法においては、前記特定のゼオライトにあらかじめ熱処理を施して熱処理ゼオライトにしておくことが重要である。これにより、得られる触媒のアンモニア吸着酸量測定において脱離するアンモニア量は、(ジメチルエーテル製造用触媒の製造方法)の項で前述した範囲となり、触媒性能の経時劣化を抑制することが可能となる。なお、熱処理によってゼオライトの構造がどのように変化しているかは不明であるが、熱処理することによりゼオライト上の強酸点が低減されるため、アルミナとの混合触媒としたときに炭素析出が抑制され、その結果、触媒性能の経時的維持率が向上するものと考えられる。
【0034】
熱処理ゼオライトを得る際の熱処理は700〜1000℃の温度で行う。好ましくは900〜1000℃とするのがよい。熱処理温度が700℃未満であると、触媒活性の経時劣化を十分に抑制できなくなり、一方、1000℃を超えると、ゼオライト結晶が破壊されてしまいゼオライト添加の効果が得られない。
【0035】
前記特定の水酸化アルミニウムとは、焼成した時に(具体的には、例えば、後述する焼成温度で焼成したときに)Na2O含有量0.1重量%以下を示す水酸化アルミニウムである。原料としてこのような水酸化アルミニウムを用いることにより、(ジメチルエーテル製造用触媒)の項で前述したような触媒のNa2O含有量を有する触媒が得られる。原料として用いる水酸化アルミニウムを焼成したときのNa2O含有量が前記範囲よりも大きいと、得られる触媒の脱水反応における反応率が低下することになる。また、前記水酸化アルミニウムは、焼成した時に(具体的には、例えば、後述する焼成温度で焼成したときに)、BET比表面積100〜300m2/gを示すことが好ましい。原料として用いる水酸化アルミニウムを焼成したときのBET比表面積が前記範囲よりも大きいと、得られる触媒が脱水反応で使用中に熱劣化を起こすおそれがあり、一方、小さすぎると、得られる触媒の活性が低下する傾向があるからである。
【0036】
前記熱処理ゼオライトと前記水酸化アルミニウムは、アルミナ換算で100重量部の水酸化アルミニウムに対し熱処理ゼオライト0.1〜20重量部の割合で混合する。ゼオライトの使用割合が前記範囲であれば、(ジメチルエーテル製造用触媒)の項で前述したような比率でアルミナとゼオライトとを含有する触媒が得られる。
【0037】
混合に用いる装置は、均一に混合できる装置であれば特に制限されるものではなく、例えば、V型混合機、パドルミキサー、振動ミル、ボールミル、ナフターミキサー、ヘンシェルミキサー、オムニミキサー、スーパーミキサー、レディゲミキサー、二重円錐混合機、エアードミキサー等の公知の混合装置を使用することができる。
【0038】
成形方法としては、特に制限されるものではなく、通常の乾式成形法や湿式成形法を採用することができる。例えば、打錠成形機、皿型造粒機、押出し成形機、攪拌造粒機、スプレー造粒機、射出成形機等を用いた公知の方法が挙げられる。
【0039】
焼成方法は、特に制限されるものではないが、ドライ焼成で行なうと、アルミナ表面の水酸基が低減し、ルイス酸点が増加するので、好ましい。
焼成温度は、特に制限されないが、通常100〜600℃の範囲とするのがよい。焼成時間は、焼成温度等に応じて適宜設定すればよく、特に制限されないが、通常、10時間〜100時間とするのが好ましい。
【0040】
焼成に用いる装置は、加熱できる装置であれば特に限定されないが、例えば、流通式バット焼成炉、流動焼成炉、シャフト炉、ロ-タリーキルン、ベルト炉、シャトル炉、熱風循環式焼成炉、静置式焼成炉、トンネル炉、遠赤外線炉、マイクロ波加熱炉等を使用することができる。これら装置の熱源としては、電気やガスが利用でき、間接加熱であってもよいし、直接加熱であってもよい。
【0041】
(ジメチルエーテルの製造方法)
本発明のジメチルエーテルの製造方法は、前述した本発明の触媒の存在下にメタノールを脱水反応させるものである。
【0042】
本発明のジメチルエーテルの製造方法において用いる原料は、メタノールを主成分として含むものであればよく、例えば、メタノール単独、メタノールと水蒸気の混合物、メタノールとメタノール以外のアルコール(例えば、エタノール、イソプロピルアルコール等)との混合物、メタノールと不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等)との混合物、メタノールと前記メタノール以外のアルコールと前記不活性ガスとの混合物などが挙げられる。メタノールと水蒸気の混合物またはメタノールとメタノール以外のアルコールとの混合物を用いる場合、これらの混合物中に占めるメタノールの割合は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上であるのがよい。また、メタノールと不活性ガスとの混合物またはメタノールとメタノール以外のアルコールと不活性ガスとの混合物の場合、これら混合物のうち不活性ガスを除いたものに占めるメタノールの割合は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上であるのがよい。メタノールの脱水反応は一般に気相で行われるので、原料は、通常、気体の状態で供給されることが好ましく、例えば、液体の状態で貯蔵しておき、反応前に、熱交換器などを使用して気化させて供給することができる。
【0043】
メタノールの脱水反応を行う際には、反応温度は、下限は、通常250℃以上、好ましくは270℃以上とするのがよく、上限は、通常450℃以下、好ましくは400℃以下とするのがよい。また、反応圧力は、反応温度に応じて適宜設定すればよいが、下限は、通常1×105Pa以上とするのがよく、上限は、通常50×105Pa以下、好ましくは30×105Pa以下とするのがよい。
メタノールの脱水反応は、通常、多管式反応器のような固定床反応器で行うことが好ましく、そのときの空間速度は、通常、500h-1以上、150000h-1以下とするのがよい。
【0044】
本発明のジメチルエーテルの製造方法において得られたジメチルエーテルは、そのまま、または必要に応じて蒸留などにより精製して、使用することができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、本文中において示した物性値は次の方法により測定した。
【0046】
<結晶相>
試料をX線回折装置(理学電機製「RAD−RB RU−200」)を用いて分析し、得られたX線回折スペクトルのピークデータから結晶相を同定し、そのうち相対ピーク強度の最も高いものを主結晶相とした。
【0047】
<Na2O含有量(重量%)>
JIS−R9301に従って求めた。
【0048】
<SiO2/Al23モル比>
試料をアルカリ溶融させた後に酸に溶解させ、ICP発光分光装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製「SPS4000」)を用いて分析し、試料中のSiO2量を求めた。他方、試料をフッ化水素酸で処理し、その後、アルカリ溶解させた後に酸に溶解させ、上記ICP発光分光装置を用いて分析し、試料中のAl23量を求めた。そして、SiO2量とAl23量よりSiO2/Al23モル比を算出した。
【0049】
<アンモニア吸着酸量測定>
昇温脱離装置(大倉理研製「ATD700」)を利用し、試料を真空下で350℃1時間前処理した後、100℃、圧力13.3kPaの条件下でアンモニアガスを30分間吸着させた。その後、100℃で30分真空排気した後、ヘリウム気流中100℃から800℃まで昇温しながら、脱離するアンモニア量を4重極MSで検出した。そして、400℃以下で脱離するアンモニア量と400℃を超えて脱離するアンモニア量を求めるとともに、400℃以下で脱離するアンモニア量と400℃を超えて脱離するアンモニア量との比(400℃以下で脱離するアンモニア量/400℃を超えて脱離するアンモニア量)を求めた。
【0050】
<BET比表面積(m2/g)>
比表面積測定装置(マウンテック製「Macsorb Model−1201」)を用いて窒素吸着法により求めた。
【0051】
<細孔容積(cm3/g)>
細孔分布測定装置(カンタクローム製「オートスキャン33型」)を用いて水銀圧入法により試料の細孔分布を測定した。そして、横軸を細孔半径とし、縦軸を細孔半径の大きいものから小さいものへ順次その容積を累積していった累積細孔容積とする累積細孔分布曲線より、細孔半径1.8nm〜100μmの細孔の累積容積を求めた。
【0052】
(実施例1−1)
Mordenite型ゼオライト(東ソー社製「HSZ−640HOA」:水素型、SiO2/Al23モル比は19、Na2O量は0.001重量%以下)を電気炉にて900℃で2時間熱処理して、熱処理ゼオライトを得た。この熱処理ゼオライトのBET比表面積は385m2/gであった。また、アンモニア吸着酸量測定により固体酸量を調べたところ、400℃以下で脱離するアンモニア量は306μmol/g、400℃を超えて脱離するアンモニア量は99μmol/gであり、400℃以下で脱離するアンモニア量と400℃を超えて脱離するアンモニア量との比は3.1であった。
他方、ベーマイト結晶水酸化アルミニウム(アルマティス社製「HiQ−40」)を振動ミルで中心粒径7.5μmまで粉砕して粉砕品を得た。この粉砕品を700℃で2時間焼成したところ、得られたアルミナの結晶形はγアルミナで、Na2O量は0.001重量%以下であり、BET比表面積は162m2/gであった。
【0053】
次に、上記粉砕品をアルミナ換算で100重量部と、上記熱処理ゼオライト1.2重量部とを混合し、得られた混合粉にベーマイト型アルミナゾル(日産化学製「アルミナゾル520」;ゾル中のアルミナ当たりのNa2O量は0.001重量%以下)7.6重量部を10倍に希釈した液をスプレーして加えながら、直径24cmの皿型造粒機を用いて造粒して、直径1〜3mmの球状の成形体を得た。この成形体を電気炉により400℃で2時間焼成して、触媒(1)を得た。
【0054】
触媒(1)は、主結晶相がγアルミナとMordenite型ゼオライトの混合物であった。触媒(1)のNa2O量は0.003重量%、SiO2/Al23モル比は0.021であり、アンモニア吸着酸量測定における400℃以下で脱離するアンモニア量と400℃を超えて脱離するアンモニア量との比は4.8、400℃を超えて脱離するアンモニア量は42μmol/gであった。また、細孔半径1.8nm〜100μmの細孔の累積細孔容積は0.43cm3/g、BET比表面積は214m2/gであった。
【0055】
(実施例1−2)
実施例1−1において用いた熱処理ゼオライトに変えて、前記Mordenite型ゼオライト(東ソー社製「HSZ−640HOA」)を電気炉にて700℃で2時間熱処理して得た熱処理ゼオライトを用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして、触媒(2)を得た。なお、実施例1−2で用いた熱処理ゼオライトのBET比表面積は358m2/gであった。また、アンモニア吸着酸量測定により固体酸量を調べたところ、400℃以下で脱離するアンモニア量は786μmol/g、400℃を超えて脱離するアンモニア量は450μmol/gであり、400℃以下で脱離するアンモニア量と400℃を超えて脱離するアンモニア量との比は1.7であった。
【0056】
触媒(2)は、主結晶相がγアルミナとMordenite型ゼオライトの混合物であった。触媒(2)のNa2O量は0.003重量%、SiO2/Al23モル比は0.021であり、アンモニア吸着酸量測定における400℃以下で脱離するアンモニア量と400℃を超えて脱離するアンモニア量との比は4.6、400℃を超えて脱離するアンモニア量は45μmol/gであった。また、細孔半径1.8nm〜100μmの細孔の累積細孔容積は0.47cm3/g、BET比表面積は209m2/gであった。
【0057】
(実施例1−3)
実施例1−1において用いた熱処理ゼオライトの使用量を1.2重量部から17.6重量部に変更したこと以外は、実施例1−1と同様にして、触媒(3)を得た。
【0058】
触媒(3)は、主結晶相がγアルミナとMordenite型ゼオライトの混合物であった。触媒(3)のNa2O量は0.048重量%、SiO2/Al23モル比は0.021であり、アンモニア吸着酸量測定における400℃以下で脱離するアンモニア量と400℃を超えて脱離するアンモニア量との比は4.4、400℃を超えて脱離するアンモニア量は49μmol/gであった。また、細孔半径1.8nm〜100μmの細孔の累積細孔容積は0.45cm3/g、BET比表面積は240m2/gであった。
【0059】
(実施例1−4)
実施例1−1において用いた熱処理ゼオライトに変えて、Mordenite型ゼオライト(東ソー社製「HSZ―690HOA」:水素型、SiO2/Al23モル比は243、Na2O量は0.001重量%以下)を電気炉にて900℃で2時間熱処理して得た熱処理ゼオライトを用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして、触媒(4)を得た。なお、実施例1−4で用いた熱処理ゼオライトのBET比表面積は402m2/gであった。また、アンモニア吸着酸量測定により固体酸量を調べたところ、400℃以下で脱離するアンモニア量は45μmol/g、400℃を超えて脱離するアンモニア量は53μmol/gであり、400℃以下で脱離するアンモニア量と400℃を超えて脱離するアンモニア量との比は0.8であった。
【0060】
触媒(4)は、主結晶相がγアルミナとMordenite型ゼオライトの混合物であった。触媒(4)のNa2O量は0.004重量%、SiO2/Al23モル比は0.023であり、アンモニア吸着酸量測定における400℃以下で脱離するアンモニア量と400℃を超えて脱離するアンモニア量との比は4.6、400℃を超えて脱離するアンモニア量は42μmol/gであった。また、細孔半径1.8nm〜100μmの細孔の累積細孔容積は0.42cm3/g、BET比表面積は261m2/gであった。
【0061】
(比較例1−1)
実施例1−1において用いた熱処理ゼオライトに変えて、前記Mordenite型ゼオライト(東ソー社製「HSZ−640HOA」)を熱処理を行わずにそのまま用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして、触媒(C1)を得た。なお、比較例1−1で用いたゼオライトのBET比表面積は245m2/gであった。また、アンモニア吸着酸量測定により固体酸量を調べたところ、400℃以下で脱離するアンモニア量は1100μmol/g、400℃を超えて脱離するアンモニア量は1073μmol/gであり、400℃以下で脱離するアンモニア量と400℃を超えて脱離するアンモニア量との比は1.0であった。
【0062】
触媒(C1)は、主結晶相がγアルミナとMordenite型ゼオライトの混合物であった。触媒(C1)のNa2O量は0.003重量%、SiO2/Al23モル比は0.021であり、アンモニア吸着酸量測定における400℃以下で脱離するアンモニア量と400℃を超えて脱離するアンモニア量との比は3.8、400℃を超えて脱離するアンモニア量は52μmol/gであった。また、細孔半径1.8nm〜100μmの細孔の累積細孔容積は0.39cm3/g、BET比表面積は234m2/gであった。
【0063】
(実施例2−1〜2−4および比較例2−1)
上記触媒(1)〜(4)および(C1)をそれぞれ使用してメタノールの脱水反応を行い、ジメチルエーテルを製造した。すなわち、固定床流通式の反応装置を用い、そのなかに触媒5cm3を充填し、温度290℃、圧力1MPaGの条件で、メタノール100%液を気化させ、空間速度(SV)2000h-1で供給してメタノールの脱水反応を行い、ジメチルエーテルを製造した。反応開始から30分後(初期)と、24時間後(1日経過後)に反応装置の出口ガスを採取し、出口ガスのメタノール濃度OMeOHおよびジメチルエーテル濃度ODMEとをガスクロマトグラフを用いて測定した(いずれもモル濃度)。入口ガスのメタノール濃度IMeOHはいずれの場合も100%とし、得られたメタノール濃度OMeOHおよびジメチルエーテル濃度ODMEから、下式(2)、(3)に基づき、初期および1日経過後のメタノール反応率、ジメチルエーテル選択率をそれぞれ求めた。さらに、下式(4)に基づき、メタノール反応率の経時的維持率を求めた。
【0064】
メタノール反応率(%)=100×(IMeOH−OMeOH)/IMeOH (2)
ジメチルエーテル選択率(%)=100×(2×ODME)/(IMeOH−OMeOH) (3)
維持率(%)=100×(1日経過後のメタノール反応率/初期のメタノール反応率) (4)
また、1日経過後に触媒を抜き取り、該抜き取り品の着色を目視で観察した。結果を表1に示す。
【0065】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ100重量部に対して0.1〜20重量部のゼオライトが含有された成形体であり、SiO2/Al23モル比が0.017〜0.3であり、Na2O含有量が0.1重量%以下であり、アンモニア吸着酸量測定において、400℃以下で脱離するアンモニア量が400℃を超えて脱離するアンモニア量の4倍以上であり、400℃を超えて脱離するアンモニア量が50μmol/g以下である、ことを特徴とするジメチルエーテル製造用触媒。
【請求項2】
BET比表面積が100〜300m2/gである、請求項1記載のジメチルエーテル製造用触媒。
【請求項3】
細孔半径1.8nm〜100μmの細孔の累積容積が0.3cm3/g以上である、請求項1または2記載のジメチルエーテル製造用触媒。
【請求項4】
SiO2/Al23モル比が10〜1000のゼオライトを700〜1000℃で熱処理して得られた熱処理ゼオライトと、焼成した時にNa2O含有量0.1重量%以下を示す水酸化アルミニウムとを、アルミナ換算で100重量部の水酸化アルミニウムに対して熱処理ゼオライト0.1〜20重量部の割合で混合して成形した後、焼成する、ことを特徴とするジメチルエーテル製造用触媒の製造方法。
【請求項5】
前記水酸化アルミニウムは、焼成した時にBET比表面積100〜300m2/gを示す、請求項4記載のジメチルエーテル製造用触媒の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載のジメチルエーテル製造用触媒の存在下にメタノールを脱水反応させる、ことを特徴とするジメチルエーテルの製造方法。

【公開番号】特開2008−229511(P2008−229511A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73311(P2007−73311)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】