説明

ジャッキ受け及びトラス橋の支承交換方法

【課題】トラス橋の支承を交換するための事業コストを削減することができるジャッキ受け及びトラス橋の支承交換方法を提供する。
【解決手段】ジャッキ受け50は、傾斜軸力部材21に着脱自在に取り付けられている。よって、ジャッキ受け50の形状を維持したまま取り外すことができるので、取り外したジャッキ受け50を別の桁20に再び使用することができる。これにより、支承交換作業に必要な数だけのジャッキ受け50を製作すれば良く、支承交換の事業全体でのジャッキ受け50の製作コストを削減しトラス橋10の支承を交換するための事業コストを削減することができる。また、取り外したジャッキ受け50を廃棄処分する必要がないのでゴミの発生を抑え環境への負荷を低く保つことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャッキ受け及びトラス橋の支承交換方法に関するものであり、特に、トラス橋の支承を交換するための事業コストを削減することができるジャッキ受け、及び、トラス橋の支承交換方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
阪神大震災以降、既設されたトラス橋の桁を支持している支承を耐震性の向上を図ることができる支承に交換する工事が進んでいる。
【0003】
桁橋の支承を交換する方法としては、例えば、特開2003―306906号公報に開示されるように、橋桁(桁)11にジャッキ30を当接させて橋桁(桁)11の重量を支持し、既設の支承を交換する方法が有る(特許文献1)。
【0004】
また、桁橋の橋桁(桁)11は、橋桁(桁)11の重量による曲げ応力やせん断力に耐えるものであるので、橋桁(桁)11にジャッキ30を当接させて橋桁(桁)11の重量を支持することができる。それに対し、トラス橋の桁は、構造の特性上、桁の重量による曲げ応力やせん断力に耐えるものではない。よって、上述した方法のように、トラス橋の桁にジャッキを当接させることでトラス橋の支承の交換をおこなったのでは、桁がその桁の重量による曲げ応力やせん断力によって破損してしまうおそれがある。そのため、支承を交換する場合には、桁とジャッキとの間に桁の補強となるジャッキ受けを介在させ、ジャッキ受けを介してジャッキにて桁を持ち上げて支承を交換していた。
【0005】
ここで、図8を参照して、トラス橋10の支承40を交換するために使用される従来のジャッキ受け150について説明する。図8は、従来のジャッキ受け150の正面を示した正面図である。なお、既設の支承40の概略を実線にて三角形状に示し、新設されるゴム製の支承41の概略を2点鎖線にて四角形状に示している。
【0006】
図8に示す通り、桁20は、水平方向に対して傾斜している傾斜軸力部材21と、その傾斜軸力部材21の下端部(図8下端)に溶接される水平軸力部材22と、その水平軸力部材22と傾斜軸力部材21とに溶接されることで桁20を支承40の支持力に対応して補強する補強部材23とを備えており、ジャッキ受け150は、補強プレート24と傾斜軸力部材21と水平軸力部材22とに溶接される平板形状に構成された本体プレート151と、その本体プレート151の側面(図8紙面手前)と水平軸力部材22とに溶接される一対の延長プレート154と、その延長プレート154の下端部(図8下端)と水平軸力部材22の下面(図8下面)とに溶接されジャッキ170と当接するジャッキ面152とを備えている。なお、ジャッキ受け150の裏側視(紙面奥側から紙面手前方向視)においても同様の構成であるので、説明を省略する。
【0007】
また、支承40は、以下のようにしてゴム製支承41に交換されていた。まず、ゴム製支承41の支持力に対応して桁20を補強する補強プレート24が傾斜軸力部材21と水平軸力部材22とに溶接され、ジャッキ受け150が、傾斜軸力部材21と水平軸力部材22と補強プレート24とに溶接される。
【0008】
そして、溶接されたジャッキ受け150の下端に位置するジャッキ面152にジャッキ70の先端に位置するジャッキ先端72が当接され、そのジャッキ先端72とジャッキ70とを連結するシリンダー71が延びることで、桁20が持ち上げられる。その持ち上げられた桁20の下に配設される支承40をゴム製支承41に取り替えて、持ち上げられた桁20をゴム製支承41の上に載置することで支承40がゴム製支承41に交換される。
【0009】
その後、ジャッキ受け150を撤去する必要が無いときは、ジャッキ受け150は、桁20に取り付けられたまま残され、ジャッキ受け150を撤去する必要が有るときは、ジャッキ受け150は、桁20から溶断にて切り取られて撤去される。
【特許文献1】特開2003―306906号公報(段落第0021,図3(a))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ジャッキ受け150を桁20に溶接にて取り付ける構成では、作業に手間が掛かる現場での溶接が多いため、その溶接の工数が支承を交換するための工数全体に対して多くなりトラス橋の支承を交換するための事業コストが嵩むという問題点があった。
【0011】
また、ジャッキ受け150を桁20に溶接にて取り付けるとジャッキ受け150の形状を維持したまま取り外すことが難しく、ジャッキ受け150を別の桁に再び使用することが困難となる。よって、交換する支承の数と同数のジャッキ受け150を製作する必要があり、ジャッキ受け150の製作コストが嵩みトラス橋の支承を交換するための事業コストが嵩むという問題点があった。
【0012】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、トラス橋の支承を交換するための事業コストを削減することができるジャッキ受け及びトラス橋の支承交換方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するために請求項1記載のジャッキ受けによれば、橋脚に配設されトラス橋の両端を支持する支承を交換するために、そのトラス橋の桁をジャッキにて持ち上げる場合に、前記ジャッキと桁との間に介在して使用されるジャッキ受けであって、前記ジャッキに当接されるジャッキ受け面と、そのジャッキ受け面に立設される本体部と、その本体部の前記ジャッキ受け面の反対側に設けられ前記トラス橋の桁に締結部材によって着脱自在に取り付けられる取付面とを備えている。
【0014】
請求項2記載のジャッキ受けは、請求項1記載のジャッキ受けにおいて、前記取付面は、前記トラス橋の桁であって傾斜方向に延びる傾斜軸力部材を下方から支持するものである。
【0015】
請求項3記載のジャッキ受けは、請求項2記載のジャッキ受けにおいて、前記トラス橋は、そのトラス橋を構成する桁の接合部であって前記支承によって支持される部分の接合部を補強するために、その接合部近傍に補強部材が接合されており、前記ジャッキ受け面と前記取付面との間で前記本体部から延設されると共に、前記補強部材とその補強部材によって補強された部位との少なくとも一方に締結部材によって着脱自在に取り付けられる補助取付面を備えている。
【0016】
請求項4記載のジャッキ受けは、請求項1から3のいずれかに記載のジャッキ受けにおいて、前記ジャッキ受け面と、前記本体部と、前記取付面とをジャッキ受け有し、前記トラス橋の桁の一側に着脱自在に取り付けられる第1ジャッキ受けと、前記ジャッキ受け面と、前記本体部と、前記取付面とを有し、前記第1ジャッキ受けに対向して前記トラス橋の桁の他側に着脱自在に取り付けられる第2ジャッキ受けと、前記第1ジャッキ受けと第2ジャッキ受けとを分離可能に連結する連結部材とを備えている。
【0017】
請求項5記載のトラス橋の支承交換方法は、請求項1から4のいずれかに記載のジャッキ受けを用いて、トラス橋の両端を支持する既存の支承を新たな支承に交換するトラス橋の支承交換方法であって、前記トラス橋の桁に前記ジャッキ受けの取付面を締結部材によって着脱自在に取り付けるジャッキ受け取付工程と、そのジャッキ受け取付工程により前記トラス橋の桁に取り付けられた前記ジャッキ受けのジャッキ受け面と前記橋脚との間にジャッキを配設するジャッキ配設工程と、そのジャッキ配設工程により配設されたジャッキを作動させて前記トラス橋の桁を持ち上げる持上工程と、その持上工程により前記トラス橋の桁が持ち上げられている間に、既存の支承を撤去して新たな支承を配設する支承交換工程と、その支承交換工程により新たな支承が配設された後に、前記ジャッキの作動を解除してそのジャッキにより持ち上げられているトラス橋の桁を下げ、その桁を新たな支承上に載置する桁載置工程と、その桁載置工程により新たな支承上に載置されたトラス橋の桁から、前記締結部材によって取り付けられている前記ジャッキ受けの取付面を取り外して、そのトラス橋の桁から前記ジャッキ受けを撤去するジャッキ受け撤去工程とを備えている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載のジャッキ受けによれば、まず、トラス橋の桁に締結部材によってジャッキ受けの取付面を取り付ける。次に、ジャッキ受け面と橋脚との間にジャッキを配設してそのジャッキを作動させることで桁を持ち上げる。その桁が持ち上げられている間に支承を交換し、ジャッキの作動を解除することで持ち上げられた桁を交換された支承に載置する。その後、締結部材によって取り付けられたジャッキ受けの取付面をトラス橋の桁から取り外すことでジャッキ受けが桁から取り外される。
【0019】
このように、桁に取り付けられる取付面は、トラス橋の桁に締結部材によって着脱自在に取り付けられる。よって、ジャッキ受けの形状を維持したまま取り外すことができるので、取り外したジャッキ受けを別の桁に再び使用することができる。そのため、支承の交換作業時に必要な数のジャッキ受けを製作すれば良く、支承の交換事業全体でのジャッキ受けの製作コストを削減することできる。これにより、トラス橋の支承を交換するための事業コストを削減することができるという効果がある。
【0020】
また、本発明のジャッキ受けは、桁に溶接にて取り付けられることが無く、作業に手間が掛かる現場での溶接を少なくすることができる。よって、現場での溶接の工数が削減され、支承の交換作業全体における工数に対して溶接の工数が占める割合が小さくなり、トラス橋の支承を交換するための事業コストを削減することができるという効果がある。
【0021】
また、桁に従来のジャッキ受けが取り付けられる場合は、溶接にて取り付けられているので、ジャッキ受けの形状を保ったまま取り外すことは非常に困難であり、取り外したとしても、再び使用することはできず、廃棄処分しなければならないことがあった。それに対し、本発明のジャッキ受けは、取り外した後に、別の桁に再び使用することができるので、取り外した後にジャッキ受けを廃棄処分する必要がなく、ゴミの発生を抑えることができる。そのため、環境への負荷を低く保つことができるという効果がある。
【0022】
また、従来のジャッキ受けは、桁に溶接で取り付けられているので、桁に溶接による熱が加わり桁を構成する材料性状に変化が生じて強度低下を招くことがあった。それに対し、本発明のジャッキ受けによれば、取付面は、トラス橋の桁に締結部材によって取り付けられる。その分、桁への溶接量を削減して溶接の熱によって材料性状に変化が生じることを抑え、桁の強度低下を防止することができる。よって、トラス橋の強度品質を保つことができるという効果がある。
【0023】
なお、溶接による桁の強度低下は、古い鋼材ほど含有炭素量が多くなるため、トラス橋が設置されてから時間が経つほど大きくなる。加えて、支承の交換対象となる既設のトラス橋は、その多くが昭和40年代に設置されたものであり、設置されて40年以上経っているものが多い。よって、そのような既設のトラス橋の支承を交換する場合には、ジャッキ受けを溶接にて取り付けることによる強度低下が大きく、強度品質を保つ効果は大である。
【0024】
請求項2記載のジャッキ受けによれば、請求項1記載のジャッキ受けの奏する効果に加え、取付面は、トラス橋の桁であって傾斜方向に延びる傾斜軸力部材を下から支持するものであるので、桁の重量によって作用する垂直方向の力(桁の重量)を傾斜軸力部材の長手方向と、その長手方向に直交する方向とに分け、長手方向に力を負担させることでその軸力部材に直交する方向の力を小さくすることができる。よって、桁の補強量を低減して補強の工数を削減することができる。加えて、桁の重量によって作用する垂直方向の力(桁の重量)の一部(取付面に対して直角方向に作用する力)が摩擦力(以下、「桁の重量による摩擦力」と称す。)に変換されることにより、その桁の重量による摩擦力を桁の支持力として利用することができる。よって、締結部材による締結箇所を減らして締結の工数を削減することができる。このように、補強の工数と締結の工数とを削減することができるのでトラス橋の支承を交換するための事業コストを削減することができるという効果がある。
【0025】
請求項3記載のジャッキ受けによれば、請求項2記載のジャッキ受けの奏する効果に加え、補強部材とその補強部材によって補強された部位との少なくとも一方に締結部材によって着脱自在に取り付けられる補助取付面を備えている。よって、ジャッキ受けの強度がトラス橋の強度を利用することで強化され、その強化されたジャッキ受けにより桁を安定して持ち上げることができる。よって、支承の交換作業を安全に行うことができ、トラス橋の支承を交換するための事業の安全性を向上することができるという効果がある。
【0026】
請求項4記載のジャッキ受けによれば、請求項3記載のジャッキ受けの奏する効果に加え、第1ジャッキ受けと、第2ジャッキ受けと、第1ジャッキ受けと第2ジャッキ受けとを分離可能に連結する連結部材とを備えているので、ジャッキ受けを桁に取り付けない時は、第1ジャッキ受けと第2ジャッキ受けとに分離することができる。よって、ジャッキ受けの運搬時およびジャッキ受けの桁への取り付け時に、ジャッキ受けを第1ジャッキ受けと第2ジャッキ受けとに分離することにより、分離された第1ジャッキ受け及び第2ジャッキ受けの大きさ及び重量をジャッキ受けに対して半減させることができる。
【0027】
また、ジャッキ受けは、クレーンやトラックなどの運搬機材によって運ばれるものであり、ジャッキ受けの大きさ及び重量で運搬機材の大きさが決まる。また、運搬機材の大きさが大きいほど、運搬機材の運行の為の人の数や、安全管理の工数が増加し、ジャッキ受けの運搬に手間が掛かることになる。即ち、ジャッキ受けが分離されることにより、大きさが小さい運搬機材でも運搬ができるので運搬に掛かる手間を省くことができる。これにより、トラス橋の支承を交換するための事業コストを削減することができるという効果がある。
【0028】
請求項5記載のトラス橋の支承交換方法によれば、ジャッキ受け工程は、ジャッキ受けの取付面を締結部材によって着脱自在に取り付けるものであり、ジャッキ受け撤去工程は、締結部材によって取り付けられているジャッキ受けの取付面を取り外して、トラス橋の桁からジャッキ受けを撤去するものである。よって、撤去したジャッキ受けを再び別の桁に取り付けることができるので支承の交換作業時に必要な数のジャッキ受けを製作すれば良く、支承の交換事業全体でのジャッキ受けの製作コストを削減することできる。これにより、トラス橋の支承を交換するための事業コストを削減することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、本発明のジャッキ受け50が取り付けられるトラス橋10の構成について説明する。図1は、トラス橋10の概略を示した側面図である。
【0030】
図1に示す通り、トラス橋10は、トラス橋10の本体である桁20と、その桁20の両端に立設される一対の橋脚30と、その橋脚30と桁20との間に配設され桁20を支持する支承40とを備えている。桁20は、水平方向(図1左右方向)に対して傾斜した方向に延びる傾斜軸力部材21と、略水平方向に延びる水平軸力部材22と、支承40の上方(図1上方)に配設され傾斜軸力部材21と水平軸力部材22とが接合した接合部27(図2参照)に溶接される補強部材23とを備え、傾斜軸力部材21の端部と水平軸力部材22の端部とが連結されることで形成される3角形状の群によってトラス構造体とされている。なお、トラス構造体とは、柱状に構成された部材を曲げやせん断による力が掛からないように連結したものであり、その柱状に構成された部材に伸びや圧縮による力を作用させることで強度を保っている。
【0031】
次に、図2及び図3を参照して本発明の第1実施の形態であるジャッキ受け50について説明する。図2は、第1実施の形態におけるジャッキ受け50の正面を示した正面図であり、ジャッキ受け50がトラス橋10に取り付けられた状態を示している。なお、交換される支承40を実線にて三角形状に示し、交換されたゴム製支承41を2点鎖線にて四角形状に示している。
【0032】
図3は、ジャッキ受け50と桁20とを示す平面図である。図3(a)は、図2のIIIa−IIIa線におけるジャッキ受け50と桁20との側面を示した側面図であり、桁20の両側にジャッキ受け50a,50bが配設された状態を示している。図3(b)は、図2のIIIb−IIIb線におけるジャッキ受け50の断面を示した断面図であり、ジャッキ受け面52a,52bの上側(図3紙面手前側)に水平軸力部材22が配設された状態を示している。また、図3(c)は、図2のIIIc−IIIc線における傾斜軸力部材21とジャッキ受け50との断面を示した断面図であり、傾斜軸力部材21の下方(図3紙面下方)からジャッキ受け50a,50bの取付面53a,53bが取り付けられた状態を示している。
【0033】
まず、支承40を交換する際に、トラス橋10の桁20を補強するために桁20へ取り付けられる補強プレート24について説明をする。補強プレート24は、交換されたゴム製支承41から桁20に掛かる力によって桁20が破損しないように、桁20を補強するものである。
【0034】
前述したように、トラス橋10の桁20は、トラス構造体とされているので、そのトラス構造体を構成する傾斜軸力部材21及び水平軸力部材22のそれぞれの長手方向に力が作用するように構成されている。即ち、トラス構造体を構成する部材として設計されている傾斜軸力部材21及び水平軸力部材22は、それぞれの長手方向には、桁20の重量を支えるのに十分な強度を持つものであるが、それぞれの長手方向に対して直角の方向には、桁20の重量を支えるのに十分な強度が必要ない。そのため、水平軸力部材22を支承40にて支持すると支承40にて支持される水平軸力部材22の部位に垂直方向の力(桁20の重量)が作用し、水平軸力部材22が変形するおそれがある。よって、補強部材23を水平軸力部材22及び傾斜軸力部材21で支承40の上方に位置する部位に溶接することで、水平軸力部材22及び傾斜軸力部材21の支承40の上方(図1上方)に配設される部位の強度を向上させている。
【0035】
支承40がゴム製支承41に交換されるとゴム製支承41の上方に位置する部位26にゴム製支承41からの力が加わって補強部材23のみでは耐えられないため、補強部材23とは別に補強プレート24が必要となる。図2に示す通り、補強プレート24は、傾斜軸力部材21と水平軸力部材22とが成す角度Aと同等の角度を有する略直角三角形状に構成されている。三角形状に構成される補強プレート24の三辺の内、二辺がそれぞれに傾斜軸力部材21と水平軸力部材22とに溶接される。残りの一辺には、ボルト81を介してジャッキ受け50aの補助取付面57aが取り付けられる。また、支承40がゴム製支承41に交換された後には、ジャッキ受け50aの補助取付面57aは、補強プレート24から取り外される。
【0036】
次に、ジャッキ受け50の構成について説明する。図3(a)に示す通り、ジャッキ受け50は、ジャッキ受け50aと、そのジャッキ受け50aに対して面対称に構成されたジャッキ受け50bとを有し、それらジャッキ受け50a,50bの間に桁20を挟んだ状態で連結部材60(後述する本体連結部材61,ジャッキ面連結部材62)によって連結して構成される。ジャッキ受け50a,50bは面対称に構成されているので、ジャッキ受け50aの構成について説明し、ジャッキ受け50bの構成の説明は省略する。
【0037】
図2及び図3に示す通り、ジャッキ受け50aは、ジャッキ70に当接され平面視略長方形の平板形状に構成されるジャッキ受け面52aを備えている。ジャッキ受け面52aは、ジャッキ面連結部材62を介してボルト81によってジャッキ受け50bのジャッキ受け面52bと連結されている。また、ジャッキ受け面52aには、第1延長プレート54aと、第2延長プレート55aとがジャッキ受け面52aの平面に対して略垂直方向に立設されている。第1延長プレート54aは、平面視略長方形の平板形状に構成されており、その第1延長プレート54aの幅方向の略中央部分に第2延長プレート55aが連設されている。第2延長プレート55aは、平面視略長方形の平板形状に構成されており、第1延長プレート54aの反対側に本体プレート51aが連設されている。
【0038】
本体プレート51aは、平面視長方形で先端を傾斜軸力部材21に沿って切断された楔形の平板形状に構成されている。本体プレート51aの一部で楔形の短辺側(図2左側)にあたる部位には、補助取付面57aが形成されており、本体プレート51aの一部で楔形の長辺側(図2右側)にあたる部位には、連結プレート56aが立設されている。補助取付面57aは、ボルト81によって補強プレート24に連結されており、連結プレート56aは、平面視略長方形の平板形状に構成され、本体連結部材61を介してボルト81によって他方のジャッキ受け50bの連結プレート56bに連結されている。また、連結プレート56aは、本体プレート51aにおいて補助取付面57aの反対側に設けられ、水平軸力部材22の上面と隙間S1を隔てて本体プレート51aからジャッキ受け面52aに対して略垂直方向に延設されている。連結プレート56aが延設される本体プレート51aの上側先端部には、取付面53aが連設されている。取付面53aは、略長方形の平板形状に構成されつつ、ジャッキ受け面52aに対向して配設されており、断面矩形形状に構成される傾斜軸力部材21の下面にワンサイドボルト80によって締結されている。また、連結プレート56aの下端とジャッキ受け面52aを締結するボルト81の上部先端との間には、水平軸力部材22が配設されている。また、連結プレート56aの下端とジャッキ受け面52aを締結するボルト81の上部先端までの隙間寸法値M(図3上下方向の寸法値)は、水平軸力部材22の高さ寸法値H(図3上下方向の寸法値)より大きく設定されている。
【0039】
次に、図5を参照して第1実施の形態であるジャッキ受け50を使用してトラス橋10の支承40をゴム製支承41に交換する方法について説明する。ジャッキ受け50は、次のようにして、トラス橋10の桁20を支持する支承40を交換するために使用される。まず、桁20の傾斜軸力部材21と水平軸力部材22との接合部27に補強プレート24を溶接する(図5(a)参照)。そして、ジャッキ受け50を桁20に取り付けるために、補強プレート24が溶接された桁20の傾斜軸力部材21にワンサイドボルト80によってジャッキ受け50a,50bの取付面53a,53bを取り付け、ジャッキ受け50a,50bの補助取付面57a,57bをボルト81によって補強プレート24に取り付ける(図5(b)参照)。次に、ジャッキ受け50a,50bの連結プレート56a,56bをボルト81によって本体連結部材61を介して連結する。同様に、ジャッキ受け50a,50bのジャッキ受け面52a,52bをボルト81によってジャッキ面連結部材62を介して連結する。このようにして連結されたジャッキ受け50a,50bのジャッキ受け面52a,52bに橋脚30の上に配設されたジャッキ70を当接させ、そのジャッキ70を作動させることで桁20を支承40から持ち上げる(図5(c)参照)。そして、桁20が持ち上げられている間に支承40をゴム製支承41に交換し(図5(d)参照)ジャッキ70の作動を解除することで桁20をゴム製支承41に載置する(図5(e)参照)。その後、ボルト81を本体連結部材61から取り外してジャッキ受け50a,50bの連結プレート56a,56bを分離する。同様に、ボルト81をジャッキ面連結部材62から取り外してジャッキ受け50a,50bのジャッキ受け面52a,52bを分離する。最後に、ジャッキ受け50a,50bの取付面53a,53bからワンサイドボルト80を取り外すことで桁20の傾斜軸力部材21からジャッキ受け50a,50bが取り外されて、桁20からジャッキ受け50が取り外される(図5(f)参照)。
【0040】
図2及び図3(a)に示す通り、ジャッキ受け50では、ジャッキ受け50a,50bの取付面53a,53bがワンサイドボルト80によって傾斜軸力部材21に着脱自在に取り付けられている。よって、ジャッキ受け50は、その形状を維持したまま傾斜軸力部材21から取り外すことができるので、取り外したジャッキ受け50を別の桁20に再び使用することができる。これにより、少なくとも1つの支承40を交換する作業に必要な数のジャッキ受け50を製作すれば良く、支承交換の事業全体でのジャッキ受け50の製作コストを削減することができる。また、桁20にジャッキ受け50を溶接にて取り付けることが無いので、作業に手間が掛かる現場での溶接が少なくなり、現場での溶接の工数が削減され、支承交換全体の工数に対しての溶接の工数が占める割合を小さくすることができる。このように、ジャッキ受け50の製作コストを削減することできると共に溶接の工数が占める割合を小さくすることができるので、トラス橋10の支承40を交換するための事業コストを削減することができる。
【0041】
また、桁20に従来のジャッキ受け150(図8参照)が取り付けられる場合は、溶接にて取り付けられているので、ジャッキ受け150の形状を保ったまま取り外すことは非常に困難であり、取り外したとしても、再び使用することはできず、廃棄処分しなければならなかった。それに対し、第1実施の形態であるジャッキ受け50では、取り外したジャッキ受け50を別の桁20に再び使用することができるので、取り外したジャッキ受け50を廃棄処分する必要がなく、ゴミの発生を抑えることができる。よって、環境への負荷を低く保つことができる。
【0042】
また、従来のジャッキ受け150(図8参照)は、桁20に溶接にて取り付けられているので、桁20に溶接による熱が加わり桁20を構成する材料性状が変化し強度低下を招くおそれがあった。それに対し、第1実施の形態であるジャッキ受け50では、桁20にジャッキ受け50をワンサイドボルト80にて取り付けるので、その分、桁20への溶接量を削減して溶接の熱による材料性状の変化を抑え、桁20の強度低下を防止することができる。よって、トラス橋10の強度品質を保つことができる。
【0043】
さらに、従来のジャッキ受け150(図8参照)は、桁20に溶接で取り付けられているので、その取り付けられたジャッキ受け150は、溶断にて取り外されていた。そのため、桁20に溶断されたジャッキ受け150の一部が残され、その残されたジャッキ受け150の一部は、切断面が見苦しくトラス橋10の外観に大きな変化を与えていた。それに対し、第1実施の形態であるジャッキ受け50では、桁20にワンサイドボルト80が取り付けられた孔が残るのみであり、その孔は見かけ上その他のボルトに紛れトラス橋10の外観に大きな変化を与えることを防止することができる。よって、トラス橋10の外観品質を支承40の交換前と同等に保つことができる。
【0044】
また、例えば、桁20の重量が重く、分離されたジャッキ受け50a,50bでは、強度が足りず桁20を支持することが困難な場合には、連結プレート56a,56bをボルト81によって本体連結部材61に締結すると共に、ジャッキ受け面52a,52bをボルト81によってジャッキ面連結部材62に締結することで、ジャッキ受け50a,50bが一体化されジャッキ受け50の強度を向上させることができる。よって、同一のジャッキ受け50を使用して重量の重い桁20支持して支承40を交換することができる。よって、ジャッキ受け50の汎用性が高くなり同一のジャッキ受け50で重量の異なるトラス橋10を支持して支承40を交換することができ、重量の異なる他のトラス橋10の支承交換に使用したジャッキ受け50を再び使用することができる。これにより、支承の交換事業全体でのジャッキ受け50の製作コストを削減することできるので、トラス橋10の支承40を交換するための事業コストを削減することができる。
【0045】
また、連結プレート56aの下端とジャッキ受け面52aを締結するボルト81の上部先端までの隙間寸法値M(図3上下方向の寸法値)は、水平軸力部材22の高さ寸法値H(図3上下方向の寸法値)より大きく設定されているので、水平軸力部材22の連結プレート56a,56b側の面と連結プレート56a,56bの下端との間には、隙間S1が形成される。そのため、取付面53a,53bが傾斜軸力部材21に取り付けられる位置が上下しても、ジャッキ受け50a,50bを、水平軸力部材22を間に配設して傾斜軸力部材21に取り付けることができる。よって、ジャッキ受け50a,50bを傾斜軸力部材21に容易に取り付けることができ、ジャッキ受け50a,50bを傾斜軸力部材21に取り付けるための工数を削減することができる。これにより、トラス橋10の支承40を交換するための事業コストを削減することができる。
【0046】
同様に、連結プレート56aの下端とジャッキ受け面52aを締結するボルト81の上部先端までの隙間寸法値M(図3上下方向の寸法値)は、水平軸力部材22の高さ寸法値H(図3上下方向の寸法値)より大きく設定されているので、水平軸力部材22のジャッキ受け面52a,52b側の面と、ジャッキ受け面52a,52bを連結するボルト81の上部先端との間には、隙間S2が形成される。そのため、桁20がジャッキ受け50a,50bによって持ち上げられる場合には、桁20が自身の重量によって歪むことで水平軸力部材22がジャッキ受け面52a,52bを連結するボルト81の上部先端に接触して桁20の重量が水平軸力部材22に掛かることを防止することができる。よって、水平軸力部材22の長手方向(図3紙面前後方向)に対して直角方向(図3上下方向)の力(曲げ,せん断)が水平軸力部材22に加えられることを防止し、水平軸力部材22の破損を防止することができる。
【0047】
図3(b)に示す通り、第1延長プレート54a,54bと第2延長プレート55a,55bとは直交してジャッキ受け面52a,52bに連結されているので、ジャッキ受け面52a,52bの強度が向上し、ジャッキ受け面52a,52bに対して垂直方向(図3(b)紙面手前方向)の力による変形が少なくなる。そのため、ジャッキ70がジャッキ受け面52a,52bに当接する位置が多少ずれた場合でも、ジャッキ受け面52a,52bは、桁20の重量によるジャッキ70からの荷重を変形することなく受け止めることができるので、ジャッキ70を当接させる位置を細かに規定する必要がなく、ジャッキ70を配設する工数を削減することができる。これにより、トラス橋10の支承40を交換するための事業コストを削減することができる。
【0048】
また、連結プレート56a,56bを桁20の補強プレート24に連結すると共に、補助取付面57a,57bでジャッキ受け50a,50bの本体プレート51a,51bを締結しているので、ジャッキ受け50は、ジャッキ受け50a,50bが連結されることで強度が高められ、さらにトラス橋10の強度を利用することでも強度が高められる。その強度が高められたジャッキ受け50により桁20を安定して持ち上げることができる。そのため、支承40の交換作業を安全に行うことができるので、トラス橋10の支承40を交換するための事業の安全性を向上することができる。
【0049】
また、図3(c)に示す通り、取付面53a,53bは、傾斜軸力部材21の下面に取り付けられているので、桁20の重量が掛かり、傾斜軸力部材21の下面との間に摩擦力が発生する。その摩擦力を利用することで、ワンサイドボルト80を締結する工数を削減することができ、トラス橋10の支承40を交換するための事業コストを削減することができる。詳細については、図4を用いて桁20の重量によって作用する力を説明する過程において説明する。
【0050】
ここで、図4を参照して、桁20の重量によって作用する垂直方向の力(桁10の重量)を傾斜軸力部材の長手方向の力と、その長手方向に直交する方向の力とに分けて説明する。図4(a)は、図2の傾斜軸力部材21とジャッキ受け50aとのIVaで示した部分を拡大して示した拡大図であり、桁20の重量によって取付面53aに作用する力のベクトルを示している。また、図4(b)は、図4(a)の傾斜軸力部材21とジャッキ受け50aとのIVbで示した部分を拡大して示した拡大図であり、図4(a)で示した力のベクトルと均衡を保つベクトルである取付面53aからの反力のベクトルを示している。なお、ベクトルの始点を黒丸で、終点を矢印で示している。なお、ジャッキ受け50a,50bは面対称に構成されているので、ジャッキ受け50aを用いて説明する。
【0051】
図4(a)に示す通り、水平方向を示す仮想水平線Lに対して、傾斜軸力部材21の長手方向を示す長手方向線21LがBの角度を成している場合には、桁20の重量によって作用する力のベクトルFA1(以下、ベクトルFA1と記す。)は、傾斜軸力部材21の長手方向の力のベクトルFB1(以下、ベクトルFB1と記す。)と、傾斜軸力部材21の長手方向に直交する方向の力のベクトルFC1(以下、ベクトルFC1と記す。)とに分解される。
【0052】
本発明のジャッキ受け50が取り付けられるトラス橋10は、傾斜軸力部材21と水平軸力部材22とがAの角度(図2参照)を成しており、水平軸力部材22が水平に配設されるので、AとBとは等しい値となり、例えば、Aが60度の場合には、Bも60度となる。
【0053】
ベクトルFA1から分解されたベクトルFB1は、ベクトルFA1にsinBを乗じた値となり、ベクトルFA1から分解されたベクトルFC1は、ベクトルFA1にcosBを乗じた値となる。そこで、sin60とcos60とを計算してベクトルFA1とベクトルFB1とベクトルFC1との関係を比率で示すとベクトルFA1:ベクトルFB1:ベクトルFC1=1:0.87:0.5となり、傾斜軸力部材21の長手方向にベクトルFA1の0.87倍の力のベクトルであるベクトルFB1が作用し、傾斜軸力部材21の長手方向に直交する方向にベクトルFA1の0.5倍の力のベクトルであるベクトルFC1が作用することがわかる。
【0054】
このように、傾斜軸力部材21にジャッキ受け50a,50bの取付面53a,53bを取り付けることにより、ベクトルFA1をベクトルFB1とベクトルFC1とに分解し、ベクトルFC1をベクトルFA1に対して0.5倍とすることができる。よって、傾斜軸力部材21の長手方向に直交する方向の力のベクトルFC1が桁20の重量によって作用する力のベクトルFA1の0.5倍になった分、傾斜軸力部材21への補強を削減することができる。その結果、補強の工数を削減することができるので、トラス橋10の支承40を交換するための事業コストを削減することができる。
【0055】
図4(b)に示す通り、ベクトルFA1に対応する反力のベクトルとしてベクトルFA1と大きさが同一で反対向きのベクトルfa2(以下、反力ベクトルfa2と記す。)が生じる。その反力ベクトルfa2が取付面53aから傾斜軸力部材21へ作用し、ベクトルfb2(以下、反力ベクトルfb2と記す。)とベクトルfc2(以下、反力ベクトルfc2と記す。)とに分解される。その反力ベクトルfb2は、ベクトルFB1と大きさが同一で反対向きのベクトルである。同様に、反力ベクトルfc2は、ベクトルFC1と大きさが同一で反対向きのベクトルである。
【0056】
反力ベクトルfc2は、傾斜軸力部材21と傾斜軸力部材21の下面に取り付けられる取付面53aとの間に摩擦力fb21を作用させ、その摩擦力fb21は、ベクトルFA1が傾斜軸力部材21の長手方向線21Lの下方(図4下方)に向かって作用しているので、傾斜軸力部材21の長手方向線21Lの上方(図4上方)に向かって作用する。また、ベクトルFB1の反力ベクトルfb2は、摩擦力fb21とワンサイドボルト80の支持力fb22との和であるので、摩擦力fb21が発生した分、ワンサイドボルト80の支持力fb22の大きさはベクトルFB1の大きさよりも小さくなる。
【0057】
このように、摩擦力fb21が発生することによりワンサイドボルト80の支持力fb22の大きさを小さくすることができるので、その分、ワンサイドボルト80の本数を減らすことができる。その結果、ワンサイドボルト80を締結する工数を削減することができるので、トラス橋10の支承40を交換するための事業コストを削減することができる。
【0058】
次いで、図6を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、取付面53aは、傾斜軸力部材21の下面に対向する平板形状に構成され、傾斜軸力部材21の下面に取り付けられていたが、第2実施の形態では、傾斜軸力部材21の側面(垂直面)にジャッキ受け250aの取付面253aが取り付けられている。なお、上述した第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。また、ジャッキ受け250は、ジャッキ受け250aと、そのジャッキ受け250aに対して面対称に構成され桁20を挟んで配設されるジャッキ受け250bとを備えているので、ジャッキ受け250aの構成について説明し、ジャッキ受け250bの構成の説明は省略する。
【0059】
図6は、第2実施の形態におけるジャッキ受け250aの正面を示した正面図である。ジャッキ受け250aは、傾斜軸力部材21の側面に対向し平板形状に構成される取付面253aを備えている。その取付面253aが傾斜軸力部材21の側面(垂直面)にワンサイドボルト80によって締結されることでジャッキ受け250aは桁20に取り付けされている。そのジャッキ受け250aと桁20との取り付け角度は、それぞれに形成される取り付けの為の孔の位置によって決まる。ただし、その孔の直径は、挿入されるワンサイドボルト80の直径より大きく形成されているのでワンサイドボルト80の外径と孔の内径とに隙間が生じる。よって、ジャッキ受け250aを桁20にワンサイドボルト80によって取り付けながらでもその隙間の分だけは可動させることができる。
【0060】
これにより、ジャッキ受け250aを桁20にワンサイドボルト80によって取り付けながらジャッキ受け面52aが水平になるようにジャッキ受け250aの取り付け位置を調整することができる。その結果、ジャッキ受け面252aの水平が出ない場合、ジャッキ受け250aを取り付け直したり、水平に配設されたジャッキ70とジャッキ受け面52aとの間にできた隙間に金属板を挟んだりする必要が無くなるので、ジャッキ受け250aを取り付ける工数を削減することができ、トラス橋10の支承40を交換するための事業コストを削減することができる。
【0061】
次いで、図7を参照して第3実施の形態について説明する。第1実施の形態では、取付面53aは、傾斜軸力部材21にワンサイドボルト80によって取り付けられていたが、第3実施の形態では、傾斜軸力部材21に溶接される取り付けブラケット325aに取付面353aがボルト81によって取り付けられている。なお、上述した第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。また、ジャッキ受け350は、ジャッキ受け350aと、そのジャッキ受け350aに対して面対称に構成され桁20を挟んで配設されるジャッキ受け350bとを備えているので、ジャッキ受け350aの構成について説明し、ジャッキ受け350bの構成の説明は省略する。
【0062】
図7は、第3実施の形態におけるジャッキ受け350aの正面を示した正面図である。ジャッキ受け350aは、傾斜軸力部材21の側面に対向する平板形状に構成される取付面353aを備えている。その取付面353aが平板形状に構成され傾斜軸力部材21の側面に面を合わせて溶接される取り付けブラケット325aにボルト81によって締結されることでジャッキ受け350aは桁20に取り付けされている。それにより、傾斜軸力部材21にボルト81を挿入するための孔の形成が省略され傾斜軸力部材21の強度低下を防止することができる。よって、トラス橋10の強度品質の低下を防ぐことができる。
【0063】
また、矩形断面形状に構成され片側からしか締結できない傾斜軸力部材21ではなく、両側から締結できる平板形状に構成される取り付けブラケット325aに取付面353aを締結するので、片側から締結できるワンサイドボルト80をボルト81に変更して取付面353aを取り付けブラケット325aに締結することができる。よって、すべて同一のボルト81を使用することが可能となり、トラス橋10の支承40を交換する作業を簡素化することができる。
【0064】
また、例えば、従来のジャッキ受け150(図8参照)を溶接にて桁20に取り付ける場合に比べて、ジャッキ受け150に対して軽く小さな取り付けブラケット325aを溶接にて取り付けるので、溶接のためにブラケット325aを固定する機材が小さくて済み現場での溶接に掛かる手間を省くことができる。よって、ジャッキ受け350aを溶接する工数を削減することができ、トラス橋10の支承40を交換するための事業コストを削減することができる。
【0065】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0066】
上記実施の形態では、補助取付面57aが補強プレート24にボルト81によって締結される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、補強プレート24によって補強された桁20の一部で新設されるゴム製支承41の上方に位置する部位26に締結しても良い。この場合、補強プレート24だけで桁20を支持する場合に比べて、補強された桁20の部位と補強プレート24とで桁20を支持するので、重い桁20でも支持することができ、同一のジャッキ受け50を使用して重量の重い桁20支持し支承40を交換することができる。
【0067】
よって、ジャッキ受け50の汎用性が高くなり同一のジャッキ受け50で重量の異なるトラス橋10を支持して支承40を交換することができ、重量の異なる他のトラス橋10の支承交換に使用したジャッキ受け50を再び使用することができる。これにより、支承の交換事業全体でのジャッキ受け50の製作コストを削減することできるので、トラス橋10の支承40を交換するための事業コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】トラス橋の概略を示した側面図である。
【図2】第1実施の形態におけるジャッキ受けの正面を示した正面図である。
【図3】(a)から(c)は、ジャッキ受けと桁とを示す平面図であり、(a)は、図2のIIIa−IIIa線におけるジャッキ受けと桁との線における側面を示した側面図であり、(b)は、図2のIIIb−IIIb線におけるジャッキ受けの断面を示した断面図であり、(c)は、図2のIIIc−IIIc線における傾斜軸力部材の断面を示した断面図である。
【図4】(a)は、図2の傾斜軸力部材とジャッキ受けとのIVaで示した部分を拡大して示した拡大図である。(b)は、図4(a)の傾斜軸力部材とジャッキ受けとのIVbで示した部分を拡大して示した拡大図である。
【図5】トラス橋の支承をゴム製支承に交換する工程を示した工程図である。(a)は、補強プレートが桁に溶接された状態を示した状態図であり、(b)は、補強プレートが溶接されたトラス橋にジャッキを当接するジャッキ受けが取り付けられた状態を示した状態図であり、(c)は、ジャッキ受けを取り付けた桁20がジャッキによって持ち上げられた状態を示した状態図であり、(d)は、ゴム製支承がジャッキによって持ち上げられた桁と橋脚との間に配設された状態を示した状態図であり、(e)は、桁が橋脚に配設されたゴム製支承に載置された状態を示した状態図であり、(f)は、ジャッキ受けが撤去された状態を示した状態図である。
【図6】第2実施の形態におけるジャッキ受けの正面を示した正面図である。
【図7】第3実施の形態におけるジャッキ受けの正面を示した正面図である。
【図8】従来のジャッキ受けの正面を示した正面図である。
【符号の説明】
【0069】
10 トラス橋
20 桁
21 傾斜軸力部材
24a,24b 補強プレート(補強部材)
26 部位(補強部材によって補強された部位)
27 接合部
30 橋脚
40 支承(支承,既存の支承)
41 ゴム製支承(新たな支承)
50 ジャッキ受け
50a,250a,350a ジャッキ受け(第1ジャッキ受け)
50b,250b,350b ジャッキ受け(第2ジャッキ受け)
51a,51b,251a,251b,351a,351b 本体プレート(本体部)
52a,52b ジャッキ受け面
53a,53b,253a,253b,353a,353b 取付面
57a,57b 補助取付面
60 連結部材
70 ジャッキ
80 ワンサイドボルト(締結部材)
81 ボルト(連結部材の一部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋脚に配設されトラス橋の両端を支持する支承を交換するために、そのトラス橋の桁をジャッキにて持ち上げる場合に、前記ジャッキと桁との間に介在して使用されるジャッキ受けにおいて、
前記ジャッキに当接されるジャッキ受け面と、
そのジャッキ受け面に立設される本体部と、
その本体部の前記ジャッキ受け面の反対側に設けられ前記トラス橋の桁に締結部材によって着脱自在に取り付けられる取付面とを備えていることを特徴とするとするジャッキ受け。
【請求項2】
前記取付面は、前記トラス橋の桁であって傾斜方向に延びる傾斜軸力部材を下方から支持するものであることを特徴とする請求項1記載のジャッキ受け。
【請求項3】
前記トラス橋は、そのトラス橋を構成する桁の接合部であって前記支承によって支持される部分の接合部を補強するために、その接合部近傍に補強部材が接合されており、
前記ジャッキ受け面と前記取付面との間で前記本体部から延設されると共に、前記補強部材とその補強部材によって補強された部位との少なくとも一方に締結部材によって着脱自在に取り付けられる補助取付面を備えていることを特徴とする請求項2記載のジャッキ受け。
【請求項4】
前記ジャッキ受け面と、前記本体部と、前記取付面とを有し、前記トラス橋の桁の一側に着脱自在に取り付けられる第1ジャッキ受けと、
前記ジャッキ受け面と、前記本体部と、前記取付面とを有し、前記第1ジャッキ受けに対向して前記トラス橋の桁の他側に着脱自在に取り付けられる第2ジャッキ受けと、
前記第1ジャッキ受けと第2ジャッキ受けとを分離可能に連結する連結部材とを備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のジャッキ受け。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のジャッキ受けを用いて、トラス橋の両端を支持する既存の支承を新たな支承に交換するトラス橋の支承交換方法において、
前記トラス橋の桁に前記ジャッキ受けの取付面を締結部材によって着脱自在に取り付けるジャッキ受け取付工程と、
そのジャッキ受け取付工程により前記トラス橋の桁に取り付けられた前記ジャッキ受けのジャッキ受け面と前記橋脚との間にジャッキを配設するジャッキ配設工程と、
そのジャッキ配設工程により配設されたジャッキを作動させて前記トラス橋の桁を持ち上げる持上工程と、
その持上工程により前記トラス橋の桁が持ち上げられている間に、既存の支承を撤去して新たな支承を配設する支承交換工程と、
その支承交換工程により新たな支承が配設された後に、前記ジャッキの作動を解除してそのジャッキにより持ち上げられているトラス橋の桁を下げ、その桁を新たな支承上に載置する桁載置工程と、
その桁載置工程により新たな支承上に載置されたトラス橋の桁から、前記締結部材によって取り付けられている前記ジャッキ受けの取付面を取り外して、そのトラス橋の桁から前記ジャッキ受けを撤去するジャッキ受け撤去工程とを備えていることを特徴とするトラス橋の支承交換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−19438(P2009−19438A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−183846(P2007−183846)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】