説明

ジョークラッシャ

【課題】必要以上の作業中断を抑制することで生産性を向上させることができるジョークラッシャを提供する。
【解決手段】破砕装置フレームに固定した固定歯と、この固定歯に対して揺動する動歯と、破砕装置フレームに固定したジャッキと、このジャッキの圧油の戻り管路の圧力の最大値を規定し、規定した最大圧力を超える負荷がかかった場合にジャッキを縮退させるリリーフ弁と、ジャッキと動歯との間に介設したトグルプレートと、このトグルプレートがジャッキと動歯との間に保持されるように動歯をジャッキ側に付勢する油圧シリンダと、ジャッキのストロークを検出するストロークセンサと、このストロークセンサにより検出されたジャッキの縮退量が設定値を超えた場合に縮退分だけジャッキを伸長させる手順(S130)、及びその結果ジャッキが原位置に復帰しない場合に動歯の揺動動作を停止させる手順(S150,S160)を実行する制御装置とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岩石等の被破砕物を破砕するジョークラッシャに関する。
【背景技術】
【0002】
ジョークラッシャとは、固定歯と固定歯に対して揺動する動歯との間に形成した破砕室に被破砕物を導入して破砕するものである。この種のジョークラッシャには、被破砕物から動歯に作用する破砕反力をロックシリンダで受けるように構成したものがある(特許文献1等参照)。この従来技術では、ロックシリンダと動歯との間にトグルプレートを保持させ、トグルプレートを介してロックシリンダに伝えられる破砕反力を、シリンダチューブとピストンロッドとの間の摩擦力で受けるようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−53203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、過負荷時にロックシリンダのシリンダチューブとピストンロッドとの間の摩擦力を超える破砕反力が動歯に働いた場合、ロックシリンダが縮退して破砕室出口を拡大する方向に動歯が退避するので、トグルプレートが折損から保護される。したがって、ロックシリンダを元の状態に伸長させれば破砕作業に復帰することができる。
【0005】
しかしながら、この従来技術では、過負荷時には破砕装置を停止させ、破砕室内の異物や被破砕物を排出する等した後でロックシリンダを元の状態に復帰させて初めて破砕作業を再開することができる。言い換えれば、ロックシリンダが縮退してしまえば自動的に破砕作業が中断されてしまい、破砕室内の破砕物が完全に排出されるまでは破砕作業が再開できない。その結果、例えば、鉄筋等といった破砕不能な異物が破砕室に侵入し破砕装置の負荷が一瞬でも設定範囲を超えてしまえば、それが一時的な過負荷に過ぎない場合でも強制的に破砕作業が中断されてしまう。
【0006】
本発明の目的は、必要以上の作業中断を抑制することで生産性を向上させることができるジョークラッシャを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、破砕装置フレームと、この破砕装置フレームに固定した固定歯と、この固定歯との間に破砕室を形成し前記固定歯に対して揺動するように前記破砕装置フレームに偏心軸を介して支持された動歯と、この動歯の前記破砕室と反対側の空間にて前記破砕装置フレームに固定したジャッキと、このジャッキの圧油の戻り管路の圧力の最大値を規定し、規定した最大圧力を超える負荷がかかった場合に前記ジャッキを縮退させるリリーフ弁と、前記ジャッキと前記動歯との間に介設したトグルプレートと、このトグルプレートが前記ジャッキと前記動歯との間に保持されるように前記動歯を前記ジャッキ側に付勢する付勢手段と、前記ジャッキのストロークを検出するストロークセンサと、このストロークセンサにより検出された前記ジャッキの縮退量が設定値を超えた場合に検出された縮退量だけ前記ジャッキを伸長させる手順、及びこの手順を実行した結果ジャッキが原位置に復帰しない場合に前記動歯の揺動動作を停止させる手順を実行する制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、他の発明は、上記発明において、ホッパに投入された被破砕物を前記破砕室に供給するフィーダをさらに備え、前記制御装置は、前記ストロークセンサにより検出された前記ジャッキの縮退量が設定値を超えた場合、検出された縮退量だけ前記ジャッキを伸長させる前に前記フィーダを停止させる手順を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、過負荷時には、ジャッキが縮退しトグルプレートが折損から保護されるので、トグルプレートを交換しなくてもジャッキを縮退前の位置に復帰させれば破砕作業を続行することができる。このとき、ジャッキが縮退した場合でも即座に運転停止せず、破砕装置を作動させたままジャッキの原位置への復帰を図り、原位置に復帰しない場合にのみ破砕作業を中断する必要があると判断し破砕装置20を停止させることにより、ジャッキが縮退前の状態に復帰するようであれば破砕作業が中断されない。このように、必要以上の作業中断を抑制することで生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の一実施の形態に係るジョークラッシャの全体構造を表す側面図、図2はその上面図、図3は図1中の左側から見た背面図、図4は図1中の右側から見た正面図である。以下の説明において、図1中の左・右を、それぞれジョークラッシャの後・前又は本体フレーム長手方向の一方側・他方側とする。
図1〜図4に示したジョークラッシャは、例えばビル解体時に搬出されるコンクリート塊や道路補修時に排出されるアスファルト塊等の建設現場で発生する大小様々な建設廃材、産業廃棄物、若しくは岩石採掘現場や切羽で採掘される岩石・自然石等を破砕対象とし、これらを被破砕物として受け入れて破砕するものである。また本ジョークラッシャは、走行体1と破砕機本体部2を備えており、破砕機本体部2の下部に走行体1を設けたことにより自走機能を有している。但し、本発明の適用対象はこのような自走機能を有するジョークラッシャに限らず、牽引走行可能なジョークラッシャや定置式のジョークラッシャにも本発明は適用可能である。
【0011】
走行体1は、走行装置3と走行装置3の上方にほぼ水平に設けられた本体フレーム4とで構成されている。走行装置3は、トラックフレーム5、トラックフレーム5の両端に設けた従動輪及び駆動輪(ともに図示せず)、従動輪及び駆動輪に掛け回した履帯7、及び駆動輪の軸に出力軸が連結された走行用駆動装置8を備えている。なお、トラックフレーム5は本体フレーム4の下部に連設されており、本実施の形態において、トラックフレーム5はトラックフレーム4と一体形成されている。
【0012】
破砕機本体部2は、破砕対象(被破砕物)を受け入れるホッパ12、ホッパ12に受け入れた被破砕物を粒度選別し後段工程に供給するグリズリフィーダ15、グリズリフィーダ15により供給された被破砕物を破砕する破砕装置20、破砕装置20で破砕した破砕物等を機外に排出する排出コンベア25、及び機体各所に搭載した作動装置の動力源等を内蔵した動力装置(パワーユニット)40を備えている。
【0013】
ホッパ12は、上方に向かって拡開した枠状の部材であり、本体フレーム4の長手方向一方側の上部に設けた支持部材13に対して支持ポスト9,10を介して固定されている。
【0014】
グリズリフィーダ15は、ホッパ12の下方に位置し、ホッパ12とは別個にスプリング(図示せず)を介して支持部材13に支持されている。このグリズリフィーダ15の本体16内には、本体フレーム4の幅方向(図2中上下方向)に列設された櫛歯17を前端部に有する複数(本実施形態では2つ)のグリズリバー18が前方に向かって下る階段状に固定されている。そしてグリズリフィーダ本体16の下部には、このグリズリフィーダ本体16を振動させるフィーダ用駆動装置19が固定されており、フィーダ用駆動装置19によってグリズリフィーダ本体16が加振されると、グリズリバー18上の被破砕物が前方に搬送され、櫛歯17間の隙間寸法よりも小さな被破砕物中の細粒(いわゆるズリ)等が櫛歯17の隙間から落下し、それよりも粒度の大きな被破砕物が櫛歯17上を移動して破砕装置20に供給される。
なお、グリズリバフィーダ15の櫛歯17の下方にはシュート11が設けられており、櫛歯17間の隙間から落下するズリ等はシュート11によって排出コンベア25の後端付近に導かれる。
【0015】
破砕装置20は、ホッパ12及びグリズリフィーダ15よりも前方側に位置し、本体フレーム4の長手方向中央付近に支持されている。詳細は後で図5等を用いて説明するが、この破砕装置20には、互いの間隙空間(破砕室)が下方に向かって縮径するよう対向配置した一対の固定歯及び動歯を備えている。動歯のスイングジョーは上端部がフライホイール(図示せず)に連結されており、フライホイールに破砕装置用駆動装置21(図2参照)の回転動力が伝達されると、フライホイールの回転運動が動歯の揺動運動に変換され、これにより固定歯に対してほぼ前後方向に動歯が揺動するようになっている。
【0016】
排出コンベア25は、コンベアフレーム26、コンベアフレーム26の両端に設けた従動輪及び駆動輪(ともに図示せず)、従動輪及び駆動輪に掛け回したコンベアベルト(図示せず)、及び駆動輪を回転駆動させる排出コンベア用駆動装置(図示せず)等を備えている。この構成により、排出コンベア用駆動装置によって駆動輪が回転駆動されると、従動輪との間に掛け回されたコンベアベルトが循環駆動する。本例では、こうした排出コンベア25が、シュート11の下方位置から破砕装置20の下方を通って前方に向かって斜めに立ち上がるよう、支持部材31,32等を介し本体フレーム4等から吊り下げ支持されている。
【0017】
排出コンベア25の上方には、排出する破砕物中の鉄筋等といった異物(磁性物)を除去する磁選機35が備えられている。磁選機35は、本体フレーム4とコンベアフレーム26に架け渡されたアーム部材36に吊り下げ支持されており、図示しない駆動輪及び従動輪に巻回した磁選機ベルト39が排出コンベア25に対しほぼ直交するよう配置されている。そして図示しない駆動輪及び従動輪の間の磁選機ベルト39に覆われた空間には磁力発生手段(図示せず)が設けられており、排出コンベア25の破砕物中に鉄筋等の異物が混入している場合、磁選機ベルト39越しに作用する磁力発生手段からの磁力によって異物が磁選機ベルト39に吸着され、循環駆動する磁選機ベルト39によって排出コンベア25の側方に搬送され落下する。
【0018】
動力装置40は、本体フレーム4の長手方向他方側端部に支持されており、破砕装置20よりも前方側に位置している。特に図示していないが、この動力装置40内には、本ジョークラッシャの動力源となるエンジンや、エンジンによって駆動される油圧ポンプ60(後述の図7参照)、油圧ポンプ60から吐出された圧油の流通方向や流量を制御して対応の油圧アクチュエータに供給する制御弁66等が備えられている。
【0019】
図5及び図6は破砕装置20の内部構造を表す側断面図で、図5は作業状態、図6は動歯が退避した状態をそれぞれ表している。但し、これらの図において後述する固定歯板と可動歯板は図示省略してある。
図5及び図6において、破砕装置20は、本体フレーム4に固定した破砕装置フレーム41、破砕装置フレーム41に固定した固定歯42、固定歯に対して揺動する動歯43、及び動歯43の下部側を支持するトグルプレート44を備えている。
【0020】
固定歯42は、厳密には破砕装置フレーム41に固定された支持部材45と、この支持部材45の前面(動歯43側)に固定された固定歯板(図示せず)とを備えている。また動歯43は、破砕装置フレーム41にフライホイール(図示せず)の偏心軸47を介して揺動自在に取り付けたスイングジョー48と、このスイングジョー48の後面(固定歯42側)に固定された可動歯板(図示せず)とを備えている。そして動歯43と固定歯42は互いの歯板が向かい合うように対向配置され、両歯板間に下方に向かって縮径する破砕室49が形成される。この破砕室49に供給された被破砕物は動歯43の揺動運動により固定歯42及び動歯43によって噛み砕かれるようにして破砕される。破砕装置20から排出される破砕物の粒度は、破砕室49の下部出口幅、つまり固定歯板と可動歯板の最小間隙により規定される。
【0021】
ここで、動歯43の破砕室49と反対側(図5中右側)の空間には、例えば破砕室49で異物の噛み込み等が起こる等して過負荷が生じた場合にトグルプレート44等の部材を過大な荷重から保護する過負荷保護装置50が設置されている。この過負荷保護装置50は、スイングジョー48に作用する破砕反力が設定範囲を超えた場合、図5の作業状態から図6のように縮退し過大な破砕反力を逃がすジャッキ51を備えている(詳細は後述)。
【0022】
ジャッキ51は破砕装置フレーム41に固定されており、ジャッキ51のロッド52の先端部とスイングジョー48の前面下部にはそれぞれトグルシート53,54が設けられている。トグルシート53,54には、それらの間に介設されたトグルプレート44の両端が当接しており、油圧シリンダ55(図6参照、図5では図示省略)によってスイングジョー48の下端部がジャッキ51側に付勢されることでトグルプレート44がトグルシート53,54間に挟み込まれて保持される。油圧シリンダ55の両端は、ジャッキ51の下部とスイングジョー48の前面下端部近傍部分に回動可能に連結されている。なお、本実施の形態では、油圧シリンダ55によってスイングジョー48をジャッキ51側に付勢する構成を採ったが、油圧シリンダ55に代えてスプリングによってスイングジョー48をジャッキ51側に付勢する構成としても良い。
【0023】
図7は本実施の形態のジョークラッシャの油圧駆動装置のうちジャッキ51の駆動に関する部分の概要を抽出して表す油圧回路図である。
この図7に示した油圧駆動装置は、図示しないエンジン(又は電動機)により駆動される油圧ポンプ60、油圧ポンプ60の吐出管路61に設けた制御弁62及び逆止弁63、制御弁62を介して供給される圧油によって駆動する上記ジャッキ51、及びこのジャッキ51からタンク64への戻り管路65に設けたリリーフ弁66を備えている。リリーフ弁66は、ジャッキ51の圧油の戻り管路65の圧力の最大値をそのバネ66aの付勢力によって規定し、破砕反力を受けて上昇する戻り管理65の圧力が規定した最大圧力を超えた場合に戻り管路65をタンク64に連通させてジャッキ52を縮退させる役割を果たし、ジャッキ51とともに先の過負荷保護装置50を構成する。
【0024】
図7に示した油圧駆動装置では、制御装置(後述)からソレノイド部62cに駆動信号が入力され、制御弁62が連通位置62bに切り換わると、油圧ポンプ60とジャッキ51のボトム側のチャンバ51aとが吐出管路61を介して連通し、油圧ポンプ60から吐出された圧油によってジャッキ51のボトム側チャンバ51aが加圧され、ロッド52を押し出してジャッキ51を伸張させるように作用する。
【0025】
一方、通常の状態では、制御弁62はバネ62dの付勢力によって遮断位置62aの状態にあり、吐出管路61の圧油の流れを遮断している。図7のように制御弁62が遮断位置62aにあるとき、ジャッキ51に対する圧油の給排経路が閉じた状態となるため、ジャッキ51のストロークはその時点の状態で保持される。しかし、破砕作業中には破砕室49内の被破砕物からスイングジョー48に作用する破砕反力がトグルプレート44を介してジャッキ51のロッド52に作用するため、ロッド52に破砕反力が伝達されると、ジャッキ51のボトム側のチャンバ51a内の圧油をチャンバ51a外へ押し出そうとする力が作用する。
【0026】
破砕反力が設定された値を超えない場合、リリーフ弁66がバネ66aの付勢力によって遮断位置にあるため、ロッド52に破砕反力が作用してもジャッキ51のボトム側チャンバ51a内の圧油は逆止弁63及びリリーフ弁66間の管路内に封入された状態となり、ロッド52のストロークはそのまま保持される。
【0027】
しかし、ロッド52に伝わる破砕反力が設定値を超えた場合、ジャッキ51のボトム側チャンバ51aから押し退けられる圧油によって戻り管路65内の圧力が上昇し、その圧力がバネ66aの付勢力を超えると、リリーフ弁66が連通位置に切り換わる。これによりジャッキ51のチャンバ51aとタンク64が戻り管路65を介して接続し、戻り管路65の圧力がバネ66aの付勢力を下回るまでチャンバ51a内の圧油が排出され、この圧油の排出流量分だけロッド52が後退しジャッキ51が縮退する。
【0028】
このとき、本実施の形態において、ジャッキ51には、ロッド52のストローク位置(又はストローク量)を検出するストロークセンサ70が設けられている。このストロークセンサ70により検出されたロッド52のストローク位置は制御装置80に出力される。
【0029】
図8は制御装置80のブロック図である。
図8において、制御装置80は、ストロークセンサ70の検出信号を入力しデジタル信号に変換するアナログ入力部(A/D変換器)81、例えば機体に設けた操作盤(図示せず)の操作スイッチ71からの操作信号を入力するデジタル入力部82、アナログ入力部81に入力されたストロークセンサ70による検出値等を一時的に記憶する一時記憶部(RAM)83、制御に必要なプログラムや定数等を格納した記憶部(ROM)84、アナログ入力部81に入力された検出信号を基に記憶部84から読み出した所望のプログラムに従って各種指令値を演算する演算制御部(CPU)85、演算制御部85からの指令値を入力し操作盤等に設けた表示部72への表示信号を演算し出力したり画面のタッチ操作により表示部72から入力される操作信号を入力したりする表示制御部86、演算制御部85からの指令値を入力し制御弁62のソレノイド部62cやその他の作動装置に指令信号を出力するデジタル出力部87、及び時間計測するタイマ88を備えている。
【0030】
記憶部84には、ストロークセンサ70により検出されたジャッキ51のロッド52の縮退量が設定値を超えた場合、検出された縮退量だけジャッキ51を伸長させる手順、及びこの手順を実行した結果ジャッキ51が原位置に復帰しない場合に動歯43の揺動動作を停止させる手順を演算制御部85に実行させるためのプログラムが格納されている。また本実施の形態において、記憶部84には、ストロークセンサ70により検出されたジャッキ51の縮退量が設定値を超えた場合、検出された縮退量だけジャッキ51を伸長させる前にグリズリフィーダ15を停止させる手順を演算制御部85に実行させるためのプログラムも記憶されている。
【0031】
次に、上記構成の本実施の形態のジョークラッシャの動作を説明する。
油圧ショベル等によりホッパ12に被破砕物を投入すると、投入された被破砕物はグリズリフィーダ15上に導かれ、振動により破砕装置20に向かって搬送される。その際、グリズリバー18の各櫛歯17間の隙間よりも小さな細粒(ズリ等)は、その隙間からシュート11を介して排出コンベア25上に導かれ、それより大きな被破砕物(大塊)が破砕装置20に供給される。破砕装置20に供給された被破砕物は、固定歯42と動歯43との出口隙間に応じた所定の粒度に破砕処理され下方の排出コンベア25上に導入される。排出コンベア25上に導かれた破砕物は、シュート11を介して導かれた細粒と合流して前方(図1中右側)に搬送され、その途中で磁選機35により鉄筋等の異物を吸着除去された上で機外に排出される。
【0032】
ここで、破砕作業中に動歯43が被破砕物より受ける破砕反力はトグルプレート44を介してロッド52に伝達される。この破砕反力がリリーフ弁66により規定された設定値以内である場合には、ジャッキ51のボトム側チャンバ51a内の圧油はリリーフ弁66及び逆止弁63の間の管路に封入された状態となるため、ジャッキ51のロッド52のストロークはその時点の状態で保持される。
【0033】
しかし、破砕作業中には、例えば破砕室49に鉄筋等といった破砕不能な異物が供給されてしまったり破砕室49への被破砕物が供給過多になったりして過負荷状態に陥ることがある。このように過負荷状態に陥り、スイングジョー48にかかる破砕反力がリリーフ弁66により規定された設定値を超えた場合、過負荷保護装置50が作動して前述したようにジャッキ51が縮退し、これにより過負荷状態が回避され、トグルプレート44も折損から保護される。
【0034】
このとき、本実施の形態のジョークラッシャにおいては、過負荷保護装置50が働いた場合、即座に破砕作業を中断せずに破砕作業を続行しながらジャッキ51の原位置への復帰を図り、設定時間の間にジャッキ51のストロークが原位置に復帰しない場合に破砕作業を中断する。
【0035】
図9は制御装置80による過負荷時の機体制御手順を表すフローチャートである。
図9において、まず、例えば操作盤(図示せず)の操作スイッチ71が操作され、運転開始を指令する操作信号がデジルタル入力部82に入力されると、ステップ100にて、入力された操作信号と記憶部84に格納されたプログラムに従って演算制御部85で各作動装置(グリズリフィーダ15・破砕装置20・排出コンベア25、磁選機35等)の駆動装置への指令信号が生成され、その指令信号がデジタル出力部87を介して各駆動装置に出力され各作動装置が作動する。
【0036】
運転中、制御装置80には、機体各所に設けたセンサ類からの検出信号が随時(又は設定時間毎)に入力される。運転中、ストロークセンサ70からの検出信号がアナログ入力部81に入力されると、デジタル信号化された検出値が一時記憶部83に記憶され、また一時記憶部83に記憶された検出値に応じて演算制御部85にて演算されたジャッキ51のロッド52のストローク位置Xが一時記憶部83に逐次記憶される。
【0037】
このように、運転中、ジャッキ51のロッド52のストローク位置Xは制御装置80によって監視されており、続くステップ110において、演算したロッド52のストローク位置Xが記憶部84に格納された設定位置X1に達したかどうかが演算制御部85によって判定される。その結果、ストローク位置Xが設定位置X1に到達していないと判定されればステップ100に手順が戻って現状の運転状態が継続され、ストローク位置Xが設定位置X1に到達していると判定されればステップ120に手順が移る。
【0038】
ステップ120に手順が移ったら、制御装置80は、フィーダ用駆動装置19に停止信号を出力してグリズリフィーダ15を停止させ、破砕装置20への被破砕物の供給を中断してステップ130に移行する。
【0039】
ステップ130において、制御装置80は、ロッド52のストローク位置Xを補正しロッド52の元の位置への復帰を図る。具体的には、制御装置80は、ジャッキ51を伸長させる指令信号を生成し、デジタル出力部87を介して制御弁62のソレノイド部62cに出力する。これにより、制御弁62が連通位置62bに切り換わり、ジャッキ51を伸長させるべくジャッキ51の出口側チャンバ51aが加圧される。
【0040】
続くステップ140において、制御装置80は、検出された補正後のロッド52のストローク位置Xを、一時記憶部83に記憶された運転開始時のロッド52のストローク位置(原位置)X0と比較し2つの値が等しいかどうかを判定する(この2つの値は完全同一とせず、誤差に許容範囲を設定することが望ましい)。その結果、ロッド52が原位置X0に復帰したと判定された場合には、ステップ100に手順が戻ってフィーダ用駆動装置19を駆動する指令信号が出力され、再びグリズリフィーダ15が作動して破砕装置20への被破砕物の供給が再開される。ここまでの間、過負荷状態に陥ったとしてもステップ120→ステップ130→ステップ140→ステップ100と手順の実行中は、グリズリフィーダ15を停止して破砕装置20への被破砕物の供給を一時的に中断するのみで、破砕装置20の運転は続行される。
【0041】
一方、ステップ140において、ロッド52のストローク位置Xが原位置X0まで戻っていないと判定した場合、制御装置80は、ステップ150に手順を移し、タイマ88の計測時刻を基に、ロッド52を原位置X0に復帰させるべくステップ130にてソレノイド部62cに指令信号を出力してからの経過時間Tが設定時間T1を超えたかどうかを判定する。その時点で設定時間T1が経過していなければ、手順をステップ130に戻し、ロッド52を原位置X0に復帰させるべくソレノイド部62cに再度指令信号を出力する。
【0042】
しかし、ステップ150において、ロッド52が原位置X0に復帰しないまま設定時間T1が経過してしまっていれば、制御装置80はステップ160に手順を移行する。そしてステップ160では、他の各作動装置(破砕装置20・排出コンベア25、磁選機35等)を停止させる指令信号を生成してデジタル出力部87を介して各駆動装置に出力し、破砕作業を中断して図9の手順を終了する。
【0043】
なお、特に図9のフローチャート中には示していないが、制御装置80は、一時記憶部83にロッド52のストローク位置Xを逐次記憶するとともに表示制御部86を介して制御盤の表示部72等に表示信号を出力し、作業者にロッド52のストローク位置Xを逐次通知するようにしても良い。また、ストローク位置Xを逐次表示するのではなく、破砕装置20が過負荷状態である旨、すなわち過負荷保護装置50が作動中である旨を表示するようにしても良い。その場合、例えばステップ110でX≧X1と判定されてからステップ140でX=X0と判定されるまでの間、視覚的又は聴覚的な通知を行うようにすることが考えられる。視覚的通知としては、例えば表示部86にその旨を伝える文字情報を表示したり、表示部86又は警告灯(図示せず)等に光や色彩を用いて表示したりすることが考えられる。また聴覚的通知としては、音声による通知や警告音による通知が考えられる。
【0044】
以上説明した本実施形態によれば、次のような様々な効果が得られる。
(1)生産性の向上
本実施の形態では、過負荷時には、ジャッキ51が縮退しトグルプレート44が折損しないので、トグルプレート44を交換しなくてもジャッキ51を縮退前の位置に復帰させれば破砕作業を続行することができる。このとき、本実施の形態では、ジャッキ51が縮退した場合でも即座に運転停止せず、破砕装置20を作動させたままジャッキ51の原位置への復帰を図り、原位置に復帰しない場合にのみ破砕作業を中断する必要があると判断し破砕装置20を停止させる。つまり、ジャッキ51が縮退前の状態に復帰するようであれば、それまでの間、破砕装置20は継続的に作動し破砕作業が中断されることがない。
【0045】
仮に過負荷時に破砕作業を中断する場合、例えば比較的小さな異物が破砕室49に供給されたものの破砕作業を続行してしまえば異物が自然排出されるようなとき、また一時的に被破砕物が供給過多状態に陥っただけで破砕作業を続行すれば自然に過負荷状態を脱することができるようなとき、本実施の形態では破砕作業を継続して通常の負荷状態に復帰することができる。このように、本実施の形態によれば、必要以上の作業中断を抑制することで生産性を向上させることができる。
【0046】
また、破砕室49に異物が混入し過負荷反故装置50が作動してすぐに破砕装置20を停止させてしまうと破砕室49内に被破砕物が在留してしまうため、破砕室49からの異物排出や破砕作業再開に際して破砕室49からの被破砕物の排出に多大な労力を要する。それに対しても、本実施の形態の場合、破砕装置20を停止させる必要があるような異物が破砕室49に供給されてしまったとしても、過負荷保護装置50が作動してから設定時間が経過する間は破砕室49の出口が広がった状態で破砕装置20が作動するので、その間に被破砕物の大部分が排出される可能性が高い。これにより、破砕作業を中断し再開するに際して要する労力の軽減も期待できる。
【0047】
なお、過負荷状態に陥った場合でなく、仮に制御弁62やジャッキ51等に圧油のリーク(漏れ)によりジャッキ51のストロークが変化した場合でも、そのストロークが設定値を超えた場合には、図9の制御手順が実行されて破砕条件を設定条件に復帰させることができることもメリットである。
【0048】
(2)過負荷保護装置の作動安定性の向上
例えばロックシリンダ等を用いて過負荷保護装置を構築すると、トグルプレートにかかる破砕反力の最大値(つまり過負荷保護装置の作動圧力)はロックシリンダのロッドとシリンダチューブの間に作用する最大静止摩擦力により規定される。そのため、繰り返し過負荷保護装置が作動すれば、それに伴ってロッドとシリンダチューブとの間の最大静止摩擦力が小さくなり、当初想定していた条件よりもトグルプレートにかかる破砕反力の許容値が低下し、必要以上に過負荷保護装置が作動してしまい生産性が低下する恐れがある。
【0049】
それに対し、本実施の形態において、トグルプレート44にかかる破砕反力の最大値はリリーフ弁66のバネ66aの付勢力により規定されるので、繰り返し過負荷保護装置50が作動するようなことがあってもその作動条件は一定であり、生産性を向上させるとともに破砕物の粒度の変動を抑制することができる。加えて、過負荷保護装置50が働いたとき、ジャッキ51のボトム側チャンバ51aに加圧しても、圧油の管路61,65の圧力がリリーフ弁66により規定される保護圧を超えることがないので、ロッド52を原位置に復帰させる際にジャッキ51及びトグルプレート44に設定値以上の圧力がかかることを防止することができる。
【0050】
また、ロックシリンダは締り嵌め力をロッドの保持力とし、ロッドを摺動させるときにシリンダチューブの内径を広げて締付力を弱めてロッドのチャンバを加圧する仕組みであるため、ロッドを摺動させる際にロッドの保持力が低下してしまう。それに対し、本実施の形態では、ロッド52の保持力は、リリーフ弁66のバネ62aで規定されるので、回路に圧油が封入されてさえいればジャッキ51の作動時でも非作動時でも変わらない。したがって、本実施の形態は過負荷時にも設定時間が経過する間は破砕装置20を継続的に作動させるが、このような場合にも保持時と同じ条件でロッド52を作動させることができる。
【0051】
(3)構造の簡素化
ロックシリンダを用いて過負荷保護装置を構成した場合、ロックシリンダは、伸縮用の油圧系統とロッド保持用の摩擦力を作用させるための油圧系統が必要であり、油圧駆動回路がそれだけ複雑になる。またロックシリンダ自体が高価な機器であるため、油圧駆動装置の製作コストも高騰する。
【0052】
それに対し、本実施の形態においては、ジャッキ51の保持力はリリーフ弁66により確保されるので、過負荷保護装置50の駆動装置としてはジャッキ51のみで足り、過負荷保護装置の構造を簡素化することができ、経年によりジャッキ51やリリーフ弁66等が劣化した場合でも部品交換が容易である。またジャッキ51も通常のもので足りるため、油圧駆動装置の低廉化にも寄与する。
【0053】
(4)その他
例えば、ジャッキ51のボトム側チャンバ51aや、リリーフ弁66と逆止弁63の間の管路に圧力センサを設け、それらの内圧を監視できるように構成すれば、ロッド52の保持圧を確認することができる。したがって、例えば過負荷保護装置50が作動した際の圧力を監視し、その結果を受けてリリーフ弁66のバネ66aの付勢力を調整することで過負荷保護装置50の作動精度を調整することができる。
【0054】
以上、本実施の形態においては、過負荷保護装置50が作動した場合、ジャッキ51のロッド52を原位置に復帰させるに際し、事前にグリズリフィーダ15を停止して破砕装置20への被破砕物の供給を中断するようにしてジャッキ51が伸長し易い状態としたが、破砕作業を継続しつつジャッキ51を伸長する限りにおいては必ずしもグリズリフィーダ15を停止させる必要はない。この手順の有無に関しては、トグルプレート44の折損の危険性を考慮に入れつつ、図9における設定時間T1の長さの設定とともに事前に検討する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施の形態に係るジョークラッシャの全体構造を表す側面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るジョークラッシャの全体構造を表す上面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るジョークラッシャの全体構造を表す背面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係るジョークラッシャの全体構造を表す正面図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係るジョークラッシャに備えられた破砕装置の内部構造を表す側断面図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係るジョークラッシャに備えられた破砕装置の内部構造を表す側断面図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係るジョークラッシャの油圧駆動装置のうちジャッキの駆動に関する部分の概要を抽出して表す油圧回路図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係るジョークラッシャに備えられた制御装置のブロック図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係るジョークラッシャに備えられた制御装置による過負荷時の機体制御手順を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0056】
15 グリズリフィーダ
41 破砕装置フレーム
42 固定歯
43 動歯
44 トグルプレート
47 偏心軸
49 破砕室
51 ジャッキ
55 油圧シリンダ
65 戻り管路
66 リリーフ弁
70 ストロークセンサ
80 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕装置フレームと、
この破砕装置フレームに固定した固定歯と、
この固定歯との間に破砕室を形成し前記固定歯に対して揺動するように前記破砕装置フレームに偏心軸を介して支持された動歯と、
この動歯の前記破砕室と反対側の空間にて前記破砕装置フレームに固定したジャッキと、
このジャッキの圧油の戻り管路の圧力の最大値を規定し、規定した最大圧力を超える負荷がかかった場合に前記ジャッキを縮退させるリリーフ弁と、
前記ジャッキと前記動歯との間に介設したトグルプレートと、
このトグルプレートが前記ジャッキと前記動歯との間に保持されるように前記動歯を前記ジャッキ側に付勢する付勢手段と、
前記ジャッキのストロークを検出するストロークセンサと、
このストロークセンサにより検出された前記ジャッキの縮退量が設定値を超えた場合に検出された縮退量だけ前記ジャッキを伸長させる手順、及びこの手順を実行した結果ジャッキが原位置に復帰しない場合に前記動歯の揺動動作を停止させる手順を実行する制御装置と
を備えたことを特徴とするジョークラッシャ。
【請求項2】
ホッパに投入された被破砕物を前記破砕室に供給するフィーダをさらに備え、前記制御装置は、前記ストロークセンサにより検出された前記ジャッキの縮退量が設定値を超えた場合、検出された縮退量だけ前記ジャッキを伸長させる前に前記フィーダを停止させる手順を実行することを特徴とする請求項1のジョークラッシャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−125495(P2007−125495A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320125(P2005−320125)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】