説明

ジルコニウム化合物、該化合物を含有する電荷制御剤および該化合物の製造方法

【課題】電子写真用トナーとして有用な新規ジルコニウム化合物を提供する。
【解決手段】次の一般式(1)


[式中、Rは4級炭素、メチン、メチレンであり、Yは4位と5位に結合する飽和結合又は不飽和結合で結ばれた環状構造を表し、R、Rは相互に独立してアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、水素等を表し、Rは水素又はアルキル基を表し、lは0又は3から12の整数、mは1から20の整数、nは0又は1から20の整数、oは0又は1から4の整数、pは0又は1から4の整数、qは0又は1から3の整数、rは1から20の整数、sは0又は1から20の整数である。但しqが0の場合、全てのRが同時に水素ではないものとする。]で表される4価のジルコニウム化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なジルコニウム化合物に関する。更に、電子写真、静電記録等の分野において静電潜像を現像するために用いられる電子写真用トナーの電荷制御剤として有用な新規なジルコニウム化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式による画像形成プロセスでは、無機又は有機材料からなる感光体に静電潜像を形成し、これをトナーにより現像、紙やプラスチックフィルム等に転写、定着して可視潜像を得る。感光体にはその構成により正帯電性と負帯電性があり、露光により印字部を静電画像として残す場合は逆符号帯電性トナーにより現像する。一方、印字部を除電して反転現像を行う場合は同符号帯電性トナーにより現像する。
トナーはバインダーレジンと着色剤、及びその他の添加剤により構成される。望ましい摩擦帯電特性(帯電速度、帯電レベル、帯電安定性等)や経時安定性、環境安定性を付与するために一般に電荷制御剤が添加される。この電荷制御剤の添加によりトナーの特性は大きく影響を受ける。正帯電性感光体を用いて逆符号帯電性トナーで現像する場合及び負帯電性感光体を用いて反転現像する場合には負帯電性トナーが使用され、この場合には負帯電性電荷制御剤が添加されている。
更に今後の市場拡大が予想されるカラートナーの場合においては、色相に影響を与えない淡色、望ましくは無色の電荷制御剤が必要不可欠である。これら淡色あるいは無色の電荷制御剤としては、例えばサルチル酸誘導体の金属錯塩化合物(特公昭55−42752号、特開昭61−69073号、特開昭61−221756号、特開平9−124659号等)、芳香族ジカルボン酸金属塩化合物(特開昭57−111541号等)、アントラニル酸誘導体の金属錯塩化合物(特開昭62−94856号等)、有機ホウ素化合物(米国特許4767688号、特開平1−306861号等)がある。
【0003】
しかしながら、これらの電荷制御剤は今後更に重要視される環境安全性に対して懸念されているクロム化合物であったり、カラートナーに必要な無色又は淡色化が十分なされていない化合物であったり、帯電付与効果の不足、トナーの逆帯電化、あるいは分散性や化合物そのものの安定性に乏しい等の欠点があり、電荷制御剤として満足する性能を有するものはなかった。
そこで、本発明の目的は環境安全性に優れ、無色又は淡色で、かつ化合物としての安定性が高く、電子写真用トナーの電荷制御剤として有用な化合物を提供すること。更にはバインダーレジンに対する分散性が良好なこの化合物を含有する電荷制御剤を提供すること。更にはこの化合物の製造方法を提供することである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らはこれら課題を解決すべく中心金属として4価金属であるジルコニウム(Zr)に注目し、特に4価の陽イオン体、オキソ錯体である2価の陽イオン体とサリチル酸、又はサリチル酸誘導体との各種化合物を合成し検討を行った。これらの組み合わせによって得られる化合物が特異的にバインダーレジンとの分散性が良好で電子写真用トナーに良好な帯電特性を付与することができる無色で安定な化合物であることを見出し、これを電荷制御剤として使用することにより今までの電荷制御剤の欠点を補う優れた電子写真用トナーが得られることを見出し本発明を完成させるに至った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は芳香族オキシカルボン酸又はその塩と、ジルコニウム又はオキソジルコニウムを含む化合物とから得られることを特徴とするジルコニウム化合物であり、さらに具体的には、
次の一般式(1)
【0006】
【化1】

【0007】
[式中、Rは4級炭素、メチン、メチレンであり、N、S、O、Pのヘテロ原子を含んでいてもよく、Yは4位と5位に結合する飽和結合又は不飽和結合で結ばれた環状構造を表し、R、Rは相互に独立してアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、置換基を有していても良いアリール基又はアリールオキシ基又はアラルキル基又はアラルキルオキシ基、ハロゲン基、水素、水酸基、置換基を有していても良いアミノ基、カルボキシル基、カルボニル基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホニル基、シアノ基を表し、R は水素又はアルキル基を表し、lは0又は3から12の整数、mは1から20の整数、nは0又は1から20の整数、oは0又は1から4の整数、pは0又は1から4の整数、qは0又は1から3の整数、rは1から20の整数、sは0又は1から20の整数である。但しqが0の場合、全てのRが同時に水素ではないものとする。]で表される4価のジルコニウム化合物である。更に、上記一般式(1)で表されるジルコニウム化合物の代表は、サリチル酸誘導体である3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸のジルコニウム化合物である。
【0008】
本発明について、詳細に説明する。
本発明の一般式(1)におけるアルキル基、アルケニル基及びアルコキシ基は炭素数は1〜9程度のアルキル基、アルケニル基及びアルコキシ基である。本発明のジルコニウム化合物が一般式で表される点については、第2図、第5図、第6図及び第7図のプロトンNMRチャート、第3図のIRチャート(Nujol法)及び第4図のラマンスペクトルより裏付けられる。
本発明のジルコニウム化合物を用いた電子写真用トナーを製造する方法としては、これらの混合物を加熱混合装置によりバインダーレジンの溶融下、混練し、冷却後、粗粉砕、微粉砕、分級して得る方法、これらの混合物を溶媒に溶解させ噴霧により微粒化、乾燥、分級して得る方法、更には、懸濁させたモノマー粒子中に着色剤や一般式(1)で表される化合物を分散させ重合法により得る方法等がある。
バインダーレジンとしては、ポリスチレン、スチレン−アクリル系共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリル樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体、オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等を単独又は、混合して使用することができる。又、着色剤としては、黒色トナー用には二成分現像用で一般的にカーボンブラックが、一成分現像用では磁性体の種類が使用でき、更にカラートナー用には、次のような着色剤が使用できる。
イエロー着色剤としては、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー5、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー17等のアゾ系有機顔料や黄土のような無機顔料又はC.I.ソルベントイエロー2、C.I.ソルベントイエロー6、C.I.ソルベントイエロー14、C.I.ソルベントイエロー19等の油溶性染料等、マゼンタ着色剤としては、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド57:1等のアゾ顔料、C.I.ピグメントバイオレッド1、C.I.ピグメントバイオレッド81等のキサンテン顔料、C.I.ピグメントレッド87、C.I.バットレッド1、C.I.ピグメントバイオレッド38等のチオインジゴ顔料又はC.I.ソルベントレッド19、C.I.ソルベントレッド49、C.I.ソルベントレッド52等の油溶性染料等、シアン着色剤としては、C.I.ピグメントブルー1等のトリフェニルメタン顔料、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー17等のフタロシアニン顔料又はC.I.ソルベントブルー25、C.I.ソルベントブルー40、C.I.ソルベントブルー70等の油溶性染料等を使用することができる。
【0009】
本発明の化合物の一般的製法は、水又は(および)有機溶剤を用い金属付与剤を用いて反応させ生成物をろ取して洗浄することによって得ることができる。本発明の化合物の製造に用いることができる金属付与剤は、4価の陽イオン体の場合はZrCl、ZrF、ZrBr、ZrI等のハロゲン化ジルコニウム化合物、Zr(OR)(Rはアルキル基、アルケニル基等を示す)、またはZr(SO等の無機ジルコニウム化合物等が挙げられる。
オキソ化合物の2価の陽イオン体の場合はZrOCl、ZrO(NO、ZrO(ClO、HZrO(SO、ZrO(SO)・NaSO、ZrO(HPO等の無機酸ジルコニウム化合物、ZrO(CO)、(NHZrO(CO、(NHZrO(C、ZrO(C35、ZrO(C1835等の有機酸ジルコニウム化合物等が挙げられる。
【0010】
本発明のジルコニウム化合物を用いた電子写真用トナーには、その他の添加剤として、感光体・キャリアーの保護、クリーニング性の向上、トナーの流動性向上、熱特性・電気特性・物理特性の調整、抵抗調整、軟化点調整、定着性向上等を目的として、疎水性シリカ、金属石けん、フッ素系界面活性剤フタル酸ジオクチル、ワックス、導電性付与剤として酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化アンチモン等や、酸化チタン、酸化アルミニウム、アルミナ等の無機微粉体等を必要に応じて添加することができる。
本発明で使用できるカーボンブラックは、チャンネルブラック、ファネスブラック等の品種及びPH、粒径、色相等の性状に関わりなく使用することができる。また、従来トナー用として、用いられていたカーボンブラックに限定されることなく、トナーとして黒色度を満足するものであれば使用可能である。
又、本発明に用いられる無機微粉体は必要に応じて疎水化、帯電量コントロールなどの目的でシリコーンワニス、各種変成シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変成シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他の有機ケイ素化合物等の処理剤で、あるいは、種々の処理剤で併用に処理されていることも好ましい。又、テフロン、ステアリン酸亜鉛、ポリフツ化ビニリデン等の滑剤、酸化セシウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム等の研磨剤、ケーキング防止剤、さらに、トナー粒子と逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子を現像性向上剤として少量用いることもできる。
二成分現像剤に本発明のトナーを用いた場合、キャリアーとしては微少なガラスビーズ、鉄粉、フェライト粉、ニッケル粉、磁性粒子を分散した樹脂粒子のバインダ型キャリアーや、表面をポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂等で被覆した樹脂コートキャリアー等が用いられる。本発明の一般式(1)の化合物及びこの化合物を含有せしめたトナーは、一成分トナーとして用いられても優れた性能を示す。又、カプセルトナー及び重合トナーに用いることもできる。
磁性体として使用される磁性材料としては、鉄、ニッケル、コバルト等の金属微粉末、鉄、鉛、マグネシウム、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウム、コバルト、銅、アルミニウム、ニッケル、亜鉛等の金属の合金、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン等の金属酸化物、鉄、マンガン、ニッケル、コバルト、亜鉛等のフェライト、チッ化バナジウム、チッ化クロム等のチッ化物、炭化タングステン、炭化ケイ素等の炭化物、及びこれらの混合物等が使用できる。磁性体としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の酸化鉄が好ましいが、本発明で用いる電荷制御剤は特別な磁性材料に関係なく良好な帯電性能を与える。
【0011】
また、本発明のジルコニウム化合物を用いた電荷制御剤は、従来公知のもの、例えば3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸とクロム、亜鉛、アルミニウムとから得られる化合物(商品名ボントロンE−81、E−84、E−88いずれもオリエント化学工業)と併用することも可能である。
また、更に本発明の一般式(1)で表される化合物は静電粉体塗装用塗料における電荷増強剤としても好適である。即ち、この電荷増強剤を用いた静電塗装用塗料は、耐環境性、保存安定性、特に熱安定性と耐久性に優れ、塗着効率が100%に達し、塗膜欠陥のない厚膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を化合物の製造例及びトナーとしての応用例を挙げて具体的に説明する。製造例及び応用例中の部は重量部である。
【0013】
[製造例1] 3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸と酸化ジルコニウム化合物との反応(化合物No.1の合成)
3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸33部と25%苛性ソーダ19部を水350部に溶解し、50℃に昇温し撹拌しながら、オキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl・8HO)19部を水90部に溶解した溶液を滴下した(白色結晶析出)。同温で1時間撹拌した後、室温まで冷却し、25%苛性ソーダ約6部を加えpH7.5〜8.0に調整した。析出した結晶を濾過、水洗、乾燥して25部の白色結晶を得た。この化合物の融点は300度以上であった。又、プロトンNMR測定を行い目的物の特性スペクトルを得た元素分析の結果は以下の通りであった。

炭素(%) 水素(%) 窒素(%) ジルコニウム(%)
理論値 49.1 6.6 0.0 19.9
実測値 50.0 6.2 0.0 19.8
更に、IR測定より3200〜3600cm-1にサリチル酸誘導体の水酸基およびZr−OHに由来する吸収帯、1530cm-1付近にはサリチル酸誘導体とジルコニウムとの結合を示唆するカルボニル吸収帯が観測された。ラマンスペクトル測定においては、700〜800cm-1に3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸とジルコニウムの結合生成に由来すると思われる吸収帯が観測された。これら分析の結果から、化合物No.1は3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸をLと略記すると次の構造を採るものと考えられる。
【0014】
【化2】

【0015】
[製造例2] 3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸とジルコニウム(IV)イソプロポキシドとの反応(化合物No.2の合成)
3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸100部とジルコニウム(IV)イソプロポキシド39.0部をトルエン100部に溶解し、6時間還流した。反応混合物を室温まで冷却した後にトルエンを減圧濃縮し、残査にメタノール5部を加えて結晶を析出させた。析出した結晶をろ過し、メタノールで洗浄、乾燥して白色結晶55.0部を得た。この化合物の融点は295℃以上であった。又、プロトンNMR測定を行い目的物の特性スペクトルを得た。この化合物の元素分析の結果は以下の通りであった。
炭素(%) 水素(%) 窒素(%) ジルコニウム(%)
理論値 66.2 7.8 0.0 8.4
実測値 66.4 7.7 0.0 8.1
これら分析の結果から、化合物No.2は3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸をLと略記すると次の構造を採るものと考えられる。
【0016】
【化3】

【0017】
[製造例3] 5−メトキシサリチル酸と酸化ジルコニウム化合物との反応(化合物No.3の合成)
5−メトキシサリチル酸19部と25%苛性ソーダ19部を水水350部に溶解し、50℃に昇温し撹拌しながら、オキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl2・8H2O)19部を水90部に溶解した溶液を滴下した(淡い茶白色結晶析出)。同温で1時間撹拌した後、室温まで冷却し、25%苛性ソーダ約6部を加えpH7.5〜8.0に調整した。析出した結晶を濾過、水洗、乾燥して15部の淡い茶白色結晶を得た。この化合物の融点は300℃以上であった。又、プロトンNMR測定を行い目的物の特性スペクトルを得た。元素分析の結果は以下の通りであった。
炭素(%) 水素(%) 窒素(%) Zr(%)
理論値 36.3 3.3 0.0 27.8
測定値 36.9 3.1 0.0 27.4
これら分析の結果から、化合物No.3は5−メトキシサリチル酸をLと略記すると次の構造を採るものと考えられる。
【0018】
【化4】

【0019】
[製造例4] 2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸と酸化ジルコニウム化合物との反応(化合物No.4の合成)
2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸21部と25%苛性ソーダ19部を水350部に溶解し、50℃に昇温し撹拌しながら、オキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl・8HO)19部を水90部に溶解した溶液を滴下した(淡黄色結晶析出)。同温で1時間撹拌した後、室温まで冷却し、25%苛性ソーダ約6部を加えpH7.5〜8.0に調整した。析出した結晶をろ過、水洗、乾燥して16部の淡黄色結晶を得た。この化合物の融点は300℃以上であった。又、プロトンNMR測定を行い目的物の特性スペクトルを得た。元素分析の結果は以下の通りであった。
炭素(%) 水素(%) 窒素(%) Zr(%)
理論値 43.1 3.6 0.0 24.0
測定値 43.8 3.5 0.0 23.6
これら分析の結果から、化合物No.4は2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸をLと略記すると次の構造を採るものと考えられる。
【0020】
【化5】

【0021】
次に、上記の製造例1から4と同様な方法によって合成したジルコニウム化合物を表1に列挙するが、無論本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
【表1】

【0023】
注)Zr(i−PrO)とはジルコニウム(IV)イソプロポキシドの略記である。
【0024】
[応用例1]
化合物No.1を1部、カーボンブラック5部(三菱化学社製 MA−100)、スチレン−アクリル共重合体樹脂94部(三井化学社製 CPR−100)を加熱混合装置により混練し、冷却後、ハンマーミルで粗粉砕した。さらにジエットミルで微粉砕したのち分級して10から12μの黒色トナーを得た。このトナーをシリコンコート系のフェライトキャリアー(パウダーテック社製 F−96−100)と4対100部の重量比で混合して振とうしたところトナーは負に帯電し、ブローオフ粉体帯電量測定装置で測定したところ帯電量は−17.5μC/gであった。本トナーを使用し改造市販複写機で画像をだしたところ、初期及び1万枚コピー後でも鮮明な画質の像を得ることができた。
【0025】
[応用例2]
化合物No.1を1部、カーボンブラック5部(三菱化学社製MA−100)、ポリエステル樹脂94部(日本合成化学社製HP−301)を加熱混合装置により混練し、冷却後、ハンマーミルで粗粉砕した。さらにジエットミルで微粉砕したのち分級して10から12μmの黒色トナーを得た。このトナーをシリコンコート系のフェライトキャリアー(パウダーテック社製 F−96−100)と4対100部の重量比で混合して振とうしたところトナーは負に帯電し、ブローオフ粉体帯電量測定装置で測定したところ帯電量は−18.0μC/gであった。本トナーを使用し改造市販複写機で画像をだしたところ、初期及び1万枚コピー後でも鮮明な画質の像を得ることができた。
【0026】
[応用例3]
化合物No.2を1部、カーボンブラック5部(三菱化学社製 MA−100)、スチレン−アクリル共重合体樹脂94部(三井化学社製 CPR−100)を加熱混合装置により混練し、冷却後、ハンマーミルで粗粉砕した。さらにジエットミルで微粉砕したのち分級して10から12μmの黒色トナーを得た。このトナーをシリコンコート系のフェライトキャリアー(パウダーテック社製F−96−100)と4対100部の重量比で混合して振とうしたところトナーは負に帯電し、ブローオフ粉体帯電量測定装置で測定したところ帯電量は−15.2μC/gであった。本トナーを使用し改造市販複写機で画像をだしたところ、初期及び1万枚コピー後でも鮮明な画質の像を得ることができた。
【0027】
[応用例4]
化合物No.3を1部、カーボンブラック(三菱化学社製 MA−100)5部、ポリエステル樹脂(日本合成化学社製 HP−301)94部を加熱混合装置により混練し、冷却後、ハンマーミルで粗粉砕した。さらにジェットミルで微粉砕したのち分級して10から12μmの黒色トナーを得た。このトナーをシリコンコート系のフェライトキャリアー(パウダーテック社製 F−96−100)と4対100部の重量比で混合して振とうしたところトナーは負に帯電し、ブローオフ粉体帯電量測定装置で測定したところ−17.0μc/gであった。本トナーを使用し改造市販複写機で画像をだしたところ、初期及び1万枚コピー後でも鮮明な画質の像を得ることができた。
【0028】
[応用例5]
化合物No.4を1部、カーボンブラック(三菱化学社製 MA−100)5部、スチレン−アクリル共重合体樹脂(三井化学社製 CPR−100)94部を加熱混合装置により混練し、冷却後、ハンマーミルで粗粉砕した。さらにジェットミルで微粉砕したのち分級して10から12μmの黒色トナーを得た。このトナーをシリコンコート系のフェライトキャリアー(パウダーテック社製 F−96−100)と4対100部の重量比で混合して振とうしたところトナーは負に帯電し、ブローオフ粉体帯電量測定装置で測定したところ−17.2μc/gであった。本トナーを使用し改造市販複写機で画像をだしたところ、初期及び1万枚コピー後でも鮮明な画質の像を得ることができた。
【0029】
[応用例6]
化合物No.1を1部、磁性粉(戸田工業社製 BL−200)50部、スチレン−アクリル共重合体樹脂(三井化学社製 CPR−100)50部を加熱混合装置により混練し、冷却後、ハンマーミルで粗粉砕した。さらにジェットミルで微粉砕したのち分級して10から12μmの黒色トナーを得た。このトナーをノンコートフェライトキャリア(パウダーテック社製 F−100)と4対100部の重量比で混合して振とうしたところトナーは負に帯電し、ブローオフ粉体帯電量測定装置で測定したところ−16.8μc/gであった。本トナーを使用し改造市販複写機で画像をだしたところ、初期及び1万枚コピー後でも鮮明な画質の像を得ることができた。
【0030】
[比較例]
3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸と塩化亜鉛との反応(比較化合物No.1の合成) 3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸4部を水50部の中に分散させ、この中に水酸化ナトリウム1.5部を水20部に溶解させた溶液を加え溶解させた。60℃で0.5時間撹拌させた後、塩化亜鉛1.1部を水20部に溶解させた溶液を滴下し、45℃で1時間撹拌させた。室温まで冷却した後2Nの塩酸水溶液でpHを6に調整し析出した製品をろ過、水洗浄をして比較用としての化合物、4部を得た。この化合物の融点は300℃以上であった。又プロトンNMR測定を行い目的物の特性スペクトルを得た。元素分析の結果は以下の通りであった。
炭素(%) 水素(%) 窒素(%) 亜鉛(%)
理論値 63.9 7.5 0.0 11.6
実測値 64.2 7.6 0.0 11.4
比較例化合物No.1を1部、カーボンブラック(MA−100)5部、スチレン−アクリル共重合体樹脂(CPR−100)94部を加熱混合装置により混練し、冷却後、ハンマーミルで粗粉砕した。さらにジエットミルで微粉砕したのち分級して10から12μmの黒色トナーを得た。このトナーをシリコンコート系のフェライトキャリアー(F−96−100)と4対100部の重量比で混合して振とうしたところトナーは負に帯電し、ブローオフ粉体帯電測定装置で測定したところ帯電量は−8.5μC/gであった。
【0031】
次に化合物No.5から15および比較化合物No.1を用いて試験した結果を表2に、化合物No.1、2、4および比較化合物No.1における帯電量のシミュレーション結果を図1に示す。
【0032】
【表2】

*1 1μC/g,30min., 1%添加、なお測定に用いたキャリアーはシリコンコート系キャリアー(F−96−100)である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のジルコニウム化合物は無色又は淡色で安定性の高い化合物であり、電子写真用トナーのバインダー樹脂への分散性が良好でトナーに良好な帯電性を付与できるため、電子写真用トナーの電荷制御剤として特に有用である。又、本発明の化合物を電荷制御剤として含有せしめた電子写真用トナーは、高画質の画像を常に安定して与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明のジルコニウム化合物と比較しての亜鉛化合物とのトナー帯電量
【図2】本発明の化合物No.1のプロトンNMRチャート(溶剤DMSO、測定温度25.9℃)
【図3】本発明の化合物No.1のIRチャート(Nujol法、室温)
【図4】本発明の化合物No.1のラマンスペクトル
【図5】本発明の化合物No.2のプロトンNMRチャート(溶剤DMSO、測定温度26.0℃)
【図6】本発明の化合物No.3のプロトンNMRチャート(溶剤DMSO、測定温度25.0℃)
【図7】本発明の化合物No.4のプロトンNMRチャート(溶剤DMSO、測定温度26.1℃)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式(1)
【化1】

[式中、Rは4級炭素、メチン、メチレンであり、N、S、O、Pのヘテロ原子を含んでいてもよく、Yは4位と5位に結合する飽和結合又は不飽和結合で結ばれた環状構造を表し、R、Rは相互に独立してアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、置換基を有していても良いアリール基又はアリールオキシ基又はアラルキル基又はアラルキルオキシ基、ハロゲン基、水素、水酸基、置換基を有していても良いアミノ基、カルボキシル基、カルボニル基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホニル基、シアノ基を表し、R は水素又はアルキル基を表し、lは0又は3から12の整数、mは1から20の整数、nは0又は1から20の整数、oは0又は1から4の整数、pは0又は1から4の整数、qは0又は1から3の整数、rは1から20の整数、sは0又は1から20の整数である。但しqが0の場合、全てのRが同時に水素ではないものとする。]で表される4価のジルコニウム化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の一般式(1)の芳香族オキシカルボン酸が、3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸であるジルコニウム化合物。
【請求項3】
下記一般式(1)で表される4価のジルコニウム化合物を含有する電荷制御剤。
【化2】

[式中、Rは4級炭素、メチン、メチレンであり、N、S、O、Pのヘテロ原子を含んでいてもよく、Yは4位と5位に結合する飽和結合又は不飽和結合で結ばれた環状構造を表し、R、Rは相互に独立してアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、置換基を有していても良いアリール基又はアリールオキシ基又はアラルキル基又はアラルキルオキシ基、ハロゲン基、水素、水酸基、置換基を有していても良いアミノ基、カルボキシル基、カルボニル基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホニル基、シアノ基を表し、R は水素又はアルキル基を表し、lは0又は3から12の整数、mは1から20の整数、nは0又は1から20の整数、oは0又は1から4の整数、pは0又は1から4の整数、qは0又は1から3の整数、rは1から20の整数、sは0又は1から20の整数である。但しqが0の場合、全てのRが同時に水素ではないものとする。]
【請求項4】
請求項3に記載の一般式(1)の芳香族オキシカルボン酸が、3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸であるジルコニウム化合物を含有する電荷制御剤。
【請求項5】
芳香族オキシカルボン酸又はその塩と、ジルコニウム又はオキソジルコニウムを含む化合物とから得ることを特徴とする下記一般式(1)で表される4価のジルコニウム化合物の製造方法。
【化3】

[式中、Rは4級炭素、メチン、メチレンであり、N、S、O、Pのヘテロ原子を含んでいてもよく、Yは4位と5位に結合する飽和結合又は不飽和結合で結ばれた環状構造を表し、R、Rは相互に独立してアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、置換基を有していても良いアリール基又はアリールオキシ基又はアラルキル基又はアラルキルオキシ基、ハロゲン基、水素、水酸基、置換基を有していても良いアミノ基、カルボキシル基、カルボニル基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホニル基、シアノ基を表し、R は水素又はアルキル基を表し、lは0又は3から12の整数、mは1から20の整数、nは0又は1から20の整数、oは0又は1から4の整数、pは0又は1から4の整数、qは0又は1から3の整数、rは1から20の整数、sは0又は1から20の整数である。但しqが0の場合、全てのRが同時に水素ではないものとする。]
【請求項6】
請求項5に記載の一般式(1)の芳香族オキシカルボン酸が、3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸である4価のジルコニウム化合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−57375(P2009−57375A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201258(P2008−201258)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【分割の表示】特願平11−515329の分割
【原出願日】平成10年9月3日(1998.9.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000005315)保土谷化学工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】