説明

ジンクフィンガータンパク質を使用する機能ゲノミクス

【課題】候補遺伝子の生物学的機能を同定する方法を提供する。
【解決手段】(i)第1の候補遺伝子を選択する工程;(ii)前記候補遺伝子の第1の標的部位に結合する第1のジンクフィンガータンパク質、および第2の遺伝子の標的部位に結合する第2のジンクフィンガータンパク質を提供する工程;(iii)この第1のジンクフィンガータンパク質が前記候補遺伝子と接触する条件下で第1の細胞を培養し、この第2のジンクフィンガータンパク質が第2の候補遺伝子と接触する条件下で第2の細胞を培養する工程であって、ここでこの第1および第2のジンクフィンガータンパク質は、第1および第2の候補遺伝子の発現を調節する工程、ならびに(iv)選択された表現型についてアッセイする工程を包含する、第1の候補遺伝子と選択された表現型との間の関連を明らかにする方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、1999年1月12日提出、USSN 09/229007、および1999年1月12日提出、USSN 09/229037に関し、両方は、本明細書においてその全体が参考として援用される。
【0002】
(連邦政府支援の研究および開発に関する声明)
適用なし。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、機能ゲノミクスおよび標的確認適用のための、組換えジンクフィンガータンパク質を使用する遺伝子発現を調節する方法を提供する。
【0004】
(発明の背景)
目的の遺伝子の機能の決定は、薬物発見のための潜在的なゲノム標的を同定するために重要である。次いで、特定の機能または表現型に関連する遺伝子は、治療化合物の発見のために標的として検査され得る。歴史的に、特定の遺伝子の機能は、生物学的系(例えば、細胞またはトランスフェニック動物)における表現型の特定の機能を有する遺伝子の発現を関連付けることによって同定されている。
【0005】
遺伝子の機能を検査するために使用される1つの公知の方法は、細胞または動物から遺伝子を遺伝子的に除去すること(すなわち、「ノックアウト」を作製する)、およびその細胞または動物の表現型(すなわち、任意の変化、例えば、アッセイによって観察可能な形態学的変化、機能的変化など)が変化したか否かを決定することである。この決定は、この細胞または生物体が遺伝子なしで生存するか否かに依存し、そしてこの遺伝子が生存に必要でない場合は、適切ではない。他の遺伝子が、遺伝子の消失に適合し得る補償機構に供され、そして他の様式でその機能を補われる。実際に、この補償作用は非常に有効であるため、欠失遺伝子の本来の機能は見つからずに終わり得る。「ノックアウト」を作製する技術的プロセスは困難であり、そして大規模な配列情報を必要とし、従って、遺伝子の広いスケールで行われる場合、莫大な金銭的および技術的資源を必要とする。
【0006】
別の例において、遺伝子調節のアンチセンス方法および標的リボザイムに依存する方法は、非常に予測不可能である。新しく発見された遺伝子の機能を実験的に決定するための別の方法は、強力なプロモーターにより駆動される発現ベクターにそのcDNAをクローニングすること、および形質転換された細胞におけるその過剰発現の生理学的な結果の測定である。この方法はまた、労働集約的であり、そして標的遺伝子の下方制御の生理学的結果をアドレスしない。特徴づけされていない遺伝子の選択的な過剰発現および過少発現を可能にする簡易な方法は、科学の社会に対して大いに有用である。細胞モデル系、トランスジェニック動物およびトランスジェニック植物における遺伝子の調節を可能にする方法は、学術的な研究室、製薬会社、ゲノム関連会社および生物工学産業において広範な用途を見出す。
【0007】
標的確認のさらなる使用は、薬物発見のためのインビボおよびインビトロアッセイの産生にある。一旦、選択された表現型を生じる遺伝子が同定されると、細胞株、トランスジェニック動物およびトランスジェニック植物が、有用なタンパク質産物を過剰発現するかまたは有害なタンパク質産物を阻止するように操作され得る。次いで、これらのモデル系は、高処理スクリーニング方法と共に使用されて、選択した遺伝子の発現を調節するリード治療化合物を同定し、それにより所望の表現型(例えば、疾患の処置)を提供する。
【0008】
現在、所定の遺伝子の発現を変化させ得る方法が、当該分野に存在し、これらの方法は、例えば、リボザイム、アンチセンス技術、低分子調節因子、cDNAクローンの過剰発現および遺伝子ノックアウトを用いる。これらの方法は、上記のように、多数の適用には一般的に不十分であることが証明されており、そして代表的には、インビボにおける高い標的効率または高い特異性のいずれも実証しなかった。有用な実験的結果および治療的処置のために、これらの特徴は、望ましい。
【0009】
遺伝子発現は、通常、転写因子と呼ばれる、配列特異的DNA結合タンパク質の機能の変化を通じて制御される。これらは、遺伝子の転写開始点に一般的に近接して(時には大きい距離であるが)結合し、そして典型的には、DNA結合ドメインおよび調節ドメインを含む。。それらは、プロモーターで転写開始複合体の形成または機能の有効性に影響するように作用する。転写因子は、陽性の様式(トランスアクチベーション)または陰性の様式(トランスリプレッション)で作用し得る。転写因子は典型的に両説ドメインを含むが、抑制もまたDNA結合ドメインのみによる立体障害によって達成され得る。
【0010】
転写因子の機能は、構成的(常に「オン」)または条件的であり得る。条件的な機能は、種々の手段により転写因子上に与えられ得るが、これらの調節機構の大部分は、細胞質における因子の隔離および誘導性放出ならびに引き続く核転移、DNA結合およびトランスアクチベーション(またはリプレッション)に依存する。この手段に機能する転写因子の例としては、プロゲステロンレセプター、ステロール応答エレメント結合タンパク質(SREBP)およびNF−κBが挙げられる。リン酸化に応答する転写因子、またはそれらの同族DNAの認識配列に結合するそれらの能力を変化することによる、低分子リガンドの例が存在する(Houら,Science 256:1701(1994);GossenおよびBujard,PNAS 89:5547(1992);Oliginoら、Gene Ther.5:491〜496(1998);Wangら、Gene Ther.4:432〜441(1997);Neeringら、Blood 88:1147〜1155(1996);およびRendahlら、Nat.Biotechnol.16:757〜761(1998))。
【0011】
ジンクフィンガータンパク質(「ZFP」)は、配列特異的様式でDNAに結合し得るタンパク質である。ジンクフィンガーは、最初、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)の卵母細胞由来の転写因子TFIIIAにおいて同定された。ジンクフィンガータンパク質は、真核生物において偏在している。これらのタンパク質の1つのクラス(Cys2His2クラス)を特徴付ける代表的モチーフは、−Cys−(X)2-4−Cys−(X)12−His−(X)3-5−His(ここでXは、任意のアミノ酸である)である。単一のフィンガードメインは、約30アミノ酸長であり、そしていくつかの構造的研究は、これが、単一のβターンの2つのシステインを有するジンクを通じて、整列された(co−ordinated)2つの不変のヒスチジン残基を含むαヘリックスを含むことを実証している。現在まで、10,000個をこえるジンクフィンガー配列が、数千の公知の転写因子または推定の転写因子において同定されている。ジンクフィンガータンパク質は、DNA認識だけでなく、RNA結合およびタンパク質−タンパク質結合にも関与する。現在、このクラスの分子が全ヒト遺伝子の約2%を構成すると見積もられている。
【0012】
マウス転写因子由来の3フィンガードメインである、Zif268のX線結晶構造は、同属のDNA配列との複合体で解析されており、そして、それぞれのフィンガーが、同期的なローテーションおよびDNAの主軸に沿ったフィンガーの翻訳により次のフィンガーに重ね合わせられ得ることを示す。この構造は、それぞれのフィンガーが、独立して3をこえる塩基対の間隔で、それぞれのDNAトリプレットサブサイトと接触を生じるそれぞれの認識ヘリックス上の−1,2,3および6位で側鎖でDNAと、相互作用することを示唆する。Zif268のアミノ末端は、そのDNA認識サブサイトの3’末端に位置する。いくつかのジンクフィンガーは、標的セグメントにおいて4番目の塩基と結合し得ることが細菌の結果によって示された(Isalanら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.94:5617〜5621(1997))。4番目の塩基は、ジンクフィンガーによって認識される他の3つの塩基の逆鎖上にあり、そして3塩基サブサイトのすぐ3’側の塩基に相補的である。
【0013】
Zif268−DNA複合体の構造はまた、ジンクフィンガータンパク質のDNA配列特異性が、ジンクフィンガー認識ヘリックス上の4つのヘリックス位置(−1,2,3および6)でアミノ酸置換を作製することにより変化され得ることを示唆した。この観察を試験するための、ジンクフィンガーコンビナトリアルライブラリーを用いるファージ提示実験は、1994年の一連の文献に公開された(Rebarら、Science 263:671〜673(1994);Jamiesonら、Biochemistry 33:5689〜5695(1994);Chooら、PNAS 91:11163〜11167(1994))。コンビナトリアルライブラリーは、Zif268の最初のフィンガーまたは中間のフィンガーのいずれかにおける無作為化側鎖で構築され、次いで、適切なDNAサブサイトが変化したDNAトリプレットにより置換された変化したZif268結合部位を用いて単離された。導入された変異の性質と結合特異性において得られた変化との相関は、変化した結合特異性を有するジンクフィンガータンパク質の合理的な設計のための置換規則の部分的なセットを生じた。GreismanおよびPabo,Science 275:657〜661(1997)は、ジンクフィンガータンパク質のそれぞれのフィンガーが無作為化および選択に成功裏に供されるファージ提示方法の詳細について議論する。この文献は、核ホルモン応答エレメント、p53標的部位およびTATAボックス配列についてのジンクフィンガータンパク質の選択を報告した。
【0014】
組み換えジンクフィンガータンパク質は、培養細胞における一過的に発現されたレポーター遺伝子の遺伝子発現を調節する能力を有することを報告されている(例えば、Pomerantzら、Science 267:93〜96(1995);Liuら、PNAS 94:5525〜5530、1997);およびBeerliら、PNAS 95:14628〜14633(1998)を参照のこと)。例えば、Pomerantzら、Science 267:93〜96(1995)は、Oct−1由来のホメオドメインを有するZif268由来の2つのフィンガーを融合することにより新規なDNA結合タンパク質を設計する試みを報告する。次いで、このハイブリッドタンパク質は、キメラタンパク質として発現されるための転写アクチベーターまたはレプレッサードメインのどちらかと融合された。そのキメラタンパク質は、その2つの成分のサブサイトのハイブリッドを表示する標的部位を結合することが報告された。次いで、この著者らは、プロモーターに作動可能に連結されるルシフェラーゼ遺伝子、およびプロモーターに近接する、キメラDNA結合タンパク質についてのハイブリッド部位を含むレポーターベクターを構築した。この著者は、それらのキメラDNA結合タンパク質が、ルシフェラーゼ遺伝子の発現を活性化し得るかまたは抑制し得ることを報告した。
【0015】
Liuら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.94:5525〜5530(1997)は、それぞれ3つのフィンガーを有する2つのコンポーネントジンクフィンガータンパク質に連結するためのペプチドスペーサーを用いることによる複合性のジンクフィンガータンパク質を形成する工程を報告する。次いで、この複合性タンパク質は、転写活性化ドメインまたは転写抑制ドメインにさらに連結される。得られたキメラタンパク質が、2つのコンポーネントジンクフィンガータンパク質により結合される標的セグメントから形成される標的部位に結合することが報告された。さらに、キメラジンクフィンガータンパク質は、その標的部位がレポーターに作動可能に連結されたプロモーターに近接したレポータープラスミドに挿入された場合、レポーター遺伝子の転写を活性化または抑制し得ることが報告された。
【0016】
Beerliら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.95:14628〜14633(1998)は、KRAB、ERDもしくはSID転写リプレッサードメイン、またはVP16もしくはVP64転写活性化ドメインのいずれかに融合したキメラ6フィンガージンクフィンガータンパク質の構築を報告する。このキメラジンクフィンガータンパク質は、ヒトerbB−2遺伝子の5’未翻訳領域における18bp標的部位を認識するように設計された。この構築物を用いて、この研究の著者らは、erbB−2プロモーターに連結された、一過性に発現されたレポータールシフェラーゼ構築物の活性化および抑制の両方を報告する。
【0017】
さらに、組み換えジンクフィンガータンパク質は、bcr−abl癌遺伝子をコードする組み込まれ得たプラスミド構築物の発現を抑制することが報告された(Chooら、Nature 372:642〜645(1994))。ジンクフィンガータンパク質が結合する標的セグメントは、bcrおよびablをコードする遺伝子を融合する特異的な癌遺伝子転移により作製された接合部位を重複するように選択された9塩基配列GCA GAA GCCであった。この概念は、この標的部位に特異的なジンクフィンガータンパク質が、ablまたはbcrコンポーネント遺伝子への結合なく、癌遺伝子に結合することである。この著者らは、この標的セグメントに結合する改変ジンクフィンガータンパク質を選択するためにファージ提示を用いた。次いで、このように単離された改変体ジンクフィンガータンパク質は、細胞株における安定にトランスフェクトされたbcr−abl構築物の発現を抑制することが報告された。
【0018】
現在まで、これらの方法は、一過性に発現された既知の遺伝子または既知の外因性の遺伝子(ゲノムに組み込まれた)のいずれかの調節に焦点をおいていた。対照的に、候補遺伝子の特異的な調節、または選択された表現型の原因を同定するための遺伝子のリストが当該分野で実証されてい内。従って、選択された遺伝子の生物学的機能を同定する有用な方法、および/または薬物発見のために適切な標的として遺伝子を確認する有用な方法の必要性が存在する。
【0019】
(発明の要旨)
従って、本発明は、例えば、薬物発見、標的確認または機能ゲノミクスのための、選択された表現型に関連する遺伝子(単数または複数)を同定する初めての方法を提供する。
【0020】
1つの局面において、本発明は、候補遺伝子の生物学的機能を同定する方法を提供し、この方法は、(i)第1の候補遺伝子を選択する工程;(ii)この第1の候補遺伝子の第1の標的部位に結合する第1のジンクフィンガータンパク質、および第2の遺伝子の標的部位に結合する第2のジンクフィンガータンパク質を提供する工程;(iii)この第1のジンクフィンガータンパク質が第1の候補遺伝子と接触する条件下で第1の細胞を培養し、そしてこの第2のジンクフィンガータンパク質が第2の候補遺伝子と接触する条件下で第2の細胞を培養する工程であって、ここでこの第1および第2のジンクフィンガータンパク質は、第1および第2の候補遺伝子の発現を調節する工程、ならびに(iv)選択された表現型についてアッセイする工程であって、これによりこの第1の候補遺伝子がこの選択された表現型と関連するか否かを同定する工程、を包含する。
【0021】
別の局面において、本発明は、候補遺伝子の生物学的機能を同定する方法を提供し、この方法は、(i)複数の候補遺伝子を同定する工程;(ii)第1の候補遺伝子の第1の標的部位に結合する第1のジンクフィンガータンパク質を提供する工程;(iii)この第1のジンクフィンガータンパク質が第1の候補遺伝子に接触する条件下で第1の細胞を培養する工程であって、ここでこの第1のジンクフィンガータンパク質が第1の候補遺伝子の発現を調節する、工程;(iv)この候補遺伝子の発現パターンを決定し、そしてこの第1の候補遺伝子が選択された表現型と関連するか否かを決定する工程;ならびに工程(ii)〜(iv)を各候補遺伝子ごとに繰り返す工程、を包含する。
【0022】
別の局面において、本発明は、候補遺伝子の生物学的機能を同定する方法を提供し、この方法は、(i)第1の候補遺伝子を選択する工程;(ii)この第1の候補遺伝子の第1の標的部位に結合する第1のジンクフィンガー、およびこの第1の候補遺伝子の第2の標的部位に結合する第2のジンクフィンガーを提供する工程;(iii)この第1のジンクフィンガータンパク質が第1の候補遺伝子に接触する条件下で第1の細胞を培養し、そして第2のジンクフィンガータンパク質が第1の候補遺伝子と接触する条件下で第2の細胞を培養する工程であって、ここでこの第1および第2のジンクフィンガータンパク質が第1の候補遺伝子の発現を調節する、工程;ならびに(iv)選択された表現型についてアッセイする工程であって、それによりこの第1の候補遺伝子がこの選択された表現型と関連するか否かを同定する工程、を包含する。
【0023】
別の局面において、本発明は、候補遺伝子の生物学的機能を同定する方法を提供し、この方法は、(i)第1の候補遺伝子を選択する工程;(ii)この第1の候補遺伝子の第1の標的部位に結合する第1のジンクフィンガータンパク質を提供する工程;(iii)第1の候補ジンクフィンガータンパク質がこの第1の候補遺伝子に接触する条件下で第1の細胞を培養する工程であって、個々でこの第1のジンクフィンガータンパク質がこの第1の候補遺伝子の発現を調節する工程;ならびに(iv)選択された表現型についてアッセイする工程であって、これにより、この第1の候補遺伝子が選択された表現型と関連するか否かを同定する工程、を包含する。
【0024】
一実施形態において、この方法は、第1の候補遺伝子の第2の標的部位に結合する第3のジンクフィンガータンパク質を提供する工程をさらに包含する。一実施形態において、この方法は、第2の候補遺伝子の標的部位に結合する第3のジンクフィンガータンパク質を提供する工程をさらに包含する。別の実施形態において、この方法は、複数の候補遺伝子を選択し、そして各候補遺伝子の標的部位に結合する複数のジンクフィンガータンパク質を提供する工程をさらに包含する。
【0025】
一実施形態において、第1の候補遺伝子は、少なくとも約200ヌクレオチド長のESTによって部分的にコードされる。一実施形態において、第1の候補遺伝子および第2の遺伝子の両方は、選択された表現型に関連する。一実施形態において、第2の遺伝子は、制御遺伝子である。一実施形態において、第1および第2の細胞は同一の細胞であり、ここでこの細胞は第1および第2の候補遺伝子を含む。一実施形態において、第1および第2の候補遺伝子は内因性遺伝子である。
【0026】
一実施形態において、候補遺伝子の発現は、少なくとも約50%だけ抑制される。一実施形態において候補遺伝子の発現は、少なくとも約150%活性化される。一実施形態において、発現の調節は、遺伝子発現の抑制を妨げる遺伝子発現の活性化である。一実施形態において、発現の調節は、遺伝子の活性化を妨げる遺伝子発現の抑制である。
【0027】
一実施形態において、ジンクフィンガータンパク質は、1つ以上の調節ドメインを含む融合タンパク質である。一実施形態において、この調節ドメインは、転写レプレッサ、メチルトランスフェラーゼ、転写活性化剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、およびヒストンデアセチラーゼからなる群から選択される。
【0028】
一実施形態において、細胞は、動物細胞、植物細胞、細菌細胞、原生動物細胞、真菌細胞、哺乳動物細胞またはヒト細胞からなる群から選択される。一実施形態において、細胞は、約1.5×106個未満の各ジンクフィンガータンパク質のコピーを含む。
【0029】
一実施形態において、第1および第2のジンクフィンガータンパク質は、プロモーターに作動可能に連結されたジンクフィンガータンパク質核酸を含む発現ベクターによってコードされ、ここで、この方法は、細胞にこの発現ベクターを投与する第1の工程をさらに包含する。一実施形態において、ジンクフィンガータンパク質の発現は、外因性薬剤の投与によって引き起こされる。一実施形態において、ジンクフィンガータンパク質の発現は、低分子の制御下にある。一実施形態において、第1のジンクフィンガータンパク質の発現および第2のジンクフィンガータンパク質の発現は、異なる低分子の制御下にあり、ここで第1および第2のジンクフィンガータンパク質の両方は、調節ドメインを含む融合タンパク質であり、そしてここで、第1および第2のジンクフィンガータンパク質は同一の細胞において発現される。一実施形態において、第1および第2のジンクフィンガータンパク質の両方は、レプレッサである調節ドメインを含む。一実施形態において、第1のジンクフィンガータンパク質は、活性化剤である調節ドメインを含み、そして第2のジンクフィンガータンパク質は、レプレッサである調節ドメインを含む。
【0030】
一実施形態において、発現ベクターは、ウイルスベクターである。別の実施形態において、発現ベクターは、レトロウイルス発現ベクター、アデノウイルス発現ベクター、またはAAV発現ベクターである。一実施形態において、ジンクフィンガータンパク質は、誘導性プロモーターに作動可能に連結された核酸によってコードされる。
【0031】
一実施形態において、標的部位は、候補遺伝子の転写開始部位の上流である。一実施形態において、標的部位は、候補遺伝子の転写開始部位の下流である。一実施形態において、標的部位は、候補遺伝子の転写開始部位に隣接している。別の実施形態において、標的部位は、候補遺伝子の転写開始部位の下流のRNAポリメラーゼ停止部位に隣接している。
【0032】
(発明の詳細な説明)
(導入)
本明細書中に記載される場合、本発明は、遺伝子発現の表現型結果および機能を決定するためのアッセイにおいて使用されるジンクフィンガータンパク質を提供する。集中した大量の配列決定の努力と組み合わせて、分析技術における最近の発達は、以前に入手可能であったよりも多くの多数の分子標的を同定および特徴付けるための機会を創出してきた。遺伝子およびこれらの機能についてのこの新しい情報は、基本的な生物学的理解に沿って速度を増し、そして、治療処置のための多数の新しい標的を提供する。いくつかの場合では、分析用ツールは、新しいデータの産生に追いついていない。例は、グローバル差次的遺伝子発現の測定における最近の発達によって提供される。これらの方法は、遺伝子発現マイクロアレイ、差次的なcDNAクローニング頻度、減算的ハイブリダイゼーションおよび差次的表示法によって代表されるが、異なった組織においてかまたは特定の刺激に応答して上方制御または下方制御される遺伝子を非常に迅速に同定し得る。ますます、このような方法が、形質転換、腫瘍進行、炎症性反応、神経学的障害などの生物学的プロセスを探求するために使用されている。当業者は、所定の生理学的現象と相関する差次的に発現される遺伝子の長い列挙を、現在非常に簡単に作製し得るが、差次的に発現された遺伝子と表現型との間の原因となる関係を示すことは困難である。現在まで、差次的に発現された遺伝子に機能を割り当てるための簡単な方法は、差次的な遺伝子発現をモニターする能力に追いついていない。
【0033】
しかし、ジンクフィンガータンパク質技術は、差次的な遺伝子発現研究を迅速に分析するために使用され得る。操作されたジンクフィンガータンパク質は、任意の候補標的遺伝子を上方制御または下方制御するために簡単に使用され得る。遺伝子特異的DNA結合ドメインを作製するために配列情報はほとんど必要ではない。このことは、ジンクフィンガータンパク質技術を、不十分に特徴付けられた差次的に発現された遺伝子の長い列挙の分析に理想的なものにする。当業者は、それぞれの候補遺伝子についてジンクフィンガーベースのDNA結合ドメインを簡単に作製し、人工転写因子を上方制御および下方制御するキメラを作製し、そして、モデル系において1つずつ候補遺伝子をオンまたはオフに切り替えることによって、研究中の表現型(形質転換、サイトカインに対する応答など)について上方制御または下方制御した結果を試験し得る。
【0034】
さらに、より大きな実験コントロールは、より慣例的な方法によって達成され得るジンクフィンガータンパク質によって与えられ得る。これは、操作されたジンクフィンガータンパク質の産生および/または機能が、低分子の制御下に配置され得るためである。このアプローチの例は、Tet−Onシステム、エクジソン制御システムおよび変異体プロゲステロンレセプターを含むキメラ因子を取り込むシステムによって提供されるためである。これらのシステムは全て、低分子制御下にジンクフィンガータンパク質調節因子の機能および/または発現を配置することによって、目的の任意の候補遺伝子または任意の導入遺伝子に対して、間接的に低分子制御を付与し得る。1つの実施形態において、細胞は2つのジンクフィンガータンパク質を含む。ジンクフィンガータンパク質は、2つの異なった候補遺伝子(すなわち、同一の表現型に関連した2つの遺伝子)、または同一の候補遺伝子上の2つの異なった標的部位のいずれかを標的化する。それぞれのジンクフィンガータンパク質はまた、調節ドメインを含む。それぞれのジンクフィンガータンパク質の発現は、異なった低分子制御下に存在し、遺伝子発現の活性化または抑制の程度におけるバリエーションを可能にする。
【0035】
従って、本出願は、遺伝子または選択された表現型に関連する遺伝子を例えば、薬物発見の標的妥当性についてかまたは機能的ゲノム学について同定するためにジンクフィンガータンパク質を用いる方法を初めて提供する。本発明は、高い効率で、特異的に遺伝子を認識するように操作されたジンクフィンガーDNA結合タンパク質を提供する。ジンクフィンガータンパク質を使用する遺伝子発現の調節は、遺伝子の生物学的機能、またはESTによって示される遺伝子を決定するために、そして、薬物発見のための潜在的な標的遺伝子の機能を確証するために使用される。
【0036】
1つの実施形態では、それぞれの遺伝子を調節するために異なったジンクフィンガータンパク質を使用して、少なくとも2つの異なった遺伝子の発現が調節されている。その遺伝子の一方は候補遺伝子であり、そして、他方の遺伝子はコントロール遺伝子または第2の候補遺伝子であり得る。遺伝子を発現する細胞は、ジンクフィンガータンパク質、またはジンクフィンガータンパク質をコードする核酸と接触される。両方の遺伝子は、同一の細胞で発現され得るか、または、これらの遺伝子は、異なった細胞でそれぞれ発現され得る。第1および第2の遺伝子の発現が、ジンクフィンガータンパク質によって調節された後、細胞は選択された表現型変化についてアッセイされ、これによって、候補遺伝子の機能を同定する。別の実施形態において、2つのジンクフィンガータンパク質は、2つの異なった部位で、同一の候補遺伝子を標的化する。本発明の方法は、機能的ゲノム学(特定の表現型と関連した遺伝子を同定することに代表的に関しする)、および標的の確証(薬物発見アッセイにおける使用に適切な遺伝子を同定することに代表的に関する)の両方に適用される。
【0037】
結果として、本発明のジンクフィンガータンパク質は、遺伝子転写の活性化および/または抑制の両方を介して、選択された表現型の原因となる遺伝子を同定するために使用され得る。プロモーター領域に結合するジンクフィンガータンパク質は、本発明で使用され得るが、ジンクフィンガータンパク質はまた、遺伝子の他の領域に結合することによって、遺伝子発現を調節し得る。従って、ジンクフィンガータンパク質を使用して、候補遺伝子の発現を調査するために、広範な配列情報は必要ではない。従って、ESTは、これらの生物学的機能を決定するために、本発明のアッセイにおいて使用され得る。
【0038】
さらに、ジンクフィンガータンパク質はまた、調節ドメインに連結され得、転写を活性化するためかまたは抑制するためのキメラ転写因子を作製する。1つの実施形態では、ジンクフィンガータンパク質をコードする遺伝子が低分子によって制御される分子スイッチに連結される場合、調節の方法は、ジンクフィンガータンパク質を使用する。従って、ジンクフィンガータンパク質の遺伝子発現は条件的であって、そして低分子を使用して調節され得、これによって、候補遺伝子発現の条件的な調節を提供する。
【0039】
このような機能的ゲノム学アッセイは、新規のヒトおよび哺乳動物治療適用の発見を可能とし、例えば、遺伝的疾患、癌、真菌感染、原生動物感染、細菌感染、およびウイルス感染、虚血、血管性疾患、関節炎、免疫障害などの処置のための新規薬物の発見を含む。表現型における変化についてのアッセイ系の例としては、例えば、形質転換アッセイ(例えば、増殖、足場依存性、増殖因子依存性、病巣形成における変化、軟寒天における増殖、ヌードマウスにおける腫瘍増殖、およびヌードマウスにおける腫瘍血管新生);アポトーシスアッセイ(例えば、DNAラダー化および細胞死、アポトーシスに関与する遺伝子の発現);シグナル伝達アッセイ(例えば、細胞内カルシウム、cAMP、cGMP、IP3における変化、ホルモンおよび神経伝達物質の放出における変化);レセプターアッセイ(例えば、エストロゲンレセプターおよび細胞増殖);増殖因子アッセイ(例えば、EPO、低酸素および赤血球コロニー形成ユニットアッセイ);酵素産物アッセイ(例えば、FAD−2誘導性油不飽和化);転写アッセイ(例えば、レポーター遺伝子アッセイ);ならびにタンパク質産生アッセイ(例えば、VEGF ELISA)が挙げられる。
【0040】
1つの実施形態では、多数の候補遺伝子が提供され、そして、最初のジンクフィンガータンパク質が、候補遺伝子の1つの発現を調節するために使用されるが、他の候補遺伝子の発現パターンが調査される。この工程は、それぞれの候補遺伝子について反復され、そして、発現パターンにおける変化は、遺伝子の生物学的機能を決定するために使用される。次いで、この発現データは、選択された表現型に関連する経路における遺伝子の順序またはカスケードを再構築するために分析され得る。
【0041】
本明細書に記載のように、ジンクフィンガータンパク質は、選り抜きの任意のコントロールまたは候補遺伝子の発現の調節のための、任意の適切な標的を認識するよう設計され得る。調節に適切な標的遺伝子の例としては、以下が挙げられる;VEGF,CCR5、ERα、Her2/Neu、Tat、Rev、HBV C、S、X,およびP,LDL−R、PEPCK、CYP7、フィブリノーゲン、ApoB、ApoE、Apo(a)、レニン、NF−κB、I−κB、TNF−α、FASリガンド、アミロイド前駆体タンパク質、心房性ナトリウム利尿因子、ob−レプチン、ucp−1、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−12、G−CSF、GM−CSF、Epo、PDGF、PAF、p53、Rb、胎児ヘモグロビン、ジストロフィン、ユートロフィン、GDNF、NGF、IGF−1、VEGFレセプターfltおよびflk、トポイソメラーゼ、テロメラーゼ、bcl−2、サイクリン、アンギオスタチン、IGF、ICAM−1、STATS、c−myc、c−myb、TH、PTI−1、ポリガラクツロナーゼ、EPSPシンターゼ、FAD2−1、Δ−12デサチュラーゼ、Δ―9デサチュラーゼ、Δ−15デサチュラーゼ、アセチルCoAカルボキシラーゼ、アシルACPチオエステラーゼ、ADP−グルコースピロホスホリラーゼ、デンプン合成酵素、セルロースシンターゼ、スクロースシンターゼ、老化関連遺伝子、重金属キレート剤、脂肪酸ヒドロペルオキシドリアーゼ、ウイルス遺伝子、原生生物遺伝子、真菌遺伝子、および細菌遺伝子。一般に、調節されるに適切な遺伝子は、サイトカイン、リンホカイン、成長因子、分裂促進因子、走化因子、癌活性(onco−active)因子、レセプター、カリウムチャネル、G−タンパク質、シグナル伝達分子および他の疾患関連遺伝子。
【0042】
候補遺伝子は、当該分野で公知の方法(例えば、遺伝子発現マイクロアレイ、差次的cDNAクローニング頻度、減算的ハイブリダイゼーション、差次的表示法によって、目的の細胞または組織からESTをクローニングすることによって、ノックアウトの際に致死である遺伝子を同定することによって、特定の発育的もしくは細胞内事象または発育的もしくは細胞内刺激に応答して上方制御または下方制御される遺伝子を同定することによって;特定の疾患および病理学的状態において上方制御または下方制御される遺伝子を同定することによって、変異およびRFLPを同定することによって、遺伝疾患に関連することが公知の染色体領域と関連した遺伝子を同定することによって、一過的に調節される遺伝子(例えば、病原性生物において)、SNPなどに基づいた差異を同定することによって)選択される。
【0043】
転写因子機能における一般的なテーマは、プロモーターに対する単純な結合および、いくつかの場合において、十分な近接が、一般に必要とされる全てのものであることである。プロモーターに対する正確な位置取り、方向、および限界内での距離は、それほど重要な事項でない。いくつかの場合において、エンハンサーは、目的の遺伝子から大きく離れた距離に位置することが見出される。さらに、遺伝子発現の抑制のために、しばしば、転写開始の単純な立体的妨害が十分である。これらの特徴は、ジンクフィンガータンパク質のための標的部位の選択において相当の柔軟性を可能にする。従って、ジンクフィンガータンパク質により認識される標的部位は、ジンクフィンガータンパク質(必要に応じて、調節ドメインに連結される)による遺伝子発現の活性化または抑制を可能にする標的遺伝子における任意の適切な部位であり得る。好ましい標的部位は、転写開始部位に隣接する領域、転写開始部位の下流の領域、または転写開始部位の上流の領域を含む。さらに、標的部位はまた、エンハンサー領域、リプレッサー部位、RNAポリメラーゼ停止部位、および特定の調節部位(例えば、SP−1部位、低酸素応答エレメント、核レセプター認識因子、p53結合部位)、cDNAコード領域中の部位、または発現配列タグ(EST)コード領域中の部位に位置する。以下に記載のように、代表的に各々のフィンガーは、2〜4塩基対を認識し、2つのフィンガーのジンクフィンガータンパク質は、4〜7bpの標的部位に結合し、3つのフィンガーのジンクフィンガータンパク質は6〜10塩基対の部位に結合し、そして6つのフィンガーのジンクフィンガータンパク質は、2つの隣接する標的部位(各々の標的部位は、6〜10塩基対を有する)に結合する。
【0044】
関連したジンクフィンガータンパク質または個々のジンクフィンガータンパク質のいずれかによって隣接した標的部分を認識することが、ジンクフィンガータンパク質の増強された結合を産生するために使用され得、それらの標的部位に個々に結合する場合、ジンクフィンガータンパク質の親和性よりも大きい親和性を生じる。1つの実施形態では、6フィンガーのジンクフィンガータンパク質は、アミノ酸リンカーによって連結された融合タンパク質として産生され、そして、ジンクフィンガータンパク質は約18塩基対標的部位を認識する(例えば、Liuら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.94:5525−5530(1997)を参照のこと)。18塩基対標的部位は、ヒトゲノムにおいて特異性を提供することが推定される。なぜなら、そのサイズの標的部位は、3×1010塩基対毎に1度のみ生じるべきであり、そして、ヒトゲノムのサイズは3.5×109塩基対であるためである(例えば、Liuら、Pro.Natl.Acad.Sci.U.S.A.94:5525−5530(1997)を参照のこと)。別の実施形態において、6フィンガーのジンクフィンガータンパク質の2つの3フィンガー部分は、ロイシンジッパー、STATタンパク質N末端ドメイン、またはFK506結合タンパク質を介して共有結合される(例えば、O’Shea,Science 254:539(1991),Barahmand−Pourら、Curr.Top.Microbiol.Immunol.211:121−128(1996);Klemmら、Annu.Rev.Immunol.16:569−592(1998);Hoら、Nature 382:822−826(1996)を参照のこと)。
【0045】
本明細書中で記載されるように、2つのジンクフィンガータンパク質は、異なった標的遺伝子(例えば、候補遺伝子および制御遺伝子、または2つの候補遺伝子、または同じ遺伝子についての2つの異なった標的部位)を認識する細胞に投与される。必要に応じて、複数のジンクフィンガータンパク質が投与され得、そのタンパク質は、同じ遺伝子における2つ以上の異なった標的部位を認識する。2つの候補遺伝子が調査される場合、第1および第2の遺伝子の両方は、表現型ごとに必要とされ得る。候補遺伝子は、内因性または外因性遺伝子であり得る。1つの実施形態において、1つ以上の候補遺伝子は、選択された表現型に関連する。
【0046】
別の実施態様において、ジンクフィンガータンパク質を、以下に記載の少なくとも1以上の調節ドメインに連結する。好ましい調節ドメインとしては、転写因子リプレッサーまたはアクチベータードメイン(例えば、KRABおよびVP16)、コリプレッサーおよびコアクチベータードメイン、DNAメチルトランスフェラーゼ、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼ、およびエンドヌクレアーゼ(例えば、Fok1)が挙げられる。遺伝子発現の抑制については、代表的に、その遺伝子の発現は、約20%まで(すなわち、80%の非ジンクフィンガータンパク質調節発現)、より好ましくは約50%まで(すなわち、50%の非ジンクフィンガータンパク質調節発現)、より好ましくは約75〜100%まで(すなわち、25〜0%の非ジンクフィンガータンパク質調節発現)減少される。遺伝子発現の活性化については、代表的に発現は、約1.5倍まで(すなわち、150%の非ジンクフィンガータンパク質調節発現)、好ましくは、2倍(すなわち、200%の非ジンクフィンガータンパク質調節発現)、より好ましくは、約5〜10倍(すなわち、500〜1000%の非ジンクフィンガータンパク質調節発現)、少なくとも100倍以上まで活性化される。
【0047】
操作されたジンクフィンガータンパク質アクチベーターおよびリプレッサーの発現はまた、tet調節系およびRU−486系(例えば、GossenおよびBujard、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:5547(1992);Oliginoら、Gene Ther.5:491−496(1998);Wangら、Gene Ther.4:432−441(1997);Neeringら、Blood 88:1147−1155(1996);およびRendahlら、Nat.Biotechnol.16:757−761(1998)を参照のこと)により分類化された低分子系により制御され得る。これらは、ジンクフィンガータンパク質アクチベーターおよびリプレッサーの発現に対する低分子の制御を与え、従って、目的の標的遺伝子に対する低分子の制御を与える。この有利な特徴は、細胞培養モデル、およびトランスジェニック動物および植物において使用され得る。
【0048】
(定義)
本明細書中で使用される場合、以下の用語は、他に特定されない限り、それらに起因する意味を有する。
【0049】
「候補遺伝子」とは、細胞、ウイルス、エピソーム、微生物、原生動物、真菌、動物、植物、葉緑体、またはミトコンドリアの遺伝子をいう。この用語はまた、微生物またはウイルス感染細胞において天然に存在する微生物またはウイルスゲノムの一部である微生物またはウイルス遺伝子をいう。この微生物またはウイルスゲノムは染色体外ゲノムであるか、または宿主染色体に導入され得る。この用語はまた、内因性または外因性遺伝子ならびにESTとして同定された細胞性遺伝子を包含する。しばしば、本発明の候補遺伝子は、生物学的機能が未知の遺伝子である。選り抜きのアッセイは、この遺伝子が、ジンクフィンガータンパク質を有する候補遺伝子発現の調節の際に、選択された表現型に関連しているか否かを決定するために使用される。生物学的機能が公知の場合、代表的に候補遺伝子は、コントロール遺伝子として作用するか、または、1つ以上のさらなる遺伝子が、同じ表現型に関連しているか否かを決定するために使用されるか、または、この遺伝子が、特定の表現型において他の遺伝子と関連しているか否かを決定するために使用される。
【0050】
「選択された表現型」は、任意の表現型(例えば、細胞増殖(growth)、細胞増殖(proliferation)、細胞形態、酵素機能、シグナル伝達、発現パターン、下流発現パターン、レポーター遺伝子活性化、ホルモン放出、増殖因子放出、神経伝達物質放出、リガンド結合、アポトーシス、および産物形成における変化などのアッセイにおいて測定され得る任意の観察可能な特徴または機能的効果)をいう。このようなアッセイとしては、形質転換アッセイ(例えば、増殖、足場依存性、増殖因子依存性、病巣形成における変化、軟寒天における増殖、ヌードマウスにおける腫瘍増殖、およびヌードマウスにおける腫瘍血管新生);アポトーシスアッセイ(例えば、DNAラダー化および細胞死、アポトーシスに関与する遺伝子の発現);シグナル伝達アッセイ(例えば、細胞内カルシウム、cAMP、cGMP、IP3における変化、ホルモンおよび神経伝達物質の放出における変化);レセプターアッセイ(例えば、エストロゲンレセプターおよび細胞増殖);増殖因子アッセイ(例えば、EPO、低酸素および赤血球コロニー形成ユニットアッセイ);酵素産物アッセイ(例えば、FAD−2誘導性油不飽和化);転写アッセイ(例えば、レポーター遺伝子アッセイ);ならびにタンパク質産生アッセイ(例えば、VEGF ELISA)が挙げられる。
【0051】
候補遺伝子は、候補遺伝子の遺伝子発現の調節が、選択された表現型における変化の原因となる場合、選択された表現型に「関連して」いる。
【0052】
用語「ジンクフィンガータンパク質」または「ZFP」とは、ジンクにより安定化されるDNA結合ドメインを有するタンパク質をいう。個々のDNA結合ドメインは、代表的に「フィンガー」といわれ、1つのジンクフィンガータンパク質は、少なくとも1つのフィンガーを有し、代表的には、2つのフィンガー、3つのフィンガー、または6つのフィンガーを有する。各々のフィンガーは、2〜4塩基対のDNAに結合し、代表的には3〜4塩基対のDNAに結合する。ジンクフィンガータンパク質は、標的部位または標的セグメントと呼ばれる核酸配列に結合する。各々のフィンガーは、代表的に、約30アミノ酸の、ジンクを構成するDNA結合サブドメインを含む。これらのタンパク質の一つのクラス(Cys2His2クラス)を特徴づけする例示的なモチーフは、−Cys−(X)2-4Cys−(X)12−His−(X)3-5−His(ここで、Xは任意のアミノ酸)である。研究により、このクラスの単一のジンクフィンガーが、単一のβターンの2つのシステイン残基を伴うジンクに結合する2つの無関係なヒスチジン残基を含むαへリックスからなることが実証されている(例えば、BergおよびShi、Science 271:1081−1085(1996)を参照のこと)。
【0053】
「標的部位」はジンクフィンガータンパク質により認識される核酸配列である。単一の標的部位は代表的に約4〜約10の塩基対を有する。代表的に、2つのフィンガー化(Fingered)ジンクフィンガータンパク質は、4〜7塩基対の標的部位を認識し、3つのフィンガー化ジンクフィンガータンパク質は、6〜10塩基対の標的部位を認識し、6つのフィンガー化ジンクフィンガータンパク質は、2つの隣接した9〜10塩基対の標的部位を認識する。
【0054】
用語「隣接標的部位」とは、0〜約5塩基対離れた非重複の標的部位をいう。
【0055】
「Kd」とは、化合物の解離定数をいい、すなわち、所定のアッセイ系(例えば、米国特許第5,789,538号を参照のこと)を用いて測定した場合に、所定の条件下(すなわち、[標的濃度]<<Kdの場合)でその標的に対する化合物の最大の結合の半分を与える(すなわち、その化合物の分子の半分が、標的に結合する)化合物(例えば、ジンクフィンガータンパク質)の濃度をいう。Kdを測定するために用いるアッセイ系は、それがジンクフィンガータンパク質の実際のKdの最も正確な測定を与えるように選択されるべきである。ジンクフィンガータンパク質の実際のKdの正確な測定を与える限り、任意のアッセイ系を使用し得る。一つの実施態様において、本発明のジンクフィンガータンパク質のKdを、本明細書中に記載されるように、電気泳動移動度シフトアッセイ(「EMSA」)を、使用して測定する。ジンクフィンガータンパク質の純度または活性について調整されないかぎり、本明細書中に記載される方法を使用して行なわれるKdの計算は、所定のジンクフィンガータンパク質の実際のKdの過少評価を生じ得る。必要に応じて、候補遺伝子の転写調節に使用されるジンクフィンガータンパク質のKdは、約100nM未満、より好ましくは、75nM未満、より好ましくは、約50nM未満、最も好ましくは、約25nMである。
【0056】
句「転写開始部位に隣接する」とは、転写開始部位の上流または下流のいずれかの約50塩基内にある標的部位をいう。転写開始部位の「上流」とは、転写開始部位から5’側へ約50塩基超える標的部位をいう。転写開始部位の「下流」とは、転写開始部位から3’側へ約50塩基超える標的部位をいう。
【0057】
句「RNAポリメラーゼ終止部位(pause site)」は、Uptainら、Annu.Rev.Biochem.66:117−172(1997)に記載されている。
【0058】
発現ベクター、核酸、ジンクフィンガータンパク質または送達ビヒクルを、細胞に「投与する(こと)」とは、形質導入、トランスフェクション、エレクトロポレーション、転座、融合、食作用、または微粒子銃(biolistic)方法など、すなわち、タンパク質または核酸が、細胞膜を横切って、そして好ましくは細胞の核へと輸送され得る任意の手段を含む。これらには、裸のDNAの投与が含まれる。
【0059】
「送達ビヒクル」とは、ジンクフィンガータンパク質を投与するために使用される化合物(例えば、リポソーム、毒素または膜移行ポリペプチド)をいう。送達ビヒクルはまた、ジンクフィンガータンパク質をコードする核酸を投与するために使用され得る(例えば、脂質:核酸複合体、発現ベクター、ウイルスなど)。
【0060】
用語、遺伝子の「発現を調節する」、遺伝子の「発現を阻害する」、および遺伝子の「発現を活性化する」とは、ジンクフィンガータンパク質が遺伝子の転写を活性化または阻害する能力をいう。活性化には、転写阻害の防御(すなわち、遺伝子発現の抑制の防御)を含まれ、そして阻害には、転写活性化の防御(すなわち、遺伝子活性化の防御)を含む。
【0061】
「遺伝子発現の抑制を防御する遺伝子発現の活性化」とは、ジンクフィンガータンパク質がリプレッサー分子の結合をブロックまたは防御する能力をいう。
【0062】
「遺伝子活性化を防御する遺伝子発現の阻害」とは、ジンクフィンガータンパク質が、アクチベーター分子の結合をブロックまたは防御する能力をいう。
【0063】
調節は、その標的遺伝子の発現によって間接的にまたは直接的に影響を受ける任意のパラメータを決定することによってアッセイされ得る。そのようなパラメータとしては、例えば、本明細書中に記載されるような、RNAまたはタンパク質レベルにおける変化、タンパク質活性における変化、産物レベルにおける変化、下流の遺伝子発現における変化、レポーター遺伝子転写における変化(ルシフェラーゼ、CAT、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、GFP(例えば、MistiliおよびSpector、Nature Biotechnology 15:961−964(1997));シグナル伝達における変化、リン酸化および脱リン酸化、レセプター−リガンド相互作用、セカンドメッセンジャー濃度(例えば、cGMP、cAMP、IP3およびCa2+)、細胞増殖、および新生血管形成などが挙げられる。これらのアッセイは、インビトロ、インビボおよびエキソビボであり得る。そのような機能的効果は、当業者に公知の任意の手段(例えば、RNAまたはタンパク質のレベルの測定、RNA安定性の測定、下流またはレポーター遺伝子発現の同定(例えば、化学発光、蛍光、比色反応、抗体結合、誘導性マーカー、リガンド結合アッセイを介する);細胞内セカンドメッセンジャー(例えば、cGMPおよびイノシトール三リン酸(IP3))における変化;細胞内カルシウムレベルにおける変化;サイトカイン放出などにより測定され得る。
【0064】
ジンクフィンガータンパク質によって遺伝子発現調節のレベルを決定するために、ジンクフィンガータンパク質と接触させた細胞を、コントロール細胞(例えば、ジンクフィンガータンパク質なし、または非特異的なジンクフィンガータンパク質を用いる)と比較して、阻害または活性化の程度を試験する。コントロールサンプルには、100%の相対的な遺伝子発現活性値を与える。遺伝子発現の調節/阻害は、そのコントロールに対するその遺伝子発現活性値が、約80%、好ましくは50%(すなわち、そのコントロールの0.5倍の活性)、より好ましくは25%、より好ましくは5〜0%である場合に達成される。遺伝子発現の調節/活性化は、そのコントロールに対するその遺伝子発現活性値が、110%、より好ましくは150%(すなわち、そのコントロールの1.5倍の活性)、より好ましくは200%〜500%、より好ましくは1000%〜2000%またはそれを超える場合に達成される。
【0065】
「転写アクチベーター」および「転写リプレッサー」とは、上記のように、転写を調節する能力を有するタンパク質またはタンパク質のエフェクタードメインをいう。そのようなタンパク質としては、例えば、転写因子および補因子(例えば、KRAB、MAD、ERD、SID、核因子κBサブユニットp65、初期増殖応答因子1、および核ホルモンレセプター、VP16、VP64),エンドヌクレアーゼ、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、メチルトランスフェラーゼ、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼなどが挙げられる。アクチベーターおよびリプレッサーとしては、コアクチベーターおよびコリプレッサー(例えば、Utleyら、Nature 394:498−502(1998)を参照のこと)が挙げられる。
【0066】
「調節ドメイン」とは、DNA結合ドメイン(すなわち、ジンクフィンガータンパク質)に係留される場合に転写調節活性を有する、タンパク質またはタンパク質ドメインをいう。代表的には、調節ドメインは、ジンクフィンガータンパク質に共有結合的または非共有結合的に連結されて、転写調節をもたらす。あるいは、ジンクフィンガータンパク質は、単独で調節ドメインを伴わずに転写調節をもたらすように作用し得る。
【0067】
用語「異種」とは、相対的な用語であり、核酸の部分に関して使用される場合は、その核酸が、天然に互いに同じ関係にあるとは見い出されない2つ以上のサブ配列を含むことをいう。例えば、組換え産生される核酸は、代表的に、新たな機能的核酸を作製するために、合成的に整列させた無関連の遺伝子からの2以上の配列を有する(例えば、1つの供給源からの1つのプロモーターおよび別の供給源からのコード領域)。従って、この2つの核酸は、この状況下で互いに異種である。細胞に添加される場合、その組換え核酸はまた、その細胞の内因性遺伝子に対して異種である。従って、染色体において、異種核酸は、染色体に組み込まれた非ネイティブ(天然に存在しない)核酸、または非ネイティブ(天然に存在しない)染色体外核酸を含む。
【0068】
同様に、異種タンパク質は、そのタンパク質が、天然で互いに同じ関係にあるとは見い出されない2以上のサブ配列を含むことをいう(例えば、2つのサブ配列が単一の核酸配列によってコードされる「融合タンパク質」)。例えば、組換え技術への手引きついては、Ausubel、前出を参照のこと。
【0069】
用語「組換え」とは、例えば、細胞または核酸、タンパク質もしくはベクターに関して使用される場合、その細胞、核酸、タンパク質またはベクターが、異種核酸もしくはタンパク質の導入またはネイティブの核酸もしくはタンパク質の変更によって改変されているということか、あるいは、その細胞が、そのように改変された細胞に由来することをいう。従って、例えば、組換え細胞は、その細胞のネイティブ(天然に存在する)形態には見い出されない遺伝子を発現するか、あるいは通常もしくは異常に発現されるか、過小発現されるかもしくは全く発現されない、ネイティブ遺伝子の第2のコピーを発現する。
【0070】
「プロモーター」とは、転写を指向する一連の核酸制御配列として定義される。本明細書において使用される場合、プロモーターとしては、代表的には、転写開始部位付近の必要な核酸配列(例えば、特定のRNAポリメラーゼII型プロモーターの場合は、TATAエレメント、エンハンサー、CCAATボックス、SP−1部位など)が挙げられる。本明細書において使用される場合、プロモーターはまた、必要に応じて、遠位エンハンサーエレメントまたはリプレッサーエレメントを含み、これらのエレメントは、転写開始部位から数千塩基対ほどに位置し得る。このプロモーターは、しばしば、ポリペプチド(例えば、核レセプター、Gal4、lacリプレッサーなど)のようなDNA結合部分によるトランス活性化に応答性であるエレメントを有する。
【0071】
「構成的」プロモーターは、ほとんどの環境条件および発生条件の下で活性であるプロモーターである。「誘導性」プロモーターは、特定の環境条件または発生条件の下で活性であるプロモーターである。
【0072】
用語「作動可能に連結される」とは、核酸発現制御配列(例えば、プロモーターまたは一連の転写因子結合部位)と第2の核酸との間の機能的連結をいい、ここで、この発現制御配列は、その第2の配列に対応する核酸の転写を指向する。
【0073】
「発現ベクター」とは、一連の特定の核酸エレメントを有する、組換え生成または合成的に生成された核酸構築物である。このエレメントによって、宿主細胞における特定の核酸の転写が可能となり、そして必要に応じて、宿主細胞における発現ベクターの組込みまたは複製を可能にする。発現ベクターは、ウイルス起源または非ウイルス起源の、プラスミド、ウイルスまたは核酸フラグメントの一部であり得る。代表的に、発現ベクターは、「発現カセット」を備え、これは、プロモーターに作動可能に連結された、転写されるべき核酸を含む。用語、発現ベクターはまた、プロモーターに作動可能に連結された裸のDNAを含む。
【0074】
「宿主細胞」とは、ジンクフィンガータンパク質またはジンクフィンガータンパク質をコードする発現ベクターもしくは核酸を含む細胞を意味する。この宿主細胞は、代表的に、その発現ベクターの複製または発現を支持する。宿主細胞は、原核生物細胞(例えば、E.coli)または真核生物細胞(例えば、酵母、真菌、原生動物、高等植物、昆虫または両生類の細胞、あるいはCHO、HeLa、293、COS−1などのような哺乳動物細胞)であり得、例えば、培養細胞(インビトロ)、外植片および初代培養物(インビトロおよびエキソビボ)ならびにインビボの細胞であり得る。
【0075】
「核酸」とは、一本鎖形態または二本鎖形態のいずれかにおけるデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびそれらのポリマーをいう。この用語は、公知のヌクレオチドアナログまたは改変された骨格残基もしくは連結を含む核酸を含み、これは、合成のもの、天然に存在するもの、および天然に存在しないものであり、参照核酸と類似の結合特性を有する。そのようなアナログの例としては、限定することなく、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルのメチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)が挙げられる。
【0076】
他に言及しない限り、特定の核酸配列はまた、保存的改変されたその改変体(例えば、縮重コドン置換体)およびその相補的配列、ならびに明示的に示された配列を黙示的に包含する。特に、縮重コドン置換体は、1以上の選択された(またはすべての)コドンの3位が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基に置換された配列を生成することによって達成され得る(Batzerら、Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605−2608(1985);Rossoliniら、Mol.Cell.Probes 8:91−98(1994))。用語、核酸は、遺伝子、cDNA,mRNA,オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドと交換可能に使用される。
【0077】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、アミノ酸残基の重合体をいうために本明細書において交換可能に使用される。この用語はまた、1以上のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の化学的な人工模倣物であるアミノ酸重合体、ならびに天然に存在するアミノ酸重合体および天然に存在しないアミノ酸重合体にも適用される。
【0078】
用語「アミノ酸」とは、天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸と類似の様式で機能するアミノ酸アナログおよびアミノ酸模倣物をいう。天然に存在するアミノ酸は、遺伝子コードによってコードされるもの、および後に改変されたアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸およびO−ホスホセリン)である。アミノ酸アナログとは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的な化学的構造(すなわち、水素に結合したα炭素、カルボキシル基、アミノ基およびR基)を有する化合物(例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム)をいう。このようなアナログは、改変されたR基(例えば、ノルロイシン)または改変されたペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様の基本的な化学構造を保持する。アミノ酸模倣体とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と類似の様式で機能する化学的化合物をいう。
【0079】
アミノ酸は、本明細書において、IUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionが推奨するその一般に公知の3文字記号によるか、または1文字記号によるかのいずれかによって言及され得る。ヌクレオチドも同様に、その一般的に受容された一文字コードによって言及され得る。
【0080】
「保存的に改変された改変体」は、アミノ酸および核酸の配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された変異体とは、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸をいうか、または、その核酸は本質的に同一の配列に対して、アミノ酸配列をコードしないことをいう。遺伝子コードの縮重性のために、大多数の機能的に同一の核酸が、任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUは、すべて、アミノ酸アラニンをコードする。従って、アラニンがコドンによって特定されるすべての位置にて、そのコドンは、コードされるポリペプチドを変更することなく、対応する記載されたコドンのいずれかに変更され得る。そのような核酸改変体は「サイレント改変体」であり、この改変体は、保存的に改変された改変の1種である。ポリペプチドをコードする本明細書における全ての核酸配列はまた、その核酸のすべての可能なサイレンと改変体を記載する。当業者は、核酸における各コドン(通常、メチオニンについての唯一のコドンであるAUG、および通常、トリプトファンについての唯一のコドンであるTGGを除く)を改変して、機能的に同一の分子を得ることができることを認識する。従って、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント改変は、各々記載された配列において黙示的である。
【0081】
アミノ酸配列に関して、当業者は、コードされた配列におけるアミノ酸の単一のアミノ酸または少数の割合のアミノ酸を変更、付加または欠失する、核酸、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の配列に対する個々の置換、欠失または付加が、その変更が化学的に類似のアミノ酸でのアミノ酸置換で生じる場合、「保存的に改変された改変体」であることを、認識する。機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換の表は、当該分野で周知である。そのような保存的に改変された改変体は、本発明の多型性改変体、種間ホモログおよび対立遺伝子に加えて存在し、そしてこれらを除外しない。
【0082】
以下の8グループは、それぞれ、互いに保存的置換であるアミノ酸を含む:1)アラニン(A)、グリシン(G);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
7)セリン(S)、トレオニン(T);および8)システイン(C)、メチオニン(M)
(例えば、Creighton,Proteins(1984)を参照のこと)。
【0083】
(ジンクフィンガータンパク質の設計)
本発明のジンクフィンガータンパク質を、選択した候補遺伝子において選択した標的部位を認識するように操作する。代表的には、任意の適切なCys2His2ジンクフィンガータンパク質(例えば、SP−1、SP−1CまたはZIF268)からの骨格を、操作されるジンクフィンガータンパク質についての足場として使用する(例えば、Jacobs、EMBO J.11:4507(1992);DesjarlaisおよびBerg、PNAS 90:2256−2260(1993)を参照のこと)。次いで、多数の方法を使用して、その標的について高親和性を有するジンクフィンガータンパク質(例えば、好ましくは、約25nM未満のKdを有する)を設計しそして選択し得る。上記のように、ジンクフィンガータンパク質は、高親和性を伴って、標的の候補遺伝子における任意の適切な標的部位に結合するように設計または選択され得る。同時係属中の特許出願USSN09/229,007(1999年1月12日出願)(本明細書中で参考として援用される)は、選択された標的部位についてのジンクフィンガータンパク質の設計、構築および発現のための方法を包括的に記載する。
【0084】
当該分野で公知の任意の適切な方法を使用して、ジンクフィンガータンパク質をコードする核酸を設計および構築し得る(例えば、ファージディスプレイ、ランダム変異誘発、コンビナトリアルライブラリー、コンピュータ/合理的設計、親和性選択、PCR、cDNAまたはゲノムのライブラリーからのクローニング、合成構築など)(例えば、米国特許第5,786,538号;Wuら、PNAS 92:344−348(1995);Jamiesonら、Biochemistry 33:5689−5695(1994);RebarおよびPabo、Science 263:671−673(1994);ChooおよびKlug、PNAS 91:11163−11167(1994);ChooおよびKlug、PNAS 91:11168−11172(1994);DesjarlaisおよびBerg、PNAS 90:2256−2260(1993);DesjarlaisおよびBerg、PNAS 89:7345−7349(1992);Pomerantzら、Science 267:93−96(1995);Pomerantzら、PNAS 92:9752−9756(1995);ならびにLiuら、PNAS 94:5525−5530(1997);GriesmanおよびPabo、Science 275:275:657−661(1997);DesjarlaisおよびBerg、PNAS 91:11099−11103(1994)を参照のこと)。
【0085】
好ましい実施態様において、同時係属中の出願USSN09/229,007(1999年1月12日出願)は、標的遺伝子を選択し、そして1〜6(またはそれを超える)D可能な(D−able)部位(定義については以下を参照のこと)を含む遺伝子内の標的部位を同定する方法を提供する。次いで、これらの方法を使用して、ジンクフィンガータンパク質を、予め選択した部位に結合するように合成し得る。標的部位選択のこれらの方法は、標的セグメントにおける1以上のD可能な部位の存在が、D可能な部位を欠く標的セグメントに結合するジンクフィンガータンパク質と比較して、その部位に結合するように選択または設計したジンクフィンガータンパク質において、より高い結合親和性についての可能性を付与するという認識を一部前提とする。この洞察を支持する実験的な証拠は、同時係属中の出願USSN09/229,007(1999年1月12日出願)における実施例2〜9に提供される。
【0086】
D可能な部位またはサブ部位は、単一のジンクフィンガーが、標的部位のうち3塩基ではなく、4塩基に結合するように適切に設計されることを可能にする標的部位の領域である。そのようなジンクフィンガーは、二本鎖標的セグメントのうちの一方の鎖(標的鎖)における塩基のトリプレットおよび他方の鎖上の第四の塩基に結合する(同時係属中の出願USSN09/229,007(1999年1月12日出願)の図2を参照のこと)。4塩基標的セグメントへの単一のジンクフィンガーの結合は、標的鎖の配列上およびジンクフィンガーのアミノ酸配列上の両方の束縛を課す。標的鎖内の標的部位は、「D可能な」部位のモチーフ5’NNGK3’を含むべきである。ここで、NおよびKは、慣用されるIUPAC−IUBの多義性(ambiguity)コードである。そのような部位への結合のためのジンクフィンガーは、−1位にアルギニン残基、および+2位にアスパラギン酸(または、好ましさは低いが、グルタミン酸)を含むべきである。−1位のアルギニン残基は、D可能な部位におけるG残基と相互作用する。ジンクフィンガーの+2位でのアスパラギン酸(またはグルタミン酸)残基は、D可能な部位のK塩基と相補的な反対の鎖の塩基と相互作用する。D可能な部位との名称を付与するのは、アスパラギン酸(シンボルD)と反対の鎖の塩基(第四の塩基)との間の相互作用である。D可能な部位の式から明らかなように、2つのサブタイプのD可能な部位が存在する:5’NNGG3’および5’NNGT3’。前者の部位について、ジンクフィンガーの+2位のアスパラギン酸またはグルタミン酸は、D可能な部位の反対の鎖におけるCと相互作用する。後者の部位において、ジンクフィンガーの+2位のアスパラギン酸またはグルタミン酸は、D可能な部位の反対の鎖におけるAと相互作用する。一般的に、NNGGが、NNGTよりも好ましい。
【0087】
3つのフィンガーを有するジンクフィンガータンパク質の設計において、標的部位は、そのタンパク質の少なくとも1つのフィンガーおよび必要に応じて2または3つすべてのフィンガーがD可能な部位に結合する可能性を有するように選択されるべきである。そのようなものは、式5’−NNx aNy bNzc−3’を有するより大きな標的遺伝子内から標的部位を選択することによって達成され得る。ここで、 (x、a)、(y、b)および(z、c)のセットの各々は、(N,N)または(G,K)のいずれかであり;
(x、a)、(y、b)および(z、c)の少なくとも1つは、(G,K)であり、そして NおよびKは、IUPAC−IUBの多義性コードである。
【0088】
換言すれば、(x、a)、(y、b)および(z、c)の3つのセットの少なくとも1つが、セット(G,K)であるとは、そのセットの一位がGであり、そして二位がGまたはTであるという意味である。(G,K)ではない3つのセットのもの(ある場合)が、(N,N)であるとは、そのセットの一位が任意のヌクレオチドによって占有され得、そしてそのセットの二位が任意のヌクレオチドによって占有され得ることを意味する。例として、セット(x、a)は、(G,K)であり得、そしてセット(y、b)および(z、c)は、両方とも(N,N)であり得る。
【0089】
式5’−NNx aNy bNzc−3’において、NNx aNyおよびbNzcのトリプレットは、ジンクフィンガータンパク質における3つのフィンガーによって結合される標的鎖上の塩基のトリプレットを表す。x、yおよびzの1つのみがGであり,そしてこのGにKが続く場合、その標的部位は単一のD可能なサブ部位を含む。例えば、xのみがGであり、そしてaがKである場合、その部位は、

であり、ここで、D可能なサブ部位を強調表示する。xおよびyの両方がGであるがzはGでなく、そしてaおよびbがKである場合、その標的部位は、以下のように2つの重複するD可能なサブ部位を有する:

であり、このような部位の一方を、ボールドで表し、そして他方を斜体字で表す。x、yおよびzの3つすべてがGであり、そしてa、bおよびcがKである場合、その標的セグメントは、以下のような3つのD可能なサブ部位を含む:

ここで、D可能なサブ部位は、ボールド、斜体字、および下線によって表される。
【0090】
従って、これらの方法は、上記のように、標的遺伝子を選択し、そして式5’−NNx aNy bNzc−3’に適合する標的部位についてその遺伝子の可能なサブ配列内を系統的に検索することによって作用する。いくつかのそのような方法において、潜在的な標的遺伝子のいずれかの鎖上の10の連続する塩基の全ての可能なサブ配列を評価して、その配列が上記の式に適合するか否か、およびそうであれば、どれだけのD可能な部位が存在するかを決定する。代表的にはそのような比較は、コンピュータによって実行され、そしてその式に適合する標的部位のリストが出力される。必要に応じて、そのような標的部位は、どれだけ多くのD可能な部位が存在するかに従って、異なるサブセットにおいて出力され得る。
【0091】
変形において、本発明の方法は、第一および第二の標的セグメントを同定する。これら各々は、上記の式に独立して適合する。そのような方法における2つの標的セグメントは、その標的遺伝子において互いの近接または近位(すなわち、約0〜5塩基以内)に存在するように束縛される。近位の標的セグメントの選択の基礎をなす戦略は、それぞれ第一および第二の標的セグメントについて特異的な2成分ジンクフィンガータンパク質の結合によって形成されるジンクフィンガータンパク質の設計を可能にすることである。これらの原理は、任意の数の成分フィンガーを有するジンクフィンガータンパク質によって結合されるべき標的部位を選択するように拡張され得る。例えば、9フィンガータンパク質についての適切な標的部位は、3成分セグメントを有し、ここで、各セグメントは、上記の式に適合する。
【0092】
上記の方法によって同定された標的部位は、他の基準による評価にさらに供され得るか、またはこれを、設計または選択(必要な場合)およびそのような部位について特異的なジンクフィンガータンパク質の産生について直接使用し得る。潜在的な標的部位を評価するためのさらなる基準は、遺伝子内の特定の領域に近位であることである。ジンクフィンガータンパク質がそれ自体における細胞遺伝子を抑制するように使用されるべき場合(すなわち、抑制性部分へのそのジンクフィンガータンパク質の結合を伴わない)、その最適な位置は、転写開始部位、またはその50bp上流もしくは下流に存在するようであるか、転写複合体の形成を阻害するようであるか(KimおよびPabo,J.Biol.Chem.272:29795−29680(1997))、または必須のエンハンサー結合タンパク質と競合するようである。しかし、ジンクフィンガータンパク質が、KRABリプレッサードメインまたはVP16アクチベータードメインのような機能的ドメインと融合される場合、その結合部位の位置は、相当に、より可撓性であり、そして公知の調節領域の外側に存在し得る。例えば、KRABドメインは、KRABが結合する場所から少なくとも3kbpまでにあるプロモーターでの転写を抑制し得る(Margolinら、PNAS 91:4509−4513(1994))。従って、調節配列のような標的遺伝子を有する実証可能な生物学的意義のセグメントを、必ずしも含まないかまたは重複しない標的部位が選択され得る。標的セグメントをさらに評価するための他の基準は、そのようなセグメントまたは関連するセグメントへのジンクフィンガータンパク質の結合の先行する利用可能性、および/または所定の標的セグメントを結合するような新たなジンクフィンガータンパク質を設計する容易さを含む。
【0093】
標的セグメントが選択された後、そのセグメントに結合するジンクフィンガータンパク質は、種々のアプローチによって提供され得る。アプローチの最も単純なものは、その標的部位へ結合することがすでに公知である既存の収集物からの予め特徴付けられたジンクフィンガータンパク質を提供することである。しかし、多くの場合、そのようなジンクフィンガータンパク質は存在しない。既存のジンクフィンガータンパク質のデータベースにおける情報およびそれらのそれぞれの結合親和性を使用する別のアプローチもまた、新たなジンクフィンガータンパク質を設計するために使用され得る。さらなるアプローチは、上記のような置換規則に基づいてジンクフィンガータンパク質を設計することである。なおさらなる別のものは、ファージディスプレーのような経験的なプロセスによって所定の標的に対する特異性を有するジンクフィンガータンパク質を選択することである。いくつかのそのような方法において、ジンクフィンガータンパク質の各々の成分フィンガーは、他の成分フィンガーとは独立して設計または選択される。例えば、各フィンガーは、異なる既存のジンクフィンガータンパク質から得られ得るか、または各フィンガーは、別個のランダム化および選択に供され得る。
【0094】
一旦ジンクフィンガータンパク質が所定の標的セグメントに対して選択され、設計され、または他の方法で提供されると、そのジンクフィンガータンパク質またはそれをコードするDNAが合成される。ジンクフィンガータンパク質をコードするDNAを合成および発現するための例示的な方法は、以下に記載される。次いで、ジンクフィンガータンパク質またはジンクフィンガータンパク質をコードするポリヌクレオチドは、発現の調節、またはジンクフィンガータンパク質が結合する標的部位を含む標的遺伝子の分析のために使用され得る。
【0095】
(ジンクフィンガータンパク質の発現および精製)
ジンクフィンガータンパク質ポリペプチドおよび核酸は、組換え遺伝学の分野において慣用的な技術を用いて作製され得る。本発明における一般的使用法を開示する基本書は、Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual(第2版、1989),Kriegler,Gene Transfer and Expression:A Laboratory Manual(1990);およびCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubelら、編、1994)を含む。さらに、本質的に任意の核酸を、任意の種々の商業的供給元に特注することが可能である。同様に、ペプチドおよび抗体を、任意の種々の商業的供給元に特注することが可能である。
【0096】
代表的に、2つの代替的方法を用いて、新規に設計したDNA結合ペプチドを発現するために必要とされるコード配列を作製する。1つ目のプロトコルは、6つが重複するオリゴヌクレオチドを利用するPCRに基づく構築手順である(図1の同時係属中のUSSN09/229、037)。3つのオリゴヌクレオチドは、認識へリックス間のDNA結合ドメインの部分をコードする「汎用(universal)」配列に対応する。これらのオリゴヌクレオチドは、全てのジンクフィンガー構築物について一定に保たれる。その他の3つの「特異的」オリゴヌクレオチドは、認識へリックスをコードするように設計される。これらのオリゴヌクレオチドは、認識へリックス上の主に−1位、2位、3位および6位での置換を含み、このことはオリゴヌクレオチドを異なるDNA結合ドメインの各々に対して特異的にさせる。
【0097】
PCR合成は、2つの工程で実行される。第一に、二重鎖DNAの鋳型が、低温度アニーリング工程での4サイクルPCR反応において、6つのオリゴヌクレオチド(3つは汎用、3つは特異的)を組み合わせることによって作製され、それによってオリゴヌクレオチドをアニーリングし、DNA「骨格」を形成する。この骨格におけるギャップは、高忠実度熱安定ポリメラーゼ(TaqおよびPfuポリメラーゼの組み合わせもまた十分である)によって埋められる。構築の第二段階において、ジンクフィンガーの鋳型は、クローニングするためにいずれか一方の末端の制限部位をシャトルベクターか、または直接発現ベクターに組み込むために設計された外部プライマーによって増幅される。
【0098】
新規に設計したDNA結合タンパク質をクローニングする代替的方法は、所望のジンクフィンガータンパク質の特定の領域をコードする相補的なオリゴヌクレオチドをアニーリングすることに依存する。この特定用途は、オリゴヌクレオチドが最終連結工程の前にリン酸化されることを必要とする。これは、通常、アニーリング反応を準備する前に行われるが、キナーゼ処理はまた、アニーリング後に起こり得る。簡単に言えば、タンパク質の定常領域をコードする「汎用」オリゴヌクレオチドは、それらの相補的なオリゴヌクレオチドとアニーリングされる。さらに、フィンガー認識へリックスをコードする「特異的」オリゴヌクレオチドは、それらのそれぞれに相補的なオリゴヌクレオチドとアニーリングされる。これらの相補的オリゴは、上記のプロトコルにおいてポリメラーゼによって以前に埋められた領域を埋めるために設計される。通常のオリゴ1およびフィンガー3に相補的なオリゴは、選択したベクターへのクローニングに用いられる制限部位に特異的な配列をオーバーハングしたままにするように操作される。第2の構築プロトコルは、以下の局面で最初のプロトコルとは異なる:新規に設計したジンクフィンガータンパク質をコードする「骨格」は、全体的に合成DNAから成り立っており、それによってポリメラーゼの埋める(fill−in)工程を排除する。さらに、ベクターへクローニングされるフラグメントは、増幅を必要としない。最後に、配列特異的にオーバーハングしたままにする設計は、挿入フラグメントの制限酵素消化の必要を排除する。
【0099】
得られた、新規に設計したジンクフィンガータンパク質をコードするフラグメントは、発現ベクターに連結される。一般的に利用される発現ベクターは、改変化pMAL−c2細菌発現ベクター(New England BioLabs,「NEB」)または真核生物発現ベクター、pcDNA(Promega)を含むがこれらに限定されない。
【0100】
当業者に公知の任意の適切なタンパク質精製の方法は、本発明のジンクフィンガータンパク質を精製するのに用いられ得る(Ausubel、前出、Sambrook、前出を参照のこと)。さらに、任意の適切な宿主が、用いられ得る(例えば、細菌細胞、昆虫細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞など)。
【0101】
1つの実施態様において、細菌株JM109におけるマルトース結合タンパク質(MBP−ZFP)と融合されたジンクフィンガータンパク質の発現は、アミロースカラム(NEB)を通じた簡単な精製を可能にする。ジンクフィンガーキメラタンパク質の高い発現レベルは、IPTGを用いる誘発によって得られ得る。なぜならば、pMal−c2発現プラスミドにおけるMBP−ZFP融合物は、IPTG誘発性tacプロモーター(NEB)の制御下にあるからである。MBP−ZFP融合プラスミドを含む細菌は、10μM ZnCl2、0.02%グルコース、および50μg/mlアンピシリンを含む2xYT培地に接種され、そして37℃で振盪される。指数増殖の中期にIPTGが0.3mM添加され、そして培養物を振盪する。3時間後、細菌は、遠心分離によって収集され、超音波処理によって破壊され、次いで不溶物質が遠心分離によって取り除かれる。MBP−ZFPタンパク質は、アミロース結合樹脂に捕捉され、20mM Tris−HCl(pH7.5)、200mM NaCl、5mM DTTおよび50μM ZnCl2を含む緩衝液で徹底的に洗浄され、次いで本質的に同じ緩衝液中のマルトースで溶出される(精製は、NEBからの標準的プロトコルに基づく)。精製したタンパク質は、定量され、そして生化学的分析のために保存される。
【0102】
精製したタンパク質の生化学的特性(例えば、Kd)は、任意の適切なアッセイによって特徴づけされ得る。1つの実施態様において、Kdは、電気泳動移動度シフトアッセイ(「EMSA」)を介して特徴づけされる(BuratowskiおよびChodosh,in Current Protocols in Molecular Biology 12.2.1−12.2.7頁(Ausubel編、1996);本明細書中で参考として援用される米国特許第5,789,538号、1999年1月12日に出願された米国特許出願第09/229,007もまた参照のこと)。アフィニティーは、低固定量の標識化二重鎖オリゴヌクレオチド標的に対して、精製したタンパク質を滴定することによって測定される。この標的は、天然の配列に見出される3bpに隣接する天然の結合部位配列(9または18bp)を含む。結合部位および隣接配列に対する外側は、定常配列である。アニーリングしたオリゴヌクレオチド標的は、T4ファージポリヌクレオチドキナーゼを用いて標的の効率的な標識化を可能にする1bpの5’オーバーハングを保有する。アッセイのために、標的は、40nMまたは40nM未満の濃度(実際の濃度は、最も低いタンパク質希釈度より、少なくとも10倍より低く保たれる)で添加され、そして反応は少なくとも45分間平衡化させておく。さらに、反応混合物はまた、10mM Tris(pH7.5)、100mM KCl、1mM MgCl2、0.1mM ZnCl2、5mM DTT、10%グリセロール、0.02%BSA(ポリ(dIdC)または(dAdT)(Pharmacia)はまた、10〜100μg/μlで添加され得る)を含む。
【0103】
平衡化した反応物は、10%ポリアクリルアミドゲル上にロードされる。10%ポリアクリルアミドゲルは、Tris/グリシン緩衝液において45分間、前泳動(pre−run)されている。結合および非結合標識標的は、150Vでの電気泳動によって分離される(あるいは、4%ポリアクリルアミドスタッカを含む10〜20%勾配Tris−HClゲルが用いられ得る)。乾燥したゲルは、オートラジオグラフィーかまたはホスホロイメージング(phosphoroimaging)によって可視化され、見かけ上のKdが、最大の半分の結合を与えるタンパク質濃度を算出することによって決定される。
【0104】
同様のアッセイはまた、タンパク質調製物における活性な画分を決定することを含み得る。活性な画分は、タンパク質が高濃度の標的DNAに対して滴定される化学量論的ゲルシフトによって決定される。滴定は、100、50、および25%の標的(通常、μMレベル)で行われる。
【0105】
別の実施態様において、ファージ提示ライブラリーを用いて、選択された標的部位に対して高いアフィニティーを有するジンクフィンガータンパク質を選択し得る。この方法は、それが、変異誘発されたジンクフィンガータンパク質の多様なライブラリーの作製、続いて、アフィニティー選択法を用いて所望のDNA結合特性を有するタンパク質の単離を含むという点において直接の設計とは本質的に異なる。この方法を用いるために、この実験は、代表的には以下のように進行する。
【0106】
始めに、ジンクフィンガータンパク質についての遺伝子が変異誘発され、結合特異性および/またはアフィニティーについて重要な領域へ多様性を導入する。代表的な適用において、これは、−1位、+2位、+3位、および+6位で、ならびに+1位、+5位、+8位、または+10位のようなおそらくアクセサリー位置での単一のフィンガーの無作為化を介して達成される。
【0107】
次いで、変異誘発された遺伝子は、例えば、コートタンパク質pIIIをコードする糸状ファージの遺伝子IIIを有する融合物としてファージベクターまたはファージミドベクターへクローニングされる。ジンクフィンガー遺伝子は、膜輸出シグナルペプチドをコードする遺伝子IIIのセグメントとpIIIの残余物との間に挿入され、その結果ジンクフィンガータンパク質は、成熟プロセス化タンパク質におけるpIIIとのアミノ末端融合物として発現される。ファージミドベクターが用いられる場合、変異誘発されたジンクフィンガー遺伝子はまた、ファージ粒子へのpIIIの構築に必要とされるC末端領域を最小にコードする、短縮型バージョンの遺伝子IIIへ融合され得る。
【0108】
生じたベクターライブラリーは、E.coliへ形質転換され、そして糸状ファージを産生するために用いられる。糸状ファージは、コートタンパク質pIIIを有する融合物としてそれらの表面上に改変体ジンクフィンガータンパク質を発現する(ファージミドベクターが用いられる場合、この工程はヘルパーファージとの重感染を必要とする)。次いで、ファージライブラリーは、標的DNA部位とインキュベートされ、そしてアフィニティー選択法を用いて、高いアフィニティーで標的に結合するファージを、大量のファージから単離する。代表的には、DNA標的は、固体支持体に固定化される。次いで、これは最も固く結合するファージ以外全てを取り除くのに十分な条件下で洗浄される。洗浄後、支持体上に残存する任意のファージが、ジンクフィンガー−DNA結合を完全に破壊する条件下での溶出を介して回収される。
【0109】
回収したファージを用いて、新鮮なE.coliを感染させる。次いでこれを、増幅し、そして新しいファージ粒子のバッチを生成するために用いる。次いで、結合工程および回収工程は、固い結合剤のためのファージプールを十分に富化するのに必要な回数だけ繰り返され、その結果、固い結合剤が、配列決定法および/またはスクリーニング法を用いて同定され得る。
【0110】
(調節ドメイン)
本発明のジンクフィンガータンパク質は、必要に応じて、遺伝子発現の調節のための調節ドメインと結合され得る。ジンクフィンガータンパク質は、1つ以上の調節ドメイン、あるいは、同じドメインかまたは2つの異なるドメインの2つのコピーである2つ以上のドメインを有する、2つ以上の調節ドメインと共有的にかまたは非共有的に結合され得る。この調節ドメインは、ジンクフィンガータンパク質へ共有的に連結され得る(例えば、アミノ酸リンカーを介して、融合タンパク質の一部として)。ジンクフィンガータンパク質はまた、非共有的二量体化ドメインを介して調節ドメインと結合され得る(例えば、ロイシンジッパー、STATタンパク質N末端ドメイン、またはFK506結合タンパク質(例えば、O’Shea,Science 254:539(1991),Barahmand−Pourら、Curr.Top.Microbiol.Immunol.211:121−128(1996);Klemmら、Annu.Rev.Immunol.16:569−592(1998);Klemmら、Annu.Rev.Immunol.16:569−592(1998);Hoら、Nature 382:822−826(1996);およびPomeranzら、Biochem.37:965(1998)を参照のこと))。調節ドメインは、ジンクフィンガータンパク質のC末端またはN末端を含む、任意の適切な位置でジンクフィンガータンパク質と結合され得る。
【0111】
ジンクフィンガータンパク質へ付加するための一般的な調節ドメインは、例えば、以下を含む:転写因子由来のエフェクタードメイン(活性化因子、リプレッサー、活性化補助因子、コリプレッサー)、サイレンサー、核ホルモンレセプター、癌遺伝子転写因子(例えば、myc、jun、fos、myb、max、mad、rel、ets、bcl、myb、mosファミリーメンバーなど);DNA修復酵素、ならびにそれらに関連する因子および修飾因子;DNA再配列(rearrangement)酵素、ならびにそれらに関連する因子および修飾因子;クロマチン関連タンパク質およびそれらの修飾因子(例えば、キナーゼ、アセチラーゼおよびデアセチラーゼ);およびDNA修飾酵素(例えば、メチルトランスフェラーゼ、トポイソメラーゼ、ヘリカーゼ、リガーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、ポリメラーゼ、エンドヌクレアーゼ)ならびにそれらに関連する因子および修飾因子。
【0112】
調節ドメインを獲得し得る転写因子ポリペプチドは、調節された転写および基礎的な転写に関与するポリペプチドを含む。このようなポリペプチドは、転写因子、それらのエフェクタードメイン、活性化補助因子、サイレンサー、核ホルモンレセプターを含む(例えば、転写に関与するタンパク質および核酸エレメントの総説については、Goodrichら、Cell 84:825−30(1996)を参照のこと;一般の転写因子は、BarnesおよびAdcock,Clin.Exp.Allergy 25 増補.2:46−9(1995)ならびにRoeder,Methods Enzymol.273:165−71(1996)に総説される)。転写因子専用のデータベースは公知である(例えば、Science 269:630(1995)を参照のこと)。核ホルモンレセプター転写因子は、例えば、Rosenら、J.Med.Chem.38:4855−74(1995)に記載される。C/EBPファミリーの転写因子は、Wedelら、Immunobiology 193:171−85(1995)に総説される。核ホルモンレセプターによって転写調節を媒介する活性化補助因子およびコリプレッサーは、例えば、Meier,Eur.J.Endocrinol.134(2):158−9(1996);Kaiserら、Trends Biochem.Sci.21:342−5(1996);およびUtleyら、Nature 394:498−502(1998))に総説される。GATA転写因子(これは、造血の調節に関与する)は、例えば、Simon,Nat.Genet.11:9−11(1995);Weissら、Exp.Hematol.23:99−107に記載される。TATAボックス結合タンパク質(TBP)およびその関連したTAFポリペプチド(これはTAF30、TAF55、TAF80、TAF110、TAF150、およびTAF250を含む)はGoodrichおよびTjian,Curr.Opin.Cell Biol.6:403−9(1994)ならびにHurley,Curr.Opin.Struct. Biol.6:69−75(1996)に記載される。STATファミリーの転写因子は、例えば、Barahmand−Pourら、Curr.Top.Microbiol.Immunol.211:121−8(1996)に総説される。疾患に関与する転写因子は、Asoら、J.Clin.Invest.97:1561−9(1996)に総説される。
【0113】
1つの実施態様において、ヒトKOX−1タンパク質由来のKRABリプレッションドメインは、転写リプレッサーとして用いられる(Thiesenら、New Biologist 2:363−374(1990);Margolinら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.91:4509−4513(1994);Pengueら、Nucl.Acids Res.22:2908−2914(1994);Witzgallら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.91:4514−4518(1994))。別の実施態様において、KAP−1(KRABコリプレッサー)は、KRABと共に用いられる(Friedmanら、Genes Dev.10:2067−2078(1996))。あるいは、KAP−1は、ジンクフィンガータンパク質と共に単独で用いられ得る。転写リプレッサーとして作用する他の好ましい転写因子および転写因子ドメインは、MADを含む(例えば、Sommerら、J.Biol.Chem.273:6632−6642(1998);Guptaら、Oncogene 16:1149−1159(1998);Quevaら、Oncogene 16:967−977(1998);Larssonら、Oncogene 15:737−748(1997);Lahertyら、Cell 89:349−356(1997);およびCultraroら、Mol.Cell.Biol.17:2353−2359(1997);FKHR(横紋筋肉腫遺伝子におけるフォークヘッド(forkhead in rhapdosarcoma gene);Ginsbergら、Cancer Res.15:3542−3546(1998);Epsteinら、Mol.Cell.Biol.18:4118−4130(1998));EGR−1(即時型遺伝子産物−1;Yanら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.95:8298−8303(1998);およびLiuら、Cancer Gene Ther.5:3−28(1998));ets2リプレッサー因子リプレッサードメイン(ERD;Sgourasら、EMBO J.14:4781−4793(1995));およびMAD smSIN3相互作用ドメイン(SID;Ayerら、Mol.Cell.Biol.16:5772−5781(1996)を参照のこと)。
【0114】
1つの実施態様において、HSV VP16活性化ドメインは、転写活性化因子として用いられる(例えば、Hagmannら、J.Virol.71:5952−5962(1997)を参照のこと)。活性化ドメインを供給し得る他の好ましい転写因子は、VP64活性化ドメイン(Seipelら、EMBO J.11:4961−4968(1996));核ホルモンレセプター(例えば、Torchiaら、Curr.Opin.Cell.Biol.10:373−383(1998)を参照のこと);核因子κBのp65サブユニット(BitkoおよびBarik、J.Virol.72:5610−5618(1998)ならびにDoyleおよびHunt、Neuroreport 8:2937−2942(1997));ならびにEGR−1(即時型遺伝子産物−1;Yanら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.95:8298−8303(1998);およびLiuら、Cancer Gene Ther.5:3−28(1998))を含む。
【0115】
キナーゼ、ホスファターゼ、および遺伝子調節に関与するポリペプチドを修飾する他のタンパク質はまた、ジンクフィンガータンパク質についての調節ドメインとして有用である。このような修飾因子は、しばしば、例えば、ホルモンにより媒介される転写のスイッチを入れることか、または切ることに関与する。転写調節に関与するキナーゼは、Davis,Mol.Reprod.Dev.42:459−67(1995)、Jacksonら、Adv.Second Messenger Phosphoprotein Res.28:279−86(1993)、およびBoulikas,Crit.Rev.Eukaryot.Gene Expr.5:1−77(1995)において総説される。一方ホスファターゼは、例えば、SchonthalおよびSemin、Cancer Biol.6:239−48(1995)において総説される。核チロシンキナーゼは、Wang,Trends Biochem.Sci.19:373−6(1994)において記載される。
【0116】
記載されるように、有用なドメインはまた、癌遺伝子(例えば、myc、jun、fos、myb、max、mad、rel、ets、bcl、myb、mosファミリーメンバー)の遺伝子産物、ならびにそれらに関連する因子および修飾因子から得られ得る。癌遺伝子は、例えば、Cooper,Oncogenes,The Jones and Bartlett Series in Biology(第2版、1995)において記載される。ets転写因子は、Waslylkら、Eur.J.Biochem.211:7−18(1993)およびCrepieuxら、Crit.Rev.Oncog.5:615−38(1994)において総説される。myc癌遺伝子は、例えば、Ryanら、Biochem.J.314:713−21(1996)において総説される。junおよびfos転写因子は、例えば、The Fos and Jun Families of Transcription Factors,AngleおよびHerrlich,編(1994)において記載される。max癌遺伝子は、Hurlinら、Cold Spring Harb.Symp.Quant.Biol.59:109−16において総説される。myb遺伝子ファミリーは、Kanei−Ishiiら、Curr.Top.Microbiol.Immunol.211:89−98(1996)において総説される。mosファミリーは、Yewら、Curr.Opin.Genet.Dev.3:19−25(1993)において総説される。
【0117】
ジンクフィンガータンパク質は、DNA修復酵素から得られた調節ドメイン、ならびにそれらに関連する因子および修飾因子を含み得る。DNA修復系は、例えば、Vos,Curr.Opin.Cell Biol.4:385−95(1992);Sancar,Ann.Rev.Genet.29:69−105(1995);Lehmann,Genet;Eng.17:1−19(1995);およびWood,Ann.Rev.Biochem.65:135−67(1996)において総説される。DNA再配列酵素、ならびにそれらに関連する因子および修飾因子はまた、調節ドメインとして用いられ得る(例えば、Gangloffら、Experientia 50:261−9(1994);Sadowski,FASEB J.7:760−7(1993)を参照のこと)。
【0118】
同様に、調節ドメインは、DNA修飾酵素(例えば、DNAメチルトランスフェラーゼ、トポイソメラーゼ、ヘリカーゼ、リガーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、ポリメラーゼ)、ならびにそれらに関連する因子および修飾因子由来であり得る。ヘリカーゼは、Matsonら、Bioessays,16:13−22(1994)において総説され、そしてメチルトランスフェラーゼは、Cheng,Curr.Opin.Struct.Biol.5:4−10(1995)において記載される。ヒストンデアセチラーゼ(Wolffe,Science 272:371−2(1996))のような、クロマチンに関連したタンパク質およびそれらの修飾因子(例えば、キナーゼ、アセチラーゼおよびデアセチラーゼ)はまた、選択したジンクフィンガータンパク質へ付加するためのドメインとして有用である。1つの好ましい実施態様において、調節ドメインは、転写リプレッサーとして作用するDNAメチルトランスフェラーゼである(例えば、Van den Wyngaertら、FEBS Lett.426:283−289(1998);Flynnら、J.Mol.Biol.279:101−116(1998);Okanoら、Nucleic Acids Res.26:2536−2540(1998);およびZardoおよびCaiafa,J.Biol.Chem.273:16517−16520(1998)を参照のこと)。別の好ましい実施態様において、Fok1のようなエンドヌクレアーゼは、転写リプレッサーとして用いられる。これは、遺伝子切断を介して作用する(例えば、WO95/09233;およびPCT/US94/01201を参照のこと)。
【0119】
クロマチンおよびDNAの構造、移動および局在を制御する因子、ならびにそれらに関連する因子および修飾因子;微生物(例えば、原核生物、真核生物およびウイルス)由来の因子およびそれらに関連するかまたはそれらを修飾する因子はまた、キメラタンパク質を得るために用いられ得る。1つの実施態様において、組換え酵素およびインテグラーゼは、調節ドメインとして用いられる。1つの実施態様において、ヒストンアセチルトランスフェラーゼは、転写活性化因子として用いられる(例えば、JinおよびScotto,Mol.Cell.Biol.18:4377−4384(1998);Wolffe,Science 272:371−372(1996);Tauntonら、Science 272:408−411(1996);およびHassigら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.95:3519−3524(1998)を参照のこと)。別の実施態様において、ヒストンデアセチラーゼは、調節リプレッサーとして用いられ得る(例えば、JinおよびScotto,Mol.Cell.Biol.18:4377−4384(1998);SyntichakiおよびThireos,J.Biol.Chem.273:24414−24419(1998);Sakaguchiら、Genes Dev.12:2831−2841(1998);およびMartinezら、J.Biol.Chem.273:23781−23785(1998)を参照のこと)。
【0120】
ポリペプチドドメインの間(例えば、2つのジンクフィンガータンパク質間またはジンクフィンガータンパク質と調節ドメインとの間)のリンカードメインが、含まれ得る。このようなリンカーは、代表的には、約5アミノ酸と200アミノ酸との間のgly配列のようなポリペプチド配列である。好ましいリンカーは、代表的には、可撓性アミノ酸部分配列である。これは、組換え融合タンパク質の一部として合成される。例えば、1つの実施態様において、リンカーDGGGSを用いて2つのジンクフィンガータンパク質を連結する。別の実施態様において、2つのジンクフィンガータンパク質を連結する可撓性リンカーは、配列TGEKPを含むアミノ酸部分配列である(例えば、Luiら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.5525−5530(1997)を参照のこと)。別の実施態様において、リンカーLRQKDGERPを用いて2つのジンクフィンガータンパク質を連結する。別の実施態様において、以下のリンカーを用いて2つのジンクフィンガータンパク質を連結する:GGRR(Pomerantzら、1995、前出)、(G4S)n(Kimら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.93,1156−1160(1996);およびGGRRGGGS;LRQRDGERP;LRQKDGGGSERP;LRQKD(G3S)2ERP。あるいは、可撓性リンカーは、DNA結合部位およびペプチド自身の両方をモデリングすることが可能なコンピュータープログラムを用いて(DesjarlaisおよびBerg,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:2256−2260(1993),PNAS 91:11099−11103(1994))か、またはファージ提示方法によって合理的に設計され得る。
【0121】
他の実施態様において、化学的リンカーを用いて合成的にか組換え的に生成されるドメイン配列を接続する。このような可撓性リンカーは、当業者に公知である。例えば、ポリ(エチレングリコール)リンカーは、Shearwater Polymers,Inc.Huntsville,Alabamaから入手可能である。これらのリンカーは、必要に応じて、アミド結合、スルフヒドリル結合、またはヘテロ官能基結合を有する。調節ドメインへのジンクフィンガータンパク質の共有結合に加えて、非共有法を用いて、調節ドメインと結合するジンクフィンガータンパク質を有する分子を生成する。
【0122】
調節ドメインに加えて、しばしば、ジンクフィンガータンパク質は、精製を容易にするため、発現をモニタリングするため、または細胞および亜細胞の局在をモニタリングするための、マルトース結合タンパク質(「MBP」)、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、ヘキサヒスチジン、c−myc、およびFLAGエピトープのような融合タンパク質として発現される。
【0123】
(ジンクフィンガータンパク質をコードする核酸のサブクローニングおよび発現)
選択のZFPをコードする核酸は、代表的に、複製、発現のための(例えば、Kdを決定するための)原核生物細胞または真核生物細胞中に形質転換するためのベクター中にクローニングされる。このようなベクターは、代表的に、ジンクフィンガータンパク質をコードする核酸またはタンパク質の産生の保存または操作のための原核生物ベクター(例えば、プラスミド)またはシャトルベクター、または昆虫ベクターのような真核生物ベクターであり、あるいは、ジンクフィンガータンパク質の発現および必要に応じて遺伝子発現の制御のためのウイルスベクターのような原核生物ベクター(例えば、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクターなど)である。次いで、ジンクフィンガータンパク質をコードする核酸はまた、植物細胞、動物細胞(好ましくは哺乳動物細胞もしくはヒト細胞)、真菌細胞、細菌細胞、または原生動物細胞へ投与され得る。
【0124】
クローニングされた遺伝子または核酸の発現を得るために、ジンクフィンガータンパク質は、代表的には、直接転写するためのプロモーターを含む発現ベクター中にサブクローニングされる。適切な細菌プロモーターおよび真核生物プロモーターは、当該分野で周知であり、そして、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning、A Laboratory Manual(第2版、1989);Kriegler、Gene Transfer and Expression:A Laboratory Manual(1990);およびCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubelら、編、1994)に記載される。ジンクフィンガータンパク質発現のための細菌発現系は、例えば、E.coli、Bacillus sp.およびSalmonella(Palvaら、Gene 22:229−235(1983))において利用可能である。このような発現系のためのキットは、市販されている。哺乳動物細胞、酵母および昆虫細胞のための真核生物発現系は、当該分野で周知であり、そしてまた市販されている。
【0125】
ジンクフィンガータンパク質核酸の発現を指向するために用いられるプロモーターは、特定の適用に依存している。例えば、強力な構成性プロモーターは、代表的には、ジンクフィンガータンパク質の発現および精製のために使用される。対照的に、ジンクフィンガータンパク質が、遺伝子調節のためにインビボで投与される場合、構成性プロモーターまたは誘導性プロモーターのいずれかがジンクフィンガータンパク質の特定の使用に依存して、使用される。プローモーターはまた、代表的には、トランス活性化に応答性の(例えば、低酸素症応答エレメント、Gal4応答エレメント、lacリプレッサー応答エレメント、ならびにtet−調節系およびRU−486系のような低分子制御系)エレメントを含み得る(例えば、GossenおよびBujard、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:5547(1992);Oliginoら、Gene Ther.5:491−496(1998);Wangら、Gene Ther.4:432−441(1997);Neeringら、Blood 88:1147−1155(1996);およびRendahlら、Nat.Biotechnol.16:757−761(1998)を参照のこと)。
【0126】
プロモーターに加えて、発現ベクターは、代表的に、原核生物または真核生物のいずれかの宿主細胞において核酸の発現に要求される全てのさらなるエレメントを含む、転写単位または発現カセットを含む。従って、代表的な発現カセットは例えば、ジンクフィンガータンパク質をコードする核酸配列に作動可能に連結されたプロモーター、および例えば、転写、転写終結、リボソーム結合部位、または翻訳終結を効率的にポリアデニル化するために要求されるシグナルを含む。このカセットのさらなるエレメントは、例えば、エンハンサーおよび異種のスプライシングしたイントロンのシグナルを含み得る。
【0127】
遺伝的情報を細胞に輸送するために使用される特定の発現ベクターは、ジンクフィンガータンパク質の意図された使用(例えば、植物、動物、細菌、真菌、原生動物などにおける発現)に関して選択される(以下および実施例の節に記載の発現ベクターを参照のこと)。標準的な細菌発現ベクターは、pBR322に基づいたプラスミドである、pSKF、pET23Dのようなプラスミド、ならびに市販されているGSTおよびLacZのような融合発現系を含む。好ましい融合タンパク質は、マルトース結合タンパク質である「MBP」である。このような融合タンパク質は、ジンクフィンガータンパク質の精製に使用される。エピトープタグもまた、組換えタンパク質に添加され、発現をモニタリングするため、ならびに細胞および細胞下の局在化をモニタリングするための単離の簡便な方法を提供し得る(例えば、c−mycまたはFLAG)。
【0128】
真核生物ウイルス由来の調節エレメントを含む発現ベクターは、しばしば真核生物発現ベクター(例えば、SV40ベクター、パピローマウイルスベクター、およびエプスタイン−バーウイルス由来のベクター)において使用される。他の例示的な真核生物ベクターは、pMSG、pAV009/A+、pMTO10/A+、pMAMneo−5、バキュロウイルスpDSVE、およびSV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター、CMVプロモーター、メタロチオネインプロモーター、マウス乳腺癌ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ポリヘドリン(polyhedrin)プロモーター、または真核生物細胞において効率的な発現を示す他のプロモーターの指示下でタンパク質の発現を可能にする任意の他のベクターを含む。
【0129】
いくつかの発現系は、安定なトランスフェクト細胞株の選択のためのマーカーを有する(例えば、ネオマイシン、チミジンキナーゼ、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ、およびジヒドロ葉酸レダクターゼ)。高収率発現系はまた、ポリヘドリンプロモーターまたは他の強力なバキュロウイルスプロモーターの指示下でジンクフィンガータンパク質コード配列を用いて、例えば、昆虫細胞でのバキュロウイルスベクターの使用に適切である。
【0130】
代表的に発現ベクターに含まれるエレメントはまた、E.coliにおいて機能するレプリコン、組換えプラスミドを有する細菌の選択を可能にする抗生物質耐性をコードする遺伝子、および組換え配列の挿入を可能にするためのプラスミドの非必須領域での独特の制限部位を含む。
【0131】
標準的なトランスフェクション方法を使用して、大量のタンパク質を発現する細菌細胞株、哺乳動物細胞株、酵母細胞株または昆虫細胞株を産生し、次いでこのタンパク質は、標準的な技術を使用して精製される(例えば、Colleyら、J.Biol.Chem.264:17619−17622(1989);Guide to Protein Purification、Methods in Enzymology、第182巻(Deutscherら、1990))。真核生物細胞および原核生物細胞の形質転換を、標準的な技術に従って行なう(例えば、Morrison,J.Bact.132:349−351(1977);Clark−CurtissおよびCurtiss、Methods in Enzymology 101:347−362(Wuら編、1983))。
【0132】
外来のヌクレオチド配列を宿主細胞に導入するための周知の方法のいずれかを使用し得る。これらには、リン酸カルシウムトランスフェクション、ポリブレン、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソーム、マイクロインジェクション、裸のDNA、プラスミドベクター、ウイルスベクター、エピソームおよび組みこみの両方、および宿主細胞への、クローニングされたゲノムDNA、cDNA、合成DNA、または外来の他の遺伝物質の導入のための他の周知の方法のいずれかの使用が挙げられる(例えば、Sambrookら、前出を参照のこと)。特定の遺伝子操作手順が、選択したタンパク質を発現し得る宿主細胞に少なくとも1つの遺伝子を首尾よく導入し得るように使用されることのみが必要である。
【0133】
(遺伝子発現の調節のためのジンクフィンガータンパク質をコードするベクター)
従来のウイルスおよび非ウイルスに基づく遺伝子移入方法は、哺乳動物細胞または標的組織に、操作されたジンクフィンガータンパク質をコードする核酸を導入するために使用され得る。このような方法は、ジンクフィンガータンパク質をコードする核酸をインビトロまたはインビボで細胞に投与するために使用され得る。非ウイルスベクター送達系は、DNAプラスミド、裸の核酸、および送達ビヒクル(例えば、リポソーム)と複合化した核酸を含む。ウイルスベクター送達系は、細胞への送達後にエピソームであるかまたはゲノムに組み込まれるかのいずれかである、DNAウイルスおよびRNAウイルスを含む。遺伝子治療の手順の概説については、Anderson、Science 256:808〜813(1992);NabelおよびFelgner、TIBTECH 11:211〜217(1993);MitaniおよびCaskey、TIBTECH 11:162〜166(1993);Dillon、TIBTECH 11:167〜175(1993);Miller、Nature 357:455〜460(1992);Van Brunt、Biotechnology 6(10);1149〜1154(1988);Vigne、Restorative Neurology and Neuroscience 8:35〜36(1995);KremerおよびPerricaudet、British Medical Bulletin 51(1):31〜44(1995);Haddadaら、Current Topics in Microbiology and Immunology DoerflerおよびBohm(編)(1995);ならびにYuら、Gene Therapy 1:13〜26(1994)を参照のこと。
【0134】
操作されたジンクフィンガータンパク質をコードする核酸の非ウイルス送達方法は、リポフェクション、マイクロインジェクション、微粒子銃(biolistics)、ビロソーム(virosome)、リポソーム、イムノリポソーム、ポリカチオンまたは脂質:核酸結合体、裸のDNA、人工ビリオン、および薬剤で増強されたDNAの取り込みを含む。リポフェクションは、例えば、米国特許第5,049,386号、米国特許第4,946,787号;および米国特許第4,897,355号)に記載され、そしてリポフェクション試薬は、市販されている(例えば、TransfectamTMおよびLipofectinTM)。ポリヌクレオチドの効率的なレセプター認識リポフェクションについて適切であるカチオン性脂質および中性脂質は、Felgner、WO91/17424、WO91/16024のカチオン性脂質および中性脂質を含む。送達は、細胞に対してか(エキソビボ投与)または標的組織(インビボ投与)に対してであり得る。
【0135】
免疫脂質複合体のような標的化リポソームを含む、脂質:核酸複合体の調製は、当業者に周知である(例えば、Crystal,Science 270:404〜410(1995);Blaeseら、Cancer Gene Ther.2:291〜297(1995);Behrら、Bioconjugate Chem.5:382〜389(1994);Remyら、Bioconjugate Chem.5:647〜654(1994);Gaoら、Gene Therapy 2:710〜722(1995);Ahmadら、Cancer Res.52:4817〜4820(1992);米国特許第4,186,183号、同第4,217,344号、同第4,235,871号、同第4,261,975号、同第4,485,054号、同第4,501,728号、同第4,774,085号、同第4,837,028号、および同第4,946,787号を参照のこと)。
【0136】
操作されたジンクフィンガータンパク質をコードする核酸の送達のためのRNAまたはDNAウイルスに基づく系の使用は、身体中の特定の細胞に対してウイルスを標的化して、そして核に搭載されるウイルスの輸送のための高度に発達したプロセスを利用する。ウイルスベクターは、被験体に(インビボで)直接投与され得るか、またはウイルスベクターは、インビトロで細胞を処置するために使用され得、そしてこの改変された細胞を患者に(エキソビボで)投与する。ジンクフィンガータンパク質の送達のための従来のウイルスに基づく系は、遺伝子移入のための、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターおよび単純ヘルペスウイルスベクターを含み得る。ウイルスベクターは、現在、標的細胞および標的組織において、遺伝子移入の最も効果的かつ用途の広い方法である。宿主ゲノムへの組み込みは、レトロウイルス、レンチウイルス、およびアデノ随伴ウイルスの遺伝子移入方法を用いて可能であり、しばしば、挿入された導入遺伝子の長期間の発現を生じる。さらに、高い遺伝子導入効率が、多数の異なる細胞型および標的組織で観察されている。
【0137】
レトロウイルスの向性は、外来エンベロープタンパク質を組み込むことによって変化され得、標的細胞の潜在的な標的集団を広げる。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞に形質導入または感染し得、そして代表的には高いウイルス力価を生じ得るレトロウイルスベクターである。従って、レトロウイルス遺伝子移入系の選択は、標的組織に依存する。レトロウイルスベクターは、6〜10kbまでの外来配列についてパッケージング能力を有するシス作用性の長末端反復から構成される。最少のシス作用性LTRは、ベクターの複製およびパッケージングに十分であり、次いでこれは、標的細胞中に治療用遺伝子を組み込み、永続的な導入遺伝子発現を提供するために使用される。広範に使用されるレトロウイルスベクターは、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、シミアン免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびそれらの組合せに基づくレトロウイルスベクターを含む(例えば、Buchscherら、J.Virol.66:2731〜2739(1992)Johannら、J.Virol.66:1635〜1640(1992);Sommerfeltら、Virol.176:58〜59(1990);Wilsonら、J.Virol.63:2374〜2378(1989);Millerら、J.Virol.65:2220〜2224(1991);PCT/US94/05700を参照のこと)。
【0138】
ジンクフィンガータンパク質の一過性の発現が好ましい場合の適用において、アデノウイルスに基づく系が、代表的に使用される。アデノウイルスに基づくベクターは、多数の細胞型において非常に高い形質導入効率であり得、そして細胞分裂を必要としない。このようなベクターを用いて、高力価および高レベルの発現が得られている。このベクターは、比較的単純な系で大量に産生され得る。アデノ随伴ウイルス(「AAV」)ベクターはまた、細胞に標的核酸を形質導入するために(例えば、核酸およびペプチドのインビトロでの産生のために、およびインビボおよびエキソビボでの遺伝子治療手順のために)使用される(例えば、Westら、Virology 160:38〜47(1987);米国特許第4,797,368号;WO 93/24641;Kotin、Human Gene Therapy 5:793〜801(1994);Muzyczka、J.Clin.Invest.94:1351(1994)を参照のこと)。組換えAAVベクターの構築は、米国特許第5,173,414号;Tratschinら、Mol.Cell.Biol.5:3251〜3260(1985);Tratschinら、Mol.Cell.Biol.4:2072〜2081(1984);HermonatおよびMuzyczka、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.81:6466〜6470(1984);ならびにSamulskiら、J.Virol.63:03822〜3828(1989)を含む、多数の刊行物に記載される。
【0139】
パッケージング細胞は、宿主細胞に感染し得るウイルス粒子を形成するために使用される。このような細胞としては、アデノウイルスをパッケージングする293細胞およびレトロウイルスをパッケージングするΨ2細胞またはPA317細胞が挙げられる。遺伝子治療に使用されるウイルスベクターは、通常、ウイルス粒子中に核酸ベクターをパッケージングする産生細胞株により生成される。このベクターは、代表的に、パッケージングおよび宿主中への引き続く組込みに必要とされる最少ウイルス配列、発現されるべきタンパク質についての発現カセットにより置換されている他のウイルス配列を含む。この欠けているウイルス機能は、パッケージング細胞株によりトランスで供給される。例えば、遺伝子治療に使用されるAAVベクターは、代表的に、AAVゲノム由来のITR配列を有するのみであり、このITR配列は、パッケージングおよび宿主ゲノム中への組込みに必要とされる。ウイルスDNAは、他のAAV遺伝子、すなわちrepおよびcapをコードするが、ITR配列を欠いている、ヘルパープラスミドを含む、細胞株中でパッケージングされる。この細胞株はまた、ヘルパーとしてアデノウイルスを用いて感染される。このヘルパーウイルスは、AAVベクターの複製およびヘルパープラスミド由来のAAV遺伝子の発現を促進する。ヘルパープラスミドは、ITR配列の欠損に起因して、有意な量でパッケージングされない。アデノウイルスの汚染は、例えば、アデノウイルスがAAVよりも感受性である熱処理により減少され得る。
【0140】
多くの状況において、ベクターが特定の組織型に高い程度の特異性で送達されることが所望される。ウイルスベクターは、代表的には、ウイルスコートタンパク質との融合タンパク質としてリガンドをウイルス外表面上に発現することによって所定の細胞型に対して特異性を有するように改変される。このリガンドは、目的の細胞型上に提示されることが公知であるレセプターに対して親和性を有するように選択される。例えば、Hanら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92:9747〜9751(1995)は、Moloneyマウス白血病ウイルスが、gp70に融合されたヒトヘレグリン(heregulin)を発現するように改変され得、そしてこの組換えウイルスが、ヒト上皮増殖因子レセプターを発現する特定のヒト乳癌細胞に感染することを報告した。この原則は、リガンド融合タンパク質を発現するウイルスおよびレセプターを発現する標的細胞の他の対にまで及び得る。例えば、糸状ファージは、実質的に任意の選択された細胞レセプターに対して特異的な結合親和性を有する抗体フラグメント(例えば、FABまたはFv)を提示するように操作され得る。上記の記載は、主にウイルスベクターに適用するが、同じ原則が非ウイルスベクターに適用され得る。このようなベクターは、特定の標的細胞により好ましく取り込まれると考えられる特定の取り込み配列を含むように操作され得る。
【0141】
発現ベクターは、インビボで、個々の被験体に投与することによって、代表的には、以下に記載されるような、全身投与(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、または頭蓋内の注射)または局所適用によって送達され得る。あるいは、裸のDNAが投与され得る。あるいは、ベクターは、エキソビボで、個々の被験体から外植された細胞(例えば、リンパ球、骨髄吸引物、組織生検)または一般のドナー造血幹細胞のような細胞に送達され得、次いで、通常はベクターを組み込んだ細胞について選択した後に、患者に細胞を再移植する。
【0142】
投与は、血液または組織の細胞との最終的な接触中に分子を導入するために通常使用される経路のいずれかによる。このような核酸を投与する適切な方法は、利用可能でありかつ当業者に周知であり、そして特定の組成物を投与するために、1より多くの経路が使用され得るが、特定の経路は、しばしば、別の経路よりも迅速かつ効果的な反応を提供し得る。
【0143】
薬学的に受容可能なキャリアは、投与されている特定の組成物によって、ならびにこの組成物を投与するために使用される特定の方法によって、部分的に決定される。従って、以下に記載されるように、本発明の薬学的組成物の広範な種々の適切な処方物が存在する(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第17版、1989を参照のこと)。
【0144】
(ジンクフィンガータンパク質についての送達ビヒクル)
ポリペプチド化合物(例えば、ジンクフィンガータンパク質)の投与における重要な因子は、このポリペプチドが細胞の形質膜、または核のような細胞内区画の膜を横切る能力を有することを確実にすることである。細胞膜は、非イオン性の親油性化合物に対して自由に透過性であり、かつ極性化合物、巨大分子、および治療剤または診断剤に対して固有に不透過性である、脂質タンパク質の二重層から構成される。しかし、細胞膜を横切るジンクフィンガータンパク質のようなポリペプチドを輸送する能力を有する、タンパク質およびリポソームのような他の化合物が記載されている。
【0145】
例えば、「膜輸送ポリペプチド」は、膜輸送キャリアとして作用する能力を有する両親媒性または疎水性のアミノ酸部分配列を有する。1つの実施形態において、ホメオドメインタンパク質は、細胞膜を横切って輸送する能力を有する。ホメオドメインタンパク質の最も短い内部移行可能なペプチドであるアンテナペディア(Anntennapedia)は、タンパク質の第3のヘリックスであることが見出された(アミノ酸43位〜58位)(例えば、Prochiantz、Current Opinion in Neurobiology 6:629〜634(1996)を参照のこと)。別の部分配列である、シグナルペプチドのh(疎水性)ドメインは、類似の細胞膜輸送の特徴を有することが見出された(例えば、Linら、J.Biol.Chem.270:1 4255〜14258(1995)を参照のこと)。
【0146】
細胞中へのジンクフィンガータンパク質の取り込みを促進するための、本発明のジンクフィンガータンパク質に連結され得るペプチド配列の例は、以下を含むがこれらに限定されない:HIVのtatタンパク質の11アミノ酸のペプチド;p16タンパク質のアミノ酸84〜103に対応する20残基のペプチド配列(Fahraeusら、Current Biology 6:84(1996)を参照のこと);アンテナペディアの60アミノ酸長のホメオドメインの第3のヘリックス(Derossiら、J.Biol.Chem.269:10444(1994));カポジ線維芽細胞増殖因子(K−FGF)h領域のようなシグナルペプチドのh領域(Linら、前出);またはHSV由来のVP22輸送ドメイン(ElliotおよびO’Hare、Cell 88:223〜233(1997))。細胞取り込みの増強を提供する他の適切な化学部分もまた、ジンクフィンガータンパク質に化学的に連結され得る。
【0147】
毒素分子もまた、細胞膜を横切ってポリペプチドを輸送する能力を有する。しばしば、このような分子は、少なくとも2つの部分(「2要素毒素」と呼ばれる):輸送または結合のドメインまたはポリペプチドおよび別々の毒素ドメインまたはポリペプチドから構成される。代表的には、輸送ドメインまたは輸送ポリペプチドは、細胞レセプターに結合して、次いで毒素が細胞中に輸送される。いくつかの細菌毒素(Clostridium Perfringensイオータ毒素、ジフテリア毒素(DT)、Pseudomonas外毒素A(PE)、百日咳毒素(PT)、Bacillus Anthracis毒素、および百日咳アデニレートシクラーゼ(CYA)を含む)は、内部融合物またはアミノ末端融合物として細胞のサイトゾルにペプチドを送達する試みにおいて使用されている(Aroraら、J.Biol.Chem.268:3334〜3341(1993);Perelleら、Infect.Immun.、61:5147〜5156(1993);Stenmarkら、J.Cell Biol.113:1025〜1032(1991);Donnellyら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:3530〜3534(1993);Carbonettiら、Abstr.Annu.Meet.Am.Soc.Microbiol.95:295(1995);Seboら、Infect.Immun.63:3851〜3857(1995);Klimpelら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:10277〜10281(1992);およびNovakら、J.Biol.Chem.267:17186〜17193 1992))。
【0148】
このような部分配列は、細胞膜を横切ってジンクフィンガータンパク質を輸送するために使用され得る。ジンクフィンガータンパク質は、このような配列と都合よく融合され得るか、またはこれを用いて誘導体化され得る。代表的には、この輸送配列は、融合タンパク質の一部として提供される。必要に応じて、リンカーは、ジンクフィンガータンパク質および輸送配列に連結するために使用され得る。任意の適切なリンカー(例えば、ペプチドリンカー)が使用され得る。
【0149】
ジンクフィンガータンパク質はまた、リポソームおよびイムノリポソームのようなリポソーム誘導体を介して、動物細胞に、好ましくは哺乳動物細胞中に導入され得る。用語「リポソーム」とは、水相を包み込む、1以上の同心性の状態の脂質二重層から構成される小胞をいう。水相は、代表的に、細胞に送達されるべき化合物(すなわち、ジンクフィンガータンパク質)を含む。
【0150】
リポソームは、形質膜と融合して、それによってサイトゾル中に薬物を放出する。あるいは、リポソームは、食細胞化されるかまたは輸送小胞の状態で細胞によって取り込まれる。リポソームは、一旦エンドソームまたは食胞において、輸送小胞の膜を分解するか、またはこれと融合するかのいずれかであり、そしてその内容物を放出する。
【0151】
リポソームを介する薬物送達の現在の方法において、リポソームは、最終的には透過性になり、そして包み込まれた化合物(この場合は、ジンクフィンガータンパク質)を、標的組織または標的細胞で放出する。全身送達または組織特異的送達のために、これは、例えば、受動的な様式(ここでこのリポソーム二重層は、身体中の種々の因子の作用を介して経時的に分解する)において達成され得る。あるいは、能動的な薬物放出は、リポソーム小胞において透過性の変化を誘導する因子を使用する工程を含む。リポソーム膜は、リポソーム膜の近くの環境が酸性になる場合、不安定になるように、構築され得る(例えば、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.84:7851(1987);Biochemistry 28:908(1989)を参照のこと)。リポソームが、標的細胞によってエンドサイトーシスされる場合、例えば、リポソームは、不安定になり、そしてそれらの内容物を放出する。この不安定化は、フゾジェネシス(fusogenesis)と呼ばれる。ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)は、多数のフゾジェネシス系の基礎である。
【0152】
このようなリポソームは、代表的には、ジンクフィンガータンパク質および脂質成分(例えば、中性脂質および/またはカチオン性脂質、必要に応じて、所定の細胞表面レセプターまたはリガンドに結合する抗体のような、レセプター認識分子(例えば、抗原)を含む)を包含する。以下に記載されるようなリポソームを調製するための種々の方法が利用可能である:例えば、Szokaら、Ann.Rev.Biophys.Bioeng.9:467(1980)、米国特許第4,186,183号、同第4,217,344号、同第4,235,871号、同第4,261,975号、同第4,485,054号、同第4,501,728号、同第4,774,085号、同第4,837,028号、同第4,235,871号、同第4,261,975号、同第4,485,054号、同第4,501,728号、同第4,774,085号、同第4,837,028号、同第4,946,787号、PCT公開番号WO91/17424、DeamerおよびBangham、Biochem.Biophys.Acta 443:629〜634(1976);Fraleyら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.76:3348〜3352(1979);Hopeら、Biochim.Biophys.Acta 812:55〜65(1985);Mayerら、Biochim.Biophys.Acta 858:161〜168(1986);Williamsら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:242〜246(1988);Liposomes(Ostro(編)、1983、第1章);Hopeら、Chem.Phys.Lip.40:89(1986);Gregoriadis、Liposome Technology(1984)およびLasic、Liposemes:from Physics to Applications(1993))。適切な方法は、例えば、超音波破砕、排出、高圧/ホモジネーション、微量流動化、洗剤透析、小さなリポソーム小胞のカルシウム誘導性融合およびエーテル融合方法(これらの全ては、当該分野において周知である)を含む。
【0153】
本発明の特定の実施形態において、特定の細胞型、組織などに特異的な標的部分を使用して、本発明のリポソームを標的化することが所望される。種々の標的部分(例えば、リガンド、レセプター、およびモノクローナル抗体)を使用するリポソームの標的化は、以前に記載されている(例えば、米国特許第4,957,773号および同第4,603,044号を参照のこと)。
【0154】
標的部分の例は、新生物に関連した抗原(例えば、前立腺癌特異的抗原およびMAGE)に特異的なモノクローナル抗体を含む。腫瘍はまた、癌遺伝子(例えば、rasまたはc−erbB2)の活性化または過剰発現から生じる遺伝子産物を検出することによって診断され得る。さらに、多数の腫瘍は、胎児組織により通常発現される抗原(例えば、αフェトプロテイン(AFP)および癌胎児性抗原(CEA))を発現する。ウイルス感染の部位は、種々のウイルス抗原(例えば、B型肝炎コア抗原および表面抗原(HBVc、HBVs)、C型肝炎抗原、エプスタイン−バーウイルス抗原、1型ヒト免疫不全ウイルス(HIV1)およびパピローマウイルス抗原を使用して診断され得る。炎症は、インテグリン(例えば、VCAM−1)、セレクチンレセプター(例えば、ELAM−1)などのような、炎症の部位で発現される表面分子により特異的に認識される分子を使用して検出され得る。
【0155】
リポソームに標的剤を共役させるための標準的な方法が使用され得る。これらの方法は、一般に、標的因子、または誘導体化された親油性化合物(例えば、脂質誘導体化ブレオマイシン)の付着に対して活性化され得る、リポソーム脂質成分(例えば、ホスファチジルエタノールアミン)中への組込みを含む。抗体標的化リポソームは、例えば、プロテインAを組み込むリポソームを使用して構築され得る(Renneisenら、J.Biol.Chem.265:16337〜16342(1990)およびLeonettiら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:2448〜2451(1990)を参照のこと)。
【0156】
(ジンクフィンガータンパク質による遺伝子発現の調節を決定するためのアッセイ)
種々のアッセイを使用して、選択された表現型と候補遺伝子の関連を決定し得る。ジンクフィンガータンパク質により調節される特定の遺伝子の活性は、種々のインビトロアッセイおよびインビボアッセイを使用して、例えば、タンパク質レベルまたはmRNAレベル、産物レベル、酵素活性、腫瘍増殖;レポーター遺伝子の転写活性化または転写抑制;セカンドメッセンジャーレベル(例えば、cGMP、cAMP、IP3、DAG、Ca2+);サイトカインおよびホルモンの産生レベル;ならびに新生血管形成を測定することによって、例えば、イムノアッセイ(例えば、抗体を用いるELISAおよび免疫組織化学アッセイ)、ハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、RNase保護、ノーザン、インサイチュハイブリダイゼーション、オリゴヌクレオチドアレイ研究)、比色定量アッセイ、増幅アッセイ、酵素活性アッセイ、腫瘍増殖アッセイ、表現型アッセイ、cDNAアレイ研究などを使用して、評価され得る。
【0157】
ジンクフィンガータンパク質は、しばしば初めに、例えば、293細胞、CHO細胞、VERO細胞、BHK細胞、HeLa細胞、COS細胞などの培養細胞を使用して、活性についてインビトロで試験され得る。好ましくは、ヒト細胞またはマウス細胞が使用される。ジンクフィンガータンパク質は、しばしば、初めに、レポーター遺伝子を用いる一過性の発現系を使用して試験され、次いで標的候補遺伝子の調節は、インビボおよびエキソビボの両方で、細胞および動物において試験される。ジンクフィンガータンパク質は、細胞中で組換え発現され得るか、動物中に移植された細胞中で組換え発現され得るか、またはトランスジェニック動物中で組換え発現され得、そして以下に記載される送達ビヒクルを使用して動物または細胞にタンパク質として投与され得る。この細胞は、固定化され得るか、溶液中であり得るか、動物に注射され得るか、またはトランスジェニック動物または非トランスジェニック動物において天然に存在し得る。
【0158】
遺伝子発現の調節および選択された表現型と候補遺伝子の関連は、本明細書中に記載されるインビトロアッセイまたはインビボアッセイの1つを使用して試験される。候補遺伝子を含む細胞または被験体動物は、ジンクフィンガータンパク質と接触され、そしてコントロール遺伝子または第2の候補遺伝子と比較されて表現型調節の範囲を調べる。遺伝子発現の調節について、ジンクフィンガータンパク質は、必要に応じて200nM以下、より好ましくは100nM以下、より好ましくは50nM、最も好ましくは25nM以下のKdを有する。
【0159】
ジンクフィンガータンパク質の効果は、上記の任意のパラメータのいずれかを試験することによって測定され得る。任意の適切な遺伝子発現変化、表現型変化、または生理学的変化を使用して、ジンクフィンガータンパク質の影響を評価し得る。インタクトな細胞または動物を使用して機能的な結果を決定する場合、種々の効果(例えば、腫瘍増殖、新生血管形成、ホルモン放出、公知および特徴付けされていない遺伝マーカーの両方の転写変化(例えば、ノーザンブロットまたはオリゴヌクレオチドアレイ研究)、細胞の代謝における変化(例えば、細胞増殖またはpH変化)、ならびに細胞内セカンドメッセンジャー(例えば、cGMP)の変化もまた測定し得る。
【0160】
選択された表現型についてのアッセイの例としては、例えば、形質転換アッセイ(例えば、増殖の変化、足場依存性、増殖因子依存性、病巣形成、軟寒天における増殖、ヌードマウスにおける腫瘍増殖、およびヌードマウスにおける腫瘍新生血管形成);アポトーシスアッセイ(例えば、DNAラダリング(laddering)および細胞死、アポトーシスに関与する遺伝子の発現);シグナル伝達アッセイ(例えば、細胞内カルシウム、cAMP、cGMP、IP3の変化、ホルモンの変化および神経伝達物質放出);レセプターアッセイ(例えば、エストロゲンレセプターおよび細胞増殖);増殖因子アッセイ(例えば、EPO、低酸素および赤血球コロニー形成単位アッセイ);酵素産物アッセイ(例えば、FAD−2誘導油脱飽和);転写アッセイ(例えば、レポーター遺伝子アッセイ);ならびにタンパク質産生アッセイ(例えば、VEGF ELISA)が挙げられる。
【0161】
標的部分の例は、新生物に関連した抗原(例えば、前立腺癌特異的抗原およびMAGE)に特異的なモノクローナル抗体を含む。腫瘍はまた、癌遺伝子(例えば、rasまたはc−erbB2)の活性化または過剰発現から生じる遺伝子産物を検出することによって診断され得る。さらに、多数の腫瘍は、胎児組織により通常発現される抗原(例えば、αフェトプロテイン(AFP)および癌胎児性抗原(CEA))を発現する。ウイルス感染の部位は、種々のウイルス抗原(例えば、B型肝炎コア抗原および表面抗原(HBVc、HBVs)、C型肝炎抗原、エプスタイン−バーウイルス抗原、1型ヒト免疫不全ウイルス(HIV1)およびパピローマウイルス抗原を使用して診断され得る。炎症は、インテグリン(例えば、VCAM−1)、セレクチンレセプター(例えば、ELAM−1)などのような、炎症の部位で発現される表面分子により特異的に認識される分子を使用して検出され得る。
【0162】
リポソームを標的剤とカップリングさせるための標準的な方法が使用され得る。これらの方法は、一般に、標的因子、または誘導体化された脂溶性化合物(例えば、脂質誘導体化ブレオマイシン)の付着に対して活性化され得る、リポソーム脂質成分(例えば、ホスファチジルエタノールアミン)中への組込みを含む。抗体標的化リポソームは、例えば、プロテインAを組み込むリポソームを使用して構築され得る(Renneisenら、J.Biol.Chem.265:16337〜16342(1990)およびLeonettiら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 87:2448〜2451(1990)を参照のこと)。
【0163】
(ジンクフィンガータンパク質による遺伝子発現の調節を決定するためのアッセイ)
種々のアッセイを使用して、選択された表現型と候補遺伝子との関連性を決定し得る。ジンクフィンガータンパク質により調節される特定の遺伝子の活性は、種々のインビトロアッセイおよびインビボアッセイを使用して、例えば、タンパク質レベルまたはmRNAレベル、産物レベル、酵素活性、腫瘍増殖;レポーター遺伝子の転写活性化または転写抑制;セカンドメッセンジャーレベル(例えば、cGMP、cAMP、IP3、DAG、Ca2+);サイトカインおよびホルモンの産生レベル;ならびに新生血管形成を測定することによって、例えば、イムノアッセイ(例えば、抗体を用いるELISAおよび免疫組織化学アッセイ)、ハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、RNase保護、ノーザン、インサイチュハイブリダイゼーション、オリゴヌクレオチドアレイ研究)、比色定量アッセイ、増幅アッセイ、酵素活性アッセイ、腫瘍増殖アッセイ、表現型アッセイ、cDNAアレイ研究などを使用して、評価され得る。
【0164】
ジンクフィンガータンパク質は、初めに、例えば、293細胞、CHO細胞、VERO細胞、BHK細胞、HeLa細胞、COS細胞などの培養細胞を使用して、活性についてインビトロで試験され得る。好ましくは、ヒト細胞またはマウス細胞が使用される。ジンクフィンガータンパク質は、しばしば、初めに、レポーター遺伝子を用いる一過性の発現系を使用して試験され、次いで標的候補遺伝子の調節は、インビボおよびエキソビボの両方で、細胞および動物において試験される。ジンクフィンガータンパク質は、細胞中で組換え発現され得るか、動物中に移植された細胞中で組換え発現され得るか、またはトランスジェニック動物中で組換え発現され得、そして以下に記載される送達ビヒクルを使用して動物または細胞にタンパク質として投与され得る。この細胞は、固定化され得るか、溶液中であり得るか、動物に注射され得るか、またはトランスジェニック動物または非トランスジェニック動物において天然に存在し得る。
【0165】
遺伝子発現の調節および選択した表現型と候補遺伝子との関連性は、本明細書中に記載されるインビトロアッセイまたはインビボアッセイの1つを使用して試験される。候補遺伝子を含む細胞または被験動物は、ジンクフィンガータンパク質と接触され、そしてコントロール遺伝子または第2の候補遺伝子と比較されて、表現型調節の範囲を調べる。遺伝子発現の調節について、ジンクフィンガータンパク質は、必要に応じて、200nM以下、より好ましくは100nM以下、より好ましくは50nM、最も好ましくは25nM以下のKdを有する。
【0166】
ジンクフィンガータンパク質の効果は、上記の任意のパラメータのいずれかを試験することによって測定され得る。任意の適切な遺伝子発現変化、表現型変化、または生理学的変化を使用して、ジンクフィンガータンパク質の影響を評価し得る。インタクトな細胞または動物を使用して機能的な結果を決定する場合、種々の効果(例えば、腫瘍増殖、新生血管形成、ホルモン放出、公知および特徴付けされていない遺伝マーカーの両方の転写変化(例えば、ノーザンブロットまたはオリゴヌクレオチドアレイ研究)、細胞の代謝における変化(例えば、細胞増殖またはpH変化)、ならびに細胞内セカンドメッセンジャーの変化(例えば、cGMP)もまた測定し得る。
【0167】
選択した表現型についてのアッセイの例としては、例えば、形質転換アッセイ(例えば、増殖、足場依存性、増殖因子依存性、病巣形成、軟寒天における増殖、ヌードマウスにおける腫瘍増殖、およびヌードマウスにおける新血管形成における変化);アポトーシスアッセイ(例えば、DNA標識および細胞死、アポトーシスに関与する遺伝子の発現);シグナル伝達アッセイ(例えば、細胞内カルシウム、cAMP、cGMP、IP3の変化、ホルモン放出および神経伝達物質放出における変化);レセプターアッセイ(例えば、エストロゲンレセプターおよび細胞増殖);成長因子アッセイ(例えば、EPO、低酸素症および赤血球コロニー形成単位アッセイ);酵素生成物アッセイ(例えば、FAD-2誘導油不飽和化);転写アッセイ(例えば、リポーター遺伝子アッセイ);ならびにタンパク質産生アッセイ(例えば、VEGF ELISA)が挙げられる。
【0168】
1つの実施形態では、選択した表現型についてのアッセイは、インビトロで実行され得る。1つの好ましいインビトロアッセイの形式において、培養された細胞における遺伝子発現のジンクフィンガータンパク質調節は、ELISAアッセイを使用して、タンパク質産生を調べることによって測定される。
【0169】
別の実施態様において、候補遺伝子発現のジンクフィンガータンパク質調節は、標的遺伝子のmRNA発現のレベルを測定することによってインビトロで決定される。遺伝子発現のレベルは、例えば、PCR、LCR、またはハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、ノーザンハイブリダイゼーション、RNase保護、ドットブロッティング)を使用する増幅を使用して測定される。RNase保護は、1つの実施態様において使用される。タンパク質またはmRNAのレベルは、本明細書中に記載されるような、標識された検出試薬(例えば、蛍光標識核酸または放射性標識核酸、放射性標識抗体または酵素標識抗体など)を直接的または間接的に使用して検出される。
【0170】
あるいは、レポーター遺伝子系は、レポーター遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質、CAT、またはβ−gal)に作動可能に連結された標的遺伝子プロモーターを使用して考案され得る。レポーター構築物は、代表的には、培養された細胞中に同時にトランスフェクトされる。選り抜きのジンクフィンガータンパク質での処置の後、レポーター遺伝子の転写、翻訳、または活性の量は、当業者に公知の標準的技術に従って測定される。
【0171】
候補遺伝子発現のジンクフィンガータンパク質調節をモニターするために有用な好ましいアッセイ形式の別の例は、インビボで実行される。このアッセイは、腫瘍促進遺伝子、新生血管形成のような腫瘍支持に関与する遺伝子(例えば、VEGF)、または腫瘍サプレッサー遺伝子を活性化する遺伝子(例えば、p53)の発現を阻害するジンクフィンガータンパク質を調べるために特に有用である。このアッセイにおいて、選り抜きのジンクフィンガータンパク質を発現する培養された腫瘍細胞は、免疫が損なわれたマウス(例えば、無胸腺マウス、放射線照射されたマウス、またはSCIDマウス)に皮下注射される。適切な長さの時間、好ましくは4〜8週間後に、腫瘍増殖は、例えば、容積によってかまたはその2つの最も大きい寸法によって、そしてコントロールと比較されて測定される。実質的に有意な減少(例えば、スチューデントT検定を使用)を有する腫瘍は、阻害された増殖を有するといわれる。あるいは、腫瘍の新生血管形成の程度もまた測定し得る。内皮細胞特異的抗体を使用するイムノアッセイは、腫瘍において、腫瘍の血管新生および管の数について染色するするために使用される。管の数において、実質的に有意な減少を有する腫瘍(例えば、スチューデントT検定を使用)は、新生血管形成の阻害を有するといわれる。
【0172】
トランスジェニック動物および非トランスジェニック動物はまた、インビボで候補遺伝子発現の調節を調べるための実施態様として使用される。トランスジェニック動物は、代表的に選り抜きのジンクフィンガータンパク質を発現する。あるいは、選り抜きのジンクフィンガータンパク質を一過性で発現する動物、またはジンクフィンガータンパク質が送達ビヒクルにおいて投与されている動物が使用され得る。候補遺伝子発現の調節は、本明細書中に記載されるアッセイのいずれか1つを使用して試験される。動物は、機能的変化について観察およびアッセイされ得る(薬物、分裂促進因子、ウイルス、病原体、毒素などを用いてチャレンジされ得る)。
【0173】
(トランスジェニックマウスおよび薬物発見のためのインビトロでの高処理能アッセイ)
ジンクフィンガータンパク質技術のさらなる適用は、細胞株およびトランスジェニック動物における遺伝子発現を操作することである。一旦、選択した候補遺伝子がある表現型と関連し、そしてこの候補遺伝子が薬物治療標的として確認されると、細胞およびトランスジェニック動物ベースのアッセイが、高処理能薬物スクリーニングの目的のために開発される。候補遺伝子を発現する細胞株または動物は、候補遺伝子の発現を調節するジンクフィンガータンパク質を供給される。このジンクフィンガータンパク質は、代表的には、ジンクフィンガータンパク質をコードする核酸として提供されるが、タンパク質としてもまた投与され得る。次いで、この細胞株または動物は、候補遺伝子および選択した表現型に対するこの化合物の効果を決定するために、試験化合物と接触される。ジンクフィンガータンパク質技術は、高処理能細胞ベースアッセイおよび高処理能動物アッセイについての改良である。例えば、ジンクフィンガータンパク質の発現は、低分子系を用いる条件でなされ得るからである。
【0174】
治療についての1つの高処理能アッセイにおいて、ジンクフィンガータンパク質は、本明細書中に記載された低分子により調節される系を用いて、細胞株および動物において候補遺伝子を調節するために用いられ得る。ジンクフィンガーベースのリプレッサーの発現/機能は、発生の間にスイッチを切り得、そして細胞または動物において随意にスイッチを入れ得る。このアプローチは、ジンクフィンガータンパク質発現モジュールの付加のみに依存し;相同組換えは必要とされない。ジンクフィンガータンパク質リプレッサーはトランスドミナントであるので、生殖系列伝達またはホモ接合性について関係がない。これらの問題は、マウスモデルに対する特徴付けが乏しい遺伝子の候補(cDNAまたはESTクローン)から出発するために必要とされる時間および労力に劇的に影響する。この能力は、治療的介入のための遺伝子標的を迅速に同定および/または確認し、新規なモデル系を生成し、そして複雑な生理的現象(発生、造血、形質転換、神経機能など)を分析するために使用され得る。キメラ標的化マウスは、Hoganら、Manipulating the Mouse Embryo:A Laborarory Manual、(1988);Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells:A Practical Approach、Robertson、編、(1987);およびCapecchiら、Science 244:1288(1989)に従って得られ得る。
【0175】
(ジンクフィンガータンパク質の用量)
本発明の状況において被験体または細胞に投与される用量は、所望の表現型をもたらすのに充分であるべきである。特定の投与レジメが、実験設定(例えば、機能的ゲノム研究における設定、および細胞または動物モデルにおける設定)における表現型の変化を決定するために有用であり得る。用量は、用いられる特定のジンクフィンガータンパク質の効力およびKd、標的細胞の核の容量、および細胞または患者の状態、ならびに処置される細胞または患者の体重または表面積によって決定される。用量のサイズはまた、特定の細胞または患者における特定の化合物もしくはベクターの投与に伴う任意の有害な副作用の存在、性質、および程度によって決定される。
【0176】
標的部位に対する約99%の結合のための、ジンクフィンガータンパク質の最大の投与量は、細胞1個あたり特異的なジンクフィンガータンパク質分子の約1.5×105〜1.5×106コピーより少ない範囲にあると計算される。この結合のレベルのための細胞1個あたりのジンクフィンガータンパク質の数は、以下のように、HeLa細胞核の容量(約1000μm3または10-12L;Cell Biology、(AltmanおよびKatz、編(1976)))を用いて計算される。HeLa核は比較的大きいので、この投与量の数は、必要な場合、標的細胞の核の容量を使用して再計算される。この計算はまた、他の部位によるジンクフィンガータンパク質結合との競合を考慮しない。この計算はまた、基本的にすべてのジンクフィンガータンパク質が核に局在化されると仮定している。100×Kdの値が、標的部位に対する約99%の結合を計算するために使用され、そして10×Kdの値が、標的部位に対する約90%の結合を計算するために使用される。例えば、Kd=25nMでは、

ジンクフィンガータンパク質をコードする発現ベクターの適切な用量はまた、プロモーターからのジンクフィンガータンパク質発現の平均速度および細胞内のジンクフィンガータンパク質分解の平均速度を考慮することによって計算され得る。好ましくは、野生型または変異体HSV TKのような弱いプロモーターが、上記のように使用される。マイクログラムのジンクフィンガータンパク質の用量は、利用される特定のジンクフィンガータンパク質の分子量を考慮に入れることによって計算される。
【0177】
投与されるジンクフィンガータンパク質の有効量を決定する際に、ジンクフィンガータンパク質またはジンクフィンガータンパク質をコードする核酸の循環血漿レベル、潜在的なジンクフィンガータンパク質毒性、表現型の進行、および抗ジンクフィンガータンパク質抗体の産生を評価する。投与は、単回用量、または分割した用量で達成され得る。
【0178】
(薬学的組成物および投与)
ジンクフィンガータンパク質およびジンクフィンガータンパク質をコードする発現ベクターは、遺伝子発現の調節のために、被験体または細胞に直接的に投与され得る。有効な量の投与は、ジンクフィンガータンパク質を導入して、組織または細胞と最終的に接触させるために通常使用される経路のいずれかによる。ジンクフィンガータンパク質は、任意の適切な様式で、好ましくは薬学的に受容可能なキャリアとともに投与される。このような調節物の適切な投与方法は、当業者に利用可能でありかつ周知であり、そして1を超える経路が特定の組成物を投与するために使用され得るが、特定の経路は、別の経路よりもより直接的かつより効果的な反応をしばしば提供し得る。
【0179】
薬学的に受容可能なキャリアは、部分的には、投与される特定の組成物、および、その組成物を投与するために使用される特定の方法によって決定される。従って、本発明の薬学的組成物の広範な種々の適切な処方が存在する(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第17版、1985を参照のこと)。
【0180】
ジンクフィンガータンパク質、ジンクフィンガータンパク質をコードする核酸は、単独でまたは他の適切な組成物と組み合わせて、吸入を介して投与されるためのエアロゾル処方物(すなわち、それらは「霧状に」され得る)に作られ得る。エアロゾル処方物は、加圧した受容可能な噴霧剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素など)中に配置され得る。
【0181】
非経口的投与(例えば、静脈内、筋肉内、皮内および皮下経路によるような)のための適切な処方物は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および意図されたレシピエントの血液と等張性である処方物を与える溶質を含み得る、水溶性および非水溶性の等張性滅菌注入溶液、ならびに懸濁剤、溶解剤、濃縮剤、安定剤、および保存剤を含み得る水溶性および非水溶性滅菌懸濁液を含む。本発明の実施において、組成物は、例えば、静脈内注入、経口的、局所的、腹腔内、膀胱内、または鞘内によって投与され得る。化合物の処方は、単位用量または多用量を封入した容器(例えば、アンプルまたはバイアル)中に提供され得る。注入溶液および懸濁液は、以前に記載された種類の滅菌粉末、顆粒、および錠剤から調製され得る。
【0182】
本明細書中に引用される全ての刊行物および特許出願は、あたかも各々の刊行物または特許出願が具体的にかつ個別に参考として援用されることが示されるように、本明細書中に参考として援用される。
【0183】
前述の発明は、理解の明確さの目的のために例証および実例によっていくぶん詳細に記載してきたけれども、本発明の教示を考慮して、添付の請求の範囲の精神および範囲から逸脱することなく、特定の変更および改変が本発明に対してなされ得ることは、当業者にとって容易に明らかである。
【0184】
(実施例)
以下の実施例は、例証の目的のみのために提供され、限定する目的ではない。当業者は、変更または改変されて基本的に類似した結果を生じ得る種々の決定的ではないパラメーターを容易に認識する。
【0185】
(実施例I:標的確認のための、ジンクフィンガータンパク質を用いるヒトVEGF遺伝子の標的化)
標的確認における重要な考慮は、標的遺伝子と得られる表現型との間の相関関係を十分に決定しかつ実際に評価することである。本実施例は、ジンクフィンガータンパク質技術の使用を実証して、例えば、遺伝子の発現または遺伝子産物の機能を調節し得る、治療用化合物の開発のための標的として遺伝子を確認することを実証する。このプロセスは、以下の単純な仮説に基づく(図1)。
【0186】
遺伝子XがZFP−A1(これはX1部位を特異的に標的にする)により上方制御される場合、表現型Qが観察される。
【0187】
遺伝子XがZFP−A2(これは異なるX2部位を特異的に標的にする)により上方制御される場合、同じ表現型Qが観察される。
【0188】
遺伝子XがZFP−B1(これはX3部位(X3はX1またはX2であり得る)を標的にする)により下方制御される場合、異なる表現型Zが観察される。
【0189】
ZFP−A1、ZFP−A2、またはZFP−B1を用いて、表現型Qに関与しない遺伝子を標的にする場合、この遺伝子に関する表現型の変化は観察されない。ヒトおよびマウスの血管内皮増殖因子(VEGF)遺伝子を、本実施例における標的確認のために選択した。VEGFは、低酸素により誘導される内皮細胞特異的分裂促進因子である、約46kDaの糖タンパク質である。VEGFは、チロシンキナーゼレセプターFlt−1(VEGFR−1)およびFlk−1/KDR(VEGFR−2)との相互作用を介して内皮細胞に結合する。VEGFは、新脈管形成において非常に重要な役割を果たすので、治療薬の開発のためのこの遺伝子の標的化は、多大な興味を引いている。VEGF遺伝子の阻害(下方制御)は、癌および糖尿病性網膜炎の処置に用いられ得るが、遺伝子の活性化(上方制御)は、虚血心臓および組織疾患のために用いられ得る。これらの2つの所望の表現型変化は、VEGF遺伝子をジンクフィンガータンパク質技術を用いる標的確認に理想的にする。
【0190】
(インビトロでの生化学的アフィニティーおよび特異性についてのジンクフィンガータンパク質の試験)
ジンクフィンガータンパク質についてのDNA標的部位を、標的遺伝子の転写部位の周囲の領域において選択した。主な標的を、転写開始部位の約1kb上流の領域内で選択した。ここで、エンハンサーエレメントの大部分が配置される。各3−フィンガーのジンクフィンガータンパク質は、9bpのDNA配列を認識する。DNA結合特異性を増加させるために、近接する2つの3−フィンガーのジンクフィンガータンパク質を9bp配列(Liuら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.94:5525〜5530(1997))を標的にするように共に融合した。
【0191】
ヒトSP−1またはマウスZif268転写因子を設計したジンクフィンガータンパク質の構築のための前駆体分子として用いた。アミノ酸配列(フィンガー)(これは標的DNA配列を認識する)を、本明細書中に記載される「認識規則」に基づいて設計した。設計したジンクフィンガータンパク質遺伝子を6つの重複するオリゴヌクレオチドを利用するPCRベースの手順を用いて構築した。VEGFを標的にするジンクフィンガータンパク質遺伝子を設計およびアセンブルする方法は、USSN 09/229037に詳述される。
【0192】
設計したジンクフィンガータンパク質遺伝子を、始めに、KpnIおよびBamHIを用いて消化した後、pMAL−KNBベクターにクローン化した(図2)。このpMAL−KNBベクターを、pMAL−c2ベクター(NEW England Biolabs,MA)から改変する。ジンクフィンガータンパク質を細菌から精製し、そして生化学的アフィニティーアッセイおよび特異性アッセイに供した。これらのインビトロアッセイについての方法を、本明細書中および同時係属出願であるUSSN 09/229037に記載する。
【0193】
(一過性トランスフェクト細胞におけるルシフェラーゼプロモーターの活性化または抑制)
高い生化学的アフィニティーおよび特異性を有するジンクフィンガータンパク質を、pcDNA−NVFまたはpcDNA−NKF中のKpnI部位およびBamHI部位にサブクローニングした(図2)。pcDNA−NVF構築物は、核局在シグナル、単純ヘルペスウイルスVP16活性化ドメイン、およびFlagペプチドをコードするCMVプロモーター制御配列を含む。この構築物を、哺乳動物細胞に導入した場合に、標的化遺伝子を上方制御するように設計した。pcDNA−NKF構築物は、VP16ドメインに代わってKruppel関連ボックス(KRAB)抑制ドメインを含み、そしてこれを標的化遺伝子の下方制御に用いた。これらの構築物を、同時係属出願であるUSSN 09/229037に詳細に記載する。
【0194】
レポータープラスミド系は、pGL3−プロモーターおよびpGL3−コントロールベクター(Promega,WI)に基づく。ジンクフィンガータンパク質標的部位の3つの直列型反復配列を、SV40プロモーターの上流に挿入した(図3)。pGLPレポーターを用いて、遺伝子発現の上方制御について、操作したジンクフィンガータンパク質の活性を評価した。pGLCレポーターを用いて、ZFP−KRAB活性(遺伝子発現の阻害)の効果を測定した。これらの構築物を、同時係属出願であるUSSN 09/229037に詳細に記載する。
【0195】
本実施例に用いられるコントロールプラスミドを、図2に示す。pcDNA−NVF(またはpcDNA−NKF)は、ZFPを欠くエフェクターである。pcV−RAN(またはpcK−RAN)は、操作したジンクフィンガータンパク質が公知でないDNA結合能力を有すること以外、全ての成分を発現する(図2)。pcV−RAN(またはpcK−RAN)構築物におけるジンクフィンガータンパク質配列は、以下:

であり、ここで、フィンガーに下線を付す。これらのコントロール構築物を用いて、DNA結合ドメインの非存在下での調節ドメイン(VP16またはKRAB)の効果を確認した。pc−ZFP−catプラスミドは、特定の設計したジンクフィンガータンパク質を発現するが、機能的ドメイン(VP16またはKRAB)を、pcDNA3.1/CATベクター(nt1442〜1677)(Invitrogen,CA)中のクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子から単離される234bpフラグメントと交換した(図2)。このコントロールプラスミドを用いて、DNA結合ドメインが単独で遺伝子発現に対する任意の効果を有するか否かを試験する。他のコントロールは、異なるDNA配列および非特異的ジンクフィンガータンパク質標的配列を含むレポーターを認識するジンクフィンガータンパク質を発現するエフェクターを含む。
【0196】
以下の実施例は、設計したジンクフィンガータンパク質の効果を実証する。これは293細胞中のルシフェラーゼレポーター遺伝子を活性化する。標的化配列(GGGGTTGAG)をM6−1892Sと名付け、そしてこれはヒトVEGF遺伝子のプロモーター領域中に存在する。この9−bp DNA配列を認識するジンクフィンガータンパク質を、本明細書中およびUSSN 09/229037に記載されるように設計およびアセンブルした。ジンクフィンガータンパク質のDNA配列およびアミノ酸配列を以下に示す:

アセンブルされたジンクフィンガータンパク質のKpnI−BamHI DNAフラグメントを、pMAL−KNBベクターのKpnI−BamHI部位にクローン化した。設計されたジンクフィンガータンパク質が、その標的部位に結合する能力を、E.coliから組換えタンパク質を発現および精製すること、ならびに電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)を実施することによって、確認した。上記に示したタンパク質の結合親和性(Kd)は、EMSAによって決定された場合、20nMであった。次いで、このKpnI−BamHI ZFPフラグメントを、pcDNA−NVFベクターのKpnI−BamHI部位にサブクローン化し、そしてpcV−VF471Aと命名した。M6−1892S部位の3つの縦列反復配列を含むルシフェラーゼレポータープラスミドを作製し、そしてpGLP−VF471x3と命名した。
【0197】
すべてのプラスミドDNAを、Qiagenプラスミド精製キットを使用して調製した。ヒト胚性腎293細胞を、翌日に約70%コンフルエンスに到達する密度で、6ウェルプレートの各ウェルに播種した。細胞を、Lipofectamine(GIBCO−BRL、MD)またはGenePORTER(Gene Therapy Systems Inc,CA)トランスフェクション試薬を用いて、50ngエフェクターDNA(ZFP発現プラスミド)、900ngレポーターDNA、および100ng pCMV−LacZ DNAと共に、同時トランスフェクトした。同時発現されたβ−ガラクトシダーゼ活性をコントロールに使用して、ルシフェラーゼ活性を正規化した。細胞溶解産物を、トランスフェクションの40〜48時間後に収集した。ルシフェラーゼアッセイを、Dual−Light Luciferase and β−galactosidase Reporter Assay System(Tropix、MA)を使用して実施した。代表的なルシフェラーゼアッセイの結果を、図4に示す。
【0198】
この実施例は、この設計されたZFP発現プラスミド(pcV−VF471A)が、コントロールプラスミドpcV−RAN(これは、既知のDNA結合能力を有さない)と比較した場合に、ルシフェラーゼ遺伝子発現を8倍刺激し得ることを示した。VP16ドメインをペプチド(これは、転写調節活性を有さない)と置換した場合に、このジンクフィンガータンパク質(pcV−VF471A−cat)は、ルシフェラーゼ遺伝子をトランス活性化するその能力を欠損した。設計されたジンクフィンガータンパク質(pcV−VF471A)は、異なるジンクフィンガータンパク質結合部位を含むレポーターからのルシフェラーゼ発現を活性化できず、このことは、このトランス活性化効果が配列特異的であることを示す。従って、この実施例において調節ドメイン(VP16)と組み合わせられたDNA結合ドメイン(VF471A ZFP)は、適切な標的部位で遺伝子をオンにし得た。
【0199】
(一過的にトランスフェクトされた細胞における標的遺伝子のネイティブなプロモーターを含むリポーターの試験)
単純レポーター系とネイティブなレポーター系との間の差異は、ネイティブなレポータープラスミド構築物が、標的遺伝子のプロモーターを含むということである。ネイティブなレポーター系に固有の利点は、単一のネイティブなレポータープラスミド構築物を使用して、そのプロモーターの状況下で、複数のジンクフィンガータンパク質の効果を分析し得るということである。
【0200】
pGLP−ネイティブレポーターを、プロモーターを含むDNAフラグメントとpGL3−プロモーター中のSV40プロモーターとを置換すること、そして標的遺伝子の配列を隣接させることによって構築した(図3)。この実施例では、ヒトVEGF遺伝子のネイティブなレポーター構築物は、ヒトゲノムDNAから3319bpのフラグメントをPCR増幅することによって生成された。このフラグメントは、VEGFプロモーターおよびその隣接領域を含む。VEGF ATGコドンを、ルシフェラーゼコード領域に融合した。ネスト(Nest)−PCRを、増幅のために実施した。外部プライマーは、hVEGFU1(5’−GAATTCTGTGCCCTCACTCCCCTGG;nt 1〜25は、GenBank配列M63971に基づいた)およびVEGFD2(5’−ACCGCTTACCTTGGCATGGTGGAGG;nt 3475〜3451)であった。内部プライマー対は、hVEHFU2(5’−ACACACCTTGCTGGGTACCACCATG;nt 71〜95、KpnI部位に下線を付した)およびVEGFD1(5’−GCAGAAAGTcCATGGTTTCGGAGGCC;nt 3413〜3388、下線を付したNcoI部位を生成するために、TからCへの置換を作製する)である。ネスティッド(nested)PCR産物を、KpnIおよびNcoIで消化し、そしてpGL3プロモータープラスミドのKpnI−NcoIベクターフラグメントと連結した(図3)。ヒトVEGFネイティブレポータープラスミドを、pGLPVFHと命名した。
【0201】
類似のストラテジーを使用して、マウスゲノムDNAから2070bpフラグメントを増幅した。外部プライマーは、mVEGFU2(5’−TGTTTTAGAAGATGAACCGTAAGCCT;nt 1〜25は、GenBank配列U41383に基づいた)およびVEGFD2(5’−ACCGCTTACCTTGGCATGGTGGAGG;nt 3475〜3451は、M63971に基づいた)であった。内部プライマーは、mVEGF(5’−GCCCCCATTGGtACCCTGGCTTCAGTTCCCTGGCAACA;nt 155〜192;下線を付したKpnI部位を生成するために、CからTへの置換を作製する)およびVEGFD(5’−GCAGAAAGTcCATGGTTTCGGAGGCC;nt 3413〜3388はM63971に基づいた、下線を付したNcoI部位を生成するために、TからCへの置換を作製する)であった。VEGFD2およびVEGFD1プライマーを使用して、ヒトおよびマウスのゲノムDNAの両方を増幅した。なぜなら、これらの配列は、この領域で非常に相同であるからである(Shimaら、J.Biol.Chem.271:3877(1996))。マウスVEGFのネイティブなレポータープラスミドを、pGLPmVFと命名した。
【0202】
以下の実施例は、2つの設計されたジンクフィンガータンパク質が、293細胞中でヒトVEGFネイティブプロモーター遺伝子を上方制御し得たことを示す。1つのジンクフィンガータンパク質(pcV−M6−2009A)を、転写開始部位の362bp上流に位置付けられた近位部位GAAGGGGGCを標的化するように設計し、そして他の1つ(pcV−M6−111S)を、転写開始部位の2240nt上流に位置付けられた遠位部位ATGGGGGTGを標的化するように設計した。上記のルシフェラーゼレポーターアッセイと同様に、50〜100ngのエフェクターDNAを、900ngのネイティブなレポーターDNAおよび100ngのpCMVlacZ DNAと共に同時トランスフェクトした。ルシフェラーゼ活性を、トランスフェクションの約40時間後に測定し、そして図5に活性化倍数として示した。
【0203】
(細胞培養物において内因性のヒトおよびマウスのVEGF遺伝子を活性化または抑制するための第1ジンクフィンガータンパク質)
これらの操作されたジンクフィンガータンパク質が、細胞培養物において内因性のヒトおよびマウスのVEGF遺伝子を活性化または抑制し得るか否かを試験するために、一過的なトランスフェクション実験を実施した。ヒト293細胞およびマウス乳房上皮細胞C127I(Shimaら、JBC 271:3877(1996))は、低レベルの内因性VEGFタンパク質を発現し、これを使用して、VEGF活性化に対するジンクフィンガータンパク質の効果を評価した。ヒト膠芽腫U87MG細胞、マウス神経芽腫NB41細胞(Levyら、Growth Factors 2:9(1989))およびラット神経膠腫GS−9L細胞(Connら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:1323(1990))は、高レベルの内因性VEGFタンパク質を発現し、これを、ジンクフィンガータンパク質の抑制効果を試験するために使用する。これらの細胞を、翌日に約70%コンフルエンスに到達する密度で、6ウェルプレートの各ウェルに播種する。0.1〜1gのエフェクターDNAを、通常、細胞型に依存してLipofectamineまたはGenePORTERトランスフェクション試薬のいずれかを用いて、細胞をトランスフェクトするために使用する。トランスフェクションの約14時間後、細胞に、新鮮培地を給餌し、そしてさらに24時間培養する。次いで、この培地を収集し、そして内因性VEGFレベルを、VEGF ELISAアッセイキット(R&D Systems、MN)を使用して測定する。
【0204】
VEGF M6−111SおよびM6−2009S ZFPを、第1ジンクフィンガータンパク質として設計して、ヒトVEGF遺伝子調節におけるそれらの活性を試験した。表1における結果は、両方の第1ジンクフィンガータンパク質が、293細胞中において内因性VEGF遺伝子発現を有意に活性化することを示した。
【0205】

標的遺伝子を発現させるために、設計されたジンクフィンガータンパク質ドメインを、pcDNA−NKFベクター中にクローン化した。適切な細胞中へのDNAのトランスフェクション後、ZFP−KRAB融合タンパク質は、同時トランスフェクトされたルシフェラーゼレポーター遺伝子と同様に、内因性遺伝子を阻害し得る。本明細書中で使用された実施例は、pcK−M6−11Sである。表1に示されるように、M6−111S ZFPは、標的配列ATGGGGGTGを認識する。M6−111S ZFPが、KRAB抑制ドメインに融合される場合、同時トランスフェクトされたルシフェラーゼレポーター遺伝子発現における約80%の抑制および内因性VEGF遺伝子発現における約40%の抑制が達成された。
【0206】
(細胞培養物における内因性のヒトおよびマウスのVEGF遺伝子を活性化または抑制するための第2ジンクフィンガータンパク質)
第1ジンクフィンガータンパク質を用いて観察された生理的効果が、VEGF遺伝子に対する効果に起因し、そして他の副作用(例えば、代替的な遺伝子標的の調節)に起因しないことを確認するために、第1ジンクフィンガータンパク質の部位とは異なる部位でVEGF遺伝子を標的化する第2ジンクフィンガータンパク質を操作した。表1に示されるように、2つの第2ジンクフィンガータンパク質はまた、培養細胞中で内因性VEGF遺伝子発現を活性化する。これらの結果は、ジンクフィンガータンパク質技術を使用して、遺伝子発現を調節し得、そして治療のための標的として遺伝子を確認し得ることを示す。
【0207】
(VEGF生理に関与しない遺伝子を標的化するための第3ジンクフィンガータンパク質)
第1および第2ジンクフィンガータンパク質を用いて観察された生理的効果が、VEGF遺伝子に対する特異的効果に起因し、そしていかなる非特異的DNA結合または鎮圧(squelching)効果にも起因しないことを確認するために、VEGF生理に関与しない遺伝子を標的化する第3ジンクフィンガータンパク質を、ネガティブコントロールとして使用する。例えば、ヒトEPO遺伝子発現を調節するために設計されたジンクフィンガータンパク質を、特異性コントロール(実施例IIを参照のこと)として使用する。EPOはまた、低酸素によって影響を及ぼされ、従って、低酸素アッセイを使用するVEGF標的確証のためのコントロールとして有用である。VEGF阻害は、特異的に、糖尿病性網膜症を覆す。この結果は、薬物の発見および開発のための分子標的としてのVEGFを確証する。
【0208】
(げっ歯類における糖尿病性網膜症モデルに対するVEGF阻害効果の試験)
糖尿病性網膜症は、労働者年齢の個体間における失明の最も一般的な原因である。VEGF発現の増加は、糖尿病性網膜症の病理の主要な誘因である。この疾患を処置するためのストラテジーの1つは、治療的化合物を使用して、内因性VEGF遺伝子発現を阻害することである。上記のように、ジンクフィンガータンパク質は、治療剤としてVEGFを確証するための手段を提供する。アデノ随伴ウイルス(AAV)および/またはレトロウイルスに基づいたウイルスベクターを、上記のように構築する。これらのウイルスベクターは、上記のようなKRAB抑制ドメインと融合されたジンクフィンガータンパク質を発現する。これらのウイルスを産生し、精製し、そして動物中に注射する。操作されたジンクフィンガータンパク質の効力を、以前に記載された(Admaisら、Arch.Ophthalmol.114:66(1996);Pierceら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92:905(1995);Aielloら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92:10457(1995);Smithら、Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.35:101、1994)ような網膜新生血管形成の抑制によって、評価する。すべての必要なコントロール(第2および第3のジンクフィンガータンパク質を発現するウイルスベクターを含む)もまた、使用される。
【0209】
(げっ歯類における末梢動脈疾患モデルに対するVEGF活性化効果の試験)
側副動脈の発達を増強するための、VEGFによる末梢新脈管形成の刺激は、虚血性脈管疾患を有する患者のための潜在的に新規な治療形態である。上記と同じストラテジーを使用し、マウス末梢動脈疾患モデルを用いて、標的としてのVEGFを確証する。VP16活性化ドメインに融合されたジンクフィンガータンパク質を発現するAAVまたはレトロウイルスベクターを、上記のように構築する。ジンクフィンガータンパク質の効力を、以前に記載された手順(Couffinhalら、Am.J.Pathol.152:1667(1998);Takashitaら、Lab.Invst.75:487(1996);Isnerら、Human Gene Therapy 7:959(1996))と同様に評価する。すべての必要なコントロール(第2および第3のジンクフィンガータンパク質を発現するウイルスベクターを含む)もまた、使用される。VEGFの過剰発現は、側副動脈成長を誘発する。この結果は、薬物の発見および開発のための標的としてのVEGFを確証する。
【0210】
(実施例II:赤血球生成の標的の発見)
哺乳動物の赤血球生成を、増殖および分化シグナルを与える特定の因子による赤血球前駆体の刺激を介して調節する。低酸素は、多くの生理学的に関連したプロセスを制御する遺伝子の発現を誘導する強力なシグナルである(Ratcliffeら、J.Exp.Biol.201:1153(1998))。このプロセスの1つは、特定の組織が、さらなる赤血球の生成のための因子を放出することを「要求」することである。この現象は、低酸素条件を用いて異なる細胞株および/または組織を刺激すること、培養物上清をサンプリングすること、そしてマウス骨髄培養物由来の赤血球コロニー形成単位の刺激について試験することによって検出され得る。この様式において、低酸素に応答することが見出された細胞株または組織は、低酸素誘導可能様式で、赤血球生成増殖因子を発現する可能性がある。低酸素処理に際してこのような細胞または組織において示差的に発現される遺伝子の分析は、赤血球生成増殖因子発現遺伝子の同定へと導く。ジンクフィンガータンパク質技術は、このような示差的な遺伝子発現実験のための分析ツールとして、そして仮定上の赤血球生成増殖因子遺伝子を確証するために使用され得る。
【0211】
細胞型(ヒトヘパトーム細胞株Hep3Bを含む)の収集物を、適切な培地において培養し、そして加湿5%CO2−95%空気のインキュベーター内で37℃にて維持する。低酸素条件を、18時間にわたって1%O2−5%CO2−94%N2を流すことによって達成する(Goldbergら、Blood 77:271(1991))。培養物上清を収集し、そしてコロニー形成アッセイにおいて試験する(Mullerら、Exp.Hematol.21:1353(1993);Eaves&Eaves、Blood 52:1196(1978))。ヒトヘパトームHep3B細胞株は、低酸素誘導に際して赤血球生成増殖因子を生成することが見出され(Goldbergら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.84:7972(1987))、そしてこの細胞株を、さらなる特徴付けのために用いる。
【0212】
1つの作業仮説は、赤血球生成の刺激を担う1つの(または、それより多い)細胞性遺伝子が、低酸素に際して活性化されるということである。この遺伝子は、示差的遺伝子発現実験(例えば、ディファレンシャルディスプレイ(GeneHunter、TN)、PCR選択cDNAサブトラクション(PCR−Select cDNA Subtraction)(Clontech,CA)、またはマイクロアレイ(Affymetrix、CA))を実施することによって同定され得る。正常な条件および低酸素条件の下で、Hep3B細胞増殖物から抽出されたRNAの遺伝子発現パターンを比較する。
【0213】
複数の遺伝子が、低酸素症を呈した細胞において上方制御される可能性が非常に高い。約18個の遺伝子が、低酸素によって上方制御されるとして同定された(Ratcliffeら、J.Exp.Biol.201:1153(1998))。広範に研究されている、エリスロポエチン(EPO)遺伝子および血管内皮増殖因子(VEGF)遺伝子を、この実施例において使用して、赤血球生成増殖因子をコードする遺伝子の機能的ゲノム学(genomics)および同定へのジンクフィンガータンパク質技術の適用を実証する。
【0214】
上記の実験から同定された候補遺伝子のDNA配列に基づいて、第1ジンクフィンガータンパク質は、プロモーターに近接して位置付けられたDNA配列を標的化するように設計される。ジンクフィンガータンパク質の構築および特徴付けのプロセスは、実施例Iに記載されたプロセスと同一である。高いDNA結合親和性および特異性を有するジンクフィンガータンパク質(3フィンガーのもの、または6フィンガーのタンパク質)を、HSV VP−16活性化ドメインまたはKRAB抑制ドメインのいずれかと融合して、リスト上の個々の遺伝子の発現を活性化またはブロックする。
【0215】
これらの設計されたZFP−VP16構築物は、非低酸素条件下でGenePORTERトランスフェクション試薬(Gene Therapy Systems Inc,CA)を使用して、個々に一過的にHep3B細胞中にトランスフェクトされる。トランスフェクションの48時間後、上清を収集し、そしてコロニー形成アッセイを実施する。ジンクフィンガータンパク質のアップレギュレーションに際して赤血球生成を誘導する遺伝子は、赤血球生成増殖因子をコードする遺伝子であるとみなされる。この結果は、エリスロポエチン(EPO)遺伝子が、赤血球生成の調節を担うが、他のすべての試験された遺伝子(VEGFを含む)は、赤血球生成の調節を担わないことを示す。実施例Iに記載された、すべての必要なジンクフィンガータンパク質コントロール構築物をまた、この実施例において使用する。
【0216】
遺伝子を同定および確証する別の方法は、これらのジンクフィンガータンパク質をKRABドメインと融合すること、そしてHep3B細胞を、トランスフェクションの14時間後に低酸素によって刺激することを除いて、上記と同様の実験を実施することである。EPO遺伝子発現を抑制するように設計されたジンクフィンガータンパク質を、Hep3B細胞中にトランスフェクトする場合、コロニー形成アッセイに基づいて、全く活性は観察されないか、または活性の減少が観察される。EPO遺伝子以外の遺伝子を標的化するすべてのジンクフィンガータンパク質は、低酸素誘導下で、赤血球生成に影響を及ぼさない。
【0217】
遺伝子の機能をさらに確証するために、EPO遺伝子の異なる部位で標的化する第2ジンクフィンガータンパク質を構築する。これらの第2ジンクフィンガータンパク質は、VP16活性化ドメインと融合された場合に、EPO遺伝子発現を活性化し、そして赤血球生成を刺激する。逆に、KRAB抑制ドメインと融合された場合、これらのジンクフィンガータンパク質は、低酸素条件下でEPO遺伝子発現を阻害し、そして赤血球生成を刺激できない。
【0218】
(実施例III:乳癌標的遺伝子の発見)
いくつかの乳房腫瘍の増殖は、ホルモンエストロゲンの持続的存在に依存する。エストロゲンは、トランスフォームされた表現型の維持に必要とされる遺伝子のアップレギュレーションに関与する可能性がある。これらの組織由来の細胞株(例えば、MCF−7、BT20、およびT47D)は、培養における増殖についての、このエストロゲン依存性を保持する。従って、エストロゲンは、依存的細胞株において必須の遺伝子の発現を刺激するようである。これらのエストロゲン誘導性遺伝子の発見は、乳癌を処置するための新たな薬物の開発のために有用な分子標的である。エストロゲン依存性細胞増殖に必要とされるエストロゲン誘導性遺伝子を同定するためのジンクフィンガータンパク質の使用が、本明細書中に記載される。さらに、新たに発見された標的を、ジンクフィンガータンパク質および適切なコントロールを使用して確証する。
【0219】
(ER応答性遺伝子の同定)
MCF−7細胞を、エストロゲン(エストラジオール)の非存在下で、短期間(1週間)および長期間(28週間)増殖させ、基底レベルに達するまでエストラジオール誘導性遺伝子の転写を可能にする。フェノールレッドを欠きかつ10%チャコール除去(stripped)ウシ胎仔血清(FCS)(Hyclone)、10μg/mlのインスリンおよび0.5nMのエストラジオールを補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を含む162mlフラスコ中で、細胞を増殖させる。80%コンフルエンシーを達成したらすぐ、細胞をトリプシン処理し、そしてエストラジオールを欠く新鮮培地に移す。このフラスコを5%のCO2の加湿雰囲気下で37℃にてインキュベートする。
【0220】
エストロゲン応答性遺伝子発現を、この細胞にエストラジオールを添加することにより刺激する。エストラジオールの非存在下で増殖した細胞を、エストラジオールを欠く新鮮培地へ分配する。1つのフラスコに10nMのエストラジオール(エタノールに溶解させた)を添加し、一方、他方のフラスコにエストラジオールを含まない等量のエタノールを添加する。刺激した細胞および刺激してない細胞の両方を、6時間後に収集する。
【0221】
RNAを、標準的なRNA単離キットを使用して、示差的に発現された遺伝子を同定するために細胞から単離する。エストロゲン応答性遺伝子を以下の方法の1つまたはそれらの組み合わせを使用して同定する:差引きハイブリダイゼーション(例えば、Clontech製のPCR−Select)、ディファレンシャルディスプレイ法(例えば、Genelogicにより提供されるREADS技術もしくPerkin−ElmerのGenScope)、cDNAアレイ(例えば、Incyte製のGEM技術)またはAffymetrixから提供される高密度オリゴヌクレオチドマトリックス技術。
【0222】
多くの示差的に発現された(エストラジオール活性化)遺伝子が同定される。これらの遺伝子に関するcDNAが配列決定され、そして候補遺伝子のリストにまとめられる。多くの遺伝子が同定され、これらが、エストロゲンレセプターを含むことが予想される。
【0223】
(エストロゲン応答性遺伝子の最初の確認)
上記のように、そして同時係属中の出願(USSN09/229037)に記載されるように、ジンクフィンガータンパク質を操作して、候補遺伝子のリストの個々のメンバーの各々を標的化する。候補遺伝子の配列を、独特かつ容易に標的化可能な9bpの配列についてスキャンする。このプロセスは、さらなる配列を得るためおよび上記で生成されたcDNA配列の精度を確実にするために、以前に配列決定された遺伝子に対する一致についてデータベースを検索することを含む。
【0224】
これらの設計されたジンクフィンガータンパク質は、上記のように機能ドメインに融合され、候補遺伝子の発現の上方制御およびノックダウンの両方を可能にする。使用される機能的ドメインは、Kruppel関連ボックス(KRAB)抑制ドメインおよび単純ヘルペスウイルス(HSV−1)VP16活性化ドメインである。
【0225】
(候補遺伝子の抑制)
リプレッサー研究のために、個々のジンクフィンガータンパク質を保有する細胞を、エストロゲン依存性機能をブロックすることに起因する増殖の欠損についてアッセイする。エストロゲンレセプターが、MCF−7における増殖に必須であることが証明され、従って、これらの細胞は、ER遺伝子または他のエストロゲン依存性機能が下方制御について標的化される場合、増殖に失敗する。
【0226】
細胞を、エストラジオールを有するかまたは有さない、上記の培地中で培養する。ジンクフィンガータンパク質をSV40 NLSおよびKRABに融合して構築された真核生物発現ベクターは、上に記載される。トランスフェクションは、Lipofectamine(GIBCO−BRL製の市販されるリポソーム調製物)を使用して行われる。全てのプラスミドDNAは、Qiagen Midi DNA精製システムを使用して調製される。10gのエフェクタープラスミドを全量1600μlのOpti−MEM中の100ngのLipofectamine(50μl)と混合する。pCMVβ−galプラスミド(Promega)をまた、トランスフェクション効率のための内部コントロールとしてDNA混合物中に含ませた。30分間のインキュベーション後、6.4mlのDMEMを添加し、そしてこの混合物を細胞上で層状に重ねた。5時間後、DNA−Lipofectamine混合物を除去し、そして10%のチャコール除去FCS、10μg/mlのインスリンおよび10nMのエストラジオールを含む新鮮培養培地をその細胞上で層状に重ねた。
【0227】
生存能力を、トリパンブルー排除および増殖のモニタリングによりアッセイする。細胞を、トリプシン処理し、遠心分離により濃縮し、そして約106細胞/mlで再懸濁する。トリパンブルーの0.4%溶液を、血球計スライド上の等量の細胞に添加する。全細胞および染色した細胞を顕微鏡下で計数する。増殖を、DNA合成を測定することによりモニターする。放射活性[3H]チミジン(30Ci/mmolで0.5μCi;Ammersham)を添加し、そして細胞をさらに17時間増殖させる。培地を除去し、そして細胞を1%SDSを用いてインサイチュで溶解する。細胞溶解産物を、15%トリクロロ酢酸(TCA)で沈殿させ、そしてWhatman 3Mフィルターディスクを用いて濾過することにより収集し、そして5%TCA、次いでエタノールで洗浄する。濾紙を乾燥させ、そしてチミジンの取り込みを液体シンチレーション計数により定量する。
【0228】
(候補遺伝子の活性化)
リストの各メンバーの活性化をまた行い、MCF−7細胞のエストロゲン依存性増殖についてアッセイする。真核生物発現ベクターを上記のように構築する。Lipofectamine(GIBCO−BRL製の市販されるリポソーム調製物)を用いてトランスフェクションを行う。全てのプラスミドDNAを、Qiagen Midi DNA精製システムを使用して調製する。上記のようにトランスフェクションを行う。
【0229】
生存能力を、トリパンブルー排除および増殖のモニタリングによりアッセイする。細胞を、トリプシン処理し、遠心分離により濃縮し、そして約106細胞/mlで再懸濁する。トリパンブルーの0.4%溶液を、血球計スライド上の等量の細胞に添加する。全細胞および染色した細胞を顕微鏡下で計数する。増殖を、DNA合成を測定することによりモニターする。放射活性[3H]チミジン(30Ci/mmolで0.5μCi;Ammersham)を添加し、そして細胞をさらに17時間増殖させる。培地を除去し、そして細胞を1%SDSを用いてインサイチュで溶解する。細胞溶解産物を、15%トリクロロ酢酸(TCA)で沈殿させ、そしてWhatman 3Mフィルターディスクを用いて濾過することにより収集し、そして5%TCA、次いでエタノールで洗浄する。濾紙を乾燥させ、そしてチミジンの取り込みを液体シンチレーション計数により定量する。
【0230】
(二次的な確認)
さらなる試験によって、この1回目のリプレッサーおよびアクチベーター研究の間に同定された候補遺伝子を確認する。これらのジンクフィンガータンパク質を、候補遺伝子における異なりかつ別々の2つの標的部位を標的化するように設計する。さらに、ジンクフィンガータンパク質の特異性および親和性を、18bpを認識する6フィンガー分子を形成するために、2つの3フィンガージンクフィンガータンパク質ドメインを融合することにより改良する。
【0231】
3フィンガージンクフィンガータンパク質を上記のように設計し、生成しそしてEMSAによりアッセイする。適切な配列(これらについて、ジンクフィンガータンパク質が容易にかつ信頼して設計され得る)を位置付けるために、候補遺伝子のさらなる配列決定が必要とされ得る。さらに、さらなる配列を、ヌクレオチド配列データベースに見出し得る。2つの9bpの配列が互いの5bp以内に存在し;従ってジンクフィンガータンパク質対の連結を可能にするように、標的配列を選択する。受容可能な親和性および特異性で結合する3フィンガージンクフィンガータンパク質の対を同定した後、このドメインをPCRによって連結し、6フィンガー分子のフィンガー4〜6を構成するドメインを増幅する。非組織的かつ可撓性であると推定されるペプチド配列をコードする短いDNA配列を、増幅の間に、このドメインのN末端に付加する。
【0232】
各構築物を、培養物中の増殖しているMCF−7細胞へ一過的にトランスフェクトし、そして各構築物を、上記のように、増殖の失敗(抑制)またはエストロゲン非依存性増殖(活性化)についてスコア付けする。
【0233】
(異種移植片を使用する標的確認)
腫瘍増殖に対する変更された標的遺伝子発現の効果を、ヌードマウスにおける異種移植片により評価する。ジンクフィンガータンパク質をコードする遺伝子を、上記のようにアデノ随伴ウイルス(AAV)またはレトロウイルスベースのウイルスベクターにクローン化する。このジンクフィンガータンパク質をKRABまたはVP16ドメインのいずれかに融合する。得られた組換えウイスルを生成し、精製しそしてMCF−7細胞を感染するために使用する。これらのトランスジェニック細胞を、皮下的にヌードマウスへ導入する(Bisseryら、Semin.Oncol.22:3〜16(1995))。腫瘍を、腫瘍重量を見積もるために1週間に2度測定する(Bisseryら、Semin.Oncol.22:3〜16(1995);Kubotaら,J.Surg.Oncol.64:155〜121(1997))。この実験を、腫瘍が100〜300mgの重量を得るかまたは動物が死亡するまで進められる。
【0234】
終点アッセイは、あり得る死亡原因を決定するための胸腔および腹腔の肉眼的実験を含む。さらなるアッセイは、組織サンプルの組織学的分析および秤量のための腫瘍の切り出しを含む。
【0235】
(実施例IV:植物における脂肪酸飽和標的の発見)
植物油の質を、成分の脂肪酸側鎖の飽和程度により部分的に決定する。過剰な不飽和(1または2個の二重結合より多い)は、酸化および酸敗する傾向がより高い粗悪な油を生じる。油生産種子における生合成機構の構成要素は、不飽和の程度を決定する。産物が脂肪酸不飽和に関与する遺伝子の発現を阻害することによって、高品質の油を生じ得る。ジンクフィンガータンパク質を、脂肪酸飽和のレベルを設定する際に役割を果たす遺伝子を同定するための、示差的遺伝子発現実験のためのプローブとして使用する。第1、第2および第3のジンクフィンガータンパク質を使用して、新たに発見された遺伝子機能を確認する。最終的に、高品質の油を生成するトランスジェニック植物を作製する。
【0236】
(ランダム変異誘発を介する候補遺伝子の作製)
出発材料は、ダイズ(Glycine max)種子または植物のいずれかである。変異誘発を、化学的処理またはランダムDNA挿入のいずれかにより行う(Katavicら,Plant.Physiol.108:399〜409(1995);Martienssen,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.95:2021〜2026(1998);Hohn&Puchta,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.96:8321〜8323(1999);Facciottiら,Nature Biotech.17:593〜597(1999))。
【0237】
種子の化学的変異誘発を、0.3%(v/v)のエチルメタンスルホネート(EMS)中に16時間浸漬することにより行う(Haughn&Somerville,Mol.Gen.Genet.204:430〜434(1986))。M1種子を繁殖し、そして自家受粉させ、次いでM2種子を無作為に収集し、そして繁殖させて、引き続きもう1回の自家受粉してM3種子を形成する。これらの種子の脂肪酸組成および得られた植物を以下に記載のように分析する。
【0238】
あるいは、ランダムDNA挿入を、植物において開発された多くの系を使用する転位により行い得る(Martienssen,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.95:2021〜2026(1998))。
【0239】
(脂肪酸および脂質分析による潜在的な候補遺伝子の同定)
脂肪酸および脂質組成物を、Katavic(Plant Physiol.108:399〜409(1995))の方法に従って、約20〜30個のM3種子について決定する。成熟植物組織もまた、同様に分析する。種子を、脂肪酸飽和の程度に従ってカテゴリーに分類する。
【0240】
発現プロフィールを、実施例IIIに記載される方法の1つを使用することにより、不飽和の上昇した程度または減少した程度のいずれかを発現する種子について作成する(注記:ω−6−デサチュラーゼをコードするFAD2−1は、種子における低レベルのポリ不飽和長鎖脂肪酸である、過少発現遺伝子であることが予想される)。一旦、特定の遺伝子を、変更された表現型に関与すると同定すると、このcDNAを配列決定のために選択する。
【0241】
(第1ジンクフィンガータンパク質を用いる最初の標的確認)
上記のように、そして同時係属中の出願(USSN09/229037)に記載されるように、ジンクフィンガータンパク質を操作して、候補遺伝子のリストの個々のメンバーの各々を標的化する。候補遺伝子の配列を、独特かつ容易に標的化可能な9bpの配列についてスキャンする。このプロセスは、さらなる配列を得るためおよび上記で生成されたcDNA配列の精度を確実にするために、以前に配列決定された遺伝子に対する一致についてデータベースを検索することを含む。
【0242】
これらの設計されたジンクフィンガータンパク質は、上記のように機能的ドメインに融合され、候補遺伝子の発現の上方制御およびノックダウンの両方を可能にする。使用される機能的ドメインは、Kruppel関連ボックス(KRAB)抑制ドメインおよび単純ヘルペスウイルス(HSV−1)VP16活性化ドメインである。
【0243】
ZFP−機能ドメイン融合物をコードする遺伝子を植物発現ベクター(例えば、pCAMBIA1301)へクローン化する。このベクターは、以下の特性を有する:1)選択可能マーカー(例えば、ハイグロマイシン耐性をコードする遺伝子);2)Agrobacterium媒介形質転換のための左側または右側のT−DNA境界(border);3)所望のプロモーター(例えば、CaMV35S、ナピン(napin)プロモーターまたはファゼオリンプロモーター)の下流のジンクフィンガータンパク質遺伝子の挿入を可能にする都合のよい制限部位;4)Nosのような植物ポリアデニル化シグナル;5)GUSレポーター遺伝子。
【0244】
設計されたジンクフィンガータンパク質を、レポーター遺伝子の活性化または抑制をアッセイすることにより、所望の標的に対する活性について試験する。ジンクフィンガータンパク質およびレポーターを独立して発現する単一のプラスミドを使用する。標的配列を、GUS遺伝子の転写の開始部位付近のDNA中に挿入する。タバコカルスへのレポーター構築物の形質転換を、標準の同時培養手順により行う(Grayburnら,Biotechnol.10:675〜678(1992))。GUSアッセイを、蛍光アッセイを使用して行う(Jefferson,Plant Mol.Biol.Rep.5:387〜405(1987))。
【0245】
EMSAにより評価する場合には受容可能な親和性を示し、そしてレポーターアッセイにより評価する場合にはインビボ機能を示すジンクフィンガータンパク質を、未成熟種子の子葉に由来する増殖性の胚形成培養物の粒子ボンバードメントを用いてダイズ体細胞胚へ形質転換する(Liuら,Plant Cell Tiss.Org.Cult.46:33〜42(1996))。
【0246】
各ZFP保有プラスミドについての10〜20の別々の形質転換事象由来の組織および種子を単離し、脂肪酸および脂質プロフィールを評価する。上記のジンクフィンガータンパク質で形質転換した場合に変更された脂肪酸または脂質プロフィールを生じる候補遺伝子を、より特異的なジンクフィンガータンパク質を生成する第2の設計または第3の設計のために選択する。
【0247】
(不飽和経路における標的をさらに確認するための第2または第3のジンクフィンガータンパク質)
さらなる試験を使用して、1回目のこのリプレッサーおよびアクチベーター研究の間に同定される候補遺伝子を確認する。これらのジンクフィンガータンパク質を、候補遺伝子における異なりかつ別々の2つの標的部位を標的化するように設計する。さらに、ジンクフィンガータンパク質の特異性および親和性を、18bpを認識する6フィンガー分子を形成するために、2つの3フィンガージンクフィンガータンパク質ドメインを融合することにより改良する。
【0248】
3フィンガージンクフィンガータンパク質を本明細書中に記載のように、設計し、生成しそしてEMSAによりアッセイする。適切な配列(これらについて、ジンクフィンガータンパク質が容易にかつ信頼して設計され得る)を位置付けるために、候補遺伝子のさらなる配列決定が必要とされ得る。さらに、さらなる配列を、ヌクレオチド配列データベースに見出し得る。2つの9bpの配列が互いの5bp以内に存在し;従ってジンクフィンガータンパク質対の連結を可能にするように、標的配列を選択する。受容可能な親和性および特異性で結合する3ジンクフィンガータンパク質の対を同定した後、ドメインをPCRによって連結し、6フィンガー分子のフィンガー4〜6を構成するドメインを増幅する。非組織的かつ可撓性であると推定されるペプチド配列をコードする短いDNA配列を、増幅の間に、このドメインのN末端に付加する。
【0249】
6フィンガージンクフィンガータンパク質を本明細書中に記載のように抑制ドメインまたは活性化ドメインのいずれかに融合し、そして初めにタバコカルスレポーター研究において、次いでダイズ植物においてアッセイする。
【0250】
上記の第2のジンクフィンガータンパク質により標的化する場合、変更された脂肪酸または脂質プロフィールを生じる候補遺伝子を、第3のジンクフィンガータンパク質の設計のために選択する。第2のジンクフィンガータンパク質で標的化される遺伝子とは異なる遺伝子の第2の領域を選択する。再度、本明細書中に記載のように、18bpを結合するように設計されたジンクフィンガータンパクを設計し、そして試験する。これらのジンクフィンガータンパク質をダイズに導入し、そして生じた脂肪酸および脂質プロフィールにおける変更を、再度試験する。
【図面の簡単な説明】
【0251】
【図1】図1は、遺伝子発現を調節するジンクフィンガータンパク質を使用する標的確認の略図を示す。
【図2】図2は、ジンクフィンガータンパク質発現構築物を示す。
【図3】図3は、遺伝子発現のジンクフィンガータンパク質の調節のためのルシフェラーゼレポーター構築物を示す。
【図4】図4は、ルシフェラーゼレポーター遺伝子活性化に対する、ジンクフィンガータンパク質の効果を示す。
【図5】図5は、ジンクフィンガータンパク質による、ヒトVEGFネイティブレポーターの活性化を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
候補遺伝子の生物学的機能を同定する方法であって、該方法は、以下:
(i)第1の候補遺伝子を選択する工程;
(ii)該第1の候補遺伝子の第1の標的部位に結合する第1のジンクフィンガータンパク質、および第2の遺伝子の標的部位に結合する第2のジンクフィンガータンパク質を提供する工程;
(iii)該第1のジンクフィンガータンパク質が該第1の候補遺伝子と接触する条件下で第1の細胞を培養し、そして該第2のジンクフィンガータンパク質が該第2の候補遺伝子と接触する条件下で第2の細胞を培養する工程であって、ここで、該第1および第2のジンクフィンガータンパク質が、該第1および該第2の候補遺伝子の発現を調節する、工程;ならびに
(vi)選択された表現型についてアッセイする工程であって、これにより該第1の候補遺伝子が該選択された表現型と関連するか否かを同定する、工程、を包含する、方法。
【請求項2】
前記第1の候補遺伝子の第2の標的部位に結合する第3のジンクフィンガータンパク質を提供する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数の候補遺伝子を選択する工程、および各候補遺伝子の標的部位に結合する複数のジンクフィンガータンパク質を提供する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の遺伝子が、制御遺伝子である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の候補遺伝子が、少なくとも約200ヌクレオチド長のESTによって部分的にコードされる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の候補遺伝子および前記第2の遺伝子の両方が、前記選択された表現型と関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1および第2の細胞が同一の細胞であり、ここで該細胞が、前記第1および第2の候補遺伝子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1および第2の候補遺伝子が、内因性遺伝子である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記候補遺伝子の発現が、少なくとも約50%だけ抑制される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記候補遺伝子の発現が、少なくとも約150%だけ活性化される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ジンクフィンガータンパク質が、調節ドメインを含む融合タンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ジンクフィンガータンパク質の発現が、外因性薬剤の投与によって誘導される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ジンクフィンガータンパク質が、少なくとも2つの調節ドメインを含む融合タンパク質である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞が、動物細胞、植物細胞、細菌細胞、原生動物細胞、または真菌細胞からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞が、哺乳動物細胞である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞が、ヒト細胞である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記発現の調節が、遺伝子発現の抑制を妨げる遺伝子発現の活性化である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記発現の調節が、遺伝子活性化を妨げる遺伝子発現の抑制である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記調節ドメインが、転写調節レプレッサ、メチルトランスフェラーゼ、転写調節活性化剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、およびヒストンデアセチラーゼからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法であって、前記第1および第2のジンクフィンガータンパク質が、プロモーターに作動可能に連結されたジンクフィンガータンパク質核酸を含む発現ベクターによってコードされ、該方法が、該発現ベクターを前記細胞に投与する第1の工程をさらに包含する、方法。
【請求項21】
前記ジンクフィンタータンパク質の発現が、低分子の制御下にある、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、前記第1のジンクフィンガータンパク質の発現、および前記第2のジンクフィンガータンパク質の発現が、異なる低分子の制御下にあり、該第1および第2のジンクフィンガータンパク質の両方は、調節ドメインを含む融合タンパク質であり、そして該第1および第2のジンクフィンガータンパク質が、同じ細胞において発現される、方法。
【請求項23】
前記第1および第2のジンクフィンガータンパク質の両方が、遺伝子発現を抑制する調節ドメインを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記発現ベクターが、ウイルスベクターである、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記発現ベクターが、レトロウイルス発現ベクター、アデノウイルス発現ベクター、またはAAV発現ベクターである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ジンクフィンガータンパク質が、誘導性プロモーターに作動可能に連結された核酸によってコードされる、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記細胞が、約1.5×106個未満の各ジンクフィンガータンパク質のコピーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記標的部位が、前記候補遺伝子の転写開始部位の上流にある、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記標的部位が、前記候補遺伝子の転写開始部位に隣接している、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記標的部位が、前記候補遺伝子の転写開始部位の下流のRNAポリメラーゼ停止部位に隣接している、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
候補遺伝子の生物学的機能を同定する方法であって、該方法は、以下:
(i)複数の候補遺伝子を同定する工程;
(ii)第1の候補遺伝子の第1の標的部位に結合する第1のジンクフィンガータンパク質を提供する工程;
(iii)該第1のジンクフィンガータンパク質が該第1の候補遺伝子と接触する条件下で第1の細胞を培養する工程であって、ここで、該第1のジンクフィンガータンパク質が、該第1の候補遺伝子の発現を調節する、工程;
(iv)該候補遺伝子の発現パターンを決定し、そして該第1の候補遺伝子が選択された表現型と関連するか否かを決定する、工程;ならびに
(v)各候補遺伝子について、工程(ii)〜(iv)を繰り返す工程、を包含する、方法。
【請求項32】
前記第1の候補遺伝子の第2の標的部位に結合する第2のジンクフィンガータンパク質を提供する工程をさらに包含する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記候補遺伝子の少なくとも1つが、少なくとも約200ヌクレオチド長のESTである、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
少なくとも2つの候補遺伝子が、選択された表現型を引き起こすために必要とされる、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記候補遺伝子が、内因性遺伝子である、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記候補遺伝子の発現が、少なくとも約50%だけ抑制される、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記候補遺伝子の発現が、少なくとも約150%まで活性化される、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
前記ジンクフィンガータンパク質が、調節ドメインを含む融合タンパク質である、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
前記調節ドメインが、低分子の制御下にある、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記ジンクフィンガータンパク質が、少なくとも2つの調節ドメインを含む融合タンパク質である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記細胞が、動物細胞、植物細胞、細菌細胞、原生動物細胞、または真菌細胞からなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項42】
前記細胞が、哺乳動物細胞である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記細胞が、ヒト細胞である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記発現の調節が、遺伝子発現の抑制を妨げる遺伝子発現の活性化である、請求項31に記載の方法。
【請求項45】
前記発現の調節が、遺伝子活性化を妨げる遺伝子発現の抑制である、請求項31に記載の方法。
【請求項46】
前記調節ドメインが、転写調節レプレッサ、メチルトランスフェラーゼ、転写調節活性化剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、およびヒストンデアセチラーゼからなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項47】
請求項31に記載の方法であって、前記ジンクフィンガータンパク質が、プロモーターに作動可能に連結されたジンクフィンガータンパク質核酸を含む発現ベクターによってコードされ、該方法が、該発現ベクターを前記細胞に投与する第1の工程をさらに包含する、方法。
【請求項48】
前記ジンクフィンタータンパク質の発現が、低分子の制御下にある、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記発現ベクターが、ウイルスベクターである、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記発現ベクターが、レトロウイルス発現ベクター、アデノウイルス発現ベクター、またはAAV発現ベクターである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記ジンクフィンガータンパク質が、誘導性プロモーターに作動可能に連結された核酸によってコードされる、請求項47に記載の方法。
【請求項52】
前記細胞が、約1.5×106個未満の前記ジンクフィンガータンパク質を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項53】
前記標的部位が、前記候補遺伝子の転写開始部位の上流にある、請求項31に記載の方法。
【請求項54】
前記標的部位が、前記候補遺伝子の転写開始部位に隣接している、請求項31に記載の方法。
【請求項55】
前記標的部位が、前記候補遺伝子の転写開始部位の下流のRNAポリメラーゼ停止部位に隣接している、請求項31に記載の方法。
【請求項56】
候補遺伝子の生物学的機能を同定する方法であって、該方法は、以下: (i)第1の候補遺伝子を選択する工程;
(ii)該第1の候補遺伝子の第1の標的部位に結合する第1のジンクフィンガー、および該第1の候補遺伝子の第2の標的部位に結合する第2のジンクフィンガーを提供する工程;
(iii)該第1のジンクフィンガータンパク質が該第1の候補遺伝子と接触する条件下で第1の細胞を培養し、該第2のジンクフィンガータンパク質が該第1の候補遺伝子と接触する条件下で第2の細胞を培養する工程であって、ここで、該第1および第2のジンクフィンガータンパク質が、該第1の候補遺伝子の発現を調節する、工程;ならびに (iv)選択された表現型についてアッセイする工程であって、これにより該第1の候補遺伝子が該選択された表現型と関連するか否かを同定する工程、を包含する、方法。
【請求項57】
前記第2の候補遺伝子の標的部位に結合する第3のジンクフィンガータンパク質を提供する工程をさらに包含する、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
複数の候補遺伝子を選択する工程、および各候補遺伝子の標的部位に結合する複数のジンクフィンガータンパク質を提供する工程をさらに包含する、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記第2の候補遺伝子が、制御遺伝子である、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記第1の候補遺伝子が、少なくとも200ヌクレオチド長のESTである、請求項56に記載の方法。
【請求項61】
前記第1の候補遺伝子および前記第2の候補遺伝子の両方が、前記選択された表現型を引き起こすために必要とされる、請求項57に記載の方法。
【請求項62】
前記第1および第2の細胞が同一の細胞である、請求項56に記載の方法。
【請求項63】
前記第1の候補遺伝子が、内因性遺伝子である、請求項56に記載の方法。
【請求項64】
前記第1の候補遺伝子の発現が、少なくとも約50%だけ抑制される、請求項56に記載の方法。
【請求項65】
前記第1の候補遺伝子の発現が、少なくとも約150%まで活性化される、請求項56に記載の方法。
【請求項66】
前記第1のジンクフィンガータンパク質が、調節ドメインを含む融合タンパク質である、請求項56に記載の方法。
【請求項67】
前記調節ドメインが、低分子の制御下にある、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記ジンクフィンガータンパク質が、少なくとも2つの調節ドメインを含む融合タンパク質である、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記細胞が、動物細胞、植物細胞、細菌細胞、原生動物細胞、または真菌細胞からなる群から選択される、請求項56に記載の方法。
【請求項70】
前記細胞が、哺乳動物細胞である、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記細胞が、ヒト細胞である、請求項71に記載の方法。
【請求項72】
前記発現の調節が、遺伝子発現の抑制を妨げる遺伝子発現の活性化である、請求項56に記載の方法。
【請求項73】
前記発現の調節が、遺伝子活性化を妨げる遺伝子発現の抑制である、請求項56に記載の方法。
【請求項74】
前記調節ドメインが、転写調節レプレッサ、メチルトランスフェラーゼ、転写調節活性化剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、およびヒストンデアセチラーゼからなる群から選択される、請求項66に記載の方法。
【請求項75】
請求項56に記載の方法であって、前記第1および第2のジンクフィンガータンパク質が、プロモーターに作動可能に連結されたジンクフィンガータンパク質核酸を含む発現ベクターによってコードされ、該方法が、該発現ベクターを前記細胞に投与する第1の工程をさらに包含する、方法。
【請求項76】
前記ジンクフィンガータンパク質の発現が、低分子の制御下にある、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
請求項76に記載の方法であって、前記第1のジンクフィンガータンパク質の発現、および前記第2のジンクフィンガータンパク質の発現が、異なる低分子の制御下にあり、ここで、該第1および第2のジンクフィンガータンパク質の両方が、調節ドメインを含む融合タンパク質であり、そしてここで、該第1および第2のジンクフィンガータンパク質が、同一の細胞において発現される、方法。
【請求項78】
請求項77に記載の方法であって、前記第1のジンクフィンガータンパク質が、遺伝子発現を抑制する調節ドメインを含み、そして前記第2のジンクフィンガータンパク質が、遺伝子発現を活性化する調節ドメインを含む、方法。
【請求項79】
前記発現ベクターが、ウイルスベクターである、請求項75に記載の方法。
【請求項80】
前記発現ベクターが、レトロウイルス発現ベクター、アデノウイルス発現ベクター、またはAAV発現ベクターである、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記ジンクフィンガータンパク質が、誘導性プロモーターに作動可能に連結された核酸によってコードされる、請求項75に記載の方法。
【請求項82】
前記細胞が、約1.5×106個未満の各ジンクフィンガータンパク質のコピーを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項83】
前記第1または第2の標的部位が、前記第1の候補遺伝子の転写開始部位の上流にある、請求項56に記載の方法。
【請求項84】
前記第1または第2の標的部位が、前記第1の候補遺伝子の転写開始部位に隣接している、請求項56に記載の方法。
【請求項85】
前記第1または第2の標的部位が、前記第1の候補遺伝子の転写開始部位の下流のRNAポリメラーゼ停止部位に隣接している、請求項56に記載の方法。
【請求項86】
候補遺伝子の生物学的機能を同定する方法であって、該方法は、以下:
(i)第1の候補遺伝子を選択する工程;
(ii)該第1の候補遺伝子の第1の標的部位に結合する第1のジンクフィンガータンパク質を提供する工程;
(iii)該第1の候補ジンクフィンガータンパク質が該第1の候補遺伝子と接触する条件下で第1の細胞を培養する工程であって、ここで、該第1のジンクフィンガータンパク質は、該第1の候補遺伝子の発現を調節する、工程;ならびに
(iv)選択された表現型についてアッセイする工程であって、それにより該第1の候補遺伝子が該選択された表現型と関連するか否かを同定する、工程、を包含する、方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−244818(P2011−244818A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−127433(P2011−127433)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【分割の表示】特願2001−523752(P2001−523752)の分割
【原出願日】平成12年9月12日(2000.9.12)
【出願人】(508241200)サンガモ バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド (28)
【Fターム(参考)】