説明

スイッチおよびそれを備えたリレー装置

【課題】オフ時のアイソレーションを改善することができるスイッチおよびそれを備えたリレー装置を提供する。
【解決手段】基板10の上面100には、接続するストリップ導体からなり入力端子13−出力端子14間に切れ目113によって分断された信号伝送路を形成する線路導体11と、線路導体11とは所定の間隔を空けて配置された接地パッドとが形成されている。可動子21は、線路導体11における切れ目113の両側に対して接離する主接点31と、線路導体11および接地パッドに対して接離する補助接点32とを有している。可動子21は、主接点31を線路導体11に接触させ、且つ補助接点32を線路導体11から離間させるオン位置と、主接点31を線路導体11から離間させ、且つ補助接点32を線路導体11および接地パッドに接触させるオフ位置との間で移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として高周波信号のオン・オフに用いられるスイッチおよびそれを備えたリレー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種のスイッチとして、たとえばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて半導体製造プロセスにより作製される小型の機械式スイッチからなるMEMSスイッチが知られている。MEMSスイッチは、携帯電話等の技術分野において、高周波の送受信信号の接続の切り換えなどに用いられている。
【0003】
この種のスイッチとしては、基板と、基板に少なくとも一箇所が支持された駆動アームとを備えたスイッチが提案されている(たとえば特許文献1参照)。特許文献1に記載のスイッチは、駆動アームを駆動することによって、駆動アームの先端に設けられている接続電極をもって、基板上の隣り合う端子電極間の電気的接続を制御する。
【0004】
また、他の構成として、固定基板上に、その端部が固定接点である一対の信号線が端部を対向させるように配置されており、固定基板に支持された可動基板に可動接点が配置されたマイクロリレーが提案されている(たとえば特許文献2参照)。特許文献2に記載のマイクロリレーでは、可動接点は、各固定接点と対向し、両固定接点と接触することにより、一対の信号線を電気的に接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−302711号公報
【特許文献2】特開2008−204768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述の構成では、オフ時に、一対の信号線(または端子電極)は物理的に分離しているものの、高周波の信号であれば信号の一部を通過させてしまう可能性があり、十分なアイソレーション(絶縁性能)を確保できない。
【0007】
本発明は上記事由に鑑みて為されており、オフ時のアイソレーションを改善することができるスイッチおよびそれを備えたリレー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のスイッチは、入力端子および出力端子が設けられた基板と、前記基板に対して移動可能に支持されている可動子とを備え、前記基板の一表面には、ストリップ導体からなり前記入力端子と前記出力端子との間に切れ目によって分断された信号伝送路を形成する線路導体と、前記線路導体とは所定の間隔を空けて配置された接地パッドとが形成されており、前記可動子のうち前記基板の前記一表面に対向する面には、前記線路導体における前記切れ目の両側に対して接離する主接点と、前記線路導体および前記接地パッドに対して接離する補助接点とが設けられており、前記可動子は、前記主接点を前記線路導体における前記切れ目の両側に接触させ、且つ前記補助接点を前記線路導体および前記接地パッドの両方から離間させるオン位置と、前記主接点を前記線路導体における前記切れ目の両側から離間させ、且つ前記補助接点を前記線路導体および前記接地パッドの両方に接触させるオフ位置との間で移動することを特徴とする。
【0009】
このスイッチにおいて、前記可動子は、板状であって前記基板の前記一表面に沿って配置され、前記線路導体に沿った一方向の中央部を支点として回転することにより、前記一方向の各端部を前記基板に接触させる2つの位置の間で移動可能な接点保持部を有しており、前記接点保持部の前記2つの位置の各々が前記オン位置と前記オフ位置とのいずれかになるように、前記主接点と前記補助接点とは、前記接点保持部の前記一方向の両端部に分かれて設けられていることが望ましい。
【0010】
このスイッチにおいて、前記可動子は、板状であって前記基板の前記一表面に沿って配置され、前記一方向の中央部を支点として回転することにより、前記一方向の各端部を前記基板に接触させる2つの位置の間で移動可能な主板部をさらに有しており、前記主板部と前記接点保持部とは前記一方向の一端部同士が連結されており、前記接点保持部の支点は、前記一方向において前記主板部の支点と前記一端部との間に位置することがより望ましい。
【0011】
このスイッチにおいて、前記基板の前記一表面とは反対側の面に接地層が形成されており、前記線路導体は、前記一表面のうち前記基板の厚み方向において前記接地層と重なる領域を通るように形成されており、前記接地パッドは、前記基板を厚み方向に貫通する貫通導体を介して前記接地層と電気的に接続されていることがより望ましい。
【0012】
このスイッチにおいて、前記基板の前記一表面には、前記線路導体の短手方向の両側に前記線路導体に沿って配置された一対の接地導体が形成されており、前記接地導体の少なくとも一部は前記接地パッドを構成することがより望ましい。
【0013】
本発明のリレー装置は、上記いずれかのスイッチと、前記可動子を駆動する駆動装置とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、オフ時に補助接点が線路導体および接地パッドの両方に接触することにより線路導体と接地パッドとを短絡するので、オフ時のアイソレーションを改善することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1に係るスイッチの概略構成を示す断面図である。
【図2】実施形態1に係るスイッチの構成を示し、(a)は基板および可動子ブロックの斜視図、(b)は基板の斜視図である。
【図3】実施形態1に係るスイッチの動作を示し、(a)はオン時、(b)はオフ時の説明図である。
【図4】実施形態1に係るスイッチの要部を示す斜視図である。
【図5】実施形態1に係るスイッチの動作を示す説明図である。
【図6】実施形態2に係るスイッチの基板を示す斜視図である。
【図7】実施形態2に係るスイッチの要部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態1)
本実施形態のスイッチ1は、図2(a)に示すように、矩形板状の基板10と、基板10に対して移動可能に支持された可動子21を有する可動子ブロック20とを備えている。このスイッチ1は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて半導体製造プロセスにより作製される小型の機械式スイッチからなるMEMSスイッチであって、主として高周波信号のオン・オフに用いられる。ここでは、可動子ブロック20が、単結晶シリコンのシリコン基板からなる半導体基板を加工することによって形成されている。
【0017】
可動子ブロック20は、外周形状が略同一である板状の基板10とカバー40との間に挟み込まれることにより、基板10およびカバー40と共に直方体状のケースを構成する。基板10およびカバー40は耐熱ガラスやセラミックのような絶縁材料を用いて形成されている。可動子ブロック20、基板10、カバー40の外周形状は、いずれも一方向に長い長方形状である。基板10およびカバー40の各々は、可動子ブロック20の一部を構成する後述のフレーム22に対して接合される。
【0018】
以下では、基板10の長手方向を「X方向」、短手方向を「Y方向」、厚み方向を「Z方向」として説明するが、スイッチ1の使用時の向きを限定する趣旨ではない。
【0019】
基板10は、図2(b)に示すように、厚み方向における可動子ブロック20側の一表面(以下、「上面」という)100に、第1および第2の線路導体111,112、並びに第1および第2の接地パッド121,122が形成されている。基板10の厚み方向における他面(以下、「下面」という)には、第1および第2の入力端子131,132、並びに第1および第2の出力端子141,142が形成されている。さらに、基板10の下面には、第1および第2の接地層151,152が形成されている。各線路導体111,112、各接地パッド121,122、各入力端子131,132、各出力端子141,142、各接地層151,152はいずれも導電性材料からなる。なお、図2(b)では基板10以外の図示を省略している。
【0020】
ここで、本実施形態のスイッチ1は、基板10の上面100の中心を通るZ方向に沿った回転軸回りで2回回転対称の回転対称性を持つ。そのため、Y方向の中心線を挟んで反対側に位置する線路導体111、接地パッド121、入力端子131、出力端子141、接地層151と、線路導体112、接地パッド122、入力端子132、出力端子142、接地層152とは構成および機能が共通する。そこで、以下、両者を特に区別しないときには、線路導体111,112を「線路導体11」、接地パッド121,122を「接地パッド12」、入力端子131,132を「入力端子13」、出力端子141,142を「出力端子14」、接地層151,152を「接地層15」とし、Y方向の中心線の片側について説明する。
【0021】
第1の入力端子131および第1の出力端子141は、基板10におけるY方向の一端縁(図2(b)の下端縁)寄りの位置に配置されている。第2の入力端子132および第2の出力端子142は、基板10におけるY方向の他端縁(図2(b)の上端縁)寄りの位置に配置されている。入力端子13と出力端子14とはX方向に並ぶように、第1の入力端子131がX方向の一端部(図2(b)の右端部)、第1の出力端子141がX方向の他端部(図2(b)の左端部)に配置されている。また、第2の入力端子132はX方向の他端部、第2の出力端子142はX方向の一端部に配置されている。
【0022】
線路導体11は、入力端子13および出力端子14に対応する位置において、X方向に延長された帯状に形成されている。線路導体11は、基板10を厚み方向に貫通する貫通導体16を介して長手方向の両端部が入力端子13、出力端子14に接続されたストリップ導体からなり、入力端子13−出力端子14間に一部が切れ目113にて分断された信号伝送路を形成する。つまり、線路導体11は、切れ目113を含んでおり、切れ目113の両側間が非導通の状態では、この切れ目113にて入力端子13−出力端子14間の信号伝送路が分断される。貫通導体16は、内側に導電性材料が充填されたスルーホールからなる。
【0023】
ここで、切れ目113は、線路導体11のうち入力端子14寄りの位置に形成されている。つまり、第1の線路導体111においては、切れ目113はX方向の一端部(図2(b)の右端部)寄りの位置に配置され、第2の線路導体112においては、切れ目113はX方向の他端部(図2(b)の左端部)寄りの位置に配置されている。
【0024】
接地層15は、線路導体11に対応する位置に形成されている。具体的には、第1の接地層151は、基板10の下面におけるY方向の一端縁から所定幅の領域のうち、第1の入力端子131および第1の出力端子141を除く略全域に形成されている。第2の接地層152は、基板10の下面におけるY方向の他端縁から所定幅の領域のうち、入力端子132および出力端子142を除く略全域に形成されている。これにより、線路導体11は、上面100のうち基板10の厚み方向において接地層15と重なる領域を通ることになる。なお、接地層15は、入力端子13、出力端子14とは電気的に絶縁されている。
【0025】
ここにおいて、スイッチ1は、入力端子13、出力端子14、接地層15が外部回路(図示せず)に対して電気的に接続された状態で使用される。具体的には、入力端子13は外部回路の信号出力端に接続され、出力端子14は外部回路の信号入力端に接続され、接地層15は回路グランド(GND)に接続される。これにより、各線路導体111,112は、第1の入力端子131−第1の出力端子141間、および第2の入力端子132−第2の出力端子142間の各々に、マイクロストリップライン(MSL:Micro Strip Line)構造の信号伝送路を形成する。
【0026】
第1の接地パッド121は、第1の線路導体111の短手方向の側方(図2(b)の上方)に、線路導体111とは所定の間隔を空けて隣接するように配置されている。第2の接地パッド122は、第2の線路導体112の短手方向の側方(図2(b)の下方)に、線路導体112とは所定の間隔を空けて隣接するように配置されている。接地パッド12は略正方形状に形成されており、基板10を厚み方向に貫通する貫通導体16を介して接地層15に接続される。これら接地パッド12は、X方向においては基板10の略中央に位置する。ただし、後述する接点保持部231,232が支持ばね251,252と干渉しないように、接地パッド12は、基板10のX方向の中心線よりもやや入力端子14寄りの位置に配置されている。
【0027】
可動子ブロック20は、図2(a)に示すように、矩形枠状のフレーム22と、フレーム22の内側に配置された板状の可動子21とを有している。フレーム22は、厚み方向の一面(以下、「下面」という)に基板10が接合され、他面(以下、「上面」という)にカバー40が接合されることにより、基板10およびカバー40と共にケースを構成する。
【0028】
可動子21は、矩形板状の主板部210と、主板部210のY方向の両側に位置する第1および第2の接点保持部231,232と、各接点保持部231,232を主板部210に連結する連結片241,242とを有している。可動子21は、主板部210のY方向の両端面におけるX方向の中央部が支持ばね251,252を介してフレーム22に連結されることにより、フレーム22に支持されている。支持ばね251,252はねじれ変形可能であって、主板部210は、支持ばね251,252を支点として、支持ばね251,252をねじれ変形させながらX方向の中心線回りで回転する。そのため、主板部210は、支持ばね251,252を支点として、X方向の一端部を基板10に接触させる第1の位置と、X方向の他端部を基板10に接触させる第2の位置との間でシーソー動作する。言い換えれば、主板部210は、シーソー動作によりX方向の両端部を基板10に対して交互に接触させる。なお、主板部210のX方向の両端部は、基板10に対して完全には接触しなくてもよく、シーソー動作に伴い基板10に対して接近したり離れたりする、つまり基板10との距離が変化するだけであってもよい。
【0029】
ここで、Y方向の中心線を挟んで反対側に位置する第1の接点保持部231と第2の接点保持部232とは構成および機能が共通し、同様に、連結片241と連結片242とは構成および機能が共通する。そこで、以下、両者を特に区別しないときには、接点保持部231,232を「接点保持部23」とし、連結片241,242を「連結片24」として、Y方向の中心線の片側について説明する。
【0030】
接点保持部23は、板状であって基板10の上面100に沿って配置されている。接点保持部23は、X方向の長さ寸法が主板部210に比べて小さく設定されており、本実施形態では、主板部210の半分よりもやや小さい長さ寸法に設定されている。第1の接点保持部231は、Y方向における主板部210の一方(図2(a)の下方)であって、X方向における支持ばね251の一側方(図2(a)の右方)に配置されている。第2の接点保持部232は、Y方向における主板部210の他方(図2(a)の上方)であって、X方向における支持ばね252の他側方(図2(a)の左方)に配置されている。
【0031】
主板部210と接点保持部23とは、X方向の一端部同士が連結片24によって連結されている。つまり、第1の接点保持部231は、図2(a)における右端部が連結片241にて主板部210と連結され、第2の接点保持部232は、図2(a)における左端部が連結片242にて主板部210と連結されている。
【0032】
また、接点保持部23は、上面におけるX方向の中央部に支点突起26を有しており、この支点突起26の先端部をカバー40に当接させることにより、支点突起26を支点として回転する。そのため、接点保持部23は、支点突起26を支点として、X方向の基端部(主板部210と連結された端部)271を基板10に接触させるオン位置と、X方向の先端部(基端部271と反対側の端部)272を基板10に接触させるオフ位置との間でシーソー動作する。言い換えれば、接点保持部23は、シーソー動作によりX方向の両端部を基板10に対して交互に接触させる。
【0033】
ここにおいて、接点保持部23の基端部271は、連結片24によって主板部210に連結されているので、主板部210がシーソー動作すると、主板部210のX方向の両端部の移動に連動して接点保持部23もシーソー動作する。接点保持部23は、X方向の長さ寸法が主板部210に比べて小さいので、接点保持部23の支点(支点突起26)は、X方向において主板部210の支点(支持ばね251,252)と基端部271との間に位置する。
【0034】
すなわち、主板部210が第1の接点保持部231に連結されている一端部を基板10に接触させる第1の位置にあれば、第1の接点保持部231はオン位置に位置し、第2の接点部232はオフ位置に位置する。一方、主板部210が第2の接点保持部232に連結されている他端部を基板10に接触させる第2の位置にあれば、第2の接点保持部232はオン位置に位置し、第1の接点保持部231はオフ位置に位置する。このように、第1の接点保持部231と第2の接点保持部232とは、主板部210のシーソー動作に連動して、交互にオン位置とオフ位置とが入れ替わることになる。
【0035】
ところで、可動子21は、図1に示すように、接点保持部231,232のうち基板10の上面100と対向する面に、導電性材料からなり可動子21の移動に伴って線路導体11に対して接離する主接点311,312と補助接点321,322とを有している。なお、図1は図2(a)のA−A断面図であって、図1ではフレーム22の図示を省略している。
【0036】
ここで、Y方向の中心線を挟んで反対側に位置する第1の主接点311と第2の主接点312とは構成および機能が共通し、同様に、第1の補助接点321と第2の補助接点322とは構成および機能が共通する。そこで、以下、両者を特に区別しないときには、主接点311,312を「主接点31」とし、補助接点321,322を「補助接点32」として、Y方向の中心線の片側について説明する。
【0037】
主接点31は、線路導体11における切れ目113の両側に対して接離し、補助接点32は、線路導体11および接地パッド12に対して接離する。第1の主接点311は第1の接点保持部231の基端部271に設けられ、第1の補助接点321は第1の接点保持部231の先端部272に設けられている。同様に、第2の主接点312は第2の接点保持部232の基端部271に設けられ、第2の補助接点322は第2の接点保持部232の先端部272に設けられている。
【0038】
より詳しくは、第1の主接点311は第1の線路導体111上の切れ目113とZ方向に重なる位置に配置され、第1の補助接点321は第1の線路導体111の一部および第1の接地パッド121の一部の両方とZ方向に重なる位置に配置されている。同様に、第2の主接点312は第2の線路導体112上の切れ目113とZ方向に重なる位置に配置され、第2の補助接点322は第2の線路導体112の一部および第2の接地パッド122の一部の両方とZ方向に重なる位置に配置されている。
【0039】
上述したような構成により、主接点31と補助接点32とは、接点保持部23のシーソー動作に伴って、交互に線路導体11に接触する。つまり、接点保持部23がオン位置にあれば、主接点31が線路導体11における切れ目113の両側に接触し、且つ補助接点32が線路導体11および接地パッド12の両方から離れることになる。一方、接点保持部23がオフ位置にあれば、主接点31が線路導体11における切れ目113の両側から離れ、且つ補助接点32が線路導体11および接地パッド12の両方に接触することになる。
【0040】
図1の例では、主板部210が第1の位置にあるため、第1の接点保持部231がオン位置、第2の接点保持部232がオフ位置にある。したがって、図1の状態では、第1の主接点311が第1の線路導体111における切れ目113の両側に接触し、且つ第1の補助接点321が第1の線路導体111および第1の接地パッド121の両方から離れることになる。一方で、第2の主接点312は第2の線路導体112における切れ目113の両側から離れ、且つ第2の補助接点322が第2の線路導体112および第2の接地パッド122の両方に接触することになる。なお、接点保持部23は、基板10に平行な平衡位置にある状態で、主接点31および補助接点32と線路導体11との間に所定のギャップが確保されるように、厚み寸法が設定される。
【0041】
ここにおいて、図3(a)に示すように、主接点31が線路導体11における切れ目113の両側に接触し、且つ補助接点32が線路導体11および接地パッド12の両方から離れた状態では、入力端子13−出力端子14間に信号が通過する。要するに、図3(a)の状態では、線路導体11における切れ目113の両側間が主接点31を介して導通するので、線路導体11は、主接点31と共に入力端子13−出力端子14間に信号伝送路を形成する。このとき、線路導体11は、接地パッド12とは電気的に絶縁されており回路グランドから切り離されているので、入力端子13−出力端子14間に信号を通過させる。
【0042】
一方、図3(b)に示すように、主接点31が線路導体11における切れ目113の両側から離れ、且つ補助接点32が線路導体11および接地パッド12の両方に接触した状態では、入力端子13−出力端子14間を通過する信号は遮断される。要するに、図3(b)の状態では、線路導体11における切れ目113の両側間が非導通であるので、線路導体11は、この切れ目113にて入力端子13−出力端子14間の信号伝送路が分断される。さらに、このとき、線路導体11と接地パッド12とは補助接点32を介して電気的に短絡し、線路導体11は回路グランドに短絡されるので、入力端子13−出力端子14間において線路導体11を通る信号は遮断されることになる。
【0043】
すなわち、接点保持部23がシーソー動作し、主接点31、補助接点32が、線路導体11、接地パッド12に対して接離することにより、入力端子13−出力端子14間のオン・オフ状態は切り替わる。要するに、接点保持部23がオン位置にあるとき、信号は入力端子13−出力端子14間を通過することができ、接点保持部23がオフ位置にあるとき、入力端子13−出力端子14間において信号は遮断される。
【0044】
また、本実施形態では、接点保持部23は、図4に示すように、基端部271において主接点31が設けられた部位と連結片24との間に、他よりも薄肉に形成され可撓性が付与された接圧ばね273を有している。さらに、接点保持部23は、基端部271と先端部272とをつなぐ部分も、他よりも薄肉に形成され可撓性が付与された接圧ばね274として機能する。これにより、接点保持部23がオン位置に位置し主接点31が線路導体11に接触した状態では、接圧ばね273が撓むことによって、主接点31の接圧が確保される。接点保持部23がオフ位置に位置し補助接点32が線路導体11および接地パッド12に接触した状態では、接圧ばね274が撓むことによって、補助接点32の接圧が確保される。
【0045】
さらに、本実施形態のスイッチ1は、可動子21を上述したようにシーソー動作させる駆動装置(図示せず)と共に、リレー装置を構成する。駆動装置は、主板部210に取り付けられる磁性体材料からなるアマチュア(図示せず)と、基板10に設けられる電磁石装置(図示せず)とを有し、電磁石装置でアマチュアを吸引することによって主板部210を傾ける。ただし、駆動装置は、電磁駆動型に限らず、たとえば対向する電極間に駆動電圧を印加したときに生じる静電引力により主板部210を駆動する静電駆動型であってもよい。
【0046】
なお、可動子21のシーソー動作が妨げられないように、可動子21は、フレーム22よりも薄く、且つ基板10との間に十分なギャップを確保できる厚み寸法に設定されている。また、カバー40は、可動子21との対向面に可動子21との干渉を回避するための逃し凹所(図示せず)が形成されている。
【0047】
以上説明した構成のスイッチ1によれば、入力端子13−出力端子14間は、線路導体11に対して、主接点31および補助接点32が接離することによりオン・オフ状態が切り替わる。主接点31は、線路導体11における切れ目113の両側に対して接離し、補助接点32は、線路導体11および接地パッド12に対して接離する。このスイッチ1は、オフ時に、主接点31が線路導体11から離れるだけでなく、補助接点32が線路導体11および接地パッド12に接触して線路導体11と接地パッド12とを短絡する。
【0048】
したがって、本実施形態のスイッチ1では、オフ時に、図5に実線で示すように線路導体11が分断されるだけでなく、線路導体11が回路グランドに短絡され、入力端子13−出力端子14間を通る信号を確実に遮断することができる。すなわち、スイッチ1は、オフ時に入力端子13から高周波の信号が入力され、この信号の一部が線路導体11の切れ目113を通過することがあっても、通過した信号を回路グランドに逃すことができる。結果的に、補助接点32のない構成に比べて、オフ時のアイソレーション(絶縁性能)を改善することができるという利点がある。
【0049】
また、スイッチ1のオン時には、補助接点32は、線路導体11および接地パッド12から離れるので、図5に破線で示すように線路導体11は回路グランドから切り離され、入力端子13−出力端子14間を通る信号が遮られることはない。
【0050】
しかも、本実施形態では、主接点31と補助接点32とは、X方向の中央部を支点にシーソー動作する接点保持部23に設けられているので、必然的に互い違いに線路導体11と接触することになる。つまり、比較的簡単な構成で、主接点31と補助接点32とが同時に線路導体11に接触することを回避できる。
【0051】
さらに、接点保持部23は、X方向の中央部を支点にシーソー動作する主板部210と、X方向の一端部同士が連結されているので、主板部210のシーソー動作に連動してオン位置とオフ位置との切り替えが可能になる。ここで、本実施形態のように、主板部210のX方向の各端部に第1の接点保持部231と第2の接点保持部232とが連結されている構成では、主板部210のシーソー動作のみで2組の接点保持部23のオン位置・オフ位置を切り替えることができる。
【0052】
また、本実施形態では、線路導体11は、上面100のうち基板10の厚み方向において基板10下面に形成された接地層15と重なる領域を通ることにより、マイクロストリップライン構造の信号伝送路を形成する。したがって、スイッチ1は、高周波特性に優れた信号伝送路を実現することができ、携帯電話等の高周波機器に特に適した構成となる。
【0053】
ところで、本実施形態では、補助接点32が、線路導体11のうち切れ目113よりも出力端子14寄りの位置で線路導体11と接触する構成を例示したが、これに限らず、補助接点32は切れ目113より入力端子13寄りの位置で線路導体11と接触してもよい。すなわち、X方向において線路導体11上の切れ目113の位置と接地パッド12の位置とが入れ替えられ、且つ接点保持部23の先端部272に主接点31、基端部271に補助接点32が配置されていてもよい。
【0054】
(実施形態2)
本実施形態のスイッチ1は、入力端子13−出力端子14間に信号伝送路を形成する線路導体11が、コプレナー線路(CPW:Coplanar Waveguide)構造である点が実施形態1のスイッチ1と相違する。以下、実施形態1と同様の構成については共通の符号を付して説明を適宜省略する。
【0055】
本実施形態では、図6に示すように基板の上面100において、線路導体11の短手方向の両側に配置され、線路導体11に沿って延長された帯状の接地導体171〜174(以下、各々を特に区別しないときには単に「接地導体17」という)が形成されている。各接地導体17、線路導体11とは所定の間隔を空けて隣接するように配置されている。なお、図6では基板10以外の図示を省略している。
【0056】
接地導体17は、基板10を厚み方向に貫通する貫通導体16を介して接地層15と電気的に接続されている。ここで、貫通導体16は個々の接地導体17に対して複数箇所(図6の例では9箇所)設けられており、各接地導体17と接地層15とを複数箇所で接続する。なお、接地導体17は、線路導体11に比べて長手方向(X方向)に長く形成されている。
【0057】
これにより、同一平面(上面100)上で、第1の線路導体111の両側には回路グランドに接続された一対の接地導体171,172が形成され、第2の線路導体112の両側には回路グランドに接続された一対の線路導体173,174が形成されることになる。したがって、各線路導体111,112は、第1の入力端子131−第1の出力端子141間、および第2の入力端子132−第2の出力端子142間の各々に、コプレナー線路構造の信号伝送路を形成する。
【0058】
ところで、本実施形態では、図7に示すように、接地導体17の少なくとも一部が、補助接点32と接離する接地パッドを構成している。図7の例では、基板10の上面100のY方向に両線路導体111,112の内側に配置された各接地導体172,173の長手方向の略中央部が、接地パッドを構成する。
【0059】
すなわち、第1の補助接点321は、基板10の上面100に設けられた第1の線路導体111の一部および接地導体172の一部の両方とZ方向に重なる位置に配置されている。第2の補助接点322は、基板10の上面100に設けられた第2の線路導体112の一部および接地導体173の一部の両方とZ方向に重なる位置に配置されている。
【0060】
これにより、補助接点32が線路導体11および接地導体17に対して接離することにより、線路導体11と回路グランドとが短絡した状態と線路導体11が回路グランドから切り離された状態とが切り替わる。要するに、可動子21がオン位置にあれば、補助接点32は線路導体11および接地導体17の両方から離れ、線路導体11が回路グランドから切り離される。一方、可動子21がオフ位置にあれば、補助接点32が線路導体11および接地導体17の両方に接触し、線路導体11と接地導体17とは補助接点32を介して短絡する。
【0061】
以上説明した本実施形態のスイッチ1によれば、線路導体11は、同一平面(上面100)上で、一対の接地導体17に挟まれた領域を通ることにより、コプレナー線路構造の信号伝送路を形成する。したがって、スイッチ1は、高周波特性に優れた信号伝送路を実現することができ、携帯電話等の高周波機器に特に適した構成となる。
【0062】
また、線路導体11は、上面100のうち基板10の厚み方向において基板10下面に形成された接地層15と重なる領域を通るので、高周波特性により優れた信号伝送路を実現することができる。さらに、接地導体17は接地層15に対して複数箇所で接続されているので、線路導体11および接地導体17の両方に補助接点32が接触したオフ時の入力端子13−出力端子14間のアイソレーション(絶縁性能)が向上するという利点がある。
【0063】
また、本実施形態のスイッチ1においても、可動子21をシーソー動作させる駆動装置(図示せず)と共に、リレー装置を構成する。
【0064】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【符号の説明】
【0065】
1 スイッチ
10 基板
11,111,112 線路導体
12,121,122 接地パッド
13,131,133 入力端子
14,141,142 出力端子
15,151,152 接地層
16 貫通導体
17,171〜174 接地導体
21 可動子
23,231,232 接点保持部
31,311,312 主接点
32,321,322 補助接点
100 上面(一表面)
113 切れ目
210 主板部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子および出力端子が設けられた基板と、前記基板に対して移動可能に支持されている可動子とを備え、
前記基板の一表面には、ストリップ導体からなり前記入力端子と前記出力端子との間に切れ目によって分断された信号伝送路を形成する線路導体と、前記線路導体とは所定の間隔を空けて配置された接地パッドとが形成されており、
前記可動子のうち前記基板の前記一表面に対向する面には、前記線路導体における前記切れ目の両側に対して接離する主接点と、前記線路導体および前記接地パッドに対して接離する補助接点とが設けられており、
前記可動子は、前記主接点を前記線路導体における前記切れ目の両側に接触させ、且つ前記補助接点を前記線路導体および前記接地パッドの両方から離間させるオン位置と、前記主接点を前記線路導体における前記切れ目の両側から離間させ、且つ前記補助接点を前記線路導体および前記接地パッドの両方に接触させるオフ位置との間で移動することを特徴とするスイッチ。
【請求項2】
前記可動子は、板状であって前記基板の前記一表面に沿って配置され、前記線路導体に沿った一方向の中央部を支点として回転することにより、前記一方向の各端部を前記基板に接触させる2つの位置の間で移動可能な接点保持部を有しており、
前記接点保持部の前記2つの位置の各々が前記オン位置と前記オフ位置とのいずれかになるように、前記主接点と前記補助接点とは、前記接点保持部の前記一方向の両端部に分かれて設けられていることを特徴とする請求項1に記載のスイッチ。
【請求項3】
前記可動子は、板状であって前記基板の前記一表面に沿って配置され、前記一方向の中央部を支点として回転することにより、前記一方向の各端部を前記基板に接触させる2つの位置の間で移動可能な主板部をさらに有しており、
前記主板部と前記接点保持部とは前記一方向の一端部同士が連結されており、前記接点保持部の支点は、前記一方向において前記主板部の支点と前記一端部との間に位置することを特徴とする請求項2に記載のスイッチ。
【請求項4】
前記基板の前記一表面とは反対側の面に接地層が形成されており、前記線路導体は、前記一表面のうち前記基板の厚み方向において前記接地層と重なる領域を通るように形成されており、
前記接地パッドは、前記基板を厚み方向に貫通する貫通導体を介して前記接地層と電気的に接続されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のスイッチ。
【請求項5】
前記基板の前記一表面には、前記線路導体の短手方向の両側に前記線路導体に沿って配置された一対の接地導体が形成されており、
前記接地導体の少なくとも一部は前記接地パッドを構成することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のスイッチ。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のスイッチと、前記可動子を駆動する駆動装置とを備えることを特徴とするリレー装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−212583(P2012−212583A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78133(P2011−78133)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)