説明

スイッチドリラクタンスモータ

【課題】著しい性能向上が要求されても柔軟に対応できる新たな構造のスイッチドリラクタンスモータを提供する。
【解決手段】本発明のスイッチドリラクタンスモータ100は、コイル114が巻回された多数のティース111と、ティース111の間に装着されたマグネット112とを有する突極型固定子110と、前記固定子110の中央部に挿入されて回転する突極型回転子120と、を含み、コイル114が巻回されたティース111の間にマグネット112が装着されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチドリラクタンスモータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なスイッチドリラクタンスモータ(Switched Reluctance Motor;SRM)は、固定子と回転子の両方とも突極(salient)である磁気構造を有しており、固定子に集中巻のコイルが巻回されており、回転子は、いかなる励磁装置(巻線または永久磁石など)もなく鉄心のみで構成されているため、価格競争力に優れたモータである。速度可変型のスイッチドリラクタンスモータは、電力半導体を用いたコンバータと回転子の位置を検知するセンサのサポートにより、連続したトルクを安定的に発生し、各応用分野から要求される性能に合わせた制御が容易である。
【0003】
様々なACモータ(誘導モータ、永久磁石型の同期モータなど)とブラシレス(Brushless)DCモータの場合、一つの電磁界構造の設計が完了した後、時間が経って著しい性能向上が必要な場合、新たな電磁界構造に再設計しなければならない。そうでなければ、鉄板(Steel)または永久磁石などの高価素材を他のものに替える単純な設計変更を行うしか方法がなく、これは、効率的な設計と言えない。このような現象は、スイッチドリラクタンスモータにおいても同様である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記のような問題点を解決するために導き出されたものであって、本発明は、著しい性能向上が要求されても柔軟に対応できる新たな構造のスイッチドリラクタンスモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の好ましい一実施例によるスイッチドリラクタンスモータは、コイルが巻回された多数のティースと、前記ティースの間に装着されたマグネットとを有する突極型固定子と、前記固定子の中央部に挿入されて回転する突極型回転子と、を含み、前記コイルが巻回された前記ティースの間にマグネットが装着されたことを特徴とする。
【0006】
ここで、前記固定子には、前記マグネットが装着されたティースの中央部に空間が形成されたスリット部が形成されており、前記マグネットは前記固定子に形成された前記スリット部に離隔して位置されたことを特徴とする。
【0007】
また、前記マグネットが収容される固定子の部分と前記スリット部は、前記回転子から放射方向に配置されたことを特徴とする。
【0008】
更に、前記マグネットは、フェライトマグネットであることを特徴とする。
【0009】
本発明の特徴及び利点は、添付図面に基づいた以下の詳細な説明によってさらに明らかになるであろう。
【0010】
本発明の詳細な説明に先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的かつ辞書的な意味に解釈されてはならず、発明者が自らの発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則にしたがって本発明の技術的思想にかなう意味と概念に解釈されるべきである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の好ましい実施例によるスイッチドリラクタンスモータは、巻線のない突極型回転子と、集中巻のコイルが巻回されている突極型固定子と、を備え、固定子にマグネットを挿入してもしなくても良い自由な電磁界構造を有し、固定子にマグネットを挿入する場合、ステータコアが分離される効果を有する。
【0012】
また、本発明の好ましい実施例によるスイッチドリラクタンスモータは、要求される性能に合わせて、挿入されるマグネットの大きさ、等級、位置、個数などを自由に変更できる構造を有する。
【0013】
それだけでなく、2相以上が状態に関係なく常に具現されることができ、マグネットのみを追加することで、トルク密度や効率などのような性能向上を容易に図ることができる。
【0014】
また、本発明のスイッチドリラクタンスモータは、必要に応じて、打ち抜き金型から永久磁石のスロット用パンチを除去して固定子鉄ピンを製作することにより、コストを下げることができる自由な構造を有する。
【0015】
更に、マグネットを挿入することにより、状態に関係なく常に固定子で磁束の交番が発生しないようにして鉄損を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の好ましい実施例によるスイッチドリラクタンスモータの断面図である。
【図2】本発明の好ましい実施例によるスイッチドリラクタンスモータで電流が流れる方向を図示した断面図である。
【図3】本発明の好ましい実施例によるスイッチドリラクタンスモータの一部拡大図である。
【図4】本発明の好ましい実施例によるスイッチドリラクタンスモータの一部拡大図である。
【図5】本発明のスイッチドリラクタンスモータの角度に応じたSRMトルクの変化グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の目的、特定の長所及び新規の特徴は、添付図面に係わる以下の詳細な説明及び好ましい実施例によってさらに明らかになるであろう。本明細書において、各図面の構成要素に参照番号を付け加えるに際し、同一の構成要素に限っては、たとえ異なる図面に示されても、できるだけ同一の番号を付けるようにしていることに留意しなければならない。また、本発明を説明するにあたり、係わる公知技術についての具体的な説明が本発明の要旨を不明瞭にする可能性があると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。
【0018】
以下、添付の図面を参照して、本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の好ましい実施例によるスイッチドリラクタンスモータの断面図である。
【0020】
図2は、本発明の好ましい実施例によるスイッチドリラクタンスモータで電流が流れる方向を図示した断面図である。
【0021】
図3、図4は、本発明の好ましい実施例によるスイッチドリラクタンスモータの一部拡大図である。
【0022】
図5は、本発明のスイッチドリラクタンスモータの角度に応じたSRMトルクの変化グラフである。
【0023】
図1に図示したように、本発明の好ましい実施例によるスイッチドリラクタンスモータ100は、外側に固定子110が備えられ、固定子110の中央には軸回転する回転子120が備えられる。
【0024】
本発明のスイッチドリラクタンスモータ100は、固定子110と回転子120の両方とも突極である磁気構造を有しており、固定子110に集中巻のコイルが巻回されており、回転子120は、いかなる励磁装置、即ち、巻回または永久磁石などもなく鉄心のみで構成されているため、価格競争力に優れたモータである。
【0025】
特に、速度可変型のスイッチドリラクタンスモータ100は、電力半導体を用いたコンバータと回転子の位置を検知するセンサのサポートにより、連続したトルクを安定的に発生し、各応用分野から要求される性能に合わせた制御が容易である。
【0026】
最近、誘導モータ、永久磁石型の同期モータなどのような様々なACモータとブラシレスDCモータの場合、一つの電磁界構造の設計が完了した後、時間が経って著しい性能向上が必要な場合、新たな電磁界構造に再設計しなければならない。そうでなければ、鉄板または永久磁石などの高価素材を他のものに替える単純な設計変更を行うしか方法がなく、これは、効率的な設計と言えない。
【0027】
このような現象は、スイッチドリラクタンスモータにおいても同様である。本発明によるスイッチドリラクタンスモータ100は、一つの電磁界構造の設計が完了した後、時間が経って著しい性能向上が必要な場合、柔軟に対応できるように考案されたモータである。
【0028】
図1に図示されたように、本発明の好ましい実施例によるスイッチドリラクタンスモータ100は、一つ以上のティース111からなるセグメントAの間にマグネット112を挿入してセグメントAを電磁気的に分離し、マグネット112の大きさを最大化することができることを特徴とする。
【0029】
マグネット112がステータコア113の共通極(common pole)に挿入される場合、前記ステータコア113は、磁気回路面で分離された構造を有する。従来技術には、マグネット112の挿入部位によりステータコア113が分離されており、本発明は、ステータコア113の間にマグネット112を挿入して出力密度を高めることができる。
【0030】
モータのトルクを最大化するために、またはトルク密度を向上させるためには、マグネット112の大きさを最大化する必要があるが、セグメントAの間にマグネット112を挿入することにより、マグネット112の大きさを最大化することができる。
【0031】
また、マグネット112がセグメントAの間に挿入され、ステータコア113の両側がマグネット112によって分離される。万が一、ステータコアの両側が互いに連結されても、ステータコア113の両側は、磁気的に飽和され、トルクに寄与する磁束には、影響を与えない。
【0032】
固定子110は、多数のティース111に断続的にコイル114が巻回されている突極型固定子である。
【0033】
図2は、本発明の好ましい実施例のスイッチドリラクタンスモータ100の電流の流れ方向を示すものであって、マグネット112のN極からS極に電流が流れる(B方向に)。図2の構成要素は、図1と同一であるため説明は省略する。
【0034】
図3は、本発明の好ましい実施例のスイッチドリラクタンスモータ100のマグネット112をステータコア113に組み立てる前の形状を示すものであり、図4は、本発明の好ましい実施例のスイッチドリラクタンスモータ100のマグネット112がステータコア113に装着された状態を示すものである。
【0035】
図4に図示されたように、本発明の好ましい実施例のスイッチドリラクタンスモータ100のマグネット112は、コイル114が巻回されたティース111の間に装着され、マグネット112とスリット部115との間に、ある程度の間隔を有することが好ましい。
【0036】
マグネット112の長さ方向の長さをTとし、マグネット112とスリット部115との間の間隔をtとした場合、tの大きさは、0以上〜T/2以下であることが好ましい。
【0037】
tが大きくなるほどトルクは小さくなり、t=0である場合のトルクを100%とすると、tがT/10である場合のトルクは90%、TがT/4である場合のトルクは40%、T/2である場合のトルクは30%である。
【0038】
特性の点からみると、tが0である場合のトルクが最も良いが、製作の点からみると、ある程度の値を有することが好ましい。
【0039】
図5は、本発明のスイッチドリラクタンスモータ100の角度に応じたトルクの変化グラフである。P曲線は、本発明のスイッチドリラクタンスモータ100の角度に応じたトルクの変化グラフを示すものであり、Q曲線は、従来技術のスイッチドリラクタンスモータ100の角度に応じたトルクの変化グラフを示したものである。
【0040】
表1は、従来技術のスイッチドリラクタンスモータのトルク平均と、本発明のスイッチドリラクタンスモータのトルク平均を示すものである。
【0041】
【表1】

【0042】
表1に示すように、従来技術のスイッチドリラクタンスモータのトルク平均であるQは、0.82Nmである反面、本発明のスイッチドリラクタンスモータのトルク平均であるPは、1.00Nmである。
【0043】
図5及び表1に示されたように、本発明のスイッチドリラクタンスモータ100は、従来技術のモータに比べてトルク平均が20%以上高く示される。
【0044】
このような本発明のスイッチドリラクタンスモータ100は、マグネット112の磁束効果を極大化するために、マグネット112の体積を増加させることができる構造を有する。また、マグネット112の体積増加によるネオジム(Nd)マグネットでなく、フェライト(Ferrite)マグネットを使用してコストを節減することができる。
【0045】
前記のような構造を有する本発明の好ましい実施例によるスイッチドリラクタンスモータ100は、巻回のない突極型回転子120と、集中巻のコイルが巻回されている突極型固定子110と、を備え、固定子110にマグネット112を挿入してもしなくても良い自由な電磁界構造を有し、固定子110にマグネット112を挿入する場合、ステータコア113が分離される効果を有する。
【0046】
また、本発明の好ましい実施例によるスイッチドリラクタンスモータ100は、要求される性能に合わせて、挿入されるマグネット112の大きさ、等級、位置、個数などを自由に変更できる構造を有する。
【0047】
それだけでなく、2相以上が状態に関係なく常に具現されることができ、マグネット112のみを追加することにより、トルク密度や効率などのような性能向上を容易に図ることができる。
【0048】
また、本発明のスイッチドリラクタンスモータ100は、必要に応じて、打ち抜き金型から永久磁石のスロット用パンチを除去して、固定子鉄ピンを製作することにより、コストを下げることができる自由な構造を有する。
【0049】
また、マグネット112を挿入することにより、状態に関係なく常に固定子110で磁束の交番が発生しないようにして、鉄損を低減することができる。
【0050】
以上、本発明を具体的な実施例に基づいて詳細に説明したが、これは、本発明を具体的に説明するためのものであり、本発明によるスイッチドリラクタンスモータは、これに限定されず、該当分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想内にての変形や改良が可能であることは明白であろう。
【0051】
本発明の単純な変形乃至変更は、いずれも本発明の領域に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は、添付の特許請求の範囲により明確になるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、著しい性能向上が要求されても柔軟に対応できる新たな構造のスイッチドリラクタンスモータに適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
100 スイッチドリラクタンスモータ
110 固定子(突極型固定子)
111 ティース
112 マグネット
113 ステータコア
114 コイル
115 スリット部
120 回転子(突極型回転子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルが巻回された多数のティースと、前記ティースの間に装着されたマグネットとを有する突極型固定子と、
前記固定子の中央部に挿入されて回転する突極型回転子と、を含み、
前記コイルが巻回された前記ティースの間にマグネットが装着されたことを特徴とするスイッチドリラクタンスモータ。
【請求項2】
前記固定子には、前記マグネットが装着されたティースの中央部に空間が形成されたスリット部が形成されており、前記マグネットは、前記固定子に形成された前記スリット部に離隔して位置されたことを特徴とする請求項1に記載のスイッチドリラクタンスモータ。
【請求項3】
前記マグネットが収容される固定子の部分と前記スリット部は、前記回転子から放射方向に配置されたことを特徴とする請求項1に記載のスイッチドリラクタンスモータ。
【請求項4】
前記マグネットは、フェライトマグネットであることを特徴とする請求項1に記載のスイッチドリラクタンスモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−46566(P2013−46566A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−278876(P2011−278876)
【出願日】平成23年12月20日(2011.12.20)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】