説明

スイッチ機構を有する操作パネル

【課題】寸法管理が容易で生産性が高く、製品強度も向上したパネル部材を提供すると共に、ダイヤル式スイッチの機構を構成するダイヤルノブの点灯表示部へも十分な光量を供給することができるスイッチ機構を有する操作パネルを提供する。
【解決手段】操作パネル1を構成するパネル中間部材33から延出部材40を独立させて、パネル中間部材33を、貫通孔39を有する単純な形状とすると共に、この貫通孔39に延出部材40を装着し、更に延出部材40の外周側にダイヤル式スイッチの機構を配置し、延出部材40を、透光性を有する素材で形成して、チップLED29、30、52から射出された光が延出部材40を透過してダイヤルノブ6の側面に到達するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マニュアルで空調装置、特に車両用空調装置の空調をコントロールするためのスイッチ機構を有する操作パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の空調装置の空調をコントロールするためのスイッチ機構において、プッシュ式スイッチの機構とダイヤル式スイッチの機構とを組み合わせ、更に、各種点灯表示部を点灯させるために発光ダイオード等の光源を内蔵させた構造の複合機能的なスイッチ機構の発明は、特許文献1に示されるように、本願の特許出願人により出願がなされて既に公知となっている。
【0003】
この特許文献1に記載のスイッチ機構及び操作パネルの構成を概説する。操作パネルの表ケースとプリント基板との間に配置された中ケースに、表ケース側に当該中ケースと一体形成されるかたちで円筒状延出部が突出形成されており、この円筒状延出部にダイヤル部のダイヤルノブを回転自在に装着し、このダイヤルノブの外周側に駆動部(以下、本願に合わせて第1のギアと称する。)を配置し、更に前記ダイヤルノブの外周側近傍には駆動歯車(以下、本願に合わせて第2のギアと称する。)を配した構成となっている。これにより、第1のギアの外周面に形成された歯車部(以下、本願に合わせて歯と称する。)と、第2のギアの歯とが噛み合うことが可能となっている。そして、第2のギアの回転軸は、プリント基板(以下、本願に合わせて基板と称する。)に固着された回転式スイッチ(以下、本願に合わせて回転検出スイッチと称する。)の回転軸が固着されている。
【0004】
また、この特許文献1に記載のスイッチ機構及び操作パネルの構成では、円筒状延出部の外周面には、円筒の軸方向の端部近傍において、第1のギアの抜け落ち防止のために、円筒の円周方向の所定の間隔にて位置するように当該円筒状延出部の径方向に突出する爪部が複数箇所(例えば2箇所から4箇所)形成されている。
【0005】
そして、スイッチ機構と表ケース、中ケース及び裏ケースとを適宜組み合わせて操作パネルを形成した場合には、円筒状延出部の径方向の内側に円筒状内部部材が配置され、この円筒状内部部材の内部にプッシュ部材が装着されると共に、この円筒状内部部材が円筒状延出部内で且つプリント基板上に所定の領域を確保して、基板の中ケース側には設置された発光ダイオードが円筒状内部部材の領域内に位置した状態となる。
【0006】
一方で、同じく本願種出願人により出願された特許文献2に示されるように、プッシュ部材(特許文献2ではスライド部品と表示されている。以下、同じ。)が中ケースと一体形成された円筒状延出部(特許文献2では突起部と表示されている。以下、同じ。)内に直接に収納されて、プッシュ部材が円筒状延出部内を当該円筒状延出部の軸方向に沿ってその内周面に当接しつつ摺動する構成も既に公知となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−184969号公報
【特許文献2】特開2005−190733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
もっとも、特許文献1及び特許文献2に示される操作パネルに示されるように、中ケースに円筒状延出部を一体形成したのでは、中ケースに対して上乗せ的・追加的に機能が集約されるので、中ケースひいては操作パネルの生産性の悪化及び品質の低下のおそれがある。
【0009】
すなわち、円筒状延出部の外径寸法について、第1ギアの回転が最適になるようにするために真円度に関して厳密な寸法管理が要求され、且つ円筒状延出部の内側形状についても、プッシュ部材を円筒状延出部の軸方向に沿って円滑に摺動させるため、内周面の面粗度や軸方向における垂直度に関しても、厳密な寸法管理が要求される。こうした円筒状延出部を備えた中ケースは、円筒状延出部に対する寸法管理を要求されるだけでなく、表ケースや裏ケースとの嵌合や車両装着用ネジ穴の位置管理のためにも、厳密な寸法管理が要求される。しかしながら、中ケースの製造は当該中ケースが樹脂製であることから金型を利用して行うために、円筒状延出部を当該中ケースと一体形成すると金型が複雑化することとなる。
【0010】
また、樹脂成形品は、通常、射出成形後の冷却工程の中で「ヒケ」と呼ばれる寸法変化があるので、この寸法変化を見越して射出条件が設定される。しかしながら、中ケースについて上記のように厳密な寸法管理の要求に全て且つ同時に応えようとするためには射出条件の設定のみでは極めて困難である。これに伴い、射出条件の調整だけでは足りず、金型の改修が必要となることも多く、中ケースの生産準備期間の長期化や金型完成までのコストが高くなるケースがあった。
【0011】
更にまた、中ケースに一体形成されるかたちで円筒状延出部を形成する場合には、円筒状延出部の円筒の軸方向に型抜きを行うところ、特許文献1に示されるように円筒状延出部の外周面に円筒の径方向に突出する爪部を形成するには、円筒状延出部の根本部分にスライド型抜き用の孔を穿つ必要が生じ、このスライド型抜き用の孔から意図しない光の漏れが発生するおそれがある。更には、スイッチ機構のうちダイヤル式スイッチの機構には、車両搭乗者が手で操作するために一定の強度の確保が要求されるところ、このスライド型抜き用の孔の存在により円筒状延出部の強度が低下しており、品質改善を要請されているところでもあった。
【0012】
そこで、本発明は、寸法管理が容易で生産性が高く、製品強度も向上したスイッチ機構を有する操作パネルの提供を第一の目的とする。
【0013】
ところで、特許文献1に示されるスイッチ機構では、ダイヤルノブの内径に配置されるプッシュ部材のみでなく、ダイヤルノブの外周側にも点灯表示部が設けられており、これらの点灯表示部は、いずれも円筒状延出部の内側領域に配置された共通の光源を利用して点灯されるようになっている。
【0014】
ここで、ダイヤルノブの点灯表示部に対しては、光源からの光が円筒状延出部を透過するようにすることで多くの光量を供給したいところ、従来の中ケースでは円筒状延出部が一体形成されているために、円筒状延出部のみを透光性を有する素材で形成することができなかった。すなわち、中ケースについて透光性を有する素材で形成すると光源からの光が意図しない部位から漏れるため、円筒状延出部も遮光性を有する素材で形成せざるを得なかった。また、光源はプッシュ部材のノブキャップに設けた点灯表示部に光を入射させる必要性もあるので、円筒状延出部から軸線状に延びた領域の内側に配置されることが求められる。このためダイヤルノブの点灯表示部に光源からの光を入射させるためには、円筒状延出部を跨ぐように導光部材を介して到達させざるをえず、充分な光量をダイヤルノブの点灯表示部に到達させることが困難であった。
【0015】
そこで、本発明は、プッシュ部材のノブキャップに設けた点灯表示部のみならずダイヤルノブの側方に位置する点灯表示部にも充分に光量を供給し、品質を向上したスイッチ機構を有する操作パネルの提供を第二の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明に係るスイッチ機構を有する操作パネルは、貫通孔が形成されたパネル部材と、前記貫通孔の周縁に位置して前記貫通孔の軸方向に延びる延出部材と、回転操作が可能なダイヤルノブを有するダイヤル式スイッチの機構を備えたスイッチ機構とから構成され、前記延出部材は、前記パネル部材と別体であると共に、この延出部材の外周側に前記ダイヤル式スイッチの機構が配置されていることを特徴とするスイッチ機構を有することを特徴としている(請求項1)。
ここで言うパネル部材は、車両の運転席等の前席よりも車両前方側に配置されて、車両用空調装置の空調を操作する操作装置を構成するダイヤルノブなど種々の部品を保持する部材のことで、パネルフロント側部材とパネルリア側部材とに挟まれたパネル中間部材のみならず、ベース部材やハウジング等と称されるものも、ダイヤル式スイッチの機構を装着するための貫通孔を有する構成であれば含まれる。
また、ダイヤルノブを有するダイヤル式スイッチの機構は、ダイヤルノブと一体に回動し、外周側面には所定数の歯が形成された第1のギアと、この第1のギアの歯と噛合可能な所定数の歯が形成された回転体及びこの回転体の回転中心に取り付けられた軸棒とで構成されて、前記第1のギアから回転を受けることができる第2のギアとを更に有するものとしても良い。そして、このスイッチ機構は、プッシュ式スイッチの機構も併せ持つ複合機能のスイッチ機構として、ダイヤルノブを用いて構成される内部空間に収納されて、ダイヤルノブ及び第1のギアの軸方向に沿って移動可能であるスライダーを更に有するものとしても良い。
【0017】
このように、ダイヤル式スイッチの機構を、延出部材を介してパネル部材に装着することにより、従来の円筒状延出部が一体形成されたパネル部材とは異なり、パネル部材の形状の単純化にあわせて金型の製作を容易化できると共に、パネル部材の寸法管理を必要とする部位が減少することによりパネル部材の射出条件の設定も容易化することができる。
また、延出部材が単独部品となるので、第1のギアの抜け落ち防止のために延出部材の円筒状の外周面に当該円筒の径方向に突出する爪部を形成する場合でも、型抜きのために延出部材の根本部分にスライド型抜き用の孔を穿つ必要がなくなる。その結果、操作パネルの強度を向上させることができると共に、スライド型抜き孔があることにより意図しない光の漏れが発生するおそれも解消することが可能となり、操作パネルの品質を向上させることができる。
【0018】
そして、この発明に係るスイッチ機構を有する操作パネルにあっては、前記延出部材は、透光性を有する素材で形成されていることを特徴としている(請求項2)。ここで、透光性を有する素材としては、例えばポリカーボネート(PC)等が挙げられる。尚、第1のギアも透光性を有する素材で形成されたものとし、スライダーは透光性を有しない素材(遮光性を有する素材)で形成されたものとすることが好適である。
【0019】
更に、この発明に係るスイッチ機構を有する操作パネルにあっては、前記ダイヤルノブに対し当該ダイヤルノブの軸方向に沿って離れた位置に第1の光源体を有し、前記第1の光源体は、前記延出部材の径方向の内側となるように配置されていると共に、前記ダイヤルノブの前記延出部材よりも外周側となる部位に前記第1の光源体から射出されて前記延出部材を透過した光が入射される点灯表示部を有することを特徴としている(請求項3)。
【0020】
これにより、従来では遮光性を有する円筒状延出部の存在により光量を充分に到達させることができなかったダイヤルノブの側面へも、ダイヤルノブの径方向の内側に配置された第1の光源体からの光が延出部材を透過して到達させることが可能となるので、ダイヤルノブの点灯表示部に十分な光量を供給することができる。
【0021】
また、この発明に係るスイッチ機構を有する操作パネルにあっては、前記ダイヤルノブに対し当該ダイヤルノブの軸方向に沿って離れた位置に第2の光源体を有し、前記第2の光源体は、前記延出部材の径方向の外側となるように配置されていると共に、前記ダイヤルノブの前記延出部材よりも外周側となる部位に前記第2の光源体から射出されて前記延出部材を透過した光が入射される点灯表示部を有することを特徴としている(請求項4)。尚、この点灯表示部は、請求項3に記載の点灯表示部と同じものを指す場合と異なるものを指す場合とがある。
【0022】
これにより、従来では遮光性を有する円筒状延出部の存在により相対的に光量を充分に到達させることができなかったダイヤルノブの側面へも、延出部材の径方向外側に配置された第2の光源体からの光が延出部材を透過して到達するので、ダイヤルノブの点灯表示部に充分な光量を供給することができる。さらに、遮光性を有する素材でスライダーを形成することにより、第2の光源体からの光は、スライダーに妨げられて、キャップ側の点灯表示部には入射されないものとすることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、請求項1から請求項4に記載の発明によれば、ダイヤル式スイッチの機構が外周側に装着される延出部材をパネル部材と別体に構成したので、従来の円筒状延出部が一体形成されたパネル部材とは異なり、パネル部材の形状の単純化にあわせて金型の製作を容易化することができ、パネル部材の寸法管理を必要とする部位が減少することによりパネル部材の射出条件の設定も容易化することができる。
【0024】
また、請求項1から請求項4に記載の発明によれば、延出部材が単独部品となるので、第1のギアの抜け落ち防止のために、延出部材の外周面に円筒の径方向に突出する爪部を形成する場合でも、型抜きのために延出部材の根本部分にスライド型抜き用の孔を穿つ必要がなくなるので、スライド型抜き用の孔から光源体の光が不用意に延出部材の外側に漏れたり、延出部材の強度が低下したりする不具合を回避することができる。
【0025】
特に請求項2及び請求項3に記載の発明によれば、延出部材を透光性を有する素材で形成したことにより、第1の光源体から射出された光が延出部材を透過するので、ダイヤルノブの側面に光が到達することから、ダイヤルノブの点灯表示部に充分な光量を供給することができる。
【0026】
特に請求項2及び請求項4に記載の発明によれば、延出部材を透光性を有する素材で形成したことにより、第2の光源体から射出された光が延出部材のフランジを透過するので、ダイヤルノブの側面に光が到達することから、ダイヤルノブの点灯表示部に充分な光量を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、この発明に係るスイッチ機構を有する操作パネルについて、パネルフロント側材を省略してパネル中間部材にスイッチ機構が装着された状態を示す斜視図である。
【図2】図2は、同上のスイッチ機構の構成部品を示す説明図である。
【図3】図3は、同上のスイッチ機構が基板を除き一体化されたモジュールとなることを示す説明図である。
【図4】図4は、同上の操作パネルの断面図である。
【図5】図5は、スイッチ機構の構成部品たる、延出部材及びスライダーの変形例を示す斜視図である。
【図6】図6は、同上の延出部材及びスライダーの変形例を有するスイッチ機構が用いられる操作パネルであって、第1のギア及び第2のギアを省略した状態の断面図である。
【図7】図7は、パネル中間部材に延出部材が組み付けられた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、この発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0029】
図1から図7に示される操作パネル1は、例えば図示しない車両に搭載される空調装置の制御の設定を行うためのもので、この実施例では、3つのスイッチ機構2、3、4を具備したものとなっている。
【0030】
このうち、スイッチ機構2は、外周部分を回転させることにより、吹出モードを、オートモード、デフロストモード、デフフットモード、フットモード、バイレベルモード、ベントモードに設定することが可能であると共に、中央部分を押すことにより、外気導入モードと内気導入モードとに切り換えることが可能なものであり、ダイヤル式スイッチの機構のみならずプッシュ式スイッチの機構も備えた複合機能的スイッチ機構である。
【0031】
また、スイッチ機構3は、外周部分を回転させることにより、送風能力をOFF状態からフル稼動状態まで切り替えると共にオートモードに設定することが可能なものであり、ダイヤル式スイッチの機構のみを備えた単機能的スイッチ機構である。
【0032】
更に、スイッチ機構4は、外周部分を回転させることにより、車室内の設定温度を18℃から32℃の範囲で調整することが可能であると共に、中央部分を押すことにより、冷凍サイクルの圧縮機のON/OFFを行うことが可能なものであり、ダイヤル式スイッチの機構のみならずプッシュ式スイッチの機構も備えた複合機能的スイッチ機構である。
【0033】
これらのスイッチ機構2、3、4が有する構成部品はほぼ共通であり、かかる構成部品として、図2に示されるように、ダイヤルノブ6、ノブキャップ7、スライダー8、第1のギア9、第2のギア10及び基板11を有している。
【0034】
ダイヤルノブ6は、ダイヤル式スイッチの機構を構成しており、自動車の搭乗者により指で摘んで回転操作されるもので、後述する点灯表示部12、53以外は遮光性を有する素材(例えば合成樹脂)により形成されている。そして、ダイヤルノブ6は、図2に示されるように、軸方向の両側が開口した略円筒状の筒状体をなしていると共に、スイッチ機構2、3、4の操作パネル1の後述するパネルフロント側部材から表出した部分の主要な外郭を構成し、その外径寸法は指で摘み回転させる操作性を保持するのに好適な大きさ(例えば約50mm前後)を有している。また、このダイヤルノブ6の外径寸法は、後述するパネルフロント側部材に開口した貫通孔の内径寸法よりも大きくなっている。更に、ダイヤルノブ6のうちノブキャップ7との境界に位置する前面部分は、その環状の全て又は一部がこの実施例では透光性を有する素材、例えば例えばポリカーボネートで形成されることにより点灯表示部12を構成している。更に、図4に示されるようにダイヤルノブ6のノブキャップ7とは反対側に、ポリカーボネートで形成された環状の点灯表示部53が配置されている。
【0035】
ノブキャップ7は、ダイヤルノブ6の筒状の内部に収納可能な外径寸法を有する円板部分を備えたもので、スイッチ機構2、3、4の機能に応じて図形や文字等の意匠が施された意匠面を前記円板部分の前面側に有している。また、ノブキャップ7は、ダイヤルノブ6に対し、このダイヤルノブ6が回転してもこれに従動して回転しないように取り付けられている。このため、ノブキャップ7の意匠面に描かれた意匠の向きはダイヤルノブ6の回転にかかわらず常に一定である。更に、ノブキャップ7の意匠面には、図1及び図4に特に示されるように透光部材31の一部が表出している。また、意匠面に施された文字や図形も後述するチップLED30からの光が入射されて点灯することが可能である。
【0036】
スライダー8は、例えばプッシュ部材とも称されるもので、プッシュ式スイッチの機構を構成しており、この実施例では、遮光性を有する素材(例えば合成樹脂)により形成されていると共に、例えば、図2に示されるように、外径寸法が相対的に大きな大径部13と外径寸法が相対的に小さな小径部14とが軸方向に連接して構成されたものとなっている。
【0037】
このスライダー8は、図4に示されるように基板11にプッシュスイッチの端子27が設けられている場合に、この端子27を押圧することができる押圧部15をしている。そして、スライダー8は、小径部14の外径寸法が、ダイヤルノブ6及び第1のギア9の内径寸法よりも小さく、大径部13の外径寸法は、後述する延出部材40の内径寸法よりも小さくなるように設定されている。これにより、スライダー8は、ダイヤルノブ6の筒状部分、第1のギア9及び延出部材40内をその軸方向に沿って基板11に対して遠近する方向にスライド動作することが可能となっている。
【0038】
更に、スライダー8は、基板11に対しスライダー8の外周壁が軸方向に投影されることで形成される想定線の枠内に配置された下記するチップLED29、チップLED30に対応して、内部が基板11からノブキャップ7まで延びる仕切り壁16及び前述の押圧部15により仕切られ、チップLED29、チップLED30からの光りが相互に混ざらないようになっている。
【0039】
第1のギア9は、ダイヤルノブ6の回転を第2のギア10に伝達するためのもので、ダイヤル式スイッチの機構を構成している。この第1のギア9は、外径寸法が相対的に大きく且つ軸方向の両側が開口した大径部18と外径寸法が相対的に小さく且つ軸方向の両側が開口した小径部19とが同心の複数円を描くように配置されると共にこの大径部18と小径部19とが小径部19から径方向外側に延びる連接部20により連接されることで構成されている。
【0040】
また、第1のギア9の大径部18は、その内径寸法が後述する延出部材40の外径寸法と略同じであり、この大径部18が延出部材40に外装されることで、第1のギア9は、延出部材40の周囲において当該延出部材40を軸受(ベアリング)として回転することができる。そして、第1のギア9の大径部18は、外周部分に所定の数の歯21が外周面に環状に形成されている。更に、第1のギア9の小径部19は、その外径寸法がダイヤルノブ6又は点灯表示部53の内径寸法と略同じに設定されて、ダイヤルノブ6又は点灯表示部53に挿入することで、かかるダイヤルノブ6又は点灯表示部53とガタツキなく一体的に回転するように連結される。
【0041】
第2のギア10は、図2に示されるようにダイヤル式スイッチの機構を構成しており、第1のギア9の歯21と噛合可能な所定の数の歯24を外周面に有する略円板状の回転体23と、この回転体23の回転中心から基板11側に向けて延出した軸棒25とで構成されたもので、第1のギア9の回転を基板11に設けた回転検出スイッチ28に伝達することができる。そして、この実施例では、第2のギア10の回転体23は、回転体連結部材26の差し込み孔に装着されることにより回転体連結部材26と連結されている。この回転体連結部材26は、径方向外側に延出した延出部26aを複数(この実施例では4つ)有し、回転体連結部材26の延出部26aを介して下記する回転検出スイッチ28に直接的に回転を伝達させるものとなっている。
【0042】
基板11は、様々な回路の配線が形成されたプリント基板であり、スイッチ機構2、3、4の全てに共用される単体のもので、プッシュスイッチの端子27、回転検出スイッチ28、チップ状の白色の発光ダイオード(以下、チップLEDと称する。)29、有色(例えばオレンジ色)の発光ダイオード(以下、チップLEDと称する。)30を適宜の数において有した構成となっている。
【0043】
より詳述すると、基板11は、この実施例では、図4に示されるように、スイッチ機構2、3、4を構成する第2のギア10の軸棒25及び回転体連結部材26の軸線上に回転検出スイッチ28が配置され、各回転検出スイッチ28は回転体連結部材26と連結されていると共に、スイッチ機構2及びスイッチ機構4を構成するスライダー8に形成された押圧部15の軸線上に、プッシュスイッチの端子27が配置され、押圧部15の押圧によりプッシュスイッチの端子27と接続された機器の稼動をON/OFFするものとなっている。そして、チップLED29は、操作パネル1の3つのスライダー8の外周壁が軸方向に投影されることで形成されるそれぞれの想定線の枠内にて、複数配置されている。また、チップLED30は、スイッチ機構2、4を構成するスライダー8の仕切り壁16及び押圧部15により画成された導光空洞17に対しその軸線上となる位置において、かかる導光空洞17の開口端に近接して配置されている。
【0044】
また、この操作パネル1は、これらのスイッチ機構2、3、4を収納すべくインストルメントパネルの表面に露出する略板状のパネルフロント側部材(図示せず)と、インストルメントパネルに取り付けるため取り付け手段としてスイッチ機構2、3、4の並ぶ方向の両側端に螺子孔38を有するフランジ34が形成された板状のパネル中間部材33と、インストルメントパネル内に配置され、パネル中間部材33側に開口した筐体状のパネルリア側部材(図示せず)とを組み合わせることで、内部に空間を有するケース状の形態となっている。
【0045】
このうち、パネルフロント側部材は、スイッチ機構2、3、4の数に応じて複数(この実施例では3つ)の貫通孔が円状の形状にて形成されている。また、パネルリア側部材は、板状部分と、パネル中間部材33との間に前記基板11を収納すべくこの板状部分の周縁からパネル中間部材33側に延設されたフランジとで構成されている。尚、パネル中間部材33の構成は、この発明の主要部の1つであるので延出部材40と共に下記において詳述する。
【0046】
まず、この発明に係る操作パネル1のパネル中間部材33は、遮光性を有する素材により形成されたもので、板状部33aと、この板状部33aの周縁からパネルフロント側部材とパネルリア側部材との双方に延びるフランジ部33bとを有し、断面が略Iの字状若しくはHの字を横倒しにした形態となっている。
【0047】
パネル中間部材33の板状部33aには、特に図5に示されるように、スイッチ機構2、3、4の数に対応して貫通孔39が形成されており、延出部材40とは別部材となっている。そして、貫通孔39は、下記する延出部材40を装着時に下記するフランジ部分43が操作パネル1の表側から見えるように第1のギア9の大径部18の外径寸法よりも幾分大きな内径寸法を有している。更に、貫通孔39は、パネル中間部材33の短手方向の両側において当該貫通孔39の中心から径方向外側に突出して延びる拡大孔部39aと拡大孔部39bとが形成されている。このうち、相対的に大きな拡大孔部39aは、回転体連結部材26が挿通される位置及び内径寸法となっており、相対的に小さな拡大孔部39bはスイッチ機構2、3、4に適切なクリック感を与えられるようスプリング48(図2に示す。)が装着可能な位置及び内径寸法となっている。更にまた、パネル中間部材33は、図4に示されるように、貫通孔39の周縁において延出部材40を取り付けたときに下記する螺子孔46と連通する螺子孔45が形成されている。
【0048】
次に、この発明に係るスイッチ機構2、3、4の延出部材40は、透光性を有する素材、例えばポリカーボネートにより形成されたもので、拡散材を混入して導光部材として形成してもよいものであり、第1のギア9の大径部18の内径寸法よりも小さくスライダー8の外径寸法(スライダー8が大径部13を有する場合にはこの大径部13の外径寸法)よりも大きな外径寸法の周壁部分41と、第1のギア9の大径部18の外径寸法よりも大きな内径寸法の周壁部分42と、これらの周壁部分41と周壁部分42とを連接するフランジ部分43とを有して構成されている。
【0049】
周壁部分41は、貫通孔39の軸方向に沿って延びる円環状の周壁により構成されているもので、第1のギア9が回転する場合にその外周面が第1のギア9の大径部18の内周面と摺接するようになっており、これに伴い、上述したように、第1のギア9に対するベアリング(軸受)として機能している。尚、周壁部分41には、後に示される図7に示されるように第1のギアの抜け落ち防止のために、延出部材の外周面に円筒の径方向に突出する爪部55が形成されていても良く、この爪部55の形成にあたり、型抜きのために延出部材の根本部分にスライド型抜き用の孔が穿たれていないものとなっている。
【0050】
周壁部分42は、貫通孔39の軸方向に沿って延びると共に第1のギア9の大径部18の外周においてその周方向に間隔を空けて複数(この実施例では4つ)配置されており、周壁部分42の内周面は第1のギア9が回転するときに第1のギア9の外周面と摺接するようになっている。そして、図4、図5のように周壁部分42の一部には当該周壁部分42の延出方向に沿って螺子孔46が形成されており、この螺子孔46とパネル中間部材33の螺子孔45とが連通した状態で、螺子47を操作パネル1の表側から両螺子孔45、46に挿通させることにより、パネル中間部材33に延出部材40を固定することが可能となっている。更に、周壁部分42にはパネル中間部材33側に向けて上述したように適度なクリック感を与えるスプリング48(図5に示す。)が設けられて、パネル中間部材33の拡大孔部39b内に挿入することが可能となっている。更にまた、周壁部分42は、図4に示されるように、回転体連結部材26をパネル中間部材33に対してパネルリア側部材側から回転可能に収納する通孔51を備えたホルダ50を有している。
【0051】
フランジ部分43は、周壁部分41から周壁部分42にかけて貫通孔39の径方向外側に延びるかたちで形成されるもので、操作パネル1の表側の面が、第1のギア9の大径部18の開口側の端の全面とガタツキなく当接しうるものとなっている。
【0052】
また、第1のギア9は、延出部材40と同様に透光性を有する素材、例えばポリカーボネートにより形成されたものとなっており、拡散材を混入して導光部材として形成してもよいものである。
【0053】
そして、基板11は、この実施例では、チップLED29、チップLED30以外にも図2及び図3に示されるように、チップ状の発光ダイオード(以下、チップLED)52を有しており、このチップLED52は、延出部材40のフランジ部分43の基板側面と対面する位置において1又は複数にて設けられている。
【0054】
複数のチップLED52をフランジ部分43の周方向に沿って設ける場合には、各チップLED52の色彩を赤色、青色、黄色等と異ならせるようにしても良い。これにより、ダイヤルノブ6の回転により点灯表示部12、53から発する光の色彩が変化するので、ダイヤルノブ6の回転角度やそれによって生ずる機能を点灯表示部12、53の発する光の色彩により容易に視認することができる。
【0055】
以上の構成により、パネル中間部材33は、図2に示されるように、相対的に単純な構造となるので、このパネル中間部材33を形成するための金型の製作も容易になり、金型の改修も容易になることから、スイッチ機構2、3、4の相互の間隔の調整も貫通孔39の位置を調整するのみで足りる。また、パネル中間部材33は、断面が略I字状若しくはHの字を横倒しにした形態となっているため、板状部33aの反りが少なくなり、当該板状部33aの平面度を保持し易くなっている。更に、寸法管理を図るべき部位がパネル中間部材33の車両への螺子孔38の内径寸法や螺子孔38相互の間隔等に減少するので、射出成形の設定も容易になる。
【0056】
また、延出部材40が単独の部品となるので、第1のギア9を最適に回転させるための外径寸法の調整が容易となり、しかも、調整が完了した延出部材40は各スイッチ機構2、3、4において共通で使用することができるため、ダイヤルの回転フィーリングに対してのスイッチ機構2、3、4ごとのバラツキをなくすことができる。更に、延出部材40の円筒状部分の真円度や面粗度をスライダー8が円滑に摺動可能なように寸法管理をすることも容易となり、調整が完了した延出部材40はスイッチ機構2とスイッチ機構4とにおいて共通で使用することができるので、スライダー8をプッシュした際のスイッチ機構2、4での操作フィーリングに対してのバラツキをなくすこともできる。更にまた、既に上述したように各スイッチ機構2、3、4のダイヤルノブ6のクリック感を作り出す機構も、延出部材40の下部に設けることにより、ダイヤルノブ6の操作フィーリングに対してのバラツキをなくすことができる。そして、スイッチ機構が3つある場合には、3つそれぞれについての開発が必要となる場合もあったが、延出部材40の共通化によりスイッチ機構1つ分の開発で足りることとなったので、スイッチ機構の開発費用や開発時間の削減を図ることもできる。
【0057】
そして、延出部材40及び第1のギア9が透光性を有する素材で形成され、スライダー8が遮光性を有する素材で形成されていると共に、基板11の延出部材40のフランジ部分43と対峙する面にチップLED52を配置したことにより、チップLED52を光源とした光が延出部材40のフランジ部分43を透過して第1のギア9に至った後、更に点灯表示部53まで到達して、点灯表示部53を点灯させたりすることができる。しかも、スライダー8が遮光性を有しているので、スライダー8がチップLED52からスライダー8の内側への光の入射を遮り、チップLED29やチップLED30の光と混ざることも回避される。
【0058】
尚、スライダー8を有さずダイヤル式スイッチの機構のみを有するスイッチ機構3においては、図4に示される構成から遮光性を有する素材で成るスライダー8及び押圧部15が除外された構成となるところ、チップLED29、30から射出される光が延出部材40及び第1のギア9を透過してダイヤルノブ6の側面に到達させることも可能である。
【0059】
図5から図7において、スライダー8及び延出部材40の変形例を用いた操作パネル1が示されている。以下、この操作パネル1について、スライダー8と延出部材40を中心に図5から図7を用いて説明する。但し、上述した操作パネル1の構成と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。また、図6では第1のギアと第2のギアとが省略されているが、その配置及び構成は、第2のギアの位置以外については図4と同様である。
【0060】
この実施例では、スライダー8は、図6に示されるように一方端から他方端まで略同じ外径寸法に構成されたものとなっている。また、延出部材40は、第2のギア10が車両上下方向の下側に位置するように装着されると共に、フランジ部分43に螺子孔46が形成されたものとなっている。そして、延出部材40の第2のギア10が装着される位置に伴い、パネル中間部材33の貫通孔39も拡大孔部39aが車両上下方向の下側に形成されたものとなっている。更に、周壁部分41には、図7に示されるように第1のギアの抜け落ち防止のために、延出部材の外周面に円筒の径方向に突出する爪部55が形成されている。
【0061】
このような構成のスライダー8、延出部材40を用いる場合でも、図6に示されるように、延出部材40について透光性を有する素材で形成し、スライダー8について遮光性を有する素材で形成することで、チップLED29から発せられた光は、ノブキャップ7の意匠面の点灯表示部に入射されて、ノブキャップ7の意匠面の点灯表示部が光る一方で、このチップLED29からの光はスライダー8により遮られて外部には漏れないものとなっている。また、チップLED52から延出部材40のフランジ部分43を透過してきた光は、ダイヤルノブ6の点灯表示部12まで到達し、点灯表示部12を光らせることができる。
【0062】
尚、延出部材40をパネル中間部材33に装着した構成は、図7に示されるものとなる。これは、先述した実施例でもほぼ同様である。
【符号の説明】
【0063】
1 操作パネル
2 スイッチ機構
3 スイッチ機構
4 スイッチ機構
6 ダイヤルノブ
7 ノブキャップ
8 スライダー
9 第1のギア
10 第2のギア
11 基板
12 点灯表示部
29 チップLED
30 チップLED
33 パネル中間部材(パネル部材)
39 貫通孔
40 延出部材
52 チップLED
53 点灯表示部
55 爪部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔が形成されたパネル部材と、
前記貫通孔の周縁に位置して前記貫通孔の軸方向に延びる延出部材と、
回転操作が可能なダイヤルノブを有するダイヤル式スイッチの機構を備えたスイッチ機構とから構成され、
前記延出部材は、前記パネル部材と別体であると共に、この延出部材の外周側に前記ダイヤル式スイッチの機構が配置されていることを特徴とするスイッチ機構を有する操作パネル。
【請求項2】
前記延出部材は、透光性を有する素材で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスイッチ機構を有する操作パネル。
【請求項3】
前記ダイヤルノブに対し当該ダイヤルノブの軸方向に沿って離れた位置に第1の光源体を有し、前記第1の光源体は、前記延出部材の径方向の内側となるように配置されていると共に、
前記ダイヤルノブの前記延出部材よりも外周側となる部位に前記第1の光源体から射出されて前記延出部材を透過した光が入射される点灯表示部を有することを特徴とする請求項2に記載のスイッチ機構を有する操作パネル。
【請求項4】
前記ダイヤルノブに対し当該ダイヤルノブの軸方向に沿って離れた位置に第2の光源体を有し、前記第2の光源体は、前記延出部材の径方向の外側となるように配置されていると共に、
前記ダイヤルノブの前記延出部材よりも外周側となる部位に前記第2の光源体から射出されて前記延出部材を透過した光が入射される点灯表示部を有することを特徴とする請求項2に記載のスイッチ機構を有する操作パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−187197(P2011−187197A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48681(P2010−48681)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(500309126)株式会社ヴァレオジャパン (282)
【Fターム(参考)】