説明

スイッチ装置、スイッチ装置の製造方法、伝送路切替装置、および試験装置

【課題】可動接点を有するアクチュエータを収容して、可動接点と電気的に接続または切断される固定接点を精度よく形成されるスイッチ装置のパッケージ。
【解決手段】上面と下面との気密性を保ちつつ上面と下面とを電気的に接続するビアが設けられる第1基板と、第1基板の上面に設けられ、アクチュエータを収容する貫通孔が形成される第2基板と、第2基板の上面に設けられ、可動接点を有するアクチュエータを支持する第3基板と、を備えるスイッチ装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチ装置、製造方法、伝送路切替装置、および試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電膜と当該圧電膜に電圧を印加する電極とを設け、当該圧電膜に電圧が印加されて当該圧電膜が伸縮することによって、伸縮に応じた動作をするアクチュエータを半導体基板上に形成することが知られていた(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 特開2001−191300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようなアクチュエータをパッケージングしてスイッチ装置を形成する場合、当該アクチュエータを収容するキャビティをエッチング等で設けたガラス基板と、アクチュエータが形成された半導体基板とを接合していた。しかしながら、アクチュエータに形成された可動接点と電気的に接続または切断される固定接点およびパッケージの外部へと電気信号を伝送するビア等を、ガラス基板のエッチングによって荒れた表面上に微細な加工をしなければならず、精度よく加工することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、上面と下面との気密性を保ちつつ上面と下面とを電気的に接続するビアが設けられる第1基板と、第1基板の上面に設けられ、アクチュエータを収容する貫通孔が形成される第2基板と、第2基板の上面に設けられ、可動接点を有するアクチュエータを支持する第3基板とを備えるスイッチ装置を提供する。
【0005】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本実施形態に係るスイッチ装置100の構成例を示す。
【図2】本実施形態に係るスイッチ装置100の側面図を示す。
【図3】本実施形態に係るスイッチ装置100を形成する製造方法の一例を示す。
【図4】本実施形態に係る第1基板610にビア112を形成した段階の断面を示す。
【図5】本実施形態に係る第1基板610上に第2基板620を貼り合わせた段階の断面を示す。
【図6】本実施形態に係る第1基板610上に第1接点122および配線部114等を形成した段階の断面を示す。
【図7】本実施形態に係る第2基板620上に第3基板630を接合した段階の断面を示す。
【図8】本実施形態に係る第3基板630上に第4基板640を接合した段階の断面を示す。
【図9】本実施形態に係る試験装置410の構成例を被試験デバイス400と共に示す。
【図10】本実施形態に係る伝送路切替装置500の構成例を示す。
【図11】本実施形態に係るループバック試験する試験装置の構成例を被試験デバイス400と共に示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0008】
図1は、本実施形態に係るスイッチ装置100の構成例を示す。図2は、本実施形態に係るスイッチ装置100の側面図を示す。スイッチ装置100は、圧電膜と圧電膜に電圧を印加する電極との間に導電性酸化膜を備え、圧電膜を長寿命化させる。また、スイッチ装置100は、アクチュエータ130の剛性を高めつつ、アクチュエータ130の割れ、欠け、またはヒビ等の物理的な破壊を防ぐ。
【0009】
スイッチ装置100は、基体下部に設けられた固定接点である第1接点122と、アクチュエータに設けられた可動接点である第2接点134とを接触または離間させることにより、固定接点および可動接点間の電気的導通または非導通を切り換える。スイッチ装置100は、パッケージ等に密封されて収容された装置であってよい。スイッチ装置100は、基体下部110と、アクチュエータ130と、第1電源部180と、第2電源部182と、基準電圧184と、制御部190と、キャビティ部310と、台座部320と、基体上部330とを備える。
【0010】
基体下部110は、固定接点が設けられる平坦な第1面を有する。また、基体下部110は、第1面とは異なる第2面に、外部と電気信号および電源等を授受する配線部を有してよい。基体下部110は、ガラス基板等の絶縁体であってよく、これに代えてシリコン等の半導体基板等であってよい。これに代えて、基体下部110は、金属の基板あってもよい。基体下部110は、ビア112と、配線部114と、グランド線116と、グランド線118と、第1信号線120と、第1接点122aと、第1接点122bと、第2信号線124とを有する。
【0011】
ビア112は、基体下部110を貫通して金属で被覆されることで、第1面に形成される電気配線と第2面に形成される電気配線とを電気的に接続する。一例として、ビア112は、第1接点122と第2面に形成された配線部114とを電気的に接続する。また、ビア112は、導電性材料が充填されて、貫通孔が形成される基体下部110の上面と下面の密閉性を保つように形成されてよい。ビア112は、基体下部110に設けられる第1接点122の数およびアクチュエータ130に供給する電気信号および電源等の数に応じて、基体下部110に複数設けられてよい。
【0012】
配線部114は、スイッチ装置100を通過させる信号、アクチュエータ130に供給する電気信号、または電源電圧等を伝送する。配線部114は、少なくとも1つのビア112に対して信号を送信または受信させるべく、基体下部110の第1面または第2面に設けられる導電性の配線パターンであってよい。これに代えて、配線部114は、基体上部330の第1面または第2面に設けられてもよい。配線部114は、ランド、コネクタ、および/またはアンテナ等を含み、外部からスイッチ装置100に通過させる信号を送受信してよい。
【0013】
グランド線116およびグランド線118は、基体下部110の第1面に設けられ、ビア112および配線部114を介して基準電圧184に接続される。グランド線116およびグランド線118は、導電性の配線パターンであってよい。
【0014】
第1信号線120および第2信号線124は、基体下部110の第1面の、グランド線116およびグランド線118の間に設けられる。第1信号線120および第2信号線124は、導電性の配線パターンであってよい。
【0015】
ここで、グランド線116、グランド線118、第1信号線120、および第2信号線124は、コプレーナ伝送線路を形成してよい。即ち、第1信号線120および第2信号線124の線幅、第1信号線120および第2信号線124とグランド線116との間隔、ならびに第1信号線120および第2信号線124とグランド線118との間隔は、第1信号線120および第2信号線124の特性インピーダンスに応じて予め定められた値で形成される。これによって、第1信号線120および第2信号線124は、数十GHzに至る高周波信号を伝送することができる。
【0016】
なお、スイッチ装置100を通過させる電気信号が、コプレーナ伝送線路を形成しなくても伝送できる程度の低周波信号の場合、グランド線116およびグランド線118は無くてもよい。
【0017】
第1信号線120には、第1接点122aが、第2信号線124には、第1接点122bが、それぞれ設けられる。第1接点122は、突部のない平面状のパッドであってよい。第1接点122は、アルミニウム、タングステン、パラジウム、ロジウム、金、白金、ルテニウム、インジウム、イリジウム、オスミウム、モリブデン、および/またはニッケルを含んでよい。ここで、第1接点122は、これらの材料を含む2以上の材料の合金であってよい。また、第1信号線120および第2信号線124は、第1接点122と略同一の材質で形成されてよい。
【0018】
アクチュエータ130は、第2接点134を有し、第2接点134を移動させて第1接点122と接触または離間させる。アクチュエータ130は、ゾルゲル法およびCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法等を用いる半導体製造装置等によって成膜されてよい。アクチュエータ130は、第2接点部132と、第1圧電膜136と、第2圧電膜138と、支持層150と、第1保護膜152と、第2保護膜154と、突出部156と、第1圧電膜136の第1電極層162および第2電極層164と、第2圧電膜138の第3電極層166および第4電極層168と、第1導電性酸化物膜210と、第2導電性酸化物膜220とを有する。
【0019】
第2接点部132には、第2接点134が設けられる。第2接点部132は、第1接点122と同様の金属を含んでよい。第2接点134は、突起を有する形状であってよい。これに代えて、第2接点134は、突部のない平面であってもよい。
【0020】
第2接点134は、第1接点122の破壊または劣化を防ぐように、半球状の形状であってよく、これに代えて先端を丸めた針状の形状であってもよい。一例として、第2接点134は、第1接点122と接触して伝送線路を形成する場合に、伝送する信号の周波数に応じた伝送線路幅等を形成するように、予め定められた形状で設けられてよい。
【0021】
本実施例において、スイッチ装置100は、第1接点122aおよび第1接点122bが基体下部110に設けられ、1つの第2接点134と接触または離間する。これにより、スイッチ装置100は、第2接点134を介して第1接点122aと第1接点122bとの間の電気的導通または非導通を切り換える。一例として、配線部114は、外部からの電気信号を第1接点122aへと伝送し、スイッチ装置100がONの場合に当該電気信号を第1接点122bから外部へと伝送する。
【0022】
これに代えて、スイッチ装置100は、基体下部110に1つの第1接点122を有し、アクチュエータ130に外部からの電気信号を第2接点134へと伝送する配線を有してもよい。また、当該配線は、第1接点122に伝送される外部からの電気信号を、第2接点134を介して受け取り、外部へと伝送してもよい。このように、スイッチ装置100は、第1接点122から第2接点134への信号伝送をON/OFFし、ONの場合に、外部から入力された信号を第1接点122から第2接点134を介して外部へと伝送してよい。
【0023】
第1圧電膜136は、支持層150の上面に形成される。第1圧電膜136は、第1駆動電圧に応じて伸縮してよい。この場合、第1圧電膜136は、第1駆動電圧を印加された場合に、アクチュエータ130の長さ方向に伸縮して、第1接点122と第2接点134との距離が変化する方向にアクチュエータ130を湾曲させるように配される。
【0024】
第1圧電膜136は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)のウルツ鉱型の結晶、またはチタン酸バリウム(BTO)等のペロブスカイト系強誘電体等により形成されてよい。
【0025】
第2圧電膜138は、支持層150を介して第1圧電膜136に対向して、支持層150の第1圧電膜136が形成される面とは反対側の面に設けられ、第2駆動電圧に応じて伸縮してアクチュエータ130のそり量を変化させる。第2圧電膜138は、第2駆動電圧を印加された場合に、アクチュエータ130の長さ方向に伸縮して、第1接点122と第2接点134との距離が変化する方向にアクチュエータ130を湾曲させるように配される。
【0026】
第2圧電膜138は、第1圧電膜136と同様に、ペロブスカイト系強誘電体等を用いてよい。第2圧電膜138は、第1圧電膜136と略同一の材料で、かつ、第1圧電膜136と略同一の形状で形成されることが望ましい。また、第1圧電膜136および第2圧電膜138の膜厚は、0.1μm〜5μmの範囲で形成されてよい。ここで、第1圧電膜136および第2圧電膜138としてPZTを成膜する場合、チタン酸鉛(PT)を成膜してからPZTを成膜してよい。これによって、PZTは、結晶性良く成膜することができる。
【0027】
ここで、第1圧電膜136は、第2圧電膜138に第2駆動電圧を印加しない状態におけるアクチュエータ130のそりを抑える。第1圧電膜136は、第2圧電膜138と略同一の材料で、かつ、第2圧電膜138と略同一の形状で形成され、アクチュエータ130の第2圧電膜138が形成される面と反対側に設けられるので、第2圧電膜138によって生じるそりと反対方向にそるように応力が働き、アクチュエータ130のそりを抑えることができる。
【0028】
また、第1圧電膜136は、第2圧電膜138の温度変化に伴う伸縮により生じるアクチュエータ130のそりを抑える。第2圧電膜138は、異なる熱膨張計数の材質の膜の面上に積層されるので、温度変化に伴って熱応力によって変形し、アクチュエータ130にそりを生じさせる。第1圧電膜136は、第2圧電膜138と略同一の材料で、かつ、第2圧電膜138と略同一の形状で形成され、アクチュエータ130の第2圧電膜138が形成される面と反対側に設けられるので、温度変化によって生じるそりに対しても反対方向にそるように応力が働き、アクチュエータ130の温度変化に伴うそりを抑えることができる。
【0029】
支持層150は、第1圧電膜136および第2圧電膜138の間に設けられる。支持層150は、力の印加によって変形する弾性を有し、第1圧電膜136および/または第2圧電膜138が伸縮して力を印加することによって、湾曲される。また、支持層150は、アクチュエータ130が撓みすぎるのを抑制する剛性を有し、第1圧電膜136および第2圧電膜138の電界の印加が停止すると、アクチュエータ130は初期位置に戻る。
【0030】
支持層150は、第1圧電膜136または第2圧電膜138が形成される場合に、当該圧電膜と共に焼成温度に加熱される。即ち、第1圧電膜136および第2圧電膜138は、第1圧電膜136および第2圧電膜138の焼成温度に加熱されて、支持層150上の異なる面にそれぞれ形成され、支持層150は、第1圧電膜136および/または第2圧電膜138と共に焼成温度に加熱される。
【0031】
そこで支持層150は、第1圧電膜136および第2圧電膜138の焼成温度に加熱しても破壊されない材質で形成される。第1圧電膜136および第2圧電膜138をPZT等で形成する場合、焼成温度は、略700℃以上に達する場合もある。したがって、支持層150は、第1圧電膜136および第2圧電膜138の焼成温度に加熱しても、割れ、欠け、またはヒビ等の物理的な破壊が生じない材質で形成することが望ましい。
【0032】
また、支持層150は、第1圧電膜136および第2圧電膜138の焼成温度に加熱しても圧電膜または電極層と化学反応を生じ難い材質で形成されることが望ましい。第1支持層150は、圧電膜の焼成温度の加熱によって、圧電膜または電極層と化合物を形成して、割れ、欠け、またはヒビ等の物理的な破壊が生じない材質で形成することが望ましい。また、この場合、支持層150は、圧電膜の焼成温度の加熱によって、第1圧電膜136および第2圧電膜138の圧電定数等の膜特性を劣化させない材質で形成することが望ましい。
【0033】
支持層は、絶縁材料で形成される。支持層150は、絶縁材料で形成されることで、例えば700℃程度の圧電膜の焼成温度に耐え、金属膜よりも安価なCVD等の製造方法により短時間で形成することができる。
【0034】
支持層150は、例えば、酸化シリコン(SiO)または窒化シリコン(SiN)を含む。これに代えて、支持層150は、アルミニウム、金、白金等の導電体、ガラス等の絶縁体、またはシリコン等の半導体を用いてよい。また、支持層150の膜厚は、0.1μm〜50μmの範囲で形成されてよい。
【0035】
第1保護膜152は、絶縁材料で形成され、第1圧電膜136における支持層150とは反対側から第1圧電膜136の少なくとも一部を覆い、かつ、第1圧電膜136の端部の少なくとも一部において支持層150と接する。第1保護膜152および支持層150は、第1圧電膜136、第1電極層162および第2電極層164が露出しないように各層を覆うように形成されてよい。ここで、第1保護膜152および支持層150は、第1電極層162および第2電極層164がそれぞれ配線部114と接続される接続部を露出させて形成されてよい。
【0036】
ここで、第1保護膜152および支持層150は、第1圧電膜136、第1電極層162および第2電極層164の一部を覆って形成されてよい。例えば、第1保護膜152および支持層150は、各層の側部を覆う。即ち、第1保護膜152および支持層150は、アクチュエータ130の側部において覆う。また、第1保護膜152および支持層150は、アクチュエータ130の側部の支持層150側を覆ってもよい。
【0037】
第2保護膜154は、絶縁材料で形成され、第2圧電膜138における支持層150とは反対側から第2圧電膜138の少なくとも一部を覆い、かつ、第2圧電膜138の端部の少なくとも一部において支持層150と接する。第2保護膜154および支持層150は、第2圧電膜138、第4電極層168および第3電極層166が露出しないように各層を覆うように形成されてよい。ここで、第2保護膜154および支持層150は、第1電極層162、第2電極層164、第4電極層168および第3電極層166がそれぞれ配線部114と接続される接続部を露出させて形成されてよい。
【0038】
ここで、第2保護膜154および支持層150は、第2圧電膜138、第4電極層168および第3電極層166の一部を覆って形成されてよい。例えば、第2保護膜154および支持層150は、各層の側部を覆う。即ち、第2保護膜154および支持層150は、アクチュエータ130の側部において覆う。また、第2保護膜154および支持層150は、アクチュエータ130の側部の支持層150側を覆ってもよい。
【0039】
第1保護膜152および第2保護膜154は、酸化シリコンまたは窒化シリコンで形成されてよい。第1保護膜152および第2保護膜154は、支持層150と同種の絶縁材料で形成されてよく、望ましくは、支持層150と略同一の絶縁材料で形成される。即ち、第1保護膜152および第2保護膜154は、支持層150と同様に、弾性および剛性を有し、支持層150と密着性よく、強く結合して形成される。なお、本実施例は、第1保護膜152および第2保護膜154は、支持層150と同一の絶縁材料で形成される例であり、図2においてはこれらの境界を示していない。
【0040】
突出部156は、アクチュエータ130の可動端である先端部において、第1圧電膜136および第2圧電膜138が設けられていない支持層150の部分である。第2接点部132は、突出部156上に設けられてよい。これによって、第2接点134は、第1電極層162、第2電極層164、第3電極層166、および第4電極層168と離間された位置に形成することができ、それぞれの電極層に供給される電気信号の影響を低減させることができる。
【0041】
また、突出部156は、第1接点122と第2接点134とが接触してON状態になった場合に、第1信号線120から第2信号線124までの伝送線路から、第1電極層162、第2電極層164、第3電極層166、および第4電極層168の4つの電極を離間させた配置にすることができる。これによって、突出部156は、コプレーナ伝送線路に対して、それぞれの電極層に供給される電気信号に起因する雑音等の影響を低減させることができる。
【0042】
第1電極層162および第2電極層164は、第1圧電膜136の上面および下面に設けられ、第1圧電膜136に第1駆動電圧を印加する。ここで、第1駆動電圧は、正または負の予め定められた電圧でよい。
【0043】
第1電極層162および第2電極層164は、アクチュエータ130の長さ方向Lに延伸する平板形状を有してよい。第1電極層162および第2電極層164は、アルミニウム、金、白金、銅、インジウム、タングステン、モリブデン、ルテニウム、イリジウム等の低抵抗で加工が容易な金属であってよく、ルテニウムオキサイド(RuO、例えばRuO等)、イリジウムオキサイド(IrO、例えばIrO等)等酸化物電極、セラミック電極、または、シリコン等の半導体を用いてもよい。
【0044】
電極材料としてシリコンを用いる場合には、不純物を高濃度にドープしたシリコンを用いることが好ましい。本実施例の第1電極層162および第2電極層164は、白金である。ここで、白金を成膜する場合、チタン、タンタル、クロム等を成膜してから白金を成膜してよい。
【0045】
第3電極層166および第4電極層168は、第2圧電膜138の上面および下面に設けられ、第2圧電膜に第2駆動電圧を印加する。ここで、第2駆動電圧は、正または負の予め定められた電圧でよい。第3電極層166および第4電極層168は、アクチュエータ130の長さ方向Lに延伸する平板形状を有してよい。第3電極層166および第4電極層168は、第1電極層162および第2電極層164と略同一の形状、および略同一の材質でよい。
【0046】
また、第3電極層166は、第2電極層164と略同一の形状および略同一の材質でよく、第4電極層168は、第1電極層162と略同一の形状および略同一の材質でよい。これらの第1電極層162、第2電極層164、第3電極層166および第4電極層168の膜厚は、0.05μm〜1μmの範囲で形成されてよい。
【0047】
第1導電性酸化物膜210は、第1圧電膜136と第2電極層164との間に形成される。第1導電性酸化物膜は、導電性酸化物を含む。第1導電性酸化物膜210は、Ir系酸化物(例えばIrO)、Ru系酸化物(例えばRuO、SRO)、またはLSCO、LNO等の酸化物を主成分としてよい。
【0048】
第1導電性酸化物膜210は、第1圧電膜136上に形成され、第1圧電膜136の伸縮による疲労を低減させる。第1圧電膜136は、伸縮を繰り返すことによって、圧電膜に含まれる酸素を放出して疲労が蓄積し、寿命が短くなると考えられている。そこで、第1導電性酸化物膜210は、酸化物を含み第1圧電膜136に接して形成されるので、第1圧電膜136からの酸素の放出を防ぐことができる。
【0049】
また、第1導電性酸化物膜210は、第1圧電膜136の酸素を放出した部分に酸素を供給することができる。以上のように、第1導電性酸化物膜210は、第1圧電膜136の酸素の欠乏領域が形成されることを防ぎ、第1圧電膜136を長寿命化することができる。
【0050】
第2導電性酸化物膜220は、第2圧電膜138と第4電極層168との間に形成される。第2導電性酸化物膜220は、導電性酸化物を含む。第2導電性酸化物膜220は、Ir系酸化物(例えばIrO)、Ru系酸化物(例えばRuO、SRO)、またはLSCO、LNO等の酸化物を主成分としてよく、第1導電性酸化物膜210と略同一の物質で形成されてよい。
【0051】
第2導電性酸化物膜220は、第2圧電膜138上に形成され、第2圧電膜138の伸縮による疲労を低減させる。即ち、第2導電性酸化物膜220は、第1導電性酸化物膜210と同様に、第2圧電膜138の酸素の欠乏領域が形成されることを防ぎ、第2圧電膜138を長寿命化することができる。
【0052】
第1電源部180は、第1圧電膜136に第1駆動電圧を印加する。第1電源部180は、制御部190の制御信号を受信して、制御信号に応じた駆動電圧を第1駆動電圧として第1圧電膜136に印加する。第2電源部182は、第2圧電膜138に第2駆動電圧を印加する。第2電源部182は、制御部190の制御信号を受信して、制御信号に応じた駆動電圧を第2駆動電圧として第2圧電膜138に印加する。
【0053】
基準電圧184は、予め定められた電圧を供給する。本実施例において、基準電圧184は、GND(0V)電圧である。
【0054】
制御部190は、第1電源部180および/または第2電源部182に制御信号を送信して、第1圧電膜136および/または第2圧電膜138を伸縮させる駆動電圧の印加または遮断を指示する。例えば、制御部190は、第1接点122と第2接点134とを接触させてスイッチ装置100をON状態にする場合に、第2圧電膜138に第2駆動電圧を印加して第2圧電膜138を縮める制御信号を第2電源部182に送信する。また、制御部190は、第1接点122と第2接点134とを離間させてスイッチ装置100をOFF状態にする場合に、第2圧電膜138への第2駆動電圧の供給を停止する制御信号を第2電源部182に送信する。
【0055】
これに代えて制御部190は、第1接点122と第2接点134とを接触させてスイッチ装置100をON状態にする場合に、第1圧電膜136に第1駆動電圧を印加して第1圧電膜136を伸ばす制御信号を第1電源部180に送信してもよい。また、制御部190は、第1接点122と第2接点134とを離間させてスイッチ装置100をOFF状態にする場合に、第1圧電膜136への第1駆動電圧の供給を停止する制御信号を第1電源部180に送信してよい。
【0056】
また、制御部190は、第1接点122と第2接点134とを接触させてスイッチ装置100をON状態にする場合に、第1圧電膜136に第1駆動電圧を印加して第1圧電膜136を伸ばし、第2圧電膜138に第2駆動電圧を印加して第2圧電膜138を縮めてもよい。制御部190は、第1接点122と第2接点134とを離間させてスイッチ装置100をOFF状態にする場合に、第1圧電膜136および第2圧電膜138への駆動電圧の供給を停止してよい。
【0057】
また、制御部190は、第1接点122と第2接点134とを離間させてスイッチ装置100をOFF状態にする場合に、第1圧電膜136を縮めてアクチュエータ130の戻りを付勢してもよい。同様に、制御部190は、スイッチ装置100をOFF状態にする場合に、第2圧電膜138を伸ばしてアクチュエータ130の戻りを付勢してもよい。
【0058】
制御部190は、第1駆動電圧および第2駆動電圧として、予め定められた値を、対応する第1圧電膜136および第2圧電膜138にそれぞれ供給してよい。制御部190は、電子回路等のハードウェアであってよく、これに代えて、プログラム等により動作するソフトウェアであってもよい。
【0059】
キャビティ部310は、基体下部110上に設けられ、スイッチ装置100の側壁の一部としてアクチュエータ130を収容するように四方を覆う。キャビティ部310は、基体下部110と略同一の材質で形成されてよい。
【0060】
台座部320は、キャビティ部310上に設けられ、一部がアクチュエータ130の一端を固定してアクチュエータ130の固定端となる。台座部320とキャビティ部310とが接合されることにより、第1接点122と第2接点134との間の距離は、アクチュエータ130の最大変位量と同等もしくはそれ以下となる。即ち、台座部320と基体下部110との間の距離となるキャビティ部310の高さは、第1接点122と第2接点134との間の距離を調節する。
【0061】
ここで、アクチュエータ130の最大変位量とは、第1圧電膜136および/または第2圧電膜138に印加できる最大の駆動電圧を印加した場合における、アクチュエータ130の変位量を意味してよい。台座部320は、半導体材料をエッチングすることで形成されてよい。台座部320は、一例として、シリコン基板から形成される。この場合、台座部320は、キャビティ部310と陽極接合によって接合されてよい。
【0062】
このように、アクチュエータ130は、長さ方向Lの一方の端部で台座部320に支持される。第1圧電膜136または第2圧電膜138に電圧を印加すると、アクチュエータ130において台座部320に支持されていない第2接点部132側の端部は、厚さ方向に屈曲する(図中、下向きに変位する)、若しくは、反り返る(図中、上向きに変位する)ことができる。
【0063】
基体上部330は、台座部320上に設けられ、基体下部110、キャビティ部310、および台座部320で形成されるスイッチ装置100のパッケージの蓋部となる。基体上部330は、ガラス等で形成される基板でよい。この場合、基体上部330は、台座部320と陽極接合によって接合されてよい。
【0064】
本実施例において、台座部320は、アクチュエータ130を基体上部330に固定することを説明したが、これに代えて、アクチュエータ130は、基体下部110またはキャビティ部310に固定されてもよい。
【0065】
以上の本実施形態に係るスイッチ装置100によれば、アクチュエータ130の厚さ方向の中心面からの距離および厚さが略同一の第1圧電膜136および第2圧電膜138を備えるので、第1圧電膜136がそりを生じさせる応力と、第2圧電膜138がそりを抑える応力とを、略同一にさせることができる。また、アクチュエータ130は、厚さ方向の中心面に対し略対称に複数の膜を有しているので、複数の膜によって生じるアクチュエータ130がそる方向に働く残留応力および熱応力等と、そりを抑える方向に働く残留応力および熱応力等とを、略同一にさせてアクチュエータ130のそりを抑えることができる。
【0066】
このように、アクチュエータ130は、熱応力によるそりを抑えることができるので、様々な環境温度においてもスイッチング動作を実行することができる。また、アクチュエータ130は、第1圧電膜136および第2圧電膜138のそれぞれの上面に第1導電性酸化物膜および第2導電性酸化物膜を有するので、圧電膜を長寿命化することができる。
【0067】
ここで、本実施例において、アクチュエータ130は、第1圧電膜136および第2圧電膜138のそれぞれの上面に第1導電性酸化物膜および第2導電性酸化物膜を有することを説明した。これに代えて、アクチュエータ130は、更に多層構造に形成できる場合は、第1圧電膜136および第2圧電膜138のそれぞれの下面にも導電性酸化物膜を有してよい。
【0068】
また、本実施例において、アクチュエータ130は、厚さ方向の中心面からの距離および厚さが略同一の第1圧電膜136および第2圧電膜138を有することを説明した。これに代えて、第2圧電膜138の膜厚は、第1圧電膜136の膜厚よりも薄く形成されてよい。例えば、第1圧電膜136の側から第2圧電膜138の側へと複数の膜を積層してアクチュエータ130が形成される場合、第1圧電膜136には第2圧電膜138よりも多くの層が積層されるので、第1圧電膜136に生じる応力は、第2圧電膜138に生じる応力とは異なる場合がある。
【0069】
したがって、アクチュエータ130は、厚さ方向の中心面からの距離および厚さを略同一にして複数の材料を積層しても、材料毎に発生する応力のバランスが異なり、そりを生じさせる場合がある。また、アクチュエータ130は、積層される各材料を、厚さ方向の中心面からの距離および厚さを略同一にして積層することができず、支持層150の上方および下方に発生する応力の絶対値が異なってそりを生じさせる場合もある。
【0070】
そこで、アクチュエータ130は、第1圧電膜136の膜厚と第2圧電膜の膜厚とを異ならせて、支持層150の上方および下方に発生する応力の絶対値を略同一にさせてそりを抑える。例えば、アクチュエータ130は、先に形成される第1圧電膜136の厚さに比べて、後に形成される第2圧電膜138の厚さを薄くする。
【0071】
ここで、第1圧電膜136および第2圧電膜138の厚さの比は、アクチュエータ130に発生するそりの量に応じて決められてよい。第1圧電膜136および第2圧電膜138の厚さの比は、1:1から1:0.5の範囲で決められてよい。より望ましくは、厚さの比を、1:1から1:0.8の範囲で決めてよい。
【0072】
また、アクチュエータ130は、発生するそりの方向に応じて、先に形成される第1圧電膜136の厚さに比べて、後に形成される第2圧電膜138の厚さを厚くしてもよい。以上のように、アクチュエータ130は、第1圧電膜136および第2圧電膜138の厚さの比を調節して、支持層150の上方および下方に発生する応力の絶対値を略同一にするので、発生する応力を打ち消してそりを抑えることができる。
【0073】
本実施例において、第2接点部132は、突出部156上に設けられることを説明した。これに代えて、第2接点部132は、保護膜を介して第4電極層168の下方に設けられてよい。この場合、アクチュエータ130は、突出部156が無くてもよい。
【0074】
図3は、本実施形態に係るスイッチ装置100を形成する製造方法の一例を示す。また、図4から図8は、本実施形態に係るスイッチ装置100が形成される過程におけるスイッチ装置100の断面を示す。
【0075】
まず、上面と下面との気密性を保ちつつ、上面と下面とを電気的に接続するビア112を、第1基板610に形成する(S300)。第1基板610上には、複数のスイッチ装置100が形成されてよく、対応する複数のビア112が形成されてよい。この場合、第1基板610は、後に説明する個々のスイッチ装置100に切り離されるダイシングの過程を経て、スイッチ装置100の基体下部110となる。なお、この段階において、第1基板610の下面には、配線部114が形成されてよい。図4は、本実施形態に係る第1基板610にビア112を形成した段階の断面を示す。
【0076】
次に、第2基板620にアクチュエータ130を収容する貫通孔622を形成する(S302)。第2基板620の貫通孔622は、第2基板620の下面側から上面側に向かって基板面と平行な断面積が大きくなるようにテーパー状に形成される。ここで、貫通孔622の基板面と平行な断面積は、略四角形であってよく、これに代えて略円形または略楕円形であってよい。貫通孔622は、研磨剤等を吹き付けて加工するサンドブラスト、ドライエッチング、またはウェットエッチング等で形成されてよい。第2基板620は、後に説明する個々のスイッチ装置100に切り離されるダイシングの過程を経て、スイッチ装置100のキャビティ部310となる。
【0077】
次に、第1基板610の上面に第2基板620の下面を貼り合わせる(S310)。第1基板610と第2基板620とは、加熱によって貼り合わされてよい。ここで、第2基板620の下面が第1基板610の上面に貼り合わされるので、第2基板620の貫通孔622のテーパーは、第1基板610側から第1基板610の反対側に向かって孔径が大きくなるように配置される。図5は、本実施形態に係る第1基板610上に第2基板620を貼り合わせた段階の断面を示す。
【0078】
次に、第1基板610の上面に、ビア112と電気的に接続される固定接点である第1接点122を形成する(S320)。この段階において、第1基板610の上面に配置されるべき配線部114、グランド線116、グランド線118、第1信号線120、および第2信号線124も形成される。例えば、固定接点等のマスクとなるレジストを塗布し、フォトレジスト法によって固定接点等を形成する。図6は、本実施形態に係る第1基板610上に第1接点122および配線部114等を形成した段階の断面を示す。
【0079】
次に、可動接点である第2接点134を有するアクチュエータ130が形成された第3基板630を第2基板620の上面に接合する(S330)。第2基板620と第3基板630とは、陽極接合によって接合されてよく、これに代えて、加熱等によって貼り合わせられてもよい。この段階において、アクチュエータ130は、第2基板620の貫通孔622内部に収容される。
【0080】
ここで、アクチュエータ130は、第3基板630上に形成される。例えば、第3基板630上に第1保護膜152を、CVD法等で絶縁材料を成膜してからアニール処理して形成する。次に、第1保護膜152上に、第1電極層162、第1圧電膜136、第1導電性酸化物膜210、および第2電極層164を形成する。次に、第2電極層164上に支持層150を、CVD法等で絶縁材料を成膜してからアニール処理して形成する。
【0081】
次に、支持層150上に、第3電極層166、第2圧電膜138、第2導電性酸化物膜220、および第4電極層168を形成する。次に、第4電極層168上に絶縁材料で第2保護膜154を支持層150および第1保護膜152と同様に形成する。次に、突出部156上に、第2接点部132を形成する。次に、第3基板630を加工して、台座部320を形成する。ここで、台座部320は、アクチュエータ130が形成される面と反対の他方の面から、半導体基板の一部がエッチングによって除去されて形成される。
【0082】
ここで、台座部320は、第1保護膜152をエッチングストップ層としてエッチングされてよい。本段階において、アクチュエータ130の一端は基板と分離されて可動端となり、台座部320に固定された他端を固定端として自立する。このようにして、第3基板630上に、複数のアクチュエータ130が形成されてよい。
【0083】
ここで、第2基板620と第3基板630とが接合された後に、アクチュエータ130の各電極と、第1基板610上の対応する配線部114とを電気的に配線してよい。第3基板630は、後に説明する個々のスイッチ装置100に切り離されるダイシングの過程を経て、スイッチ装置100の台座部320となる。図7は、本実施形態に係る第2基板620上に第3基板630を接合した段階の断面を示す。
【0084】
次に、第3基板630と第4基板640とを接合する(S340)。第4基板640は、第2基板620の貫通孔622の開口を、第3基板630の反対側において封止する。第3基板630と第4基板640とは、陽極接合によって接合されてよく、これに代えて、加熱等によって貼り合わせられてもよい。これによって、アクチュエータ130は、第2基板620の貫通孔622内部に密封されてよい。ここで、第1基板610、第2基板620、および第4基板640は、ガラス材質で形成されてよい。
【0085】
ここで、貫通孔622内部の雰囲気は、窒素等の不活性ガスで置換されてから密封されてよい。第4基板640は、後に説明する個々のスイッチ装置100に切り離されるダイシングの過程を経て、スイッチ装置100の基体上部330となる。図8は、本実施形態に係る第3基板630上に第4基板640を接合した段階の断面を示す。
【0086】
次に、第1基板610、第2基板620、第3基板630、および第4基板640をダイシングして、個々のスイッチ装置100に切り離す(S350)。例えば、図8のA−A'およびB−B'で示された点線部分で切断して、アクチュエータ130を密閉収容するパッケージを形成する。切り離されたスイッチ装置100と、第1電源部180、第2電源部182、および基準電圧184とを戦記的に接続することによって、図2に示したスイッチ装置100が形成される。
【0087】
従来、1つの基板を加工してアクチュエータを収容するキャビティを形成し、形成したキャビティの加工面である底面部にビア、接点、および配線を形成していたので、加工されて荒れた表面に精度よくビア等を形成することが困難であった。また、加工するキャビティの深さは、アクチュエータの可動接点とキャビティ底面部の固定接点との間の距離に直接影響するので、確実にスイッチ動作するスイッチ装置100を形成するには、深さ方向の加工精度を高くしなければならない。しかしながら、キャビティを形成するサンドブラストまたはエッチング等の加工方法は、深さ方向の精度を高くすることが困難であった。
【0088】
これに対して、本実施形態によるスイッチ装置100は、ビア112が設けられた第1基板610と、アクチュエータ130を収容する貫通孔622が設けられた第2基板620とを貼り合わせて、基体下部110およびキャビティ部310を形成する。したがって、荒れた加工面にビア112等を形成することがないので、精度よくビア112等を形成することができる。また、アクチュエータ130の第2接点134と基体下部110の第1接点122との間の距離は、キャビティ部310となる第2基板620の厚さが直接影響する。
【0089】
ここで、基板の厚さは、基板表面を研磨する研磨精度で決めることができるので、キャビティを形成する加工の深さ方向の精度に比べて精密にすることができる。したがって、本実施形態によるスイッチ装置100は、アクチュエータ130のそりを抑えつつ、接点間の距離の精度を高めることができ、確実にスイッチ動作するスイッチ装置100を形成することができる。
【0090】
また、本実施形態によるスイッチ装置100は、第1基板610側から第3基板630側に向かって孔径が大きくなるテーパー状に設けられた貫通孔622を、第2基板620が有する。これによって、第1基板610の上面に、第1接点122等を形成する段階において、固定接点等のマスクとなるレジストを塗布または剥離し易くすることができる。また、スイッチ装置100は、テーパーを有する貫通孔622を第2基板620に形成してから、第1基板610と貼り合わせるので、レジストの塗布および剥離し易い形状を形成させつつ、アクチュエータ130を収容する貫通孔622を形成することができる。
【0091】
図9は、本実施形態に係る試験装置410の構成例を被試験デバイス400と共に示す。試験装置410は、アナログ回路、デジタル回路、アナログ/デジタル混載回路、メモリ、およびシステム・オン・チップ(SOC)等の少なくとも1つの被試験デバイス400を試験する。試験装置410は、被試験デバイス400を試験するための試験パターンに基づく試験信号を被試験デバイス400に入力して、試験信号に応じて被試験デバイス400が出力する出力信号に基づいて被試験デバイス400の良否を判定する。
【0092】
試験装置410は、試験部420と、信号入出力部430と、制御装置440とを備える。試験部420は、被試験デバイス400との間で電気信号を授受して被試験デバイス400を試験する。試験部420は、試験信号発生部423と、期待値比較部426とを有する。
【0093】
試験信号発生部423は、信号入出力部430を介して1または複数の被試験デバイス400に接続されて、被試験デバイス400へ供給する複数の試験信号を発生する。試験信号発生部423は、試験信号に応じて被試験デバイス400が出力する応答信号の期待値を生成してよい。
【0094】
期待値比較部426は、信号入出力部430から受信した被試験デバイス400の応答信号に含まれるデータ値と試験信号発生部423が生成する期待値とを比較する。期待値比較部426は、比較結果に基づき、被試験デバイス400の良否を判定する。
【0095】
信号入出力部430は、試験すべき被試験デバイス400と試験部420との間を電気的に接続して、試験信号発生部423が発生した試験信号を当該被試験デバイス400に送信する。また、信号入出力部430は、試験信号に応じて当該被試験デバイス400が出力する応答信号を受信する。信号入出力部430は、受信した被試験デバイス400の応答信号を期待値比較部426へと送信する。信号入出力部430は、複数の被試験デバイス400を搭載するパフォーマンスボードであってよい。信号入出力部430は、スイッチ装置100を有する。
【0096】
スイッチ装置100は、試験部420および被試験デバイス400の間に設けられ、試験部420および被試験デバイス400の間を電気的に接続または切断する。試験装置410は、本実施形態に係るスイッチ装置100によって電気的な接続または切断を実行してよい。
【0097】
本例において、信号入出力部430は1つの被試験デバイス400に接続され、スイッチ装置100は、1つの被試験デバイス400の入力信号ラインおよび出力信号ラインにそれぞれ1つ設けられる例を説明した。これに代えて信号入出力部430は、複数の被試験デバイス400に接続され、スイッチ装置100は、複数の被試験デバイス400の入力信号ラインおよび出力信号ラインのそれぞれに1つ設けられてよい。また、信号入出力部430から1つの被試験デバイス400へ接続される信号入出力ラインが1つの場合、1つの入出力ラインに1つのスイッチ装置100が設けられてよい。
【0098】
制御装置440は、試験装置410の試験を実行すべく、試験部420および信号入出力部430に制御信号を送信する。制御装置440は、試験プログラムに応じて、試験部420に、試験信号の発生または応答信号と期待値との比較等を実行させる制御信号を送信する。また、制御装置440は、試験プログラムに応じて、接続すべき信号入出力ラインに設けられたスイッチ装置100の接続の指示、および切断すべき信号入出力ラインに設けられたスイッチ装置100の切断の指示等を、信号入出力部430に送信する。
【0099】
以上の本実施形態に係る試験装置410は、剛性を高めつつ、割れ、欠け、またはヒビ等の物理的な破壊を防ぐことができるアクチュエータ130を備えたスイッチ装置100を用いて試験を実行することができる。また、試験装置410は、電圧制御による低消費電力のスイッチング制御で、かつ、精度よくスイッチ装置100を用いて試験を実行することができる。また、試験装置410は、精度よく加工することができて歩留まりを向上させたスイッチ装置100を用いて試験を実行することができる。
【0100】
図10は、本実施形態に係る伝送路切替装置500の構成例を示す。伝送路切替装置500は、入力端と複数の出力端のそれぞれの間に各々接続された複数のスイッチ装置100を備える。本実施例の伝送路切替装置500は、入力端Aと出力端BおよびCのそれぞれの間に各々接続された複数のスイッチ装置100aおよびスイッチ装置100bを備える。
【0101】
伝送路切替装置500は、スイッチ装置100aをON状態にし、かつ、スイッチ装置100bをOFF状態にすることで、入力端Aと出力端Bとを電気的に接続し、かつ、入力端Aと出力端Cとを電気的に切断する。また、伝送路切替装置500は、スイッチ装置100aをOFF状態にし、かつ、スイッチ装置100bをON状態にすることで、入力端Aと出力端Bおよび出力端Cとを電気的に切断し、かつ、出力端Bと出力端Cとを電気的に接続する。
【0102】
このように、伝送路切替装置500は、複数のスイッチ装置をそれぞれON/OFFすることで、入力端と複数の出力端との伝送路を切り換える。伝送路切替装置500は、複数のスイッチ装置が1つのパッケージ等に密封されて収容された装置であってよい。
【0103】
図11は、本実施形態に係るループバック試験する試験装置の構成例を被試験デバイス400と共に示す。本実施形態のループバック試験する試験装置は、図9で説明した試験装置410と、図10で説明した伝送路切替装置500の組み合わせで構成される。そこで、図9、10に示された本実施形態に係る試験装置410および伝送路切替装置500の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。
【0104】
本試験装置は、試験装置410からの試験信号を被試験デバイス400に供給する場合に、伝送路切替装置500のスイッチ装置100aをON状態にし、かつ、スイッチ装置100bをOFF状態にする。また、本試験装置は、被試験デバイス400から出力される信号を当該被試験デバイス400にループバックする場合に、伝送路切替装置500のスイッチ装置100aをOFF状態にし、かつ、スイッチ装置100bをON状態にする。
【0105】
これによって、本試験装置は、試験装置410から被試験デバイス400を試験するための試験信号を被試験デバイス400に入力させる伝送路と、被試験デバイス400からの信号をループバックさせて当該被試験デバイス400に入力させる伝送路とを切り換えることができる。本実施形態に係るループバック試験する試験装置は、1つの伝送路切替装置500を備える例を説明したが、これに代えて、2以上の伝送路切替装置500を備え、試験装置410と被試験デバイス400との複数の伝送路を切り換えることによって、試験信号による被試験デバイス400の試験とループバック試験とを切り換えてよい。
【0106】
以上の本実施形態に係るループバック試験する試験装置によれば、剛性を高めつつ、割れ、欠け、またはヒビ等の物理的な破壊を防ぐことができるアクチュエータ130を備えたスイッチ装置100を用いて試験信号による試験とループバック試験とを切り換えることができる。また、本試験装置は、電圧制御による低消費電力のスイッチング制御で、かつ、長寿命化させたスイッチ装置100を用いて2つの試験を切り換えることができる。また、本試験装置は、精度よく加工することができて歩留まりを向上させたスイッチ装置100を用いて2つの試験を切り換えることができる。
【0107】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0108】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0109】
100 スイッチ装置、110 基体下部、112 ビア、114 配線部、116 グランド線、118 グランド線、120 第1信号線、122 第1接点、124 第2信号線、130 アクチュエータ、132 第2接点部、134 第2接点、136 第1圧電膜、138 第2圧電膜、150 支持層、152 第1保護膜、154 第2保護膜、156 突出部、162 第1電極層、164 第2電極層、166 第3電極層、168 第4電極層、180 第1電源部、182 第2電源部、184 基準電圧、190 制御部、210 第1導電性酸化物膜、220 第2導電性酸化物膜、310 キャビティ部、320 台座部、330 基体上部、400 被試験デバイス、410 試験装置、420 試験部、423 試験信号発生部、426 期待値比較部、430 信号入出力部、440 制御装置、500 伝送路切替装置、610 第1基板、620 第2基板、622 貫通孔、630 第3基板、640 第4基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と下面との気密性を保ちつつ上面と下面とを電気的に接続するビアが設けられる第1基板と、
前記第1基板の上面に設けられ、アクチュエータを収容する貫通孔が形成される第2基板と、
前記第2基板の上面に設けられ、可動接点を有する前記アクチュエータを支持する第3基板と、
を備えるスイッチ装置。
【請求項2】
前記第1基板は、上面に前記ビアと電気的に接続される固定接点を有し、
前記アクチュエータは、前記アクチュエータが有する圧電膜に駆動電圧が印加されることに応じて、前記可動接点と前記固定接点とが電気的に接続または切断される請求項1に記載のスイッチ装置。
【請求項3】
前記第2基板の前記貫通孔は、前記第1基板側から前記第3基板側に向かってテーパー状に設けられた請求項1または2に記載のスイッチ装置。
【請求項4】
前記第2基板の開口を、前記第3基板の反対側において封止する第4基板を備える請求項1から3のいずれか1項に記載のスイッチ装置。
【請求項5】
前記アクチュエータは、
支持層と、
前記支持層の上面に形成される第1圧電膜と、
前記支持層を介して前記第1圧電膜に対向して、前記支持層の前記第1圧電膜が形成される面とは反対側の面に設けられ、駆動電圧に応じて伸縮して前記アクチュエータのそり量を変化させる第2圧電膜と、
前記第1圧電膜および前記第2圧電膜のそれぞれの上面と下面とに、それぞれの駆動電圧を印加する電極層と、
前記第2圧電膜と前記第2圧電膜の前記支持層側とは反対側の電極層との間に形成された導電性酸化物を含む第2導電性酸化物膜と、
を有する請求項1から4のいずれか1項に記載のスイッチ装置。
【請求項6】
前記アクチュエータは、前記第1圧電膜と前記第1圧電膜の前記支持層側の電極層との間に形成された導電性酸化物を含む第1導電性酸化物膜を更に有する請求項5に記載のスイッチ装置。
【請求項7】
前記導電性酸化物膜は、Ir系酸化物(例えばIrO)、Ru系酸化物(例えばRuO、SRO)、またはLSCO、LNO等の酸化物を主成分とする請求項5または6に記載のスイッチ装置。
【請求項8】
前記第1圧電膜および前記第2圧電膜は、PZT膜である請求項5から7のいずれか1項に記載のスイッチ装置。
【請求項9】
前記アクチュエータは、
絶縁材料で形成され、前記第1圧電膜における前記支持層とは反対側から前記第1圧電膜の少なくとも一部を覆い、かつ、前記第1圧電膜の端部の少なくとも一部において前記支持層と接する第1保護膜と、
絶縁材料で形成され、前記第2圧電膜における前記支持層とは反対側から前記第2圧電膜の少なくとも一部を覆い、かつ、前記第2圧電膜の端部の少なくとも一部において前記支持層と接する第2保護膜と、
を更に有する請求項5から8のいずれか1項に記載のスイッチ装置。
【請求項10】
前記支持層は、絶縁材料で形成される請求項5から9のいずれか1項に記載のスイッチ装置。
【請求項11】
前記絶縁材料は、SiOまたはSiNを含む請求項10に記載のスイッチ装置。
【請求項12】
前記第1基板および前記第2基板は、ガラス材質で形成される請求項1から11のいずれか1項に記載のスイッチ装置。
【請求項13】
上面と下面との気密性を保ちつつ、上面と下面とを電気的に接続するビアを第1基板に形成するビア形成段階と、
第2基板にアクチュエータを収容する貫通孔を形成する貫通孔形成段階と、
前記第1基板の上面に前記第2基板を貼り合わせた後に、前記第1基板の上面に前記ビアと電気的に接続される固定接点を形成する固定接点形成段階と、
可動接点を有する前記アクチュエータが形成された第3基板を前記第2基板の上面に接合する接合段階と、
を備えるスイッチ装置の製造方法。
【請求項14】
前記貫通孔形成段階は、前記第2基板の前記貫通孔を、前記第1基板側から前記第3基板側に向かってテーパー状に形成する請求項13に記載のスイッチ装置の製造方法。
【請求項15】
前記固定接点形成段階は、前記固定接点のマスクとなるレジストを塗布するレジスト塗布段階を有し、フォトレジスト法によって前記固定接点を形成する請求項13または14に記載のスイッチ装置の製造方法。
【請求項16】
入力端と複数の出力端のそれぞれの間に各々接続された複数の請求項1から12のいずれか1項に記載のスイッチ装置を備える伝送路切替装置。
【請求項17】
被試験デバイスをループバック試験する試験装置であって、
前記被試験デバイスとの間で電気信号を授受して前記被試験デバイスを試験する試験部と、
前記試験部および前記被試験デバイスの間に設けられ、前記試験部からの信号を前記被試験デバイスに供給するか、前記被試験デバイスからの信号を前記被試験デバイスにループバックさせるかを切り換える請求項16に記載の伝送路切替装置と、
を備える試験装置。
【請求項18】
被試験デバイスを試験する試験装置であって、
前記被試験デバイスとの間で電気信号を授受して前記被試験デバイスを試験する試験部と、
前記試験部および前記被試験デバイスの間に設けられ、前記試験部および前記被試験デバイスの間を電気的に接続または切断する請求項1から12のいずれか1項に記載のスイッチ装置と、
を備える試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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