説明

スイッチ装置およびセル落ち検出方法

【課題】複数個の入力部と、複数個の出力部と、各入力部と各出力部をつなぐスイッチ部により構成され、一つの入力部から一つの出力部へのスイッチパスが複数存在するようなスイッチにおいて、スイッチパス共通に割り振られた1系統のシーケンス番号により、スイッチパス毎のセル落ち検出を可能にする。
【解決手段】出力部1-5-1〜1-5-Nに設けられたセル落ち検出部7-1は、各入力部1-1-1〜1-1-Lにおいてセルを送出するスイッチパスの順序と各入力部においてセルの宛先となる出力部毎にセルに付与されたシーケンス番号とから、同じスイッチパスを経由するセルに付与されるシーケンス番号の順番を認識し、各スイッチパス毎にシーケンス番号の連続性をチェックすることにより、セル落ちの監視を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はネットワークのコアルータ等として使用されるスイッチ装置に関し、特に複数の入力部と複数の出力部と各入力部および各出力部をつなぐスイッチ部とにより構成され、一つの入力部から一つの出力部へのスイッチパスが複数存在するスイッチ装置におけるセル落ち検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数個の入力部と、複数個の出力部と、各入力部と各出力部をつなぐスイッチ部により構成され、一つの入力部から一つの出力部へのスイッチパスが複数存在するようなスイッチでは、入力部からスイッチ部に送出したセルがスイッチ部を介して出力部に到達するときに複数パスを経由するためにセルの順序入れ替えが生じる場合がある。これは、セルが入力部から出力部へ到達する際に遅延の異なるスイッチパスを介している場合に起こり得る。
【0003】
出力部にてセルの順序入れ替えを検出した場合、セルの順序を入力部からのセル出力順に戻す処理を行う。具体的には、セルの順序を認識するために入力部からスイッチ部へセルを送出する際にセル毎に順番に割り当てられたシーケンス番号をもとに、セル順序を元に戻す。このような処理をReordering処理と呼ぶ。
【0004】
スイッチ装置ではないが、送信端末と受信端末間の複数パスに一連のデータを送信する通信方法においても、シーケンス番号を用いてReordering処理と同様の処理が行われている。
【0005】
例えば特許文献1では、送信端末と受信端末の間の通信で用いられる1つの通信フローのデータを複数のフローに分岐させ、元のフローを復元する際にReordering処理と同様の処理が行われている。具体的には、例えば送信端末が属する第1のLAN(Local Area Network)と受信端末が属する第2のLANに、それぞれゲートウェイを設置し、送信端末から送出されたTCP(Transmission Control Protocol)コネクションのデータを、第1のLANのゲートウェイにおいてパケット単位でそれぞれの通信経路に振り分け、第2のLANのゲートウェイでは複数の通信経路から受信したパケットの順序逆転をTCPのシーケンス番号に従って修正している。
【0006】
また、例えば特許文献2では、複数の通信回線を効率的に利用し、回線利用率を向上させるために、端末のTCPに機能を追加して、従来1本のTCPコネクションを用いていた通信を複数のTCPコネクションを利用するように変更した通信において、Reordering処理と同様の処理が行われている。具体的には、まず送信端末と受信端末間の通信で1つの通信フローで行われていた通信を、複数の通信フローに分割して並列的に送る。次に送信端末から受信端末へとデータを送信する場合、送信端末の通信プロトコルは、1つの通信フローのデータを分割して複数の通信フローに振り分け、分割した複数の通信フローを元の1つの通信フローに復元するための復元情報として新たなヘッダをTCP/IPパケットに付加して(つまり2系統のシーケンス番号を用いて)、複数の通信フローでデータを送信する。そして、受信端末の通信プロトコルは、複数の通信フローから受信したデータの復元情報を参照し、Reordering処理と同様の処理を行って、元の1つの通信フローを復元する。なお、2系統のシーケンス番号を用いてパケットが経由するパス毎にパケット損失を検出する技術は、特許文献3にも記載がある。
【0007】
【特許文献1】特開2000−261478号公報
【特許文献2】特開2003−110604号公報
【特許文献3】特開2004−7361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
複数個の入力部と、複数個の出力部と、各入力部と各出力部をつなぐスイッチ部により構成され、一つの入力部から一つの出力部へのスイッチパスが複数存在するようなスイッチにおいて、入力部から出力部への何れかのスイッチパスでセル落ちが発生すると、Reordering処理にて、来るはずのセル(落ちたセル)を待ち続ける状態となり、処理が正常に動作しない。このため、セル落ちの有無を監視し、Reordering処理に落ちたセルの情報を反映する必要がある。そして、スイッチパス間の異なる遅延によりスイッチパス間でセル順序の入れ替えがあり得ることを考慮すると、セル落ちの監視は、スイッチパス毎に行う必要がある。
【0009】
ここで、スイッチパス毎にセル落ちを監視する方法として、第2の従来技術で行われているように2系統のシーケンス番号を用いる方法が考えられる。すなわち、Reordering処理用に割り振られたシーケンス番号とは別にスイッチパス毎のシーケンス番号を用いる方法である。しかし、セル毎に2系統のシーケンス番号を割り振ると、セルのヘッダ情報の情報量が増えてしまい、転送レートの増加を招いてしまうという課題がある。このため、転送レートを増加させずにスイッチパス毎にセル落ちの監視が可能な技術が切望されている。
【0010】
本発明は、複数個の入力部と、複数個の出力部と、各入力部と各出力部をつなぐスイッチ部により構成され、一つの入力部から一つの出力部へのスイッチパスが複数存在するようなスイッチにおいて、スイッチパス共通に割り振られた1系統のシーケンス番号により、スイッチパス毎のセル落ち検出を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のスイッチ装置は、複数の入力部と、複数の出力部と、各入力部および各出力部をつなぐスイッチ部とにより構成され、一つの入力部から一つの出力部へのスイッチパスが複数存在するスイッチ装置において、前記出力部に、各入力部においてセルを送出するスイッチパスの順序と各入力部においてセルの宛先となる出力部毎にセルに付与されたシーケンス番号とから、同じスイッチパスを経由するセルに付与されるシーケンス番号の順番を認識し、各スイッチパス毎にシーケンス番号の連続性をチェックすることにより、セル落ちの監視を行うセル落ち検出手段を備える。
【0012】
また本発明のセル落ち検出方法は、複数の入力部と、複数の出力部と、各入力部および各出力部をつなぐスイッチ部とにより構成され、一つの入力部から一つの出力部へのスイッチパスが複数存在するスイッチ装置におけるセル落ち検出方法において、前記出力部に設けられたセル落ち検出手段が、各入力部においてセルを送出するスイッチパスの順序と各入力部においてセルの宛先となる出力部毎にセルに付与されたシーケンス番号とから、同じスイッチパスを経由するセルに付与されるシーケンス番号の順番を認識し、各スイッチパス毎にシーケンス番号の連続性をチェックすることにより、セル落ちの監視を行う。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スイッチパス共通に割り振られた1系統のシーケンス番号により、スイッチパス毎のセル落ち検出が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
『第1の実施の形態』
図1を参照すると、本発明を適用したスイッチ装置の一例は、L個の入力部、k個の中間段Buffer、N個の出力部で構成されるロードバランス型スイッチである。L,N,kは2以上の正の整数であり、互いに同じ値であっても良いし、違う値であっても良い。本例では、入力部と中間段バッファ間、中間段バッファと出力部間はクロスバ(XBAR)スイッチで接続されている構成を記載しているが、前段クロスバスイッチ1-2と後段クロスバスイッチ1-4を、光ケーブルなどを用いて物理的にメッシュ接続とする形態に置き換える形態も考えられる。
【0015】
入力部1-1-1〜1-1-Lは、それぞれ前段クロスバスイッチ1-2の入力ポートに接続されており、前段クロスバスイッチ1-2の出力ポートは、中間段バッファ1-3-1〜1-3-kに接続されている。つまり、入力部1-1-1〜1-1-Lから出力されたセルは、前段クロスバスイッチ1-2を介して中間段バッファ1-3-1〜1-3-kに到達することになる。スイッチングされるセルにはセルヘッダが設けられ、入力部にてセルヘッダに、セル送出先の出力部番号、セル送出元の入力部番号および宛先出力部毎に個別に割り振られたシーケンス番号が付加される。
【0016】
中間段バッファ1-3-1〜1-3-kは、前段クロスババッファ1-2を介して入力部1-1-1〜1-1-Lから受信したセルを宛先となる出力部単位に格納するVOQ(Virtual Output Queue)を内蔵している。中間段バッファ1-3-1〜1-3-kの出力は後段クロスバスイッチ1-4の入力ポートに接続されており、後段クロスバスイッチ1-4の出力ポートは出力部1-5-1〜1-5-Nに接続されている。つまり、中間段バッファ1-3-1〜1-3-kから出力されたセルは後段クロスバスイッチ1-4を介して出力部1-5-1〜1-5-Nに到達することになる。
【0017】
出力部1-5-1〜1-5-Nは、後段クロスバスイッチ1-4からセルを受け取り、入力部1-1-1〜1-1-L毎にセル順序を確認して、セルの順序逆転があった場合に、正しいセル順に整える処理を行うReordering処理部7-5と、各入力部がセル送出するスイッチパスの順序を予め認識し、各入力部にてセルの宛先となる出力部毎にセルに付与されたシーケンス番号からセルが経由したスイッチパスを認識し、セルが経由したスイッチパス毎にシーケンス番号の連続性をチェックすることによりセル落ち監視を実施するセル落ち検出部7-1とを有する。
【0018】
図1に示すロードバランス型スイッチでは、或る入力部から或る出力部へセルを送出する場合、中間段バッファ1-3-1〜1-3-kの何れかを経由することになる。このため、図2に示すように例えば入力部1から出力部1にセルを出力する場合、k個のスイッチパスが存在する。この場合、同一スイッチパス内ではセル順序が入れ替わることはない。しかし、異なるスイッチパスを使用してセルを送出した場合、出力部にはセル順序が逆転して到着する場合がある。その理由は、スイッチパスにはバッファ(中間段バッファ)が存在するために、中間段バッファのセル蓄積状態の相違により、入力部から出力部までの到達時間がスイッチパス毎に異なる場合があるためである。また、バッファ溢れなどが原因で、セル落ちが生じる場合がある。
【0019】
本実施の形態の場合、各出力部に設けられたセル落ち検出部7-1は、各入力部においてセルを送出するスイッチパスの順序と各入力部においてセルの宛先となる出力部毎にセルに付与されたシーケンス番号とから、同じスイッチパスを経由するセルに付与されるシーケンス番号の順番を認識し、セルが経由したスイッチパス毎にシーケンス番号の連続性をチェックすることにより、セル落ちの監視を行う。またReordering処理部7-5は、セル落ち検出部7-1によるセル落ち検出結果を考慮してReordering処理を行う。
【0020】
各入力部においてセルを送出するスイッチパスの順序として、本実施の形態では、たとえばFOFF(Full Ordered Frames First)方式で定まる順序を用いる。FOFF方式は、ロードバランス型スイッチにおいて入力部がセルを分散出力するアルゴリズムの一種であり、各入力部において、宛先の出力部毎に、各中間段バッファへ順番にセルを送出する方式である。簡単な例として、4つのスイッチパスを持つロードバランス型スイッチにおいて、或る入力部Aが或る出力部Bに対してFOFF方式でセルを送出する順番を図5に示す(図5ではスイッチパスの説明のためスイッチパスの途中に存在する中間段バッファは記載していない)。このようにFOFF方式では、複数のスイッチパスに順番にシーケンス番号0,1,2,3,4,…,とセルを送出していく。ロードバランス型スイッチおよびFOFF方式に関する参考文献としては、「Isaac Keslassy, "The Load-Balanced Router," Ph.D. Dissertation, Stanford University, June 2004」がある。
【0021】
上述のように各入力部がFOFF方式でセルを送出している場合、セル落ち検出部7-1においては、スイッチパスの数とセルの宛先となる出力部毎にセルに付与されたシーケンス番号とから、同じスイッチパスを経由する一連のセルのシーケンス番号の順番を認識することができる。例えば図5の場合、シーケンス番号0のセルをスイッチパス0から受信した場合、スイッチパス0からは以後、シーケンス番号4、シーケンス番号8、…、シーケンス番号4Mのセルを受信することがわかる。同様に、シーケンス番号1のセルをスイッチパス1から受信したのであれば、スイッチパス1からは以後、シーケンス番号1+4Mのセルを受信し、シーケンス番号2のセルをスイッチパス2から受信したのであれば、スイッチパス2からは以後、シーケンス番号2+4Mのセルを受信し、シーケンス番号3のセルをスイッチパス3から受信したのであれば、スイッチパス3からは以後、シーケンス番号3+4Mのセルを受信することがわかる。このため、セル落ち検出部7-1は、スイッチパス毎にシーケンス番号の連続性をチェックすることにより、スイッチパス単位でセル落ちの有無を検出することができる。例えば、図5の場合、シーケンス番号0のセルを受信した後、シーケンス番号4のセルよりも先にシーケンス番号8のセルを受信した場合には、シーケンス番号4のセルが落ちたことを直ちに検出することができる。
【0022】
『第2の実施の形態』
図3を参照すると、本発明を適用したスイッチ装置の別の例は、L個の入力部とN個の出力部の間を単位スイッチを複数段並べたスイッチ部にて接続した構成となっている。
【0023】
入力部1-1-1〜1-1-Lは、スイッチ部3-2の入力ポートに接続されており、スイッチ部3-2の出力ポートは出力部1-5-1〜1-5-Nに接続されている。つまり、入力部1-1-1〜1-1-Lから出力されたセルはスイッチ部3-2を介して出力部1-5-1〜1-5-Nに到達する。また、スイッチ部3-2は、複数の単位スイッチを多段接続(例:クロス接続)して構成されたスイッチで、或る入力部から或る出力部へのスイッチパスが複数存在する。
【0024】
出力部1-5-1〜1-5-Nは、スイッチ部を経由して入力部からセルを受け取り、入力部1-1-1〜1-1-L毎にセル順序を確認して、セルの順序逆転があった場合に、正しいセル順に整える処理を行うReordering処理部7-5と、セルが経由したスイッチパス毎にセル落ちを監視するセル落ち検出部7-1とを有する。
【0025】
図3に示すスイッチでは、或る入力部から或る出力部へセルを送出する場合、スイッチ部を構成する単位スイッチの何れかを経由することになる。このため、図4に示すように例えば入力部1から出力部1にセルを出力する場合でも複数のスイッチパスが存在する。この場合、同一スイッチパス内ではセル順序が入れ替わることはない。しかし、異なるスイッチパスを使用してセルを送出した場合、出力部にはセル順序が逆転して到着する場合がある。その理由は、スイッチパスにバッファ等が存在した場合、入力部から出力部までの到達時間がスイッチパス毎に異なる場合があるためである。また、バッファ溢れなどが原因で、セル落ちが生じる場合がある。
【0026】
本実施の形態の場合、各出力部に設けられたセル落ち検出部7-1は、各入力部においてセルを送出するスイッチパスの順序と各入力部においてセルの宛先となる出力部毎にセルに付与されたシーケンス番号とから、同じスイッチパスを経由するセルに付与されるシーケンス番号の順番を認識し、セルが経由したスイッチパス毎にシーケンス番号の連続性をチェックすることにより、セル落ちの監視を行う。またReordering処理部7-5は、セル落ち検出部によるセル落ち検出結果を考慮してReordering処理を行う。
【0027】
本実施の形態では、各入力部においてセルを送出するスイッチパスの順序として、各入力部において、セルの宛先となる出力部毎に、各スイッチパスへ順番にセルを送出する方式を使用する。簡単な例として、4つのスイッチパスを持つスイッチにおいて、或る入力部Aが或る出力部Bに対してセルを送出する順番は図5で説明した順番と同じになる。
【0028】
上述のように各入力部がセルを送出している場合、セル落ち検出部7-1においては、スイッチパスの数とセルの宛先となる出力部毎にセルに付与されたシーケンス番号とから、同じスイッチパスを経由する一連のセルの系列を認識することができる。例えば図5の場合、シーケンス番号0のセルをスイッチパス0から受信した場合、スイッチパス0からは以後、シーケンス番号4、シーケンス番号8、…、シーケンス番号4Mのセルを受信することがわかる。同様に、シーケンス番号1のセルをスイッチパス1から受信したのであれば、スイッチパス1からは以後、シーケンス番号1+4Mのセルを受信し、シーケンス番号2のセルをスイッチパス2から受信したのであれば、スイッチパス2からは以後、シーケンス番号2+4Mのセルを受信し、シーケンス番号3のセルをスイッチパス3から受信したのであれば、スイッチパス3からは以後、シーケンス番号3+4Mのセルを受信することがわかる。このため、セル落ち検出部7-1は、スイッチパス毎にシーケンス番号の連続性をチェックすることにより、スイッチパス単位でセル落ちの有無を検出することができる。例えば、図5の場合、シーケンス番号0のセルを受信した後、シーケンス番号4のセルよりも先にシーケンス番号8のセルを受信した場合には、シーケンス番号4のセル落ちがあったことを検出することができる。
【0029】
次に、セル落ち検出部7-1の実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【0030】
図6を参照すると、第1の実施例に係るセル落ち検出部7-1は、入力部検出部7-2、スイッチパス解析部7-3、連続性監視部7-4で構成される。
【0031】
入力部検出部7-2は、受信したセルの送出元である入力部を特定する入力部番号とシーケンス番号をセルのヘッダ情報から抽出し、入力部番号は連続性監視部7-4とスイッチパス解析部7-3に送出し、シーケンス番号はスイッチパス解析部7-3に送出する。
【0032】
スイッチパス解析部7-3は、入力部検出部7-2から受信した入力部番号とシーケンス番号とをもとに、スイッチパス番号とスイッチパス毎のシーケンス番号とを検出する手段であり、スイッチパス番号とスイッチパス毎のシーケンス番号とを連続性監視部7-4に出力する。
【0033】
連続性監視部7-4は、受信した入力部番号、スイッチパス番号、スイッチパス毎のシーケンス番号をもとに、入力部毎かつスイッチパス毎にセル落ち監視を行い、監視結果(セル落ちの有無、落ちたセル数など)をReordering処理部7-5に送出する。
【0034】
Reordering処理部7-5は、受信したセルを入力部毎のシーケンス番号をもとにReordering処理を行い、連続性監視部7-4からセル落ちがあったことが通知されると未到着セルを考慮したReordering処理を行い、Reordering処理が滞ることがないように処理を行う。
【0035】
次に本実施例のセル落ち検出部7−1の動作を説明する。
【0036】
入力部検出部7-2は、受信したセルの送出元である入力部番号とシーケンス番号とをセルのヘッダ情報から抽出し、入力部番号は連続性監視部7-4とスイッチパス解析部7-3に、シーケンス番号はスイッチパス解析部7-3にそれぞれ送出する。
【0037】
スイッチパス解析部7-3は、受信した入力部番号とシーケンス番号とからスイッチパス番号とスイッチパス監視用のシーケンス番号とを検出して連続性監視部7-4に送出する。前述した各実施の形態のスイッチ装置の場合、入力部からは各スイッチパスに1セルずつ順番にセルを送出するために、スイッチパス解析部7-3におけるスイッチパス番号とスイッチパス監視用のシーケンス番号との検出処理は、例えば図7に示すような除算器を用いて実現することができる。すなわち、入力されたセルのシーケンス番号をスイッチパス数(図7の例では4)で除算することにより、除算結果の商がスイッチパス毎のシーケンス番号、剰余がスイッチパス番号とみなすことができる。
【0038】
連続性監視部7-4は、セル送出元の入力部毎かつスイッチパス毎に、受信したセルのシーケンス番号の連続性を監視し、シーケンス番号の飛びを検出した場合、そのスイッチパスにおいてセル落ちがあったと判定する。例えば、図8に示すように、スイッチパス0にてシーケンス番号4のセルが欠落した場合、スイッチパス0においてスイッチパス毎のシーケンス番号として0の次に2が受信されるため、1のセルが落ちたことが検出できる。
【0039】
Reordering処理部7-5は、セル送出元である入力部毎に付加されたシーケンス番号を監視してReordering処理していくが、連続性監視部7-4から監視結果(セル落ちの有無、落ちたセル数など)を受信し、セル落ちがあった場合には落ちたセルを読み飛ばすなどの処理を行うことによって、落ちたセルを永遠に待ち続けてしまうことによるReordering処理の停止を回避する。
【0040】
図9を参照すると、第2の実施例に係るセル落ち検出部7-1は、図6に示した第1の実施例に係るセル落ち検出部7-1と比較して、入力部検出部7-2、スイッチパス解析部7-3および連続性監視部7-4に加えて更に、監視結果挿入部7-6を有する点で相違する。
【0041】
監視結果挿入部7-6は、セルと連続性監視部7-4の監視結果(セル落ちの有無、落ちたセル数、送出元入力Interface(入力部番号)など)とを入力し、受信したセルのヘッダ情報に、監視結果を挿入してReordering処理部7-5に送出する。監視結果を挿入するセルは、当該監視結果を導出するに至ったセルである。例えば図8の場合、シーケンス番号8のセルを処理した時点で、連続性監視部7−4によってスイッチパス0にてシーケンス番号4のセルが欠落したことが検出されるため、シーケンス番号8のセルのヘッダ情報に、シーケンス番号4のセルが落ちたという情報(セル落ち監視結果)を挿入する。また、セル落ちを検出した場合以外に、セル落ちを検出しなかった場合にも監視結果をセルのヘッダ情報に挿入しても良い。例えば図8の場合、シーケンス番号5のセルを処理した時点では、その前にシーケンス番号1のセルが受信されているので、シーケンス番号5のセルのヘッダ情報に「セル落ちなし」という情報(セル落ち監視結果)を挿入しても良い。
【0042】
Reordering処理7-5では、監視結果挿入部7-6から受信したセルのヘッダ情報よりセル落ち監視結果(セル落ちの有無、落ちたセル数など)を認識してReordering処理を実施する。
【0043】
図10を参照すると、第3の実施例に係るセル落ち検出部7-1は、図6に示した第1の実施例に係るセル落ち検出部7-1と比較して、入力部検出部7-2、スイッチパス解析部7-3および連続性監視部7-4に加えて更に、ダミーセル挿入部7-7を有する点で相違する。
【0044】
ダミーセル挿入部7-7は、セルと連続性監視部7-4の監視結果(セル落ちの有無、落ちたセル数など)とを入力し、受信するセル流にセル落ちした分のダミーセルを補完してReordering処理部7-5に送出する。ダミーセルは、落ちたセルの代わりとなるセルであり、例えばダミーセルのヘッダ情報には、落ちたセルが持つべきシーケンス番号、入力部番号、および宛先出力部番号が設定されている。ヘッダ情報以外のセルの内容は任意で良い。
【0045】
Reordering処理7-5では、ダミーセル挿入部7-7から受信したダミーセルも含めてReordering処理を実施することによりReordering処理が停止することを回避することができる。
【0046】
以上、本発明の実施の形態および実施例について説明したが、本発明は以上の例に限定されず、その他各種の付加変更が可能である。例えば、以上の実施の形態においては、図1および図3に記載したスイッチを適用例とし、各入力部が宛先出力部毎に各スイッチパスにセルを順番に送出していく場合を例に取って説明した。しかし、本発明は、各入力部においてセルを送出するスイッチパスの順序が事前に決まっていさえすれば良く、各スイッチパスに順番にセルを出力するかどうかは必ずしも必要でない。
【0047】
また以上の実施の形態においては、各入力部においてセルを送出するスイッチパスの順序の情報をスイッチ装置が特に保持することはなかったが、各入力部においてセルを送出するスイッチパスの順序の情報を保持する管理テーブルを用意し、セル落ち検出部7−1のスイッチパス解析部7−3内で管理し参照するようにしても良い。図11にそのような管理テーブルの一例を示す。この例の管理テーブルでは、各入力部毎に、どのシーケンス番号のセルはどのスイッチパスに出力するかを記述している。例えば、入力部1は、シーケンス番号0のセルはスイッチパス0へ出力し、シーケンス番号1のセルはスイッチパス2に、シーケンス番号2のセルはスイッチパス4に出力する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るスイッチ装置のブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るスイッチ装置における入力部から出力部へ至る複数のスイッチパスの説明図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係るスイッチ装置のブロック図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るスイッチ装置における入力部から出力部へ至る複数のスイッチパスの説明図である。
【図5】4つのスイッチパスを持つロードバランス型スイッチにおいて、或る入力部が或る出力部に対してFOFF方式でセルを送出する順番の一例を示す図である。
【図6】本発明のセル落ち検出部の第1の実施例のブロック図である。
【図7】本発明のセル落ち検出部におけるスイッチパス解析部の動作例を示すブロック図である。
【図8】本発明のセル落ち検出部におけるスイッチパス解析部の動作例を示すブロック図である。
【図9】本発明のセル落ち検出部の第2の実施例のブロック図である。
【図10】本発明のセル落ち検出部の第3の実施例のブロック図である。
【図11】本発明のセル落ち検出部におけるスイッチパス解析部で管理する入力部、シーケンス番号とスイッチパスの対応が分かる管理テーブルの例を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1-1-1〜1-1-L…入力部
1-2…前段クロスバスイッチ(XBAR Switch)
1-3-1〜1-3-k…中間段バッファ(Buffer)
1-4…後段クロスバスイッチ(XBAR Switch)
1-5-1〜1-5-N…出力部
2-1-1〜2-1-k…入力部1から出力部1へのスイッチパス
3-1-1〜3-1-L…入力部
3-2…スイッチ部
3-3-1〜3-3-N…出力部
7-1…セル落ち検出部
7-2…入力部検出部
7-3…スイッチパス解析部
7-4…連続性監視部
7-5…Reordering処理部
7-6…監視結果挿入部
7-7…ダミーセル挿入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の入力部と、複数の出力部と、各入力部および各出力部をつなぐスイッチ部とにより構成され、一つの入力部から一つの出力部へのスイッチパスが複数存在するスイッチ装置において、
前記出力部に、各入力部においてセルを送出するスイッチパスの順序と各入力部においてセルの宛先となる出力部毎にセルに付与されたシーケンス番号とから、同じスイッチパスを経由するセルに付与されるシーケンス番号の順番を認識し、各スイッチパス毎にシーケンス番号の連続性をチェックすることにより、セル落ちの監視を行うセル落ち検出手段を備えることを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
請求項1記載のスイッチ装置において、スイッチ部は複数の中間段バッファで構成されるロードバランス型スイッチ構成となっていることを特徴とするスイッチ装置。
【請求項3】
請求項2記載のスイッチ装置において、各入力部と各中間段バッファ間、および、各中間段バッファと各出力部間がメッシュ接続されていることを特徴とするスイッチ装置。
【請求項4】
請求項2記載のスイッチ装置において、各入力部と各中間段バッファ間、および、各中間段バッファと各出力部間がクロスバスイッチにて接続されていることを特徴とするスイッチ装置。
【請求項5】
請求項1記載のスイッチ装置において、スイッチ部は単位スイッチを複数段並べた構成となっていることを特徴とするスイッチ装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載のスイッチ装置において、前記セル落ち検出手段は、受信したセルの送出元である入力部を特定する入力部番号とシーケンス番号とをセルのヘッダ情報から抽出する入力部検出部と、該入力部検出部で抽出された入力部番号とシーケンス番号とからスイッチパス番号とスイッチパス毎のシーケンス番号とを検出するスイッチパス解析部と、前記入力部検出部で抽出された入力部番号と前記スイッチパス解析部で検出されたスイッチパス番号およびスイッチパス毎のシーケンス番号とから、入力部毎かつスイッチパス毎にセル落ち監視を行う連続性監視部とを備えることを特徴とするスイッチ装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載のスイッチ装置において、前記セル落ち検出手段は、セル落ちを検出した場合にはセル補完処理を行うことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項8】
請求項7記載のスイッチ装置において、セル補完処理としてダミーセルを挿入することを特徴とするスイッチ装置。
【請求項9】
請求項7記載のスイッチ装置において、セル補完処理として、落ちたセルの情報をセル落ち検出したセルに付与することを特徴とするスイッチ装置。
【請求項10】
複数の入力部と、複数の出力部と、各入力部および各出力部をつなぐスイッチ部とにより構成され、一つの入力部から一つの出力部へのスイッチパスが複数存在するスイッチ装置におけるセル落ち検出方法において、
前記出力部に設けられたセル落ち検出手段が、各入力部においてセルを送出するスイッチパスの順序と各入力部においてセルの宛先となる出力部毎にセルに付与されたシーケンス番号とから、同じスイッチパスを経由するセルに付与されるシーケンス番号の順番を認識し、各スイッチパス毎にシーケンス番号の連続性をチェックすることにより、セル落ちの監視を行うことを特徴とするセル落ち検出方法。
【請求項11】
請求項10記載のセル落ち検出方法において、スイッチ部は複数の中間段バッファで構成されるロードバランス型スイッチ構成となっていることを特徴とするセル落ち検出方法。
【請求項12】
請求項11記載のセル落ち検出方法において、各入力部と各中間段バッファ間、および、各中間段バッファと各出力部間がメッシュ接続されていることを特徴とするセル落ち検出方法。
【請求項13】
請求項11記載のセル落ち検出方法において、各入力部と各中間段バッファ間、および、各中間段バッファと各出力部間がクロスバスイッチにて接続されていることを特徴とするセル落ち検出方法。
【請求項14】
請求項10記載のセル落ち検出方法において、スイッチ部は単位スイッチを複数段並べた構成となっていることを特徴とするセル落ち検出方法。
【請求項15】
請求項10乃至14の何れか1項に記載のセル落ち検出方法において、前記セル落ち検出手段は、受信したセルの送出元である入力部を特定する入力部番号とシーケンス番号とをセルのヘッダ情報から抽出し、該抽出した入力部番号とシーケンス番号とからスイッチパス番号とスイッチパス毎のシーケンス番号とを検出し、前記抽出した入力部番号と前記検出したスイッチパス番号およびスイッチパス毎のシーケンス番号とから、入力部毎かつスイッチパス毎にセル落ち監視を行うことを特徴とするセル落ち検出方法。
【請求項16】
請求項10乃至15の何れか1項に記載のセル落ち検出方法において、前記セル落ち検出手段は、セル落ちを検出した場合にはセル補完処理を行うことを特徴とするセル落ち検出方法。
【請求項17】
請求項16記載のセル落ち検出方法において、セル補完処理としてダミーセルを挿入することを特徴とするセル落ち検出方法。
【請求項18】
請求項16記載のセル落ち検出方法において、セル補完処理として、落ちたセルの情報をセル落ち検出したセルに付与することを特徴とするセル落ち検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−188501(P2009−188501A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23746(P2008−23746)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、総務省、「次世代バックボーンに関する研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】