説明

スイッチ装置

【課題】 押ボタンを指で押したときに、露出調整やピント調整の固定段階とシャッタが動作する段階とを押ボタンからの感触を通じて明確に区別し得るスイッチ装置を提供すること。
【解決手段】 押ボタン40を押下すると、吸着板33が金属端子13に接触して第1のスイッチSW1が切り換わり、露出調整やピント調整が行われる。同時に、押ボタン40の移動が一時的に停止し、このとき押ボタン40からの第1の反力が感触として与えられる。さらに操作力を大きくすると第2の反力も大きくなるが、磁石32と吸着板33とが分離すると、第2の反力が解放されて押ボタン40が瞬間的に軽くなる。同時に第2のスイッチSW2が切り換わってシャッタが動作する。第1の反力と第2の反力の差が大きいため、露出調整等の固定段階とシャッタ動作の段階とを押ボタンからの感触を通じて明確に区別することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押圧力に応じて2段階の入力操作が可能なスイッチ装置に係わり、特にデジタルカメラのシャッタ用などに使用されるスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などに搭載されているデジタル式のカメラでは、撮影時に露出調整やピント調整が行われる。現在のカメラは、シャッタスイッチのボタンを、第1の押圧力で軽く押下した最初の段階で露出調整やピント調整が固定され、これに続いて第2の押圧力で強く押すことでシャッタが動作する(切れる)。
【0003】
このようなシャッタ用のスイッチ機構としては、例えば以下の特許文献1などが存在する。
【0004】
特許文献1に記載されたスイッチ機構では、FPCの上に断面半円状に突出する中央部、その周囲を囲む環状部及び環状部に連結する連結部等を備えた板金製のプッシュスイッチが載せて構成されている。シャッタボタンを押すとプッシュスイッチが変形し、このときプッシュスイッチの中央部を押すときの第1の変形時では連結部の下側がFPCの接触し、押し続けることによる第2の変形時では中央部の下面側がFPCに接触する。シャッタボタンへの押し力の違いによる第1の変位時と第2の変位時のそれぞれにおいて、所定のスイッチ動作が行われる。そして、このスイッチ機構を使用したカメラは、第1の変位時に露出調整やピント調整が的に行われ、第2の変位時にシャッタが動作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−257272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載されたスイッチ機構では、第1の変位時と第2の変位時がプッシュスイッチ自体の微妙な変形の度合いによってそれぞれ設定されるため、露出調整やピント調整の固定段階とシャッタが動作する段階とを明確に区別しにくい。このため撮影者は指でシャッタボタンを徐々に押下していったときに、露出調整やピント調整が固定され、その直後にシャッタが動作したことをシャッタボタンからの感触から判断することが困難であった。
【0007】
このため、シャッタボタンを軽く押しても、どの程度の力で露出調整やピント調整の固定が行われるのか、さらにはどの程度の力で押せばシャッタが動作するのかについては撮影者の勘に頼らざるを得ないという状況にあった。
【0008】
この点、第1の変位時のスイッチ動作と第2の変位時のスイッチ動作との切り換わりを電気的に検出し、切り換わりの瞬間に光や音を発するようにして撮影者に知らせることも考えられるが、専用の部材が必要になり、部品点数の増大及びコストの高騰を免れない。
【0009】
本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、シャッタボタンを指で押したときに、露出調整やピント調整の固定段階とシャッタが動作する段階とをシャッタボタンからの感触を通じて明確に区別できるようにしたデジタルカメラ用のスイッチ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、押圧方向及びこれと逆方向となる反押圧方向に沿って移動自在に設けられた押ボタンと、前記押ボタンと共に又は前記押ボタンとは別個に前記押圧方向及び前記反押圧方向に沿って移動自在に設けられた吸着部材と、前記吸着部材を介して前記押ボタンを前記反押圧方向に付勢する付勢部材と、前記吸着部材の移動範囲内に当接可能に設けられた支持部とを有するスイッチ装置であって、
前記吸着部材は一方に設けられた吸着板と、他方に設けられて前記吸着板に磁気吸着する磁石とを有し、
前記押ボタンに操作力が作用していない初期位置では、前記磁石が前記吸着板に吸着されるとともに前記付勢部材の付勢力により前記磁気部材が前記支持部から反押圧方向に離れており、
前記押ボタンが前記初期位置から前記吸着部材が前記支持部に当接してその移動が停止させられる位置までに相当する第1の変位量押し込まれたことに応じて切り換わる第1のスイッチと、
前記吸着部材の移動が停止させられた位置から、さらに前記押ボタンが押されると、前記磁石と前記吸着板とが分離させられるものであり、
前記押ボタンが前記初期位置から少なくとも前記磁石と前記吸着板とが分離する位置までの第2の変位量以上押し込まれたときに切り換わる第2のスイッチと、が設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
この場合において、前記押ボタンから、前記吸着部材の移動が停止するときに第1の反力が得られ、前記磁石と前記吸着板とが分離するときに前記第1の反力よりも大きな第2の反力が得られるものが好ましい。
【0012】
本発明では、押ボタンに与えた操作力の違いに応じ、大きさの極端に異なる2種類の反力(第1の反力と第2の反力)に連動して第1,第2のスイッチが切り換わるようにしたため、露出調整やピント調整の固定段階とシャッタ動作の段階とを明確に区別することができる。
【0013】
さらに、前記第2のスイッチが切り換わるときの押ボタンのストローク位置が、磁石と吸着板とが分離する位置を過ぎた後、前記付勢部材の付勢力が前記押ボタンに再び作用し始める位置までの間に設定されているものが好ましい。
【0014】
上記手段では、操作力を大きくした状態から急激に押ボタンが軽くなる感触を得た直後にシャッタを動作させることができるため、撮影者に押ボタンが軽くなる感触を得た瞬間にシャッタが動作したことを知覚させることができる。
【0015】
例えば、前記第1のスイッチが前記吸着板と前記支持部上に設けられた金属端子とによる接点電極により形成され、あるいは前記第1のスイッチが前記吸着板と前記支持部のいずれか一方に設けられたメンブレンスイッチで形成されるものである。
【0016】
また例えば、前記第2のスイッチがメンブレンスイッチで形成される。
あるいは、前記磁石の周囲にヨークが設けられており、前記磁石、前記吸着板及び前記ヨークによって磁路が形成されており、
前記第2のスイッチが磁気センサで形成されるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明のスイッチ装置では、押ボタンを押したときに、露出調整やピント調整の固定段階とシャッタが動作する段階とを押ボタンから返ってくる感触を通じて明確に区別することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態であるスイッチ装置を示した斜視図である。
【図2】スイッチ装置の分解斜視図である。
【図3】スイッチ装置の断面図である。
【図4A】押下前の初期状態を示すスイッチ装置の側面図である。
【図4B】ハーフレリーズ状態を示すスイッチ装置の側面図である。
【図4C】シャッタ駆動直前の状態を示すスイッチ装置の側面図である。
【図4D】シャッタ駆動状態を示すスイッチ装置の側面図である。
【図5】図1のスイッチ装置のストロークと反力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明の実施の形態であるスイッチ装置を示した斜視図、図2はスイッチ装置の分解斜視図、図3はスイッチ装置の断面図、図4Aないし図4Dはスイッチ装置の動作を段階的に示しており、図4Aは押下前の初期状態を示すスイッチ装置の側面図、図4Bはハーフレリーズ状態を示すスイッチ装置の側面図、図4Cはシャッタ駆動直前の状態を示すスイッチ装置の側面図、図4Dはシャッタ駆動状態を示すスイッチ装置の側面図である。
【0020】
なお、各図では、X方向が左右方向又は長手方向を、Y方向が幅方向又は前後方向を、Z方向が板厚方向又は高さ方向を示している。
【0021】
図1に示すスイッチ装置1は、カメラのシャッタなど、押し込み量に応じて2段階のスイッチ動作が必要とされる機器に搭載される。
【0022】
図1ないし図3に示すように、このスイッチ装置1は複数の部材から構成されている。
下側に台座を構成する基台10を有している。基台10は絶縁性のリジットな合成樹脂による成形体として形成されている。基台10の上面側の中央には平坦な面からなる支持面10Aが形成されており、支持面10Aの中心には貫通孔11が形成されている。基台10は、貫通孔11を挟んで長手方向の両側において左右対称となる形状である。基台10の両側には支持部12,12が形成されており、この支持部12,12の表面には第1のスイッチSW1の一方の接点電極を構成する金属端子13,13が設けられている。
【0023】
また支持部12,12の中央には上部方向に延びる案内柱14,14が形成され、この案内柱14,14の最上部には平面視略T字形状からなる掛止部15,15がそれぞれ一体に形成されている。支持部12,12上の金属端子13,13の表面と掛止部15,15の下面とは高さ方向に所定の間隔を有して離れている。また基台10上の支持部12,12のさらに外側の位置には、嵌合凸部16,16が一体に形成されている。支持部12,12の前後方向の両側の位置には、凹部17,17,17,17が形成されている。
【0024】
基台10の上方には付勢部材20が設けられている。この付勢部材20は柔軟性ないしは弾性を有する合成樹脂、例えばポリアセタール樹脂等の材料で一体に形成されている。付勢部材20の長手方向の両側には固定部21,21が形成され、その中央に可動部22が設けられている。固定部21,21の長手方向の両端には嵌合凹部21a,21aが形成されている。両端の固定部21,21と中央の可動部22とは、帯状に形成された4本の弾性腕23,23,23,23を介して連結されている。可動部22の上面には基部24が突出形成され、さらに基部24の上面には基部24よりも細い形状からなり、上方に延びる軸部25が一体に形成れている。基部24と軸部25と境目には段差24bが形成されている。図3に示すように、基部24の内側には可動部22の下面から高さ方向に連通する案内凹部24aが形成されている。
【0025】
固定部21,21、可動部22、基部24及び軸部25は比較的厚い寸法で形成されており、それら自体は変形しにくい状態にある。一方、弾性腕23は、固定部21,21、可動部22、基部24及び軸部25などよりも薄い寸法で形成されており、弾性腕23自体が変形しやすい状態にある。なお、付勢部材20の長手方向(X方向)の全長、すなわち一方の端部側の固定部21と他方の端部側の固定部21との間の全長は、基台10の長手方向の全長よりも長い寸法で形成されている。
【0026】
付勢部材20の上方には吸着部材30が設けられている。吸着部材30は、ヨーク31、磁石32及び吸着板33により構成される。
【0027】
ヨーク31と吸着板33とは、鉄板など磁石32が磁気吸着することが可能な金属製の板材で形成されている。ヨーク31は正方形又は長方形からなる底部31aを有し、その中心には貫通孔31bが形成されている。底部31aの四方には、ほぼ垂直に折り曲げられた4つの壁部31c,31c,31c,31cが形成されている。吸着板33の中央には貫通孔33aが形成され、長手方向の両端には凹部33b,33bが形成されている。凹部33b,33bの幅寸法は、基台10の案内柱14,14の幅寸法よりも広めに形成されている。このため、後述するように凹部33b,33b内に案内柱14,14を挿入することが可能である。また凹部33b,33b内に案内柱14,14が挿入された吸着板33は,案内柱14,14に沿って高さ方向に移動することが可能となっている。なお、吸着板33は第1のスイッチSW1の他方の接点電極を構成している。
【0028】
磁石32は、正方形又は長方形からなり、その中心には貫通孔32aが形成されている。例えば、磁石32の板厚方向の一方の面がN極に着磁され、他方の面がS極に着磁されている。磁石32の下面にはヨーク31内の底部31aが、磁石32の上面には吸着板33が磁気吸引力を介してそれぞれ固定されている。
【0029】
そして、押ボタン40は上面側に押圧面41を有し、下面側に図示下方に突出する軸受部42を有している。軸受部42の中心には、装着孔43が形成されている。
【0030】
次に、スイッチ装置1の組立てについて説明する。
まず基台10の貫通孔11に底面側からガイドピン50が挿入される。次に、第2のスイッチSW2が、支持面10Aの貫通孔11の周囲に配置される。第2のスイッチSW2は、例えば上面に接点電極を形成した下部シートと下面に接点電極を形成した下部シートとを薄いスペーサを介して対向配置するメンブレンスイッチなどで形成されている。メンブレンスイッチが押圧されたときに、下部シート側の接点電極と上部シート側の接点電極とが接触することでスイッチの動作状態が切り替わる。なお、図2では2ヶのメンブレンスイッチを、支持面10A上の貫通孔11を挟んで対称となる位置に個々に配置することで第2のスイッチSW2とした場合を示しているが、これに限られるものではなく、その他例えば環状に形成したメンブレンスイッチを貫通孔11の周囲に配置してもよい。
【0031】
次に、付勢部材20が基台10の上に搭載される。付勢部材20は、嵌合凹部21a,21aが基台10側の嵌合凸部16,16に嵌合するように、一方の固定部21と他方の固定部21との間の距離である全長が縮められ、基台10の長手方向の全長に合わせ込んだ状態で装着される。これにより、図4Aに示すように、基台10に固定された付勢部材20の弾性腕23,23,23,23に撓みが形成される。この撓みが可動部22を図示上方へ持ち上げる付勢力を発生させる。
【0032】
なお、このときガイドピン50の先端が、可動部22の下面から案内凹部24aに挿入される(図3参照)。可動部22はガイドピン50に案内されることにより、ほぼ垂直に高さ方向に移動する。また支持部12、金属端子13、案内柱14及び掛止部15などは、固定部21、弾性腕23,23及び可動部22で囲まれる部分に形成される空きスペース26,26に挿入される。
【0033】
次に、吸着部材30が付勢部材20の可動部22の上に設置され、最後に軸部25が装着孔43に挿入され、押ボタン40が吸着部材30の上部側の位置において、軸部25の先端に固定される。
【0034】
このとき、吸着部材30は、ヨーク31と吸着板33との間に磁石32を介在させた状態で、すなわち磁石32の一方の面にヨーク31を、他方の面に吸着板33をそれぞれ磁気吸着させ、ヨーク31の下面を下側に向けた状態で可動部22の上面に設置される。
【0035】
図3に示すように、このとき、ヨーク31の貫通孔31bと磁石32の貫通孔32a内に基部24が挿通され、ヨーク31の底部31aの下面が可動部22の上面に設置される。また吸着部材30の貫通孔33aに軸部25が挿通され、軸部25の外面25aと貫通孔33aの内縁との間に押ボタン40の軸受部42が挿入される。
【0036】
図3に示すように、基部24の段差24bの上面、磁石32の表面及び壁部31c,31c,31c,31cの上端部は同一平面に設定されている。軸受部42の下端42aは、基部24の段差24bの上面と磁石32の表面の双方に跨る状態で当接している。
【0037】
なお、磁石32が吸着板33に磁気吸着している状態では、壁部31c,31c,31c,31cの上端部は吸着板33の下面に接触している。そして、ヨーク31、磁石32及び吸着板33との間では、磁石32の上面→吸着板33→ヨーク31の壁部31c,31c,31c,31c→ヨーク31の底部31a→磁石32の下面の経路からなる磁路(磁気回路)が形成されており、磁石32からの磁束は外部に漏れにくくするとともに、吸着板33の磁気吸着を安定化させている。
【0038】
貫通孔33aの内縁と押ボタン40の軸受部42の外面との間には隙間δが形成されており、押ボタン40は磁石32及び基部24を直接押下することが可能である。
【0039】
以下、主に図4A,図4B,図4C,図4D及び図5を参照しつつスイッチ装置の動作について説明する。
【0040】
図5は本発明のスイッチ装置のストロークと反力との関係を示すグラフである。図5に示す緩やかな傾斜の部分は付勢部材20の付勢力が支配的に作用する範囲(P0−P1間及びP3−P4間)を示し、最初(ストロークが小さい側)の急峻な右肩上がりの傾斜部分(P1−P2間)は吸着板33の変形による付勢力が支配的に作用する範囲を、これに続く右肩下がりの傾斜部分(P2−P3間)は磁気吸着力が急激に変化する範囲を示している。なお、最後(ストロークが大きい側)の急峻な傾斜はスイッチ装置の移動限界領域(P4以降)を示している。なお、ポイントP0,P1,P2,P3は、押ボタンのストロークの位置を示しており、P0は押下前の初期ポイント(初期状態)を示し、P4は押ボタンが最も移動した位置を示している。
【0041】
(初期状態)
図4Aに示す初期状態では、可動部22が付勢部材20の付勢力によって図示上方に持ち上げられており、押ボタン40の押圧面41が初期ポイントP0にある。このため、吸着部材30は吸着板33に磁石32が磁気吸着した一体化した状態で上方に移動させられている。吸着部材30は、吸着板33の両端の上面が付勢部材20の付勢力により掛止部15,15の下面に対して上方に押し付けされており、これ以上の上方への移動が制限された状態で停止している。このため、第1のスイッチSW1は、吸着板33と金属端子13,13との接点電極同士が離れた非接触状態(オフ状態)にある。
【0042】
(ハーフレリーズ状態)
図4Bはハーフレリーズ状態を示している。ハーフレリーズ状態とは、シャッタが切れる前の、露出調整やピント調整が固定される状態を意味する。
【0043】
図4Bに示すように、撮影者が指先で押ボタン40の押圧面41を軽く押下すると、その操作力が、押ボタン40を介して吸着部材30へと伝わり、吸着部材30及び付勢部材20を下方に押し下げることができる。このとき、付勢部材20の弾性腕23,23が基台10の凹部17,17内で変形させられるため、吸着部材30は付勢部材20の付勢力に抗しながら押し下げられることになる。
【0044】
図5に示すように、押ボタン40に対する操作力を強く(ストロークを大きく)すると、これに比例して押ボタン40からの反力も強く大きくなる。このスイッチ装置1では、押ボタン40のストロークが第1の変位量h1に達するまでは、すなわち吸着板33の下面が金属端子13,13に当接する位置(ポイントP1)に達するまでは、付勢部材20の付勢力が反力として作用する。なお、付勢部材20の付勢力は、弾性腕23が有するバネ定数と変位量との積に比例(フックの法則)する。
【0045】
そして、第1の変位量h1だけ押し下げられて、押ボタン40のストロークがポイントP1に達すると、吸着板33の両端の下面が金属端子13,13に当接するため、吸着部材30の下方への移動が停止させられる。すなわち、押ボタン40の押圧方向への移動を一時的に停止させることができる。同時に、当接時の衝撃が、押ボタン40を通じて撮影者の指に与えられる。
【0046】
この押ボタン40の押し下げが一時的に停止するポイントP1はハーフレリーズ位置であり、カメラの露出調整やピント調整が固定される。すなわち、押ボタン40の押し下げが一時的に停止するポイントP1では、吸着板33と金属端子13,13との接点電極同士が接触するため、第1のスイッチSW1がオン状態に切り換わる。カメラ内部では第1のスイッチSW1からのオン信号を得ることにより、絞りやレンズなどの調整部材(図示せず)が固定させられて露出調整やピント調整の設定が保持される。
【0047】
図5に示すように、一時停止したポイントP1(ハーフレリーズ状態)での押ボタン40から指への反力を第1の反力f1とすると、次に撮影者が押ボタン40をポイントP1からさらに押し下げようとする場合、これまで作用していた第1の反力f1よりも大きな操作力が必要である。
【0048】
このため、撮影者は押ボタン40のストロークがポイントP1に達したこと、すなわちカメラが露出調整やピント調整を行うハーフレリーズ状態に入ったことを、一時的に停止させられるときに生じる衝撃、あるいは押ボタン40からの第1の反力f1という、外部からの刺激作用を通じた感触から明確に知覚すことができる。
【0049】
なお、磁石32は吸着板33の下面に磁気吸着している。このため、押ボタン40を押下する操作力が、磁石32と吸着板33との間に作用している磁気吸着力を超えない限り、磁石32と吸着板33との磁気吸着が解除されることはない。つまり吸着板33が金属端子13,13の上面に当接しただけでは、磁石32は吸着板33から離脱することはなく、磁石32が吸着板33を磁気吸着している限り押ボタン40が下がることはない。
【0050】
(シャッタ駆動状態)
図4Cに示すように、図4Bのハーフレリーズ状態から続けて押ボタン40を強く押下すると、その操作力は軸受部42の下端42aを介して磁石32に作用する。ヨーク31は磁石32を介して吸着板33に磁気的に吸着しており、押ボタン40を押し下げると、磁石32、ヨーク31及び付勢部材20の可動部22が下方に押し下げられ、吸着板33はその両端が金属端子13,13に載置した状態が維持されながら中央部分が下方に撓み変形する。
【0051】
図5のP1−P2間はこの動作状態を示しており、押ボタン40のストロークに応じて吸着板33が変形し反力を発生するが、吸着板33は金属材料でありかつ断面積が大きいため急峻な右肩上がりの特性を示す。
【0052】
図4C及び図5に示すように、操作力として、磁石32と吸着板33との間に作用する磁気吸着力を超える力が押ボタン40に与えられて、押ボタン40のストロークが初期ポイントP0から第2の変位量h2だけ移動させられたポイントP2に達すると、磁石32が吸着板33から分離する。図4Cでは、磁石32が吸着板33から分離する直前の押ボタン40のストローク位置をポイントP2で示している。なお、ポイントP2における反力、すなわち磁石32が吸着板33から分離するときの反力(図5のP1−P3間におけるピーク値)が第2の反力f2である。
【0053】
図4Dに示すように、磁石32が吸着板33から分離すると、ヨーク31及び磁石32とともに付勢部材20の可動部22が付勢部材20の付勢力に抗しながら下方に押し下げられる。この移動の途中で可動部22の下面が第2のスイッチSW2を押圧するため、第2のスイッチSW2の動作状態が切り換わる。第2のスイッチSW2の信号出力は、カメラのシャッタ装置(図示せず)に送出され、シャッタが駆動させられて(シャッタが切れて)一連の撮影が完了する。
【0054】
磁石32と吸着板33とが分離するときは、第2の反力f2が突然解放されて磁気吸着力は急激に減少する。このため、図5のP2−P3間に示すように押ボタン40の反力は急峻な右肩下がりの特性を示す。このとき、撮影者には押ボタン40に対する操作力を大きくして行った直後に、瞬間的に急激に押ボタン40が軽くなる感触を得る。
【0055】
そして、さらに押ボタン40が押し下げられると、図5のP3−P4間に示すように、押ボタン40からの反力は再び付勢部材20の付勢力に支配されるようになる。なお、ポイントP3は、磁石32と吸着板33との磁気吸着力がほぼ消失し、付勢部材20の付勢力が、再び支配的に作用し始める押ボタンのストローク位置を示している。
【0056】
第2のスイッチSW2の動作状態が切り換わる押ボタン40のストローク位置は、ポイントP2以降ポイントP4までの範囲内であればいずれでもよいが、好ましくはポイントP2とポイントP3との間、すなわち磁石32が吸着板33から分離するポイントP2の位置を過ぎた後、磁石32と吸着板33との磁気吸着力がほぼ消失し、付勢部材20の付勢力が押ボタン40に対して再び支配的に作用し始めるポイントP3までの間に設定することが好ましい。
【0057】
このような設定にすると、操作力を大きくした状態から急激に押ボタン40が軽くなる感触を得た直後にシャッタを動作させることができ、撮影者は押ボタン40が軽くなる感触を得たときにシャッタが動作したと知覚することが可能となる。
【0058】
(シャッタ押し切り状態)
シャッタが動作した後にも押ボタン40を押し続けた場合、押ボタン40は第2のスイッチSW2の変形が可能であり続ける位置までは押し下げられる。そして、第2のスイッチSW2の変形が限界に至り、そこからさらに押し下げようとすると、押ボタン40から図5のポイントP4以降に示すような強い反力を受ける。これにより、撮影者はシャッタを最後まで押し切ったという感触を得ることができる。
【0059】
以上のように本発明では、押ボタン40に対する操作の途中で押し下げが一時的に停止したときに発生する第1の反力f1を、押ボタン40及び撮影者の指先を介した感触から明確に得ることができる。このため、撮影者はカメラの状態がハーフレリーズ状態に至ったこと、すなわち露出調整やピント調整が固定されたことを確実に知覚することができる。
【0060】
さらにその位置から強い力で押ボタン40を押し込むと、押ボタン40からの第2の反力が急激に解放されて軽くなる状態が形成されるため、このような感触を得たときにシャッタが動作したこと(切れたこと)を明確に知覚することができる。
【0061】
よって、押ボタン40を押下したときに、カメラの動作状態のうち、ハーフレリーズ状態とシャッタ駆動状態とを明確に区別することが可能である。
【0062】
なお、上記実施の形態では、第1のスイッチSW1を、吸着部材30側の吸着板33と基台10側の金属端子13,13とで構成されるものとして示したが本発明はこれに限られるものではなく、支持部12の上面、あるいは吸着部材30の下面にメンブレンスイッチを配置した構成とすることができる。
【0063】
また第2のスイッチSW2については、メンブレンスイッチで構成した場合を示して説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば磁石32と吸着板33とが分離したときに生じる磁気変化を磁気抵抗効果素子やホール素子などからなる磁気センサを用いて検出する構成であってもよい。この場合、磁石32と吸着板33とが分離すると、ヨーク31の壁部31c,31c,31c,31cの上端部も吸着板33から離れるため磁路内の磁束が外部に漏れ出す。このときの磁気変化を磁気センサで検出することにより、磁石32と吸着板33とが分離したことを検知し、磁気センサからの信号出力を契機としてシャッタを動作させることが可能である。
【0064】
さらに付勢力を発生する付勢部材20として合成樹脂により形成された弾性腕23を用いて説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、その他例えば金属製の板ばね、コイルスプリング、あるいは弾性エラストマーなどで構成することも可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 スイッチ装置
10 基台
12 支持部
13 金属端子(第1のスイッチ)
20 付勢部材
21 固定部
22 可動部
23 弾性腕
24 基部
25 軸部
30 吸着部材
31 ヨーク
32 磁石
33 吸着板(第1のスイッチ)
40 押ボタン
SW1 第1のスイッチ
SW2 第2のスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧方向及びこれと逆方向となる反押圧方向に沿って移動自在に設けられた押ボタンと、前記押ボタンと共に又は前記押ボタンとは別個に前記押圧方向及び前記反押圧方向に沿って移動自在に設けられた吸着部材と、前記吸着部材を介して前記押ボタンを前記反押圧方向に付勢する付勢部材と、前記吸着部材の移動範囲内に当接可能に設けられた支持部とを有するスイッチ装置であって、
前記吸着部材は一方に設けられた吸着板と、他方に設けられて前記吸着板に磁気吸着する磁石とを有し、
前記押ボタンに操作力が作用していない初期位置では、前記磁石が前記吸着板に吸着されるとともに前記付勢部材の付勢力により前記磁気部材が前記支持部から反押圧方向に離れており、
前記押ボタンが前記初期位置から前記吸着部材が前記支持部に当接してその移動が停止させられる位置までに相当する第1の変位量押し込まれたことに応じて切り換わる第1のスイッチと、
前記吸着部材の移動が停止させられた位置から、さらに前記押ボタンが押されると、前記磁石と前記吸着板とが分離させられるものであり、
前記押ボタンが前記初期位置から少なくとも前記磁石と前記吸着板とが分離する位置までの第2の変位量以上押し込まれたときに切り換わる第2のスイッチと、が設けられていることを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
前記押ボタンから、前記吸着部材の移動が停止するときに第1の反力が得られ、前記磁石と前記吸着板とが分離するときに前記第1の反力よりも大きな第2の反力が得られる請求項1記載のスイッチ装置。
【請求項3】
前記第2のスイッチが切り換わるときの押ボタンのストローク位置が、磁石と吸着板とが分離する位置を過ぎた後、前記付勢部材の付勢力が前記押ボタンに再び支配的に作用し始める位置までの間に設定されている請求項1または2記載のスイッチ装置。
【請求項4】
前記第1のスイッチが、前記吸着板と前記支持部上に設けられた金属端子とによる接点電極により形成されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載のスイッチ装置。
【請求項5】
前記第1のスイッチが、前記吸着板と前記支持部のいずれか一方に設けられたメンブレンスイッチで形成されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載のスイッチ装置。
【請求項6】
前記第2のスイッチが、メンブレンスイッチで形成されている請求項1ないし5のいずれか1項に記載のスイッチ装置。
【請求項7】
前記磁石の周囲にヨークが設けられており、前記磁石、前記吸着板及び前記ヨークによって磁路が形成されており、
前記第2のスイッチが磁気センサで形成されている請求項1ないし5のいずれか1項に記載のスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−225330(P2010−225330A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68882(P2009−68882)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】