説明

スイッチ装置

【課題】コンタクトホルダに対する、スプリングとこれにより付勢される可動コンタクトの組付けが、後に反転の工程を要することなくできるスイッチ装置を提供する。
【解決手段】コンタクトホルダ21に、可動コンタクト29とこれを付勢するスプリング30とを表側から挿通させるコンタクト挿通孔22を形成すると共に、その挿通させた可動コンタクト29をスプリング30と共に回転させた位置で係止するコンタクト係止部26を形成した。これにより、コンタクトホルダ21に対する、スプリング30と可動コンタクト29の組付けが、コンタクトホルダ21を裏返し状態にすることなく表側から行うことができ、よって、その組付けは後に反転の工程を要することなくできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組立てを容易化する改良をしたスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば車両、特には自動車のブロアスイッチ装置等においては、図3に示す組立て構造が採用されている。すなわち、同図の(a)に示すように、コンタクトホルダ1の裏側(図で上側)に、スプリング収納穴2とコンタクト挿入穴3とが設けられており、このコンタクトホルダ1を図示の裏返しにした状態で、上方から、スプリング収納穴2にスプリング4が収納され、コンタクト挿入穴3に可動コンタクト5が挿入される。スプリング4は可動コンタクト5の付勢をするものである。なお、コンタクトホルダ1には、裏側の中心部に裏側シャフト部1aが設けられており、表側の中心部に表側シャフト部1bが設けられている。
【0003】
又、同図の(b)に示すように、コンタクトホルダ1の周側面部の1か所からその奥側には、節度スプリング収納穴6が設けられており、コンタクトホルダ1を裏返しにした状態のまま、該スプリング収納穴6に節度スプリング7が収納される。
次いで、同図の(c)に示すように、コンタクトホルダ1を更に裏返しにした状態のまま、上方から、節度スプリング7の外側に節度ピース8が置かれて、該節度ピース8及び節度スプリング7並びに前記スプリング4、可動コンタクト5と共にコンタクトホルダ1が、裏返しにした状態のケース9の内部に挿入される。
【0004】
その後、同図の(d)に示すように、コンタクトホルダ1及びケース9を裏返しにした状態のまま、上方から、ケース9に、可動コンタクト5に対応する固定コンタクト10を有すると共にコンタクトホルダ支承穴11を有するインシュレータ12が挿入され、そのコンタクトホルダ支承穴11がコンタクトホルダ1の裏側シャフト部1aに嵌合される。そして、インシュレータ12がケース9に爪部12a等により結合される。
【0005】
この後、同図の(e)に示すように、コンタクトホルダ1及びインシュレータ12と共にケース9が反転され、この状態で、同図の(f)に示すように、上方から、コンタクトホルダ1の表側シャフト部1bに、ノブ13がケース9の開口部9aを通して取付けられる。
なお、如上の組立て構造は、自動車のブロアスイッチ装置等において一般的なものであり、適当な先行技術文献は見当たらなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
如上の組立て構造においては、ことに最初の、スプリング収納穴2にスプリング4が収納され、コンタクト挿入穴3に可動コンタクト5が挿入される段階(a)が、コンタクトホルダ1を裏返しにした状態で行われ、その後、それらの組立品は、コンタクトホルダ1の表側シャフト部1bにノブ13が取付けられる直前の段階(e)で反転される。
【0007】
従って、コンタクトホルダ1にスプリング4と可動コンタクト5を組付けた組立品を、工程の途中(d→e)に反転させる必要があり、その反転に要する時間の分、組立てを終えるまでの時間が長くかかる。又、その反転工程を必要とする分、組立ての自動化が困難であり、工賃の点で製品価格が高くなっていた。
【0008】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、従ってその目的は、コンタクトホルダに対する、スプリングとこれにより付勢される可動コンタクトの組付けが、後に反転の工程を要することなくできるスイッチ装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のスイッチ装置は、可動コンタクトと、この可動コンタクトを付勢するスプリングと、このスプリングと共に前記可動コンタクトを表側から挿通させるコンタクト挿通孔を有すると共に、その挿通させた前記可動コンタクトを前記スプリングと共に回転させた位置で係止するコンタクト係止部を有するコンタクトホルダとを具備して成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記手段によれば、コンタクトホルダに対する、スプリングとこれにより付勢される可動コンタクトの組付けが、コンタクトホルダを裏返し状態にすることなく表側から行うことができ、よって、その組付けが後に反転の工程を要することなくできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例を示す全体の工程図
【図2】部分拡大斜視図
【図3】従来例を示す図1相当図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施例(一実施形態)につき、図1及び図2を参照して説明する。
まず、図2には、プラスチックなど電気絶縁材から成るコンタクトホルダ21を示しており、このコンタクトホルダ21は、主体部21aが円盤状を成し、この主体部21aの上面部と周側面部から成る表側の部分中、上面部の中心部に表側シャフト部21bを立設し、該表側シャフト部21bの基部の周囲部分に、他の上面部より一段低い段部21cを形成している。
【0013】
又、このコンタクトホルダ21の主体部21aには、コンタクト挿通孔22とコンタクト係止孔23とを、表側シャフト部21bを中心とする点対象の配置で2つずつ形成しており、そのうちのコンタクト挿通孔22は、図1の(c′)に示すように、主体部21aの表側である上方から裏側である下方へ開通している。
【0014】
コンタクト係止孔23は、上記コンタクト挿通孔22の一回転方向である、この場合、時計回り方向の側方にそれぞれ止め部24を隔てて位置し、コンタクト挿通孔22とは止め部24下方の空間部25を介して連通している。又、その止め部24下方の空間部25は裏側へ開放しており、それに対して、コンタクト係止孔23は、上記コンタクト挿通孔22と同様に、主体部21aの表側から裏側へ開通し、このコンタクト係止孔23と止め部24とでコンタクト係止部26を構成している。
【0015】
更に、コンタクトホルダ21の主体部21aには、図1の(d)に示すように、表側である周側面部の1か所からその奥側に、節度スプリング収納穴27を形成しており、そのほか、主体部21aの下面部の中心部には、先端部に爪部28を有する裏側シャフト部21dを突設している。
【0016】
以上のコンタクトホルダ21に対して、図2には又、銅など導電材から成る可動コンタクト29と、これを付勢するスプリング30とを示している。このうち、可動コンタクト29は、リング状の中心部29aの両側にL字状のアーム部29bを対称的に延設し、このアーム部29bの更に下部の両側にそれぞれ矩形状の起立部29cを立設すると共に、同下部の下面部にそれぞれ半球状の接点部29dを突設したものある。スプリング30は圧縮コイルスプリングである。
【0017】
この構成で、スイッチ装置組立ての最初の工程として、図1の(a)、(b)に示すように、アーム部29bの各下部上(起立部29c間)にそれぞれスプリング30を位置させた可動コンタクト29を、中心部29aにより、上記コンタクトホルダ21の表側シャフト部21bに上方(表側)から嵌合し、アーム部29bをそれぞれスプリング30と共に、コンタクトホルダ21のコンタクト挿通孔22に上方より挿通させる。
【0018】
次に、可動コンタクト29の中心部29aがコンタクトホルダ21の段部21cに載ったところで、図1の(b)に矢印Rで示すように、可動コンタクト29をスプリング30と共に時計回りに回転させ、その回転先側の起立部29cが図1の(c)、(c′)、(c″)に示すようにコンタクトホルダ21の止め部24下方の空間部25に面する壁面21eに衝止されたところで、可動コンタクト29の回転を終了する。
【0019】
この後、図1の(d)に示すように、コンタクトホルダ21の節度スプリング収納穴27に節度スプリング31を収納し、更に、図1の(e)に示すように、コンタクトホルダ21をインシュレータ32の表側である上面に取付ける。このインシュレータ32へのコンタクトホルダ21の取付けは、インシュレータ32が中心部に有する孔33に、上方より、コンタクトホルダ21の裏側シャフト部21dを爪部28から挿入して、その挿入先の部分に爪部28を係合させることで行う。
【0020】
これにより、可動コンタクト29は、インシュレータ32により上方へ押しやられて前記回転先側の起立部29cの上部をコンタクトホルダ21のコンタクト係止孔23中に位置させ、両起立部29cにより止め部24を挟んでコンタクト係止部26により回転方向に係止され、回転方向の戻りが制止される状態となる。又、それと共に、スプリング30が止め部24と可動コンタクト29との間で圧縮され、反発力によって可動コンタクト29を下方に付勢するようになる。
【0021】
ここで、インシュレータ32は、上面部(表側)に、平面形状が図1の(e′)に示す「く」字形の立壁状を成す節度ピース仮受け部34を有しており、この節度ピース仮受け部34と前記節度スプリング収納穴27に収納した節度スプリング31との間に球状の節度ピース35を置いて、該節度ピース35を節度スプリング31で付勢させ、節度ピース仮受け部34で節度ピース35を仮に受けさせる。
加えて、インシュレータ32は、コンタクトホルダ21に上述のように組付けた前記可動コンタクト29、特にはそれの接点部29dと対応する固定コンタクト36を上面部に有しており、更に、インシュレータ32の外周部の複数個所には爪部37を突設している。
【0022】
さて、インシュレータ32にコンタクトホルダ21を取付け、節度ピース35を節度スプリング31で付勢させた状態で節度ピース仮受け部34に仮受けさせた後には、図1の(f)に示すように、コンタクトホルダ21からインシュレータ32にかけて上方(表側)からケース38を被嵌する。
【0023】
このケース38は、図1の(f′)に示すように、上記節度ピース仮受け部34に対する逃げ部としての凹部39を有すると共に、それと隣接して節度ピース本受け部40を有するものであり、上記コンタクトホルダ21からインシュレータ32にかけての該ケース38の被嵌により、凹部39が節度ピース仮受け部34に被嵌されると同時に、節度ピース本受け部40が上記節度ピース仮受け部34と節度ピース35との間に割り入って該節度ピース35を受けるようになる。なお、節度ピース本受け部40は、固定コンタクト36に対する可動コンタクト29の接触切換え数に応じた数の節度谷を節度ピース35側に有している。
【0024】
又、ケース38は下辺部の複数個所に取付孔41を有しており、この取付孔41をインシュレータ32の前記爪部37に係合させて、ケース38をインシュレータ32に結合する。
この後、上方(表側)から、コンタクトホルダ21の表側シャフト部21bに、ノブ42をケース38の上端開口部38aを通して取付け、スイッチ装置の組立てを完了する。
【0025】
なお、組立てを完了したスイッチ装置においては、ノブ42を持って回転操作をすると、コンタクトホルダ21が表側シャフト部21bを介して回転され、固定コンタクト36に対する可動コンタクト29の接触を切換える。又、その可動コンタクト29の接触が切換わるごとに、節度ピース35が節度ピース本受け部40の節度谷に適度に係止され、ノブ42の回転操作に節度を与える。
【0026】
このように本構成のものでは、コンタクトホルダ21に対する、スプリング30とこれにより付勢される可動コンタクト29の組付けが、コンタクトホルダ21を裏返し状態にすることなく表側から行うことができる。よって、その組付けは後に反転の工程を要することなくできるものであり、その反転に要する時間をなくし得る分、組立を終えるまでの時間を短縮することができる。又、その反転工程を必要としない分、組立ての自動化が可能であり、工賃の点で製品価格の低廉化ができる。
【0027】
なお、本発明は上記し且つ図面に示した実施例にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。
【符号の説明】
【0028】
図面中、21はコンタクトホルダ、22はコンタクト挿通孔、26はコンタクト係止部、29は可動コンタクト、30はスプリングを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動コンタクトと、
この可動コンタクトを付勢するスプリングと、
このスプリングと共に前記可動コンタクトを表側から挿通させるコンタクト挿通孔を有すると共に、その挿通させた前記可動コンタクトを前記スプリングと共に回転させた位置で係止するコンタクト係止部を有するコンタクトホルダと、
を具備して成ることを特徴とするスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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