説明

スイッチ装置

【課題】組付構成部品の集積誤差を低減可能としたスイッチ装置を提供する。
【解決手段】スイッチ装置1は、磁石を有する磁石移動体3と、磁石移動体3の移動を検出する磁気検出器5と、磁気検出器5を磁石移動体3の進退移動経路に沿って取り付ける被取付け部材2とを備えている。被取付け部材2と磁気検出器5との間に形成された空間は、磁石移動体3の移動空間7として設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチ装置に係り、特に、磁石と磁気検出器とを用いたスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のシートベルトに設けられたタングプレートを着脱可能に固定するバックル装置には、タングプレートがバックル本体に挿入されたか否かを検出するための検出装置が設けられている。この種の検出装置の一例としては、磁気検出器が永久磁石の接近によりタングプレートの挿入を検出する状態検出装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この特許文献1に記載された状態検出装置は、タングプレートの挿入により移動するスライド部と、そのスライド部に連動して移動する永久磁石とが筒形状のハウジングの内部に組み付けられるとともに、基板に実装された磁気検出器がハウジングの永久磁石近傍部位に組み付けられている検出器ユニットとして構成されている。この検出器ユニットは、バックル本体の内部に組み付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−98668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1記載の状態検出装置は、基板に組み付けた磁気検出器がスライド部及び永久磁石を内部に組み付けたハウジングに対して組み付けられる構成となっている。そのため、基板に磁気検出器を組み付ける際の組付誤差、ハウジングの内部にスライド部と永久磁石とを組み付ける際の組付誤差、及び基板に組み付けた磁気検出器をハウジングに組み付ける際の組付誤差が累積されやすい。よって、状態検出装置としての成立性を確保するためには、これらの部材の組付誤差を管理する必要がある。
【0006】
本発明の目的は、組付構成部品の集積誤差を低減可能としたスイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明は、磁石を有する磁石移動体と、前記磁石移動体の移動を検出する磁気検出器と、前記磁気検出器を前記磁石移動体の進退移動経路に沿って取り付ける被取付け部材と、を備えており、前記被取付け部材及び前記磁気検出器の間に形成された空間が、前記磁石移動体の移動空間として設定されたことを特徴とするスイッチ装置にある。
【0008】
[2]上記[1]記載の前記移動空間は、前記被取付け部材及び前記磁気検出器の間に沿って前記磁石移動体を案内する案内部を備えており、前記磁気検出器が、前記案内部に取り付けられたことを特徴としている。
【0009】
[3]上記[2]記載の前記案内部は、前記被取付け部材に形成された一対のガイドレールにより構成されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のスイッチ装置によれば、組付構成部品の集積誤差を低減することが可能となり、磁気検出器の検出精度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に好適な実施の形態に係るスイッチ装置とバックル装置のロアカバーとを概略的に示す分解斜視図である。
【図2】実施の形態に係るスイッチ装置を装着した状態の図1におけるII−II線の矢視断面拡大図である。
【図3】実施の形態に係る磁気検出器から出力される出力電流と磁気検出器に対する磁石移動体の位置との関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて具体的に説明する。
【0013】
(スイッチ装置の構成)
図1において、全体を示す符号1は、この実施の形態に係る典型的なスイッチ装置を模式的に示している。図示例によるスイッチ装置1は、特に限定されるものではないが、例えば自動車のシートベルト装置のバックルスイッチに好適に用いられる。なお、シートベルト装置については、一般的に使用されているものと同様に構成されているため、その説明を省略する。
【0014】
このスイッチ装置1は、図1に示すように、被取付け部材である樹脂製のロアカバー2内に収容される。このロアカバー2は、上方に開放した開口2aを有しており、この開口2aに対して、周知の構成によるシートベルト装置に用いられるバックル装置のアッパーカバーの開口を重ね合わせることで所定の筒体形状に形成される。このロアカバー2の一側には、アッパーカバーの開口と重ね合わせた状態でタング挿入口となる端部開口2bが形成されるとともに、その他側には、アッパーカバーの開口と重ね合わせた状態でアンカ挿入口となる端部開口2cが形成されている。
【0015】
このスイッチ装置1は、図1に示すように、ロアカバー2内に移動可能に配置される磁石移動体3と、その磁石移動体3の移動を検出する磁気検出器5とを備えており、非接触式のスイッチ装置として構成されている。
【0016】
(磁石移動体の構成)
この磁石移動体3は、図1に示すように、磁界発生部材を封止樹脂によりモールドした直方体形状に形成されている。この磁界発生部材は、例えば永久磁石又は電磁石からなる。磁石移動体3の一側部には、水平板状の腕部3aが延在されている。この腕部3aは、図示しないシートベルトのタングプレートをバックル装置から抜き取る際にタングプレートのロック状態を解除するためのイジェクタに連結される。
【0017】
この磁石移動体3の進出移動側の端面部と、その端面部とは対向する側のロアカバー2の立壁部との間に形成されたバネ収容空間7aには、図1に示すように、コイルバネ4が介装される。この磁石移動体3は、タングプレートに連動して移動するイジェクタによりコイルバネ4の弾力に抗してタングプレート挿入方向に移動するように構成されており、タングプレートをバックル装置から抜き取ると、コイルバネ4の弾性復帰力によりタングプレート挿入前の初期位置に復帰移動するように構成されている。
【0018】
(磁気検出器の構成)
一方の磁気検出器5は、図1に示すように、ワイヤボンディングにより一対のリードフレーム上に実装された感磁素子(磁気センサチップ)とICを一体として樹脂モールドすることでパッケージ化された直方体形状に形成されている。リードフレームは、接続端子6を介してハーネス端子と接続される。感磁素子は、磁石から発生する磁界に起因する磁気ベクトルの方向変化を検出する磁気抵抗素子、又は磁界の強さの変化を検出するホール素子等からなる。
【0019】
以上のように構成されたスイッチ装置1の一つの基本の構成は、図1及び図2に示すように、ロアカバー2の底面となる磁気検出器対向面2f(以下、「底面2f」という。)と、磁気検出器5の下面となるロアカバー対向面5a(以下、「下面5a」という。)との間に形成された空間を、磁石移動体3を移動させるための移動空間7として設定したことにある。このスイッチ装置1のもう一つの基本の構成は、磁気検出器5の本体を磁石移動体3のアッパーカバーとして構成したことにある。
【0020】
このロアカバー2の底面2fには、図1及び図2に示すように、磁石移動体3の進退移動経路に沿って互いに対向する一対のガイドレール2d,2eが形成されている。この一対のガイドレール2d,2eは、ロアカバー2の底面2fと磁気検出器5の下面5aとの間に沿って磁石移動体3を案内移動する案内部であるスライダ摺動部として構成されている。
【0021】
一対のガイドレール2d,2eのうち、磁石移動体3の腕部3aとは反対側に配置されたガイドレール2dは、図1及び図2に示すように、ガイドレール2eの高さ及び幅よりも大きく設定されたリブ形状を有しており、磁気検出器5の固着面積が確保されている。磁石移動体3の腕部3a側に配置されたガイドレール2eは、高さ及び幅がガイドレール2dよりも小さく設定されたリブ形状を有しており、磁石移動体3の腕部3aの移動が許容されている。
【0022】
このガイドレール2dの上端面は、図1及び図2に示すように、磁気検出器5の下面5aの一部分が接着や溶着などの固定手段により取り付けられる固着面とされている。この磁気検出器5の下面5aが磁石移動体3のアッパーカバーとして構成されており、ロアカバー2に対するスイッチ装置1の組付構造が簡易化されている。パッケージ化された磁気検出器5を磁石移動体3のスライダ摺動部におけるアッパーカバーとしてロアカバー2に取り付ける構成は、磁石移動体3がロアカバー2の所定の設置部位から抜け出ることを防止する。
【0023】
上記スイッチ装置1によれば、周知の構成によるシートベルト装置におけるロアカバー2のタング挿入口側の端部開口2bから挿入すると、タングプレート先端部がイジェクタに当接して押圧し、そのイジェクタによりコイルバネ4の付勢力に抗して磁石移動体3をロアカバー2のガイドレール2d,2eに沿って移動させる。一方の磁気検出器5は、磁石移動体3の磁石の接近によってタングプレートの挿入を検出し、その検出結果を、接続端子6を介して電子制御ユニット(ECU)に出力する。
【0024】
ここで、図3を参照すると、同図には、磁気検出器5から出力される出力電流Iと磁気検出器5の本体に対する磁石移動体3の位置Xとの関係が示されている。
【0025】
図3に示すグラフにおいて、横軸に示す位置Xは、磁石移動体3が磁気検出器5の一端部に位置するときをX=0とし、磁石移動体3が磁気検出器5の一端部から他端部へ移動する方向を検出出力の切り替え点としている。磁気検出器5の感磁素子が出力する出力電流Iは、磁石移動体3の移動によりHi出力IとLo出力Iとに切り替わるように設定される。
【0026】
特に限定するものではないが、電子制御ユニットは、出力電流Iに基づき磁気検出器5が設定されたオン状態にあるか、あるいはオフ状態にあるかを判定する。図示例にあっては、出力電流IがHi出力Iのときオン状態とし、出力電流IがLo出力Iのときオフ状態としている。
【0027】
(実施の形態の効果)
上記のように構成されたスイッチ装置1によれば、上記効果に加えて、以下の効果が得られる。
【0028】
(成立性の向上)
パッケージ化された磁気検出器5が、磁石移動体3のスライダ摺動部におけるアッパーカバーとしてロアカバー2に取り付けられるため、スイッチ装置1の構成部品点数を減らすことができる。それに加えて、ロアカバー2に対する組付誤差(公差)を低減させることができる。その組付バラツキを効率的に緩和することが可能となり、無接点式のスイッチ装置1としての成立性を向上させることができる。
【0029】
(組付性の向上と金型の簡易化)
スライド部及び磁石の組付体と、基板に実装された磁気検出器とからなる複数の構成部材をロアカバー内に組み付ける上記従来のスイッチ装置の構造を排除して、磁石移動体3と磁気検出器5との二部材をロアカバー2内に組み付ける構成となっているため、製造工程において、スイッチ装置1の構成部品がロアカバー2の底面の上側からのみの組付けとなり、スイッチ装置1の組付性を向上させることができる。それに加えて、スイッチ装置1を組み付けるためのロアカバーの構造が簡単であり、ロアカバー成形用金型の構造を簡易化することができる。
【0030】
(磁石の小型化)
ハウジングに対して、スライド部と永久磁石とを組み付けたり、基板に実装された磁気検出器を組み付けたりする上記従来のスイッチ構造を排除しているため、磁石移動体3の磁石と磁気検出器5の磁気センサチップとの間のギャップを小さく設定することができるようになり、実用的には支障がない磁束密度が得られる。十分な磁束密度が得られるので、外乱磁場の影響を受けにくくなり、シールド部材を削減することができる。
【0031】
(部品点数の削減)
パッケージ化された磁気検出器5を磁石移動体3におけるスライダ摺動部のアッパーカバーとしてロアカバー2に取り付ける構成を採用することで、上記従来のスイッチ装置と比べてスイッチ装置1の構成部品点数を削減することができる。
【0032】
(スイッチ装置の小型化)
パッケージ化された磁気検出器5の採用により、スイッチ装置1のサイズを小さく設定することが可能となる。
【0033】
[変形例]
以上より、本発明におけるスイッチ装置1の代表的な構成例を実施の形態、及び図示例を挙げて説明したが、上記実施の形態、及び図示例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。本発明の技術思想の範囲内において種々の構成が可能であり、次に示すような変形例も可能である。
【0034】
上記ロアカバー2の一対のガイドレール2d,2eとしては、ロアカバー2の底面2fに磁石移動体3を移動案内することができる案内部としての構造となっているならば、特に限定されるものではない。この案内部の他の一例としては、例えばロアカバー2の底面2fに形成された凹部や凸部などの段差部を有する各種の構造を採用することができる。
【0035】
この案内部の更に他の一例としては、例えば磁気検出器5の下面5aにおける両側の端縁部に、磁石移動体3の進退移動経路に沿って一対の脚部を突出して形成することで、その一対の脚部の間が磁石移動体3を移動案内する移動空間7として設定されたものであってもよい。従って、上記案内部としては、磁気検出器5の本体を磁石移動体3のアッパーカバーとして取り付けることができる構造を兼ね備えているならば、形態や配置位置等は特に限定されるものではなく、適宜に選択することができることは勿論である。
【0036】
上記実施の形態、及び図示例では、ロアカバー2は、車両用のシートベルトに設けられたタングプレートを着脱可能に固定するバックル装置のカバー体であり、タングプレートの着脱動作により、磁石移動体3が磁気検出器5に対して移動空間7を往復動するように構成されたスイッチ装置1を例示したが、これに限定されるものではない。
【0037】
本発明に係るスイッチ装置1は、例えばレバー操作により磁石移動体3を作動させる無接点式のレバースイッチ装置や押圧ボタン操作により磁石移動体3を作動させる無接点式の押圧ボタンスイッチ装置などの各種のスイッチ装置に適用できるものであり、自動車等の車両以外の電子機器などのスイッチ装置としても効果的に用いることができる。
【0038】
以上の説明からも明らかなように、上記実施の形態、変形例、及び図示例の中で説明した特徴の組合せの全てが本発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0039】
1…スイッチ装置、2…ロアカバー、2a…開口、2b,2c…端部開口、2d,2e…ガイドレール、2f…磁気検出器対向面、3…磁石移動体、3a…腕部、4…コイルバネ、5…磁気検出器、5a…ロアカバー対向面、6…接続端子、7…移動空間、7a…バネ収容空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石を有する磁石移動体と、
前記磁石移動体の移動を検出する磁気検出器と、
前記磁気検出器を前記磁石移動体の進退移動経路に沿って取り付ける被取付け部材と、
を備えており、
前記被取付け部材及び前記磁気検出器の間に形成された空間が、前記磁石移動体の移動空間として設定されたことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
前記移動空間は、前記被取付け部材及び前記磁気検出器の間に沿って前記磁石移動体を案内する案内部を備えており、
前記磁気検出器が、前記案内部に取り付けられたことを特徴とする請求項1記載のスイッチ装置。
【請求項3】
前記案内部は、前記被取付け部材に形成された一対のガイドレールにより構成されたことを特徴とする請求項2記載のスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−109890(P2013−109890A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252566(P2011−252566)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】