説明

スイベルジョイント

【課題】高温の作動油から燃料が受ける熱影響を低く抑えることができるスイベルジョイントを提供する。
【解決手段】油圧ショベル2の旋回部の中心に配設されたスイベルジョイント36は、円筒形状をなすホルダ38と、ホルダ38内に回動自在に嵌め込まれた円柱形状をなすスピンドル40とを含み、このスピンドル40は、そのスピンドル本体48内において、スピンドル40の軸方向に延びる複数の軸流路86を有しており、この軸流路86は、燃料が流れる燃料流路と、加圧された作動油が流れる作動油流路とを含み、この作動油流路のうち、その温度が燃料の温度よりも高くなる高温作動油が流れるモータ供給流路160と、燃料供給流路166とは、互いに離間されて設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイベルジョイントに関し、より詳しくは、建設機械の下部走行体と上部旋回体とを連結する旋回部分に配設されるスイベルジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルは、下部走行体と、この上に旋回可能に配設された上部旋回体とを備えている。これら下部走行体及び上部旋回体内における作動油等の配管経路は、下部走行体及び上部旋回体間にてスイベルジョイントにより連結され、このスイベルジョイントにより上部旋回体の旋回が許容されている。
この種のスイベルジョイントは、例えば、円筒形状をなすホルダと、このホルダ内に回動可能に配設された円柱形状のスピンドルとを備えており、これらホルダ及びスピンドル内には流路がそれぞれ形成され、これら流路はホルダ及びスピンドルの相対的な回動に拘わらず、常時、接続状態が維持されている。
【0003】
ここで、油圧ショベルのうち、ホイール式油圧ショベルにおいては、燃料補給の利便性を考慮し、給油口が下部走行体の低い位置に位置付けられるよう、燃料タンクを下部走行体に設置するものが知られている。この場合、上部旋回体に搭載されたエンジンにより駆動される油圧ポンプと下部走行体に設けられた油圧式走行モータとの間を繋ぐ油圧系配管経路だけではなく、前記エンジンと下部走行体側の燃料タンクとの間を繋ぐ燃料系配管経路もまた、スイベルジョント内を通過して延びる必要がある。
【0004】
従って、このような油圧ショベルに用いられるスイベルジョイント内には、作動油を通す作動油流路だけではなく、燃料を通す燃料流路もまた設けられることとなる。
燃料流路を備えたスイベルジョイントは、例えば、特許文献1の第3図及び第4図に示されている。この特許文献1のスイベルジョイントは、スピンドルの中心に設けられ、その軸方向に延びる貫通孔と、この貫通孔内に独立して確保された燃料供給流路と、オーバフローした燃料のリターン流路とを備え、このリターン流路はその一部に、スイベルジョイント内の流路を含むものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平02−283852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、作動油流路の内部を流れる高圧の作動油は比較的高温となることが多い。
特許文献1のスイベルジョイントの場合、燃料供給流路は、スピンドルの貫通孔内にて独立して設けられているので、燃料供給流路を流れる供給燃料が高温の作動油から受ける熱影響は小さい。しかしながら、リターン流路は、高温の作動油が流れる作動油流路と同じスピンドル内に設けられているので、スピンドル内を流れるリターン燃料は、作動油からの熱影響を受けてしまい、その結果、燃料温度が上昇する虞がある。このように燃料温度が上昇するとエンジンの出力が低下するとともに、エンジンの燃費の悪化を招いてしまう。
【0007】
従って、特許文献1のスイベルジョイントを使用するにあたっては、高温の作動油からの熱影響を避けるために、リターン流路を含む燃料戻り配管経路に別途燃料クーラを設置し、燃料温度の上昇を抑える措置をとらなければならない。このため、配管経路の構造が複雑化し、製造コスト高を招くという問題がある。
また、燃料供給流路が配設されている貫通孔においては、燃料供給流路と、回動するスピンドルとの接触を避けるため、両者間にはある程度のスペースが必要である。しかも、このようなスペースは、上部旋回体側と下部走行体側との電気接続をなすスリップリングから延びる電気配線等を通すことにも利用されるので、貫通孔の内径はより大きくせざるを得ない。
【0008】
このため、特許文献1のスイベルジョイントの場合は、スピンドル自体が大きくなるので、これに伴いスイベルジョイント全体としての外径も大きくなり、建設機械への搭載性が悪化するという問題もある。
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、高温の作動油から燃料が受ける熱影響を低く抑えることができ、且つ、搭載性にも優れるスイベルジョイントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のスイベルジョイントは、下部走行体と、前記下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体とを備える建設機械に設けられ、前記上部旋回体の旋回に拘わらず、前記下部走行体側の配管と前記上部旋回体側の配管とを接続するスイベルジョイントにおいて、前記下部走行体側または前記上部旋回体側の一方に固定された状態で配置され、その外面に開口した複数のホルダ側ポートを有するホルダと、前記下部走行体側または前記上部旋回体側の他方に固定された状態で、前記ホルダ内に回動自在に嵌め込まれ、前記上部旋回体の旋回に伴い前記ホルダ内にて回動するスピンドルであって、前記ホルダから突出した突出部及びこの突出部の外面に開口した複数のスピンドル側ポートを有するスピンドルと、前記ホルダ及び前記スピンドル内に延び、互いに組みをなす前記ホルダ側ポートと前記スピンドル側ポートとをそれぞれ接続し、前記スピンドル内をその軸線方向に延びる内部流路を個々に有した複数の接続経路とを備え、前記接続経路の内部流路は、燃料が流れる燃料流路と、作動油が流れる複数の作動油流路とを含み、前記スピンドルはその横断面でみて、前記作動油流路のうち、その作動油の温度が前記燃料の温度よりも高くなる高温作動油流路を集約して配置させた高温領域を有し、前記燃料流路が前記高温領域から離間して配置されていることを特徴とするものである(請求項1)。
【0010】
請求項1に記載のスイベルジョイントによれば、燃料流路が高温領域から離間して設けているので、燃料流路を通る燃料は、高温の作動油の熱影響を受けにくくなり、燃料温度の上昇を抑えることができる。
また、前記作動油流路のうち、その作動油の温度が前記高温作動油流路内の作動油よりも低い低温作動油流路は、前記スピンドルの横断面でみて前記高温領域と前記燃料流路との間に配置されている構成とすることが好ましい(請求項2)。
【0011】
請求項2に記載のスイベルジョイントによれば、燃料流路と高温作動油流路との間に比較的低温の作動油が流れる低温作動油流路が存在するので、高温作動油流路側からの熱伝達が小さくなり、燃料流路内を流れる燃料は高温の作動油からの熱影響を受けにくくなる。
また、前記燃料流路及び前記高温作動油流路の長さは互いに異なる構成とすることが好ましい(請求項3)。
【0012】
具体的には、前記燃料流路の長さは、前記高温作動油流路の長さよりも短い構成とする(請求項4)か、若しくは、前記燃料流路の長さは、前記高温作動油流路の長さよりも長い構成(請求項5)とする。
請求項4の構成によれば、燃料流路を通る燃料がスピンドル中を通過する時間が短くなるので、高温の作動油からの熱影響を少なくすることができる。
【0013】
請求項5の構成によれば、スピンドル中における高温作動油流路の長さが相対的に短くなるので、スピンドルの伝熱面積が小さくなる。このため、高温の作動油からの熱影響は、小さくすることができる。
また、前記燃料流路及び前記高温作動油流路の少なくとも一方は、前記スピンドルとの間に断熱層を備えている構成とすることが好ましい(請求項6)。
【0014】
請求項6に記載のスイベルジョイントによれば、燃料流路若しくは高温作動油流路の何れか一方又はその両方が断熱層を備えているので、燃料流路については、外部からの熱の影響を抑えることができ、高温作動油流路については、外部への熱の放出を抑えることができる。このため、燃料流路内を流れる燃料温度の上昇を抑えることができる。
また、前記スイベルジョイントは、前記下部走行体と前記上部旋回体との間を電気的に接続するスリップリングを更に備え、前記スピンドルは、その軸線上に前記スリップリングに接続される電気配線のみを通す貫通孔を更に備えている構成とすることが好ましい(請求項7)。
【0015】
請求項7に記載のスイベルジョイントによれば、スピンドルの貫通孔には、スリップリングからの電気配線のみを通すので、貫通孔を設けてもスイベルジョイントを大型化させる必要はなく、スイベルジョイントの小型化に寄与し、搭載性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1乃至請求項7の何れかに記載の本発明のスイベルジョイントによれば、スピンドルにおける同一のスピンドル本体内に燃料流路と作動油流路とを設けても高温作動油からの熱影響を極力抑えることができ、燃料温度の上昇を抑えることができる。このため、エンジン出力の低下防止、燃費の悪化防止を図ることができる。また、スイベルジョイントの中心に燃料供給配管を配設する必要はなく、中央貫通孔を大型化する必要はないので、スイベルジョイント全体としての小型化も図れる。従って、本発明のスイベルジョイントは、建設機械への搭載性に優れ、建設機械の製造コスト削減に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】建設機械としてのホイール式油圧ショベルを示す側面図である。
【図2】実施例1に係るスイベルジョイントと各配管との接続態様を示す概略構成図である。
【図3】実施例1に係るスイベルジョイントの縦断面を示す断面図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5】実施例2に係るスイベルジョイントの縦断面を示す断面図である。
【図6】実施例3に係るスイベルジョイントの図5中の領域b内に対応する部分を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る建設機械の形態を、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0019】
本発明が適用される建設機械としては特に限定されないが、例えば、図1に示すホイール式の油圧ショベル2に適用した場合を例に説明する。
図1に示すように、油圧ショベル2は、大きく分けて見たとき、下部走行体4と、この下部走行体4上に配設された上部旋回体6とからなっている。
下部走行体4は、車体の前後に配設された車輪8と、これら車輪8を駆動する油圧式の走行モータ(図示せず)と、前輪の向きを変えるステアリング機構(図示せず)と、下部走行体4における左側前後の車輪8間の中間に配設された燃料タンク10等を含んでいる。
【0020】
上部旋回体6は、下部走行体4上に旋回ベアリング12を介して旋回可能に設けられた上部フレーム14を備え、この上部フレーム14上の前部左側に運転室16が設けられている。この運転室16の右側、即ち、上部フレーム14の前側中央部からはブーム18が延びている。ブーム18はその両側に配設された一対のブームシリンダ20を伸縮させることで起伏される。このブーム18の先にはアーム22が回動可能に連結され、このアーム22の先端にはリンク機構24を介して、バケット26が取り付けられている。そして、これらアーム22およびバケット26もまた、そのアームシリンダ28およびバケットシリンダ30の伸縮を受けて回動される。
【0021】
一方、この運転室16の後方にはエンジン室32が配設され、このエンジン室32の中にはエンジン34及びこのエンジン34に駆動される油圧ポンプ(図示せず)が配設されている。
下部走行体4及び上部旋回体6の内部においては、油圧回路を構成する油圧配管、燃料配管、電気回路配線等が張り巡らされており、これら配管等は、旋回ベアリング12の中心部に配設されたスイベルジョイント36を介して、下部走行体4側と上部旋回体6側とが連結されている。なお、油圧ショベル2には、配管や配線以外にも、油圧ショベル2の機能を発揮するのに必要な機能部品(図示せず)が配設されている。
【0022】
次いで、スイベルジョイント36について詳述する。
図2に示すように、スイベルジョイント36は、鉛直に配置された円筒形状のホルダ38と、このホルダ38内に配設された円柱形状のスピンドル40とを備えている。
ホルダ38は、その上端外周にフランジ42を有しており、このフランジ42にて下部走行体4の車体フレーム44にボルト46で固定されている。これにより、ホルダ38は、下部走行体4に一体的に結合されている。
【0023】
一方、スピンドル40は、ホルダ38内に大部分が挿通されたスピンドル本体48を備えている。スピンドル本体48は、ホルダ38のフランジ42から上方に突出した突出部50を含んでいる。この突出部50の上端面にはボルト56を介してブラケット54が取付けられており、このブラケット54は支柱52に支持されている。この支柱52は上部旋回体6の上部フレーム14に立設されている。これにより、スピンドル40は、上部旋回体6と一体的に結合されている。
【0024】
より詳しくは、スイベルジョイント36の縦断面を示す図3から明らかなように、ホルダ38は、その内周面58に複数の円環溝60を有し、これら円環溝60はホルダ38の全周に亘って、その周方向に延び、ホルダ38の軸線方向に互いに間隔を存して配置されている。これらの円環溝60は、縦断面積が大小様々なものとなっている。そして、各円環溝60にはホルダ側ポート62がそれぞれ連通しており、これらホルダ側ポート62はホルダ38内に形成され、その円環溝60からホルダ38の径方向外側へ向かって延び、ホルダ38の外周面にて開口している。また、各円環溝60の間には、比較的小さい断面積の円環溝64が設けられており、これら円環溝64には、それぞれOリング66が配設されている。
【0025】
更に、ホルダ38の上端開口部にはその内周面58に流体の漏洩防止のためのOリング70が配設されている。そして、このOリング70の下方の内周面58には、ブッシング187が配設されている。一方、ホルダ38の下端には円盤状の蓋体72が取付けられ、この蓋体72はボルト78を介してホルダ38に固定されている。蓋体72はその内面中央に凹部76を有し、この凹部76にスピンドル40の下端が回動自在に嵌合されている。また、凹部76の底には貫通孔74が形成されている。
【0026】
より詳しくは、図3から明らかなように、スピンドル40は多段の円柱形状をなし、中央貫通孔80を有する。この中央貫通孔80はスピンドル40の軸線上に配置されている。スピンドル40のスピンドル本体48は、ホルダ38内に挿入されている挿入部49と、ホルダ38から突出した突出部50とを含んでおり、挿入部49はスピンドル40の全長の約3/4の長さを有し、突出部50は前記全長の約1/4の長さを有する。
【0027】
スピンドル40における挿入部49の外周面82は前述したホルダ38の各円環溝60を覆い、これら円環溝60を円環状流路84にそれぞれ形成する。各円環状流路84の間には、前述のOリング66が存在するので、各円環状流路84からの流体の漏れは有効に防止されている。
一方、スピンドル40のスピンドル本体48内には、中央貫通孔80を避けた部分に複数の細穴(以下、軸流路86という。)が形成されており、これら軸流路86はスピンドル40の軸線方向に延びている。各軸流路86は、前述したスピンドル40の突出部50の上面から挿入部49内に達し、その上端開口88はプラグ(図示しない)により塞がれている。そして、各軸流路86はその上端部にてスピンドル側ポート90に連通するとともに、その下端部にて連通孔92に連通している。これらスピンドル側ポート90及び連通孔92はスピンドル40内をその径方向に延び、スピンドル40における突出部50及び挿入部49の外周面にそれぞれ開口する。各軸流路の連通孔92は対応する円環状流路84にそれぞれ連通すべく配置されている。
【0028】
更に、スピンドル40、即ち、スピンドル本体48の下端部は、前述の中央貫通孔80と同軸のボス96として形成され、このボス96が前述した凹所76に部分的に嵌合されている。このボス96の基部には、スピンドル本体48よりも大径のリング部材98が嵌め込まれ、このリング部材98はボルト100を介してスピンドル本体48に固定されている。リング部材98の外周縁部は、ホルダ38の下端面の一部に対して摺動可能にオーバーラップしており、スピンドル40の抜けを防止するストッパとして機能している。
【0029】
なお、ボス96の先端部外周と凹所76の内周面との間には、流体の漏洩防止のためのOリング102が配設されている。
ここで、ホルダ38の下端開口部には、その内周面58にブッシング188が配設されており、スピンドル40は前述した上側のブッシング187及び下側のブッシング188により、上下にて回動自在に支持されている。
【0030】
以上のように、スイベルジョイント36内においては、スピンドル側ポート90からスピンドル40内を通り、円環状流路84を介してホルダ側ポート62に繋がる流路が形成されており、スピンドル40が回動しても、流路が閉じられることはなく、スピンドル側ポート90とホルダ側ポート62との間、即ち、上部旋回体6側と下部走行体4側との連通を常時確立することができる。
【0031】
ここで、スイベルジョイント36を介して連結される下部走行体4側及び上部旋回体6側の燃料配管及び油圧配管の構成を図2に基づいてより詳しく説明する。
まず、燃料配管については、燃料タンク10より延びる下部走行体4側の燃料供給配管106が、ホルダ側ポート62のうちの1つである燃料導入ポート108に接続されている。燃料導入ポート108は、対応する円環状流路84及び軸流路86を経てスピンドル側ポート90のうちの1つである燃料導出ポート110に連通している。この燃料導出ポート110には、上部旋回体6側の燃料供給配管112の一端が接続されており、この燃料供給配管112の他端は、エンジン34に接続されている。
【0032】
また、エンジン34からは、オーバフロー燃料のための上部旋回体6側のリターン配管114が延出しており、このリターン配管114は、スピンドル側ポート90のうちの1つである入側リターンポート116に接続されている。この入側リターンポート116は、対応する軸流路86、円環状流路84を経由し、ホルダ側ポート62のうちの1つである出側リターンポート118に連通している。この出側リターンポート118には、下部走行体4側のリターン配管120の一端が接続されており、このリターン配管120の他端は、燃料タンク10に接続されている。これにより、下部走行体4側の燃料タンク10と上部旋回体6側のエンジン34との間における燃料の供給経路及びリターン経路がスイベルジョイント36を介して形成されている。
【0033】
次に、ホイール式の油圧ショベル2においては、ステアリング機構、即ち、そのステアリングシリンダ(図示せず)を駆動するステアリングポンプ122、走行モータ124を駆動する駆動ポンプ126、ブームシリンダ20やサスペンションシリンダ(図示せず)等を駆動するシリンダポンプ128及び各種油圧切替弁にパイロット圧を供給するパイロット圧ポンプ130等の各種の油圧ポンプが搭載されており、これら油圧ポンプは、上部旋回体6に配置され、前述のエンジン34により駆動される。
【0034】
まず、ステアリングポンプ122の吐出口からはステアリング油圧配管132が延びている。このステアリング油圧配管132には、途中にステアリングバルブ134が介挿され、ステアリング油圧配管132はスイベルジョイント36のスピンドル側ポート90のうちの1つである入側ステアリングポート136に接続されている。
入側ステアリングポート136は、対応する軸流路86、円環状流路84を経由し、ホルダ側ポート62のうちの1つである出側ステアリングポート138に連通している。この出側ステアリングポート138には、ステアリング油圧配管140の一端が接続されており、このステアリング油圧配管140の他端は、ステアリングシリンダに接続されている。
【0035】
ここで、ホイール式の油圧ショベル2は、運転室18内のハンドルを操作することにより前輪の操向をなす。具体的には、ステアリングポンプ122からステアリングシリンダに供給される作動油の供給方向及び供給量がハンドルの操作量に応じて切り替え作動されるステアリングバルブ134によって制御され、ステアリングシリンダを介して前輪の向きが変えられる。このようなステアリング油圧回路もまた、スイベルジョイント36を介して上部旋回体6側の配管と下部走行体4側の配管とが連結されている。
【0036】
また、駆動ポンプ126、シリンダポンプ128及びパイロット圧ポンプ130からそれぞれ延出する上部旋回体6側の油圧配管144,146,148も同様にしてスイベルジョイント36のスピンドル側ポート90に接続され、スイベルジョイント36内の対応する軸流路86、円環状流路84及びホルダ側ポート62を経由して、下部走行体4側の油圧配管150,152,154にそれぞれ連通している。そして、これら油圧配管150,152,154は、走行モータ124、サスペンションシリンダ、各種油圧切替弁にそれぞれ連結されている。このようにしてポンプ126,128,130側の油圧配管もまたスイベルジョイント36を介して下部走行体4側の油圧配管に連結されている。
【0037】
なお、シリンダポンプ128から上部旋回体側に属するブームシリンダ20等への油圧の供給は、スイベルジョイント36を介さず供給されることは言うまでもない。また、ステアリングシリンダ、走行モータ124、サスペンションシリンダ等からの作動油の戻りは、図示しない配管によりスイベルジョイント36を介して上部旋回体6に配置された作動油タンク(図示せず)に戻される。
【0038】
以上のように、スイベルジョイント36には下部走行体4側及び上部旋回体6側の燃料配管及び油圧配管が集められ、図4に示されるようにスピンドル40内は多数の軸流路86が中央貫通孔80の回りに配置されている。ここで、走行モータ124に対して給排される作動油は、特に高温となるので、スピンドル40のスピンドル本体48を介して、他の軸流路86を流れる作動油に熱影響を与える虞がある。特に、この熱影響を受けて燃料の温度が上昇すると、エンジン出力の低下、燃費の悪化を招くので、燃料には、熱影響を極力及ぼさないようにする必要がある。そこで、スピンドル40内においては、比較的高温となる作動油が流通する軸流路86と、比較的低温である作動油及び燃料が流通する軸流路86とを互いに離間させて配置している。
【0039】
より詳しくは、図4に示されるように、走行モータ124に対する作動油の給排に使用されるモータ供給流路160及びモータ戻り流路162や、高温作動油の給排に使用される高温作動油流路164は、破線で囲まれた領域a内に配置され、燃料の給排に使用される燃料供給流路166及び燃料リターン流路168や、低温作動油の給排に使用される低温作動油流路170は、領域aの外側に配置されている。
【0040】
具体的には、領域a内において、モータ供給流路160は図4でみて中央貫通孔80の右側に位置付けられ、モータ戻り流路162は図4でみて中央貫通孔80の上側に位置付けられている。そして、高温作動油流路164はモータ供給流路160とモータ戻り流路162との間に位置付けられている。それ故、高温作動油側の流路160,162,164が集められた領域aは高温領域となる。
【0041】
一方、燃料供給流路166は、中央貫通孔80を挟んでモータ供給流路160の反対側に離間して位置付けられ、燃料リターン流路168は、図4でみて燃料供給流路166の上側に位置付けられている。
なお、パイロット圧油等の低温作動油が流れる低温作動油流路170は、図4でみて中央貫通孔80よりも下側に位置付けられている。
【0042】
更に、図3から明らかなように、燃料供給流路166の長さは、モータ供給流路160の長さよりも短く設定されている。これにより、燃料がスピンドル40内を通過するのに要する時間が短くなり、高温の作動油から燃料への熱影響を少なくすることができる。燃料リターン流路168の長さについても同様に、モータ供給流路160の長さよりも短く設定されている。
【0043】
また、図4に示すように、ステアリングシリンダに対する作動油の給排に用いられるステアリング流路172,174は、燃料供給流路166とモータ戻り流路162との間及び燃料リターン流路168とモータ戻り流路162との間にそれぞれ位置付けられている。ステアリングシリンダに対して給排される作動油は、走行モータに対して給排される作動油よりも低温であるので、燃料供給流路166及び燃料リターン流路168とモータ供給流路160及びモータ戻り流路162との間にステアリング流路172,174が位置付けられていれば、燃料の温度上昇の抑制に寄与する。
【0044】
即ち、ステアリング流路172,174は、比較的低温の作動油の流通に使用されるので、高温領域aから燃料供給流路166及び燃料リターン流路168への熱伝達を小さくする。しかも、燃料供給流路166及び燃料リターン流路168の長さは比較的短いので、燃料が熱に晒される時間も短くできる。従って、燃料の温度の上昇は有効に抑えることができる。
【0045】
この結果、上述のスイベルジョイント36を備えた油圧ショベル2によれば、燃料温度の上昇が抑えられるので、エンジン出力の低下は防止され、燃費の悪化も抑えられる。
また、本実施例のスイベルジョイント36によれば、燃料供給流路166及び燃料リターン流路168に代わる配管をスピンドル40の中央貫通孔80内に配設する必要はないので、中央貫通孔80内には、上部旋回体6側の電気回路190と下部走行体4側の電気回路192とを電気的に繋ぐスリップリング194への電気配線196のみが挿通されている(図2参照)。つまり、スイベルジョイント36においては、そのスピンドルの中央貫通孔80は電気配線のみを通すことができるスペースだけで十分であるので、中央貫通孔80を小径にすることができ、全体として小型のスイベルジョイントを得ることができる。よって、スイベルジョイント36は建設機械への搭載性にも優れている。
【0046】
更に、スイベルジョイント36によれば、燃料温度の上昇を有効に抑えることができるので、燃料クーラを別途設ける必要がなく、油圧ショベル全体としての製造コスト削減にも寄与する。
【実施例2】
【0047】
次に、油圧ショベル2に適用される実施例2のスイベルジョイント37について図5を参照して説明する。なお、実施例2を説明するにあたり、既に説明した実施例1と同一の機能を発揮する部材および部位には同一の参照符号を付して、これらの説明は省略し、相違する点のみを説明する。
スイベルジョイント37の場合、モータ供給流路182及びモータ戻り流路(図示せず)の長さが燃料供給流路180及び燃料リーン流路(図示せず)よりも短く設定されている。
【0048】
これにより、スピンドル40内にて高温作動油が流れる流路の距離が相対的に短くなり、高温領域aからの熱伝達を小さくすることができ、燃料に対する熱影響を小さくすることができる。
【実施例3】
【0049】
次に、油圧ショベル2に適用される実施例3のスイベルジョイントについて図6を参照して説明する。なお、実施例3を説明するにあたり、既に説明した実施例1及び実施例2と同一の機能を発揮する部材および部位には同一の参照符号を付して、これらの説明は省略し、相違する点のみを説明する。
図6は、図5中の破線で囲まれた領域bに対応する部分を拡大して示す。図6から明らかなように、燃料の供給に使用される軸流路86内には二重巻鋼管186が挿入されており、この二重巻鋼管186内が燃料供給流路184として形成されている。なお、燃料リターン流路にも同様な二重巻鋼管が挿入されている。
【0050】
スピンドル40のスピンドル本体48と燃料との間に介在する二重巻鋼管186は断熱層を形成し、燃料への熱伝達を抑制し、高温作動油から燃料への熱影響を小さくすることができる。
なお、本発明は、上記した実施例1〜3の態様に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0051】
上記実施例3においては、燃料が流れる流路の方に二重巻鋼管を配設したが、本発明は、この態様に限定されるものではなく、高温作動油が流れる流路に二重巻鋼管を配設する態様としてもよい。この態様によれば、高温作動油流路からスピンドル本体48への熱伝達を低くすることができる。
また、燃料又は高温作動油の流路内に配設する管材としては、二重巻鋼管に限定されるものではなく、断熱性に優れる材料よりなる管材であればよく、樹脂系断熱材製の管材、セラミックス製の管材等を用いても構わない。
【0052】
また、上記実施例においては、ホルダ側に円環状の溝を設けた態様について説明したが本発明はこの態様に限定されるものではなく、スピンドルの外周に円環溝を設けた態様としてもよく、ホルダとスピンドルの両方に対応する円環溝を設けた態様としても構わない。つまり、ホルダの内周面とスピンドルの外周面との間に、ホルダの内壁とスピンドルの外壁により円環状の流路を形成できる態様であればよい。
【0053】
また、上記実施例においては、スピンドルを上部旋回体側に固定し、ホルダを下部走行体側に固定する態様について説明したが、本発明はこの態様に限定されるものではなく、これらを逆にして、ホルダを上部旋回体側に固定し、スピンドルを下部走行体側に固定する態様としても構わない。
また、上記実施例においては、ホイール式の油圧ショベルについて説明したが、本発明はこの態様に限定されるものではなく、クローラ型の油圧ショベル等上部旋回体を有する他の建設機械に採用することもできる。
【符号の説明】
【0054】
2 油圧ショベル(建設機械)
4 下部走行体
6 上部旋回体
10 燃料タンク
14 上部フレーム
16 運転室
34 エンジン
36 スイベルジョイント
38 ホルダ
40 スピンドル
44 車体フレーム
48 スピンドル本体
49 挿入部
50 突出部
58 内周面
60,64 円環溝
62 ホルダ側ポート
66 Oリング
80 中央貫通孔
86 軸流路
90 スピンドル側ポート
106,112 燃料供給配管
108 燃料導入ポート
110 燃料導出ポート
114,120 リターン配管
116 入側リターンポート
118 出側リターンポート
122 ステアリングポンプ
124 走行モータ
126 駆動ポンプ
128 シリンダポンプ
130 パイロット圧ポンプ
132 ステアリング油圧配管
134 ステアリングバルブ
136 入側ステアリングポート
138 出側ステアリングポート
140 ステアリング油圧配管
160 モータ供給流路
162 モータ戻り流路
164 高温作動油流路
166 燃料供給流路
168 燃料リターン流路
170 低温作動油流路
172,174 ステアリング流路
186 二重巻鋼管
187,188 ブッシング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、前記下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体とを備える建設機械に設けられ、前記上部旋回体の旋回に拘わらず、前記下部走行体側の配管と前記上部旋回体側の配管とを接続するスイベルジョイントにおいて、
前記下部走行体側または前記上部旋回体側の一方に固定された状態で配置され、その外面に開口した複数のホルダ側ポートを有するホルダと、
前記下部走行体側または前記上部旋回体側の他方に固定された状態で、前記ホルダ内に回動自在に嵌め込まれ、前記上部旋回体の旋回に伴い前記ホルダ内にて回動するスピンドルであって、前記ホルダから突出した突出部及びこの突出部の外面に開口した複数のスピンドル側ポートを有するスピンドルと、
前記ホルダ及び前記スピンドル内に延び、互いに組みをなす前記ホルダ側ポートと前記スピンドル側ポートとをそれぞれ接続し、前記スピンドル内をその軸線方向に延びる内部流路を個々に有した複数の接続経路と
を備え、
前記接続経路の内部流路は、
燃料が流れる燃料流路と、
作動油が流れる複数の作動油流路とを含み、
前記スピンドルはその横断面でみて、前記作動油流路のうち、その作動油の温度が前記燃料の温度よりも高くなる高温作動油流路を集約して配置させた高温領域を有し、前記燃料流路が前記高温領域から離間して配置されていることを特徴とするスイベルジョイント。
【請求項2】
前記作動油流路のうち、その作動油の温度が前記高温作動油流路内の作動油よりも低い低温作動油流路は、前記スピンドルの横断面でみて前記高温領域と前記燃料流路との間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のスイベルジョイント。
【請求項3】
前記燃料流路及び前記高温作動油流路の長さは互いに異なることを特徴とする請求項1又は2に記載のスイベルジョイント。
【請求項4】
前記燃料流路の長さは、前記高温作動油流路の長さよりも短いことを特徴とする請求項3に記載のスイベルジョイント。
【請求項5】
前記燃料流路の長さは、前記高温作動油流路の長さよりも長いことを特徴とする請求項3に記載のスイベルジョイント。
【請求項6】
前記燃料流路及び前記高温作動油流路の少なくとも一方は、前記スピンドルとの間に断熱層を備えていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のスイベルジョイント。
【請求項7】
前記スイベルジョイントは、
前記下部走行体と前記上部旋回体との間を電気的に接続するスリップリングを更に備え、
前記スピンドルは、その軸線上に前記スリップリングに接続される電気配線のみを通す貫通孔を更に備えていることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のスイベルジョイント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−168770(P2010−168770A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10725(P2009−10725)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】