説明

スエード調人工皮革

【課題】従来技術の問題点を解消し、立毛品位、風合いが良好で耐ピリング性に優れたなスエード調人工皮革を提供することを課題とする。
【解決手段】平均繊度1dtex以下の極細繊維を含む繊維絡合体と高分子弾性体で構成され、該極細繊維が脂肪族ポリエステルとポリアミドからなるブレンド繊維であることを特徴とするスエード調人工皮革。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人工皮革に関する。さらに詳しくは立毛品位、風合いが良好で耐ピリング性に優れたスエード調人工皮革に関するものである。
【背景技術】
【0002】
極細繊維からなる立毛を有するスエード調人工皮革は柔軟な風合いと優れた物性、優美な立毛を有し、衣料用や家具、車両内装材等として幅広く使用されている。
【0003】
しかし、表面に立毛を有するスエード調人工皮革は極細繊維シートに弾性重合体を含浸させた構造であるため使用中に摩耗されて脱落した繊維が表面に毛玉を形成すること、いわゆるピリングが発生し易いという欠点を有している。
【0004】
極細繊維を構成するポリマーとしてはナイロン6、ナイロン66、ナイロン6−10、ナイロン12で代表されるポリアミド類、ポリエチレンテレフタレートもしくはそれを主体とする共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィン類等が提案され、染色堅牢性の良いポリエチレンテレフタレート、風合いの柔軟なポリアミドがよく用いられている。また、近年、柔軟性、発色性がよく生分解性を有するポリ乳酸に代表される脂肪族ポリエステルも提案されている。
【0005】
スエード調人工皮革のピリング性を改善する方法についてはこれまで種々の提案がされている。
【0006】
例えば0.02〜0.2デニールの極細繊維と該繊維の5分の1以下の平均繊度でかつ0.02デニール未満の細繊度の繊維束からなるシートによる方法(特許文献1)や単繊維繊度が0.2〜0.002dtexのポリエステル極細繊維に平均粒子径が100nm以下のシリカを0.5〜10重量%含有させる方法(特許文献2)がある。
【0007】
しかし、特許文献1の方法では特殊な紡糸口金を使用する必要があるため高コストがさけられない。また、特許文献2の方法では繊維中に無機物の粒子を含有させる必要があるため紡糸中に粒子が2次凝集した粗大粒子によって濾圧が上昇し易く長時間の紡糸が困難になる問題を有するものであった。
【特許文献1】特開平7−173778号公報
【特許文献2】特開2004−339617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は前記した従来技術の問題点を解消し、立毛品位、風合いが良好で耐ピリング性に優れたスエード調人工皮革を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するため次の構成を有する。すなわち、本発明のスエード調人工皮革は平均繊度1dtex以下の極細繊維を含む繊維絡合体と高分子弾性体で構成され、該極細繊維が脂肪族ポリエステルとポリアミドとからなる海島型極細繊維であることを特徴とするものである。特に、脂肪族ポリエステルとポリアミドの10/90〜90/10重量%のブレンドポリマーから製造された海島型極細繊維から構成され、該海島型極細繊維には島成分が少なくとも10本以上含有されたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のスエード調人工皮革は耐ピリング性に優れ、立毛品位、風合いが良好なものであり、衣料用、靴、袋物用、壁材用、車両内装材用として利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
本発明は前記課題、すなわち、立毛品位、風合いが良好で耐ピリング性に優れたスエード調人工皮革について鋭意検討し、極細繊維を構成する素材として脂肪族ポリエステルとポリアミドとの海島型極細繊維を採用してみたところかかる課題を一気に解決することを見いだしたものである。
【0013】
本発明のスエード調人工皮革は平均繊度1dtex以下の極細繊維を含む繊維絡合体と高分子弾性体で構成されるものであって、該極細繊維に脂肪族ポリエステルとポリアミドとの海島型極細繊維を採用するものである。本発明の海島型極細繊維を構成する脂肪族ポリエステルは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレートバリレート、あるいはこれらのブレンド物、共重合体、変成物等を用いることができる。中でも紡糸性、立毛品位がよく、染色性も良好であり、かつ比較的価格も低いポリ乳酸が好ましい。ポリ乳酸としては、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸であることが好ましい。ポリ乳酸の分子量は、重量平均分子量で5万以上、好ましくは10万以上、さらに好ましくは20万以上である。分子量5万未満では強度等の繊維物性が低下し、製品品位、物性が低下するためよくない。
本発明において脂肪族ポリエステルと海島型極細繊維を構成するポリアミドはナイロン6、ナイロン66、ナイロン6−10、ナイロン12やこれらの共重合体およびその変性物を単独または混合して用いることができる。なかでもナイロン6はポリ乳酸と融点差が少なく、親和性も高く複合紡糸した場合の紡糸性がよいため、脂肪族ポリエステルにポリ乳酸を用いた場合には好ましく用いられる。
【0014】
本発明における海島型極細繊維の平均繊度は1dtex以下であり、風合いの柔軟性、立毛品位から好ましくは0.5dtex以下、より好ましくは0.3dtex以下である。繊度が1dtexを越えると立毛タッチが硬くなり、スエードとしての品位も劣るためよくない。
【0015】
ここでいう平均繊度とは得られたスエード調人工皮革の厚み方向に切断した断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、任意の100カ所の極細繊維の繊維径を測定して算出される平均値を指すものである。
【0016】
なお、本発明では脂肪族ポリエステルとポリアミドとの海島型極細繊維のみならず、他のポリマーからなる極細繊維と混合して用いることも可能である。この場合得られる多成分繊維絡合体中の脂肪族ポリエステルとポリアミドとの海島型極細繊維以外の成分は各種ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等ポリエステル、ポリ乳酸、ポリグリコール酸等の脂肪族ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンそれらの共重合体等のポリマーから選ぶことができる。混合する極細繊維の繊度も1dtex以下が好ましく、さらに好ましくは0.5dtex以下、より好ましくは0.3dtex以下である。このような極細繊維は溶剤抽出型や分割型複合繊維を用いてシート化後に極細繊維化処理を行って得ることが好ましい。多成分繊維絡合体中の脂肪族ポリエステルとポリアミドとの海島型極細繊維の含有率は30重量%以上、より好ましくは50重量%以上がよい。30%重量未満では本発明の目的である耐ピリング性に優れた立毛品位、風合いが得られないため良くない。
【0017】
本発明に用いられる海島型極細繊維は極細繊維であり、多数の島成分を含有する海島型繊維である。かかる構造の極細の海島型繊維の製造方法は特に限定されるものではないが、公知の、海島型の極細繊維発生繊維から極細繊維を製造する方法が好ましい。すなわち、公知の海島型複合紡糸口金を使用して、島成分を脂肪族ポリエステルとポリアミドとのブレンドポリマー、海成分を他のポリマーで構成した海島型複合繊維を作製し、シート化後に海成分を抽出除去して得る方法が容易である。海島型の極細繊維発生繊維の海成分に用いるポリマーは、海島型極細繊維を構成する脂肪族ポリエステルおよびポリアミドと相溶性がなく、かつ溶剤に対する溶解性の異なる熱可塑性樹脂を用いればよい。すなわち、海島型極細繊維を構成する脂肪族ポリエステルおよびポリアミドと相溶性がなく、かつ溶剤に対する溶解性の異なる熱可塑性樹脂を海成分に供給し、島成分に脂肪族ポリエステルとポリアミドのブレンドポリマーを供給して複合紡糸し、得られた海島型複合繊維を使用してシート化した後に、該海成分を溶剤で除去する。島成分に供給するブレンドポリマーは例えば、島成分の押出機ホッパーに2種類のチップを混合して供給し、押出機内で混練りし、直接口金の島形成部に供給すればよい。また、あらかじめ、2種類のポリマーを押出機や静止型混合器等で混練りしてブレンドポリマーのチップを作製し、これを島成分に供給して海島型複合紡糸をしてもよい。押出機で混練りを行う際は2軸押出機を用いることが好ましく、静止型混合器を用いる場合は分割数を100万以上とすることが好ましい。別の方法として、特開昭59−53715号公報に記載の紡糸装置を使用して島成分に脂肪族ポリエステルとポリアミドを供給する方法も採用することができる。一般的なブレンドポリマーを供給する製造方法では島成分はある程度の長さで切断された繊維となるが、上記広報の紡糸装置を使用した場合には連続した島成分が得られる。ただし、本発明においては島成分の繊維長は特に問題とはならないものである。
【0018】
海島型の極細繊維発生繊維の海成分ポリマーとしては島成分を構成する脂肪族ポリエステルおよびポリアミドと相溶性が無く、かつ溶剤に対する溶解性が異なることが必要であり、ポリスチレンまたはその共重合体、ポリエチレンまたはその共重合体、ポリプロピレンまたはその共重合体、ポリビニルアルコールまたはその共重合体等が使用可能であり、紡糸性、シート化特性、使用する溶剤等を考慮して適宜選定すればよい。
【0019】
なお、脂肪族ポリエステルは芳香族ポリエステルに比較すると一般的に耐溶剤性が低く、上記海島型の極細繊維発生繊維から溶剤で海成分を抽出除去する際に溶剤の種類によっては脂肪族ポリエステルの島成分は膨潤して伸びや変形、破断等を生じる場合もあるが、本発明においては島成分はブレンドされたポリアミドを含有したポリマーアロイであるため上記の問題が生じにくくなるという効果もある。
【0020】
極細繊維発生繊維の島成分は脂肪族ポリエステルとポリアミドとのブレンドポリマーからなるため、島成分自体もその断面を観察したとき、海島構造を有している。すなわち、海島型の極細繊維となる。
【0021】
極細繊維発生繊維における島成分での脂肪族ポリエステルとポリアミドの海と島の形成、すなわち、極細繊維においてどちらの成分が海になり、どちらの成分が島になるかは、両成分のブレンド比、溶融紡糸時の両成分の粘度、ポリマー特性、混練り条件等によって決定される。一般的に島を形成するポリマーの溶融粘度を設定すると剪断力による島成分の変形が起こりやすいため、島成分の微分散が進みやすく、超微分散の観点から好ましい。
【0022】
ポリマー特性の一般的な性能のひとつとして溶解度パラメーター(SP値)があげられる。SP値とは(蒸発エネルギー/モル容積)1/2で定義される物質の凝集力を反映するパラメーターであり、SP値が近いもの同士は相溶性が良いブレンドポリマーが得られる可能性がある。2つのポリマーのSP値の差が1〜9(MJ/m1/2であると非相溶化による島成分の円形化と超微分散が両立させやすく好ましい。例えばポリ乳酸とナイロン6はSP値の差が2(MJ/m1/2であり好ましい組み合わせである。
なお、ポリマーの特性やブレンド条件、特にブレンド比率が50/50%付近では海島の形成が不安定となり形成された海島が部分的に逆転したり、島の中にさらに海が含まれて2重の海島を形成する場合もあるが本発明においては特に問題とはならない。また、形成された島の形状は円形とは限らず、楕円その他不定形であることも多いが本発明においては特に問題とはならないものである。
【0023】
本発明においては、海島型極細繊維断面中に多数の島成分が存在することが重要なのであって島成分の形状は特に限定されるものではない。
【0024】
島成分径の測定は繊維の横断面方向に超薄片を切り出し、透過型電子顕微鏡(TEM)で繊維横断面写真を撮影して測定する。平均島本数は30本以上の繊維について島本数を数えた平均値を指す。島径は島が円形の場合は直径、変形断面の場合は最も長い方の径をいう。平均島径は無作為に選んだ300以上の測定値の平均値を指す。
【0025】
本発明に用いられる海島型極細繊維は、任意の断面を観察したとき島が10島以上含まれることが好ましい。さらに好ましくは20島以上である。
【0026】
本発明に用いられる海島型極細繊維の島成分は平均径が0.05μm以上1μm以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.05μm以上、0.8μm以下、より好ましくは0.1μm以上、0.5μm以下である。0.05μm以上、1μm以下として場合には本発明の良好な耐ピリング性を得ることができる。なお、本発明における島成分の平均径は、島成分が円形の場合は直径、変形断面の場合は最も長い方の径をいう。
【0027】
本発明に用いられる海島型極細繊維の脂肪族ポリエステルとポリアミドの比率は、好ましくは10/90〜90/10重量%である。さらに好ましくは20/80〜90/10、より好ましくは50/50〜80/20重量%である。脂肪族ポリエステルおよびポリアミドが10重量%以上であれば、本発明の目的とする優れた立毛品位や風合いが得られる。
【0028】
本発明において繊維絡合体を形成するに当たっては海島型極細繊維を島成分として含有する極細繊維発生繊維を用いて常法のごとく、カードによるウェブ形成方式や抄紙法を利用しウェブを形成した後、ニードルパンチ、ウォータージェットパンチもしくはこれらを組み合わせて行う。なお、この際、ウェブの両面または片面に織物もしくは編物を積層し絡合処理する方法や、さらに該繊維絡合体を複数重ねて再度絡合処理し、後工程でスライスする方法等も採用可能である。
【0029】
本発明においては、これらの海島型極細繊維を含む繊維絡合体に高分子弾性体を付与する。製品品位を高めるために高分子弾性体付与前に収縮熱処理、ヒートプレス、ウェットプレス等で絡合体の高密度化あるいはポリビニルアルコール等の糊剤による形態固定化等の工程を組み合わせることも可能である。本発明に用いられる高分子弾性体とはポリウレタンエラストマー、アクリロニトリル・ブタジエンラバー、天然ゴム、ポリ塩化ビニル、ポリアミド等を用いることができる。特に加工性および製品品位等の観点からポリウレタンエラストマーが好ましく、数平均分子量が500〜10000のポリエステルジオール系、ポリエーテルジオール系、ポリカーボネートジオール系を単独または組み合わせて用いたものがよい。高分子弾性体の付与に際して、該高分子弾性体中に必要に応じて公知の着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、分散剤、柔軟剤、凝固調整剤等の添加剤を配合することができる。繊維絡合体への高分子弾性体の付与方法としては高分子弾性体の溶液を含浸する方法やエマルジョン状態の高分子弾性体を含浸する方法が例としてあげられるがいかなる方法も採用することができる。凝固方法としては加熱乾燥により脱溶剤を行う乾式法、該高分子弾性体の非溶剤、あるいは非溶剤―溶剤中で処理する湿式法等いかなる手段をとってもよい。高分子弾性体の量は、製品の柔軟性、タッチ、強力等から適宜選択することができるが不織布のみで絡合体が形成されている場合、湿式法により凝固を行う場合等は固形分として対繊維重量で20〜70%の範囲が好ましい。また、織物あるいは編み物が一体化された絡合体や水流絡合等で高度に絡合されたシートや乾式法により凝固を行う場合等は極少量の高分子弾性体でも十分であり、2〜30%の範囲が好ましい。しかし、いずれの場合もこの範囲の限りではなく、繊維絡合体の物性等を考慮したうえで高分子弾性体の量を調節すればよい。
【0030】
海島型極細繊維を島成分として含む極細繊維発生型の海島繊維から溶剤により海成分を抽出除去して海島型極細繊維の絡合体とする処理は、高分子弾性体の付与前または付与後に適宜組み合わせて行えばよい。
【0031】
次に、このシートの少なくとも一面を起毛処理して繊維立毛面を形成させる。繊維立毛面を形成させる方法は、サンドペーパー等によるバフィング等、各種方法を用いる。
【0032】
次いで、得られた立毛シートを染色、仕上げ処理をする。染料、染色条件は繊維絡合体を構成する海島型極細繊維の種類、ブレンド比率によって、分散染料や酸性染料を単独または両方を選択して構成繊維の一方または両方を染色可能な条件を採用すればよい。
【0033】
なお、本発明における平均繊度、島成分直径は次の方法で測定した値を言う。
【0034】
平均繊度:得られたシートの厚み方向に切断した断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、任意100カ所の極細繊維の繊維径を測定し、ポリマー密度から算出した値を平均する。
【0035】
島本数および島直径:繊維の横断面方向に超薄片を切り出し、透過型電子顕微鏡(TEM)で繊維横断面写真を撮影して測定する。必要に応じて金属染色を施す。海島型極細繊維の島本数は30本の繊維について島本数を数えて平均する。島直径は無作為に選んだ300の島径を求めて平均する。
【実施例】
【0036】
次に本発明を具体的に実施例で説明する。なお、実施例中の測定方法は以下の方法を用いた。
【0037】
A.平均繊度
得られたシートの厚み方向に切断した断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、任意100カ所の極細繊維の繊維径を測定し、ポリマー密度をポリ乳酸=1.25g/cm3、ナイロン6=1.14g/cm3として算出した値を平均した。ポリマー密度は原料チップをJIS L1013に準じて測定した。
【0038】
B.島本数および島直径
繊維の横断面方向に超薄片を切り出し、透過型電子顕微鏡(TEM:日立社製H−7100FA型)で繊維横断面写真を倍率100,000倍で撮影して測定した。また、必要に応じて金属染色を施した。ブレンドポリマーからなる海島型極細繊維の島本数は30本の繊維について島本数を数えて平均した。島直径は無作為に選んだ300の島径を求めて平均した。
【0039】
C.耐ピリング性
JISL−1096のマーチンデール摩耗試験に準じて加重12kpa、摩耗回数
5000回後の表面をJISL1076のピリング標準判定写真1で判定糸し、4級以上
を○、2、3級を△、1級を×とした。
【0040】
(実施例1)
重量平均分子量12万、溶融粘度300poise(240℃)、融点172℃のポリ乳酸(光学純度99.5%以上)と溶融粘度570poise(240℃)、融点220℃のナイロン6を85/15重量%でチップブレンドして2軸押出機に供給し、240℃で混練りして(ポリ乳酸/ナイロン6)ブレンドポリマーのチップを作製した。
【0041】
次いで島数が36島の海島型複合紡糸口金を用いて海成分としてポリスチレンを40重量%、島成分として上記(ポリ乳酸/ナイロン6)ブレンドポリマーを60重量%供給して紡糸温度235℃、引き取り速度1000m/分で未延伸糸を巻き取った。該未延伸糸を90℃の温水中で延伸、クリンプ、カットして繊度4.5dtex、カット長51mm、倦縮数12山/2.54cmのステープルを得た。
【0042】
このステープル糸の断面をTEMで観察したところポリスチレン海中の36個の島繊維にはポリ乳酸の海中にナイロン6が分散した島が存在し、ナイロン6の島の数は平均で81島、平均の島径は0.13μmであった。
【0043】
このステープルをカード、クロスラッパーでウエブとし、両面から交互に2000本/cmのニードルパンチを行って目付650g/mの繊維シートを作製した。繊維シートを温水中で収縮させ、ポリビニルアルコール水溶液を繊維シートに対し固形分で10重量%になるよう含浸、乾燥した。次にトリクレン中で圧搾を繰り返してポリスチレンを抽出除去してポリ乳酸/ナイロン6の海島極細繊維シートを作製した。次いでポリエステル−ポリエーテル系ポリウレタンのDMF溶液を含浸してポリ乳酸/ナイロン6の海島極細繊維に対し固形分が40%となるように付与して水中に投入して湿式凝固した後、温水で洗浄してポリビニルアルコールとDMFを抽出除去、乾燥した。
【0044】
次いでシートの表面をサンドペーパーでバフして起毛処理を行い、立毛シートを作製した。この立毛シートをサーキュラー染色機を用いて分散染料でベージュに染色した。
【0045】
得られたシートの評価は表1の通りであった。
【0046】
(実施例2)
実施例1においてポリ乳酸とナイロン6のブレンド比率を60/40重量%とした他は同一条件で紡糸、延伸し、ステープルを作製した。
【0047】
このステープルの断面観察結果は実施例1と同様に、ポリスチレン海中の36個の島成分はポリ乳酸の海にナイロン6の島が分散した海島極細繊維であって、その平均島本数は36.1島、平均分散径は0.34μmであった。
【0048】
以後は実施例1と同一で加工した。
【0049】
得られたシートの評価は表1の通りであった。
【0050】
(実施例3)
実施例1においてポリ乳酸とナイロン6のブレンド比率を20/80重量%として250℃でブレンドチップを作製した。
【0051】
以後は紡糸温度260℃とした以外は実施例1と同一条件で紡糸した。
【0052】
このステープルの断面はポリスチレンの海中の36個の島はナイロン6が海、ポリ乳酸が島成分を形成しており、島の平均島数は44.2島、平均分散径は0.21μmであった。
【0053】
ポリウレタン付量を30%とした以外は実施例1と同条件で加工し、得られた立毛シートをサーキュラー染色機で酸性染料で染色した。
【0054】
得られたシートの評価は表1のとおりであった。
【0055】
(実施例4)
実施例1においてポリ乳酸とナイロン6のブレンド比率を55/45重量%として240℃でブレンドチップを作製し、以後は紡糸温度260℃とした以外は実施例1と同一条件で紡糸した。
【0056】
ステープル糸の断面は島数18.5島、平均島径0.55μmであった。
【0057】
以後は実施例3と同様に加工し、得られた立毛シートを分散染料で染色した。
【0058】
得られたシートの評価は表1の通りであった。
【0059】
(実施例5)
実施例1においてポリ乳酸とナイロン6のブレンド比率を93/7重量%として240℃でブレンドチップを作製し、以後は実施例1と同一条件で紡糸した。
【0060】
ステープル糸の断面のポリ乳酸とナイロン6からなる島成分の島数は12.8島、平均島径0.23μmであった。
【0061】
以後は実施例1と同様に加工し、得られた立毛シートを分散染料で染色した。
【0062】
得られたシートの評価は表1の通りであった。
【0063】
(実施例6)
実施例1においてポリ乳酸とナイロン6のブレンド比率を5/95重量%として250℃でブレンドチップを作製した。
【0064】
以後は紡糸温度265℃とした以外は実施例1と同一条件で紡糸した。
【0065】
このステープルの断面はポリスチレンの海中の36個の島はナイロン6が海、ポリ乳酸が島成分を形成しており、島成分の平均島数は6.2島、平均分散径は0.27μmであった。
【0066】
実施例1と同条件で加工し、得られた立毛シートをサーキュラー染色機で酸性染料で染色した。
【0067】
得られたシートの評価は表1のとおりであった。
【0068】
(比較例1)
実施例1において、海成分としてポリスチレンを40重量%、島成分としてナイロン6を60重量%供給して紡糸温度265℃、引き取り速度1000m/分で未延伸糸を巻き取った。該未延伸糸を90℃の温水中で延伸、クリンプ、カットして繊度4.5dtex、カット長51mm、倦縮数12山/2.54cmのステープルを得た。
【0069】
得られたステープル糸の断面はナイロンの36島、島の平均径は3.4μmであった。
【0070】
次いで、実施例1と同様に加工し、酸性染料で染色した。得られたシートの評価は表1のとおりであった。
【0071】
(比較例2)
実施例1において、島成分を溶融粘度300poise(240℃)、融点172℃のポリ乳酸(光学純度99.5%以上)とし、紡糸温度を230℃とした以外は同一で紡糸、延伸した。ステープル糸の断面はポリ乳酸の36島、平均島径は3.2μmであった。
【0072】
次いで、実施例1と同様に加工し、分散染料で染色した。
【0073】
得られたシートの評価は表1のとおりであった。
【0074】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均繊度1dtex以下の極細繊維を含む繊維絡合体と高分子弾性体で構成され、該極細繊維が脂肪族ポリエステルとポリアミドとの海島型極細繊維であることを特徴とするスエード調人工皮革。
【請求項2】
前記海島型極細繊維が繊維絡合体に30重量%以上含まれていることを特徴とする請求項1に記載のスエード調人工皮革。
【請求項3】
前記海島型極細繊維が少なくとも10島の島成分を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のスエード調人工皮革。
【請求項4】
前記海島型極細繊維の島成分の平均径が0.05μm以上、1μm以下であることを特徴とする請求項1、2または3に記載のスエード調人工皮革。
【請求項5】
前記海島型極細繊維を構成する脂肪族ポリエステル/ポリアミドの比率が10/90〜90/10であることを特徴とする請求項1、2、3または4に記載のスエード調人工皮革。
【請求項6】
脂肪族ポリエステルがポリ乳酸、ポリアミドがナイロン6であることを特徴とする請求項1、2、3、4または5に記載のスエード調人工皮革。

【公開番号】特開2007−217839(P2007−217839A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−42042(P2006−42042)
【出願日】平成18年2月20日(2006.2.20)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】