説明

スカム破砕装置およびスカムの破砕方法

【課題】汚水の水面のスカムを効率良く破砕できるスカム破砕装置およびスカムの破砕方法を提供する。
【解決手段】汚水の水面に設置したノズル1の噴射口13からスカム破砕水Dを噴射する。汚水の水面に強制的に表層流が発生する。噴射口13から噴射されるスカム破砕水Dは、ノズル1の拡散片部21から噴射されるものとは別に、ノズル1の湾曲凹部11の両脇を乗り越えて鉛直下方に噴射される。周囲に存在するスカムを効率良くノズル1に引き込むことができる。ノズル1からスカム破砕水Dを噴射させることによる水流と気泡とによってスカムを効率よく破砕できる。スカムの発生を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水面のスカムを破砕するスカム破砕装置およびそのスカムの破砕方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、汚水処理施設においては、比較的水流の緩やかな水路や水槽の水面に、油脂分または水より比重の小さい浮遊汚泥が堆積して、スカムの層であるスカム層が形成される。そして、このスカム層は、汚水の水面において次第に成長していき、この汚水を処理した処理水を放流する際の放流水への浮遊物質(Suspended Solids:SS)の流出の原因となったり、このスカム層が汚水の水面に長期的に滞留することによって腐敗して汚水の水質をより悪化させたり悪臭の原因となったりする。
【0003】
このため、このスカム層を破砕して除去する方法としては、このスカム層が発生するおそれのある汚水の水面に処理水などの水を吹き付けるスプレーノズルや、汚水の水面に発生したスカム層をかき寄せて除去するスカムスキマー、微細な網目のスクリーン、汚水の水面に浮かべてスカム層を吸い込んで除去するフロートポンプなどを用いた方法が知られている。
【0004】
そして、これらのスカム層を破砕して除去する方法の中でも、スプレーノズルを用いた方法は、場所を選ばず設置できるという適用性に優れており、操作性および維持管理性が容易なことから幅広く用いられている。具体的に、この種のスプレーノズルとしては、水面の上方からスプレー水を扇状に噴射してスカムを破砕するスリット型のスプレーノズルや、先端が絞られた形状のスプレーノズル、ノズル部の先端に設けられている扇状部が平坦な形状であり、汚水中で水平方向にスプレー水を噴射して表層流を発生させ、ノズル部に流れ込むスカムをスプレー水で破砕する潜水型のスプレーノズルなどが知られている(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開2002−233867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、スリット型のスプレーノズルは、水面の上方からスプレー水を扇状に噴射してスカムを破砕するものであるが、扇状にスプレーされた水が壁となってスカムの流れを阻止してしまうおそれがあるとともに、このスカムが破砕されずに停滞してしまうおそれがある。また、スプレー水がしぶきとなって周囲に飛散してしまうため、不衛生な環境となってしまうおそれがある。
【0006】
また、先端が絞られた形状のスプレーノズルは、部分的にスカムを破砕できるものの、このスカム全体を破砕することは容易ではなく、スリット型のスプレーノズルと同様に、噴射水によるしぶきによって周囲を不衛生な環境としてしまうおそれがある。
【0007】
さらに、潜水型のスプレーノズルは、汚水中で水平方向にスプレー水を噴射する構造であるため、汚水の水面上のスカム層に水流を直接衝突できず、このスカムの破砕力が半減されるおそれがある。また、ノズル部の先端に設けられている扇状部が平坦な形状であるため、この扇状部にてスプレー水の水流が拡散されてしまい、このスプレー水の勢いそのものが弱くなってしまうおそれがあるから、厚い層のスカムの破砕が容易ではない。さらに、また、ノズル部の先端部に形状が、このノズル部の端部を解放させた形状となっているため、このノズル部の先端部から噴射させるスプレー水の圧損が小さく、このスプレー水として用いる水の使用量が多くなってしまうから、このスプレー水によるスカムの破砕が効率良くできないという問題を有している。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、水面のスカムを効率良く破砕できるスカム破砕装置およびそのスカムの破砕方法を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載のスカム破砕装置は、水面のスカムを破砕するスカム破砕装置であって、直線状の軸方向を有する円筒状の周面を備えた筒状部と、この筒状部の周面の軸方向の一端側の一部に連続した断面凹弧状に形成され、内側に向けて湾曲した軸方向を有し、前記筒状部の周面の径寸法より小さな幅寸法に形成された曲面部と、この曲面部の前記筒状部に連続している側の反対側に位置する一端側に連続して設けられ、前記筒状部の軸方向に略直交する方向に向けて突出し、この筒状部の軸方向および前記曲面部の一端側の軸方向のそれぞれに直交する方向に拡開した拡散部とを具備したものである。
【0010】
請求項2記載のスカム破砕装置は、請求項1記載のスカム破砕装置において、拡散部は、筒状部の軸方向においてこの筒状部より外側に突出した位置に設けられているものである。
【0011】
請求項3記載のスカム破砕装置は、請求項1または2記載のスカム破砕装置において、拡散部は、筒状部の軸方向に対して鋭角に交差する内側面を有しているものである。
【0012】
請求項4記載のスカム破砕装置は、請求項1ないし3いずれか記載のスカム破砕装置において、拡散部の曲面部に連続している側の反対側の一端部は、この拡散部の幅方向に向けて円弧状に湾曲した形状に形成されているものである。
【0013】
請求項5記載のスカムの破砕方法は、請求項1ないし4いずれか記載のスカム破砕装置の拡開部が設けられている側を下側に向け、このスカム破砕装置の曲面部の一部までを、水面下に位置させ、このスカム破砕装置の拡散部の一端側から水を噴射させて、前記水面のスカムを破砕するものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載のスカム破砕装置によれば、拡開部が設けられている側を下側に向けて、曲面部までを水面下に位置させた状態で、拡散部の一端側から水を噴射させることにより、水面に表層流が発生し、この水面のスカムを停滞させることなく周囲のスカムを引き込むことができる。このとき、曲面部を筒状部の周面の径寸法より小さな幅寸法に形成したことにより、噴射させる水が拡散部のみならず曲面部の側部から噴射される。よって、この曲面部の幅方向の両側からもスカムを吸い寄せることができるため、このスカムを効率良く粉砕できる。
【0015】
請求項2記載のスカム破砕装置によれば、請求項1記載のスカム破砕装置の効果に加え、拡散部から効率よく水を水平方向に噴射でき、拡散部が突出している側の反対側から効率良くスカムを吸い寄せることができるから、このスカムをより効率良く粉砕できる。
【0016】
請求項3記載のスカム破砕装置によれば、請求項1または2記載のスカム破砕装置の効果に加え、拡散部から噴射させる水で効率良く水面下に表層流を形成できるから、この水面のスカムの引き寄せをより効率良くできるとともに、水面のスカムに水を直接衝突できるため、このスカムの破砕効率をより向上できる。
【0017】
請求項4記載のスカム破砕装置によれば、請求項1ないし3いずれか記載のスカム破砕装置の効果に加え、噴射する水の勢いを拡散部の幅方向の中心付近に集中させつつ、この水を広範囲に拡散させて噴射できるので、水面のスカムをより効率良く破砕できる。
【0018】
請求項5記載のスカムの破砕方法によれば、請求項1ないし4いずれか記載のスカム破砕装置の拡開部が設けられている側を下側に向け、このスカム破砕装置の曲面部の一部までを水面下に位置させた状態で、このスカム破砕装置の拡散部の一端側から水を噴射させることにより、水面に表層流が発生し、この水面のスカムを停滞させることなく周囲のスカムを引き込むことができる。このとき、このスカム破砕装置の曲面部を筒状部の周面の径寸法より小さな幅寸法に形成したことにより、このスカム破砕装置から噴射させる水が拡散部のみならず曲面部の側部から噴射されるため、この曲面部の幅方向の両側からもスカムを吸い寄せることができるから、このスカムを効率良く粉砕できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明のスカム破砕装置を用いたスカムの破砕方法の一実施の形態の構成を図1ないし図4を参照して説明する。
【0020】
図1ないし図4において、1はスカム破砕装置としてのノズルである。そして、このノズル1は、下水処理用の被処理水としての汚水Wの水面L上に発生するスカム(Scum)Sを破砕して除去するとともに、このスカムSの発生を防止するための潜水型のスプレーノズルであるノズル体にて構成されている。
【0021】
すなわち、このノズル1は、このノズル1から噴射される水であるスカム破砕水Dを用いて、汚水処理施設において発生するスカムSを破砕および除去するノズル状のスカム破砕装置である。
【0022】
ここで、このスカムSは、図示しない処理槽に貯溜されている汚水W中に含まれている有機物が腐敗または発酵することにより発生するガスによって、この汚水W中の懸濁物質、繊維質、油脂質、細菌などの水より比重が小さな浮遊汚泥が浮上して堆積などして、この汚水Wの水面L上にスポンジ状の厚い層状に形成される浮きかすである。さらに、このスカムSは、汚水Wの水面Lにおいて次第に成長していく。
【0023】
一方、ノズル1は、側面視略J字状に形成された円筒体であって、上下方向に沿った直線状の軸方向を有する細長円筒状の筒状部としての直管部である胴体部2を備えている。この胴体部2は、例えば10mm以上14mm以下の内径寸法Aに形成された送水管部であって、この胴体部2の周面部を構成する断面円環状の周面3を備えている。この周面3もまた、上下方向に沿った直線状の軸方向を有している。また、この周面3は、例えば3mm以上5mm以下の厚さ寸法Bを有している。さらに、この胴体部2の周面3の軸方向Cの一端側である下端側には、この周面3の径方向Eに沿った平坦な平坦部4が設けられている。この平坦部4は、胴体部2の軸方向Cに直交する方向であるとともに周面3の周方向Fに沿った平坦面状に形成されている。
【0024】
さらに、胴体部2の平坦部4には、この胴体部2の周面3のうちの一部である周方向Fに沿った約2分の1の部分に相当する断面凹弧面状の曲部としての曲面部である湾曲凹部11が連通して設けられている。この湾曲凹部11は、胴体部2を軸方向Cに沿って略2分の1の大きさに分割した半割パイプ形状に形成されている。また、この湾曲凹部11は、胴体部2の周面3の下端側に連続しており、この胴体部2の軸方向Cに連続した軸方向Gを有している。さらに、この湾曲凹部11は、この湾曲凹部11の内側である凹弧面側に向けて円弧状に約90°に湾曲させた形状、すなわち側面視略ノ字状に形成されている。
【0025】
よって、この湾曲凹部11の内径側である内側には、この湾曲凹部11の内側に向けて約90°に湾曲した軸方向Gを有する円弧状流路12が形成されている。ここで、この湾曲凹部11は、例えば20mm以上30mm以下の曲率半径Hを有しており、この湾曲凹部11の胴体部2の平坦部4に連続している側である基端部から、この平坦部4に連続している側の反対側である先端部までの胴体部2の軸方向Cに沿った長さ寸法Iが、例えば35mm以上45mm以下に形成されている。
【0026】
また、この湾曲凹部11は、この湾曲凹部11の幅方向Jを胴体部2の平坦部4の径方向Eに水平に位置させた状態で、この湾曲凹部11の胴体部2の平坦部4に連続している側が、この胴体部2の平坦部4の外側に面一となるように一体的に接続されている。このため、この胴体部2の平坦部4のうちの湾曲凹部11が接続されていない側である内側には、下方に向けて開口した断面半円形状の開口部である噴射口13が形成されている。
【0027】
さらに、湾曲凹部11の先端部は、胴体部2の軸方向Cに直交する方向に突出している。そして、この湾曲凹部11は、この湾曲凹部11の幅方向Jの両側部に、側面部としての一対の側縁部14が設けられており、これら一対の側縁部14の間に断面略凹弧面状の底面部15が一体的に連結されて設けられている。ここで、この湾曲凹部11の一対の側縁部14は、この湾曲凹部11の先端側に進むにしたがって高さ寸法が徐々に小さくなるように傾斜している。
【0028】
そして、これら一対の側縁部14は、例えば1mm以上2mm以下の厚さ寸法K、すなわち胴体部2の厚さ寸法Bより小さな厚さ寸法Kに形成されている。一方、湾曲凹部11の底面部15は、例えば3mm以上7mm以下の厚さ寸法M、すなわち胴体部2の厚さ寸法Bに等しい厚さ寸法Mに形成されている。よって、この湾曲凹部11は、胴体部2の周面3の径寸法、すなわち外径寸法Nより小さな幅寸法、すなわち外径寸法Oに形成されている。
【0029】
さらに、この湾曲凹部11の先端部には、平面視扇状の拡散部としての先端部である拡散片部21が、この湾曲凹部11の先端側に連続して一体的に設けられている。この拡散片部21は、胴体部2の軸方向Cに略直交する方向に向けて突出しており、この胴体部2の軸方向Cおよび湾曲凹部11の先端側の軸方向Gのそれぞれに直行する方向に向けてテーパ状に拡開して銀杏葉形状に形成されている。ここで、この拡散片部21は、例えば35mm以上40mm以下の幅寸法Pを有しているとともに、例えば15mm以上25mm以下の曲率半径Qに形成されている。
【0030】
また、この拡散片部21は、胴体部2の軸方向Cにおいて、この胴体部2の周面3の外周面より外側である先端側に突出した位置に設けられている。さらに、この拡散片部21の幅方向Jの両側縁部には、湾曲凹部11に設けられている一対の側縁部13に連続した一対の側縁部22が一体的に突出して設けられている。また、この拡散片部21は、この拡散片部21の幅方向Jの中心の先端縁から胴体部2の中心までの長さ寸法Rが、例えば40mm以上50mm以下に形成されている。
【0031】
さらに、この拡散片部21の内側に内側面23が設けられており、この内側面23の湾曲凹部11に連続している側、すなわち基端側の反対側である先端側は、胴体部2の軸方向Cに対して鋭角に交差して傾斜している。具体的に、この拡散片部21の内側面23の先端側は、胴体部2の軸方向Cに直交する方向に対して、例えば1°以上10°以下、好ましくは1°以上2°以下に、胴体部2の噴射口13側に向けて傾斜している。すなわち、この拡散片部21は、例えば1°以上10°以下、好ましくは1°以上2°以下の噴射角度Tを有している。
【0032】
このため、この拡散片部21の内側面23の先端側は、胴体部2の軸方向Cに直交する方向に対して鋭角、すなわち若干上方に水としてのスカム破砕水Dを噴射させる形状に形成されている。また、この拡散片部21の内側面23の先端部は、この拡散片部21の幅方向Jの中心が最も突出した形状、すなわちこの幅方向Jに向けて円弧状に湾曲した形状に形成されている。すなわち、この拡散片部21の内側面23の先端部は、スカム破砕水Dのスプレー方向である噴射方向Uに対して垂直かつ平行な方向に向けて湾曲した形状に形成されている。
【0033】
次に、上記一実施の形態のスカムの破砕方法について説明する。
【0034】
まず、図3に示すように、ノズル1の湾曲凹部11および拡散片部21が設けられている下端側を下方に向けて、このノズル1の胴体部2の軸方向Cを鉛直方向に沿わせた状態としつつ、このノズル1のうちの下端側の例えば15mm以上20mm以下の部分までの一部を汚水WのうちのスカムSが発生しやすい部分の水面L下に位置するように設置させる。このとき、このノズル1の湾曲凹部11のうちの胴体部2の噴射口13より下側である胴体部2の下端高の例えば20mm以上25mm以下の部分が汚水Wの水面L上に位置した状態となる。
【0035】
この状態で、このノズル1の胴体部2の湾曲凹部11が設けられている側の反対側である上端側からスカム破砕水Dを送り、例えば30l/min以上50l/min以下の流量でノズル1の胴体部2の噴射口13からスカム破砕水Dを噴射させる。このとき、図1に示すように、このノズル1の湾曲凹部11の側縁部14および底面部15にてスカム破砕水Dが流れる方向が鉛直方向から水平方向に変えられた後に、このノズル1の拡散片部21によってスカム破砕水Dが水平方向に拡散されながら、この拡散片部21の内側面23によって上方に向けて例えば1°以上10°以下、好ましくは1°以上2°以下に傾いた噴射方向Uにスカム破砕水Dが噴射される。
【0036】
この後、図3および図4に示すように、このノズル1の拡散片部21から噴射されたスカム破砕水Dによって汚水Wの水面Lに表層流Vが発生し、この表層流Vによって、この表層流Vが流れる方向を除く汚水Wの水面L上に発生している周囲のスカムSがノズル1の拡散片部21から噴射されるスカム破砕水Dに引き込まれる。そして、このスカム破砕水DにスカムSが引き込まれることによって、このスカムSが破砕され、汚水Wの水面Lに発生しているスカムSが徐々に破砕されていく。
【0037】
このとき、ノズル1の拡散片部21からスカム破砕水Dが汚水W中へ噴射されることによって、このスカム破砕水Dによって周囲の空気が巻き込まれて気泡が発生する。このため、このスカム破砕水Dの噴射による水流と気泡とのそれぞれを汚水Wの水面L上のスカムSに衝突できるとともに、この気泡の破裂による衝撃がスカムSに加わることによって、このスカムSの破砕力を増大できるから、このスカムSの破砕効率を向上できる。
【0038】
また同時に、ノズル1の湾曲凹部11の外径寸法Oを胴体部2の外径寸法Nより小さくしたことにより、図1および図2に示すように、このノズル1の胴体部2の噴射口13から噴射されるスカム破砕水Dが、このノズル1の拡散片部21から水平方向に噴射されるものとは別に、このノズル1の湾曲凹部11の幅方向Jの両側縁、すなわち両脇を乗り越えて、この湾曲凹部11の両脇の外側から鉛直下方に噴射される。
【0039】
このため、この湾曲凹部11の幅方向Jの両側縁から噴射されるスカム破砕水Dによって、ノズル1の後方に位置しているスカムSだけではなく、図4に示すように、このノズル1の拡散片部21から噴射するスカム破砕水Dでは引き寄せにくい、このノズル1の湾曲凹部11の幅方向Jの両側縁よりも外側の水面L上に位置しているスカムS、すなわちノズル1の左右方向のスカムSを、このノズル1の拡散片部21から噴射されたスカム破砕水Dによる表層流Vに吸い寄せることができる。よって、このノズル1の1本あたりのスカムSの引き込み範囲を広くできるから、このノズル1の設置本数およびスカム破砕水Dの使用量を低減できる。
【0040】
さらに、このノズル1の拡散片部21を、このノズル1の胴体部2の軸方向Cにおいて、この胴体部2の周面3より外側に突出した位置に設けたことにより、このノズル1の拡散片部21からスカム破砕水Dを効率良く水平方向に噴射できる。このため、このノズル1の拡散片部21が設けられている側である前方に対向する後方から水面L上のスカムSを効率良く吸い寄せることができる。
【0041】
また、このノズル1の拡散片部21の内側面23の先端側を、このノズル1の胴体部2の軸方向Cに対して鋭角に交差する方向に向けて傾斜させたため、このノズル1の拡散片部21から噴射させるスカム破砕水Dがやや上方に噴射される。よって、この拡散片部21から噴射させるスカム破砕水Dによって効率良く水面L下に表層流Vを形成できる。したがって、このノズル1の拡散片部21から噴射させるスカム破砕水Dによる水面LのスカムSの引き寄せをより効率良くできるとともに、この水面LのスカムSにスカム破砕水Dを直接衝突できる。
【0042】
そして、このノズル1の拡散片部21の先端部を、この拡散片部21の幅方向Jに向けて円弧状に湾曲した形状に形成したことにより、この拡散片部21から噴射されるスカム破砕水Dの水流によって、汚水Wの水面Lに広範囲に亘った表層流Vを形成しつつ、この拡散片部21から噴射されるスカム破砕水Dの水流の勢いを、この拡散片部21の幅方向Jの中心付近に集約できる。よって、この拡散片部21から噴射されるスカム破砕水DによるスカムSの破砕力を向上できる。
【0043】
以上から、上記一実施の形態によれば、汚水処理施設において、汚水Wの水面LのうちのスカムSの層が発生しやすい部分にノズル1を設置し、このノズル1の噴射口13からスカム破砕水Dを噴射させることにより、この汚水Wの水面LのうちのスカムSの層が発生しやすい部分に強制的に表層流Vを発生させることができる。したがって、この汚水Wの水面Lに発生しているスカムSを停滞させることなく、ノズル1の周囲に存在するスカムSを効率良くノズル1に引き込むことができるとともに、このスカムSにスカム破砕水Dを直接衝突できる。よって、ノズル1からスカム破砕水Dを噴射させることによる水流と気泡とによって、汚水Wの水面Lに発生しているスカムSを効率よく破砕でき、このスカムSの成長を阻止しつつ、このスカムSを除去できるため、汚水処理施設の汚水Wの水面LにおけるスカムSの発生を防止できる。
【0044】
また、このノズル1を用いることにより、汚水Wの水面LのスカムSを効率良く破砕できるため、ある程度の厚さを有するスカムSの層であっても破砕できる。さらに、このノズル1にてスカム破砕水Dを汚水Wの水面L付近で噴射させるため、このスカム破砕水Dを噴射させることによる汚水Wのしぶきの発生を少なくできる。よって、この汚水Wが貯溜などされている処理槽の周囲を不衛生な環境にすることを防止できる。
【0045】
なお、上記一実施の形態では、汚水処理施設の汚水Wの水面Lに発生するスカムSの破砕方法について説明したが、水面LにスカムSが発生するおそれのある被処理水であれば、例えば工場や事業所での生産活動に伴って生じる工業廃水などの廃水や、家庭汚水、工業排水、営業用排水、畜産排水などの被処理水であっても用いることができる。
【0046】
また、ノズル1から噴射させるスカム破砕水Dとしては、汚水Wの水面Lに発生しているスカムSを破砕でき、この汚水Wの処理に影響が少なく、固形分が少ない水であれば、例えば汚水を処理した後の処理水や、処理槽内に貯溜されている汚水自体、河川水、湖水、水道水などであっても用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明のノズルの一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】同上ノズルを示す正面図である。
【図3】同上ノズルの設置状態を示す側面図である。
【図4】図3中のa−a断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 スカム破砕装置としてのノズル
2 筒状部としての胴体部
3 周面
11 曲面部としての湾曲凹部
21 拡散部としての拡散片部
23 内側面
C 軸方向
D 水としてのスカム破砕水
G 軸方向
L 水面
S スカム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水面のスカムを破砕するスカム破砕装置であって、
直線状の軸方向を有する円筒状の周面を備えた筒状部と、
この筒状部の周面の軸方向の一端側の一部に連続した断面凹弧状に形成され、内側に向けて湾曲した軸方向を有し、前記筒状部の周面の径寸法より小さな幅寸法に形成された曲面部と、
この曲面部の前記筒状部に連続している側の反対側に位置する一端側に連続して設けられ、前記筒状部の軸方向に略直交する方向に向けて突出し、この筒状部の軸方向および前記曲面部の一端側の軸方向のそれぞれに直交する方向に拡開した拡散部と
を具備したことを特徴としたスカム破砕装置。
【請求項2】
拡散部は、筒状部の軸方向においてこの筒状部より外側に突出した位置に設けられている
ことを特徴とした請求項1記載のスカム破砕装置。
【請求項3】
拡散部は、筒状部の軸方向に対して鋭角に交差する内側面を有している
ことを特徴とした請求項1または2記載のスカム破砕装置。
【請求項4】
拡散部の曲面部に連続している側の反対側の一端部は、この拡散部の幅方向に向けて円弧状に湾曲した形状に形成されている
ことを特徴とした請求項1ないし3いずれか記載のスカム破砕装置。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか記載のスカム破砕装置の拡開部が設けられている側を下側に向け、
このスカム破砕装置の曲面部の一部までを、水面下に位置させ、
このスカム破砕装置の拡散部の一端側から水を噴射させて、前記水面のスカムを破砕する
ことを特徴とするスカムの破砕方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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