説明

スキャナ装置

【課題】 部分的な結像不良を生じることなく、全体に渡って鮮明な読取画像を得ることができるスキャナ装置の実現。
【解決手段】 ホルダに保持されたラインセンサを透明板の面に沿って走査させる機構と、ラインセンサの長手方向の両側に設けられ透明板に接触する2つのスペーサと、前記透明板の面に垂直な方向からみたとき2つのスペーサの間の位置においてホルダを透明板に向けて付勢する付勢部とを有する。ラインセンサとホルダは、付勢部とは異なる位置に設けられた結合部で結合されており、付勢部によりホルダに付与される力は、結合部を通じてホルダからラインセンサに伝わって、2つのスペーサが透明板に付勢される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イメージスキャナ、複写機、ファクシミリ、複合機等に好適に用いられるスキャナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、原稿台の上に置かれた原稿に対して走査移動するラインセンサ(CISユニット)を有するフラットベッド型のスキャナ装置が開示されている。この装置では、ラインセンサはコイルばねにより原稿台のガラス板に付勢されている。ラインセンサの両端には、ガラス板に接触する2つの接触部が設けられおり、ラインセンサが走査移動するのに伴って接触部がガラス板の表面を摺動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−253327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置の構成では、ラインセンサの中央付近にガラス板に向けて付勢する力が与えられる。そのため、両側2つの接触部(スペーサ)を支持点にしてラインセンサに反りが生じて、中央付近のみがガラス板の面に近づいて、読取光学系のピント位置がガラス板の上面から外れてしまう場合がある。すると、中央付近が結像不良(ピンボケ)となって、読み取られた画像は筋状に不鮮明になってしまう。
【0005】
本発明は上述の課題の認識に基づいてなされたものである。本発明の目的は、部分的な結像不良を生じることなく、全体に渡って鮮明な読取画像を得ることができるスキャナ装置の実現である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、透明板に置かれた原稿を走査して読み取るスキャナ装置であって、ラインセンサと、前記ラインセンサを保持するホルダと、前記ラインセンサおよび前記ホルダを前記透明板の面に沿って走査させる機構と、前記ラインセンサの長手方向の両側に設けられ、前記透明板に接触する2つのスペーサと、前記透明板の面に垂直な方向からみたとき前記2つのスペーサの間の位置において前記ホルダを前記透明板に向けて付勢する付勢部とを有し、前記ラインセンサと前記ホルダは、前記付勢部とは異なる位置に設けられた結合部で結合されており、前記付勢部により前記ホルダに付与される力は、前記結合部を通じて前記ホルダから前記ラインセンサに伝わって、前記2つのスペーサが前記透明板に付勢されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ラインセンサをホルダに固定してホルダを付勢するので、ホルダに反りが生じたとしてもラインセンサには反りが生じない。そのため、部分的な結像不良を生じることなく、全体に渡って鮮明な読取画像を得ることができるスキャナ装置が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態のスキャナ装置の構成図
【図2】読取部の構成を示す図
【図3】読取部の別の形態の構成を示す図
【図4】読取部のさらに別の形態の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は実施形態のスキャナ装置の全体構成を示す概略図である。上視図、正面図、左側面図をまとめて描いている。図2はスキャナ装置を構成する読取部の構成を示す図であり、図2(a)は斜視図、図2(b)は分解図である。
【0010】
スキャナ装置は、フレーム1に原稿台が設けられ、原稿台は原稿が置かれる読取面を持ったガラスからなる透明板2が固定されている。透明板2の下には画像読取の際にX方向に走査移動する読取部3が設けられている。
【0011】
読取部3は、原稿の画像を読み取るラインセンサ4、およびラインセンサ4を保持するホルダ5を有する。後述するように、ラインセンサ4とホルダ5とは両端2カ所の結合部で結合されており、結合部の他の部位では非接触となっている。
【0012】
また、読取部3を一体的に透明板2の面に沿ってX方向に走査移動させる駆動機構が設けられている。駆動機構は、フレーム1に固定された駆動モータ10、アイドラプーリ11、ベルト12を有する。ベルト12の1箇所がホルダ5に設けられた把持部5eに固定されている。さらにフレーム1には、読取部3が走査する際に移動を案内する案内面を持ったレールまたはシャフトからなるガイド7が設けられている。この構成において、駆動モータ10を回転させると、駆動モータと10とアイドラプーリ11の間でベルト12が回転して把持部5eが直進移動し、読取部3はガイド7に沿って直進移動する。
【0013】
ラインセンサ4は、いわゆるCIS(コンタクトイメージセンサ)である。ラインセンサ4は、線状に原稿を照明する光源と、同方向に線状に配列された屈折率分布レンズアレイおよび受光素子アレイから構成される。光源が透明板上の原稿をY方向に沿って線状に照明し、照明された領域の像を屈折率分布レンズアレイが受光素子アレイの上に結像する。受光素子アレイの信号出力から画像データが取得される。
【0014】
ラインセンサ4の透明板2に向かい合う側の面において長手方向(Y方向)の両側の端部近傍には、透明板2の面に接触する2つのスペーサ6a、6bが設けられている。これらスペーサ6a、6bが透明板2に接触し、それ以外のラインセンサ4の部位は透明板2との間に僅かなギャップをもって非接触となる。なお、非接触にするのではなく、ラインセンサ4のセンサ面および透明板2の表面に傷がつかない程度の小さな接触圧力でもって軽く接触するようにしてもよい。
【0015】
透明板2の面(YX面)に垂直なZ方向からみたとき、2つのスペーサ6a、6bの間の位置(ほぼ中央位置)において、ホルダ5を透明板2に向けてZ方向に付勢する付勢部が設けられている。付勢部はガイド7とホルダ5の間に設けられている。付勢部は、ガイド7に接して摺動する2つの摺動部材8a、8bと、これら摺動部材とガイド7の間に弾性力をもって介在する2つの弾性体9a、9bとを有し、これらはホルダ5に設けられている。弾性体としてはコイルバネが好ましい。摺動部材8a、8bは、ホルダ5に対して弾性体9a、9bを介してZ方向に移動可能となっている。
【0016】
図2(b)の分解図に示すように、ホルダ5はラインセンサ4の両側側面のY方向に沿って配置された2つのプレート部材からなる。図2(a)はラインセンサ4とホルダ5を係合させて組み立てた状態を示す。それぞれのプレート部材の両端近傍には、U形状溝5a、5b、5c、5dが形成されている。これら4つのU形状溝5a、5b、5c、5dに、ラインセンサ4の側面に設けられた突起4a、4b、4c、4dがそれぞれ係合する。ラインセンサ4とホルダ5の4カ所の結合部は2つのスペーサ6a、6bそれぞれの近傍に設けられており、ラインセンサ4とホルダ5は結合部以外の部位では非接触となっている。また、付勢部とラインセンサ4も非接触である。
【0017】
このように、ラインセンサ4とホルダ5は、Y方向において付勢部とは異なる位置に設けられた結合部で結合されている。なお、本実施形態では、両端部の近傍で結合されているが、付勢部と位置が異なれば結合部はより内側の位置であってもよい。
【0018】
付勢部によりホルダ5の中央付近にZ方向に付与される力は、結合部を通じてホルダ5からラインセンサ4に伝わって、2つのスペーサ6a、6bが透明板2に付勢される。ホルダ5はスペーサ6a、6bの上からラインセンサ4を押圧するので、ラインセンサ4を曲げようとする力のモーメントは発生しない。つまり、付勢部からの押圧によりホルダ5に反りが生じたとしてもラインセンサ4には反りが生じないので、ラインセンサ4は本来の形状でもって透明板2に対向する。そのため、読取部で部分的な結像不良(ピンボケ)が発生せず、良好な画像が得られるスキャナ装置が実現する。
【0019】
図3は読取部の別の形態の構成を示す図である。読取部30は、先の実施形態に比べて、ラインセンサ31を保持するホルダ32の保持構造が異なり、それ以外は同様である。ホルダ32は、その両端近傍に設けられた結合部である突起部32a、32bの2箇所でラインセンサ31に結合されている。それ以外の部分は、ラインセンサ31とは非接触である。また、付勢部とラインセンサも非接触であり、付勢部はガイド7を基準にしてホルダ32を押圧する。
【0020】
この構成において、付勢部によりホルダ32の中央付近にZ方向に付与される力は、ホルダ32の両端の突起部32a、32bを通じて、スペーサ6a、6bの上からラインセンサ31の端部に作用する。そのため、上述の実施形態と同様、ラインセンサ31を曲げようとする力のモーメントは発生しない。
【0021】
図4は読取部のさらに別の形態の構成を示す図である。読取部40は、先の実施形態に比べて、ラインセンサ41を保持するホルダの保持構造が異なり、それ以外は同様である。ホルダはラインセンサ41の両側側面のY方向に沿って配置された2つのアーム42a、42bからなる。図2の実施形態と違って、アーム42a、42bは分離可能な別部品としてではなく、ラインセンサ41と一体的に両端が外れないように固定されている。アーム42a、42bは、両端の結合部以外の部位ではラインセンサ41に接触しない。ホルダを押圧するため、アーム42aのY方向の中央付近に付勢部43aが、アーム42aのY方向の中央付近に付勢部43bがそれぞれ設けられている。付勢部43a、43bはラインセンサ41とは非接触である。付勢部43a、43bはそれぞれ先の実施形態と同様、摺動部材8a、8bと弾性体9a、9bを有し、フレームに固定されたガイド7を基準にしてホルダを押圧する。
【0022】
この構成において、付勢部43a、43bによりホルダであるアーム42a、42bの中央付近にZ方向に付与される力は、アーム42a、42bの両端の結合部を通じて、スペーサ6a、6bの上からラインセンサ41の端部に作用する。そのため、上述の実施形態と同様、ラインセンサ41を曲げようとする力のモーメントは発生しない。
【符号の説明】
【0023】
1 フレーム
2 透明板
3 読取部
4 ラインセンサ
5 ホルダ
6a、6b スペーサ
7 ガイド
8a、8b 摺動部材(付勢部に相当)
9a、9b 弾性体(付勢部に相当)
10 駆動モータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明板に置かれた原稿を走査して読み取るスキャナ装置であって、
ラインセンサと、
前記ラインセンサを保持するホルダと、
前記ラインセンサおよび前記ホルダを前記透明板の面に沿って走査させる駆動機構と、
前記ラインセンサの長手方向の両側に設けられ、前記透明板に接触する2つのスペーサと、
前記透明板の面に垂直な方向からみたとき、前記2つのスペーサの間の位置において、前記ホルダを前記透明板に向けて付勢する付勢部と、を有し、
前記ラインセンサと前記ホルダは、前記付勢部とは異なる位置に設けられた結合部で結合されており、
前記付勢部により前記ホルダに付与される力は、前記結合部を通じて前記ホルダから前記ラインセンサに伝わって、前記2つのスペーサが前記透明板に付勢されることを特徴とするスキャナ装置。
【請求項2】
前記ラインセンサおよび前記ホルダが走査する際に移動を案内するガイドを有し、前記付勢部は前記ガイドと前記ホルダの間に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のスキャナ装置。
【請求項3】
前記付勢部は前記ガイドに接して摺動する摺動部材と、前記摺動部材と前記ガイドの間に弾性力をもって介在する弾性体を有することを特徴とする、請求項2に記載のスキャナ装置。
【請求項4】
前記結合部は前記2つのスペーサそれぞれの近傍に設けられており、前記ラインセンサと前記ホルダは前記結合部の他の部位では非接触となっていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のスキャナ装置。
【請求項5】
前記ラインセンサと前記ホルダは一体的に構成されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のスキャナ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−199655(P2012−199655A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61085(P2011−61085)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】