説明

スクリュープレス型脱水装置

【課題】脱水ケーキ排出口に詰まった脱水ケーキを穿り出す作業を容易に、且つ安全に行うことができるスクリュープレス型脱水装置を提供する。
【解決手段】脱水ケーキDが脱水ケーキ排出口15が詰まった場合には、油圧シリンダー35の駆動ロッド39を後退する方向へ駆動し、出入部材29を脱水ケーキ排出口15から離間する方向へ移動させて、脱水ケーキ排出口15より外側に後退する後退位置に停止させる。出入部材29が後退位置に移動すると、出入部材29が入っていた部分が空洞12となり、隙間10にある押し固められた脱水ケーキDがリング状に残される。従って、隙間10内の脱水ケーキDに加わっている圧力を空洞12へ逃がすことが可能となり、隙間10内の脱水ケーキDを容易に掻き出すことができる。よって、脱水ケーキ排出口15に詰まった脱水ケーキDを除去する作業を容易に、且つ安全に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスクリュープレス型脱水装置に係り、特にし尿、工場排水、その他排水処理によって生じる汚泥を脱水するスクリュープレス型脱水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されたスクリュープレス型脱水装置は、略円筒状のろ過体を備え、このろ過体は、その一端側に脱水ケーキ排出口を有し、他端側に汚泥供給部を有している。ろ過体には脱水ケーキ排出口に向かってある傾斜角で軸径を大きくした軸にスクリュー羽根を装備したスクリュー軸が収容されている。更に、スクリュープレス型脱水装置にはテーパーコーンが備えられており、このテーパーコーンは脱水ケーキ排出口を完全に閉鎖する閉鎖位置と、脱水ケーキ排出口とテーパーコーンとの間に僅かな隙間が形成される隙間形成位置とに動作する。
【0003】
このスクリュープレス型脱水装置では、運転開始時にはテーパーコーンを閉鎖状態として、汚泥を汚泥供給部から供給してスクリュー軸を回転させ、ろ過体内の汚泥にある程度圧力がかかったところで、テーパーコーンを隙間形成位置に移動して、汚泥をスクリュー軸の回転によって搬送しながら圧力をかけて、ろ過体を介して水分を排出し、脱水された汚泥は脱水ケーキとして脱水ケーキ排出口から排出される。スクリュー軸を連続して回転させることにより、汚泥の脱水、脱水ケーキの排出が連続して行われる。
【0004】
ところで、脱水ケーキの含水率が低下し過ぎる等の理由から、脱水ケーキ排出口に脱水ケーキが詰まってしまう場合がある。脱水ケーキが一旦詰まると、後続の脱水ケーキによって脱水ケーキ排出口付近の脱水ケーキが押圧されて押し固められてしまうことになる。このように脱水ケーキが押し固められた状態になると、作業員が工具によって脱水ケーキを穿り出さなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−253536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、押し固められた脱水ケーキを穿り出す作業は、相当に大変であり、作業員にかなりの負担を強いることになる。
また、上記従来のスクリュープレス型脱水装置は、テーパーコーンが隙間形成位置まで後退しても、テーパーコーンは脱水ケーキ排出口が開放されるまでは離間しないため、テーパーコーンと脱水ケーキ排出口との間には僅かな隙間しかない。このため、隙間から手を入れて工具によって押し固められた脱水ケーキを穿り出さなくてはならず、作業が行い難いばかりか危険が伴うという問題もある。
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、脱水ケーキ排出口に詰まった脱水ケーキを穿り出す作業を容易に、且つ安全に行うことができるスクリュープレス型脱水装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、筒状で汚泥供給部と一端部に脱水ケーキ排出口を有するろ過体と、前記ろ過体に収容されて前記脱水ケーキ排出口に向かって徐々に軸径を大きくした回転軸と前記回転軸の外周に設けられたスクリュー羽根とから成るスクリュー軸と、前記排出口を閉鎖する閉鎖位置と脱水ケーキ排出口とテーパーコーンとの間に脱水ケーキを排出するための隙間を形成する隙間形成位置との間で動作するテーパーコーンとを具備するスクリュープレス型脱水装置において、
前記脱水ケーキ排出口から前記ろ過体へ進入する進入位置と、前記脱水ケーキ排出口より外側に後退する後退位置とに動作する出入部材を備え、前記出入部材が進入位置にあるときは、出入部材の外周面と前記ろ過体の内周面との間に隙間が形成されるようにして、且つ前記テーパーコーンを脱水ケーキ排出口が完全に開放される開放位置に後退可能としたことを特徴とするスクリュープレス型脱水装置である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載したスクリュープレス型脱水装置において、出入部材はスクリュー軸の回転軸と同じ径寸法の円柱状で、前記回転軸と軸芯が一致した状態で備えられていることを特徴とするスクリュープレス型脱水装置である。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1に記載したスクリュープレス型脱水装置において、スクリュー軸の回転軸は回転駆動するシャフトに固定され、前記シャフトは脱水ケーキ排出口からろ過体外へ突出しており、前記シャフトには出入部材がスライド自在に支持されていることを特徴とするスクリュープレス型脱水装置である。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれかに記載したスクリュープレス型脱水装置において、テーパーコーンは出入部材に対しスライド自在に支持され、前記出入部材にガイドされて動作することを特徴とするスクリュープレス型脱水装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のスクリュープレス型脱水装置では、脱水ケーキ排出口に詰まった脱水ケーキを穿り出す作業を容易に、且つ安全に行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係るスクリュープレス型脱水装置の出入部材が進入位置にあり、テーパーコーンが閉鎖位置にある状態を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るスクリュープレス型脱水装置の出入部材が進入位置にあり、テーパーコーンが隙間形成位置にある状態を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るスクリュープレス型脱水装置の出入部材が進入位置にあり、テーパーコーンが開放位置にある状態を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るスクリュープレス型脱水装置の出入部材を後退位置にあり、テーパーコーンが開放位置にある状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態に係るスクリュープレス型脱水装置1を図面にしたがって説明する。
符号3はベースを示し、このベース3には後述する脱水ケーキDを受ける開口5が形成されている。この開口5は図示しない脱水ケーキ貯留部に連通している。
ベース3にはろ過体7が備えられており、このろ過体7は略円筒状でパンチングメタルによって構成される本体9を有し、本体9には外周部分に多数の小穴(図示せず)が設けられている。本体9の一端にはリング13が固定され、このリング13の一端部、すなわちろ過体7の一端側が脱水ケーキ排出口15となっている。また、本体9の他端側の上部には図示しない汚泥供給口が設けられている。
【0014】
符号17はシャフトを示し、このシャフト17の一端部は脱水ケーキ排出口15からろ過体7外へ突出しており、この突出部分の端部が軸受19によって支持されている。また、シャフト17の他端部は図示しない軸受(図示せず)によって支持され、シャフト17は回転できるようになっている。
シャフト17の一端部にはスプロケット21が取り付けられており、このスプロケット21には図示しないモータの動力が伝達されて、シャフト17が回転駆動されるようになっている。
【0015】
符号23はスクリュー軸を示し、このスクリュー軸23はシャフト17に固定されており、シャフト17と共に回転する。スクリュー軸23はろ過体7に収容されている。スクリュー軸23は、脱水ケーキ排出口15に向かって徐々に軸径を大きくした回転軸25と、この回転軸25の外周に設けられたスクリュー羽根27とから成る。
【0016】
符号29は出入部材を示し、この出入部材29はシャフト17にスライド自在に支持されている。出入部材29はスクリュー軸23の回転軸25と同じ径寸法の円柱状で、回転軸25と軸芯が一致した状態で備えられている。
符号31はテーパーコーンを示し、このテーパーコーン31は出入部材29に対しスライド自在に支持されている。テーパーコーン31は徐々に縮径する側が脱水ケーキ排出口15に対向している。
【0017】
ベース3にはシリンダーベース33が固定されており、このシリンダーベース33は開口5と軸受19との間に備えられている。シリンダーベース33には一対の油圧シリンダー37が支持され、油圧シリンダー37の駆動ロッド41の先端はテーパーコーン31の後部に取り付けられている。
また、シリンダーベース33には一対の油圧シリンダー35が支持され、油圧シリンダー35の駆動ロッド39の先端は出入部材29の後部に取り付けられている。
油圧シリンダー35の駆動ロッド39の駆動ストロークは油圧シリンダー37の駆動ロッド41より長いものとなっている。
【0018】
また、シリンダーベース33には図示しないガイド装置が設けられ、このガイド装置は出入部材29を挟んで左右に配置されている。ガイド装置はガイドロッドを有しており、出入部材29は図示しないガイドロッドによってスライド自在に支持され、安定してスライドできるようになっている。
【0019】
次に、このスクリュープレス型脱水装置1の動作を説明する。
図1に示すように、油圧シリンダー35の駆動ロッド39を突出する方向へ駆動し、出入部材29を脱水ケーキ排出口15の方向へ移動する。そして、出入部材29を脱水ケーキ排出口15からろ過体7へ進入し、出入部材29の端面とスクリュー軸23の回転軸25の端面とが接触する進入位置で停止させる。出入部材29が進入位置にあるときは、出入部材29の外周面と、ろ過体7の内周面との間に隙間10が形成される。
次いで、油圧シリンダー37の駆動ロッド41を突出する方向へ駆動し、テーパーコーン31を脱水ケーキ排出口15の方向へ移動させ、テーパーコーン31によって脱水ケーキ排出口15が閉鎖される閉鎖位置に停止させる。なお、前述のようにテーパーコーン31は出入部材29に対しスライド自在に支持されているので、出入部材29にガイドされて動作する。
【0020】
また、スプロケット21に図示しないモータの動力が伝達させて、シャフト17と共にスクリュー軸23を回転させる。そして、汚泥供給部から汚泥Nをろ過体7へ供給する。この汚泥Nはスクリュー軸23のスクリュー羽根27によって脱水ケーキ排出口15に向かって搬送される。
【0021】
前記のようにテーパーコーン31は閉鎖位置にあるので、汚泥Nがスクリュー軸23によって脱水ケーキ排出口15に向かって搬送されるに従って、ろ過体7内の汚泥Nに加わる圧力が増大していく。
そして、ある程度汚泥Nに圧力がかかったところで、図2に示すように油圧シリンダー37の駆動ロッド41を後退する方向へ駆動し、テーパーコーン31を脱水ケーキ排出口15から離間する方向へ移動させて、脱水ケーキ排出口15とテーパーコーン31との間に脱水ケーキDを排出するための隙間32を形成する隙間形成位置に停止させる。
【0022】
テーパーコーン31を隙間形成位置に停止させた後においても、汚泥Nを汚泥供給部からろ過体7へ供給する。汚泥Nは回転するスクリュー軸23によって脱水ケーキ排出口15に向かって搬送される。
前記したようにスクリュー軸23は脱水ケーキ排出口15に向かって徐々に軸径が大きくなっているので、スクリュー軸23とろ過体7との隙間は脱水ケーキ排出口15に向かうに従って小さくなっている。よって、汚泥Nは脱水ケーキ排出口15の方向へ搬送されるに従って圧力が加わり脱水され、ろ過体7の穴を通して水が排出される。
そして、脱水された汚泥Nは脱水ケーキDとして、隙間10を通り脱水ケーキ排出口15とテーパーコーン31との間から排出され、これが連続して行われる。脱水ケーキ排出口15とテーパーコーン31との間から排出された脱水ケーキDは開口5へ落下し、脱水ケーキ貯留部に貯留される。
【0023】
ところが、汚泥Nの水分含量等によって脱水ケーキDが脱水ケーキ排出口15とテーパーコーン31との隙間32から排出されず、脱水ケーキ排出口15から隙間32にかけて詰まってしまうことがある。このように脱水ケーキDが詰まると、後続の脱水ケーキDによって脱水ケーキ排出口15付近の脱水ケーキDが押圧されるため押し固められてしまう状態となる。
【0024】
このような場合は、図3、図4に示すように、油圧シリンダー37の駆動ロッド41を後退する方向へ駆動し、テーパーコーン31を脱水ケーキ排出口15から離間する方向へ移動させて、脱水ケーキ排出口15が完全に開放される開放位置に停止させる。なお、テーパーコーン31は脱水ケーキ排出口15から離間する方向へ移動する際にも出入部材29にガイドされて動作する。
【0025】
次いで、図4に示すように、油圧シリンダー35の駆動ロッド39を後退する方向へ駆動し、出入部材29を脱水ケーキ排出口15から離間する方向へ移動させて、脱水ケーキ排出口15より外側に後退する後退位置に停止させる。出入部材29が後退位置に移動すると、出入部材29が入っていた部分が空洞12となり、隙間10にある押し固められた脱水ケーキDがリング状に残される。従って、隙間10内の脱水ケーキDに加わっている圧力を空洞12へ逃がすことが可能となり、隙間10内の脱水ケーキDを容易に掻き出すことができる。よって、脱水ケーキ排出口15に詰まった脱水ケーキDを除去する作業を容易に、且つ安全に行うことができる。
また、脱水ケーキ排出口15が完全に開放される状態となっているので、テーパーコーン31と脱水ケーキ排出口15との間に作業員が入ることが可能となり、脱水ケーキDの除去作業を容易に行うことができる。
【0026】
上記のように隙間10に詰まった脱水ケーキDを除去した後、油圧シリンダー35の駆動ロッド39を突出する方向へ駆動し、出入部材29を脱水ケーキ排出口15の方向へ移動する。そして、出入部材29を脱水ケーキ排出口15からろ過体7へ進入させ、出入部材29の端面とスクリュー軸23の回転軸25の端面とが接触する進入位置で停止させる。
【0027】
次いで、油圧シリンダー37の駆動ロッド41を突出する方向へ駆動し、テーパーコーン31を脱水ケーキ排出口15の方向へ移動させ、隙間形成位置に停止させる。
そして、シャフト17と共にスクリュー軸23を回転させて、汚泥Nを脱水ケーキ排出口15に向かう方向へ搬送して、脱水ケーキDを脱水ケーキ排出口15とテーパーコーン31との隙間32から連続して排出させる。
【0028】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
例えば、テーパーコーン31を出入部材29にガイドされない構成とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、スクリュープレス型脱水装置製造業、このスクリュープレス型脱水装置を用いた汚泥処理業に利用可能性を有している。
【符号の説明】
【0030】
1…スクリュープレス型脱水装置 3…ベース
5…開口 7…ろ過体 9…本体
10…出入部材の外周面とろ過体の内周面との間の隙間
12…空洞 13…リング 15…脱水ケーキ排出口
17…シャフト 19…軸受 21…スプロケット
23…スクリュー軸 25…回転軸
27…スクリュー羽根 29…出入部材
31…テーパーコーン 33…シリンダーベース
35、37…油圧シリンダー 39、41…駆動ロッド
N…汚泥 D…脱水ケーキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状で汚泥供給部と一端部に脱水ケーキ排出口を有するろ過体と、前記ろ過体に収容されて前記脱水ケーキ排出口に向かって徐々に軸径を大きくした回転軸と前記回転軸の外周に設けられたスクリュー羽根とから成るスクリュー軸と、前記排出口を閉鎖する閉鎖位置と脱水ケーキ排出口とテーパーコーンとの間に脱水ケーキを排出するための隙間を形成する隙間形成位置との間で動作するテーパーコーンとを具備するスクリュープレス型脱水装置において、
前記脱水ケーキ排出口から前記ろ過体へ進入する進入位置と、前記脱水ケーキ排出口より外側に後退する後退位置とに動作する出入部材を備え、前記出入部材が進入位置にあるときは、出入部材の外周面と前記ろ過体の内周面との間に隙間が形成されるようにして、且つ前記テーパーコーンを脱水ケーキ排出口が完全に開放される開放位置に後退可能としたことを特徴とするスクリュープレス型脱水装置。
【請求項2】
請求項1に記載したスクリュープレス型脱水装置において、出入部材はスクリュー軸の回転軸と同じ径寸法の円柱状で、前記回転軸と軸芯が一致した状態で備えられていることを特徴とするスクリュープレス型脱水装置。
【請求項3】
請求項1に記載したスクリュープレス型脱水装置において、スクリュー軸の回転軸は回転駆動するシャフトに固定され、前記シャフトは脱水ケーキ排出口からろ過体外へ突出しており、前記シャフトには出入部材がスライド自在に支持されていることを特徴とするスクリュープレス型脱水装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載したスクリュープレス型脱水装置において、テーパーコーンは出入部材に対しスライド自在に支持され、前記出入部材にガイドされて動作することを特徴とするスクリュープレス型脱水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−245450(P2012−245450A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117798(P2011−117798)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(311005976)静岡メンテ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】