説明

スクリューポイント

【課題】スウェーデン式サウンディング試験等に用いられるスクリューポイントの提供。
【解決手段】本発明は、横断面形状が矩形をなす四角錐形状の先端部3とこれに連続する直方体形状の基部4とを備えた本体2を有し、この本体2に横断面矩形状の頂点が先端に向かうに従ってねじれてなるねじれ翼2aを成形する一方、この本体2を高硬度表層2bと低硬度芯層2cとから構成したことを特徴とする。そのため、スクリューポイント貫入時の抵抗を受ける表面の強度および耐摩耗性を高くでき、しかも軸芯部分の靱性も高くできる。また、前記先端部3の最先端部3aを軸芯まで高硬度としても、また前記高硬度表層2bの深さを摩耗限度幅近くとしてもよく、さらには高硬度表層2bを1.5mm以上としてもよい。しかも、前記本体2のねじれ翼2aに点在する形状変移点イ,ロ,ハ付近の硬度を周辺よりも高くしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スウェーデン式サウンディング試験およびこれに準ずる試験に用いられるスクリューポイントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤の硬軟を調査する方法の一つにスウェーデン式サウンディング試験方法がある。このスウェーデン式サウンディング試験は、所定の荷重が加えられたロッド(図示せず)の先端に取付けられたスクリューポイントが回転しながら地盤に貫入する際の抵抗をロッドの回転数と貫入距離との関係から算出することによってその地盤の硬軟を判定するものである。このスウェーデン式サウンディング試験に使用されるスクリューポイントの形状は、概ね日本工業規格JIS A1221で規格化されており、四角錐と直方体とを組み合わせた形状をなし、これに右ねじり1回を与えた全長20cmのものである。また、このスクリューポイントは礫等を含む固い地盤に貫入されるため、高い耐摩耗性が、またその先端が礫に当たって貫入不能となると、作業者により強力な力で打撃されて礫を割るため、高い強度が要求されるので、スクリューポイントを高硬度に製造するのが理想である。その反面、このスクリューポイントはその先端が礫間に割り込んで斜め方向に貫入されると、曲げ方向の力を受けるため、これに耐えられる高い靱性が要求されるので、スクリューポイントの硬度を低くするのが理想となっている。これら強度および耐摩耗性並びに靱性は材質、加工方法および形状が同一であれば、その硬度により決まり、硬度を上げると強度および耐摩耗性が向上する反面、靱性が低下し、逆に硬度を下げると、強度および耐摩耗性が下がり、靱性が向上する相反する性質を持っている。そのため、互いの性能を犠牲にしながら硬度調整を行い、使用に耐えるスクリューポイントを製造しているのが現状である。
【0003】
【非特許文献1】JIS A1221
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記スクリューポイントでは、強度および耐摩耗性並びに靱性を使用に耐える程度まで犠牲にして、スクリューポイントの熱処理の際に硬度調整を行わざるを得ず、強度および耐摩耗性並びに靱性を最大限高めたスクリューポイントの開発が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題に鑑みて創成されたものであり、横断面形状が矩形をなす四角錐形状の先端部とこれに連続する直方体形状の基部とを備えた本体を有し、この本体を横断面矩形状の頂点が先端に向かうに従ってねじれてなるねじれ翼を持つように成形する一方、この本体の表面側に高硬度表層を、軸芯側に低硬度芯層を設けたことを特徴としている。また、前記先端部の最先端部は軸芯まで高硬度としてもよい。さらに、前記高硬度表層の深さを摩耗限度幅近くとしてもよく、またこれを1.5mm以上としてもよい。しかも、前記本体に成形されたねじれ翼が形状変移点を有する場合、この形状変移点付近の硬度をその周辺よりも高くしてもよい。その上、前記基部にねじ部を一体に設け、このねじ部の表面側に高硬度表層を、軸芯側に低硬度芯層を設けてもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明のスクリューポイントによれば、地盤との接触により摩耗し易い本体の表面は高硬度表層で覆われているため、高い強度と高い耐摩耗性とを有し、地盤貫入時の摩耗が激減するばかりか、スクリューポイントに衝撃が加わってもこれに耐える十分な強度を持つことができる。また、スクリューポイントが礫間に割り込み、斜め方向に貫入して曲げ方向の力を受けても、これに耐える十分な靱性を備えているので、スクリューポイントが破損するようなことは激減する。従って、強度および耐摩耗性並びに靱性を最大限にした理想的なスクリューポイントを提供することができる。また、前記スクリューポイントの最先端部が軸芯まで高硬度となっている場合には、最先端部は十分な強度を備えており、打撃によりスクリューポイントの最先端部に衝撃が加えられても、最先端部が折損または変形するようなことは激減する。さらに、前記本体表面側の高硬度表層の深さを摩耗限度幅近くとした場合には、スクリューポイントが摩耗により使用限界に達するまで高い強度および耐摩耗性を保ちながら、靱性に影響を及ぼす低硬度芯層の面積を最大限大きくすることができ、また高硬度表層を1.5mm以上とした場合には、JISで推奨する摩耗限界まで高い耐摩耗性を保つことができる。しかも、前記本体に成形されたねじれ翼が形状変移点を持つ場合には、この形状変移点付近の硬度を周辺よりも高くすることにより、摩耗が最も激しい部分の耐摩耗性を高くして、スクリューポイントの外形状を平均して摩耗させることができる。その上、前記基部にねじ部を一体に設けてこのねじ部の表面側に高硬度表層を、軸芯側に低硬度芯層を設けた場合には、一体成形のねじ部に十分な強度と靱性の両特性を持たすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1において、1はスウェーデン式サウンディング試験に使用されるスクリューポイントであり、横断面形状が矩形をなす四角錐形状の先端部3とこれに連なる直方体形状の基部4とからなる本体2を有している。この本体2は横断面矩形状の頂点が先端に向かうに従って右ねじれ方向に1回転ねじれてなるねじれ翼2aを持つように成形されており、その外形状の包絡線は補助線x1,x2,x3並びにx4で繋がれるように構成されている。前記補助線x1,x2,x3およびx4の各接続点が形状変移位置となっており、この形状変移位置を含む円周上に位置するねじれ翼2aに形状変移点イ,ロ,ハが点在している。また、前記基部4の端部はテーパ状に形成され、その端面が後記するロッド(図示せず)の端面とほぼ等しくなるように構成されている。さらに、前記基部4の端面にはめねじ部(図示せず)が設けられており、このめねじ部には所定太さの無頭ボルト5が螺合して離脱しないように設けられている。この無頭ボルト5には、所定の荷重が加えられながら回転するロッドのめねじ部(図示せず)が螺合するように構成されており、スクリューポイント1がロッドの回転を受けながら地盤に貫入するように構成されている。
【0008】
前記本体2は、図2ないし図6に示すように表面側の高硬度表層2bと軸芯側の低硬度芯層2cとからなっており、高硬度表層2bの硬度は低硬度芯層2cの硬度の約2倍の値となっている。この本体2の二層硬度分布は、所定低硬度の素材、もしくは調質処理等により低硬度に調整した材料またはあらかじめ通常の熱処理で芯層を低硬度にした材料に高周波焼入処理を施して得ることができる。また、前記高硬度表層2bは基部4に向かうに従ってその深さを一定比で減少させており、先端部3と基部4との接続部付近でこれが最小となるように構成されている。さらに、前記低硬度芯層の断面積は基部に向かうに従って増加し、先端部3と基部4との接続部付近で最大となるように構成されている。
【0009】
前記本体2の先端部3では、高周波焼入処理が行われる関係で、図7に示すようにその最先端部3aが軸芯まで高硬度となっており、その強度が衝撃に耐える十分なものとなるように構成されている。また、前記先端部3には最先端部3aを除いて低硬度芯層2cが残されており、スクリューポイント1が礫間に割り込んで斜め方向に貫入する際に曲げ方向の力を受ける部分が十分な靱性を持ち、折損し難いように構成されている。
【0010】
さらに、前記高硬度表層2bの深さは、摩耗限界深さ以上となっており、スクリューポイント1が摩耗して廃棄されるまで一定の耐摩耗性を保てるように構成されている。なお、この高硬度表層2bの深さを、先端部3と基部4との接合部付近で1.5mm以上としてもよく、この場合JISが推奨する摩耗限界に達するまでは一定の耐摩耗性を保つことができる。
【0011】
しかも、前記ねじれ翼2aに点在する形状変移点イ,ロ,ハ付近の高硬度表層2bの硬度はその周辺よりも高く設定されており、スクリューポイント1が地盤に貫入される際にその抵抗が集中して摩耗が激しくなる部分の耐摩耗性がさらに高くなるように構成されている。
【0012】
上記スクリューポイント1は、本体2の表面側の高硬度表層2bと軸芯側の低硬度芯層2cとで構成されているため、地盤貫入時に抵抗を受ける本体2の表面の強度および耐摩耗性が高く、先端部3が衝撃により折損することが激減するばかりか、本体2の表面の摩耗も激減する。しかも、靱性に影響を与える本体2の軸芯部分が低硬度芯層2cでなっているため、スクリューポイント1が礫間に割り込んで斜め方向に貫入されて曲げ方向の力を受けても、これに耐える十分な靱性を備えている。そのため、スクリューポイント1が先端部3で折損するようなことは激減する。
【0013】
また、前記本体2の先端部3ではその最先端部3aが軸芯まで高硬度となっているため、最先端部3aが礫に当たって停止した時にロッドを通じてスクリューポイント1に打撃が加えられ、最先端部3aに大きな衝撃が加わっても、これに耐える十分な強度を備えているため、最先端部3aでの折損はもとより変形も激減する。
【0014】
さらに、本体2に設けられた高硬度表層2bの深さは摩耗限界幅以上の深さとなっているため、長期間の使用により本体2の表面の摩耗が進み、これを廃棄することとなるまで所定の耐摩耗性を保つことができる。
【0015】
しかも、前記高硬度表層2bの深さを1.5mm以上とした場合には、JISが推奨する摩耗限界に達するまで所定の耐摩耗性を保つことができる。
【0016】
その上、前記本体2のねじれ翼2aに点在する形状変移点イ,ロ,ハ付近はその周辺よりも高硬度となっているため、この形状変移点イ,ロ,ハ付近にスクリューポイント貫入時の抵抗が集中しても、その摩耗を抑えることができ、他の部位と同様に摩耗させることができる。
【0017】
なお、本実施態様では、高硬度表層2bの深さは一定に変化するように設定されているが、スクリューポイント1の形状と地盤の特性とに応じた摩耗位置を探り、この位置の高硬度表層2bの深さをその摩耗度に比例して深くしてもよい。また、本実施態様では、本体2は二層硬度分布となっているが、三層以上の硬度分布であってもよい。さらに、本実施態様の無頭ボルト5に代え、本体2の基部4にねじ部(図示せず)を一体に成形し、このねじ部の表面側に高硬度表層を、軸芯側に低硬度芯層を設けてもよい。この場合、ねじ部は十分な強度と靱性の両特性を持つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るスクリューポイントの正面図。
【図2】図1のA−A線拡大端面図。
【図3】図1のB−B線拡大端面図。
【図4】図1のC−C線拡大端面図。
【図5】図1のDーD線拡大端面図。
【図6】図1のE−E線拡大端面図。
【図7】図1のF−F線拡大端面図。
【符号の説明】
【0019】
1 スクリューポイント
2 本体
2a ねじれ翼
2b 高硬度表層
2c 低硬度芯層
3 先端部
3a 最先端部
4 基部
5 無頭ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面形状が矩形をなす四角錐形状の先端部とこれに連続する直方体形状の基部とを備えた本体を有し、この本体を横断面矩形状の頂点が先端に向かうに従ってねじれてなるねじれ翼を持つように成形する一方、この本体の表面側に高硬度表層を、軸芯側に低硬度芯層を設けたことを特徴とするスクリューポイント。
【請求項2】
先端部の最先端部は、軸芯まで高硬度層であることを特徴とする請求項1に記載のスクリューポイント。
【請求項3】
高硬度表層の深さを摩耗限度幅近くとしたことを特徴とする請求項1または2に記載のスクリューポイント。
【請求項4】
高硬度表層を1.5mm以上としたことを特徴とする請求項1、2または3に記載のスクリューポイント。
【請求項5】
本体に成形されたねじれ翼は、形状変移点を有し、この形状変移点付近の硬度をその周辺よりも高くしたことを特徴とする請求項1,2,3または4に記載のスクリューポイント。
【請求項6】
横断面形状が矩形をなす四角錐形状の先端部とこれに連続する直方体形状の基部とを備えた本体を有し、この本体を横断面矩形状の頂点が先端に向かうに従ってねじれてなるねじれ翼を持つように成形する一方、前記基部にねじ部を一体に設け、このねじ部の表面側に高硬度表層を、軸芯側に低硬度芯層を設けたことを特徴とするスクリューポイント。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−274644(P2008−274644A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−119432(P2007−119432)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000227467)日東精工株式会社 (263)
【Fターム(参考)】