説明

スクリュ型2軸混練機

【課題】切欠き部が対向する相手方のスクリュ羽根のねじ底部に付着する混練材料が堆積しないようにすることである。
【解決手段】一対のスクリュ羽根3a、3bを互いに異なる条数Na、Nbのねじスクリュとし、これらのスクリュ羽根3a、3bのスクリュシャフト2a、2bの回転速度Va、Vbが、Va/Vb=Nb/Naの関係を満足するようにすることにより、少なくとも一方のスクリュ羽根3a、3bの切欠き部4a、4bが相手方のスクリュ羽根3b、3aと毎回同じ部位で対向しないようにし、切欠き部4a、4bが対向する相手方のスクリュ羽根3b、3aのねじ底部に付着する混練材料が堆積しないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体、粒体、流体等の材料を混練するスクリュ型2軸混練機に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体、粒体、流体等の材料を混練する混練機には、ケーシング内に一対のスクリュシャフトを平行に横架し、これらのスクリュシャフトを互いに反対方向へ回転させて、これらの外周に設けた一対のスクリュ羽根を噛み合わせるようにし、これらのスクリュ羽根の外周縁に接線方向に切欠いた切欠き部を間歇的に設けて、ケーシングの一端側から供給される混練材料を、これらの切欠き部が相手方のスクリュ羽根のねじ底部と対向する部位で、これらの間に形成される間隙を通過させることによって、混練材料の滞留時間を確保しながら混練を行い、他端側の排出端へ移送するようにしたスクリュ型2軸混練機がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
なお、特許文献1に記載のものは、中空のスクリュシャフトに加熱媒体や冷却媒体を供給して、噛み合うスクリュ羽根上を移送される材料を加熱冷却するスクリュ型加熱冷却装置として開発されたものであるが、スクリュ羽根の切欠き部が相手方のスクリュ羽根と対向する部位で、相手方のねじ底部との間から材料を下方へ通過させて、材料の加熱冷却のための滞留時間を延長する機能を、上述したような混練機能として活用できるので、スクリュ型2軸混練機としても使用されている。
【0004】
【特許文献1】特公平8−17932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたスクリュ型2軸混練機は、一対のスクリュ羽根のねじスクリュの条数をそれぞれ1条としているので、一対のスクリュシャフトが同じ回転速度で反対方向へ回転し、スクリュ羽根の各切欠き部が相手方のスクリュ羽根のねじ底部と毎回同じ部位で対向する。このため、混練材料が付着性を有するものである場合は、切欠き部と毎回同じ部位で対向する相手方のスクリュ羽根のねじ底部に付着する混練材料が堆積し、混練材料を通過させるための切欠き部と相手方のスクリュ羽根のねじ底部との間隙が狭くなる。さらに堆積が進むとこの間隙が閉塞されることもある。
【0006】
このように切欠き部と相手方のスクリュ羽根のねじ底部との間隙が狭くなったり、閉塞されたりすると、混練材料はこれらの間隙を通過することなく、互いに噛み合うスクリュ羽根の上面側をそのまま排出端側へ移送される割合が多くなり、混練効率が低下する。
【0007】
そこで、本発明の課題は、切欠き部が対向する相手方のスクリュ羽根のねじ底部に付着する混練材料が堆積しないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、ケーシング内に一対のスクリュシャフトを平行に横架し、これらのスクリュシャフトを互いに反対方向へ回転させて、これらの外周に設けた一対のスクリュ羽根を噛み合わせるようにし、これらのスクリュ羽根の外周縁に接線方向に切欠いた切欠き部を間歇的に設けたスクリュ型2軸混練機において、前記一対のスクリュ羽根a、bを互いに異なる条数Na、Nbのねじスクリュとし、これらのスクリュ羽根a、bのスクリュシャフトの回転速度Va、Vbが、Va/Vb=Nb/Naの関係を満足するようにした構成を採用した。
【0009】
すなわち、一対のスクリュ羽根a、bを互いに異なる整数の条数Na、Nbのねじスクリュとし、これらのスクリュ羽根a、bのスクリュシャフトの回転速度Va、Vbが、Va/Vb=Nb/Naの関係を満足するようにすることにより、少なくとも一方のスクリュ羽根の切欠き部が相手方のスクリュ羽根と毎回同じ部位で対向しないようにし、切欠き部が対向する相手方のスクリュ羽根のねじ底部に付着する混練材料が堆積しないようにした。つまり、前回切欠き部と対向する部位で相手方のスクリュ羽根のねじ底部に付着した混練材料を、次回に対向する切欠き部のないスクリュ羽根のねじ山部で掻き取り、ねじ底部に混練材料が堆積しないようにした。
【0010】
前記ねじスクリュの条数Na、Nbが、互いに一方が他方の倍数とならないようにすることにより、両方のスクリュ羽根の切欠き部が相手方のスクリュ羽根と毎回同じ部位で対向しないようにし、両方のスクリュ羽根のねじ底部に混練材料が堆積しないようにすることができる。
【0011】
前記一対のスクリュシャフトを中空のものとし、これらの中空のスクリュシャフトの中に、加熱媒体または冷却媒体を供給することにより、ケーシング内の混練材料を間接加熱または間接冷却することができる。混練材料を軟化させたり、流動性を高めたりする場合等には加熱媒体が供給され、混練による混練材料の発熱を抑制する場合等は冷却媒体が供給される。
【発明の効果】
【0012】
本発明のスクリュ型2軸混練機は、一対のスクリュ羽根a、bを互いに異なる条数Na、Nbのねじスクリュとし、これらのスクリュ羽根a、bのスクリュシャフトの回転速度Va、Vbが、Va/Vb=Nb/Naの関係を満足するようにしたので、少なくとも一方のスクリュ羽根の切欠き部が相手方のスクリュ羽根のねじ底部と毎回同じ部位で対向しないようにし、切欠き部が対向する相手方のスクリュ羽根のねじ底部に付着する混練材料が堆積しないようにすることができる。
【0013】
前記ねじスクリュの条数Na、Nbが、互いに一方が他方の倍数とならないようにすることにより、両方のスクリュ羽根の切欠き部が相手方のスクリュ羽根と毎回同じ部位で対向しないようにし、両方のスクリュ羽根のねじ底部に混練材料が堆積しないようにすることができる。
【0014】
前記一対のスクリュシャフトを中空のものとし、これらの中空のスクリュシャフトの中に、加熱媒体または冷却媒体を供給することにより、ケーシング内の混練材料を間接加熱または間接冷却することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1乃至図5は、第1の実施形態を示す。このスクリュ型2軸混練機は、図1および図2に示すように、一端側に原料の供給口1a、他端側に製品の排出口1bが設けられた横向きのケーシング1内に、一対の中空のスクリュシャフト2a、2bを横並びに平行に横架し、これらのスクリュシャフト2a、2bを内方下向きに互いに反対方向へ回転させて、これらの外周に設けた一対のスクリュ羽根3a、3bを噛み合わせ、各スクリュ羽根3a、3bの外周縁に接線方向に切欠いた弦月状の切欠き部4a、4bを間歇的に設けたものであり、供給口1aから供給される混練材料の原料を、これらの切欠き部4a、4bが相手方のスクリュ羽根3b、3aのねじ底部と対向する部位で、ねじ底部との間隙を下方へ通過させて混練しながら、排出口1bへ移送するようになっている。
【0016】
前記ケーシング1の外周にはジャケット5が取り付けられ、このジャケット5の中に加熱媒体が供給されるとともに、中空の各スクリュシャフト2a、2bの中にも加熱媒体が供給され、ケーシング1内の混練材料が間接加熱される。ケーシング1の両端側の天井部には、通気口6aと排気口6bも設けられ、加熱によって混練材料から発生する蒸気が、通気口6aから供給されるエアとともに、排気口6bから排出されるようになっている。
【0017】
前記各スクリュ羽根3a、3bの切欠き部4a、4bは、円周方向に80°のピッチで間歇的に設けられており、各切欠き部4a、4bの回転方向後面側には、対向する相手方のスクリュ羽根3b、3aのねじ底部との間に混練材料を効率よく入れ込むための立壁部7が形成されるとともに、ケーシング1の内壁や相手方のねじ底部に付着する混練材料を掻き取るスクレーパ用の突起8が設けられている。なお、各切欠き部4a、4bのピッチは、螺旋に沿うピッチとなるので、360°の約数に限定されず、120°、150°等の任意のピッチとすることができ、必ずしも等ピッチである必要もない。
【0018】
図3に示すように、前記噛み合わされる一方のスクリュ羽根3aのスクリュねじの条数Naは1条、他方のスクリュ羽根3bのスクリュねじの条数Nbは2条とされており、各スクリュ羽根3a、3bのスクリュシャフト2a、2bの回転速度Va、Vbは、次式の関係を満足する。
Va/Vb=Nb/Na (1)
なお、この図では、各切欠き部4a、4bの図示を省略している。
【0019】
したがって、図4(a)に示すように、スクリュ羽根3bのねじ山部における切欠き部4bがスクリュ羽根3aのねじ底部における部位Aと対向していた前回の対向状態から、図4(b)に示すように、スクリュ羽根3a(スクリュシャフト2a)が360°回転すると、スクリュ羽根3b(スクリュシャフト2b)は180°回転し、スクリュ羽根3aの部位Aが、スクリュ羽根3bの切欠き部4bがないねじ山部と対向する。
【0020】
図5は、前記1条のスクリュ羽根3aと2条のスクリュ羽根3bの回転に伴う、各切欠き部4a、4bの相手方のスクリュ羽根3b、3aのねじ底部との対向状態を模式的に示す。この図では、説明を分かり易くするために、各切欠き部4a、4bを円周方向の一箇所のみとして単純な弦月状のものとし、図5(a)に示す初期状態で、切欠き部4aの位相が90°だけ切欠き部4bの位相よりも進んでいるものとする。
【0021】
まず、図5(a)に示すように、スクリュ羽根3aの切欠き部4aがスクリュ羽根3bのねじ底部における部位Bと対向するとし、図5(b)に示すように、スクリュ羽根3aが180°回転すると、スクリュ羽根3bは90°回転して、その切欠き部4bがスクリュ羽根3aのねじ底部における部位Aと対向する。これらの切欠き部4a、4bが相手方のスクリュ羽根3b、3aの部位B、Aと対向する時に、これらの間隙を通過する混練材料Mが各部位B、Aに付着したとする。こののち、図5(c)に示すように、スクリュ羽根3aが360°回転すると、スクリュ羽根3bは180°回転し、図5(d)に示すように、スクリュ羽根3aが540°回転すると、スクリュ羽根3bは270°回転して、スクリュ羽根3aの部位Aがスクリュ羽根3bの切欠き部4bがないねじ山部と対向し、部位Aに付着した混練材料Mが掻き取られる。さらに、図5(e)に示すように、スクリュ羽根3aが720°回転すると、スクリュ羽根3bは360°回転し、スクリュ羽根3bの部位Bが再びスクリュ羽根3aの切欠き部4aと対向する。
【0022】
このように、第1の実施形態では、切欠き部4bと対向するスクリュ羽根3aの部位Aは、次回にスクリュ羽根3bの切欠き部4bのないねじ山部と対向し、部位Aに付着した混練材料Mが掻き取られて、切欠き部4bと相手方のスクリュ羽根3aのねじ底部との間隙が十分に確保される。したがって、混練材料Mがこの間隙を効率よく通過し、混練材料Mの滞留時間を確保して、混練効率を高めることができる。一方、切欠き部4aと対向するスクリュ羽根3bの部位Bは、次回も切欠き部4aと対向し、スクリュ羽根3bの部位Bに付着する混練材料Mは掻き取られない。
【0023】
図6および図7は、第2の実施形態を示す。このスクリュ型2軸混練機は、基本的な構成は第1の実施形態のものと同じであり、図6に示すように、噛み合わされる一方のスクリュ羽根3aのスクリュねじの条数Naが2条、他方のスクリュ羽根3bのスクリュねじの条数Nbが3条とされている点が異なる。その他の部分は第1の実施形態のものと同じであり、図示は省略するが、各スクリュ羽根3a、3bには、切欠き部4a、4bが円周方向に80°のピッチで間歇的に設けられている。
【0024】
図7は、前記2条のスクリュ羽根3aと3条のスクリュ羽根3bの回転に伴う、各切欠き部4a、4bの相手方のスクリュ羽根3b、3aのねじ底部との対向状態を模式的に示す。この図でも、説明を分かり易くするために、各切欠き部4a、4bを円周方向の一箇所のみとして単純な弦月状のものとし、図7に示す初期状態で、切欠き部4aの位相が120°だけ切欠き部4bの位相よりも進んでいるものとする。
【0025】
まず、図7(a)に示すように、スクリュ羽根3aの切欠き部4aがスクリュ羽根3bのねじ底部における部位Bと対向するとし、図7(b)に示すように、スクリュ羽根3aが180°回転すると、スクリュ羽根3bは120°回転して、その切欠き部4bがスクリュ羽根3aのねじ底部における部位Aと対向する。これらの切欠き部4a、4bとの対向時に、図5に示した場合と同様に、混練材料Mが各部位B、Aに付着したとする。こののち、図7(c)に示すように、スクリュ羽根3aが360°回転すると、スクリュ羽根3bは240°回転し、図7(d)に示すように、スクリュ羽根3aが540°回転すると、スクリュ羽根3bは360°回転して、スクリュ羽根3aの部位Aがスクリュ羽根3bの切欠き部4bがないねじ山部と対向するとともに、スクリュ羽根3bの部位Bもスクリュ羽根3aの切欠き部4aがないねじ山部と対向し、各部位A、Bに付着した混練材料Mが掻き取られる。
【0026】
このように、スクリュ羽根3a、3bのねじスクリュの条数Na、Nbが互いに倍数とならないようにした第2の実施形態では、切欠き部4bと対向するスクリュ羽根3aの部位Aも、切欠き部4aと対向するスクリュ羽根3bの部位Bも、次回には各スクリュ羽根3b、3aの切欠き部4b、4aのないねじ山部と対向し、各部位A、Bのねじ底部に付着する混練材料Mが次回の対向で掻き取られる。なお、互いに倍数とならない条数Na、Nbの組み合わせとしては、実施形態の2条と3条の組み合わせほかに、4条と6条、3条と7条等の組み合わせを採用することができる。
【0027】
上述した各実施形態では、一対のスクリュシャフトを横並びに平行とし、互いに内方向下向きに回転させるようにしたが、内方向上向きに回転させることもでき、この場合は、混練材料はケーシングの内壁に沿って下降し、一対のスクリュの切欠き部とねじ底部との間隙を上方へ通過することになる。また、一対のスクリュシャフトを縦並びに平行とし、一対のスクリュの切欠き部とねじ底部との間隙を横方向へ通過させるようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1の実施形態のスクリュ型2軸混練機を示す縦断面図
【図2】図1のII−II線に沿った断面図
【図3】図2のスクリュ羽根を示す平面図
【図4】a、bは、図3のスクリュ羽根の回転に伴う対向位置の変化を説明する一部省略平面図
【図5】a、b、c、d、eは、図3のスクリュ羽根の回転に伴う対向位置の変化を模式的に示す断面図
【図6】第2の実施形態のスクリュ型2軸混練機のスクリュ羽根を示す平面図
【図7】a、b、c、dは、図6のスクリュ羽根の回転に伴う対向位置の変化を模式的に示す断面図
【符号の説明】
【0029】
1 ケーシング
1a 供給口
1b 排出口
2a、2b スクリュシャフト
3a、3b スクリュ羽根
4a、4b 切欠き部
5 ジャケット
6a 通気口
6b 排気口
7 立壁部
8 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内に一対のスクリュシャフトを平行に横架し、これらのスクリュシャフトを互いに反対方向へ回転させて、これらの外周に設けた一対のスクリュ羽根を噛み合わせるようにし、これらのスクリュ羽根の外周縁に接線方向に切欠いた切欠き部を間歇的に設けたスクリュ型2軸混練機において、前記一対のスクリュ羽根a、bを互いに異なる条数Na、Nbのねじスクリュとし、これらのスクリュ羽根a、bのスクリュシャフトの回転速度Va、Vbが、Va/Vb=Nb/Naの関係を満足するようにしたことを特徴とするスクリュ型2軸混練機。
【請求項2】
前記ねじスクリュの条数Na、Nbが、互いに一方が他方の倍数とならないようにした請求項1に記載のスクリュ型2軸混練機。
【請求項3】
前記一対のスクリュシャフトを中空のものとし、これらの中空のスクリュシャフトの中に、加熱媒体または冷却媒体を供給するようにした請求項1または2に記載のスクリュ型2軸混練機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−262043(P2009−262043A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113950(P2008−113950)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】