説明

スクリーニングアッセイ

本発明は、短い一本鎖RNAおよび直鎖状PEIのようなカチオンポリマーを用いたRNA干渉メカニズムによる標的遺伝子の下方制御の方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、カチオンポリマーおよび一本鎖リボヌクレオチドオリゴマーを用いて標的遺伝子の発現を減少させるための方法に関する。
【0002】
発明の背景
mRNAノックダウン剤、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)または小さい干渉RNA(siRNA)としても既知の二本鎖の短いRNAは、遺伝子発現の調節における強力な道具となっており、従って、それらの機能の解明および疾患のプロセスにおける役割の推定に貢献する。
【0003】
はじめに、遺伝子特異的阻害を達成するための最も一般的なアプローチは、目的の遺伝子のmRNAと相補的な一本鎖核酸(オリゴデオキシヌクレオチドまたはオリゴリボヌクレオチド)を細胞中に導入するものである、アンチセンス技術であった(Thompson,2002)。より最近では、小さい干渉RNA(siRNA)としても既知の二本鎖の短いRNAは、哺乳類細胞においてRNA干渉(Fire et al.,1998)と呼ばれるメカニズムにより適切なトランスフェクション剤で細胞送達されると、効果的に遺伝子発現を阻害することが示されている(Elbashir et al.,2001)。siRNAは、19〜21ヌクレオチド二本鎖領域を形成する2本の相補的なRNA鎖により形成され、そして鎖のそれぞれが1〜3ヌクレオチドのオーバーハングを有する。RNA干渉はウイルス性dsRNAに対する自然発生防御メカニズムとして記載されている。活性の提案されたメカニズムは、二本鎖siRNAをほどき、次いで、遺伝子サイレンシングプロセスにおける中間物としてssRNA−酵素複合体を形成し、従って、RNAiとアンチセンス効果の差異をぼやかせると提唱されている(Martinez et al.2002,Schwarz et al.2002)。
【0004】
しかし、オリゴヌクレオチドに基づくアプローチには送達、安定および投与要求に関する多くの制限がある。無修飾ホスホジエステルオリゴヌクレオチド、そしていっそうとりわけオリゴリボヌクレオチドは、ヌクレアーゼ分解に高い感受性であり、そして一般的に、核酸の自発的な取り込みは極めて非効率的である。その結果、オリゴヌクレオチド技術の発達における努力の多くは、細胞の取り込みを増進するトランスフェクション剤の製造、およびヌクレアーゼ消化に安定でかつ細胞中にすぐに拡散し得る、修飾された核酸の合成に集中した。過去10年間、ホスホジエステル結合のアナログおよび2’−O−MOE(メトキシエチル)誘導体(Martin et al,1995)のような新しい化学的に修飾されたヌクレオシド基礎単位が、有意に改善された安定性、効果並びに伝統的なホスホジエステルおよびホスホロチオエートアンチセンスオリゴマーの選択性を有するよう設計された。
【0005】
RNAiメカニズムを介した無修飾ssRNAを用いた哺乳類細胞における遺伝子サイレンシングは近年HeLa細胞で示された(Martinez et al.,2002, Schwarz et al.2002)。しかし、ssRNAの効果はdsRNAと比較して低かった。さらに、HeLa細胞はヌクレアーゼが少ないことが知られている。従って、MartinezおよびSchwarzのアプローチは、例えばより大きなヌクレアーゼ活性を有する他の細胞株に適用され得ないので、一概に受け入れられるものではない。例えば、他の哺乳細胞株で使用されたssRNA、例えばH−9、MOLT−3またはT−24細胞、およびアンチセンスメカニズムを介して活動すると予期されるssRNAは、mRNAの分解を誘導するのに十分修飾されるべきであった(Agrawal et al.,1992,Wu et al.,1998)。ssRNAを安定化するために使用される化学修飾は、関連する制御メカニズムに依存して負の効果を有し得る。さらにとりわけ、修飾されたssRNAはアンチセンスメカニズムを通じたmRNAの分解を可能するが、しかしおそらく他の下方制御経路、例えば、RNA干渉経路において誘導されるRISC−複合体形成に関与する酵素複合体とのより低い親和性を有するはずである。逆に、RNA二本鎖の3’末端で適用される化学修飾は、サイレンシング活性に対して最小の影響を有するかまたは影響がない(Schwarz et al.2002)。しかし、RNAiのために無修飾ssRNAを用いる一般的に適用可能な方法の明確な必要性が存在する。なぜならかかるアプローチは試薬の費用としては明らかに有利であるかもしれないが、dsRNAと比較してssRNAの安定性が低いためその効果が制限されるからである。siRNAの二本鎖に含まれる3’修飾されたオーバーハングを有する一本鎖RNAとの類似性のため、最小に3’修飾されたホスホジエステル一本鎖RNAは、RNAi経路において活動でき、また、アンチセンスノックダウン剤として作用できるはずである。従って、特定標的遺伝子の下方制御のために3’最小修飾された一本鎖RNAを使用できる方法が明らかに望まれていた。
【0006】
本発明は、ここで、カチオンポリマーと組合せた最小修飾されたssRNAの適用による、哺乳類細胞における特定標的遺伝子の下方制御を可能にする方法を提供する。本発明は従って、遺伝子インヒビターとしてのRNA干渉のためのssRNAの最初の有効な使用を提供し、およびとりわけ高スループットスクリーニングに有用である。
【0007】
発明の要約
本発明はssRNAおよびPEIのようなカチオンポリマーを用いた標的遺伝子のノックダウンに関する。
【0008】
第一の局面において、本発明は一本鎖オリゴリボヌクレオチドおよびPEIに細胞を曝すことを含む、標的遺伝子の発現を減少させるための方法であって、該一本鎖オリゴリボヌクレオチドが該標的遺伝子によりコードされるmRNAと相補的な50未満、好ましくは25未満のヌクレオチドの領域を含んでなる方法を提供する。他の好ましい態様において、相補的な領域が10から30、さらに好ましくは15から25、とりわけ好ましい態様において19から21ヌクレオチドである。他の好ましい態様において、該標的遺伝子によりコードされるmRNAに対して相補的な領域が16、17、18、19、20、21、22、23、24または25ヌクレオチドである。
【0009】
本発明の好ましい態様において、該細胞は、真核細胞、より好ましくは哺乳類の細胞、最も好ましくはヒトの細胞である。該PEIは好ましくは直鎖状PEIであり、そしてN/P比は、好ましくは2から10、さらに好ましくは3から8である。
本発明の他の態様において、該ssRNAは1、2、3または4個のミスマッチを含む。ある態様において、ミスマッチは近接する。
【0010】
本発明の他の態様において、該一本鎖オリゴリボヌクレオチドは、1から10、好ましくは1から8、さらに好ましくは1から6個の化学的に修飾されたリボヌクレオチド残基を含んでなる。1、2、3、4、または5個の化学的に修飾された残基を有するオリゴリボヌクレオチドがとりわけ好ましい。好ましい化学的な修飾は2’−O−MOE修飾またはヌクレオシド内主鎖の修飾、例えばホスホロチオエートである。
【0011】
該標的遺伝子は、発明の好ましい態様において、ヒト遺伝子である。好ましくは、該遺伝子は病理学的条件で過剰発現し、さらに好ましくは、該遺伝子は発がん遺伝子、サイトカイン遺伝子、ウイルス性遺伝子、細菌性遺伝子、発生遺伝子またはプリオン遺伝子である。
【0012】
本発明の関連する局面において、RNA干渉により該標的遺伝子が下方制御される方法が提供される。
他の関連する局面において、本発明はRNA干渉のためのssRNAおよびPEIを提供する。
【0013】
他の局面において、本発明は、標的遺伝子の発現を阻害するのに有効量のssRNAおよびPEIを含んでなるキットであって、該ssRNAが標的遺伝子と相補的な領域を含むキットを提供する。
【0014】
図面の簡単な説明
図1は400nMでのP2X3一本鎖の直鎖状PEI介在トランスフェクションによるP2X3mRNAの阻害を示す。
図2は200nMでのP2X3一本鎖の直鎖状PEI介在トランスフェクションによるP2X3mRNAの阻害を示す。
【0015】
発明の詳細な説明
【表1】

【0016】
本明細書中に記載の発明は、記載されている特定の方法論、プロトコル、および記載された試薬に、これらが変化し得るため、限定されないと考えられる。本明細書中で使用される用語法は、特定の態様のみを記載する目的のためであり、そしていかなる方法においても本発明の範囲を制限することを意図するものではないということも理解されるべきである。
【0017】
別の定義がなされていない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的および科学的用語は本発明の属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味である。本明細書中の記載と類似または等しい任意の方法および物質が本発明の実施または試験に使用され得るとしても、好ましい方法、装置および物質は本明細書に記載されている。本明細書で言及されたすべての刊行物は、本発明と組合せて使用すべきである、刊行物中で報告された物質および方法論を記載および開示する目的で、参照により本明細書の一部とする。
【0018】
本発明の実施において、分子生物学の多くの常套の技術が使われる。これらの技術はよく知られており、例えば、Harlow, E. and Lane, eds., 1988, "Antibodies: A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, Current Protocols in Molecular Biology, Volumes I, II, and III, 1997 (F. M. Ausubel ed.); Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.; DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes I and II, 1985 (D. N. Glover ed.); Oligonucleotide Synthesis, 1984 (M. L. Gait ed.); Nucleic Acid Hybridization, 1985, (Hames and Higgins); Transcription and Translation, 1984 (Hames and Higgins eds.); Animal Cell Culture, 1986 (R. I. Freshney ed.); Immobilized Cells and Enzymes, 1986 (IRL Press); Perbal, 1984, A Practical Guide to Molecular Cloning; the series, Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.); Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells, 1987 (J. H. Miller and M. P. Calos eds., Cold Spring Harbor Laboratory);およびMethods in Enzymology Vol. 154 and Vol. 155 (各々Wu and Grossman, and Wu, eds.)で説明されている。
【0019】
本明細書中および添付の特許請求の範囲で使用される場合、文脈が明確にそうではないことを示していない限り、単数形は複数形の意味を含む。
【0020】
本発明の目的のために、“ssRNA”または“オリゴリボヌクレオチド”は、本発明の分野において一般的に定義されかつ理解されるように、一本鎖リボヌクレオチドオリゴマーと同義である。
【0021】
“化学的な修飾”または“修飾”は、本発明において、化学的な方法、例えば化学的な部分の付加あるいは除去、またはある化学的な部分の他の化学的な部分での置換による、リボヌクレオシドオリゴマーのすべての変更を含む。とりわけ、ヌクレオシド内結合における硫黄原子による非結合性酸素原子の置換および糖ユニットの2’−OH基への置換基の付加が、化学的な修飾との用語に含まれる。
【0022】
“RNA干渉”との用語は、本発明の技術分野で一般的な用語である。RNA干渉による標的遺伝子の下方制御の測定またはRNA干渉メカニズムを介した標的遺伝子の下方制御が起こるか否かの決定が可能なアッセイは、本発明の技術分野において既知であり、かかるアッセイは例えばCaplen et al,2001; Elbashir et al.,2001, D. Huesken et al,2003に記載されている。
【0023】
本発明者らは、ssRNAおよび直鎖状カチオンポリマーを用いて標的遺伝子の発現を下方制御することに成功した。これまでは、無修飾ssRNAはその高いヌクレアーゼ感受性のためにmRNAノックダウン剤として制限されていた。ssRNA安定化は通常化学的な修飾、例えば、ホスホロチオエート結合による全ホスホジエステル結合の置換(Agrawal et al.,1992, Wu et al.,1998)により、またはmRNAの分解を誘導するための2’−OMeウイング(wing)(8〜12の2’−修飾リボヌクレオチド)および5〜9ホスホロチオエート修飾最小ギャップ(Wu et al.,1998)を担持するキメラ化合物を用いることにより達成される。本発明者らは本発明においてカチオンポリマー、とりわけ直鎖状PEIを用いることにより、mRNAノックダウン剤としてホスホジエステルssRNAの使用が実行可能となるように、最小に修飾されたssRNAが効果的にトランスフェクトされ安定化され得ることを発見した。従って、かかるカチオントランスフェクション剤の使用が標的遺伝子の下方制御のためのssRNAの大規模な化学的修飾の必要を克服し、そして初めてホスホジエステルssRNAをこの目的のために適用可能とした。
【0024】
第1の局面として、本発明はssRNAおよびカチオンポリマーへ細胞を曝すことによる標的遺伝子の下方制御の方法を提供する。該カチオンポリペプチドは、これらに限られないが、ポリ−リシン、ポリ−アルギニン、ポリ−ヒスチジン、ポリラクチド並びに乳酸およびグリコール酸(P(LA−GA))のコ−ポリマー、ポリサッカライド(DEAE−デキストラン)が含まれる。とりわけ好ましい態様では該カチオンポリマーはポリエチレンイミン(PEI)であり、さらに好ましくは直鎖状PEIである。
本発明において使用されるPEIは好ましくは分子量100〜1,000,000ダルトン、さらに好ましくは500〜200,000ダルトンまたは1,000〜100,000の直鎖状PEIである。該PEIは、例えばポリエチレングリコール(PEG)のような親水性ポリマーによりさらに修飾され得る。様々なタイプのPEIが、例えばAldrichまたはBayerから市販されている。例えばFischer et al.1999に記載の、公知の好適なPEI剤の製造のための方法も存在する。
【0025】
ポリエチレンイミン(PEI)は、水性溶液中で十分にプロトン化されている場合には最も高い陽電子密度を示すエチレンイミンのカチオンポリマーである。3原子毎にプロトン化が可能なアミノ窒素である(Boussif,O.et al.,1995, Behr,J.P.,1997)。分枝PEIは異なった程度の分枝を有する一級、二級および三級アミノ基を含み、それにより、様々なpHでプロトン化ができ、それに対して直鎖状PEIは主に、またはもっぱら二級アミノ基を含む。直鎖状PEIは低分子量ポリマーであり、一般的に20000〜25000ダルトン近辺である。市販のPEIであるJetPEIの構造は:HO(CH−(CH−CH−NH)−(CH−OHである。
【0026】
従って、1つの態様において、本発明はPEI、とりわけ直鎖状PEI、および好ましくは無修飾、または最小限修飾されたssRNAの、標的遺伝子の下方制御のための使用を提供する。
【0027】
標的遺伝子の下方制御のために必要なssRNAの量は、経験的に決定され得、そして当業者の技術の範囲内である。カチオンポリマーの量は使用されるssRNAの量に依存する。PEIについて、例えば、PEIの全窒素原子の数とssRNAのリン酸基の数との比(N/P比)は、ssRNAの所定の量を効果的に送達するためのPEIの量を決定するための好適なパラメーターである。好ましい態様において、該N/P比は2〜10、さらに好ましくは3〜8である。とりわけ好ましい比は5である。好ましい比は、取り込み後のエンドソームから複合体の取り込みおよび放出を可能にするために、オリゴヌクレオチドを効果的に複合体化させるのに必要な直鎖状PEIの量(すなわち窒素原子の量)である。ssRNAのある濃度では、エンドソームからの効果的な放出を誘導しないが、効果的な取り込みを誘導するのに十分なPEIが存在し得る(とりわけ低いssRNA濃度において)。
【0028】
アンチセンス技術に有用なリボヌクレオチドおよびオリゴリボヌクレオチドの化学的な修飾の種類は、既知である(例えば:Freier S.M. and Altmann K.H.,1997参照)。とりわけ好ましい態様において、ssRNAは主に修飾されていないリボヌクレオチドからなるのに対し、本発明はまた、いくつかの化学的な修飾を含むssRNAの使用を提示する。本発明において、好ましい化学的に修飾されたssRNAは、2’−OH基、とりわけ2’−O−アルキル基の修飾を含む1〜10個、好ましくは1〜5個の合成リボヌクレオチドアナログ、または1〜10個、好ましくは1〜5個の合成デオキシリボヌクレオチド、または3’末端ヒドロキシル基における任意の修飾を含んでなる。より好ましい態様において、該修飾は2’−OMe、2’−O−MOEである。ホスホジエステルヌクレオシド内結合を含むssRNAが好ましいのに対し、限られた数のヌクレオシド内結合が化学的に修飾され得る。従って、他の本発明の好ましい態様において、該ssRNAは1〜10個、好ましくは1〜5個のホスホジエステル主鎖の修飾、例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ボラノホスホエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホロアニリデート、ホスホロアミデート、ペプチド等の結合を含んでなる。他の好ましい態様において、該修飾はssRNA分子の5’および/または3’末端に位置する。さらに他の好ましい本発明の態様において、該ssRNAは5’リン酸を含む。しかし、該ssRNAはさらなる、またはそれ以外の当業者に既知(Freier S.M. and Altmann K.H.,1997)の他の多くの修飾を含み得、修飾された残基の数はさらに好ましくは1〜5である。
【0029】
他の好ましい態様において、該ssRNAは1以上のデオキシリボヌクレオチドを含んでなる。1〜10個、好ましくは1〜5個のデオキシリボヌクレオチドの伸長が好ましく、おそらく、リボヌクレオチドの伸長により片側または両側の、好ましくは3’末端の側面に位置する。
【0030】
該ssRNAは、下方制御される所与の標的遺伝子に相補的な50未満のヌクレオチドおよび好ましくは15より多いヌクレオチドの領域を含んでなる。16、17、18、19、20、21、22、23、24または25ヌクレオチド長がより好ましい。とりわけ好ましい態様において、該ssRNAは所与の標的遺伝子と相補的な領域からなる。本発明の他の態様において、相補領域は1、2、3または4個のミスマッチを含む。
【0031】
カチオンポリマーにより、とりわけPEIによりトランスフェクトされ得るいずれの細胞も、本発明に使用できる。好ましい細胞は真核細胞、哺乳類の細胞、より好ましくはげっ歯類、およびとりわけ好ましくはヒトの細胞である。該細胞は様々な組織に由来し得、それらは内細胞塊、胚外外胚葉あるいは胚肝細胞、全能性もしくは多能性、分裂もしくは非分裂、柔もしくは上皮または不死化もしくは形質転換などを含むが、これらに限定するものではない。該細胞は幹細胞または分化した細胞であり得る。分化した細胞型は、限定するものではないが、脂肪細胞、繊維芽細胞、筋細胞、心筋細胞、内皮細胞、樹状細胞、神経細胞、グリア細胞、マスト細胞、血球および白血球(例えば、赤血球、巨核細胞、B、T、およびナチュラルキラー細胞のようなリンパ球、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球、血小板、顆粒球)、上皮細胞、ケラチン細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、肝細胞、および内分泌腺または外分泌腺細胞、並びに感覚細胞を含む。
【0032】
該ssRNAは、本発明の技術分野で十分に確立された化学的な方法により、または生物学的な方法、例えば細胞性RNAポリメラーゼあるいはバクテリオファージRNAポリメラーゼ(例えば、T3、T7、SP6)を用いたインビトロ転写により合成され得る。
【0033】
本明細書に開示の通り、本発明は標的遺伝子またはヌクレオチド配列のいずれの型にも制限されない。例えば、該標的遺伝子は細胞性遺伝子、内在性遺伝子、発がん遺伝子、導入遺伝子、または転写または非転写RNAを含むウイルス性遺伝子であり得る。可能性のある標的遺伝子の以下のクラスは、説明のみを目的として列記しており制限する意図はない:転写因子および発生遺伝子(例えば、接着分子、サイクリンキナーゼ阻害剤、Wntファミリーメンバー、Paxファミリーメンバー、Winged helixファミリーメンバー、Hoxファミリーメンバー、サイトカイン/リンホカインおよびそのレセプター、増殖/分化因子およびそのレセプター、神経伝達物質およびそのレセプター);発がん遺伝子(例えば、ABLI、BCLI、BCL2、BCL6、CBFA2、CBL、CSFIR、ERBA、ERBB、ERBB2、ETSI、ETV6、FGR、FOS、FYN、HCR、HRAS、JUN、KRAS、LCK、LYN、MDM2、MLL、MYB、MYC、MYCLI、MYCN、NRAS、PIMI、PML、RET、SKP2、SRC、TALI、TCL3、およびYES);腫瘍抑制遺伝子(例えば、APC、BRAI、BRCA2、CTMP、MADH4、MCC、NFI、NF2、RBI、TP53、およびWTI);並びに酵素(例えば、ACPデサチュラーゼおよびヒドロキシラーゼ、ADP−グルコースピロホリラーゼ、ATPアーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アミラーゼ、アミログルコシダーゼ、カタラーゼ、シクロオキシゲナーゼ、デカルボキシラーゼ、デクストリナーゼ、DNAおよびRNAポリメラーゼ、ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、GTPアーゼ、ヘリカーゼ、インテグラーゼ、インシュリナーゼ、インベルターゼ、イソメラーゼ、キナーゼ、ラクターゼ、リパーゼ、リポキシゲナーゼ、リソザイム、ペルオキシダーゼ、ホスファターゼ、ホスホリパーゼ、ホスホリラーゼ、プロテイナーゼおよびペプチダーゼ、リコンビナーゼ、逆転写酵素、テロメラーゼ並びにトポイソメラーゼ(RNAおよび/またはタンパク質成分を含む))。
【0034】
該ssRNAは好ましくは1つのシグナル遺伝子と相補的な領域を含んでなるが、1より多い遺伝子と相補的な1より多い領域も含み得る。異なる遺伝子と相補的な領域を含んでなる数種のssRNAに該細胞を曝す方法も考えられる。
【0035】
代謝経路の1以上の部分の酵素または病因に関連する遺伝子を阻害することで、効果は上昇し得る:各活性が影響し、そして該作用が多くの異なる標的成分により強まり得る。代謝はまた、経路におけるフィードバック制御阻害または望まない代謝副産物の生産阻害により操作され得る。
【0036】
該細胞をssRNAおよびPEIにインビトロまたはエクスビボで曝し、次いで動物に治療を行うために移植するかまたは、該ssRNAおよびPEIをインビボで直接投与できる。従って、遺伝子治療の方法は、典型的には標的遺伝子に特異的なssRNAをPEIの存在で細胞に導入することが考えられる。処置を必要とする任意の疾患または症状を引き起こすことが知られている標的遺伝子が使用され得る。例えば、腫瘍細胞はホーミングウイルス性ベクター、腫瘍特異的プロモーターを用いて、または腫瘍特異遺伝子(例えばテロメラーゼ)および発がん遺伝子を阻害するのに有効なssRNA分子をデザインすることにより標的化され得る。処置は疾患と関連する任意の症状または病理学と関連した臨床徴候の改善または回避を含み、そしてこれは予防治療を含み得る。さらに好ましい態様は所望の標的遺伝子を阻害するためにssRNAおよびPEIで処置したES細胞を対象に投与することに関する。
【0037】
任意の病原体に由来する遺伝子は阻害のために標的化され得る。例えば、該遺伝子は直接宿主の免疫抑制を引き起こし得、または病原体の複製、病原体の伝達または感染の維持に必須である。病原体に感染するおそれのある細胞またはすでに感染された細胞、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症、インフルエンザ感染症、マラリア、肝炎、マラリア、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス、並びに手足口病ウイルスに感染した細胞が本発明のRNA導入による処置のために標的化され得る。該標的遺伝子は、病原体またはその宿主への病原体の侵入、病原体または宿主による薬剤代謝、病原遺伝子の複製または組み込み、宿主における感染の確立または拡散、もしくは次世代病原体の集合をもたらす宿主遺伝子であり得る。予防法(すなわち感染の予防またはリスクの減少)、並びに感染に関連した症状の頻度または重篤度の減少法は、想定できる。
【0038】
本発明はまた、以前は知られていなかった機能の標的遺伝子の活性を阻害するためのssRNAおよびPEIの使用を含む、生体内の遺伝子機能の同定方法を提供する。伝統的遺伝子スクリーニングによる時間と労力がかかる変異体の単離に代わって、標的遺伝子活性の量を減少しおよび/またはタイミングを変えるための本発明の使用により、機能的ゲノムが未特定遺伝子の機能を決定することを考えられるだろう。本発明は、医薬の潜在的な標的を決定すること、発生に関連した正常および病理学上の事象を理解すること、生後の発育/加齢に関連したシグナル経路を決定することなどに使用することができる。ヒトゲノムを含むゲノムおよび発現された遺伝子源からのヌクレオチド配列情報獲得の増加している速度は、例えば哺乳類系、とりわけヒト細胞培養系における、遺伝子機能を決定するために、本発明と組み合わせ得る。推定されるオープンリーディングフレームは、当業者に自明なコンピューターを用いた調査技術を用いるデータベースを利用してヌクレオチド配列から決定し得る。
【0039】
従って、本発明の他の局面において、機能が割り当てられていない所望のDNA配列と相補的な、そして遺伝子発現を阻害するのに有効量であるPEIおよびssRNAに細胞を曝し、野生型と比較して哺乳類細胞の表現型を同定し、そして所望の核酸に表現型を割り当てる、DNA配列に機能を割り当てるための方法を提供する。
【0040】
単純なアッセイは、発現配列タグ(EST)から利用可能な部分配列にしたがった遺伝子発現の阻害である。成長、発生、代謝、疾患耐性または他の生物学的プロセスにおける機能的変異はEST遺伝子産物の正常な役割の指標である。データベーススクリーニングが既知の機能のタンパク質と相同の領域を発見したとき、その機能に基づいたより特異的な生化学的な試験を使用し、EST配列の機能(またはその阻害)について試験できる。
【0041】
ssRNAをPEIを用いて処置していない哺乳細胞に導入し得る容易さにより本発明は高スループットスクリーニング(HTS)に使用できる。例えば、ssRNAは化学的に合成され、またはインビトロ転写により製造し得る。
【0042】
標的遺伝子、例えば特異な発現遺伝子を阻害するのに十分量のPEIおよびssRNAを含む溶液を、規則正しい配列としてマイクロタイタープレート上に位置する個々のウェル中に入れ、そして各ウェルの未処理細胞は標的遺伝子活性の阻害に関して、またはプロテオミクス、ゲノミクスおよび標準的な分子生物技術により、挙動または発生における任意の変化または修飾に関してアッセイをし得る。かかるスクリーニングは哺乳類由来の組織培養にとりわけ影響を受けやすい。
【0043】
制御されたプロモーター(例えばレポーター遺伝子構成物でトランスフェクトした)に応答して比色分析的、蛍光発生性、または発光性シグナルを製造する細胞は、プロモーターを制御するDNA−結合タンパク質を同定するために高スループット形式でアッセイし得る。最も簡単なアッセイ形式において、負の制御の阻害によりシグナルが増加し、正の制御の阻害によりシグナルが減少する。
【0044】
本発明は本質的な遺伝子の阻害に有用であり得る。かかる遺伝子は特定の発生段階または細胞区画においてのみ細胞または組織の生存度のために要求され得る。条件変異株の機能的等価性は、それが生存度にとって必要でない時にまたは必要でない場所で標的遺伝子の活性を阻害することにより製造され得る。本発明は、標的遺伝子に永久変異を誘導することなく発生の特定の時および組織の場所でssRNAを加え得る。
【0045】
本発明はまた、カチオンポリマー、とりわけPEIをトランスフェクション試薬として用いて試験サンプルまたは対象に、ssRNAのインビトロ、エクスビボまたはインビボ導入を行うために必要な試薬の少なくとも1つ、または哺乳細胞における標的遺伝子の発現を阻害するためにそれを発現させるための構築物を含んでなるキットを提供する。該キットはssRNAおよびPEIを標的遺伝子を阻害するための有効量を含み、そのssRNAは標的遺伝子と相補的な領域を含む。かかるキットはまた、キットの使用者が本発明を実施できるように指示書を含み得る。
【0046】
本発明について説明の目的のみのために以下の実施例にさらに説明する。参照されているが本明細書および実施例には明確に記載されていない分子遺伝学、タンパク質およびペプチド生化学並びに免疫学的方法は科学文献で報告されておりそして当業者によく知られている。
【実施例】
【0047】
材料
JetPEI(登録商標)をPolyplus−Transfectionから購入した(カタログ番号101−10)。それは、7.5mM(窒素雰囲気下で輸送)の濃度にて送達される直鎖状ポリマーからなる。
【0048】
細胞株
組み換えラットP2Xを発現する安定にトランスフェクトしたチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO−K1)(ATCC CCL61、Rockville、MD)を、先に記載の通りに製造した(Dorn et al.2001)。細胞は10%(v/v)FBS、2mMグルタミンおよび10000IU/500mlペニシリン/ストレプトマイシンを補った最小必須培地(MEM−α)で5%CO加湿チャンバー内で培養した。
【0049】
オリゴヌクレオチド合成
siRNA実験のためにオリゴリボヌクレオチドをTOM−ホスホラミダイト化学を用いた上記工程(Xeragon)で合成し、RP−HPLCで精製した。純度はキャピラリーゲル電気泳動により評価した。260nMでの吸光係数によってUVによる定量を行った。
dsRNAのアニーリングは他に記載のように行った(Elbashir et. al.,2001)。
オリゴヌクレオチド配列を以下に列記する:
【表2】

略号:N=2’−H、n=2’−O−メトキシエチル、N=2’−OH、s=ホスホロチオエート。
【0050】
CHO−K1細胞のトランスフェクション
ポリプレックスをトランスフェクションの直前に調製した。トランスフェクションの18時間前に、4×10細胞を1ウェルあたり0.5mlのMEM−α(10%(v/v)FBS、2mMグルタミンおよび10000IU/500mlペニシリン/ストレプトマイシンを補った)の24ウェルプレートにまいた。トランスフェクションの前に、成長培地を細胞から取り除き、500μlのOptiMEMおよび100μlのPEI/オリゴヌクレオチド混合物と置き換えた。プレートを加湿5%COインキュベーター中で37℃にてインキュベートした。続いて、60μlのFBSを各ウェルに加え、さらに20時間インキュベートした。
【0051】
jetPEI(登録商標)でのトランスフェクション
PEI濃度は窒素原子モル濃度で表され、1μgのオリゴヌクレオチドは3nmolのリン酸アニオンを含む。オリゴヌクレオチド(ON)濃度に関する所望のN/P(PEIの全窒素原子とオリゴマーのリン酸基)比を得るための、ポリ核酸と混合する直鎖状PEIの容量は以下の式を用いて計算した:
【数1】

【0052】
siRNA二本鎖についても、これらの試薬を2本の別々の鎖とみなして、同じ式を使うことができる。
【0053】
24−ウェルプレート実験をトリプリケートで行うために(各ウェルの最終体積600μl)、所望の量の直鎖状PEIを150mM滅菌NaCl溶液で希釈して150μlとし、次いでゆっくりと撹拌した。分離エッペンドルフ管で、所望の量のオリゴヌクレオチドをNaCl溶液で希釈して150μlとし、次いでゆっくりと撹拌した。次いで150μlのPEI溶液を150μlの核酸溶液に一度に加え、すぐに15秒撹拌した。該PEI/オリゴヌクレオチド溶液を15〜30分室温にて放置し、次いで100μlの複合溶液を500μlの所望の培地を含む各ウェルに加えた。
【0054】
RNA回収および実時間定量PCRmRNA分析
全RNAを、RNeasy96キット(Qiagen、Chatsworth、CA)での製造業者のプロトコルに従ったオリゴヌクレオチドのトランスフェクションの24時間後に単離した。該RNAサンプルは純粋な鋳型mRNAの希釈から標準を行う場合には10ng/μlに、そしてmRNAの下方制御を未処置細胞に対する割合として示す場合には50ng/12μlにそれぞれ希釈する。次いでRNA(いずれの場合にも各サンプル50ng負荷)実時間定量的PCR反応キットのPLATINUM Quantitative RT−PCR THERMOSCRIPT One−step System(Invitrogen)からの試薬と、またはReverse Transcriptase Q−PCR mastermixキット(Eurogentec)からの試薬のいずれかと混合し、付属のプロトコルに従って行う。
【0055】
結果
下記実験は哺乳類細胞へのオリゴリボヌクレオチドの送達の担体としての直鎖状PEIの適用のための単純で普遍的なプロトコルを確立することを狙った。組み換えラットP2Xpurinoreceptor cDNA配列、並びに特徴付けられたP2Xアンチセンスインヒビター配列を安定にトランスフェクトされたにチャイニーズハムスター卵巣細胞株(CHO−K1)をsiRNAトランスフェクションのモデル系として選択した(Dorn et al.,2001)。
【0056】
直鎖状PEI介在摂取後の一本鎖RNA活性
mRNAのノックダウンに使用されるほとんどのアンチセンスはオリゴデオキシヌクレオチドであるか、またはRNAアーゼ(RNase)H活性を誘導するための2’−デオキシ窓(window)(キメラASO)を含むにもかかわらず、オリゴリボヌクレオチドはまた、mRNA調節の効果的な引き金であることが示された。内在性のアンチセンスRNA転写は、様々な組織において遺伝子発現を制御するために存在し、二本鎖エンドリボヌクレアーゼを活性化し、それが次いで標的mRNAを分解することが示された。細胞内で発現したアンチセンスRNA構築物は広く使われており、系に依存して、異なるレベルのRNAプロセッシング、例えば一次転写物のスプライシング、成熟mRNAの輸送または転写での遺伝子発現阻害を誘導することが示された(Pestka et al.,1992)。ヌクレアーゼに対するそれらの感受性のために、細胞外に適用された短い無修飾RNAは一般的に一貫してmRNAまたはタンパク質調節を誘導しない。ホスホロチオエートおよびウイングの2’−修飾(キメラRNA)のような化学修飾を通じた(Agrawal et al.,1992, Wu et al.,1998)、または相補的なセンス鎖とのハイブリダイゼーション(Martinez et al.2002,Schwarz et al.2002)のいずれかによる一本鎖RNAの安定化は、次いで活性なmRNAノックダウン剤をもたらした。
【0057】
直鎖状PEIが様々な種類の修飾ASO(およびとりわけ全ホスホジエステルMOEギャップマー、様々な脂質とトランスフェクトした場合には活性でない)並びに二本鎖RNA(dsRNA)をトランスフェクトできることを示すため、我々はさらにヌクレアーゼに対するその保護特性を評価した。P2XmRNAの阻害が、直鎖状PEIが適切に2つのMOE DNA修飾および1つの3’−末端におけるホスホロチオエート結合をトランスフェクトし、保護しそして送達し得ることが分かった。400nM(表1)または200nM(表2)のいずれであっても、アンチセンス一本鎖RNAは約50%の標的mRNAの阻害を示したが、一方センス一本鎖RNAは不活性であった。
【0058】
【表3】

表1:P2X3一本鎖(ss)アンチセンスRNA(8647)の直鎖状PEI介在トランスフェクションによるCHO−K1におけるP2X3mRNAの阻害(8646:一本鎖センスRNA;8548/8549:siRNA無関係対照)。
【表4】

表2:P2X3一本鎖(ss)アンチセンスRNA(8647)の直鎖状PEI介在トランスフェクションによるCHO−K1におけるP2X3mRNAの阻害(8646:一本鎖センスRNA)。
【0059】
文献
Agrawal S., Tang J.Y., Sun D., Sarin P.S. and Zamecnik P.C. (1992) Synthesis and anti-HIV activity of oligoribonucleotides and their phosphorothioate analogs. Annals of the New York academy of sciences 660, 2-10
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Boussif,O., Lezoualc'h,F., Zanta,M.A., Mergny,M.D., Scherman,D., Demeneix,B. and Behr,J.P. (1995) A versatile vector for gene and oligonucleotide transfer into cells in culture and in vivo: polyethylenimine. Proc. Natl. Acad. Sci. U S A 92, 7297-301
Caplen N. J., Parrish S., Imani F., Fire A., Morgan R. A., (2001) PNAS 98, 97429747
Dorn G., Abdel'al S., Natt F., Weiler J., Hall J., Meigel I., Mosbacher J. and Wishart W. (2001) Specific inhibition of the rat ligand-gated ion channel P2X3 function via methoxyethoxy-modified phosphorothioated antisense oligonucleotides. Antisense & Nucleic Acid Drug Development 11, 165-174.
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Fire A., Xu S., Montgomery M.K., Kostas S.A., Driver S.E. and Mello C.C. (1998) Potent and specific genetic interference by double-stranded RNA in Caenorhabditis elegans. Nature 391, 806-811
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Freier S.M. and Altmann K.H. (1997) The ups and downs of nucleic acid duplex stability: structure-stability studies on chemically-modified DNA:RNA duplexes. Nucl. Acids. Res. 25, 4429-4443
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Martinez J., Patkaniowska A., Urlaub H., Luhrmann R. and Tuschl T. (2002) Single-stranded antisense siRNAs guide target RNA cleavage in RNAi. Cell 110 (5), 563-574
Pestka S. (1992) Antisense RNA. History and perspective. Annals of the New York academy of sciences 660, 251-262
Schwarz D.S., Hutvagner G., Haley B. and Zamore P.D. (2002) Evidence that siRNAs Function as Guides, Not Primers, in the Drosophila and Human RNAi Pathways. Molecular Cell 10, 537-548
Thompson, J.D. (2002) Applications of antisense and siRNAs during preclinical drug development. Drug Discovery Today 7, 912-916.
Wu H., MacLeod A.R., Lima W.F. and Crooke S.T. (1998) Identification and Partial Purification of Human Double Strand RNase Activity. A novel terminating mechanism for oligoribonucleotide antisense drugs. J Biol Chem 273, 2532-2542.
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は400nMでのP2X3一本鎖の直鎖状PEI介在トランスフェクションによるP2X3mRNAの阻害を示す。
【図2】図2は200nMでのP2X3一本鎖の直鎖状PEI介在トランスフェクションによるP2X3mRNAの阻害を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的遺伝子の発現を減少させるための方法であって、一本鎖オリゴリボヌクレオチドおよびPEIに細胞を曝すことを含み、該一本鎖オリゴリボヌクレオチドが該標的遺伝子によりコードされるmRNAと相補的な50未満のリボヌクレオチド領域を含み、該標的遺伝子がRNA干渉により下方制御されるものである、方法。
【請求項2】
該領域が25未満のリボヌクレオチドである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該領域が19〜21のリボヌクレオチドである記載の方法。
【請求項4】
該一本鎖オリゴリボヌクレオチドが標的遺伝子と相補的な領域からなる、請求項1、2または3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
該細胞が真核細胞である請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
該細胞が哺乳類細胞である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
該PEIが直鎖状PEIである請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
N/P比が2〜10である請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
N/P比が3〜8である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
該一本鎖オリゴリボヌクレオチドが1、2、3、または4個のミスマッチを含んでおり、かつ、所望により2〜4のミスマッチが互いに隣り合う、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
該一本鎖オリゴリボヌクレオチドが1〜10個の化学的に修飾されたヌクレオチドを含む、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
該化学的な修飾が2’−O−MOE修飾である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
該化学的修飾が修飾されたヌクレオシド内結合である請求項11に記載の方法。
【請求項14】
該化学的修飾がホスホロチオエート結合である請求項11に記載の方法。
【請求項15】
該標的遺伝子がヒト遺伝子である請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
該標的遺伝子が病理学的条件で過剰発現している遺伝子である請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
該標的遺伝子が以下の群:発がん遺伝子、サイトカイン遺伝子、ウイルス性遺伝子、細菌性遺伝子、発現遺伝子、プリオン遺伝子から選択される請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
RNA干渉のための直鎖状PEIおよびssRNAの使用。
【請求項19】
標的遺伝子の発現を阻害するのに有効量のssRNAおよびPEIを含んでなるキットであって、該ssRNAが標的遺伝子と相補的な領域を含んでなりそしてRNA干渉メカニズムを介して該標的遺伝子を下方制御することができる、キット。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−517793(P2006−517793A)
【公表日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501691(P2006−501691)
【出願日】平成16年1月30日(2004.1.30)
【国際出願番号】PCT/EP2004/000897
【国際公開番号】WO2004/066989
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】