説明

スクリーニング装置

【課題】創薬や生命科学等におけるスクリーニングの反応検査等で使用する試薬(試料)の量を削減する。
【解決手段】ピペット14に、まずオイル31を吸引し、次に標的化合物41を吸引する。ピペット14から標的化合物41を吐出し、オイル31が満たされた容器16の底面に標的化合物41の液滴41aを配置する。次に、ピペット14の反応化合物42を吸引する。その反応化合物42を容器16内でピペット14から吐出して反応化合物42の液滴42aを形成し、その液滴42aを液滴41aに接触融合させる。この接触融合による液滴41aと液滴42aの反応の有無を観測系で分析し、反応のあった反応化合物42を薬品候補とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創薬や生命科学などの分野で使用されるスクリーニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
創薬においては、標的とする物質(タンパク質など)や細胞などと反応する化合物をしらみつぶしに探索するスクリーニングアッセイという作業を行う。
このスクリーニングアッセイでは、一般に、多孔プレートへの分注や微細経路により、反応を解析する。スクリーニングアッセイで使用する化合物や酵素などの試料(試薬)は一般に高価であり、探索する組み合わせ数も膨大であるため、スクリーニングアッセイでは非常に多額のコストがかかる。このため、スクリーニングアッセイのコスト削減のためには、1回の反応検査(1反応検査)当たりの試料の量を減らすことが重要となる。
【0003】
現在のスクリーニングシステムでは、1反応検査当たりの試料の容量が1〜100μl程度まで減少しているが、それでも、新規薬品の開発費用は膨大となっており、1反応検査当たりの容量の更なる微量化が求められている。
【0004】
1反応検査当たりの容量を微量化する手法として、マイクロアレイ化、微小液滴をアレイ状に整列する方法などが提案されている。例えば、微量スクリーニングを行う際に、微小液滴のハンドリングを容易にするために、基材の親水スポットに液滴を形成する方法が提案されている(特許文献1参照)。また、微小液滴を整列し、微生物のスクリーニングを行う装置及び方法が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−304666号公報
【特許文献2】特開2005−137288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被試験物質や細胞は、一般に、水などの揮発性溶媒の溶液や懸濁液である。このため、単に、容量を微量化するだけでは、溶媒の揮発による濃度変化が顕著になるだけで実用的でない。これを解決するためには、雰囲気を制御する装置や、溶媒を追加する装置などが必要となり、システムの装置構成が複雑となる。
【0006】
また、液滴の内圧は、界面張力に比例し、液滴の曲率半径に反比例する。これは、液滴の内圧がその曲率半径の大きさによって変化し、曲率半径が小さい微小液滴の内圧は非常に大きくなることを意味する。このため、微小液滴の体積を自在に制御することは難しい。
【0007】
本発明の目的は、1反応検査当たりに必要な試薬(試料)の容量を減少できるスクリーニング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のスクリーニング装置の第1態様は、液滴アレイ手段と融合手段を備える。
液滴アレイ手段は、第1の試薬と相溶しない液体中に、該第1の試薬の液滴アレイが形成されている。融合手段は、該液滴アレイ手段に配置されている第1の試薬の液滴に、第2の試薬の液滴を接触融合させる。第1の試薬は、例えば、タンパク質などの標的化合物であり、第2の試薬は、例えば、第1の試薬との反応の有無を検査する化合物(反応化合物)である。
【0009】
本発明のスクリーニング装置の第1態様によれば、第1の試薬と相溶しない液体中に形成されている第1の試薬の液滴を第2の試薬の液滴を接触融合することができる。このため、微量の第1の試薬と微量の第2の試薬を用いて、薬品候補物質となる第2の試薬を探索することなどが可能となる。
【0010】
本発明のスクリーニング装置の第2態様は、前記液滴アレイ手段と前記融合手段に加え、さらに、液滴アレイ形成手段を備える。
該液滴アレイ形成手段は、前記第1の試薬と相溶しない液体中で前記第1の試薬を吐出させて前記第1の試薬の液滴を形成し、該液滴を前記液滴アレイ手段上に配列させて前記第1の試薬の液滴アレイを形成する。
【0011】
本発明のスクリーニング装置の第2態様によれば、第1の試薬と相溶しない液体中に所定量の第1の試薬を吐出するだけで、該所定量の液滴を容易に形成することができる。したがって、精密な圧力制御を行わずとも、微量の液滴を形成できる。
【0012】
本発明のスクリーニング装置の第3態様は、上記第2態様において、前記液滴アレイ形成手段は、前記第1の試薬と相溶しない液体が充填された後、前記第1の試薬を吸引する吸引手段と、前記第1の試薬と相溶しない液体中で該吸引手段から前記第1の試薬を吐出させて、前記第1の試薬の液滴を形成させ、その液滴を前記液滴アレイ手段上に配置する液滴形成制御手段を備えるように構成される。
【0013】
前記吸引手段は、例えば、ピペットである。この場合、前記液滴形成制御手段は、例えば、前記ピペットの内圧を制御して、前記ピペットに第1の試薬と相溶しない液体と前記第1の試薬を吸引させ、前記ピペットから前記第1の試薬の吐出させることにより、前記第1の試薬の液滴を形成させるように構成される。
【0014】
本発明の第3態様のスクリーニング装置によれば、吸引手段に第1の試薬を吸引すると、吸引手段内には第1の試薬の層と該第1の試薬と相溶しない液体の層が積層されて収容される。したがって、第1の試薬と相溶しない液体中で吸引手段から第1の試薬を吐出する際、吸引手段から第1の試薬以外に第1の試薬と相溶しない液体が吐出されても問題はない。このため、吸引手段から第1の試薬を吐出させる際の圧力制御が、第2の態様よりも、より容易になる。
【0015】
本発明のスクリーニング装置の第4態様は、上記第3態様において、前記第1の試薬の層と、その層の上に設けれられた前記第1の試薬と相溶しない液体の層を収容する第1の収容手段を、さらに備える。そして、前記吸引手段は、前記第1の収容手段から前記第1の試薬を吸引する。
【0016】
前記第1の試薬と相溶しない液体は、例えば、前記吸引手段が前記第1の収容手段から前記第1の試薬を吸引する際、前記吸引手段の先端部分に付着する材料である。
本発明のスクリーニング装置の第4態様によれば、第一の収容手段から第1の試薬を吸引手段に吸引することができる。この場合、第1の試薬と相溶しない液体として、吸引手段に付着する材料を使用すれば、第1の試薬が吸引された吸引手段の先端部分を、第1の試薬と相溶しない液体で塞ぐことができる。このため、前記液滴アレイを作製するために、吸引手段により第1の試薬を運搬する際に、吸引手段内の第1の試薬から水分などの成分が揮発する速度を低下させることが可能となる。
【0017】
本発明のスクリーニング装置の第5態様は、上記第1態様において、前記融合手段を、前記第1の試薬と相溶しない液体が充填された後、前記第2の試薬を吸引する吸引手段と、該吸引手段から前記第2の試薬を吐出させて、前記第2の試薬の液滴を、前記液滴アレイ手段上に配置された前記第1の試薬の液滴に接触融合させる融合制御手段を備えるように構成する。
【0018】
本発明のスクリーニング装置の第5態様によれば、上記第3態様と同様の作用により、微量な第2の試薬の液滴を、精密な圧力制御を必要とせずに形成できる。また、第1の試薬と第2の試薬を共に微量に用いて、それらの反応の有無を試験することができる。
【0019】
本発明のスクリーニング装置の第6態様は、前記第2の試薬の層と、その層の上に設けれられた前記第2の試薬と相溶しない液体の層を収容する第2の収容手段を、さらに備える。そして、前記吸引手段は、前記第2の収容手段から前記第2の試薬を吸引する。
【0020】
前記第2の試薬と相溶しない液体は、前記吸引手段が前記第2の収容手段から前記第2の試薬を吸引する際、前記吸引手段の先端部分に付着する材料である。
本発明の第6態様によれば、第2の試薬を、第1の試薬と接触融合させるために、吸引手段により運搬する際、上記第4態様と同様の作用により、第2の試薬の成分が揮発する速度を低下させることができる。
【0021】
本発明のスクリーニング装置の第7態様は、上記第1態様において、前記液滴アレイ手段は、前記第1の試薬と相溶しない液体が前記第1の試薬の液滴から吸収する成分を、前記第1の試薬と相溶しない液体に補充する補充手段を備えるように構成される。
【0022】
本発明のスクリーニング装置の第7態様によれば、第1の試薬と相溶しない液体の中に形成された液滴アレイ内の第1の試薬の液滴の成分が、第1の試薬と相溶しない液体に吸収される速度を緩和することができ、液滴アレイ内の第1の試薬の液滴の体積が縮小する速度を低下させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、スクリーニングを行う際に、1反応検査当たりに必要な試薬(試料)の容量を従来よりも大幅に削減できる。このため、スクリーニングに要するコストの低減、スクリーニングにおける反応時間の短縮などが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
[原理]
まず、本発明の実施形態の原理について説明する。
本実施形態では、オイル中に形成された試薬1の液滴に試薬2の液滴を接触融合させ、それらが反応するかを調べることにより、薬品候補物質となる試薬2を探索するスクリーニングを行う。このスクリーニングは、以下の手順で行われる。
【0025】
(1)容器にオイルを満たし、その容器の底面に試薬1の液滴アレイを形成する。
この液滴アレイの形成には、予めオイルを充填したピペットを使用する。具体的には、オイルが充填されたピペットに試薬1を吸引し、容器のオイル中でピペットから試薬1を吐出することでピペットの先端に試薬1の液滴を形成する。そして、この液滴を容器の底面に配置する。この一連の操作を繰り返すことで、容器の底面に試薬1の液滴アレイを作製する。試薬1の液滴形成をより詳細に説明すると、まず、ピペットに試薬1を負圧や毛管(毛細管)上昇で所定量(1fl〜1nl)だけ吸引する。そして、このピペット内の試薬1を容器のオイル中で吐出する。試薬1とオイルは互いに溶解しない(相溶しない)ので、試薬1をオイル中で吐出すると、前記所定量の試薬1の液滴が形成される。この場合、液滴は界面張力により球状になる。また、ピペット内には試薬1の上層にオイルが充
填されているので、ピペットから試薬1を吐出する際にオイルが吐出されても、このオイルは容器内のオイルと同じ材料なので問題はない。このようにして、精密な圧力制御を行わずに、微量(1fl〜1nl)の試薬1の液滴を形成することができる。そして、この試薬1の液滴を容器底面に配置することで、試薬1の液滴アレイを作製できる。尚、ピペットに所定量の試薬を吸引する際、ピペットに試薬1を所定量よりも多く吸引した場合、正圧で試薬1をピペットから吐出して、ピペット内の試薬1の量を所定量に調節するようにしてもよい。
【0026】
(2)次に、オイルが充填されたピペットに、試薬1と同様な方法で、所定量(1fl〜1nl)の試薬2を入れる。そして、その試薬2を、前記液滴アレイが底面に形成されている容器のオイル中でピペットから吐出させ、前記所定量の試薬2の液滴を形成する。この液滴も、界面張力により球状になる。試薬2の液滴形成も、上述した理由により、精密な圧力制御を必要とせずに微量(1fl〜1nl)の体積に形成できる。そして、その試薬2の液滴を、液滴アレイ内の試薬1の液滴に接触させる。試薬1と試薬2は共に溶液なので、それらは簡単に融合する。このようにして、試薬1の液滴と試薬2の液滴を接触融合させ、その反応の有無を解析することで、薬の候補となる試薬2を探索する。
【0027】
このようにして、微量(1fl〜1nl)の試薬1と試薬2を用いて、それらの反応の有無を調べ、薬品候補物質となる試薬2を探索することができる。
ところで、通常、液体同士が完全に相溶しないことはない。例えば、水はオイルに数100ppm以下の割合で吸収される。このため、オイル中の水溶液の液滴は、常温常湿下で、10〜1000fl/sの速さで縮小する。この場合、試薬1の液滴の周囲に試薬1の溶液の溶媒を保持することで、試薬1の液滴の縮小速度を低下させることができる。また、予め、水分の吸収が平衡したオイルを用いても、同様の効果が得られる。この場合、水とオイルを攪拌させる、あるいは、オイルをスクリーニング作業環境下に放置させることで、吸湿が平衡した状態になってから、オイルをスクリーニング作業に用いる。
【0028】
[システム構成]
図1は、本発明のスクリーニング装置の一実施形態のシステム構成を示す図である。
図1に示すスクリーニング装置10は、制御システム11、圧力コントローラ12、XYZステージ13、ピペット14、第1のXYステージ15、容器16、第2のXYステージ17、試薬1のライブラリ18、試薬2のライブラリ19及び観測システム20を備えている。
【0029】
制御システム11は、コンピュータなどから構成されており、圧力コントローラ12、XYZステージ13、第一のXYステージ15、第2のXYステージ17及び観測システム20を制御しながら、システム全体を制御する。
【0030】
圧力コントローラ12は、制御システム11の制御を受けてピペット14の内圧を制御し、ピペット14に試薬1及び試薬2の吸引、吐出の操作を実行させる。XYZステージ13は、装着されているピペット14をX軸、Y軸及びZ軸の3方向に移動させるための装置であり、その移動の制御は制御システム11によって行われる。尚、図1では、ピペット14、XYZステージ13に斜め方向に装着されているが、これは一例であり、垂直方向(鉛直方向)に装着するようにしてもよい。ピペット14は、試薬1や試薬2を吸引、吐出したり、試薬1と試薬2を接触融合させるためなどに使用される器具である。ピペット14は、例えば、長さが4mm〜5mm、外径が1mm、内径が0.5mmである。また、その先端部分に設けられた穴の径は1μm〜50μmである。第1のXYステージ15は、制御システム11の制御を受けて、その上面(ステージ面)に搭載された容器16をX軸及びY軸方向に移動させるための装置である。容器16は、オイル31を収納する容器である。容器16の素材は、例えば、プラスチックやガラスなどである。第2のXYステージ17は、制御システム11の制御を受けて、その上面(ステージ面)に搭載された試薬1のライブラリ18の各容器18aと試薬2のライブラリ19の各容器19aをX軸及びY軸方向に移動させるための装置である。
【0031】
試薬1のライブラリ18は、複数種類の試薬1のライブラリであり、各種の試薬1を個別に収納する容器18aを複数備えている。試薬1は、タンパク質などの標的化合物である。試薬2のライブラリ19は、複数種類の試薬2のライブラリであり、各種の試薬2を個別に収納する容器19aを複数備えている。試薬2は、試薬1との反応を調べる化合物(薬品候補物質)である。尚、図1では、容器18a及び容器19aを3個しか示していないが、これはあくまでも例示であり、容器18aと容器19aの個数は、システムに応じて任意に決定される。後述するように、容器18a内には、下層に試薬1の層が、その上層にオイルの層が収容される。また、容器19a内には、下層に試薬2の層が、その上層にオイルの層が収容される。
【0032】
観測システム20は、光源、顕微鏡、カメラなどを備え、試薬1の液滴と試薬2の液滴が接触融合した際の状態変化を撮影する。そして、その撮影画像を制御システム11に送信する。制御システム11は、観測システム20から受信する画像を解析し、その試薬1と試薬2の状態変化を基に、試薬1と試薬2の反応結果(反応の有無)などをディスプレイ11aのモニタ画面上に表示する。試薬1と試薬2の反応の有無は、例えば、蛍光の有無などにより判定される。
【0033】
図2は、制御システム11が圧力コントローラ12に加えるピペット14の内圧制御用の信号波形を示す図である。図2のグラフは、横軸が時間、縦軸が圧力となっている。制御システム11は、図2に示すようなパルス波形の信号を圧力コントローラ12に出力することで、ピペット14の内圧を制御する。
【0034】
[スクリーニングの手順]
図3は、本実施形態のスクリーニング装置10を用いたスクリーニング手法の基本手順を示す図である。図3を参照しながら、本実施形態のスクリーニング手法の基本手順を説明する。尚、図3では、ピペット14を垂直方向に立てて容器16に入れるようにしているが、図1に示すように、ピペット14を斜めに傾けて容器16に入れるようにしてもよい。これは、以後に説明する図面についても同様である。
【0035】
(1)第1のXYステージ15(不図示)上に置かれた容器16にオイル31を満たす。オイル31は、例えば、シリコンオイル、パラフィンオイルなどの自発光しないオイルである。
(2)第2のXYステージ17上に、試薬1のライブラリ18と試薬2のライブラリ19をセットする。この例では、試薬1は標的化合物(タンパク質)であり、試薬2は反応化合物(薬品候補物質)である。
(3)圧力コントローラ12によりピペット14の内圧を制御して、ピペット14に容器16内のオイル31を吸引する。
(4)圧力コントローラ12によりピペット14の内圧を制御して、オイル31が充填されているピペット14に容器18a内の標的化合物41(試薬1)を吸引する。
(5)圧力コントローラ12によりピペット14の内圧を制御して、ピペット14から標的化合物41を吐出させ、内部がオイル31で満たされた容器16の底面に、ピペット14内に吸引されている標的化合物41の液滴41aを並べ、液滴アレイを形成する。ここでの作業は、上記(3)と(4)の操作を液滴アレイに配置される液滴41aの個数だけ繰り返すことにより行われる。
(6)圧力コントローラ12によりピペット14の内圧を制御して、オイルが充填されているピペット14に容器19a内の反応化合物42(試薬2)を吸引する。
(7)圧力コントローラ12によりピペット14の内圧を制御して、ピペット14から反応化合物42を吐出させ、反応化合物42の液滴42aを形成する。
(8)XYZステージ13によりピペット14を移動させて、上記反応化合物42の液滴42aを、容器16の底面に配置されている標的化合物41の液滴41aと接触融合させる。ここでは、この接触融合した液滴41aを液滴51で示す。
(9)観測系(観測システム20と制御システム11)により、液滴51の反応の有無を分析する。
(10)上記分析の結果を基に、反応のあった液滴51(化合物)を薬品候補とする。
上記(8)〜(10)の操作は、反応化合物42の個数と同じ回数だけ行われ、全ての反応化合物42について反応の有無を調べる。そして、反応があった反応化合物42を薬品候補物質とする。
【0036】
このように、本実施形態のスクリーニング装置10は、上記(1)〜(10)の手順により、試薬1と試薬2の複数の組み合わせについて反応の有無を調べ、薬品候補物質となる反応化合物42(試薬2)を探索する。
【0037】
[スクリーニング装置の自動化]
本実施形態のスクリーニング装置10において、薬品候補物質の探索は自動化されている。この自動化は、制御システム11の制御によって行われる。
【0038】
図4は、制御システム11のシステム全体の制御処理を示すフローチャートである。図4を参照しながら、制御システム11の処理を説明する。
XYZステージ13を移動させ、ピペット14をオイル31の満たされた容器16に入れる(S1)。圧力コントローラ12を制御して、容器16内のオイル31をピペット14に吸引させる(S2)。試薬1のライブラリ18を搭載している第1のXYステージ15を、ピペット14の近傍に移動させる(S3)。XYZステージ13を移動させ、ピペット14を試薬1の容器18aに入れる(S4)。圧力コントローラ12を制御して、容器18a内の試薬1をピペット14に吸引させる(S5)。
【0039】
XYZステージ13を移動させ、ピペット14の先端を容器18aの底面近傍まで入れる(S6)。この場合、容器18a内はオイル31で満たされているので、ピペット14の先端はオイル31内に入ることになる。
【0040】
次に、圧力コントローラ12を制御して、ピペット14の先端から試薬1を吐出させる(S7)。この場合、ピペット14の先端に試薬1の液滴が形成され、その液滴が容器16の底面に配置される。
【0041】
続いて、容器16の底面に所定数の液滴(試薬1の液滴)を形成したか否かを判断する(S8)。そして、該液滴の個数が所定数に達していなければステップS4に戻る。
今度のステップS4においては、XYZステージ13を移動させ、ピペット14を、次に吸引する試薬1が入っている容器18aの近傍へ移動させる。そして、以後、上述したステップS5〜S7の処理を行う。
【0042】
このようにして、容器16の底面に所定数の液滴(試薬1の液滴)形成されるまで、ステップS4〜S7の処理を繰り返す。以上の処理により、容器16の底面には、所定数の液滴(試薬1の液滴)が配置された液滴アレイが形成される。
【0043】
そして、ステップS8において、容器16の底面に所定の液滴(試薬1の液滴)が形成されたと判断すると、ステップS9に移行する。
ステップS1でピペット14が吸引したオイル31の量は充分な量なので、ステップS9に移行した時点では、ピペット14内にはオイル31がまだ充分残っている。
【0044】
ステップS9においては、試薬2のライブラリ19を搭載している第2のXYステージ17を、ピペット14の近傍に移動させる。次に、XYZステージ13を移動させ、ピペット14を試薬2が収容されている容器19aに入れる(S10)。圧力コントローラ12を制御して、ピペット14に、容器19a内の試薬2を吸引させる(S11)。
【0045】
XYZステージ13を移動させ、ピペット14の先端を容器16に入れる(S12)。この場合、ピペット14の先端が、容器16の底面に形成された試薬1の液滴の近傍に位置するようにする。
【0046】
圧力コントローラ12を制御して、ピペット14の先端から試薬2を吐出させ、ピペット14の先端に試薬2の液滴を形成させる(S13)。XYZステージ13を移動させ、ピペット14の先端に形成されている試薬2の液滴を、容器16の底面に配置されている試薬1の液滴に接触融合させる(S14)。
【0047】
上記接触融合の結果を観測システム20に撮影させ、その撮影画像を制御システム11に送信させる。制御システム11は、受信する画像を基に、試薬1と試薬2の反応の有無を判断する(S15)。
【0048】
次に、試薬1の液滴と試薬2の液滴の融合(接触融合)を所定回数繰り返したか否かを判断し(S16)、まだ所定回数に達していなければステップS10に戻る。
今度のステップS10においては、ピペット14が、次に融合を試みる試薬2が入っている容器19aの中に入るように、XYZステージ13を移動させる。そして、以後、上述したステップS12〜S15の処理を行う。
【0049】
このようにして、試薬1の液滴と試薬2の液滴の接触融合を、複数の組み合わせで所定回数実施させ、各組み合わせによる接触融合での反応の有無を調べる。そして、ステップS16において、上記接触融合の回数が所定回数に達したと判断すると、本フローチャートの処理を終了する。
【0050】
以上のようにして、本実施形態のスクリーニング装置10は、試薬1のライブラリ18の各反応化合物42(試薬2)と試薬2のライブラリ19の各標的化合物41(試薬1)を融合させる処理、及びその融合による反応の有無を調べ、薬品候補物質となる試薬1を探索する処理を自動化している。
【0051】
[試薬1の液滴形成]
図5は、図2の工程(3)〜(5)の詳細を示す図である。図5を参照しながら、容器16の底面に、試薬1の液滴アレイを作製する方法を説明する。尚、図5は、ピペット14にオイル31を充填させた後の操作を示している。また、ピペット14は、XYZステージ13に垂直方向に装着されるものとしている。
【0052】
(1)XYZステージ13により、オイル31が充填されたピペット14を第2のXYステージ17の上方の位置に移動させる。
(2)第2のXYステージ17により、試薬1のライブラリ18を、ピペット14の近傍に移動させる。このとき、目的の試薬1が入っている容器18aがピペット14の下方に位置するようにする。
(3)XYZステージ13により、ピペット14を容器18a内に下降させる。そして、圧力コントローラ12により、ピペット14に容器18a内の試薬1を吸引させる。
(4)XYZステージ13により、ピペット14を容器16の上方に移動させる。
(5)XYZステージ13により、ピペット14を容器16の底面に近づける。そして、圧力コントローラ12により、ピペット14から試薬1を吐出させ、ピペット14の先端に試薬1の液滴41aを形成させる。そして、その液滴41aを容器16の底面に並べる
。この液滴41aの体積は、1fl(フェムトリットル)〜1nl(ナノリットル)である。
(6)上記(3)〜(5)の操作を所定回数繰り返し、容器16の底面に試薬1の液滴41aを配列させ、試薬1の液滴アレイを形成する。
【0053】
[試薬1と試薬2の融合]
図6は、図2の工程(6)〜(8)の詳細を示す図である。図6を参照しながら、容器16内で、試薬1と試薬2を接触融合させる方法を説明する。
【0054】
(1)XYZステージ13により、オイル31(不図示)の入ったピペット14を、第2のXYステージ17の上方の位置に移動させる。
(2)第2のXYステージ17により、試薬2のライブラリ19を、ピペット14の近傍に移動させる。このとき、目的の試薬2が入っている容器19aがピペット14の下方に位置するようにする。
(3)XYZステージ13により、ピペット14を容器19a内に下降させる。そして、圧力コントローラ12により、ピペット14に容器19a内の試薬2を吸引させる。
(4)XYZステージ13により、ピペット14を容器16の上方に移動させる。
(5)XYZステージ13により、ピペット14を容器16の底面に近づける。そして、圧力コントローラ12により、ピペット14から試薬2を吐出させ、ピペット14の先端に試薬2の液滴を形成させる。この液滴42aの体積は、1fl(フェムトリットル)〜1nl(ナノリットル)である。続いて、XYZステージ13により、ピペット14を下降させ、ピペット14の先端に形成されてい液滴42aを、容器16の底面に配置されている1個の試薬1の液滴41aに接触融合させる。
(6)上記(3)〜(5)の操作を所定回数繰り返し、試薬1の液滴41aと試薬2の液滴42aの接触融合を複数種類の組み合わせで行う。
【0055】
[容器16内での液滴アレイの形成・配置]
次に、容器16の底面に形成する試薬1の液滴アレイの構成の各実施例について説明する。
【0056】
{実施例1}
図7は、容器16の底面に形成する試薬1の液滴アレイの第1の実施例を示す図である。図7(a)、(b)は、それぞれ、容器16の上面図と側面図である。
【0057】
図7(a)に示すように、容器16の底面16aには、試薬1の液滴41aがほぼ等間隔で格子状に配置される。容器16の素材は、例えば、プラスチックやガラスなどであり、通常は完全に疎水性ではない。このため、試薬1の液滴41aは、容器16の底面16aに接触させるだけで、底面16aに固定される。容器16に満たされるオイル31の層の厚さは、例えば、500μm〜5mmである。
【0058】
{実施例2}
図8は、容器16の底面に形成する試薬1の液滴アレイの第2の実施例を示す図である。図8(a)、(b)は、それぞれ、容器16の上面図と側面図である。また、図8(c)は、容器16の底面に形成される試薬1の液滴の形状を示す図である。
【0059】
本実施例では、図8(b)に示すように、容器16の底面16aに親水処理を施す、具体的には、容器16の底面16a全体をオイル31よりも親水性の高い素材(コーティング材)61でコーティングする。このように、容器16の底面全体を親水性の高い素材61でコーティングすることにより、容器16の材質が疎水性の場合であっても、容器16の底面16aに試薬1の液滴41aを安定して形成することができる。
【0060】
図8(c)は、図8(b)の破線で囲まれた部分の拡大図であり、素材61上に形成された隣接する2個の液滴41aの形状を示す。液滴41aは素材61に濡れやすいので、ほぼ半球の形状となる。
【0061】
{実施例3}
図9は、容器16の底面に形成する試薬1の液滴アレイの第3の実施例を示す図である。図9(a)、(b)は、それぞれ、容器16の上面図と側面図である。また、図9(c)は、容器16の底面に形成される試薬1の液滴の形状を示す図である。
【0062】
本実施例では、図9(a)に示すように、容器16の底面16aを部分的に親水化する。この親水化は、図9(a)、(c)に示すように、試薬1の液滴41aを形成する位置に親水化処理を施すことにより行う。この親水化処理は、図9(a)に示すように、容器16の底面16a上の液滴41aを形成しようとする位置に、予め、親水性領域71をスポット状に配置することにより行う。図9(a)及び図9(b)の破線部分の拡大図である図9(c)に示すように、この親水性領域71の形状は、液滴41aの球の中心の断面よりも小さな円にする。液滴41aは、親水性領域71上に表面張力によって保持されるので、液滴41aの形状は、図9(c)に示すように、親水性領域71に接する底面部分のみが平坦なほぼ球に近い形になる。
【0063】
上記実施例2、3で使用するコーティングの材料(素材61及び親水性領域71の形成に使用する材料)としては、例えば、ヘキサメチルジシラザンを用いる。
【0064】
[ピペット14による試薬の吸引方法の詳細]
図10は、ピペット14による試薬(試薬1、試薬2)の吸引方法を示す図である。図10は、試薬1の吸引方法を示している。試薬2も、試薬1と同様な方法で吸引する。
【0065】
(1)図10(a)に示すように、オイル31が充填されたピペット14を、試薬1が入った容器18aの上方に移動させる。容器18a内には、試薬1の層とオイル31の層が形成されており、下層が試薬1の層、上層がオイル31の層となっている。オイル31の層は、試薬1の層よりも薄くなっている。
(2)図10(b)に示すように、ピペット14を、容器18a内に、その先端部分が試薬1の層の内部に到達する位置まで下降させる。そして、ピペット14内に試薬1を吸引する。
(3)図10(c)に示すように、ピペット14をオイル31の層の上方近傍まで引き上げる。この過程で、ピペット14の先端部分にオイル31が付着する。これは、オイル31が粘着性を有するからである。
(4)ピペット14をさらに引き上げ、その先端部分をオイル31の層から引き離す。このとき、ピペット14の先端部分は前記付着したオイル31により塞がれる。このように、ピペット14の先端部分がオイル31によって塞がれることで、ピペット14により試薬1を容器16の上方まで運搬する間、試薬1の揮発速度が低下する。
【0066】
[反応化合物の供給方法]
次に、反応化合物42である試薬2を標的化合物41である試薬1と接触融合させる方法を、図11を参照しながらについて説明する。
【0067】
まず、図11(a)に示すように、ピペット14の先端部分を、オイル31で満たされた容器16の底面16aに形成された試薬1の液滴41aの近傍まで接近させる。そして、その位置でピペット14の先端部分から試薬2を吐出させて、ピペット14の先端部分に試薬2の液滴42aを形成する。
【0068】
次に、図11(b)に示すように、ピペット14を試薬1の液滴41aにさらに近づけ、ピペット14の先端に形成されている試薬2の液滴42aを液滴41aに接触させ、液滴42aを液滴41aに融合させる。この結果、図11(c)に示すように、液滴42aが液滴41a内に拡散し、試薬2が標的化合物である場合には、液滴42aと液滴41aが反応する。この試薬1の液滴41aと試薬2の液滴42aの反応は、例えば、蛍光強度のクエンチング現象により検出できる。この場合、例えば、クエンチングにより、蛍光強度の現象が減少する。この現象は観測システム20のカメラで撮影され、その撮影画像が観測システム20から制御システム11に送信される。観測システム20は、受信した撮影画像を画像処理し、試薬1の液滴41aと試薬2の液滴42aの反応の有無を検出する。
【0069】
ところで、ピペット14の管内部に疎水コーティングを施すようにしてもよい。この場合、コーティングの材料としては、例えば、ヘキサメチルジラサンを用いる。ピペット14は、ガラス素材であり、ガラスは親水性のため、ピペット14から試薬1や試薬2を吐出する際、それらの試薬がピペットに付着して、液滴形成ができにくい場合がある。このため、ピペット14の管内部に疎水コーティングを施すことにより、液滴(試薬1の液滴41a、試薬2の液滴42a)の形成をスムーズに行うことができるようになる。
【0070】
[液滴アレイを形成する容器16の構成]
オイルにはppmレベルの吸湿性があるため、オイル31中に配置される試薬1の液滴41aは、常温常湿の環境の下で、10〜100fl/sの速度で縮小する。このため、何らかの対策を施さないと、容器16内に形成した液滴アレイ中の試薬1の液滴41aは時間の経過と共に縮小していく。
このための対策として、2つの実施例を提案する。
【0071】
{実施例1}
第1の実施例は、試薬1の液滴アレイの周囲に溝を設け、その溝に水を保持する構成である。このような構成にすることで、オイル31への水の吸収は、試薬1の液滴41aからだけでなく、周囲の水からも行われることになる。この結果、オイル31による試薬1の液滴41aからの吸水速度が緩和される。この場合、予め、溝に水を注入してから、容器16内にオイル31を注入するようにしてもよいし、注入順序を逆にしてもよい。
図12は、オイル31による試薬1の液滴41aの水分吸収を緩和させる容器16の構成の第1の実施例を示す図である。図12(a)、(b)は、それぞれ、容器16の上面図、側面図である。
【0072】
本実施例では、図12(a)、(b)に示すように、試薬1の液滴アレイの周囲に略矩形状の溝101を設ける。この構成では、オイル31の周囲が溝101に入っている水103で囲まれる構造となり、オイル31は溝101内部の水103から水分を吸収するようになる。
【0073】
{実施例2}
第2の実施例は、試薬1の液滴アレイの周囲に、試薬1の溶媒の液滴105を配置する構成である。
【0074】
図13は、オイル31による試薬1の液滴41aの水分吸収を緩和させる容器16の構成の第2の実施例を示す図である。図13(a)、(b)は、それぞれ、容器16の上面図、側面図である。
【0075】
本実施例では、図13(a)、(b)に示すように、試薬1の液滴41aの周囲に、試薬1の溶媒の液滴105(以下、便宜上、液滴105と簡略化して記載する)を形成する。本例の場合には、液滴41aの液滴アレイを取り囲むように、その液滴アレイの周囲に複数の液滴105を、液滴41aの配置ピッチと同間隔で配置している。液滴105は、例えば、上述した試薬1や試薬2の液滴を形成する方法と同様な方法で形成する。本実施例の場合、オイル31は、液滴105から水分を吸収するようになるので、試薬1の液滴41aの水分濃度の低下速度が緩和される。
【0076】
ところで、本実施形態では、試薬1の液滴アレイを配置したりする液体としてオイル31を用いるようにしているが、本発明はこれに限定されるものではない。オイル以外の、試薬の溶液と相溶(互いに溶融)しない液体を使用することも可能である。
また、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々に変形して実施することができる。
(付記1)
第1の試薬と相溶しない液体中に、該第1の試薬の液滴アレイが形成された液滴アレイ手段と、
該液滴アレイ手段に配置されている第1の試薬の液滴に第2の試薬の液滴を接触融合させる融合手段と、
を備えることを特徴とするスクリーニング装置。
(付記2)
前記第1の試薬と相溶しない液体中で前記第1の試薬を吐出させて前記第1の液滴を形成し、該液滴を前記液滴アレイ手段上に配列させて前記第1の試薬の液滴アレイを形成する液滴アレイ形成手段を、
さらに備えることを特徴とする付記1記載のスクリーニング装置。
(付記3)
前記液滴アレイ形成手段は、
前記第1の試薬と相溶しない液体が充填された後、前記第1の試薬を吸引する吸引手段と、
前記第1の試薬と相溶しない液体中で該吸引手段から前記第1の試薬を吐出させて、前記第1の試薬の液滴を形成させ、その液滴を前記液滴アレイ手段上に配置する液滴形成制御手段を、
備えることを特徴とする付記2記載のスクリーニング装置。
(付記4)
前記吸引手段はピペットであり、
前記液滴形成制御手段は、前記ピペットの内圧を制御して、前記ピペットに第1の試薬と相溶しない液体と前記第1の試薬を吸引させ、前記ピペットから前記第1の試薬の吐出させることにより、前記第1の試薬の液滴を形成させることを特徴とする付記3記載のスクリーニング装置。
(付記5)
前記第1の試薬の層と、その層の上に設けれられた前記第1の試薬と相溶しない液体の層を収容する第1の収容手段を、さらに備え、
前記吸引手段は、前記第1の収容手段から前記第1の試薬を吸引することを特徴とする付記3記載のスクリーニング装置。
(付記6)
前記第1の試薬と相溶しない液体は、前記吸引手段が前記第1の収容手段から前記第1の試薬を吸引する際、前記吸引手段の先端部分に付着する材料であることを特徴とする付記5記載のスクリーニング装置。
(付記7)
前記融合手段は、
前記第1の試薬と相溶しない液体が充填された後、前記第2の試薬を吸引する吸引手段と、
該吸引手段から前記第2の試薬を吐出させて、前記第2の試薬の液滴を、前記液滴アレイ手段上に配置された前記第1の試薬の液滴に接触融合させる融合制御手段を、
備えることを特徴とする付記1記載のスクリーニング装置。
(付記8)
前記第2の試薬の層と、その層の上に設けれられた前記第2の試薬と相溶しない液体の層を収容する第2の収容手段を、さらに備え、
前記吸引手段は、前記第2の収容手段から前記第2の試薬を吸引することを特徴とする付記7記載のスクリーニング装置。
(付記9)
前記第2の試薬と相溶しない液体は、前記吸引手段が前記第2の収容手段から前記第2の試薬を吸引する際、前記吸引手段の先端部分に付着する材料であることを特徴とする付記8記載のスクリーニング装置。
(付記10)
前記第1の試薬と相溶しない液体と前記第2の試薬と相溶しない液体は、同じ液体であることを特徴とする付記8または9記載のスクリーニング装置。
(付記11)
前記液滴アレイ手段は、前記第1の試薬と相溶しない液体が前記第1の試薬の液滴から吸収する成分を、前記第1の試薬と相溶しない液体に補充する補充手段を、
備えることを特徴とする付記1記載のスクリーニング装置。
(付記12)
前記補充手段は、
前記液滴アレイ手段上に配置された前記第1の試薬の液滴アレイの周囲に設けられていることを特徴とする付記11記載のスクリーニング装置。
(付記13)
前記補充手段は、
前記第1の試薬の液滴アレイの周囲に設けられた溝に、前記第1の試薬の溶媒を収容する構造となっていることを特徴とする付記12記載のスクリーニング装置。
(付記14)
前記補充手段は、
前記第1の試薬の液滴アレイを取り囲むように、前記第1の試薬の液滴が配置される構造となっていることを特徴とする付記12記載のスクリーニング装置。
(付記15)
前記第1の試薬と相溶しない液体は、前記第1の試薬からの成分の吸収が平衡した状態から使用されることを特徴とする付記1記載のスクリーニング装置。
(付記16)
前記第1の試薬と相溶しない液体は、オイルであることを特徴とする付記1記載のスクリーニング装置。
(付記17)
試薬と相溶しない液体及び該試薬を吸引し、該試薬を吐出することにより、該移動試薬の液滴を形成する液滴形成手段と、
該液滴形成手段の内圧を制御して、該液滴形成手段に、試薬と相溶しない液体並びに該試薬の吸引する操作、該移動試薬の吐出する操作を実施させる圧力制御手段と、
前記試薬と相溶しない液体を収容する第一の収容手段と、
第1の試薬を収容する第2の収容手段と、
第2の試薬を収容する第3の収容手段と、
前記液滴形成手段の移動と前記圧力制御手段が前記液滴形成手段に加える圧力を制御して、前記第1の収容手段内に前記第1の試薬と相溶しない液体中に配置される第1の試薬の液滴アレイを形成させると共に、前記液滴形成手段に前記第2の試薬の液滴を形成させ、その第2の試薬の液滴を前記液滴アレイ中の前記第2の試薬の各液滴と接触融合させる制御手段と、
を備えることを特徴とするスクリーニング装置。
(付記18)
前記第1の試薬は標的化合物、前記第2の試薬は該標的化合物との反応の有無を調べる候補化合物であることを特徴とする付記1または17記載のスクリーニング装置。
(付記19)
第1の試薬と相溶しない液体中に形成された第1の試薬の液滴に、第2の試薬の液滴を接触融合させる接触融合ステップを、
備えることを特徴とするスクリーニング方法。
(付記20)
前記第1の試薬と相溶しない液体中で前記第1の試薬を吐出させて前記第1の液滴を形成し、該液滴を前記液滴アレイ手段上に配列させて前記第1の試薬の液滴アレイを形成する液滴アレイ形成ステップを、
さらに備えることを特徴とする請求項19記載のスクリーニング方法。
(付記21)
前記液滴アレイ形成ステップは、
吸引手段に前記第1の試薬と相溶しない液体が充填した後、該吸引手段に前記第1の試薬を吸引させるステップと、
前記第1の試薬と相溶しない液体中で前記吸引手段から前記第1の試薬を吐出させて前記第1の試薬の液滴を形成し、その液滴を配置して前記液滴アレイを形成するステップを、
備えることを特徴とする付記20記載のスクリーニング方法。
(付記22)
前記吸引手段はピペットであり、
前記ピペットの内圧を制御して、前記ピペットに第1の試薬と相溶しない液体と前記第1の試薬を吸引させ、前記ピペットから前記第1の試薬の吐出させることにより、前記第1の試薬の液滴を形成させることを特徴とする付記21記載のスクリーニング方法。
(付記23)
前記吸引手段により、前記第1の試薬の層とその層の上に設けれられた前記第1の試薬と相溶しない液体の層を収容する第1の収容手段から前記第1の試薬を吸引することを特徴とする付記21記載のスクリーニング方法。
(付記24)
前記第1の試薬と相溶しない液体は、前記吸引手段が前記第1の収容手段から前記第1の試薬を吸引する際、前記吸引手段の先端部分に付着する材料であることを特徴とする付記23記載のスクリーニング方法。
(付記25)
前記接触融合ステップは、
吸引手段に前記第1の試薬と相溶しない液体を充填し後、該吸引手段に前記第2の試薬を吸引させるステップと、
前記吸引手段から前記第2の試薬を吐出させて、前記第2の試薬の液滴を前記液滴アレイ内に配置された前記第1の試薬の液滴に接触融合させる融合制御ステップを、
備えることを特徴とする付記19記載のスクリーニング方法。
(付記26)
前記吸引手段に、前記第2の試薬の層とその層の上に設けれられた前記第2の試薬と相溶しない液体の層を収容する第2の収容手段から前記第2の試薬を吸引させることを特徴とする付記25記載のスクリーニング方法。
(付記27)
前記第2の試薬と相溶しない液体は、前記吸引手段が前記第2の収容手段から前記第2の試薬を吸引する際、前記吸引手段の先端部分に付着する材料であることを特徴とする付記26記載のスクリーニング方法。
(付記28)
前記第1の試薬と相溶しない液体と前記第2の試薬と相溶しない液体は、同じ液体であることを特徴とする付記26または27記載のスクリーニング方法。
(付記29)
前記第1の試薬と相溶しない液体に、該液体が前記液滴アレイ内の前記第1の試薬の液滴から吸収する成分を補充することを特徴とする付記19記載のスクリーニング方法。
(付記30)
前記吸収成分は、前記第1の試薬の液滴アレイの周囲から補充することを特徴とする付記29記載のスクリーニング方法。
(付記31)
前記吸収成分は、前記第1の試薬の液滴アレイの周囲に設けられた溝に収容された前記第1の試薬の溶媒から補充することを特徴とする付記30記載のスクリーニング方法。
(付記32)
前記吸収成分は、前記第1の試薬の液滴アレイを取り囲むように配置された前記第1の試薬の溶媒の液滴から補充されることを特徴とする付記30記載のスクリーニング方法。(付記33)
前記第1の試薬と相溶しない液体は、前記第1の試薬からの成分の吸収が平衡した状態から使用されることを特徴とする付記20記載のスクリーニング方法。
(付記34)
前記第1の試薬と相溶しない液体は、オイルであることを特徴とする付記20記載のスクリーニング方法。
(付記35)
液滴形成手段に試薬と相溶しない液体及び該試薬を吸引させ、該液滴形成手段から該試薬を吐出させることにより、該試薬の液滴を形成する液滴形成ステップと、
該液滴形成手段の内圧を制御して、該液滴形成手段に、試薬と相溶しない液体並びに該試薬を吸引する操作、該移動試薬を吐出する操作を実施させる圧力制御ステップと、
前記液滴形成手段の移動と前記圧力制御手段が前記液滴形成手段に加える圧力を制御して、前記試薬と相溶しない液体を収容する第1の収容手段内に第1の試薬と相溶しない液体中に配置される第1の試薬の液滴アレイを形成させると共に、前記液滴形成手段に第2の試薬の液滴を形成させ、その第2の試薬の液滴を前記液滴アレイ中の前記第1の試薬の各液滴と接触融合させる制御ステップと、
を備えることを特徴とするスクリーニング方法。
(付記36)
前記第1の試薬は標的化合物、前記第2の試薬は該標的化合物との反応の有無を調べる候補化合物であることを特徴とする付記19または35記載のスクリーニング方法。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明のスクリーニング装置の一実施形態のシステム構成を示す図である。
【図2】制御システムが圧力コントローラに加えるピペットの内圧制御用の信号波形を示す図である。
【図3】本実施形態のスクリーニング装置10を用いたスクリーニング手法の基本手順を示す図である。
【図4】制御システムのシステム全体の制御処理を示すフローチャートである。
【図5】図2の工程(3)〜(5)の詳細を示す図である。
【図6】図2の工程(6)〜(8)の詳細を示す図である。
【図7】容器の底面に形成する試薬1の液滴アレイの第1の実施例を示す図であり、(a)、(b)は、それぞれ、容器の上面図と側面図である。
【図8】容器の底面に形成する試薬1の液滴アレイの第2の実施例を示す図であり、(a)、(b)は、それぞれ、容器の上面図と側面図、(c)は容器の底面に形成される試薬1の液滴の形状を示す図である。
【図9】容器16の底面に形成する試薬1の液滴アレイの第3の実施例を示す図であり、(a)、(b)は、それぞれ、容器の上面図と側面図、(c)は容器16の底面に形成される試薬1の液滴の形状を示す図である。
【図10】ピペットによる試薬(試薬1、試薬2)の吸引方法を示す図である。
【図11】反応化合物である試薬2を標的化合物である試薬1と接触融合させる方法を示す図である。
【図12】オイルによる試薬1の液滴の水分吸収を緩和させる容器の構成の第1の実施例を示す図であり、(a)、(b)は、それぞれ、容器の上面図、側面図である。
【図13】オイルによる試薬1の液滴41aの水分吸収を緩和させる容器の構成の第2の実施例を示す図であり、(a)、(b)は、それぞれ、容器の上面図、側面図である。
【符号の説明】
【0078】
10 スクリーニング装置
11 制御システム
11a ディスプレイ
12 圧力コントローラ
13 XYZステージ
14 ピペット
15 第1のXYステージ
16 容器
16a 底面
17 第2のXYステージ
18 試薬1のライブラリ
18a 容器(試薬1の容器)
19 試薬2のライブラリ
19a 容器(試薬2の容器)
20 観測システム
31 オイル
41 標的化合物(試薬1)
41a 液滴(標的化合物の液滴)
42 反応化合物(試薬2)
42a 液滴(反応化合物の液滴)
51 液滴(試薬1の液滴と試薬2の液滴が接触融合した液滴)
61 親水性の高い素材
71 親水性領域
101 溝(容器16に設けられる溝)
103 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の試薬と相溶しない液体中に、該第1の試薬の液滴アレイが形成された液滴アレイ手段と、
該液滴アレイ手段に配置されている第1の試薬の液滴に第2の試薬の液滴を接触融合させる融合手段と、
を備えることを特徴とするスクリーニング装置。
【請求項2】
前記第1の試薬と相溶しない液体中で前記第1の試薬を吐出させて前記第1の液滴を形成し、該液滴を前記液滴アレイ手段上に配列させて前記第1の試薬の液滴アレイを形成する液滴アレイ形成手段を、
さらに備えることを特徴とする請求項1記載のスクリーニング装置。
【請求項3】
前記液滴アレイ形成手段は、
前記第1の試薬と相溶しない液体が充填された後、前記第1の試薬を吸引する吸引手段と、
前記第1の試薬と相溶しない液体中で該吸引手段から前記第1の試薬を吐出させて、前記第1の試薬の液滴を形成させ、その液滴を前記液滴アレイ手段上に配置する液滴形成制御手段を、
備えることを特徴とする請求項2記載のスクリーニング装置。
【請求項4】
前記吸引手段はピペットであり、
前記液滴形成制御手段は、前記ピペットの内圧を制御して、前記ピペットに第1の試薬と相溶しない液体と前記第1の試薬を吸引させ、前記ピペットから前記第1の試薬の吐出させることにより、前記第1の試薬の液滴を形成させることを特徴とする請求項3記載のスクリーニング装置。
【請求項5】
前記第1の試薬の層と、その層の上に設けれられた前記第1の試薬と相溶しない液体の層を収容する第1の収容手段を、さらに備え、
前記吸引手段は、前記第1の収容手段から前記第1の試薬を吸引することを特徴とする付記3記載のスクリーニング装置。
【請求項6】
前記第1の試薬と相溶しない液体は、前記吸引手段が前記第1の収容手段から前記第1の試薬を吸引する際、前記吸引手段の先端部分に付着する材料であることを特徴とする請求項5記載のスクリーニング装置。
【請求項7】
前記融合手段は、
前記第1の試薬と相溶しない液体が充填された後、前記第2の試薬を吸引する吸引手段と、
該吸引手段から前記第2の試薬を吐出させて、前記第2の試薬の液滴を、前記液滴アレイ手段上に配置された前記第1の試薬の液滴に接触融合させる融合制御手段を、
備えることを特徴とする請求項1記載のスクリーニング装置。
【請求項8】
前記第2の試薬の層と、その層の上に設けれられた前記第2の試薬と相溶しない液体の層を収容する第2の収容手段を、さらに備え、
前記吸引手段は、前記第2の収容手段から前記第2の試薬を吸引することを特徴とする請求項7記載のスクリーニング装置。
【請求項9】
前記第2の試薬と相溶しない液体は、前記吸引手段が前記第2の収容手段から前記第2の試薬を吸引する際、前記吸引手段の先端部分に付着する材料であることを特徴とする請
求項8記載のスクリーニング装置。
【請求項10】
前記液滴アレイ手段は、前記第1の試薬と相溶しない液体が前記第1の試薬の液滴から吸収する成分を、前記第1の試薬と相溶しない液体に補充する補充手段を、
備えることを特徴とする請求項1記載のスクリーニング装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2009−97939(P2009−97939A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268593(P2007−268593)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】