説明

スクリーンおよびプロジェクションシステム

【課題】高輝度かつ高コントラストな画像を得るためのスクリーンを提供することを目的とする。
【解決手段】投射光Lを反射する反射層3と、反射層3を覆って視認側に設けられた外光吸収層5と、を備え、外光吸収層5は、光吸収面ASを有する複数の庇状の外光吸収部材51を有し、複数の外光吸収部材51は、投射光Lに係る入射面の法線方向に縞状に延在し、複数の外光吸収部材51の間隔は、少なくとも一箇所の間隔が他の間隔と異なることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーンおよびプロジェクションシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクター(投射型表示装置)を用いた展示会や学会、会議等のプレゼンテーションや、あるいはホームシアター等の映像視聴のための拡大画像の投射面として、反射スクリーンが用いられている。
【0003】
従来の反射スクリーンは、プロジェクターからの投射光を反射して投射画像を表示すると同時に、照明の光や窓から入る太陽光など使用環境に由来する外光(外乱光)をも反射してしまうため、明るい場所では「白(最大輝度)」と「黒(最小輝度)」の輝度比であるコントラストが低く、プロジェクターが使用し難いという問題があった。そこで、最大輝度を上げる、あるいは、太陽光、照明光等、コントラスト低下の原因となる外乱光の影響を抑制して最小輝度を下げる、ことにより、明室での高コントラスト化を実現することを目的としたスクリーンの開発が進められている。
【0004】
このようなスクリーンとして、例えば、スクリーン基板上にフレネル形状の部材を配置して、外乱光の吸収と投射光の反射とを両立し、高コントラスト化したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1では、スクリーン水平方向に延在しフレネル形状を構成する複数の凹凸において、スクリーン下方に面する傾斜面が下方からの投射光の反射を行い、スクリーン上方に面する傾斜面が上方から外乱光の吸収を行うことで、高コントラストの画像表示を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05−011346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献に記載された構成では、各凹凸の傾斜面の角度によって、吸収可能な外乱光の入射角度が決まっている。しかし、スクリーン投射面への外乱光の入射角度は、スクリーンの使用環境により異なるものであるため、従来構成のスクリーンでは、使用環境によっては最小輝度の低下が不十分となりやすく、安定的に最適なコントラスト特性を得ることが難しかった。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、高輝度かつ高コントラストな画像を得るためのスクリーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明のスクリーンは、投射光を反射する反射層と、前記反射層を覆って視認側に設けられた外光吸収層と、を備え、前記外光吸収層は、光吸収面を有する複数の庇状の外光吸収部材を有し、複数の前記外光吸収部材は、前記投射光に係る入射面の法線方向に縞状に延在し、前記複数の外光吸収部材の間隔は、少なくとも一箇所の間隔が他の間隔と異なることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、コントラスト低下の原因となる外乱光(外光)が外光吸収部材で吸収するために低減し、スクリーン正面の最小輝度を下げてコントラストを高めることが容易となる。加えて、上記構成のような外光吸収部材を等間隔で配置した場合、投射画像の画素と干渉を起こし、投射画像に「モアレ」と呼ばれる干渉縞が発生して画質が低下することがある。しかし、本発明の構成の外光吸収部材は、互いに不等間隔で配置されているため、投射画像の画素と外光吸収部材とが干渉することなく、モアレの発生を抑制することができる。したがって、高コントラストかつ高品位な画像を得ることが可能なスクリーンを提供することができる。ここで、「入射面」とは、スクリーンに入射する投射光の光軸を含みスクリーン表面に垂直な面のことである。
【0011】
本発明においては、前記外光吸収部材同士の間隔が、ランダムに設定されていることが望ましい。
ここで言う「ランダム」とは、外光吸収部材の配置が、一定周期の不等間隔で繰り返されるという周期性すら無く、完全に不規則となっている状態を指す。そのため、この構成によれば、投射画像の画素と外光吸収部材との干渉に起因するモアレの発生を完全に抑制することができる。
【0012】
本発明においては、複数の前記外光吸収部材の配列方向における所定の位置を基準位置として、前記庇状の外光吸収部材の各々は、前記基準位置から遠ざかるに従って該基準位置の方に傾斜していることが望ましい。
この構成によれば、観察者が基準位置におけるスクリーン法線方向から投射画像を観察すると、複数の外光吸収部材が丁度観察者の方に傾斜している事となる。そのため、観察者からは外光吸収部材が見えにくくなり、良好な画像表示が可能なスクリーンを提供することができる。
【0013】
本発明においては、前記外光吸収部材の、前記外光の入射方向とは反対側の面に、光反射面が設けられていることが望ましい。
この構成によれば、外光吸収部材に入射する投射光のうち、外光の入射方向とは反対側の面に入射する投射光が外光吸収部材に吸収されることが無くなるため、投射光の利用効率を高め、高輝度なスクリーンを提供することができる。
【0014】
本発明においては、複数の前記外光吸収層が積層して設けられていることが望ましい。
この構成によれば、外乱光を吸収する確率が高まるため、より確実に外乱光を除き、高コントラストな画像を得ることが可能なスクリーンを提供することができる。
【0015】
本発明においては、前記複数の外光吸収層が有する各々の前記外光吸収部材が、互いに平面的に重ならない位置に配置されていることが望ましい。
複数の外光吸収部材が重なると、外光吸収部材自体や外光吸収部材の影が太くなるために、観察者に視認されやすくなり、画質低下の要因となるスジ状の輝度ムラが生じるおそれがある。しかし、この構成によれば、外光吸収部材が視認されにくくなるために、確実な外乱光吸収による高コントラスト化に加え、高品位な画像表示を実現するスクリーンを提供することができる。
【0016】
本発明においては、前記外光吸収層の前記反射層とは反対側に、入射光を拡散させる光拡散層を有することが望ましい。
この構成によれば、スクリーンから反射する光に散乱性を付与することができる。そのため、反射光の強度分布をスクリーン表面で平均化することができ、投射画像の一部が明るく光ったように見える現象(ホットスポット)を防止することができる反射型のスクリーンを提供することができる。
【0017】
また、本発明のプロジェクションシステムは、上記本発明のスクリーンと、前記スクリーンに画像を投射する投射型表示装置と、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、低出力のプロジェクターを用いても均一で明るい投射画像が得られるため、画像品位を保ちつつ低消費電力のプロジェクションシステムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のスクリーンおよびプロジェクションシステムを示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るスクリーンの説明図である。
【図3】本発明のスクリーンの機能を説明する説明図である。
【図4】本実施形態の変形例に係るスクリーンの説明図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るスクリーンの説明図である。
【図6】第2実施形態のスクリーンの効果を示すシミュレーション結果である。
【図7】第2実施形態のスクリーンの効果を示すシミュレーション結果である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
以下、図1〜図4を参照しながら、本発明の第1実施形態に係るスクリーンについて説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の膜厚や寸法の比率などは適宜異ならせてある。
【0020】
図1は、本実施形態のスクリーン1A、および本実施形態のプロジェクションシステムPSを示す斜視図である。
【0021】
図に示すように、本実施形態のスクリーン1Aは、反射型のスクリーンであり、被投射面1aに、反射層3と、水平方向に延在する複数のルーバー状(庇状)の外光吸収部材51が縞状に設けられた外光吸収層5を有している。また、スクリーン1Aは、正面側前方の斜め下に配置された近接投射型のプロジェクター(投射型表示装置)PJから投射される投射光Lを正面に反射するため、横長矩形状の平面視形状を呈している。プロジェクションシステムPSは、スクリーン1AにプロジェクターPJを加えた構成となっている。
【0022】
本発明のスクリーン1Aは、被投射面1aに投射される投射光Lを良好にスクリーン1Aの前面に反射すると共に、太陽光や電灯の光などの外乱光OLを外光吸収部材51で吸収することで、高コントラストな画像表示が可能なスクリーンとなっている。以下、詳細に説明する。
【0023】
図2は、スクリーン1Aの説明図であり、図1の線分A−Aにおける矢視断面図を含む部分斜視図である。
【0024】
図に示すように、スクリーン1Aは、基材2上に設けられた反射層3と、反射層3上に設けられた複数の外光吸収部材51を含む外光吸収層5と、外光吸収層5を覆って前面に設けられた光拡散層7と、を有している。
【0025】
基材2は、光を吸収するフィラーとバインダー樹脂とからなる黒色の光吸収材を用いて形成されたものである。フィラーは、自然光または白色光を吸収するものであって、カーボンブラック等の顔料や黒色色素粒子等からなっている。バインダー樹脂としては、熱可塑性樹脂が用いられ、好ましくは弾性のある熱可塑性エラストマーが用いられている。具体的には、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂などが好適に用いられる。また、基材2には、フィラーやバインダー樹脂以外の添加剤として、硬化剤や帯電防止剤、防汚処理剤、バインダー樹脂の劣化を防ぐ紫外線吸収剤などが添加されていてもよい。
【0026】
なお、この基材2は、図示しない支持材上に設けてもよい。この支持材としては、フィルムなどの柔軟性を有するもので、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)などによって形成されている。また、支持材の裏面側(基材2と反対の側)に、例えばアルミ複合板などを貼設することにより、スクリーン1Aの強度を高めるようにしてもよい。
【0027】
反射層3は、一般的なスクリーンで用いられている光反射性の材料を用いて形成することができる。このような材料としては、例えば、アルミニウムや銀などの金属材料が挙げられ、蒸着法等の気相法や、金属微粒子を分散させたバインダー樹脂からなるインクを用いた吹付法等の液相法により形成することができる。また、これらの方法を用いた反射層3の形成の際、形成材料としてガラスビーズを併用することで、反射層3に光拡散機能を持たせることとしても構わない。
【0028】
外光吸収層5は、水平方向に延在するルーバー状の複数の外光吸収部材51と、隣接する外光吸収部材51の間を占める光透過性の光透過部材52と、を有している。外光吸収部材51は、反射層3の表面に垂直に立って設けられている。外光吸収部材51は、例えば、黒色の樹脂材料を用いて形成されており、光透過部材52は、例えば、光透過性の樹脂材料を用いて形成されている。
【0029】
本実施形態では、外光吸収部材51の高さHは、100μmに設定されている。また、複数の外光吸収部材51同士の配置間隔P(ピッチ)は、プロジェクターPJによる投射画像とのモアレを抑制するために、ランダムな間隔に設定されている。ここで言う「ランダム」とは、外光吸収部材51の配置間隔Pに一切の規則性が無い状態を指している。本実施形態では、外光吸収部材51の配置間隔Pが、200±100μm間隔となっている。このような配置間隔の不均等さは、通常の成形誤差(±数μm)によるものよりも大きいものである。
【0030】
外光吸収部材51の側面のうち、外光吸収部材51の鉛直方向上側の面には光吸収面ASが、外光吸収部材51の鉛直方向下側の面には光反射面RSが、それぞれ形成されている。
【0031】
光吸収面ASでは、黒色の外光吸収部材51により外乱光OLが吸収される。そのため、光吸収面ASは、外乱光OLの入射方向を向くように設けられている。ここで、外乱光OLの入射方向は設置状況によって異なるため、設置状況によって想定される外乱光のうち大きな要因となる外乱光の入射方向を向くように設計することが好ましい。
【0032】
例えば、スクリーン1Aの設置場所が、太陽光が差し込む窓等が無く、外乱光の原因は主として天井の電灯からの光である場合には、光吸収面ASはスクリーン1A設置時に天井に面するように設定する。また、設置場所において異なる2方向の外乱光(たとえば、天井の電灯からの光と、壁の窓から差し込む太陽光)が入射することが想定される場合、影響の大きい一方の外乱光の方を向くように設定することができる。
【0033】
また、光吸収面ASによる外乱光の吸収を効果的に行うために、複数の外光吸収部材51の光吸収面ASは略同じ方向を向いている。図では垂直方向上方からの外乱光を吸収するように、光吸収面ASが上方を向くように設けられている。
【0034】
一方、光反射面RSは、蒸着法等の気相法や、金属微粒子を分散させたバインダー樹脂からなるインクを用いた吹付法等の液相法により、例えばアルミニウムや銀などの反射性の金属を成膜することにより形成されており、面に入射する光を反射する。
【0035】
このような外光吸収層5は、例えば次の様にして形成する。まず、反射層3の表面に薄く延ばした紫外線硬化性樹脂に、凸状の外光吸収部材51の転写型を押し当てた状態で紫外線を照射して硬化させて、光透過部材52を形成する。その後、転写型を除去し、転写型によって形成された溝部分に、黒色の紫外線硬化性樹脂を流し込んで充填し、再度紫外線を照射して硬化させることで外光吸収部材51を形成し、外光吸収層5とする。
【0036】
光拡散層7は、投射光Lを拡散させて水平視野角を広げる偏向機能を有する。光拡散層7の形成材料は、無色で透光性のバインダー樹脂中にフィラー(拡散剤)が分散させられたものである。フィラーとしては、ビーズ状や鱗片状の形状のものを用いることができ、材質としては、シリカ、酸化チタン、雲母、硫酸バリウム、塩化バリウム、アルミニウムなどが用いることができる。
【0037】
このような光拡散層7としては、プロジェクターPJからの投射光Lを一旦透過し、外光吸収層5で反射させて再度透過させるべく、バインダー樹脂はもちろん、フィラーについても透光性を有したものであるのが好ましい。したがって、フィラーとしては、シリカなどの透光性のものが好適に用いられる。ただし、フィラーの含有量が比較的少ない場合には、非透光性または半透光性のフィラーを用いることもできる。
【0038】
光拡散層7のバインダー樹脂としては、特にウレタン系樹脂やアクリル系樹脂が好適に用いられる。このようにウレタン系樹脂やアクリル系樹脂を用いれば、光拡散層7が、スクリーン1Aの表面を保護する保護層としても機能するようになる。
【0039】
更に、スクリーン1Aの保護膜として、光拡散層7の最表面に薄い保護フィルムを設けることとしても良い。
本実施形態のスクリーン1Aは、以上のような構成となっている。
【0040】
図3は、スクリーン1Aの機能を説明する説明図であり、図3(a)が投射光Lに対する挙動、図3(b)が外乱光OLに対する挙動を示している。
【0041】
図3(a)に示すように、通常の投射光Lは、スクリーン1Aの正面に配置されたプロジェクターから投射されるため、スクリーンの被投射面に対する入射角θ1が小さい。ここで、「被投射面」とは、スクリーンの表面が平坦であるとした場合に、投射光Lにより形成される投射画像が映し出される仮想的な平面を指す。
【0042】
このような入射角θ1で入射する投射光Lは、外光吸収部材51の光吸収面ASに入射しにくく、ほぼ吸収されることなく大半の光が反射層3に達する。また、反射層3に達した投射光Lは、入射角に対応する小さい反射角で反射するため、入射時と同様に外光吸収部材51の光吸収面ASに入射しにくく、大半が外光吸収層5を透過し投射画像を形成する。
【0043】
一方で、図3(b)に示すように、外乱光OLは、主に窓から入射する太陽光や天井の電灯からの光であり、通常スクリーンの被投射面に対する入射角θ2が大きい。そのため、外光吸収層5に入射する外乱光OLは、外光吸収部材51の光吸収面ASに入射しやすい。
【0044】
また、反射層3に達した一部の外乱光OLは、入射角に対応する大きい反射角で反射するため、入射時と同様に外光吸収部材51の光吸収面ASに入射しやすく、結果、外乱光OLの大半が外光吸収層5で吸収される。したがって、スクリーン1Aの前方へ反射する外乱光OLは非常に少なくなり、高コントラスト化を実現できる。
【0045】
本実施形態のスクリーン1Aでは、投射光Lおよび外乱光OLが上記のような挙動を示すことにより、投射画像に含まれる外乱光OLの割合を減らし、最小輝度を下げて高コントラスト化を実現している。
【0046】
以上のような構成のスクリーン1Aによれば、良好に投射画像のコントラストを向上させ、高品位な画像表示を実現することができる。また、このスクリーン1Aを用いたプロジェクションシステムPSは、低出力のプロジェクターPJを用いても均一で明るい投射画像が得られるため、画像品位を保ちつつ低消費電力のプロジェクションシステムPSを実現できる。
【0047】
なお、本実施形態においては、複数の外光吸収部材51の配置間隔Pがランダムであることとしたが、互いに等間隔でなければ一定の不等間隔配置が繰り返すこととしても構わない。
【0048】
また、本実施形態においては、外光吸収部材51の下側の面には光反射面RSが設けられていることとしたが、無くても良い。
【0049】
また、本実施形態においては、光拡散層7を設けて投射光Lを拡散させ、水平視野角を広げる構成としたが、例えば、反射層3の表面に凹凸形状を設けることで、反射層3に水平視野角を広げる機能を付与することとすれば、光拡散層7は無くても構わない。
【0050】
また、本実施形態においては、ルーバー状の外光吸収部材51が、反射層3に対して垂直に立って設けられることとしたが、これに限らない。
【0051】
図4は、本実施形態の変形例であるスクリーン1Bを示す説明図である。図に示すように、複数の外光吸収部材51の各々が、スクリーン上の基準位置Rの方に傾斜して設けられている。このような構成のスクリーン1Bに投射される投射画像を、基準位置Rの高さに視点位置を合わせた観察者Vが観察すると、高コントラスト化には好適である。
【0052】
すなわち、ルーバー状の各外光吸収部材51が、図のような傾斜を有していると、外光吸収部材51が観察者V側に傾斜していることとなるため、観察者Vから外光吸収部材51が視認しにくくなる。合わせて、光吸収面ASに対する外乱光OLの入射角が小さくなるため、外光吸収部材51が良好に外乱光OLを吸収することができる。そのため、高コントラストで良好な画像表示を実現するスクリーン1Bとなる。
【0053】
[第2実施形態]
図5は、本発明の第2実施形態に係るスクリーン1Cの説明図であり、図3に対応する図である。本実施形態のスクリーン1Cは、第1実施形態のスクリーン1Aと一部共通している。異なるのは、外光吸収層5が複数層(図では3層)積層して外光吸収層6を形成していることである。したがって、本実施形態において第1実施形態と共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0054】
スクリーン1Cでは、図5(a)に示すように、スクリーンの被投射面に対する入射角θ1が小さい投射光Lに対しては、第1実施形態のスクリーン1Aと同様に、外光吸収部材51の光吸収面ASで吸収されにくく、投射した光の大半が外光吸収層5を透過し投射画像を形成する。
【0055】
また、図5(b)に示すように、入射角θ2が大きい外乱光OLを各外光吸収層5においてそれぞれ吸収するため、外乱光OLを吸収する確率が高まり、より確実に外乱光OLを除くことが可能となる。
【0056】
図6,7は、本実施形態のスクリーンの効果を示すシミュレーション結果である。ここでは、外光吸収層を1層のみ用いたスクリーン(第1実施形態のスクリーン1A)、2層積層したスクリーン、及び3層積層したスクリーン(本実施形態のスクリーン1C)について評価を行った。以下、図を用いて本実施形態のスクリーンの効果を説明する。
【0057】
図6は、外光吸収層の積層数を変化させた場合の視野角特性の変化を示すグラフであり、図6(a)は、横軸をスクリーンの水平方向角度(単位:度)、縦軸を輝度(単位:nit、1nit=1cd/m)とした、水平方向の輝度分布を示すグラフ、図6(b)は、横軸をスクリーンの垂直方向角度、縦軸を輝度とした、垂直方向の輝度分布を示すグラフである。
【0058】
各グラフの角度を表す軸においては、0度がスクリーンの被投射面の法線方向を示しており、(a)は、スクリーンに正対する観察者から見て左側ほど角度が小さく、右側ほど角度が大きくなるよう示している。また(b)は、同じく観察者から見て、上方ほど角度が大きく、下方ほど角度が小さくなるように示している。
【0059】
ここで、図6の結果を評価する際の指標となる「半値角」について説明する。半値角は、最大輝度に対して輝度が1/2になる視野角である。図では、スクリーンの法線方向の輝度が最大輝度を示している。
【0060】
スクリーンに投射される画像を観察する際、視野角が半値角を超えない位置から観察する場合には、観察者は投射画像の明るさの変化について違和感を覚えず、良好な画像を見ることができる。しかし、この角度を超えた位置から観察すると、観察者は投射画像を暗く(見えにくく)感じる。そのため、半値角を示す視野角が、そのスクリーンの実用上の最大視野角であると評価することができる。
【0061】
図6に示す結果より、外光吸収層の積層数が多くなるほど視野角が狭くなることが示された。
【0062】
図6(a)の結果より、水平視野角については、外光吸収層を1層用いたものから3層積層したものまで、シミュレーション条件内の視野角において輝度が最大輝度の半値を示すことがなく、いずれのスクリーンであっても、良好に視野角が確保されることが分かった。
【0063】
一方、図6(b)の結果より、垂直視野角については、外光吸収層を3層積層したスクリーン(本実施形態のスクリーン1C)で、垂直方向の半値角が±22.5度となっており、他の1層、2層のスクリーンと比べて大幅に視野角が狭くなっていることが分かる。しかし、通常の使用形態では、垂直方向でこれ以上広い視野角でスクリーンを見上げる又は見下ろすということは無く、実質的には垂直視野角は良好に確保されると言える。したがって、外光吸収層を積層しても視野角は良好に確保されるスクリーンとなることが示された。
【0064】
図7は、外光吸収層の積層数を変化させた場合の、投射画像中に含まれる外乱光の割合を示すグラフである。
【0065】
図に示す結果では、本発明の外光吸収層の積層数を増やすほど、投射画像中の外乱光の割合が低下しており、3層積層したスクリーンにおいては、投射画像中の外乱光の割合1%程度となっている。投射画像中の外乱光割合が減少するということは、外乱光による最小輝度への影響を抑えることが可能となることを示しており、結果として、投射画像の高コントラスト化を実現することができる。
【0066】
図6,7の結果より、外光吸収層を積層したスクリーンでは、高コントラストで高品質な画像表示を実現することができることが分かる。
【0067】
図5に戻り、外光吸収層6では、各々の外光吸収層5の外光吸収部材51は、互いに平面的に重なることとしても良いが、図に示すように、互いに平面的に重ならない位置に配置されていることがより望ましい。
【0068】
外光吸収部材51をこのような配置とすることは特に困難ではない。各外光吸収層5における外光吸収部材51をランダムなピッチで形成することとすれば、各々の外光吸収層5が有する外光吸収部材51同士が平面的に重なることは確率的に非常に小さく、容易に所望の配置とすることができる。
【0069】
複数の外光吸収部材51が平面的に重なると、外光吸収部材51自体や外光吸収部材51の影が太くなるために観察者に視認されやすくなり、画質低下の要因となるスジ状の輝度ムラが生じるおそれがある。しかし、スクリーン1Cの外光吸収層6が有する外光吸収部材51は、互いに平面的に重ならない位置に配置されているため、このような課題が起こりにくい。
【0070】
以上のことから、本実施形態のスクリーン1Cでは、確実な外乱光OLの吸収による高コントラスト化に加え高品位な画像表示を実現するスクリーン1Cとすることができる。
【0071】
なお、本実施形態においては、第1実施形態と同様に、各外光吸収部材51を観察者の方に傾斜する構成とすることもできる。その場合には、全ての外光吸収層5の外光吸収部材51が傾斜していても良く、また、一部の外光吸収層5の外光吸収部材51のみが傾斜することとしても良い。
【0072】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0073】
1A〜1C…スクリーン、3…反射層、5,6…外光吸収層、7…光拡散層、51…外光吸収部材、AS…光吸収面、L…投射光、OL…外乱光(外光)、P…間隔、PJ…プロジェクター(投射型表示装置)、PS…プロジェクションシステム、RS…光反射面、V…観察者、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投射光を反射する反射層と、
前記反射層を覆って視認側に設けられた外光吸収層と、を備え、
前記外光吸収層は、光吸収面を有する複数の庇状の外光吸収部材を有し、
複数の前記外光吸収部材は、前記投射光に係る入射面の法線方向に縞状に延在し、
前記複数の外光吸収部材の間隔は、少なくとも一箇所の間隔が他の間隔と異なることを特徴とするスクリーン。
【請求項2】
前記外光吸収部材同士の間隔が、ランダムに設定されていることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン。
【請求項3】
複数の前記外光吸収部材の配列方向における所定の位置を基準位置として、
前記庇状の外光吸収部材の各々は、前記基準位置から遠ざかるに従って該基準位置の方に傾斜していることを特徴とする請求項1または2に記載のスクリーン。
【請求項4】
前記外光吸収部材の前記光吸収面とは反対側の面に、光反射面が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のスクリーン。
【請求項5】
複数の前記外光吸収層が積層して設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のスクリーン。
【請求項6】
前記複数の外光吸収層が有する各々の前記外光吸収部材が、互いに平面的に重ならない位置に配置されていることを特徴とする請求項5に記載のスクリーン。
【請求項7】
前記外光吸収層の視認側に、入射光を拡散させる光拡散層を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のスクリーン。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のスクリーンと、前記スクリーンに画像を投射する投射型表示装置と、を備えることを特徴とするプロジェクションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−197956(P2010−197956A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45775(P2009−45775)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】